説明

マルチチャネルアナライザ

【課題】短い測定時間で、精度の高い測定を行なうことができるマルチチャネルアナライザを実現することにある。
【解決手段】放射線のエネルギーに対応したピーク値をもつパルス信号が入力され、パルス信号のピーク値を下限値と上限値とで選択してヒストグラムを生成するマルチチャネルアナライザに改良を加えたものである。本装置は、所定のサンプリングレートでパルス信号の電圧レベルをピーク値と同じ単位のデジタルデータに変換する変換手段と、この変換手段のデジタルデータからピーク値を検出するピーク検出部と、このピーク検出部による検出後に選択が行なわれたピーク値それぞれの度数を求めるヒストグラム解析部とを有することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線のエネルギーに対応したピーク値をもつパルス信号が入力され、このパルス信号のピーク値を下限値と上限値とで選択してヒストグラムを生成するマルチチャネルアナライザに関し、詳しくは、短い測定時間で、精度の高い測定を行なうことができるマルチチャネルアナライザに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マルチチャネルアナライザ(以下、MCA(Multichannel Analyzer)と略す)は、放射線の研究分野で用いられる計測器であり、試料から出力される放射線それぞれの発生回数を計数して、放射線源の種類等の同定や放射線源の強度の時間変動、半減期等を解析するためのヒストグラム(エネルギースペクトル)を作成する。
【0003】
図4は、測定すべき試料からの放射線のエネルギーを測定し、放射線源の種類等を同定する従来の放射線測定装置の構成を示した図である(例えば、特許文献1〜3参照)。図4において、試料10から出力される放射線が検出器11に入力される。そして、検出器11が、放射線のエネルギーに対応した、すなわち放射線源それぞれに固有の電荷量を検出し、検出した電荷量を出力する。さらに、前置増幅器(例えば、チャージアンプ)12が、検出器11からの電荷量を、この電荷量に比例した電圧値に変換する。さらに、波形整形増幅器13が、前置増幅器12からの信号を、幅の狭いパルス信号(一般的には、信号幅FWHM(full width half maximum)=〜1[μs]のガウス形状)に変換する。従って、波形整形増幅器13からのパルス信号のピーク値(波高値)と検出器11からの電荷量は比例している。
【0004】
そして、MCA14が、波形整形増幅器13から入力されるパルス信号を測定することにより、試料の放射線源(核種)の種類等を同定する。すなわち、パルス信号のピーク値(電圧値)には、試料からの放射線のエネルギー等の情報が含まれるので、ピーク値を求めることにより、どの種類の放射線源からの出力であるかを判断する。さらに、ピーク値それぞれの発生回数をカウントし、横軸をチャネル番号、縦軸を度数(頻度)のヒストグラム(エネルギースペクトル)を作成する。ここで、チャネル番号とはピーク値と一対一に対応する番号である。
【0005】
実際の測定では、試料10は複数種類の放射線源を含み、所望の種類の放射線源のみに着目して測定を行なう場合が多い。また、試料10からのエネルギーが微弱なので検出器11、増幅器12、13等においてノイズを生じる。そのため、ノイズのピーク値も検出され、エネルギースペクトルにはノイズが含まれる。
【0006】
そこで、興味のあるスペクトル部分のみを選択したり、ノイズ領域を除去するために、所望のスペクトル幅(つまり、n番目のチャネル〜m番目のチャネル間のチャネル幅(ただし、n,mは自然数で、n<m)であり、n番目の下限値をLLD(Lower Level Discrimination)と呼び、m番目の上限値をULD(Upper Level Discrimination)と呼ぶ)となるROI(Region Of Interest)をMCA14に設定し、設定したROIでMCA14がエネルギースペクトルを生成する。
【0007】
通常ROIの設定は、全チャネル(MCA14で測定可能なスペクトル領域全体)で一度測定を行なってエネルギースペクトルを作成し、スペクトルを見ながら行なう。そして、設定したROI内で再測定を行なう。
【0008】
しかしながら、試料10の放射線源によるパルス信号の発生回数よりも、ノイズのカウント数の方が圧倒的に多く、放射線源のスペクトルが相対的に非常に小さくなる。そのため、ROIを複数回設定し直してノイズのみを除去していく必要がある。
【0009】
また、MCA14への入力信号の電圧レベルは、MCA14で定められた所定の範囲に収める必要があり(過大な電圧を入力するとMCA14が壊れるため)、入力信号の電圧レベルを最適化する必要がある。つまり、本当に着目すべき放射線源のエネルギーが大きく、MCA14で見ているスペクトルに含まれていない場合や、逆に、エネルギーの大きさに余裕を見て、入力信号の増幅率を抑えすぎて測定している場合もあるからである。
【0010】
そこで、図4に示すように、波形整形増幅器13からMCA14に入力される信号を2分岐し、一方をMCA14に入力し、他方をオシロスコープ15に入力する。そして、オシロスコープ15の画面上に表示されるパルス信号の波形を観察し、ノイズレベルの確認、放射線源それぞれのピーク値等を観測し、増幅器12、13のゲインの調整を行なって最適な電圧レベルのパルス信号をMCA14に入力させると共に、ROIの設定を確実に行なう。
【0011】
【特許文献1】特開平2−47542号公報
【特許文献2】特開2002−181947号公報
【特許文献3】特開2002−055171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、オシロスコープ15でMCA14に入力されるパルス信号の波形そのものを観察することによりノイズレベルの確認、入力信号の電圧レベルの最適化を行なうことができる。
【0013】
しかしながら、オシロスコープ15に表示されるパルス信号の波形は、時間(横軸)−電圧レベル(縦軸)であり、MCA14のエネルギースペクトルは、ピーク値(横軸)−度数(縦軸)である。そのため、MCA14にROIの設定をするためには、オシロスコープ15の電圧レベルを、検出器11の変換効率、増幅器12、13の増幅率、MCA14内の対応関係(ピーク値とチャネル番号の対応関係)等を考慮して電圧からチャネル番号に変換する必要があった。これにより、ROIの設定に時間がかかり、その結果、所望のROIでの測定が終了するまでに時間がかかるという問題があった。
【0014】
また、増幅器13とMCA14との間の電気的な信号線を2分岐し、オシロスコープ15を接続する必要がある。そのため、増幅器13とMCA14への信号線上に設けられるオシロスコープ15およびオシロスコープ15への信号線はノイズ源であり、MCA14への信号の品質を劣化させるという問題があった。そのため、精度の高い測定を行なう場合には、オシロスコープ15を取り外して再測定する必要があり、測定に時間がかかるという問題があった。また、信号を2分岐しない場合は、波形観測を行なうごとにMCA14とオシロスコープ15との接続を切り替える必要があり、測定に時間がかかるという問題があった。
【0015】
そこで本発明の目的は、短い測定時間で、精度の高い測定を行なうことができるマルチチャネルアナライザを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の発明は、
放射線のエネルギーに対応したピーク値をもつパルス信号が入力され、パルス信号のピーク値を下限値と上限値とで選択してヒストグラムを生成するマルチチャネルアナライザにおいて、
所定のサンプリングレートで前記パルス信号の電圧レベルを前記ピーク値と同じ単位のデジタルデータに変換する変換手段と、
この変換手段のデジタルデータからピーク値を検出するピーク検出部と、
このピーク検出部による検出後に前記選択が行なわれたピーク値それぞれの度数を求めるヒストグラム解析部と
を有することを特徴とするものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記変換手段によるデジタルデータに基づいて横軸を時間とし縦軸をピーク値として前記パルス信号の波形および前記ヒストグラム解析部の度数に基づいて横軸をピーク値とし縦軸を度数としてエネルギースペクトルを同一画面に同時に表示する表示処理部を設けたことを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、
表示処理部は、前記波形および前記エネルギースペクトルそれぞれに、前記下限値および前記上限値を示すカーソルを表示することを特徴とするものである。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、
前記パルス信号の波形から、前記上限値を求める算出手段を有することを特徴とするものである。
請求項5記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、
ピーク検出部は下限値を超えたデジタルデータを基準とした所定の点数のなかからピーク検出を行ない、
前記パルス信号の波形から前記所定の点数を求める算出手段と
を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下のような効果がある。
請求項1〜5によれば、パルス信号の波形表示の縦軸の単位を、エネルギースペクトルの横軸の単位と同じにするので、下限値、上限値をパルス信号の波形から容易に設定できる。また、オシロスコープ等の別の機器を用いなくてもパルス信号の電圧レベルを最適化することができる。従って、短い測定時間で、精度の高い測定を行なうことができる。
請求項2〜5によれば、パルス信号の波形表示およびエネルギースペクトルとを同一画面に同時に表示するので、下限値、上限値の設定が容易となり、測定時間をさらに短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施例を示した構成図である。ここで、図4と同一のものには同一符号を付し、説明を省略する。図1に示すMCA100は、図4のMCA14の代わりに設けられ、図4のオシロスコープ15は不要である。
【0019】
図1において、設定部20は、LLD,ULDが設定される。ROIメモリ21は、設定部20に設定されたLLD、ULDを記憶する。
【0020】
レファレンス電圧生成部22は、ROIメモリ21からLLDを読み出し、このLLDに対応した電圧を生成する。
【0021】
アナログコンパレータ23は、波形整形増幅器13からのパルス信号が入力され、生成部22からLLDに相当する電圧レベルの信号が入力され、パルス信号の電圧レベルを生成部22からの電圧レベルで比較する。
【0022】
AD変換器24は、変換手段であり、波形増幅器13からのパルス信号が入力される。なお、コンパレータ23とAD変換器24には、増幅器13からのパルス信号が2分岐され、時間的に同期のとれた信号が入力される。
【0023】
FIFOバッファ25は、AD変換器24からのデジタルデータを記憶する。ピーク検出部26は、AD変換器24からのデジタルデータが入力され、アナログコンパレータ23の比較結果に基づいてパルス信号それぞれのピーク値を検出する。
【0024】
選択部27は、ピーク検出部26によって検出されたピーク値が入力され、ROIメモリ21からLLD,ULDを読み出し、LLD〜ULD間、つまりROI内のピーク値のみを選択して出力する。
【0025】
ヒストグラム解析部28は、選択部27によって選択されたピーク値が入力され、ピーク値を所定の範囲で区分けしたチャネルに振り分けし、各ピーク値の度数をカウントしてヒストグラムメモリ29に読み書きを行なう。ヒストグラムメモリ29は、チャネルそれぞれの領域が割り当てられ、チャネルごとの度数を記憶する。
【0026】
表示処理部30は、コンパレータ23から比較結果が入力され、ROIメモリ21からLLD,ULD、FIFO25からデジタルデータ、メモリ29から度数を読み出して、パルス信号の時間波形としての波形表示、エネルギースペクトル表示、LLD,ULD等を表示部31に表示する。
【0027】
なお、説明を容易にするため、MCA100に入力されるパルス信号の電圧レベルは、0〜10[V]とし、AD変換器24の分解能を14[bit](=0〜16383)とする。例えば、0[V]が入力されれば、AD変換器24は”0”の値となるデジタルデータを出力し、10[V]が入力されれば、AD変換器24は”16383”の値となるデジタルデータを出力する。
【0028】
また、AD変換器24のデジタル値が、チャネル番号に1対1に対応するものとする。つまり、AD変換器24のデジタル値(パルス信号のピーク値)が”1000”であれば、エネルギースペクトルにおけるピーク値も”1000”になり、AD変換器24によるデジタルデータは、エネルギースペクトルと同じ単位(チャネル番号)に変換される。
【0029】
このような装置の動作を説明する。
ここで、図2は、表示部31の表示画面例である。図2の表示画面は上下に2分割され、上段にパルス信号の波形が表示され、下段にエネルギースペクトルが表示される例を示している。なお、上段の波形表示は、横軸が時間であり、縦軸がピーク値である。また、下段のエネルギースペクトルは、横軸がピーク値(つまり、チャネル番号)であり、縦軸が度数である。
【0030】
設定部20にLLD,ULDが設定され、この設定値LLD,ULDがROIメモリ21に格納される。図2においては、一例として、LLD=”2718”,ULD=”15616”が設定されている。
【0031】
そして、コンパレータ23が、生成部22からの電圧レベルによって、増幅器13からのパルス信号を比較し、パルス信号の電圧レベルがLLDよりも小さい場合はLレベルの信号を出力し、大きい場合はHレベルの信号を出力する。
【0032】
一方、AD変換器24が、所定のサンプリングレートで、パルス信号をデジタル値に変換し、FIFO25に記憶させると共にピーク検出部26に出力する。
【0033】
さらに、表示処理部30が、FIFO25からデジタルデータを読み出すが、デジタルデータを読み出すのは、パルス信号の電圧レベルがLLDを超えた点、つまり、コンパレータ23の出力がLレベルからHレベルに変わった点をトリガ点とする。そして、表示処理部30が、トリガ点を超えたデジタルデータ前後の所定点数のデジタルデータを読み出し、表示部31に表示する。この際、横軸は時間軸だが、縦軸は電圧でなくピーク値(上述のようにAD変換器24によるデジタル値=チャネル番号)で表示する。また、表示処理部30が、図2に示すようにトリガ点を図示してもよい。
【0034】
一方、ピーク検出部26が、AD変換器24から入力されるデジタルデータから各パルス信号それぞれのピーク値を検出する。例えば、LLDをしきい値として、このしきい値を超えたデジタルデータから所定の点数における最大値を検出する。具体的には、アナログコンパレータ23の出力がLレベルからHレベルに変わった点をトリガ点とする。そして、トリガ点後のデジタルデータを基準とし、この基準としたデジタルデータから所定の点数の範囲内に含まれるデータの中から最大値となるデジタルデータを検出する。なお、ピーク検出に用いるデジタルデータの点数は、あらかじめ設定部20を介してピーク検出部26に設定しておく。例えば、AD変換器24のサンプリングレートとパルス信号のパルス幅に基づいて設定するとよい。そして、検出したデジタルデータをピーク値として選択部27に出力する。
【0035】
さらに、選択部27が、ピーク値をLLD,ULDそれぞれで比較し、すなわち、LLD〜ULD間となるROI内のピーク値のみをヒストグラム解析部28に出力する。
【0036】
そして、ヒストグラム解析部28が、選択部27によって選択されたピーク値から、割り振る先のチャネルを判別する。さらに、解析部28が、判別したチャネル番号に対応するメモリ29の領域からカウント値を読み出す(もちろん、各領域のカウント値の初期値は”0”)。そして、解析部28が、読み出したカウント値を”+1”インクリメントし、インクリメントしたカウント値を読み出した領域に書き込む。このようなメモリ29のカウント値をインクリメントする動作を所定時間Δt行なう。従って、メモリ29には、各チャネルあたりのパルス信号の発生頻度のヒストグラム(横軸がチャネル(つまり、ピーク値)、縦軸が度数)が記憶される。
【0037】
所定の単位時間Δtの測定を行なった後、表示処理部30が、各チャネルのカウント値を読み出し、エネルギースペクトルを表示する。所定の単位時間Δtの測定が終了すると、メモリ29の各領域のカウント値をクリアし、次の測定を行なう。なお、選択部27によってROIによるピーク値の選択が行なわれているので、ROI内のピーク値の度数のみが表示される。
【0038】
なお、エネルギースペクトルの表示は、単位時間Δtの測定後にピーク値の度数をメモリ29からまとめて読み出して表示してもよく、または度数が変化するたびにメモリ29から読み出して、変化するたびに再描画して表示していってもよい。
【0039】
次に、表示処理部30が、パルス信号の波形、エネルギースペクトル、ROI(LLD、ULD)を表示する動作を図3のデータフロー図で説明する。図3は、MCA100の動作の一例を示したフローチャートである。
【0040】
表示処理部30が、ROIメモリ21からROIを読み出し(S101)、表示画面上段のパルス信号の波形表示、下段のエネルギースペクトルそぞれにLLD、ULDをカーソル表示する。もちろん、パルス信号の波形表示では、LLDのカーソルC1、ULDのカーソルC2それぞれは、横軸に平行である。また、エネルギースペクト表示では、LLDのカーソルC3,ULDのカーソルC4それぞれは、縦軸に平行である。そして、各カーソルC1〜C4の近傍にはLLD,ULDの値を表示する(S102)。
【0041】
そして、パルス信号の波形表示を行なう場合、表示処理部30が、FIFO25からデジタルデータを読み出し(S103、S104)、デジタルデータの波形表示を行なう(S105)。
【0042】
波形表示後(S105)または波形表示をしない場合(S103)、エネルギースペクトル表示の判断ステップ(S106)に進む。エネルギースペクトルを表示する場合、メモリ29からピーク値の度数を読み出し(S106,S107)、エネルギースペクトル表示を行なう(S108)。
【0043】
スペクトル表示後(S108)またはスペクトル表示をしない場合(S106)、ROI変更の有無の判断ステップ(S109)に移る。ROIの変更があった場合、つまり、設定部20から新たなLLD,ULDが設定された場合、設定部20が、ROIメモリ21のLLD,ULDを変更する(S109、S110)。
【0044】
ROIメモリ21の変更が終了後(S110)またはROIの変更が無かった場合(S109)、表示の更新を続けるかの判断ステップ(S111)に進む。表示の更新を続ける場合は、ROIの読み出しを行なって、各ステップを繰り返す(S111,S101〜S110)。表示の更新をしない場合(S111)は、処理を終了する。
【0045】
このように、パルス信号の波形表示の縦軸の単位を、エネルギースペクトルの横軸の単位と同じにするので、図4に示す装置のように、検出器11の変換効率、増幅器12、13の増幅率、MCA14内の対応関係等を考慮して電圧からチャネル番号に変換する必要がない。これにより、ROIの設定に時間がかかない。また、オシロスコープ15を用いなくてもパルス信号の電圧レベルを最適化することができる。従って、短い測定時間で、精度の高い測定を行なうことができる。
【0046】
また、パルス信号の波形表示およびエネルギースペクトルとを同一画面に同時に表示し、ROIの範囲となるLLD,ULDとをパルス信号の波形表示およびエネルギースペクトルの両方に表示するので、ROIの設定が容易となり、測定時間をさらに短縮することができる。
【0047】
なお、本発明はこれに限定されるものではなく、以下に示すようなものでもよい。
(1)図1に示す装置において、ROIメモリ21、FIFOバッファ25、メモリ29を用いる構成を示したが、デジタル値を記憶できるものであれば、どような記憶部でもよい。
【0048】
(2)ピーク検出部26が、しきい値をLLDとし、コンパレータ23がLレベルからHレベルに変更することによってしきい値を検出する構成を示したが、しきい値はLLDとは異なる値にし、しきい値検出用のコンパレータを別個設けてもよい。
【0049】
(3)MCA100は、一つの筐体にまとめてもよく、モジュール化してパソコン等と組み合わせてもよい。例えば、MCA100を一つの筐体にまとめる場合、MCA100の前面に操作ボタンやロータリーノブを設けて設定部とし、表示画面を設けて表示部としてもよい。また、MCA100の一部をモジュール化し、パソコンのスロットに差し込むように構成してもよい。例えば、設定部20をパソコンのキーボードやマウス、表示処理部30をパソコンのCPU、表示部31をパソコンの画面とし、その他の部分21〜29をモジュールに実装してもよい。さらに、モジュール部を他のステーション(例えば、様々な種類のモジュールが実装できる測定器)に差し込み、ステーションとパソコン間で通信を行なってMCA100としてもよい。
【0050】
(4)ピーク検出部26が、LLDを超えたデジタルデータを基準とした所定の点数のなかからピーク検出を行なう構成を示したが、所定の点数を求める算出手段を設けてもよい。例えば、算出手段が、ピーク検出部26の検出したピーク値に基づいてFIFO25のデジタルデータからFWHMを求め所定の点数を算出してもよい。また、FIFO25のデジタルデータから、LLDを超えてからLLDを下回るまでのデジタルデータ数をカウントし、所定の点数を算出してもよい。そして、複数個のパルス信号に関して算出を行なって、算出手段は、算出した所定の点数をピーク検出部26に出力する。これにより、ピーク検出の際に最適な測定区間(時間)を適切な点数(過不足ない値)にすることができ、効率的にピーク検出ができ、測定時間を短縮することができる。
【0051】
(5)設定部20からULDをメモリ21に記憶させる構成を示したが、ULDを求める算出手段を設けてもよい。例えば、FIFO25からデジタルデータを読み出し、所定の単位時間Δtにおける最大値を求め、この最大値または最大値よりも僅かに大きな値(例えば、数〜数十の値を加算)をULDとし、メモリ21に記憶してもよい。これにより、ユーザがULDの設定を行なう必要が無くなり、測定時間を更に短縮することができる。
【0052】
(6)AD変換器24のデジタル値(パルス信号のピーク値)が”1000”であれば、エネルギースペクトルにおけるピーク値も”1000”とする構成を示したが、どのような対応関係としてもよい。例えば、AD変換器24とFIFO25、ピーク検出部26の間に、デジタル値をさらに変換する手段をさらに設けてもよく、要は、パルス信号の波形表示に用いるデジタルデータの振幅の値の単位と、ヒストグラム解析部28が度数を求めるピーク値の単位(チャネル番号)とが同じになっていればよい。
【0053】
(7)ピーク検出部26が、AD変換器24からデジタルデータを直接取得する構成を示したが、FIFO25に記憶されたデジタルデータを所定の点数順次読み出して、各パルス信号それぞれのピーク値を検出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例を示した構成図である。
【図2】図1に示す装置の表示画面の一例を示した図である。
【図3】図1に示す装置の動作を示したフローチャートである。
【図4】従来の放射線測定装置の構成を示した図である。
【符号の説明】
【0055】
24 AD変換器
26 ピーク検出部
28 ヒストグラム解析部
30 表示処理部
100 MCA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線のエネルギーに対応したピーク値をもつパルス信号が入力され、パルス信号のピーク値を下限値と上限値とで選択してヒストグラムを生成するマルチチャネルアナライザにおいて、
所定のサンプリングレートで前記パルス信号の電圧レベルを前記ピーク値と同じ単位のデジタルデータに変換する変換手段と、
この変換手段のデジタルデータからピーク値を検出するピーク検出部と、
このピーク検出部による検出後に前記選択が行なわれたピーク値それぞれの度数を求めるヒストグラム解析部と
を有することを特徴とするマルチチャネルアナライザ。
【請求項2】
前記変換手段によるデジタルデータに基づいて横軸を時間とし縦軸をピーク値として前記パルス信号の波形および前記ヒストグラム解析部の度数に基づいて横軸をピーク値とし縦軸を度数としてエネルギースペクトルを同一画面に同時に表示する表示処理部を設けたことを特徴とする請求項1記載のマルチチャネルアナライザ。
【請求項3】
表示処理部は、前記波形および前記エネルギースペクトルそれぞれに、前記下限値および前記上限値を示すカーソルを表示することを特徴とする請求項2記載のマルチチャネルアナライザ。
【請求項4】
前記パルス信号の波形から、前記上限値を求める算出手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマルチチャネルアナライザ。
【請求項5】
ピーク検出部は下限値を超えたデジタルデータを基準とした所定の点数のなかからピーク検出を行ない、
前記パルス信号の波形から前記所定の点数を求める算出手段と
を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマルチチャネルアナライザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−111704(P2008−111704A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293910(P2006−293910)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】