マットレス
【課題】理想的な睡眠姿勢の確保と良好な体圧分散作用の確保を両立するとともに、耐久性に優れたマットレスを提供する。
【解決手段】発泡成形体2の一面を少なくともその長手方向に三つのゾーンZ1、Z2、Z3に区画するとともに、該各ゾーンZ1、Z2、Z3の弾性反発度を、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーンZ1が高く、該第1ゾーンZ1の両側に位置する第2ゾーンZ2と第3ゾーンZ3が共に低くなるように調整する。係る構成によれば、体の凹凸に対応した最適な体圧分散作用が得られ、その結果、高い安眠性・快眠性が得られるとともに、褥瘡防止効果の高いマットレスを提供することができる。
【解決手段】発泡成形体2の一面を少なくともその長手方向に三つのゾーンZ1、Z2、Z3に区画するとともに、該各ゾーンZ1、Z2、Z3の弾性反発度を、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーンZ1が高く、該第1ゾーンZ1の両側に位置する第2ゾーンZ2と第3ゾーンZ3が共に低くなるように調整する。係る構成によれば、体の凹凸に対応した最適な体圧分散作用が得られ、その結果、高い安眠性・快眠性が得られるとともに、褥瘡防止効果の高いマットレスを提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、発泡成形体で構成され、特に医療用とか介護用として用いるに好適なマットレスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人は、マットレスを用いて睡眠する場合、マットレス上に仰臥あるいは横臥したとき該マットレスの弾性変形によって自然発生的に「理想的な睡眠姿勢」が確保され、該睡眠姿勢に由来する良好な寝心地の下で、高い安眠性あるいは快眠性が得られることを欲する。ここで、理想的な睡眠姿勢とは、立位の姿勢に可及的に近い姿勢であると言われている。
【0003】
また、マットレスの使用は長期に亘るため、係る長期の使用においても「へたり」が少なく、「理想的な睡眠姿勢」を長期間維持できるような耐久性を持つことも要求される。
【0004】
さらに、マットレスの中でも、特に医療用とか介護用として使用されるマットレスにおいては、人が長時間同じ寝姿勢を保ったままマットレス上で寝続けることが多く、そのため身体の特定部位への体圧集中による褥瘡(床ずれ)を防止する観点から、良好な体圧分散機能を備えることが要求される。
【0005】
一方、このような医療用とか介護用として使用されるマットレスにおいては、看護作業とか介護作業における看護者、介護者の労的な負担の軽減という普遍的な要求が存在し、これが偏重された結果、理想的な睡眠姿勢の確保とか、身体の特定部位への体圧集中の抑制等のマットレス使用者の利益面への配慮が幾分犠牲にされていることも否めない。
【0006】
このようなマットレスにおける様々な課題に対処し得るマットレスとして、従来から種々の提案がなされている(特許文献1〜4参照)。
【0007】
特許文献1には、天然ゴム発泡体でマットレスを形成するとともに、発泡作用により発泡体中に形成される孔(発泡腔)の深さを体圧の大きさに対応して微妙に変化させることで、マットレスの過度の沈み込みを抑制し、体圧分散を促進して褥瘡予防効果を得るようにした技術が提案されている。
【0008】
特許文献2には、合成樹脂発泡体よりなる基部と、該基部上に立設された多数の突部とからなるマットレスにおいて、長手方向中央部における基部の横断面積を、長手方向両端部における基部の横断面積よりも大きくすることで、マットレスの硬さを調整し、過度の沈み込みを防止し、これによって背骨に負担の掛らない安眠性を実現する技術が提案されている。
【0009】
特許文献3には、軟質の発泡体、例えば、天然ゴムの発泡体からなるマットレスに厚さ方向の穴を多数設け、この穴の深さを部位に応じて変えることによって、マットレスの反発力を変化させ、これによって沈み込み易い腰部に当接する領域の反発力を強くして身体を適度に支持し、背筋の伸びた睡眠姿勢を確保する技術が提案されている。
【0010】
特許文献4には、ウレタン樹脂よりなる発泡体から形成されるマットレスにおいて、厚さ方向に複数の孔を形成し、この孔の形成によって得られる柱で体圧を支持することで、体圧の掛る方向へ柱が倒れて孔側へ体圧を逃がし、これによって褥瘡予防を図る技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】 特開2007−185235号公報
【特許文献2】 特開2000−93263号公報
【特許文献3】 特開2005−118097号公報
【特許文献4】 特開2001−25425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、特許文献1に示されるマットレスにおいては、発泡作用により発泡体中に形成される孔(発泡腔)の深さを体圧の大きさに対応して微妙に変化させ、これによって体圧分散作用を高めるとしているが、係る発泡体中での孔の深さの管理は極めて難しく、実現性に乏しいものである。
【0013】
特許文献2に示されるマットレスでは、マットレスの長手方向中央部における基部の横断面積と、長手方向両端部における基部の横断面積とに差を持たせることでマットレスの硬さを調整し、これによって体圧分散作用を高めるようにしているが、上記各基部が相互に独立した構成であって該各基部間を拘束する機能を持たないことから、該基部がこれに掛る体圧によって無秩序に倒れ変形し、本来想定した基部の横断面積を変化させることによる体圧分散作用の確実性が損なわれ、結果的に所期の目的を達し得ないものとなる。
【0014】
また、マットレスが合成樹脂発泡体で構成されており、該合成樹脂発泡体の性状からして、マットレスを圧縮した場合の圧縮残留応力が大きく、使用継続によって「へたり」が生じ易いなど、その耐久性においても問題がある。
【0015】
特許文献3に示されるマットレスでは、天然ゴムの発泡体からなるからなるマットレス設けた穴の深さをマットレスの部位に応じて(具体的には、マットレスに寝た状態における人体の凹凸形状に対応して)変えることでマットレスの反発力を変化させるようにしているが、上記穴をマットレスの裏面側にのみ設ける構成であるため該マットレスの全域における反発力調整の自由度が低く、十分な体圧分散作用を得ることが難しい。
【0016】
特許文献4に示されるマットレスでは、マットレスの厚さ方向に複数の孔を形成することで得られた複数の柱で体圧を支持し、この柱の倒れ方向に体圧を逃がすようにしており、その場合の力の作用方向を模式的に示している(図3、図12参照)。しかしながら、実際的には、マットレスは床面上に載置されその裏面は平面状態が維持されるため、体圧を受けた場合、マットレスの裏面は平面状態に拘束されたまま、その上面側のみが身体形状に沿って凹入変形することになり、このマットレスの変形形態を勘案すれば、「柱の倒れ方向に体圧を逃がす」という作用効果の実現性には疑問がある。
【0017】
そこで本願発明は、上掲の従来技術の問題点に鑑み、理想的な睡眠姿勢の確保と良好な体圧分散作用の確保を両立するとともに、耐久性に優れたマットレスを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0019】
本願の第1の発明では、平面長矩形の発泡成形体2で構成されたマットレスにおいて、該発泡成形体2の一面を少なくともその長手方向に三つのゾーンZ1、Z2、Z3に区画するとともに、該各ゾーンZ1、Z2、Z3の弾性反発度を、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーンZ1が高く、該第1ゾーンZ1の両側に位置する第2ゾーンZ2と第3ゾーンZ3がともに低くなるように調整をしたことを特徴としている。
【0020】
本願の第2の発明では、平面長矩形の発泡成形体2で構成されたマットレスにおいて、該発泡成形体2の一面を少なくともその長手方向に三つのゾーンZ4、Z5、Z6に区画するとともに、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーンZ4を上記長手方向に長軸又は短軸を持つ菱形形状とし、これら各ゾーンZ4、Z5、Z6の弾性反発度を、上記第1ゾーンZ4が高く、該第1ゾーンZ4の両側に位置する第2ゾーンZ5と第3ゾーンZ6がともに低くなるように調整をしたことを特徴としている。
【0021】
本願の第3の発明では、平面長矩形の発泡成形体2で構成されたマットレスにおいて、上記発泡成形体2の一方の面2aには上記第1の発明に係る構成を適用し、他方の面2bには上記第2の発明に係る構成を適用したことを特徴としている。
【0022】
本願の第4の発明では、上記第1、第2又は第3の発明の発明に係るマットレスにおいて、上記発泡成形体2にその厚さ方向へ延びる未貫通の凹孔3、4、5を多数設け、該各凹孔3、4、5の大きさ及び/又は配置パターンの設定によって弾性反発度を調整することを特徴としている。
【0023】
本願の第5の発明では、上記第1、第2、第3又は第4の発明に係るマットレスにおいて、マットレス載置面上への載置状態で上記発泡成形体2の表面がその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜するようにしたことを特徴としている。
【0024】
本願の第6の発明では、上記第1、第2、第3、第4又は第5の発明の発明に係るマットレスにおいて、上記発泡成形体2を、天然ゴムの発泡成形品で構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0026】
(a)本願の第1の発明
本願の第1の発明に係るマットレスでは、発泡成形体2の一面を少なくともその長手方向に三つのゾーンZ1、Z2、Z3に区画するとともに、該各ゾーンZ1、Z2、Z3の弾性反発度を、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーンZ1が高く、該第1ゾーンZ1の両側に位置する第2ゾーンZ2と第3ゾーンZ3が共に低くなるように調整をしているので、体の凹凸に対応した最適な体圧分散作用が得られ、その結果、高い安眠性・快眠性が得られるとともに、褥瘡防止効果の高いマットレスを提供することができる。
【0027】
即ち、身体各部のうち、臀部は仰臥姿勢及び横臥姿勢の双方において最も突出する部位である。従って、例えば、マットレスの全域においてその弾性反発度が同程度に設定されているとすれば、上記突出する部位に対応するマットレスの部位、即ち、長手方向中央寄りに位置するゾーンは他のゾーンに比べて大きく沈み込こむことになる。この結果、本来、直線状であることが望ましい身体の中心軸(図6の線「L1」、図7(イ)の線「L1」、図8(イ)の線「L1」参照)が、この過度の沈み込みの影響を受けて大きく屈曲することになる(図7(ロ)及び(ハ)の線「L1a」、図8(ロ)の線「L1b」参照)。
【0028】
このように、身体の中心軸が屈曲すると、沈み込みが極大となる位置、即ち、仰臥姿勢にあっては、図7の(ロ)、(ハ)に示すように、臀部あるいは肩部に対応する部位、横臥姿勢にあっては、図8の(ロ)に示すように、臀部に対応する部位は、大きな圧迫力が作用する「圧迫点」となり、例えば、長期の使用の間に圧迫痛みとか血行不順が発生し、究極的には褥瘡(床ずれ)が発生する原因となることが懸念される。
【0029】
また、これら各圧迫点及びこれら各圧迫点の中間にあって沈み込みが最も少ない腰部は、身体中心軸が大きく屈曲変化する「支点」となり、例えば、腰痛とか肩こりの原因となり得る。
【0030】
このような状況において、本願の第1の発明に係るマットレスのように、長手方向の三つのゾーンZ1、Z2、Z3において、該各ゾーンZ1、Z2、Z3の弾性反発度を、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーンZ1が高く、該第1ゾーンZ1の両側に位置する第2ゾーンZ2と第3ゾーンZ3が共に低くなるように、マットレス全体の弾性反発度を調整がされていれば、仰臥姿勢及び横臥姿勢において最も突出する臀部がマットレスにおいて最も弾性反発度が高い第1ゾーンZ1に対応する、即ち、マットレスの弾性反発度の分布と人体の突出部位とが対応し、マットレスが体の凹凸に沿って弾性変形することで最適な体圧分散作用が得られ、その結果、高い安眠性・快眠性が得られるとともに、褥瘡防止効果の高いマットレスを提供することができることになる。
【0031】
なお、この発明では、マットレス1の長手方向に少なくとも三つのゾーンZ1、Z2、Z3を設定したものであって、この発明における弾性反発度の分布状態が確保される限り、ゾーン数を増加設定し得ることは勿論である。また、この発明では、マットレス1の少なくとも一面に上述のような弾性反発度の分布状態を適用したものであって、係る構成をマットレス1の表裏両面に適用し得ることも勿論である。これらの点は、次述の第2の発明においても同様である。
【0032】
(b)本願の第2の発明
本願の第2の発明に係るマットレスによれば、平面長矩形の発泡成形体2で構成されたマットレスにおいて、該発泡成形体2の一面を、少なくともその長手方向に三つのゾーンZ4、Z5、Z6に区画するとともに、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーンZ4を上記長手方向に長軸又は短軸を持つ菱形形状とし、これら各ゾーンZ4、Z5、Z6の弾性反発度を、上記第1ゾーンZ4が高く、該第1ゾーンZ4の両側に位置する第2ゾーンZ5と第3ゾーンZ6がともに低くなるように調整をしているので、寝姿勢の如何に拘らず身体の特定部位への体圧集中が防止され、最適な体圧分散作用によって、高い安眠性・快眠性が得られるとともに、褥瘡防止効果の高いマットレスを提供することができる。
【0033】
即ち、人の寝姿勢を考察すると、例えば、図9に示すように、マットレス1上で仰臥姿勢にある人40が、右又は左に寝返って横臥姿勢となった場合(符号40a、40b参照)のほか、通常の仰臥姿勢時及び仰臥姿勢時においても、その腰部43及び臀部44は上記マットレス1上に設定された菱形の第1ゾーンZ4内に位置し、この第1ゾーンZ4から外れることはない。また、肩部42は第2ゾーンZ5に、腕部45は第3ゾーンZ6にそれぞれ位置する。
【0034】
また、図10には、寝返り姿勢を含む様々な寝姿勢と、その場合における身体中心軸(白丸で示す肩部42と、黒丸で示す腰部43及び臀部44と、黒四角で示す踵部45を結んだ曲線)を示しているが、これら何れの寝姿勢においても、人の腰部43及び臀部44は菱形の第1ゾーンZ4内に位置し、肩部42は第2ゾーンZ5内に位置し、踵部45は第3ゾーンZ6内に位置することがわかる。
【0035】
従って、仰臥姿勢及び横臥姿勢において最も突出する腰部43及び臀部44は、これが弾性反発度の高い第1ゾーンZ4に対応することで、これら腰部43及び臀部44部分における過度の沈み込みが抑制され、体圧分散作用が促進される。また、横臥姿勢において突出しこれが突っ張ることで身体中心軸を大きく変形させる原因となる肩部42は、これが弾性反発度の低い第2ゾーンZ5に対応することで、この肩部42部分が適度に沈み込み、これによって身体中心軸の変形(マットレス1の厚さ方向への変形)が抑制される。この結果、頭書の効果、即ち、この発明のように、各ゾーンZ4、Z5、Z6の弾性反発度を、第1ゾーンZ4が高く、該第1ゾーンZ4の両側に位置する第2ゾーンZ5と第3ゾーンZ6がともに低くなるように調整することで、寝姿勢の如何に拘らず身体の特定部位への体圧集中が防止され、最適な体圧分散作用によって、高い安眠性・快眠性が得られるとともに、褥瘡防止効果の高いマットレスを提供することができることになる。
【0036】
(c)本願の第3の発明
本願の第3の発明に係るマットレスによれば、平面長矩形の発泡成形体2で構成されたマットレスにおいて、上記発泡成形体2の一方の面2aには上記第1の発明に係る構成を適用し、他方の面2bには上記第2の発明に係る構成を適用したので、上記(a)に記載の第1の発明によって得られる効果と上記(b)に記載の第2の発明によって得られる効果が、これらの相乗作用によってより一層高められ、延いてはマットレスの商品価値がさらに向上することになる。
【0037】
また、上記発泡成形体2の一方の面2a側における弾性反発度とその分布状態と、他方の面2b側における弾性反発度とその分布状態の組み合わせを適宜変更することで、マットレス全体としての体圧分散作用とか褥瘡防止効果の多様化が可能であり、ユーザニーズへの適用性の高いマットレスを提供できる。
【0038】
(d)本願の第4の発明
本願の第4の発明に係るマットレスによれば、上記(a)、(b)又は(c)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記発泡成形体2にその厚さ方向へ延びる未貫通の凹孔3、4、5を多数設け、該各凹孔3、4、5の大きさ及び/又は配置パターンの設定によって弾性反発度を調整するようにしているので、例えば、素材の選択によって弾性反発度を調整するものに比して、弾性反発度を容易かつ安価に行うことができ、マットレスの低廉化が促進される。
【0039】
また、上記凹孔3、4、5がマットレスの厚さ方向において未貫通であるため、例えば、マットレスの上面側に水が溢されてもこれが裏面側まで流れることがなく上面側のみでの処理することができるので、特にマットレス上への尿漏れ等が想定される看護・介護用マットレスにおいては看護・介護作業の簡便化とか労力軽減という点において有用である。
【0040】
(e)本願の第5の発明
本願の第5の発明に係るマットレスによれば、上記(a)、(b)、(c)又は(d)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、マットレス載置面上への載置状態で上記発泡成形体2の表面がその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜するように構成しているので、身体中心軸の折れ曲がりが抑制され、例えば、腰痛とか肩こりの解消が図られる。
【0041】
即ち、人がマットレス上に仰臥姿勢で寝るときも、横臥姿勢で寝るときも、身体各部の重さの違いによって、踵部→臀部→背から肩部→頭部の順に沈み込みが大きくなり、その結果、身体下部から身体上部に向けて体全体が下向傾斜することになる(図7(ハ)の線「L3」、図8(ロ)の線「L3」 参照)。この身体の下向傾斜によって身体中心軸の折れ曲がりが助長され、肩から首の部分への圧迫が大きくなり、結果的に、体圧分散作用が損なわれ、腰痛とか肩こりが生じ易くなるものである。
【0042】
この場合、この身体の傾斜現象を見越して、上記発泡成形体2の表面をその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜するように構成し、低位側に踵部が位置し、高位側に頭部が位置するようにして寝ることで、身体中心軸が可及的に水平に近づき、良好な体圧分散作用が得られることで、腰痛とか肩こりの解消が図られるものである。
【0043】
(f)本願の第6の発明
本願の第6の発明に係るマットレスによれば、上記(a)、(b)、(c)、(d)又は(e)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記発泡成形体2を天然ゴムの発泡成形品で構成しているので、この発泡成形品2の素材特性が、マットレスの性能向上に貢献し、商品価値がより一層高いマットレスの提供が実現される。
【0044】
第1には、体圧分散作用の促進効果である。元来、天然ゴムの発泡成形品においては、人体等の加重体によってある圧力(作用圧力)が掛けられると、その作用圧力に対応して弾性変形する(沈み込み)とともに、この作用圧力と同じ大きさの圧力(返圧)が発泡成形体2から加重体に加えられるという「返圧作用」が知られている。ここで、この作用圧力と弾性変形量の間には、バネの場合と同様に、「作用圧力=弾性係数×弾性変形量」という関係が成立し、この弾性係数が本願発明でいうところの「弾性反発度」に相当する。従って、発泡成形体2の弾性反発度を適宜調整することで、該発泡成形体2の過度の沈み込みを抑制して、例えば、寝姿勢を立位状態の姿勢(即ち、理想的な寝姿勢)に可及的に近づけることがで、これによって、高い体圧分散作用をもつマットレスを提供できる。
【0045】
第2に、マットレスの耐久性の向上効果である。即ち、天然ゴムには、圧縮変形による残留応力が合成樹脂等に比して極めて小さいという特性があるため、マットレスを天然ゴムの発泡成形体で構成したことで、長期の使用に拘らず残留応力に起因する「へたり」がほとんど発生せず、この結果、医療用とか介護用のマットレスに要求される耐久性に優れたマットレスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】 本願発明の実施の形態に係るマットレスの表面側からの斜視図である。
【図2】 上記マットレスの裏面側からの斜視図である。
【図3】 図1のIII−III要部拡大断面図である。
【図4】 マットレスの表面側及び裏面側における弾性反発度の分布状態図である。
【図5】 マットレスの表裏両面の弾性反発度の分布状態を重ね合わせたマットレス全体としての弾性反発度の分布状態図である。
【図6】 立位姿勢における身体中心軸及び身体曲線の説明図である。
【図7】 マットレスに仰臥した状態における身体中心軸等の状態説明図である。
【図8】 マットレスに横臥した状態における身体中心軸等の状態説明図である。上記マットレスの硬さ領域と仰臥姿勢にある人体との相対関係図である。
【図9】 マットレスの各ゾーンと人体の相対的な位置関係の説明図である。
【図10】 様々な寝姿勢におけるマットレスの各ゾーンと人体の相対的な位置関係の説明図である。
【図11】 マットレスの体圧分散の検証データ図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0048】
図1には本願発明の実施形態に係るマットレス1の表面1a側を、図2には該マットレス1の裏面1b側を、それぞれ示している。このマットレス1は、特に医療用とか介護用として使用されるに好適なマットレスであって、素材面と形体面の双方において特徴的な技術思想をもつものである。以下、これらを個別に説明する。
【0049】
A:素材面での技術的思想
この実施形態においては、上記マットレス1を、天然ゴムを水と空気だけで発泡させてなる発泡成形体2で構成し、所定厚さをもつ平面長矩形の形状に成形している。このように天然ゴムの発泡成形体を用いてマットレス1を製作したのは、天然ゴムに特有の性状をマットレス1の性能向上に寄与させ、高性能のマットレスを得るためである。具体的には、体圧分散作用の向上と耐久性の向上を意図している。
【0050】
「体圧分散作用の向上」
天然ゴムの発泡成形品においては、「返圧作用」があり、且つこの「返圧作用」においては「作用圧力=弾性係数×弾性変形量」という関係が成立し、この弾性係数が本願発明でいうところの「弾性反発度」に相当する。そして、発泡成形体2の弾性反発度を適宜調整することで、該発泡成形体2の過度の沈み込みを抑制して、例えば、寝姿勢を立位状態の姿勢(即ち、理想的な寝姿勢)に可及的に近づけることができ、これによって、高い体圧分散作用をもつマットレスを提供できることは既述の通りである。ここで重要な事項は、発泡成形体2の弾性反発度の調整手法であり、この実施形態においては上記発泡成形体2にその厚さ方向へ延びる未貫通の凹孔を多数設け、該各凹孔の大きさ及び/又は配置パターンを設定することによって弾性反発度を調整する手法を採用しており、この具体的な内容については後述する。
【0051】
「耐久性の向上効果」
発泡成形体の「へたり」とは、該発泡成形体に圧縮力が継続的に、あるいは反復的にかけられることで、弾性復元性が次第に低下する現象であり、その主たる原因は発泡成形体2の圧縮変形による残留応力であって、この残留応力が大きいほど「へたり」の進行が早くその耐久性が低下するということである。ここで、天然ゴムには、圧縮変形による残留応力が合成樹脂等に比して極めて小さいという特性がある。このため、マットレスを天然ゴムの発泡成形体で構成することで、長期の使用に拘らず残留応力に起因する「へたり」がほとんど発生せず、この結果、医療用とか介護用のマットレスに要求される耐久性に優れたマットレスを提供できることになる。
【0052】
B:形体面での技術的思想
上記マットレス1の形体面での特徴点は三つあり、
第1の特徴点は、マットレス1(即ち、発泡成形体2)の弾性反発度の調整を、該発泡成形体2に設けた孔の大きさを異ならせることと、孔の配置パターンの設定によって行うようにした点であり、
第2の特徴点は、マットレス1の表面1a(即ち、発泡成形体2の表面2a)と裏面1b(即ち、発泡成形体2の裏面2b)の構造を異ならせ、両者の共働によって性能の多様化が図れるようにした点であり、
第3の特徴点は、マットレス1の厚さを、その長手方向の一端側から他端側へ向けて漸増させて、該マットレス1をベッド床面等の載置面上に載置した状態において、該マットレス1の表面1aがその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜するようにした点である。以下、これら各点について具体的に説明する。
【0053】
B−1:第1及び第2の特徴点について
ここでは、上記第1の特徴点と第2の特徴点は、相互に関連し一体不可分の構成であるため、これらまとめて説明する。
【0054】
上記マットレス1は、天然ゴムを水と空気だけで発泡させてなる発泡成形体2で構成され、その形体は、図1及び図2に示すように、所定厚さで且つ平面長矩形とされている。そして、この発泡成形体2の表面2aと裏面2bには、図3に示すように、その表面側から厚さ方向中心側へ向けて凹入する凹孔3,4,5が設けられており、この凹孔3,4,5の大きさ(孔径)と配置パターンを適宜設定することで、該発泡成形体2の表面2a側における弾性反発度の分布状態と裏面2b側における弾性反発度の分布状態がそれぞれ個別に設定され、さらにはこの表面2a側の弾性反発度の分布状態と裏面2b側における弾性反発度の分布状態を組み合わせた状態での上記発泡成形体2全体としての弾性反発度の分布状態が設定される。
【0055】
なお、この実施形態においては、上記凹孔として、径寸法が異なる三種類の凹孔を規定し、これらのうち最も径寸法の小さい凹孔を第1凹孔3とし、最も径寸法の大きい凹孔を第3凹孔5とし、これら二つの凹孔3,5の中間の孔径を持つ凹孔を第2凹孔4としており、これら各3,4,5を適宜組み合わせるようにしている。
【0056】
ここで、上記発泡成形体2の表面2aと裏面2bのそれぞれにおける弾性反発度の分布状態及び係る分布状態を得るための具体的構造について説明する。
【0057】
B−1−a:発泡成形体2の表面2a側の構成
上記発泡成形体2の表面2a側は、図1に示すように、該発泡成形体2の全域がその長手方向に三つのゾーン、即ち、長手方向の中央部分に位置する第1ゾーンZ1と、該第1ゾーンZ1を挟んでその両側にそれぞれ位置する第2ゾーンZ2と第3ゾーンZ3に仮想的に区画されている。なお、上記各ゾーンZ1〜Z3の発泡成形体発泡成形体2の長手方向における幅寸法は、上記第1ゾーンZ1が最も小さく、上記第2ゾーンZ2と第3ゾーンZ3は同一の幅寸法をもち且つその大きさは上記第1ゾーンZ1の幅寸法よりも大きくなるように設定されている。
【0058】
さらに、この実施形態では、上記第1ゾーンZ1の奥行方向の略中央部に、細幅で上記発泡成形体2の長手方向に延びる第1小ゾーンZ7と、該第1小ゾーンZ7をその幅方向に両側から挟んで上記発泡成形体2の長手方向に延びる第2小ゾーンZ8を設定している。
【0059】
そして、上記第1小ゾーンZ7及び第2小ゾーンZ8を除く上記第1ゾーンZ1には、小径の第1凹孔3を所定ピッチで多数形成している。上記第2ゾーンZ2及び第3ゾーンZ3には、中間の孔径をもつ第2凹孔4が所定ピッチで多数形成されている。さらに、上記第1小ゾーンZ7には最も大きな孔径の第3凹孔5が多数形成されている。また、第2小ゾーンZ8には、中間の孔径をもつ第2凹孔4が多数形成されている。
【0060】
この実施形態では、上記各凹孔3〜5はその孔径がそれぞれ異なるが、その配置ピッチは略同等に設定している。従って、各凹孔3〜5の形成によって残された残余部分の平面積は、第1凹孔3が設けられたゾーンが最も大きく、第3凹孔5が設けられたゾーンが最も小さく、第2凹孔4が設けられたゾーンはこれら両者の中間に位置する大きさとされる。そして、この残余部分によって発泡成形体2に加えられる荷重を支持することから、この残余部分の平面積が大きいほど荷重に対する耐力が大きく、従って、その圧縮変形に対する復元力が大きい、即ち、弾性反発度が大きいと言える。
【0061】
なお、弾性反発度という面からみれば、この発泡成形体2の表面2aには、第1凹孔3が形成され弾性反発度の高い「高反発度ゾーン」(図面には「高反発度」と略記する)と、第2凹孔4が形成され弾性反発度が中間の「中反発度ゾーン」(図面には「中反発度」と略記する)と、第3凹孔5が形成され弾性反発度の低い「低反発度ゾーン」(図面には「低反発度」と略記する)の三つのゾーンが存在することになる。
【0062】
以上のことから、この実施形態のマットレス1における発泡成形体2の表面2a側の弾性反発度の分布は、図4(イ)に示すように、高反発度ゾーンである第1ゾーンZ1と、「中反発度ゾーン」である第2ゾーンZ2と第3ゾーンZ3がマットレス1の長手方向に列設されるとともに、該第1ゾーンZ1の奥行き方向の中央部に、「低反発度ゾーン」である第1小ゾーンZ7と、「中反発度ゾーン」である第2小ゾーンZ8が該奥行き方向に列設された分布状態となっている。
【0063】
B−1−b:発泡成形体2の裏面2b側の構成
上記発泡成形体2の裏面2b側は、図2に示すように、該発泡成形体2の長手方向中央部に、この長手方向に長軸をもつ菱形の第1ゾーンZ4と、該第1ゾーンZ4を挟んでその両側に位置する第2ゾーンZ5と第3ゾーンZ6の三つのゾーンに仮想的に区画されている。なお、上記第1ゾーンZ4の形状及び大きさは、後述するように、マットレス1の上で人が寝る場合にその寝姿勢の如何に拘らず、また寝返りを打った場合でも、人の臀部とか腰部がこの菱形の第1ゾーンZ4から外れることがないような形状及び大きさに設定されている。
【0064】
そして、上記第1ゾーンZ4には、小径の第1凹孔3を所定ピッチで多数形成している。上記第2ゾーンZ5及び第3ゾーンZ6には、大径の第3凹孔5が所定ピッチで多数形成されている。なお、上記各凹孔3〜5の孔径と該各凹孔3〜5が集合してなる各ゾーンの弾性反発度との相関は、上記発泡成形体2の表面2a側における場合と同様である。
【0065】
なお、弾性反発度という面からみれば、この発泡成形体2の裏面2bには、第1凹孔3が形成され弾性反発度の高い「高反発度ゾーン」と、第3凹孔5が形成され弾性反発度の低い「低反発度ゾーン」の二つのゾーンが存在することになる。
【0066】
以上のことから、この実施形態のマットレス1における発泡成形体2の裏面2b側の弾性反発度の分布は、図4(ハ)に示すように、長手方向中央に高反発度ゾーンである菱形の第1ゾーンZ4が位置し、この第1ゾーンZ4を長手方向両側から挟むようにして、低反発度ゾーンである第2ゾーンZ5と第3ゾーンZ6が位置する分布状態となっている。
【0067】
B−1−c:発泡成形体全体としての弾性反発度の分布状態
上記発泡成形体2全体としての弾性反発度の分布状態は、該発泡成形体2の表面2a側の弾性反発度の分布状態と、裏面2b側の弾性反発度の分布状態を重ね合わせることで得られる。図5には、この発泡成形体2全体としての弾性反発度の分布状態を示している。
【0068】
発泡成形体2の表面2aのゾーン配置と裏面2bのゾーン配置の重ね合わせから、図5に示すように、発泡成形体2全体としての弾性反発度の分布状態は、発泡成形体2の長手方向中央に位置するゾーンAと、該ゾーンAの長手方向両側に在って上記発泡成形体2の裏面2b側の上記第1ゾーンZ4の長軸方向の両端部にそれぞれ対応する左右一対のゾーンB、Bと、該ゾーンBの長手方向外側に隣接する左右一対のゾーンC、C、並びに上記ゾーンAの幅方向中央部に位置するゾーンDと該ゾーンDの両側に位置するゾーンE、Eを備えたものとなっている。
【0069】
ここで、図5の各ゾーンに付した数値は、各ゾーンの弾性反発度を便宜的に数値化したものである。即ち、弾性反発度を三段階に分けて、「高弾性反発度:1」、「中弾性反発度:1.5」、「低弾性反発度:2」として数値表示する。そして、図5に示した各ゾーンA〜Fが、上記発泡成形体2の表面2a側の各ゾーンZ1〜Z3,Z7,Z8と、裏面2b側の各ゾーンZ4〜Z6の如何なる組み合わせによって構成されているかを考慮して各ゾーンの弾性反発度を数値で示した。
【0070】
即ち、ゾーンAは、発泡成形体2表面2aの第1ゾーンZ1と裏面2b側の第1ゾーンZ4の重ね合わせで得られるゾーンであって、上記第1ゾーンZ1の弾性反発度が「1」、上記第1ゾーンZ4の弾性反発度も「1」であるため、ゾーンAの弾性反発度は「2」となる。ゾーンBは、発泡成形体2表面2aの第2ゾーンZ2と裏面2b側の第1ゾーンZ4の重ね合わせで得られるゾーンであって、上記第2ゾーンZ2の弾性反発度が「1.5」、上記第1ゾーンZ4の弾性反発度が「1」であるため、ゾーンAの弾性反発度は「2.5」となる。以下、同様にして、上記ゾーンCの弾性反発度は「3.5」、ゾーンDは「3」、ゾーンEは「3」となる。
【0071】
この結果、発泡成形体2全体として考えた場合、最も弾性反発度が高い(即ち、体圧による沈み込みが少ない)のは、ゾーンAで、次にゾーンB,ゾーンCと順次弾性反発度が低下する(即ち、順次、体圧による沈み込みが大きくなる)。また、ゾーンAと該ゾーンA内に設定されたゾーンD及びゾーンEの三者間においては、ゾーンDが最も弾性反発度が低く、体圧による沈み込みが大きい。そして、ゾーンDからゾーンE、さらにゾーンAへと移行するに伴って順次弾性反発度が高くなり、体圧による沈み込みが小さくなる。
【0072】
B−2:第3の特徴点について
第3の特徴点は、マットレス1の厚さを、その長手方向の一端側から他端側へ向けて漸増させて、該マットレス1をベッド床面等の載置面上に載置した状態において、該マットレス1の表面1aをその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜させる点である。具体的には、図1及び図2に鎖線図示(符号1´)するように、上記マットレス1の厚さをその一端側から他端側に向かって次第に増加させることが考えられる。
【0073】
ただし、このようなマットレス1の厚さ調整による傾斜確保手法に限定されるものではなく、マットレス1の厚さ調整に依らずに、マットレス1を載置した状態においてその表面1aがその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜するような手段を講じることも考えられる。例えば、マットレス1の厚さをその全域で均等とした上で、このマットレス1が載置される載置面を傾斜面とする(例えば、ベッド床が傾斜調整可能なベッドにおいて、このベッド床を傾斜させ、その上にマットレス1を載置する)とか、マットレス1と略水平な載置面の間にスロープ状に形成された載置台を介在させることが考えられる。
【0074】
このように上記マットレス1の表面1a(即ち、上記発泡成形体2の表面2a)をその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜させ、低位側に踵部45が位置し、高位側に頭部41が位置するようにして寝ることで、踵部45より頭部41側が高位に位置し、この高さの差分によって、身体各部の重さの違いによってマットレス1の沈み込みが踵部45から頭部41に向けて次第に増加し体全体が頭部41側に向けて下向傾斜する場合における踵部45と頭部41との高さの差分が相殺され、その結果、身体中心軸が可及的に水平に近づき、良好な体圧分散作用が得られ、これによって腰痛とか肩こりの解消が図られるものである。
【0075】
C:マットレス1の使用形態等
上述のように構成されたマットレス1を使用して睡眠等を行う場合における使用形態及びそれに伴う作用効果等について説明する。
【0076】
図6には、人40の立位姿勢を示している。この立位姿勢においては、身体の中心軸L1が直線状となっている。また、人40の背面側の4ヶ所の突出部分、即ち、頭部、肩甲骨臀部、踵の部分を除いた場合にみられる身体曲線L2は僅かに湾曲している。
【0077】
このような立位姿勢は、最も自然で且つ疲れの少ない安定した理想的な姿勢であって、このような立位姿勢が、図7(イ)に示すように、マットレス1における寝姿勢として保持されれば理想的な寝姿勢となり、高い安眠性あるいは快眠性が得られることは既述の通りである。
【0078】
ここで、「発明の効果」の項における記載と重複する部分もあるが、マットレス1の弾性反発度と人40の寝姿勢との関係を図7〜図11を参照して説明する。
【0079】
C−1:弾性反発度の分布形態と寝姿勢との関係
人40の身体各部のうち、臀部44は仰臥姿勢及び横臥姿勢の双方において最も突出する部位である。従って、例えば、マットレス1の全域においてその弾性反発度が同程度に設定されているとすれば、上記突出する部位に対応するマットレス1の部位、即ち、長手方向中央寄りに位置するゾーンは他のゾーンに比べて大きく沈み込こむことになる。この結果、図7(イ)、図8(イ)に示すように、直線状であることが望ましい身体中心軸「L1」が、図7(ロ)、(ハ)示す「L1a」、図8(ロ)に示す「L1b」のように大きく屈曲することになる。
【0080】
この結果、身体中心軸「L1」が屈曲すると、沈み込みが極大となる仰臥姿勢における臀部あるいは肩部に対応する部位とか、横臥姿勢における臀部に対応する部位が圧迫点となり、褥瘡が発生するおそれがあり、また各圧迫点の中間にあって沈み込みが最も少ない腰部は、身体中心軸が大きく屈曲変化する支点となり、腰痛とか肩こりの原因となり得ることは既述の通りである。
【0081】
係る場合、この実施形態のマットレス1のように、その長手方向中央部に弾性反発度の高いゾーンAを配置するとともに、該ゾーンAの両側に該ゾーンAよりも弾性反発度の低いゾーンBを配置し、さらにこのゾーンBの外側に該ゾーンBよりも弾性反発度が低いゾーンCを配置することで、仰臥姿勢及び横臥姿勢の双方においてに最も突出する臀部が、マットレス1において最も弾性反発度が高いゾーンAに対応するし、マットレス1が過度に沈み込むことなく、体の凹凸に沿って弾性変形することとなり、これによって最適な体圧分散作用が得られ、その結果、高い安眠性・快眠性が得られるとともに、褥瘡防止効果の高いマットレスを提供することができることになる。
【0082】
なお、図11(イ)には、従来のマットレスを使用して仰臥姿勢で寝た場合の体圧分散データを、図11(ロ)には、この実施形態に係るマットレス1を使用して仰臥姿勢で寝た場合の体圧分散データを、それぞれ示している。図11(イ)からは、背面側に突出している頭部と肩甲骨と臀部及び踵部分に体圧が集中しこれらに部位が圧迫点になっていること、及び人型がはっきり見えない画像であることから上記4点で体圧を支えた状態であることが確認される。従って、体圧分散作用が低劣であるといえる。
【0083】
これに対して、図11(ロ)では、局部的な圧迫点がなく、また人型通りに画像を確認できる。このことは、体圧分散作用が高く、身体が理想的な沈み方をしており、従って、身体にかかる負担が軽減されていることを示唆している。
【0084】
ここで、上記マットレス1の上記ゾーンDとゾーンEの作用効果を説明する。人40が仰臥姿勢で寝る場合において褥瘡が最も発生し易い部位は臀部44の双丘間において背筋に沿って延びる仙骨部分である。従って、この仙骨部分における褥瘡の発生を防止抑制あるいは抑制するためには、この仙骨部分への体圧集中を防止すれば効果的である。係る観点から、この実施形態では上記ゾーンDとゾーンEを設け、仙骨部分を弾性反発度が低いゾーンDで支持して体圧集中を防止すると同時に、この仙骨より外側の部分はこれを比較的弾性反発度の高いゾーンEで支持して過度の沈み込みを防止したものである。
C−2:菱形のゾーンAと寝姿勢との関係
【0085】
人の寝姿勢を考察すると、図9に実線図示するように人40がマットレス1上に仰臥姿勢で寝ている場合も、図9に鎖線図示するようにこの仰臥姿勢から右又は左に寝返って横臥姿勢となった場合も、人40の腰部43及び臀部44は、上記マットレス1上に設定されたゾーンA内に位置し、このゾーンAから外れることはない。また、肩部42はゾーンB又はゾーンCに位置している。
【0086】
また、図10には、寝返り姿勢を含む様々な寝姿勢と、その場合における身体中心軸L1(肩部42と、腰部43及び臀部44と、踵部45を結んだ線)を示している。ここに示された多数の寝姿勢の何れにおいても、人40の腰部43及び臀部44はゾーンA内に位置し、肩部42と踵部45はゾーンC内に位置することがわかる。
【0087】
従って、仰臥姿勢及び横臥姿勢において最も突出する腰部43及び臀部44は、これが弾性反発度の高いゾーンAに対応することで、これらの部分におけるマットレス1の過度の沈み込みが抑制され、体圧分散作用が促進される。また、横臥姿勢において突出しこれが突っ張ることで身体中心軸を大きく変形させる原因となる肩部42は、これが弾性反発度の低いゾーンCに対応することで、この肩部42の部分が適度に沈み込み、これによって身体中心軸L1の変形(マットレス1の厚さ方向への変形)が抑制される。
【0088】
この結果、寝姿勢の如何に拘らず身体の特定部位への体圧集中が防止され、最適な体圧分散作用によって、高い安眠性・快眠性が得られるとともに、褥瘡防止効果の高いマットレスを提供することができることになる。
【符号の説明】
【0089】
1 ・・マットレス
2 ・・発泡成形体
3 ・・第1凹孔
4 ・・第2凹孔
5 ・・第3凹孔
【技術分野】
【0001】
本願発明は、発泡成形体で構成され、特に医療用とか介護用として用いるに好適なマットレスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人は、マットレスを用いて睡眠する場合、マットレス上に仰臥あるいは横臥したとき該マットレスの弾性変形によって自然発生的に「理想的な睡眠姿勢」が確保され、該睡眠姿勢に由来する良好な寝心地の下で、高い安眠性あるいは快眠性が得られることを欲する。ここで、理想的な睡眠姿勢とは、立位の姿勢に可及的に近い姿勢であると言われている。
【0003】
また、マットレスの使用は長期に亘るため、係る長期の使用においても「へたり」が少なく、「理想的な睡眠姿勢」を長期間維持できるような耐久性を持つことも要求される。
【0004】
さらに、マットレスの中でも、特に医療用とか介護用として使用されるマットレスにおいては、人が長時間同じ寝姿勢を保ったままマットレス上で寝続けることが多く、そのため身体の特定部位への体圧集中による褥瘡(床ずれ)を防止する観点から、良好な体圧分散機能を備えることが要求される。
【0005】
一方、このような医療用とか介護用として使用されるマットレスにおいては、看護作業とか介護作業における看護者、介護者の労的な負担の軽減という普遍的な要求が存在し、これが偏重された結果、理想的な睡眠姿勢の確保とか、身体の特定部位への体圧集中の抑制等のマットレス使用者の利益面への配慮が幾分犠牲にされていることも否めない。
【0006】
このようなマットレスにおける様々な課題に対処し得るマットレスとして、従来から種々の提案がなされている(特許文献1〜4参照)。
【0007】
特許文献1には、天然ゴム発泡体でマットレスを形成するとともに、発泡作用により発泡体中に形成される孔(発泡腔)の深さを体圧の大きさに対応して微妙に変化させることで、マットレスの過度の沈み込みを抑制し、体圧分散を促進して褥瘡予防効果を得るようにした技術が提案されている。
【0008】
特許文献2には、合成樹脂発泡体よりなる基部と、該基部上に立設された多数の突部とからなるマットレスにおいて、長手方向中央部における基部の横断面積を、長手方向両端部における基部の横断面積よりも大きくすることで、マットレスの硬さを調整し、過度の沈み込みを防止し、これによって背骨に負担の掛らない安眠性を実現する技術が提案されている。
【0009】
特許文献3には、軟質の発泡体、例えば、天然ゴムの発泡体からなるマットレスに厚さ方向の穴を多数設け、この穴の深さを部位に応じて変えることによって、マットレスの反発力を変化させ、これによって沈み込み易い腰部に当接する領域の反発力を強くして身体を適度に支持し、背筋の伸びた睡眠姿勢を確保する技術が提案されている。
【0010】
特許文献4には、ウレタン樹脂よりなる発泡体から形成されるマットレスにおいて、厚さ方向に複数の孔を形成し、この孔の形成によって得られる柱で体圧を支持することで、体圧の掛る方向へ柱が倒れて孔側へ体圧を逃がし、これによって褥瘡予防を図る技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】 特開2007−185235号公報
【特許文献2】 特開2000−93263号公報
【特許文献3】 特開2005−118097号公報
【特許文献4】 特開2001−25425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、特許文献1に示されるマットレスにおいては、発泡作用により発泡体中に形成される孔(発泡腔)の深さを体圧の大きさに対応して微妙に変化させ、これによって体圧分散作用を高めるとしているが、係る発泡体中での孔の深さの管理は極めて難しく、実現性に乏しいものである。
【0013】
特許文献2に示されるマットレスでは、マットレスの長手方向中央部における基部の横断面積と、長手方向両端部における基部の横断面積とに差を持たせることでマットレスの硬さを調整し、これによって体圧分散作用を高めるようにしているが、上記各基部が相互に独立した構成であって該各基部間を拘束する機能を持たないことから、該基部がこれに掛る体圧によって無秩序に倒れ変形し、本来想定した基部の横断面積を変化させることによる体圧分散作用の確実性が損なわれ、結果的に所期の目的を達し得ないものとなる。
【0014】
また、マットレスが合成樹脂発泡体で構成されており、該合成樹脂発泡体の性状からして、マットレスを圧縮した場合の圧縮残留応力が大きく、使用継続によって「へたり」が生じ易いなど、その耐久性においても問題がある。
【0015】
特許文献3に示されるマットレスでは、天然ゴムの発泡体からなるからなるマットレス設けた穴の深さをマットレスの部位に応じて(具体的には、マットレスに寝た状態における人体の凹凸形状に対応して)変えることでマットレスの反発力を変化させるようにしているが、上記穴をマットレスの裏面側にのみ設ける構成であるため該マットレスの全域における反発力調整の自由度が低く、十分な体圧分散作用を得ることが難しい。
【0016】
特許文献4に示されるマットレスでは、マットレスの厚さ方向に複数の孔を形成することで得られた複数の柱で体圧を支持し、この柱の倒れ方向に体圧を逃がすようにしており、その場合の力の作用方向を模式的に示している(図3、図12参照)。しかしながら、実際的には、マットレスは床面上に載置されその裏面は平面状態が維持されるため、体圧を受けた場合、マットレスの裏面は平面状態に拘束されたまま、その上面側のみが身体形状に沿って凹入変形することになり、このマットレスの変形形態を勘案すれば、「柱の倒れ方向に体圧を逃がす」という作用効果の実現性には疑問がある。
【0017】
そこで本願発明は、上掲の従来技術の問題点に鑑み、理想的な睡眠姿勢の確保と良好な体圧分散作用の確保を両立するとともに、耐久性に優れたマットレスを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0019】
本願の第1の発明では、平面長矩形の発泡成形体2で構成されたマットレスにおいて、該発泡成形体2の一面を少なくともその長手方向に三つのゾーンZ1、Z2、Z3に区画するとともに、該各ゾーンZ1、Z2、Z3の弾性反発度を、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーンZ1が高く、該第1ゾーンZ1の両側に位置する第2ゾーンZ2と第3ゾーンZ3がともに低くなるように調整をしたことを特徴としている。
【0020】
本願の第2の発明では、平面長矩形の発泡成形体2で構成されたマットレスにおいて、該発泡成形体2の一面を少なくともその長手方向に三つのゾーンZ4、Z5、Z6に区画するとともに、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーンZ4を上記長手方向に長軸又は短軸を持つ菱形形状とし、これら各ゾーンZ4、Z5、Z6の弾性反発度を、上記第1ゾーンZ4が高く、該第1ゾーンZ4の両側に位置する第2ゾーンZ5と第3ゾーンZ6がともに低くなるように調整をしたことを特徴としている。
【0021】
本願の第3の発明では、平面長矩形の発泡成形体2で構成されたマットレスにおいて、上記発泡成形体2の一方の面2aには上記第1の発明に係る構成を適用し、他方の面2bには上記第2の発明に係る構成を適用したことを特徴としている。
【0022】
本願の第4の発明では、上記第1、第2又は第3の発明の発明に係るマットレスにおいて、上記発泡成形体2にその厚さ方向へ延びる未貫通の凹孔3、4、5を多数設け、該各凹孔3、4、5の大きさ及び/又は配置パターンの設定によって弾性反発度を調整することを特徴としている。
【0023】
本願の第5の発明では、上記第1、第2、第3又は第4の発明に係るマットレスにおいて、マットレス載置面上への載置状態で上記発泡成形体2の表面がその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜するようにしたことを特徴としている。
【0024】
本願の第6の発明では、上記第1、第2、第3、第4又は第5の発明の発明に係るマットレスにおいて、上記発泡成形体2を、天然ゴムの発泡成形品で構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0026】
(a)本願の第1の発明
本願の第1の発明に係るマットレスでは、発泡成形体2の一面を少なくともその長手方向に三つのゾーンZ1、Z2、Z3に区画するとともに、該各ゾーンZ1、Z2、Z3の弾性反発度を、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーンZ1が高く、該第1ゾーンZ1の両側に位置する第2ゾーンZ2と第3ゾーンZ3が共に低くなるように調整をしているので、体の凹凸に対応した最適な体圧分散作用が得られ、その結果、高い安眠性・快眠性が得られるとともに、褥瘡防止効果の高いマットレスを提供することができる。
【0027】
即ち、身体各部のうち、臀部は仰臥姿勢及び横臥姿勢の双方において最も突出する部位である。従って、例えば、マットレスの全域においてその弾性反発度が同程度に設定されているとすれば、上記突出する部位に対応するマットレスの部位、即ち、長手方向中央寄りに位置するゾーンは他のゾーンに比べて大きく沈み込こむことになる。この結果、本来、直線状であることが望ましい身体の中心軸(図6の線「L1」、図7(イ)の線「L1」、図8(イ)の線「L1」参照)が、この過度の沈み込みの影響を受けて大きく屈曲することになる(図7(ロ)及び(ハ)の線「L1a」、図8(ロ)の線「L1b」参照)。
【0028】
このように、身体の中心軸が屈曲すると、沈み込みが極大となる位置、即ち、仰臥姿勢にあっては、図7の(ロ)、(ハ)に示すように、臀部あるいは肩部に対応する部位、横臥姿勢にあっては、図8の(ロ)に示すように、臀部に対応する部位は、大きな圧迫力が作用する「圧迫点」となり、例えば、長期の使用の間に圧迫痛みとか血行不順が発生し、究極的には褥瘡(床ずれ)が発生する原因となることが懸念される。
【0029】
また、これら各圧迫点及びこれら各圧迫点の中間にあって沈み込みが最も少ない腰部は、身体中心軸が大きく屈曲変化する「支点」となり、例えば、腰痛とか肩こりの原因となり得る。
【0030】
このような状況において、本願の第1の発明に係るマットレスのように、長手方向の三つのゾーンZ1、Z2、Z3において、該各ゾーンZ1、Z2、Z3の弾性反発度を、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーンZ1が高く、該第1ゾーンZ1の両側に位置する第2ゾーンZ2と第3ゾーンZ3が共に低くなるように、マットレス全体の弾性反発度を調整がされていれば、仰臥姿勢及び横臥姿勢において最も突出する臀部がマットレスにおいて最も弾性反発度が高い第1ゾーンZ1に対応する、即ち、マットレスの弾性反発度の分布と人体の突出部位とが対応し、マットレスが体の凹凸に沿って弾性変形することで最適な体圧分散作用が得られ、その結果、高い安眠性・快眠性が得られるとともに、褥瘡防止効果の高いマットレスを提供することができることになる。
【0031】
なお、この発明では、マットレス1の長手方向に少なくとも三つのゾーンZ1、Z2、Z3を設定したものであって、この発明における弾性反発度の分布状態が確保される限り、ゾーン数を増加設定し得ることは勿論である。また、この発明では、マットレス1の少なくとも一面に上述のような弾性反発度の分布状態を適用したものであって、係る構成をマットレス1の表裏両面に適用し得ることも勿論である。これらの点は、次述の第2の発明においても同様である。
【0032】
(b)本願の第2の発明
本願の第2の発明に係るマットレスによれば、平面長矩形の発泡成形体2で構成されたマットレスにおいて、該発泡成形体2の一面を、少なくともその長手方向に三つのゾーンZ4、Z5、Z6に区画するとともに、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーンZ4を上記長手方向に長軸又は短軸を持つ菱形形状とし、これら各ゾーンZ4、Z5、Z6の弾性反発度を、上記第1ゾーンZ4が高く、該第1ゾーンZ4の両側に位置する第2ゾーンZ5と第3ゾーンZ6がともに低くなるように調整をしているので、寝姿勢の如何に拘らず身体の特定部位への体圧集中が防止され、最適な体圧分散作用によって、高い安眠性・快眠性が得られるとともに、褥瘡防止効果の高いマットレスを提供することができる。
【0033】
即ち、人の寝姿勢を考察すると、例えば、図9に示すように、マットレス1上で仰臥姿勢にある人40が、右又は左に寝返って横臥姿勢となった場合(符号40a、40b参照)のほか、通常の仰臥姿勢時及び仰臥姿勢時においても、その腰部43及び臀部44は上記マットレス1上に設定された菱形の第1ゾーンZ4内に位置し、この第1ゾーンZ4から外れることはない。また、肩部42は第2ゾーンZ5に、腕部45は第3ゾーンZ6にそれぞれ位置する。
【0034】
また、図10には、寝返り姿勢を含む様々な寝姿勢と、その場合における身体中心軸(白丸で示す肩部42と、黒丸で示す腰部43及び臀部44と、黒四角で示す踵部45を結んだ曲線)を示しているが、これら何れの寝姿勢においても、人の腰部43及び臀部44は菱形の第1ゾーンZ4内に位置し、肩部42は第2ゾーンZ5内に位置し、踵部45は第3ゾーンZ6内に位置することがわかる。
【0035】
従って、仰臥姿勢及び横臥姿勢において最も突出する腰部43及び臀部44は、これが弾性反発度の高い第1ゾーンZ4に対応することで、これら腰部43及び臀部44部分における過度の沈み込みが抑制され、体圧分散作用が促進される。また、横臥姿勢において突出しこれが突っ張ることで身体中心軸を大きく変形させる原因となる肩部42は、これが弾性反発度の低い第2ゾーンZ5に対応することで、この肩部42部分が適度に沈み込み、これによって身体中心軸の変形(マットレス1の厚さ方向への変形)が抑制される。この結果、頭書の効果、即ち、この発明のように、各ゾーンZ4、Z5、Z6の弾性反発度を、第1ゾーンZ4が高く、該第1ゾーンZ4の両側に位置する第2ゾーンZ5と第3ゾーンZ6がともに低くなるように調整することで、寝姿勢の如何に拘らず身体の特定部位への体圧集中が防止され、最適な体圧分散作用によって、高い安眠性・快眠性が得られるとともに、褥瘡防止効果の高いマットレスを提供することができることになる。
【0036】
(c)本願の第3の発明
本願の第3の発明に係るマットレスによれば、平面長矩形の発泡成形体2で構成されたマットレスにおいて、上記発泡成形体2の一方の面2aには上記第1の発明に係る構成を適用し、他方の面2bには上記第2の発明に係る構成を適用したので、上記(a)に記載の第1の発明によって得られる効果と上記(b)に記載の第2の発明によって得られる効果が、これらの相乗作用によってより一層高められ、延いてはマットレスの商品価値がさらに向上することになる。
【0037】
また、上記発泡成形体2の一方の面2a側における弾性反発度とその分布状態と、他方の面2b側における弾性反発度とその分布状態の組み合わせを適宜変更することで、マットレス全体としての体圧分散作用とか褥瘡防止効果の多様化が可能であり、ユーザニーズへの適用性の高いマットレスを提供できる。
【0038】
(d)本願の第4の発明
本願の第4の発明に係るマットレスによれば、上記(a)、(b)又は(c)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記発泡成形体2にその厚さ方向へ延びる未貫通の凹孔3、4、5を多数設け、該各凹孔3、4、5の大きさ及び/又は配置パターンの設定によって弾性反発度を調整するようにしているので、例えば、素材の選択によって弾性反発度を調整するものに比して、弾性反発度を容易かつ安価に行うことができ、マットレスの低廉化が促進される。
【0039】
また、上記凹孔3、4、5がマットレスの厚さ方向において未貫通であるため、例えば、マットレスの上面側に水が溢されてもこれが裏面側まで流れることがなく上面側のみでの処理することができるので、特にマットレス上への尿漏れ等が想定される看護・介護用マットレスにおいては看護・介護作業の簡便化とか労力軽減という点において有用である。
【0040】
(e)本願の第5の発明
本願の第5の発明に係るマットレスによれば、上記(a)、(b)、(c)又は(d)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、マットレス載置面上への載置状態で上記発泡成形体2の表面がその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜するように構成しているので、身体中心軸の折れ曲がりが抑制され、例えば、腰痛とか肩こりの解消が図られる。
【0041】
即ち、人がマットレス上に仰臥姿勢で寝るときも、横臥姿勢で寝るときも、身体各部の重さの違いによって、踵部→臀部→背から肩部→頭部の順に沈み込みが大きくなり、その結果、身体下部から身体上部に向けて体全体が下向傾斜することになる(図7(ハ)の線「L3」、図8(ロ)の線「L3」 参照)。この身体の下向傾斜によって身体中心軸の折れ曲がりが助長され、肩から首の部分への圧迫が大きくなり、結果的に、体圧分散作用が損なわれ、腰痛とか肩こりが生じ易くなるものである。
【0042】
この場合、この身体の傾斜現象を見越して、上記発泡成形体2の表面をその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜するように構成し、低位側に踵部が位置し、高位側に頭部が位置するようにして寝ることで、身体中心軸が可及的に水平に近づき、良好な体圧分散作用が得られることで、腰痛とか肩こりの解消が図られるものである。
【0043】
(f)本願の第6の発明
本願の第6の発明に係るマットレスによれば、上記(a)、(b)、(c)、(d)又は(e)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記発泡成形体2を天然ゴムの発泡成形品で構成しているので、この発泡成形品2の素材特性が、マットレスの性能向上に貢献し、商品価値がより一層高いマットレスの提供が実現される。
【0044】
第1には、体圧分散作用の促進効果である。元来、天然ゴムの発泡成形品においては、人体等の加重体によってある圧力(作用圧力)が掛けられると、その作用圧力に対応して弾性変形する(沈み込み)とともに、この作用圧力と同じ大きさの圧力(返圧)が発泡成形体2から加重体に加えられるという「返圧作用」が知られている。ここで、この作用圧力と弾性変形量の間には、バネの場合と同様に、「作用圧力=弾性係数×弾性変形量」という関係が成立し、この弾性係数が本願発明でいうところの「弾性反発度」に相当する。従って、発泡成形体2の弾性反発度を適宜調整することで、該発泡成形体2の過度の沈み込みを抑制して、例えば、寝姿勢を立位状態の姿勢(即ち、理想的な寝姿勢)に可及的に近づけることがで、これによって、高い体圧分散作用をもつマットレスを提供できる。
【0045】
第2に、マットレスの耐久性の向上効果である。即ち、天然ゴムには、圧縮変形による残留応力が合成樹脂等に比して極めて小さいという特性があるため、マットレスを天然ゴムの発泡成形体で構成したことで、長期の使用に拘らず残留応力に起因する「へたり」がほとんど発生せず、この結果、医療用とか介護用のマットレスに要求される耐久性に優れたマットレスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】 本願発明の実施の形態に係るマットレスの表面側からの斜視図である。
【図2】 上記マットレスの裏面側からの斜視図である。
【図3】 図1のIII−III要部拡大断面図である。
【図4】 マットレスの表面側及び裏面側における弾性反発度の分布状態図である。
【図5】 マットレスの表裏両面の弾性反発度の分布状態を重ね合わせたマットレス全体としての弾性反発度の分布状態図である。
【図6】 立位姿勢における身体中心軸及び身体曲線の説明図である。
【図7】 マットレスに仰臥した状態における身体中心軸等の状態説明図である。
【図8】 マットレスに横臥した状態における身体中心軸等の状態説明図である。上記マットレスの硬さ領域と仰臥姿勢にある人体との相対関係図である。
【図9】 マットレスの各ゾーンと人体の相対的な位置関係の説明図である。
【図10】 様々な寝姿勢におけるマットレスの各ゾーンと人体の相対的な位置関係の説明図である。
【図11】 マットレスの体圧分散の検証データ図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0048】
図1には本願発明の実施形態に係るマットレス1の表面1a側を、図2には該マットレス1の裏面1b側を、それぞれ示している。このマットレス1は、特に医療用とか介護用として使用されるに好適なマットレスであって、素材面と形体面の双方において特徴的な技術思想をもつものである。以下、これらを個別に説明する。
【0049】
A:素材面での技術的思想
この実施形態においては、上記マットレス1を、天然ゴムを水と空気だけで発泡させてなる発泡成形体2で構成し、所定厚さをもつ平面長矩形の形状に成形している。このように天然ゴムの発泡成形体を用いてマットレス1を製作したのは、天然ゴムに特有の性状をマットレス1の性能向上に寄与させ、高性能のマットレスを得るためである。具体的には、体圧分散作用の向上と耐久性の向上を意図している。
【0050】
「体圧分散作用の向上」
天然ゴムの発泡成形品においては、「返圧作用」があり、且つこの「返圧作用」においては「作用圧力=弾性係数×弾性変形量」という関係が成立し、この弾性係数が本願発明でいうところの「弾性反発度」に相当する。そして、発泡成形体2の弾性反発度を適宜調整することで、該発泡成形体2の過度の沈み込みを抑制して、例えば、寝姿勢を立位状態の姿勢(即ち、理想的な寝姿勢)に可及的に近づけることができ、これによって、高い体圧分散作用をもつマットレスを提供できることは既述の通りである。ここで重要な事項は、発泡成形体2の弾性反発度の調整手法であり、この実施形態においては上記発泡成形体2にその厚さ方向へ延びる未貫通の凹孔を多数設け、該各凹孔の大きさ及び/又は配置パターンを設定することによって弾性反発度を調整する手法を採用しており、この具体的な内容については後述する。
【0051】
「耐久性の向上効果」
発泡成形体の「へたり」とは、該発泡成形体に圧縮力が継続的に、あるいは反復的にかけられることで、弾性復元性が次第に低下する現象であり、その主たる原因は発泡成形体2の圧縮変形による残留応力であって、この残留応力が大きいほど「へたり」の進行が早くその耐久性が低下するということである。ここで、天然ゴムには、圧縮変形による残留応力が合成樹脂等に比して極めて小さいという特性がある。このため、マットレスを天然ゴムの発泡成形体で構成することで、長期の使用に拘らず残留応力に起因する「へたり」がほとんど発生せず、この結果、医療用とか介護用のマットレスに要求される耐久性に優れたマットレスを提供できることになる。
【0052】
B:形体面での技術的思想
上記マットレス1の形体面での特徴点は三つあり、
第1の特徴点は、マットレス1(即ち、発泡成形体2)の弾性反発度の調整を、該発泡成形体2に設けた孔の大きさを異ならせることと、孔の配置パターンの設定によって行うようにした点であり、
第2の特徴点は、マットレス1の表面1a(即ち、発泡成形体2の表面2a)と裏面1b(即ち、発泡成形体2の裏面2b)の構造を異ならせ、両者の共働によって性能の多様化が図れるようにした点であり、
第3の特徴点は、マットレス1の厚さを、その長手方向の一端側から他端側へ向けて漸増させて、該マットレス1をベッド床面等の載置面上に載置した状態において、該マットレス1の表面1aがその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜するようにした点である。以下、これら各点について具体的に説明する。
【0053】
B−1:第1及び第2の特徴点について
ここでは、上記第1の特徴点と第2の特徴点は、相互に関連し一体不可分の構成であるため、これらまとめて説明する。
【0054】
上記マットレス1は、天然ゴムを水と空気だけで発泡させてなる発泡成形体2で構成され、その形体は、図1及び図2に示すように、所定厚さで且つ平面長矩形とされている。そして、この発泡成形体2の表面2aと裏面2bには、図3に示すように、その表面側から厚さ方向中心側へ向けて凹入する凹孔3,4,5が設けられており、この凹孔3,4,5の大きさ(孔径)と配置パターンを適宜設定することで、該発泡成形体2の表面2a側における弾性反発度の分布状態と裏面2b側における弾性反発度の分布状態がそれぞれ個別に設定され、さらにはこの表面2a側の弾性反発度の分布状態と裏面2b側における弾性反発度の分布状態を組み合わせた状態での上記発泡成形体2全体としての弾性反発度の分布状態が設定される。
【0055】
なお、この実施形態においては、上記凹孔として、径寸法が異なる三種類の凹孔を規定し、これらのうち最も径寸法の小さい凹孔を第1凹孔3とし、最も径寸法の大きい凹孔を第3凹孔5とし、これら二つの凹孔3,5の中間の孔径を持つ凹孔を第2凹孔4としており、これら各3,4,5を適宜組み合わせるようにしている。
【0056】
ここで、上記発泡成形体2の表面2aと裏面2bのそれぞれにおける弾性反発度の分布状態及び係る分布状態を得るための具体的構造について説明する。
【0057】
B−1−a:発泡成形体2の表面2a側の構成
上記発泡成形体2の表面2a側は、図1に示すように、該発泡成形体2の全域がその長手方向に三つのゾーン、即ち、長手方向の中央部分に位置する第1ゾーンZ1と、該第1ゾーンZ1を挟んでその両側にそれぞれ位置する第2ゾーンZ2と第3ゾーンZ3に仮想的に区画されている。なお、上記各ゾーンZ1〜Z3の発泡成形体発泡成形体2の長手方向における幅寸法は、上記第1ゾーンZ1が最も小さく、上記第2ゾーンZ2と第3ゾーンZ3は同一の幅寸法をもち且つその大きさは上記第1ゾーンZ1の幅寸法よりも大きくなるように設定されている。
【0058】
さらに、この実施形態では、上記第1ゾーンZ1の奥行方向の略中央部に、細幅で上記発泡成形体2の長手方向に延びる第1小ゾーンZ7と、該第1小ゾーンZ7をその幅方向に両側から挟んで上記発泡成形体2の長手方向に延びる第2小ゾーンZ8を設定している。
【0059】
そして、上記第1小ゾーンZ7及び第2小ゾーンZ8を除く上記第1ゾーンZ1には、小径の第1凹孔3を所定ピッチで多数形成している。上記第2ゾーンZ2及び第3ゾーンZ3には、中間の孔径をもつ第2凹孔4が所定ピッチで多数形成されている。さらに、上記第1小ゾーンZ7には最も大きな孔径の第3凹孔5が多数形成されている。また、第2小ゾーンZ8には、中間の孔径をもつ第2凹孔4が多数形成されている。
【0060】
この実施形態では、上記各凹孔3〜5はその孔径がそれぞれ異なるが、その配置ピッチは略同等に設定している。従って、各凹孔3〜5の形成によって残された残余部分の平面積は、第1凹孔3が設けられたゾーンが最も大きく、第3凹孔5が設けられたゾーンが最も小さく、第2凹孔4が設けられたゾーンはこれら両者の中間に位置する大きさとされる。そして、この残余部分によって発泡成形体2に加えられる荷重を支持することから、この残余部分の平面積が大きいほど荷重に対する耐力が大きく、従って、その圧縮変形に対する復元力が大きい、即ち、弾性反発度が大きいと言える。
【0061】
なお、弾性反発度という面からみれば、この発泡成形体2の表面2aには、第1凹孔3が形成され弾性反発度の高い「高反発度ゾーン」(図面には「高反発度」と略記する)と、第2凹孔4が形成され弾性反発度が中間の「中反発度ゾーン」(図面には「中反発度」と略記する)と、第3凹孔5が形成され弾性反発度の低い「低反発度ゾーン」(図面には「低反発度」と略記する)の三つのゾーンが存在することになる。
【0062】
以上のことから、この実施形態のマットレス1における発泡成形体2の表面2a側の弾性反発度の分布は、図4(イ)に示すように、高反発度ゾーンである第1ゾーンZ1と、「中反発度ゾーン」である第2ゾーンZ2と第3ゾーンZ3がマットレス1の長手方向に列設されるとともに、該第1ゾーンZ1の奥行き方向の中央部に、「低反発度ゾーン」である第1小ゾーンZ7と、「中反発度ゾーン」である第2小ゾーンZ8が該奥行き方向に列設された分布状態となっている。
【0063】
B−1−b:発泡成形体2の裏面2b側の構成
上記発泡成形体2の裏面2b側は、図2に示すように、該発泡成形体2の長手方向中央部に、この長手方向に長軸をもつ菱形の第1ゾーンZ4と、該第1ゾーンZ4を挟んでその両側に位置する第2ゾーンZ5と第3ゾーンZ6の三つのゾーンに仮想的に区画されている。なお、上記第1ゾーンZ4の形状及び大きさは、後述するように、マットレス1の上で人が寝る場合にその寝姿勢の如何に拘らず、また寝返りを打った場合でも、人の臀部とか腰部がこの菱形の第1ゾーンZ4から外れることがないような形状及び大きさに設定されている。
【0064】
そして、上記第1ゾーンZ4には、小径の第1凹孔3を所定ピッチで多数形成している。上記第2ゾーンZ5及び第3ゾーンZ6には、大径の第3凹孔5が所定ピッチで多数形成されている。なお、上記各凹孔3〜5の孔径と該各凹孔3〜5が集合してなる各ゾーンの弾性反発度との相関は、上記発泡成形体2の表面2a側における場合と同様である。
【0065】
なお、弾性反発度という面からみれば、この発泡成形体2の裏面2bには、第1凹孔3が形成され弾性反発度の高い「高反発度ゾーン」と、第3凹孔5が形成され弾性反発度の低い「低反発度ゾーン」の二つのゾーンが存在することになる。
【0066】
以上のことから、この実施形態のマットレス1における発泡成形体2の裏面2b側の弾性反発度の分布は、図4(ハ)に示すように、長手方向中央に高反発度ゾーンである菱形の第1ゾーンZ4が位置し、この第1ゾーンZ4を長手方向両側から挟むようにして、低反発度ゾーンである第2ゾーンZ5と第3ゾーンZ6が位置する分布状態となっている。
【0067】
B−1−c:発泡成形体全体としての弾性反発度の分布状態
上記発泡成形体2全体としての弾性反発度の分布状態は、該発泡成形体2の表面2a側の弾性反発度の分布状態と、裏面2b側の弾性反発度の分布状態を重ね合わせることで得られる。図5には、この発泡成形体2全体としての弾性反発度の分布状態を示している。
【0068】
発泡成形体2の表面2aのゾーン配置と裏面2bのゾーン配置の重ね合わせから、図5に示すように、発泡成形体2全体としての弾性反発度の分布状態は、発泡成形体2の長手方向中央に位置するゾーンAと、該ゾーンAの長手方向両側に在って上記発泡成形体2の裏面2b側の上記第1ゾーンZ4の長軸方向の両端部にそれぞれ対応する左右一対のゾーンB、Bと、該ゾーンBの長手方向外側に隣接する左右一対のゾーンC、C、並びに上記ゾーンAの幅方向中央部に位置するゾーンDと該ゾーンDの両側に位置するゾーンE、Eを備えたものとなっている。
【0069】
ここで、図5の各ゾーンに付した数値は、各ゾーンの弾性反発度を便宜的に数値化したものである。即ち、弾性反発度を三段階に分けて、「高弾性反発度:1」、「中弾性反発度:1.5」、「低弾性反発度:2」として数値表示する。そして、図5に示した各ゾーンA〜Fが、上記発泡成形体2の表面2a側の各ゾーンZ1〜Z3,Z7,Z8と、裏面2b側の各ゾーンZ4〜Z6の如何なる組み合わせによって構成されているかを考慮して各ゾーンの弾性反発度を数値で示した。
【0070】
即ち、ゾーンAは、発泡成形体2表面2aの第1ゾーンZ1と裏面2b側の第1ゾーンZ4の重ね合わせで得られるゾーンであって、上記第1ゾーンZ1の弾性反発度が「1」、上記第1ゾーンZ4の弾性反発度も「1」であるため、ゾーンAの弾性反発度は「2」となる。ゾーンBは、発泡成形体2表面2aの第2ゾーンZ2と裏面2b側の第1ゾーンZ4の重ね合わせで得られるゾーンであって、上記第2ゾーンZ2の弾性反発度が「1.5」、上記第1ゾーンZ4の弾性反発度が「1」であるため、ゾーンAの弾性反発度は「2.5」となる。以下、同様にして、上記ゾーンCの弾性反発度は「3.5」、ゾーンDは「3」、ゾーンEは「3」となる。
【0071】
この結果、発泡成形体2全体として考えた場合、最も弾性反発度が高い(即ち、体圧による沈み込みが少ない)のは、ゾーンAで、次にゾーンB,ゾーンCと順次弾性反発度が低下する(即ち、順次、体圧による沈み込みが大きくなる)。また、ゾーンAと該ゾーンA内に設定されたゾーンD及びゾーンEの三者間においては、ゾーンDが最も弾性反発度が低く、体圧による沈み込みが大きい。そして、ゾーンDからゾーンE、さらにゾーンAへと移行するに伴って順次弾性反発度が高くなり、体圧による沈み込みが小さくなる。
【0072】
B−2:第3の特徴点について
第3の特徴点は、マットレス1の厚さを、その長手方向の一端側から他端側へ向けて漸増させて、該マットレス1をベッド床面等の載置面上に載置した状態において、該マットレス1の表面1aをその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜させる点である。具体的には、図1及び図2に鎖線図示(符号1´)するように、上記マットレス1の厚さをその一端側から他端側に向かって次第に増加させることが考えられる。
【0073】
ただし、このようなマットレス1の厚さ調整による傾斜確保手法に限定されるものではなく、マットレス1の厚さ調整に依らずに、マットレス1を載置した状態においてその表面1aがその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜するような手段を講じることも考えられる。例えば、マットレス1の厚さをその全域で均等とした上で、このマットレス1が載置される載置面を傾斜面とする(例えば、ベッド床が傾斜調整可能なベッドにおいて、このベッド床を傾斜させ、その上にマットレス1を載置する)とか、マットレス1と略水平な載置面の間にスロープ状に形成された載置台を介在させることが考えられる。
【0074】
このように上記マットレス1の表面1a(即ち、上記発泡成形体2の表面2a)をその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜させ、低位側に踵部45が位置し、高位側に頭部41が位置するようにして寝ることで、踵部45より頭部41側が高位に位置し、この高さの差分によって、身体各部の重さの違いによってマットレス1の沈み込みが踵部45から頭部41に向けて次第に増加し体全体が頭部41側に向けて下向傾斜する場合における踵部45と頭部41との高さの差分が相殺され、その結果、身体中心軸が可及的に水平に近づき、良好な体圧分散作用が得られ、これによって腰痛とか肩こりの解消が図られるものである。
【0075】
C:マットレス1の使用形態等
上述のように構成されたマットレス1を使用して睡眠等を行う場合における使用形態及びそれに伴う作用効果等について説明する。
【0076】
図6には、人40の立位姿勢を示している。この立位姿勢においては、身体の中心軸L1が直線状となっている。また、人40の背面側の4ヶ所の突出部分、即ち、頭部、肩甲骨臀部、踵の部分を除いた場合にみられる身体曲線L2は僅かに湾曲している。
【0077】
このような立位姿勢は、最も自然で且つ疲れの少ない安定した理想的な姿勢であって、このような立位姿勢が、図7(イ)に示すように、マットレス1における寝姿勢として保持されれば理想的な寝姿勢となり、高い安眠性あるいは快眠性が得られることは既述の通りである。
【0078】
ここで、「発明の効果」の項における記載と重複する部分もあるが、マットレス1の弾性反発度と人40の寝姿勢との関係を図7〜図11を参照して説明する。
【0079】
C−1:弾性反発度の分布形態と寝姿勢との関係
人40の身体各部のうち、臀部44は仰臥姿勢及び横臥姿勢の双方において最も突出する部位である。従って、例えば、マットレス1の全域においてその弾性反発度が同程度に設定されているとすれば、上記突出する部位に対応するマットレス1の部位、即ち、長手方向中央寄りに位置するゾーンは他のゾーンに比べて大きく沈み込こむことになる。この結果、図7(イ)、図8(イ)に示すように、直線状であることが望ましい身体中心軸「L1」が、図7(ロ)、(ハ)示す「L1a」、図8(ロ)に示す「L1b」のように大きく屈曲することになる。
【0080】
この結果、身体中心軸「L1」が屈曲すると、沈み込みが極大となる仰臥姿勢における臀部あるいは肩部に対応する部位とか、横臥姿勢における臀部に対応する部位が圧迫点となり、褥瘡が発生するおそれがあり、また各圧迫点の中間にあって沈み込みが最も少ない腰部は、身体中心軸が大きく屈曲変化する支点となり、腰痛とか肩こりの原因となり得ることは既述の通りである。
【0081】
係る場合、この実施形態のマットレス1のように、その長手方向中央部に弾性反発度の高いゾーンAを配置するとともに、該ゾーンAの両側に該ゾーンAよりも弾性反発度の低いゾーンBを配置し、さらにこのゾーンBの外側に該ゾーンBよりも弾性反発度が低いゾーンCを配置することで、仰臥姿勢及び横臥姿勢の双方においてに最も突出する臀部が、マットレス1において最も弾性反発度が高いゾーンAに対応するし、マットレス1が過度に沈み込むことなく、体の凹凸に沿って弾性変形することとなり、これによって最適な体圧分散作用が得られ、その結果、高い安眠性・快眠性が得られるとともに、褥瘡防止効果の高いマットレスを提供することができることになる。
【0082】
なお、図11(イ)には、従来のマットレスを使用して仰臥姿勢で寝た場合の体圧分散データを、図11(ロ)には、この実施形態に係るマットレス1を使用して仰臥姿勢で寝た場合の体圧分散データを、それぞれ示している。図11(イ)からは、背面側に突出している頭部と肩甲骨と臀部及び踵部分に体圧が集中しこれらに部位が圧迫点になっていること、及び人型がはっきり見えない画像であることから上記4点で体圧を支えた状態であることが確認される。従って、体圧分散作用が低劣であるといえる。
【0083】
これに対して、図11(ロ)では、局部的な圧迫点がなく、また人型通りに画像を確認できる。このことは、体圧分散作用が高く、身体が理想的な沈み方をしており、従って、身体にかかる負担が軽減されていることを示唆している。
【0084】
ここで、上記マットレス1の上記ゾーンDとゾーンEの作用効果を説明する。人40が仰臥姿勢で寝る場合において褥瘡が最も発生し易い部位は臀部44の双丘間において背筋に沿って延びる仙骨部分である。従って、この仙骨部分における褥瘡の発生を防止抑制あるいは抑制するためには、この仙骨部分への体圧集中を防止すれば効果的である。係る観点から、この実施形態では上記ゾーンDとゾーンEを設け、仙骨部分を弾性反発度が低いゾーンDで支持して体圧集中を防止すると同時に、この仙骨より外側の部分はこれを比較的弾性反発度の高いゾーンEで支持して過度の沈み込みを防止したものである。
C−2:菱形のゾーンAと寝姿勢との関係
【0085】
人の寝姿勢を考察すると、図9に実線図示するように人40がマットレス1上に仰臥姿勢で寝ている場合も、図9に鎖線図示するようにこの仰臥姿勢から右又は左に寝返って横臥姿勢となった場合も、人40の腰部43及び臀部44は、上記マットレス1上に設定されたゾーンA内に位置し、このゾーンAから外れることはない。また、肩部42はゾーンB又はゾーンCに位置している。
【0086】
また、図10には、寝返り姿勢を含む様々な寝姿勢と、その場合における身体中心軸L1(肩部42と、腰部43及び臀部44と、踵部45を結んだ線)を示している。ここに示された多数の寝姿勢の何れにおいても、人40の腰部43及び臀部44はゾーンA内に位置し、肩部42と踵部45はゾーンC内に位置することがわかる。
【0087】
従って、仰臥姿勢及び横臥姿勢において最も突出する腰部43及び臀部44は、これが弾性反発度の高いゾーンAに対応することで、これらの部分におけるマットレス1の過度の沈み込みが抑制され、体圧分散作用が促進される。また、横臥姿勢において突出しこれが突っ張ることで身体中心軸を大きく変形させる原因となる肩部42は、これが弾性反発度の低いゾーンCに対応することで、この肩部42の部分が適度に沈み込み、これによって身体中心軸L1の変形(マットレス1の厚さ方向への変形)が抑制される。
【0088】
この結果、寝姿勢の如何に拘らず身体の特定部位への体圧集中が防止され、最適な体圧分散作用によって、高い安眠性・快眠性が得られるとともに、褥瘡防止効果の高いマットレスを提供することができることになる。
【符号の説明】
【0089】
1 ・・マットレス
2 ・・発泡成形体
3 ・・第1凹孔
4 ・・第2凹孔
5 ・・第3凹孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面長矩形の発泡成形体(2)で構成されたマットレスであって、
該発泡成形体(2)の一面が少なくともその長手方向に三つのゾーン(Z1)、(Z2)、(Z3)に区画されるとともに、該各ゾーン(Z1)、(Z2)、(Z3)の弾性反発度が、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーン(Z1)が高く、該第1ゾーン(Z1)の両側に位置する第2ゾーン(Z2)と第3ゾーン(Z3)がともに低くなるように調整されていることを特徴とするマットレス。
【請求項2】
平面長矩形の発泡成形体(2)で構成されたマットレスであって、
該発泡成形体(2)の一面が少なくともその長手方向に三つのゾーン(Z4)、(Z5)、(Z6)に区画されるとともに、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーン(Z4)は上記長手方向に長軸又は短軸を持つ菱形形状とされる一方、これら各ゾーン(Z4)、(Z5)、(Z6)の弾性反発度が、上記第1ゾーン(Z4)が高く、該第1ゾーン(Z4)の両側に位置する第2ゾーン(Z5)と第3ゾーン(Z6)がともに低くなるように調整がなされていることを特徴とするマットレス。
【請求項3】
平面長矩形の発泡成形体(2)で構成されたマットレスであって、
上記発泡成形体(2)の一方の面(2a)には請求項1に記載の構成が採用され、他方の面(2b)には請求項2に記載の構成が採用されたことを特徴とするマットレス。
【請求項4】
上記発泡成形体(2)にその厚さ方向へ延びる未貫通の凹孔(3)、(4)、(5)が多数設けられ、該各凹孔(3)、(4)、(5)の大きさ及び/又は配置パターンの設定によって弾性反発度が調整されていることを特徴とする請求項1,2又は3の何れかに記載のマットレス。
【請求項5】
マットレス載置面上への載置状態において、上記発泡成形体(2)の表面がその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜していることを特徴とする請求項1、2、3又4の何れかに記載のマットレス。
【請求項6】
上記発泡成形体(2)が、天然ゴムの発泡成形品で構成されていることを特徴とする請求項1、2、3,4又は5の何れかに記載のマットレス。
【請求項1】
平面長矩形の発泡成形体(2)で構成されたマットレスであって、
該発泡成形体(2)の一面が少なくともその長手方向に三つのゾーン(Z1)、(Z2)、(Z3)に区画されるとともに、該各ゾーン(Z1)、(Z2)、(Z3)の弾性反発度が、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーン(Z1)が高く、該第1ゾーン(Z1)の両側に位置する第2ゾーン(Z2)と第3ゾーン(Z3)がともに低くなるように調整されていることを特徴とするマットレス。
【請求項2】
平面長矩形の発泡成形体(2)で構成されたマットレスであって、
該発泡成形体(2)の一面が少なくともその長手方向に三つのゾーン(Z4)、(Z5)、(Z6)に区画されるとともに、長手方向中央寄りに位置する第1ゾーン(Z4)は上記長手方向に長軸又は短軸を持つ菱形形状とされる一方、これら各ゾーン(Z4)、(Z5)、(Z6)の弾性反発度が、上記第1ゾーン(Z4)が高く、該第1ゾーン(Z4)の両側に位置する第2ゾーン(Z5)と第3ゾーン(Z6)がともに低くなるように調整がなされていることを特徴とするマットレス。
【請求項3】
平面長矩形の発泡成形体(2)で構成されたマットレスであって、
上記発泡成形体(2)の一方の面(2a)には請求項1に記載の構成が採用され、他方の面(2b)には請求項2に記載の構成が採用されたことを特徴とするマットレス。
【請求項4】
上記発泡成形体(2)にその厚さ方向へ延びる未貫通の凹孔(3)、(4)、(5)が多数設けられ、該各凹孔(3)、(4)、(5)の大きさ及び/又は配置パターンの設定によって弾性反発度が調整されていることを特徴とする請求項1,2又は3の何れかに記載のマットレス。
【請求項5】
マットレス載置面上への載置状態において、上記発泡成形体(2)の表面がその長手方向の一方側から他方側へ向けて傾斜していることを特徴とする請求項1、2、3又4の何れかに記載のマットレス。
【請求項6】
上記発泡成形体(2)が、天然ゴムの発泡成形品で構成されていることを特徴とする請求項1、2、3,4又は5の何れかに記載のマットレス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−99496(P2013−99496A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−282261(P2011−282261)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【出願人】(511206342)株式会社アースフルコーディネーション (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【出願人】(511206342)株式会社アースフルコーディネーション (1)
【Fターム(参考)】
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