説明

マルチチャンネル光学画像法

本発明は、第一入射角で受け取られた入力ビームのうちから、白色光スペクトルの実質的な部分を含むパワースペクトル密度を有する第一ビームの光線を第一出力ポートから、そして第一非白色光スペクトルの実質的な部分及び第二非白色光スペクトルの実質的な部分を含むパワースペクトル密度を有する第二ビームの光線を第二出力ポートから、出力する第一ビーム・スプリッタと;第二入射角で前記第二ビームを受け取るように配置され、前記第一非白色光スペクトルを含むパワースペクトル密度を有する第二ビームの実質的な部分を反射すると共に、第二非白色光スペクトルを含むパワースペクトル密度を有する第二ビームの実質的な部分を透過させる第二ビーム・スプリッタと;前記第二ビーム・スプリッタを透過したビームの実質的な部分を反射するように配置されたリフレクタとを含むビーム・スプリッタ・アレイを特徴とする。該新規なアレイは、例えばin vitro及びin vivoの両方で、生物組織などの試料などのマルチチャンネル光学画像を捉えるシステム及び方法に用いることができる。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、引用をもってその内容全体をここに援用することとする、2003年12月24日出願の米国仮特許出願第60/532,366号の米国特許法に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
連邦の支援を受けた研究である旨の言明
本出願は、NIBIBから付与された助成金EB001872に基づく政府支援を受けてなされた。政府は本発明のいくつかの権利を有する。
【0003】
発明の背景
本発明はマルチチャンネル光学画像法に関する。
【0004】
光学画像法システムは、in vivoなど、多種の生物組織から画像を記録するために用いることができる。この画像は、多様な疾患を診断する助けとすることのできる特徴を検出するために用いられる。白色光画像法システムは、光ファイバによる内視鏡又は血管鏡などの装置を用いて組織を照射し、得られる反射光及び散乱光を集めて、組織の解剖学的外観の画像を形成する。蛍光画像法は同様の器具を用いて、自己蛍光(組織自体からの蛍光発光)又は外因的に施された作用物質からの発光(緑色蛍光たんぱく質(GFP)などの蛍光たんぱく質など)に基づいて生物学的パラメータの詳細を提供する。
【0005】
発明の概要
本発明は、白色光の光チャンネルと、二つ以上の非白色光の光チャンネルとを同じ光学画像法で組み合わせると、ヒトなどの哺乳動物など、動物におけるin vivoなどの生物組織中の特定の特徴を精確に検出する上での当該装置の能力が増すという認識に基づくものである。この新規な装置及び方法は、例えば癌性組織又は罹患組織又は感染組織を撮像するためなど、in vivoでの光学画像法で用いることができる。
【0006】
一般的には、ある局面においては、本発明は、第一入射角で受け取られた入力ビームのうちから、白色光スペクトルの実質的な部分を含むパワースペクトル密度を有する第一ビームの光線を第一出力ポートから出力し、そして第一非白色光スペクトルの実質的な部分及び第二非白色光スペクトルの実質的な部分を含むパワースペクトル密度を有する第二ビームの光線を第二出力ポートから出力する、第一ビーム・スプリッタと;第二入射角で前記第二ビームを受け取るように配置され、前記第一非白色光スペクトルを含むパワースペクトル密度を有する第二ビームの実質的な部分を反射すると共に、第二非白色光スペクトルを含むパワースペクトル密度を有する第二ビームの実質的な部分を透過させる第二ビーム・スプリッタと;前記第二ビーム・スプリッタを透過したビームの実質的な部分を反射するように配置されたリフレクタとを含むビーム・スプリッタ・アレイを特徴とする。
【0007】
いくつかの実施態様では、前記第一出力ポートは、光を透過させる前記第一ビーム・スプリッタの表面であり、前記第二出力ポートは、光を反射する前記第一ビーム・スプリッタの異なる表面である。他の実施態様では、前記第一出力ポートは、光を反射する前記第一ビーム・スプリッタの表面であり、そして前記第二出力ポートは、光を透過させる前記第一ビーム・スプリッタの異なる表面である。
【0008】
これらのアレイでは、前記第二ビーム・スプリッタを、前記第一ビームを第一方向で反射するように配置することができ、また前記リフレクタを、前記第二ビームを前記第一方向から20°以内である第二方向で反射するように配置することができる。前記第一ビーム・スプリッタは、約400ナノメートル及び670ナノメートルの間の波長を含む白色光スペクトルのうちの少なくとも50%にわたって(例えば60、70、又は80%にわたって)0.5より大きい(例えば0.7又は0.8より大きい)光透過スペクトルと、前記白色光スペクトルとは重ならない前記第一非白色光スペクトルにわたって0.5より大きく(例えば0.7又は0.8より大きく)、そして前記白色光スペクトル又は前記第一非白色光スペクトルとは重ならない前記第二非白色光スペクトルにわたって0.5より大きい(例えば0.7又は0.8より大きい)光反射スペクトルとを有することができる。前記第二ビーム・スプリッタは、前記第一非白色光スペクトルにわたって0.5より大きい(例えば0.7又は0.8より大きい)光反射スペクトルと、前記第二非白色光スペクトルにわたって0.5より大きい(例えば0.7又は0.8より大きい)光透過スペクトルを有することができる。いくつかの実施態様では、前記リフレクタは、前記第二非白色光スペクトルにわたって0.5より大きい(例えば0.7又は0.8より大きい)光反射スペクトルを有することができる。
【0009】
前記ビーム・スプリッタ・アレイの多様な実施態様では、前記第一非白色光スペクトルは、近赤外スペクトル、又は狭帯域可視スペクトルを含んでもよい。例えば、前記第一非白色光スペクトルは、約680ナノメートル乃至約720ナノメートルの間の波長を含んでもよい。いくつかの実施態様では、前記第二非白色光スペクトルは、約760ナノメートル乃至約800ナノメートルの間の波長を含んでもよい。
【0010】
前記ビーム・スプリッタ・アレイは、更に、約700nmを中心とするバンドパス透過スペクトルを有すると共に、前記第一ビームを受け取るように配置された第一フィルタ;及び、約780nmを中心とするバンドパス透過スペクトルを有すると共に、前記第二ビームを受け取るように配置された第二フィルタを有することができる。
【0011】
別の局面では、本発明は更に、ここで解説されたビーム・スプリッタ・アレイ;約700nmを中心とするバンドパス透過スペクトルを有すると共に、前記第二ビーム・スプリッタから反射された光線のビームを前記第二入射角で受け取るように配置された第一フィルタ;約780nmを中心とするバンドパス透過スペクトルを有すると共に、前記リフレクタから反射された光線のビームを受け取るように配置された第二フィルタ;生物組織から照射された光線を前記第一入射角で前記第一ビーム・スプリッタに送達するように配置された第一導波管;前記第一ビーム・スプリッタから出力された光線のビームを第一入射角で受け取るように配置された第一検出器;及び、前記第二ビーム・スプリッタから反射された光線のビームと、前記リフレクタから反射された光線のビームとを受け取るように配置された第二検出器;を含むシステムを特徴とする。前記第一検出器にはカメラを含めることができる。前記第二検出器には、前記第二ビーム・スプリッタから反射された光線のビームと、前記リフレクタから反射された光線のビームとを受け取るように配置された単一のカメラを含めることができる。代替的には、前記第二検出器には、それぞれ前記第二ビーム・スプリッタから反射された光線のビームと、前記リフレクタから反射された光線のビームとを受け取るように配置された二つのカメラを含めることができる。
【0012】
これらのシステムには、更に、白色光を含む光線の光源;及び、前記光源から生じた光線を生物組織に送達するように配置された第二導波管、を含めることができる。いくつかの実施態様では、前記光源をフィルタ処理して、前記第一非白色光スペクトル及び第二非白色光スペクトル中の白色光を減じることができ、あるいは、前記光源に、選択的にレーザ・ダイオードなどの狭帯域非白色光源と組み合わされた、キセノン・ランプなどの広帯域白色光源を含めることができる。
【0013】
更に本発明は、白色光を含む光線の光源からの光線で、生物組織などの試料を照射するステップと;前記試料からの光線を採集するステップと;採集された光線をビーム・スプリッタ・アレイに送達するステップと;前記ビーム・スプリッタ・アレイからの白色光スペクトルを含むパワースペクトル密度を持つ光線の第一画像を検出するステップと;前記ビーム・スプリッタ・アレイからの第一非白色光スペクトルを含むパワースペクトル密度を持つ光線の第二画像を検出するステップと;前記ビーム・スプリッタ・アレイからの第二非白色光スペクトルを含むパワースペクトル密度を持つ光線の第三画像を検出するステップと、を含む、in vivoなどでの光学画像法も特徴とする。前記ビーム・スプリッタ・アレイは、ここで解説した通りであってよい。
【0014】
いくつかの実施態様では、前記第一、第二、及び第三画像のうちの二つ以上を同時に検出する、あるいは、前記第一、第二、及び第三画像のうちの二つ以上を記録及び/又は表示する、あるいは、前記第一、第二、及び第三画像のうちの二つ以上を数学的関数を用いて組み合わせることができる。
【0015】
ここで用いられる場合の用語「白色光」とは、約400ナノメートル乃至約670ナノメートルの波長帯の実質的な部分にわたって非ゼロであるパワースペクトル密度を有する光線を意味する。
【0016】
ここで用いられる場合、ビーム・スプリッタは、当該ビームの一部分を反射する、あるいは、当該ビームの一部分を透過させることにより、「出力ポートから」入ってきたビームの前記一部分を「出力する」ものである。
【0017】
本発明はいくつかの長所を提供する。例えば、本ビーム・スプリッタ・アレイは、小型のビーム・スプリッタ・アレイ構造内の最小の数の反射で白色光チャンネル及び補助チャンネルを同時かつ個別に記録するために、白色光チャンネル及び複数の補助チャンネルを分離したものである。本構造は、二つの分子パラメータ又は生理パラメータを同時かつ同じ試料中で、ビデオ(例えばリアルタイム・ビデオ)モード及び静止キャプチャモードの両方で、個別にプロービングするために適している。この同時に記録され、表示された白色光画像は解剖学的な方向を提供する。
【0018】
前記補助チャンネルの一つ以上が近赤外(NIR)の波長を含む場合、ターゲット対バックグラウンド及び励起比の高い蛍光プローブを用いることができる。更に、NIR光は生物組織を可視光よりも容易に透過する。
【0019】
複数の補助チャンネルがあることにより多様な生物学的画像法の用途が可能になる:その用途の中には、複数のターゲットの同時位置確認、ターゲット同士の間の発現/活性比の判定、複数の属性に基づく疾患の特徴づけ、及び、不均質な疾患状態におけるプローブの送達及び組織吸収の違いを補正することのできる、基準チャンネルの導入による、より良好な定量、がある。複数の補助チャンネルは、補助チャンネルが一つしかないか、あるいは全くないようなシステムでの定量を歪めかねない効果、例えばターゲットの照射角度や、内視鏡先端からターゲットまでの距離など、を補正するためにも用いることができる。不均一なプローブ分布の効果は、基準となる非賦活化コントラスト剤を同時注射することによって補正してもよく、これを基準NIRチャンネルで記録してもよい。
【0020】
そうでないと定義しない限り、ここで用いられるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。ここで解説されたものと同様又は均等な方法及び材料を本発明の実施又はテストで用いることもできるが、適して方法及び材料を以下に解説する。ここで言及された全ての公開文献、特許出願、特許、及び他の参考文献の全文を、引用をもって援用する。矛盾があれば、定義を含む本明細書が上位となる。加えて、当該の材料、方法、及び例は単なる描写であり、限定的なものとは意図されていない。
【0021】
本発明の他の特徴及び長所は、以下の説明及び請求の範囲から明白となるであろう。
【0022】
詳細な説明
光学画像システム
図1に示すように、光学画像システム100は、照射光線105で対象の生物組織104を照射する光源102と、前記生物組織104からの複数のリアルタイム・ビデオ画像を同時に記録する画像モジュール106とを有する。前記の画像モジュール106は、集められた光線107を白色光チャンネル110及び二つの補助チャンネル111及び112に空間的に分離するビーム・スプリッタ・アレイ108を備える。この白色光チャンネル110は、可視スペクトルの有意な大部分(即ち、ほぼ400−670nmの波長帯)を含む。補助チャンネル111及び112には、例えば赤外線(NIR)、紫外線(UV)、又は狭可視帯など、生物組織の画像を形成するのに有用な多種のスペクトルバンドのいずれをも含めることができる。
【0023】
光源102は、生物組織104を照射するために一つ以上の光線源(ランプ又はレーザなど)を備える。多種ある技術のいずれを用いても、生物組織104に光線を送達する(及びそこからの光線を集める)ことができる。例えば、光学画像システム100は、光ファイバによる内視鏡又は血管鏡(例えば結腸鏡又は気管支鏡、又は冠状動脈をなどの血管の心臓血管画像法用のカテーテル)あるいは、身体内からの光学画像を直接中継する装置(例えばボアスコープ又は小型望遠鏡)、あるいは、ターゲットから特定の距離で画像を提供する対物レンズ(例えば顕微鏡又はカメラ・レンズ)を用いることができる。実施例1の例では、内視鏡109は、光線を送達する照射光ファイバ束113を備える。生物組織104から反射、散乱、又は放出された光線は画像光ファイバ束114に集められ、画像モジュール106に送達される。
【0024】
画像モジュール106は、白色光チャンネル110からの光線を可視光カメラ116(例えば電荷結合デバイス(CCD))カメラで検出し、同時に、補助チャンネル111及び112からの光線をそれぞれ補助カメラ117及び118で検出する。カメラ117及び118を、一個のCCDチップを有すると共にこのCCDチップ上の二つの各領域で前記二つのチャンネルに関するビームを画像形成するように配置された検出器とすることができる。代替的には、カメラ117及び118を、画像増倍管を備えた、又は備えない二つの別個のCCDチップ又は何らかの他の形の検出器とすることもできる。カメラ116乃至118が生成した画像は、コンピュータ120で(例えば複数の入力を備える市販の画像/ビデオキャプチャ・カードを用いるなどして)捉えられる。画像モジュール106は、選択的に、スペクトル・チャンネル110−112を更に分離するためのフィルタ(例えばバンドパス・フィルタ)を備えてもよい。補助チャンネル111を、可視スペクトルの一部分の蛍光を検出するために用いる場合、白色光チャンネル110をフィルタ処理して、可視スペクトルのこの部分を取り除くことで、補助チャンネルのカメラ117が、白色光チャンネル110からの反射光を原因とするバックグラウンド・シグナルで溢れないようにする。コンピュータ120は、チャンネル110−112からの静止画像又は動画をディスプレイ122上に表示する。
【0025】
光学画像システム100を、標的組織と相互作用した(即ちそれらが「活性化した」)後にのみ、実質的な蛍光を発する蛍光プローブを含む「分子プローブ」と一緒に用いることができる。このような分子プローブにより、バックグラウンド/ターゲットの比が数オーダー増し、また、例えば言及をもってその内容全文を援用することとする米国特許第6,083,486 号及び米国特許第6,615,063号などにより完全に解説されるように、標的組織に存在する酵素活性に基づき内部のin vivoの標的組織の非観血的なNIR画像法が可能となる。
【0026】
ある例では、約690−720nmの波長帯を含む「低」近赤外(NIR)スペクトルを有する第一補助チャンネルと、約760−800nmの波長帯を含む「高」NIRスペクトルを有する第二補助チャンネルがあるような光学画像システムがデザインされる。下記の光学画像システムでは、蛍光色素 Cy5.5 及び Cy7を標的生物組織に導入して、それぞれ低NIR及び高NIRチャンネルに向かって蛍光を発させる。本システムの光源、画像モジュール及び他の部分のスペクトルの特徴は、これらの蛍光色素のスペクトル特性に適合するように選択される。代替的には、他の非白色光補助チャンネルと適合性があるような光学画像システムをデザインすることができる。
【0027】
光源
光源102には、単一の光線源、又は、照射しようとするスペクトルバンドで充分なパワーを提供するように選択された光線源の組み合わせを含めることができる。例えば、広帯域スペクトルのテールでパワーを提供する光線源を、レーザなど、狭帯域源で補うことができる。このような狭帯域源は、プローブの励起線に、広帯域源では充分には励起されない励起バンドを提供することができる。一つ以上のフィルタを用いることで、例えば蛍光バンド中のバックグラウンド・シグナルを減らすためなど、補助チャンネルのあるバンドで光線を減らすことができる。
【0028】
図2は、白色光チャンネル用の広帯域可視光線と低NIRチャンネル用の励起線とを提供するランプ202(例えばニューカロライナ州スミスフィールド、ミニマリ・インベイシブ・サージカル・テクノロジーズ社製300Wキセノン・ランプ)を含む光源200を示す。レーザ204(例えばドイツ、ボン、セラモプテック社製、200mW GaAsダイオード・レーザなど) は、高NIRチャンネル用の約739nmの中心波長を持つ狭帯域励起線を提供する。ランプ202は、ほぼ350乃至720nmの波長範囲を透過させるために伝搬軸208に対して45°に取り付けられたフィルタ206を備える。ガラス製の光ファイバ束210は、約690nmのカットオフ波長を有する(カットオフ波長よりも短い波長を持つ光線を透過させる)ショートパス・フィルタ212に可視光線を案内する。このショートパス・フィルタ212は、低及び高NIRチャンネルがランプ202からの反射光で溢れないように確実にするものである。二色性ミラー214はランプ202からの可視光線を、レーザ204からの高NIR励起線と結合させる。結合レンズ215−217は、重ね合わされたビーム219を、内視鏡(例えばカリフォルニア州アーヴィン、バクスター社製光ファイバ内視鏡など)の照射光ファイバ束220内へ最適に空間的に結合させる。
【0029】
画像モジュール
画像モジュール106には、集められた光線107を白色光110並びに二つの補助チャンネル111及び112に分離するための多様な光学組織のいずれをも含めることができる。ビーム・スプリッタ・アレイ108は、バルク光学素子、光ファイバが結合された素子、又は、スペクトル・チャンネル110−112を別々のビームに分割することのできるいずれか他の光媒体を用いて実施することができる。
【0030】
図3は、画像光ファイバ束306から集められた光線を受け取るビーム・スプリッタ・アレイ302を含む画像モジュール300を示す。光源200からの光線は生物組織104中の蛍光色素Cy5.5 及びCy7を励起する。この励起された蛍光色素が蛍光を放出すると、この蛍光は内視鏡の画像光ファイバ束306に接続される。広帯域可視光線も、生物組織から反射されて散乱し、前記の放出された蛍光と一緒に画像光ファイバ束306に接続される。
【0031】
画像光ファイバ束306は集められた光線をビーム・スプリッタ・アレイ302に送達する。照準レンズ307を、画像光ファイバ束306の末端近傍の外部に、あるいは、当該の束の一体化された部分として、取り付けることができる。ビーム・スプリッタ・アレイ302は、集められた光線の白色光部分を第一出力ポートから出力し、両方のNIRチャンネルを含む700−900nmの波長帯を第二出力ポートから、ほぼ20°の入射角で出力する第一ビーム・スプリッタ321を備える。この実施態様では、前記第一出力ポートは、光を透過させるビーム・スプリッタ321の表面に相当し、前記第二出力ポートは、光がそこから反射されるビーム・スプリッタ321の表面に相当する。いくつかの実施態様では、前記第一出力ポートは、光がそこから反射されるビーム・スプリッタ321の表面に相当し、そして前記第二出力ポートは、光を透過させるビーム・スプリッタ321の表面に相当する。他の実施態様では、前記の第一及び第二出力ポートは、例えば光ファイバ・ビーム・スプリッタ(例えばファイバBraggグレーチング、光サーキュレータなど)からの光ファイバ・カプラなどの出力カプラに相当する。対物レンズ314は、白色光ビーム316を、生物組織のリアルタイム・ビデオ画像を記録するカラー・ビデオ・カメラ(例えばカリフォルニア州サンディエゴ、コーフ社のシリーズ8290)のCCDチップ318に焦点を合わせる。
【0032】
ビーム・スプリッタ321の光透過スペクトルは、白色光スペクトルの実質的な部分を透過させるのに充分大きくなければならない。例えば、当該の透過スペクトルは、白色光スペクトルの大部分にわたって0.5より大きく(例えば0.6、0.7、0.8より大きい、又はそれより大きいなど)なければならない。透過スペクトルは、白色光スペクトルの完全に連続した部分にわたって0.5よりも大きくなければならないということは必ずしもないが、透過率が0.5よりも大きい白色光スペクトルの合計部分は、例えば70%又は80%より大きい、あるいは更には90%より大きいなど、50%より大きくなければならない。有用な実施態様では、当該の透過スペクトルは、例えば約75%を超えるなど、白色光スペクトルの大部分にわたって0.8より大きい。
【0033】
第二ビーム・スプリッタ322は、低NIRチャンネルを含む約680-720nmの波長帯にわたって反射率が高く、そして高NIRチャンネルを含む約760-800nmの波長帯にわたって透過率が高い。Cy5.5蛍光色素から集められた蛍光は、第二ビーム・スプリッタ322によりほぼ23°の入射角で反射され、約690−720nmの波長帯を透過させる低NIRバンドパス・フィルタ326に向けられる。Cy7蛍光色素から集められた蛍光は、第二ビーム・スプリッタ322により透過させられ、リフレクタ323で、約760−800nmの波長帯を透過させる高NIRバンドパス・フィルタ328へと反射される。リフレクタ323は広帯域ミラーである。代替的には、該リフレクタ323は、高NIRチャンネルを含む狭波長帯にわたって反射率が高くともよい。
【0034】
ビーム・スプリッタ321及びビーム・スプリッタ322などの選択的ビーム・スプリッタは、多種ある標準的な技術のいずれかを用いて作製することができる。このようなビーム・スプリッタには、所望の透過スペクトルを提供するように選択された複数の誘電層を含めることができる。代替的には、このようなビーム・スプリッタに、所望の透過スペクトルに適合する固有の透過率を有する材料を含めることもできる。選択的吸収性材料の使用を含め、他の技術も可能である。
【0035】
複合対物レンズ330は、フィルタ処理されたCy5.5蛍光ビーム332及びフィルタ処理されたCy7蛍光ビーム334をNIRビデオカメラ(例えばニューヨーク州、アディロンダック・ビデオ社、StellaCam Exなど)のCCDチップ336(例えばソニー・インスツルメンツ社、ICX 248AL CCDなど)の上に焦点を合わせる。Cy5.5蛍光ビーム332の伝搬軸と、Cy7蛍光ビーム334の伝搬軸との間の角度は、低及び高NIRチャンネルによる二つの別々の画像が、CCDチップ336上に互いに隣り合って形成されるように選択される。低NIR画像338の中心と、高NIR画像340の中心は、同じCCDチップ336に画像を記録させるのに充分近く、また該画像が互いに重ならず、干渉しないように充分、遠く離れている。従って、低NIR及び高NIRチャンネルは、単一のCCDチップを用いて個別に、しかし同時に記録される。この実施態様では、ビーム332及び334は、互いに実質的に平行であり、その間の相対角度はほぼ2°である。他の実施態様では、ビーム332及び334は、それらの間により大きな角度を有する(例えば3°、6°、12°、20°など)が、同じCCDチップに向かっているようにすることができる。
【0036】
画像記録
カラー・カメラのCCDチップ318上の白色光チャンネルの画像と、NIRカメラのCCDチップ336上に互いに隣り合って形成された低NIR及び高NIRチャンネルの別々の画像は、コンピュータ・スクリーン上に同時に表示される。画像光ファイバ束306は、生物組織の特徴をはっきりと画像形成するために充分な光線が集められるように充分、大きい。この例では、画像光ファイバ束306は15,000本のファイバを有し、0.5mmの直径であるが、他の数のファイバ(例えば100、500、1000、2500、5000、7500、10,000、又は20,000本)及び直径(例えば0.1、0.25、0.75、1.0、2.5、又は 5.0 mm)も可能である。画像光ファイバ束306の解像度は1ミリメートル当たりほぼ7線対である。CCDチップ318及び336は、三つのチャンネルのそれぞれについて、直径でほぼ130ピクセルの円形画像を記録する。画像積分時間は、動作の人為産物を避けるために充分(ほぼ0.1-1秒/フレーム)短く、充分な量の光を集められるように充分、大きい。代替的には、より大きな光ファイバ束(例えば直径で2、3、4、又は5 mm)を、より短い積分時間にして用いることができる。
【0037】
白色光及びNIRチャンネルの静止及びビデオ・フレームの表示及び保存と一緒に、画像処理ソフトウェア(例えばrsb.info.nih.gov/nih-image,の米国保健研究所のインターネット上のパブリック・ドメインNIH画像プログラム、又は、スキオン・コーポレーションから入手可能なScion Imageなど)により、該チャンネルからの情報を組み合わせる計算された画像を作成することができる。例えば、リアルタイム又はほぼリアルタイムの画像ストリームを、オーバーレイ、擬似色画像、減法画像、又は分割画像として表示する。ノイズフィルタ処理技術、比率画像法、閾値検出及び/又は生物学的情報(疾患の位置特定を含む)の検出を容易にする事前確率分析を含め、他の数学関数を用いて、画像を処理することができる。
【0038】
画像モジュール300は、NIR蛍光を検出する感度を増すための特徴を備える。内視鏡の接眼鏡の焦点が正しくあっていれば、画像光ファイバ束206から入ってくる画像は、光軸に沿った画像点に照準が合わされる。本光ファイバ束の面積全体が画像形成されるため、出てくる光線は、光ファイバ束の直径と、接眼鏡の焦点距離とで決定される通りに広がったものになるであろう。従って、照準の合わされた光を各CCDチップ318及び336に再度焦点を合わせるレンズ314及び330は、結果的なアパーチュアが感度を制限しないように充分な大きさでなければならない。NIRチャンネルを画像形成するために用いられるCCDチップ336には、更に、チップの非効率面積を減らすと共に、全体的な量子効率を700nmで約62%、そして750nmで約45%に向上させる高NIR光応答、画像増倍管、大型のオン・チップマイクロレンズの使用など、感度を増す特徴を含めることができる。代替的には、薄型の、背後から照射及び冷却されるCCD又は画像増倍管付 CCDを用いることができる。
【0039】
スペクトル調整及びフィルタ処理
本光学画像システムのビーム・スプリッタ及びフィルタで透過及び/又は反射される波長帯は、入ってくるビームの入射角の変更などにより、調整することができる。図4は、分光計(日本、東京、日立社、U3000)で測定したときの、垂直から45°(曲線406)、23°(曲線408)、及び0°(曲線410)での入射角の第二ビーム・スプリッタ322の透過スペクトルを示す。この入射角の選択により、(透過率がほぼ60%を超える)透過する高NIRスペクトルバンド400と、(透過率ほぼ10%未満で)反射される低NIRスペクトルバンド402の微調整が可能である。これら二つのNIRチャンネルの最適な分離は、入射角に依存する、第二ビーム・スプリッタ332のカットオフ波長404(透過率が50%を横切る)の微調整で得られる。入射角を0°から45°に変えると、カットオフ波長404で23nmのシフトが起きる。第二ビーム・スプリッタ322の入射角を23°に調整し、第一ビーム・スプリッタ321及びリフレクタ323を相応に配置することにより、最小の光消失で最適なチャンネル分離が得られる。
【0040】
図5A−5Fは、画像モジュール300の多様な位置にある二つのNIRチャンネルについて、分光計で測定したときの画像モジュール300の該光素子の各々について透過及び反射曲線を用いて計算された相対的パワースペクトル密度曲線を示す。図5Aは、Cy5.5及びCy7の最大放出波長の両方で100%の入力を想定したときのCy5.5蛍光色素(曲線500)及びCy7蛍光色素(曲線502)の放出スペクトルの曲線を示す。本画像システムのスペクトルフィルタ処理は、不要な蛍光を進行的に除去する。図5Bを参照すると、第一ビーム・スプリッタ321の後は、単一のNIRビームのCy5.5及びCy7の相対的ピーク強度はそれぞれ83%(曲線504)及び97%(曲線506)である。低NIR及び高NIRチャンネルが分離する第二ビーム・スプリッタ322の後は、ピーク強度は、Cy5.5及びCy7蛍光について、それぞれ低NIRチャンネル(図5C)では82%(曲線508)及び18%(曲線510)、そして高NIRチャンネル(図5D)では17%(曲線512)及び85%(曲線514)となる。図5Eを参照すると、低NIRバンドパス・フィルタ326の後は、Cy5.5及びCy7蛍光について、低NIRチャンネルではそれぞれ68%(曲線516)及び0%(曲線518)のままである。図5Fを参照すると、高NIRバンドパス・フィルタ328の後は、Cy5.5及びCy7蛍光について、高NIRチャンネルではそれぞれ12%(曲線520)及び72%(曲線522)のままである。
【0041】
シグナル強度
生物組織の標的領域における蛍光色素の濃度及び量子効率は、感度に影響する付加的な因子である。感度を向上させる方法の一つは、蛍光色素を高い量子効率で発色させたり、より強い「潅流画像」シグナルが可能なように、消光度の低い蛍光色素を用いることである。更に、励起及び放出スペクトルを更に分離した状態で蛍光色素を用いる場合、バンドパス・フィルタ326及び328のパスバンドを広げて、クロストークを増加させることなく、より高い率の各蛍光フォトンを集めるようにすることができる。
【0042】
感度は、Cy5.5及びCy7を96ウェル・プレートでリン酸生理食塩水中30nM乃至10μMの濃度にした連続希釈液を画像にすることにより、検査した。内視鏡の先端を、45°の角度で浸漬することで、ウェルの底からの励起光の反射を避けた。NIRカメラは、それぞれ1/60秒で一体30ビデオ・フレームに設定された。低NIR及び高NIRチャンネルの両方の中央領域のシグナル強度は、専用ソフトウェア(CMIR Image)を用いて測定され、最大飽和値のパーセンテージに正規化された。
【0043】
図6A及び6Bを参照すると、相対シグナル強度(SI)、対、蛍光色素濃度が、低NIRチャンネル(図6A)及び高NIRチャンネル(図6B)について作表してある。誤差棒は標準偏差を表す。低NIRチャンネルのCy5.5曲線600が、低NIRチャンネルのCy7曲線602よりも先に高レベルになる。同様に、高NIRチャンネルのCy7曲線604が、高NIRチャンネルのCy5.5曲線606よりも先に高レベルになる。Cy5.5蛍光色素が高NIRチャンネルに寄与するシグナル強度、及び、Cy7蛍光色素が低NIRチャンネルに寄与するシグナル強度は、「チャンネル間クロストーク」を意味するものであり、好ましくない。
【0044】
クロストークの補正
蛍光色素濃度の量的測定の精度を高めるために、ある濃度におけるチャンネル間クロストークの変化を実験的に判定する。回帰線を、SI、対、濃度曲線の線形部分に最小二乗法を用いて合わせ、チャンネル間クロストークの補正条件を作成する。NIRチャンネル間のクロストークは、部分的には、通常用いられている有機蛍光色素のスペクトルの広いテールの結果である。
【0045】
このチャンネル間クロストークを補正するために、各チャンネル毎の蛍光色素濃度とSIとの間の関係を定義する曲線の線形部分を用いて、この曲線のデータにあわせる線形適合値を得る。高NIRチャンネルの総SI(SINIR700)、及び 低NIRチャンネルの総SI(SINIR780)は:
【0046】
【数1】

で表され、但し式中、[con(Cy5.5)] 及び[con(Cy7)] は二つの蛍光色素の濃度である。SIは完全飽和時の0から1までの範囲のCCDカメラの正規化後のシグナル強度である。係数b及びcは、それぞれ他方のチャンネルの蛍光により生ずるSI量(チャンネル間クロストーク)を表す。con(Cy5.5)] 及び [con(Cy7)] の等式を解くと:
【0047】
【数2】


となる。
【0048】
SI対濃度曲線(図6A−6B)から、NIR700については30nM及び1μMの間、そして高NIRチャンネルについては30nM及び3μMの間の曲線の線形部分で回帰を行う。各係数は、 a = 1.00μM-1、b =0.16μM-1
c =0.056μM-1、そして d =0.751μM-1 であると計算される。従ってチャンネル間クロストークの適正な補正は:
【0049】
【数3】

である。

【0050】
計算された補正は、二つの蛍光色素の濃度が等しいときに、低NIR及び高NIRチャンネルの総シグナル強度のそれぞれ5.5%及び22%である。
【0051】
実施例
以下の実施例では、自生結腸腫瘍モデルで、ここで解説された光学画像システムによる潅流及び酵素活性を画像に捉える実現可能性を実証する。結腸鏡検査を、ジャクソン・ラボラトリーズ社(メリーランド州バー・ハーバー)から得られた APCMin+/- マウス(20乃至30週齢)で新しい本光学画像システムを用いて行った。これらのマウスは、ヒトの疾患を模倣する腸管のポリポーシスを起こす、APC遺伝子の異型接合型の欠失を有する。本光学画像システムの内視鏡を水で潤滑にし、麻酔したマウスの直腸に導入した。腸の穿孔や、食道を通じた流体の逆流につながりかねない腸全体の過剰吹送を防ぐために平均圧力を10mmHg未満に維持しながら、結腸に空気をやさしく吹送した。内視鏡を結腸にやさしく進行させつつ、内視鏡の先端を徹照で位置確認することと、過剰吹送を観察することの両方のために、腹部を観察した。挿入の平均長さは4cmであり、各調査は行うのに10乃至15分を要した。
【0052】
本光学画像システムの白色光チャンネルを用いて、下行結腸又はS字結腸に自生ポリープを持つ4匹の動物を特定した。各病巣の予備注射(増強なし)蛍光強度を記録した。これらの4匹の動物に、高NIRチャンネルのバンドで蛍光するCy7プロテアーゼ画像プローブを2nmol/マウス1匹、静脈内注射した。本光学画像システムを用いた結腸鏡検査を、プロテアーゼ・プローブのピーク蛍光強度が起きる時点である24時間後に繰り返した。この2回目の調査中、低NIRチャンネルのバンドで蛍光する潅流画像剤であるインドシアニン染料Cy5.5を、架橋酸化鉄ナノ粒子に結合させたものを1 nmol/マウスの用量、注射した。これらの二つの異なるマーカを分離する能力を実証するために、アデノーマと正常な腸管壁の蛍光強度を、二番目の造影剤の注射前及び注射後に両方のNIRチャンネルで記録した。白色光チャンネル、低NIRチャンネル、及び高NIRチャンネルについて、プロテアーゼ画像プローブ及び潅流画像剤を注射した後に得られた、同時にキャプチャされた画像を、それぞれ図7A、7B、及び7Cに示す。
【0053】
図7Aの白色光画像は、生物組織の一部分の滑らかな表面特徴を示している。図7Bの低NIRチャンネル画像は、潅流画像剤に相当する画像の左下側部分の明るい点を、プロテアーゼ画像プローブを原因とするいくらかのクロストークと一緒に示す。図7Cの高NIRチャンネル画像は、プロテアーゼ画像プローブに相当する画像の上側部分の明るい点を、潅流画像剤を原因とするいくらかのクロストークと一緒に示す。
【0054】
クロストークの補正(即ち上で計算された係数)を、上で解説した通りにNIRチャンネルに対して行い、その結果の画像を、図8A及び8Bに示すように白色光チャンネル画像に融合させた。図8Aの融合後の画像は、白色光画像の表面特徴を、潅流画像剤に相当する、クロストークが低減された低NIRチャンネル画像の左下の点と一緒に示す。図8Bの融合画像は、白色光画像の表面特徴を、プロテアーゼ画像プローブに相当する、クロストークが低減された高NIRチャンネル画像の上側部分の点と一緒に示す。
【0055】
上述したように、低NIRチャンネルに導入された補正は5.5%であるが、他方、より大きな22%の補正が、高NIRチャンネルに導入された。この非対称性は、Cy5.5及びCy7放出スペクトルのテールの重複及び非対称性が原因である。低NIRチャンネルで記録される高NIRチャンネルで主に放出している蛍光色素からはほとんど放出光はないが、他方、低NIRチャンネルで主に放出している蛍光色素は、中程度、高NIRチャンネルでも記録される。前記の補正が、既知の濃度の蛍光色素混合物を添加した模型でも真実であることを確認し、示した(データは図示せず)。
【0056】
本光学画像システムを用いた結腸鏡検査後に、動物をと殺し、結腸をin situで、肉眼スケールで専用に作られたエピフルオレセンス(原語:epifluorescence)画像システム原型(ドイツ、エルランゲン、シーメンス社)を用いて検査した。結腸鏡検査で検出された各蛍光シグナルの局在及びスペクトル分布を記録した。加えて、ポリープを隣接する正常結腸と一緒に切除し、組織切片を、ヘマトキシリン及びエオシンで染色することで、組織検査に向けて加工した。蛍光をエピフルオレセンス画像システムでex vivoで観察したすべての場合で、本光学画像システムで記録された蛍光は、スペクトルの品質と局在の両方に相関していた。
【0057】
結腸鏡検査はすべての動物で可能であった。結腸は脾彎曲部に至るまで完全に検査することができた。高NIRチャンネルでプロテアーゼ活性化性プローブを投与した後は、ポリープを容易に特定することができた。対照的に、血管内造影剤と同時に用いると、異なる空間パターンが示された。ポリープは僅かに中程度で不完全な増強を示しただkであるが、低NIRチャンネルで最も明るい領域は、白色光チャンネルでは粘膜の赤みがかった部分として特定の可能な小腸の充血部分だった。次に、標的組織の拡大画像を組織検査(図9A及び9B)を正常な結腸組織の拡大画像(図9C)と比較すると、低NIRチャンネルでは高血管密度が高いSIと(図9A)、そして高NIRチャンネルでは小腸のアデノーマが高いSIと(図9B)と、相関することが確認された。図9A及び9Cの画像は200倍の倍率で得られ、図9Bの画像は20倍の倍率で得られた。図9Aの表皮剥離は、加工による人為産物を反映するものである。
【0058】
結腸腺腫症のマウス・モデルを用いて、還流及びプロテアーゼ活性の両方を、生きたマウスで同時に、個別に、そして繰り返し、検出することができる。この二つのパラメータ、即ち血管化および局所酵素活性、を同時に獲得することができる。ここで解説された光学画像システムは、いずれの動物又はヒトでも、複数の分子標的を繰り返し、非破壊的に光学画像撮影するのに用いることができる。
【0059】
他の実施態様
以上、本発明をその詳細な説明との関連から解説してきたが、前述の説明は本発明の範囲を描写することを意図したものであり、それを限定することは意図しておらず、本発明の範囲は、付属の請求の範囲によって定義されるものであることを理解されたい。他の局面、利点、及び改良点は、以下の請求項の範囲内である。

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、光学画像システムの概略図である。
【図2】図2は、前記光学画像システムの光源の概略図である。
【図3】図3は、集光光学素子を含む前記光学画像システムの一部分の概略図である。
【図4】図4は、前記光学画像システムのビーム・スプリッタの透過スペクトルである。
【図5】図5A−5Fは、前記光学画像システムの多様な位置におけるNIRチャンネル・パワースペクトル密度のグラフである。
【図6】図6A−6Bは、補助チャンネルでの相対的シグナル強度、対、蛍光色素濃度のグラフである。
【図7】図7A−7Cは、白色光チャンネル及び二つの補助チャンネルによる生物組織の一部分の表現である。
【図8】図8A−8Bは、図7A−7Cでの画像の組み合わせの表現である。
【図9】図9A−9Cは、標的結腸組織及び正常な結腸組織の拡大画像の表現である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一入射角で受け取られた入力ビームのうちから、白色光スペクトルの実質的な部分を含むパワースペクトル密度を有する第一ビームの光線を第一出力ポートから出力し、そして第一非白色光スペクトルの実質的な部分及び第二非白色光スペクトルの実質的な部分を含むパワースペクトル密度を有する第二ビームの光線を第二出力ポートから出力する、第一ビーム・スプリッタと;
第二入射角で前記第二ビームを受け取るように配置され、前記第一非白色光スペクトルを含むパワースペクトル密度を有する第二ビームの実質的な部分を反射すると共に、前記第二非白色光スペクトルを含むパワースペクトル密度を有する第二ビームの実質的な部分を透過させる第二ビーム・スプリッタと;
前記第二ビーム・スプリッタを透過したビームの実質的な部分を反射するように配置されたリフレクタと
を含むビーム・スプリッタ・アレイ。
【請求項2】
前記第一出力ポートが、光を透過させる前記第一ビーム・スプリッタの表面を含み、前記第二出力ポートが、光を反射する前記第一ビーム・スプリッタの表面を含む、請求項1に記載のビーム・スプリッタ・アレイ。
【請求項3】
前記第一出力ポートが、光を反射する前記第一ビーム・スプリッタの表面を含み、そして前記第二出力ポートが、光を透過させる前記第一ビーム・スプリッタの表面を含む、請求項1に記載のビーム・スプリッタ・アレイ。
【請求項4】
前記第二ビーム・スプリッタが、更に、前記第一ビームを第一方向で反射するように配置され、そして前記リフレクタが、更に、前記第二ビームを前記第一方向から20°以内である第二方向で反射するように配置されている、請求項1に記載のビーム・スプリッタ・アレイ。
【請求項5】
前記第一ビーム・スプリッタが、約400ナノメートル及び約670ナノメートルの間の波長を含む白色光スペクトルのうちの少なくとも50%にわたって0.5より大きい光透過スペクトルと、前記白色光スペクトルとは重ならない前記第一非白色光スペクトルにわたって0.5より大きく、そして前記白色光スペクトル又は前記第一非白色光スペクトルとは重ならない前記第二非白色光スペクトルにわたって0.5より大きい光反射スペクトルとを有する、請求項1に記載のビーム・スプリッタ・アレイ。
【請求項6】
前記第二ビーム・スプリッタが、前記第一非白色光スペクトルにわたって0.5より大きい光反射スペクトルと、前記第二非白色光スペクトルにわたって0.5より大きい光透過スペクトルとを有する、請求項5に記載のビーム・スプリッタ・アレイ。
【請求項7】
前記リフレクタが、前記第二非白色光スペクトルにわたって0.5より大きい光反射スペクトルを有する、請求項5に記載のビーム・スプリッタ・アレイ。
【請求項8】
前記第一非白色光スペクトルが近赤外スペクトルを含む、請求項1に記載のビーム・スプリッタ・アレイ。
【請求項9】
前記第一非白色光スペクトルが狭帯域可視スペクトルを含む、請求項1に記載のビーム・スプリッタ・アレイ。
【請求項10】
前記第一非白色光スペクトルが約680ナノメートル乃至約720ナノメートルの間の波長を含む、請求項1に記載のビーム・スプリッタ・アレイ。
【請求項11】
前記第二非白色光スペクトルが、約760ナノメートル乃至約800ナノメートルの間の波長を含む、請求項1に記載のビーム・スプリッタ・アレイ。
【請求項12】
約700nmを中心とするバンドパス透過スペクトルを有すると共に、前記第一ビームを受け取るように配置された第一フィルタと;
約780nmを中心とするバンドパス透過スペクトルを有すると共に、前記第二ビームを受け取るように配置された第二フィルタと
を更に含む、請求項1に記載のビーム・スプリッタ・アレイ。
【請求項13】
請求項1に記載のビーム・スプリッタ・アレイと;
約700nmを中心とするバンドパス透過スペクトルを有すると共に、前記第二ビーム・スプリッタから反射された光線のビームを前記第二入射角で受け取るように配置された第一フィルタと;
約780nmを中心とするバンドパス透過スペクトルを有すると共に、前記リフレクタから反射された光線のビームを受け取るように配置された第二フィルタと;
試料から照射された光線を前記第一入射角で前記第一ビーム・スプリッタに送達するように配置された第一導波管と;
前記第一ビーム・スプリッタから出力された光線のビームを第一入射角で受け取るように配置された第一検出器と;
前記第二ビーム・スプリッタから反射された光線のビームと、前記リフレクタから反射された光線のビームとを受け取るように配置された第二検出器と
を含むシステム。
【請求項14】
前記第一検出器がカメラを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第二検出器が、前記第二ビーム・スプリッタから反射された光線のビームと、前記リフレクタから反射された光線のビームとを受け取るように配置された単一のカメラを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記第二検出器が、それぞれ前記第二ビーム・スプリッタから反射された光線のビームと、前記リフレクタから反射された光線のビームとを受け取るように配置された二つのカメラを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
白色光を含む光線の光源;及び
前記光源から生じた光線を生物組織に送達するように配置された第二導波管
を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記光源をフィルタ処理して、前記第一非白色光スペクトル及び第二非白色光スペクトル中の白色光を減じる、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記光源が、狭帯域非白色光源と組み合わされた広帯域白色光源を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記広帯域白色光源がキセノン・ランプを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記狭帯域非白色光源がレーザ・ダイオードを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
白色光を含む光線の光源からの光線で試料を照射するステップと
前記試料からの光線を採集するステップと;
採集された光線をビーム・スプリッタ・アレイに送達するステップと;
前記ビーム・スプリッタ・アレイからの白色光スペクトルを含むパワースペクトル密度を持つ光線の第一画像を検出するステップと;
前記ビーム・スプリッタ・アレイからの第一非白色光スペクトルを含むパワースペクトル密度を持つ光線の第二画像を検出するステップと;
前記ビーム・スプリッタ・アレイからの第二非白色光スペクトルを含むパワースペクトル密度を持つ光線の第三画像を検出するステップと
を含む、方法。
【請求項23】
前記ビーム・スプリッタ・アレイが:
第一入射角で受け取られた入力ビームのうちから、白色光スペクトルの実質的な部分を含むパワースペクトル密度を有する第一ビームの光線を第一出力ポートから出力し、そして第一非白色光スペクトルの実質的な部分及び第二非白色光スペクトルの実質的な部分を含むパワースペクトル密度を有する第二ビームの光線を第二出力ポートから出力する、第一ビーム・スプリッタと;
第二入射角で前記第二ビームを受け取るように配置され、前記第一非白色光スペクトルを含むパワースペクトル密度を有する第二ビームの実質的な部分を反射すると共に、前記第二非白色光スペクトルを含むパワースペクトル密度を有する第二ビームの実質的な部分を透過させる第二ビーム・スプリッタと;
前記第二ビーム・スプリッタを透過したビームの実質的な部分を反射するように配置されたリフレクタと
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第一出力ポートが、光を透過させる前記第一ビーム・スプリッタの表面を含み、前記第二出力ポートが、光を反射する前記第一ビーム・スプリッタの表面を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第一出力ポートが、光を反射する前記第一ビーム・スプリッタの表面を含み、そして前記第二出力ポートが、光を透過させる前記第一ビーム・スプリッタの表面を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記第一、第二、及び第三画像が同時に検出される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記第一、第二、及び第三画像が記録される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記第一、第二、及び第三画像のうちの二つ以上を数学的関数を用いて組み合わせるステップを更に含む、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−528505(P2007−528505A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547511(P2006−547511)
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/043746
【国際公開番号】WO2005/062987
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(501386533)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (9)