説明

マテハンロボットのワーク取出し方法

【目的】 パレットへのセット状態で表面が傾斜するワークに対して、簡単な構造で取出しの位置精度を高くするマテハンロボットのワーク取出し方法を提供する。
【構成】 パレット1の底面に、枚数に応じた押上位置信号に応答してロッド12を昇降制御することにより、最上位のフードインナ3の表面を水平位置へ押し上げるワーク押上げ装置を配置する。ロボットハンド5に、吸盤7よりも下方へ位置付けされたテーパ部6aを備え、かつ下方へのばね付勢状態でスライド可能にガイドされた位置決めロッド6を取付けると共に、フードインナ3の対応位置に位置決め穴3bを形成する。フードインナ3を水平位置へ押し上げた状態で、ロボットハンド5を下降させることにより、テーパ部6aをフードインナ3の位置決め穴3bの周縁に係合させつつばね力でさらに断面円形部分を位置決め穴3bに係入させた状態で、吸盤7にフードインナ3を吸着させて取出す。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ワークの表面又は裏面に突出部分を備えるために、パレットへのセット状態が傾斜するワークをロボットハンドで取出すためのマテハン(マテリアルハンドリング)ロボットのワーク取出し方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】パレットに収納されたワークを1枚づつロボットハンドで吸着して組付け治具等へセットする場合、ナット、ブラケット等を備えるために傾斜状態で重ねられたワークの取出しを容易にするためには、パレットの傾斜方向の周壁間の寸法は隙間を大きくしておく必要がある。このため、傾斜状態での吸着に加えて、傾斜方向のワークセット位置の誤差も大きくなり、ワークの取出し精度が低下する問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来、このようなワークの取出し誤差を補正するために、ロボットの吸着状態で下面からカメラで撮像し、その位置データをロボットへ供給することにより、吸着位置の誤差に応じてロボットハンドを位置補正した後、組付け治具等にセットさせている。したがって、撮像信号の処理回路も含めて装置が高価になる問題があった。
【0004】本発明は、このような点に鑑みて、突出部分を備えるために、パレットへのセット状態で表面が傾斜するワークに対して、より簡単な構造で取出しの位置精度を高くするマテハンロボットのワーク取出し方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、周囲に僅かに隙間を与えたパレットに、突出部分を備えることにより傾斜状態で重ねてセットされているワークをロボットハンドで吸着して取出すためのマテハンロボットのワーク取出し方法において、前述の目的を達成するために、パレットの底面に、重ねた枚数に応じて逐次供給される押上位置信号に応答してロッドを昇降制御することにより、最上位のワーク表面を水平位置へ最下位のワークの裏側から押し上げるワーク押上げ装置を配置し、ロボットハンドに、ワーク表面を吸着する吸盤よりも下方へ位置付けされたテーパ部を先端部に備え、かつ下方へのばね付勢状態で上下にスライド可能にガイドされた断面円形の位置決めロッドを取付けると共に、ワークの対応位置に位置決め穴を形成しておき、ワーク押上げ装置によりワーク表面を水平位置へ押し上げた状態で、ロボットハンドを下降させることにより、テーパ部をワークの位置決め穴の周縁に係合させつつばね力でさらに断面円形部分を位置決め穴に係入させ、この係入状態で、吸盤にワーク表面を吸着させて、ワークを取出すことを特徴とする。
【0006】
【作用】最上位のワークを水平にする押上位置信号が供給されるごとに、ワーク押上げ装置は相応の位置にロッドを昇降制御することにより、最上位のワーク表面を水平位置に押し上げる。ワーク表面が水平位置にセットされる都度、ロボットハンドを下降させ、テーパ部の周縁で位置決め穴を変位させつつ位置決めロッドの断面円形部分を次のワークとの隙間に係入させることにより、水平状態においてワークの位置決めを行って、吸盤にワークを吸着させて取出しを行う。
【0007】
【実施例】図1は本発明の方法を実施するワーク取出し装置を示すもので、1はコンベア2で所定位置に搬送されてくるパレットであり、図2に示すように、裏面にナット3aを突設されたフードインナ3の外形に相応した周壁を形成され、幅方向の周壁間は例えば0.5mm程度の隙間を与えられているが、ナット3aによりセット時に傾斜する方向の周壁間は、取出し時のフードインナ3の回動を許容するように、より大きな隙間を形成されている。
【0008】パレット1の所定の停止位置のコンベア2の底面には、ワーク押上げ装置10が付属している。即ち、この装置は、コンベア2の挿通孔2a及びパレット1の挿通孔1aを通って昇降可能にシリンダ11にガイドされたロッド12を備えると共に、シリンダ11内に、エンコーダ13a付のモータ13で駆動されるロッド駆動機構を内蔵している。このモータには、ロボットからワーク取出しごとに供給される押上位置信号に応じてモータを作動させ、エンコーダ13aがロッド12の相応する押上げ位置を検知すると、制動状態になって停止させるモータ制御回路14が付属している。
【0009】さらに、フードインナ3には、円形の位置決め穴3bが形成されており、一方ロボットハンド5の対応位置には、断面円形の位置決めロッド6を上下方向にスライド可能にガイドするスリーブ6bが下設されている。位置決めロッド6の先端には、4方の吸盤7よりも下方に位置するようにテーパ部6aが取付けられると共に、位置決めロッド6は圧縮ばね8で下方へ付勢されている。スリーブ6bには、位置決めロッド6が位置決め穴3bに完全に侵入する程度に圧縮ばね8で下降させられたのを検知するセンサが設けられ、その検知信号でロボットハンド5の下降を停止させる。
【0010】このように構成されたマテハンロボットの部品取出し装置の動作は、次の通りである。パレット1が所定位置に所定枚数のフードインナ3を収納されて搬送されてくると、先ずロボットから所定数の最上位のフードインナ3を水平にする押上位置信号が供給され、ロッド12が上昇制御され、そのヘッド12aが最下位のフードインナ3の裏面を押し上げる。相応する位置をエンコーダ13aが検知すると上昇が停止し、点線で示す水平位置にフードインナ3を位置付けする。
【0011】次いで、ロボットハンド5が上方から下降してき、図3に示すように、テーパ部6aが下方へ弾性押圧されて、位置決め穴3bの周縁に係合することにより、特に余裕の多い傾斜方向の位置を変位・修正させ、最終的に位置決めロッド6の断面円形部分が次の最上位のフードインナ3との隙間に係入して位置決めを行うと共に、吸盤7がフードインナ3に当接して吸着する。位置決めロッド6の所定量の下降が検知され、この検知信号によりロボットハンド5は正確な位置での吸着を確認して下降を停止し、したがって正確な位置決め状態で吸着により、高い位置精度の部品取出しが可能となる。
【0012】さらに、2枚目の押上位置信号が送出されると、エンコーダ13aの検知信号との差に応じてロッド12が僅かに相応位置まで下降し、次の最上位のフードインナ3を水平位置に再度調整し、さらにテーパ部6aで位置決めをして取出しを行う。
【0013】
【発明の効果】以上、本発明によれば、カメラ及びその画像信号の処理回路を要することなく、ワークの表面又は裏面に突出部分を備えるためにパレットへのセット状態が傾斜しているワークが、簡単・安価な構造により高い位置精度で取出し可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するワーク取出し装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】同ワーク取出し装置のパレットの平面図である。
【図3】同ワーク取出し装置の位置決めロッドの動作を説明する図である。
【符号の説明】
1 パレット
3 フードインナ
3b 位置決め穴
5 ロボットハンド
6 位置決めロッド
6a テーパ部
7 吸盤
10 ワーク押上げ装置
12 ロッド
13 モータ
13a エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 周囲に僅かに隙間を与えたパレットに、突出部分を備えることにより傾斜状態で重ねてセットされているワークをロボットハンドで吸着して取出すためのマテハンロボットのワーク取出し方法において、パレットの底面に、重ねた枚数に応じて逐次供給される押上位置信号に応答してロッドを昇降制御することにより、最上位のワーク表面を水平位置へ最下位のワークの裏側から押し上げるワーク押上げ装置を配置し、ロボットハンドに、ワーク表面を吸着する吸盤よりも下方へ位置付けされたテーパ部を先端部に備え、かつ下方へのばね付勢状態で上下にスライド可能にガイドされた断面円形の位置決めロッドを取付けると共に、ワークの対応位置に位置決め穴を形成しておき、前記ワーク押上げ装置によりワーク表面を水平位置へ押し上げた状態で、前記ロボットハンドを下降させることにより、前記テーパ部をワークの前記位置決め穴の周縁に前記ばね力を伴って係合させ、さらに前記断面円形部分を前記位置決め穴に係入させ、この係入状態で、前記吸盤にワーク表面を吸着させて、ワークを取出すことを特徴とするマテハンロボットのワーク取出し方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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