説明

マルチニップ型カレンダ用湿潤装置

本発明は、マルチニップ型カレンダ(1)の湿潤装置に関連し、その手段によって、マルチニップ型カレンダ内でカレンダされるように、繊維ウェブ(W)は湿らされ、マルチニップ型カレンダは、ロール間にロールニップ(N)、少なくともロールの一つが反転ニップであるロールセット(2)を含み、湿潤装置は繊維ウェブを湿らすためのロール手段(3)を含む。ロール手段は一直線に並べられたロールセットのライン(L)に近接してポケット内に置かれ、ポケットは、繊維ウェブ(W)、ロールセット内の一つの遊びロール(5)と該ロール手段(3)によって限定された空間によって形成され、繊維ウェブは、二箇所でロールセットの該ロールと、ロールの長手軸から見たとき、ロールマントルの反対側に位置するロールニップで、接触し、ロール手段(3)まわりを循環する。繊維ウェブ(W)は、好ましくは、反転ニップ(N;N3) 直前のロールニップで、ロールセット中の該ロールと接触する。ロール手段(3)は、減衰ユニット(33)と減衰ユニットに対して繊維ウェブ(W)を案内するロール(32)を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、請求項1の冒頭文に規定されているように、マルチニップ型カレンダ用湿潤装置に関連する。
【0002】
マルチニップ型カレンダは、ポリマーロールと熱せられた鋼鉄ロール間に形成される複数のニップを含む。ロールニップ間を通過する間、繊維ウェブはその表面でカレンダされる。一つのフレームに配置されたマルチニップ型カレンダで繊維ウェブの両側をカレンダすることが望ましい場合、二つの連続したポリマーロールを含む“反転ニップ”(reversing nip)は、マルチニップ型カレンダ内に提供されねばならない。カレンダされた繊維ウェブは、繊維ウェブの横と長手方向の両方において、出来るだけ等しい品質を持つべきであり、それ故に、繊維ウェブは、マルチニップ型カレンダに入る前とマルチニップ型カレンダ内を進行している間の両方で、湿らせることを必要とする。通常1から4の繊維ウェブ減衰ユニットは、マルチニップ型カレンダ内に配置され、減衰ユニット数は、本質的には、カレンダ内のニップ数とカレンダが一つ又はそれ以上のフレーム内に配置されるかどうかの事実に依存する。マルチニップ型カレンダでのロールニップ数の増加と共に、繊維ウェブは、増加された減衰を必要とするであろう。反転ニップは、また、繊維ウェブの両側が減衰を必要とするであろうとの理由で、繊維ウェブの増加された減衰を必要とするであろう;通常、減衰は、反転ニップを装備するマルチニップ型カレンダ内で、反転ニップの前、繊維ウェブがマルチニップ型カレンダに入る直前に実行される。 反転ニップ前で起こる減衰は、通常、出力ロールとロールセット間の“ポケット(pocket)”内で配置された減衰ユニットによって遂行される。マルチニップ型カレンダでは、ロールセットは、通常、非常に狭い領域内に置かれ、繊維ウェブがポケット内で効果的に湿らせるために、減衰ユニット数が増加されねばならない。狭いポケットは、遊びロールのクラウン変動手段(crown variation means)と、また、蒸気ボックスのような補助手段、更に、繊維ウェブ減衰ユニットの配管を既に収納している故に、非常に大きく効率的な減衰ユニットを収納することが出来ない。一直線に並べられたロールセットのラインから更に離れて移送される出力ロールを持つポケットを拡張することにより、本問題を解決しようとする試みは、出力ロールの増加するトルクに起因する振動を生じさせる危険を冒すであろう。
【0003】
本発明の目的は、上記の既存の技術の欠点を解消することである。従って、本発明の最主要な目的は、反転ニップを装備するマルチニップ型カレンダ内に、湿潤装置がマルチニップ型カレンダのポケット内に減衰ユニットの有効な場所を考慮に入れることで、繊維ウェブ湿潤装置を提供することである。
【0004】
本発明は、マルチニップ型カレンダ内の繊維ウェブ減衰ユニット数を減らすことの付加的な目的を持つ。
【0005】
請求項1で規定された湿潤装置は、上述の目的を達成する。
【0006】
マルチニップ型カレンダ内でカレンダされる繊維ウェブが湿らせられる本発明のマルチニップ型カレンダの減衰装置は、ロール間にロールニップを持つロールセットを含む。減衰装置は、一直線に並べられたロールセットのラインに近接するポケット内に配置されている繊維ウェブを減衰するためのロール手段を含み、ポケットは、繊維ウェブ、ロールセット中の遊びロールの一つと該ロール手段により輪郭を定められた空間から成る。繊維ウェブは、ロールの長手軸から見て、ロールマントルの反対側に位置するロールニップで、近似的に、ロールセット内のこのロールに二箇所で接触し、また、繊維ウェブは、ロール手段まわりを循環する。ロール手段は、減衰ユニットと減衰ユニットに対して繊維ウェブを案内するロールとを含む。好ましい実施例では、繊維ウェブは、反転ニップ直前に置かれたロールニップで、ロールセット内のこのロールに触れる。
【0007】
この出願では、反転ニップは、ポリマーで被覆された二個のポリマーコートロール(polymer−coated roll)間に形成されるロールニップを意味する。
【0008】
本発明は、減衰ユニットの前面(水が通過して吹かれる表面)の各側で、相対的に小さな直径を持つ二個のガイドロールを含むロール手段で置き換えられるマルチニップ型カレンダ内の出力ロールに関する基本的なアイデアに基づいている。この方法では、効果的で相対的に大きなサイズの減衰ユニットは、マルチニップ型カレンダの中の別の方法で狭いポケット内に収納されることが出来る。本発明の好ましい実施例では、ガイドロールは、複数の連続したロールセクションから成る。
【0009】
本発明の湿潤装置は、繊維ウェブ減衰に対する対応する既存の技術装置に勝るいくらかの利点を達成する。従って、相対的に大きな直径を持つ出力ロールが、減衰ロール手段の中に配置された著しくより小さな直径と大きさを持つガイドロールで置き換えられるとき、ロールセットのニップ振動は減少させられる。ニップロールから更に外側に出力ロールを移動することによってポケットを拡大する必要がなく、従って、増加するニップ振動は、更に避けられる。ポケット内で受け入れられる大きなサイズで効果的な減衰ユニットは、狭いロール領域内に配管とデバイスユニットがより少数となるように、減衰ユニット数の減少を考慮に入れる。ロールセットに対する整備(サービス)距離も維持出来る。
【0010】
本発明は、添付の図1を参照して記載される。
【0011】
図1は、ロールセット端から直接見て、マルチニップ型カレンダ1内のロールセット2を図式的に示したものである。図を明確にするため、マルチニップ型カレンダは、図中には、カレンダフレーム、繊維ウェブガイドロール、遊びロールの荷重補償手段、上下ロール荷重手段と蒸気ボックスのような補助手段の欠けた状態で示されている。図示されたマルチニップ型カレンダは、これらの構造に関しては、通常のものである。
【0012】
図1のマルチニップ型カレンダ1のロールセット2は、6個のロールを含む。ロールセットの外側は、ロールセットの中心線Lの左に位置し、それに対し、ロールセットの内側は、右側に位置する。それ故に、繊維ウェブは、ロールセットの内側からロールセットに入り、外側にロールセットを離れる。最上部と最下部のロール4;4’ と4;4’’の両方は、ロールセットでのニップ圧力の制御とまたニップ圧力分布の制御のために、ロール内に流体式荷重手段(hydraulic loading means)を装備している。遊びロール5、即ち、5’..5’’’’は、交互に、硬い面を持つ水加熱鋼鉄ロールとポリマーコートロールである。ポリマーコートロールは、従って、ロール4’、5’’、5’’’、4’’で、鋼鉄ロールは5’と5’’’’である。遊びロール5の端は、マルチニップ型カレンダの所望のニップ圧力分布を維持するため、固有のロール質量とロール端での補助手段とに起因するロールクラウニングを完全に又は部分的に補償することに役立つところの、流体式ロールクラウン変動手段(hydraulic roll crown variation means)を含む。クラウン変動手段は、例えば、”Wochenblatt fur Papierfabrikation、 Heft 23/24 1997”とその分野の他の参考文献で記載された手段のような、それ自体は一般的である設計を持つ。図に実施例として挙げたロールセット2は、5個のロールニップNを含み、その中心のニップN;N3は、単一面繊維ウェブ(single−sided web)の制御のため、“反転ニップ”である。反転ニップの異なった側での遊びロール5’’と5’’’は、両方ともポリマーロールである。ロールセットのラインL、即ち、ロールセットでロールの中心点を通る線Lは、概ね垂直である。ロールニップN;N2、 N;N4とN;N5は、カレンダ内の出力/伸長ロール(spreading roll)6によって先行され、これらのロールは、繊維ウェブを伸ばし、繊維ウェブが次のロールに到着する前に、熱ロールの熱が繊維ウェブ上に作用する期間中ずっと作用する役割をする。更に、これらの伸張/出力ロール6は、また、繊維ウェブWが機械断面内を移動する二個の連続したロールニップ間の距離を等しくする。反転ニップN;N3の前に置かれた出力ロールは、ロール手段3で置き換えられる。このロール手段3では、同じフレーム31は、取り付けられた繊維ウェブ減衰ユニット33と減衰ユニットに対して繊維ウェブの舵をとるガイドロール32を含む。ガイドロール32は、伸張ロール6の直径よりも著しく小さい直径を持つ。各ガイドロール32は、同じフレーム内に据え付けられ同一の直径を持つ短い連続したガイドロールによって形成される“断面ロール”(sectional roll)から成る。ガイドロール32は、繊維ウェブWの表面が減衰ユニットの前面33aの付近で通過し、水噴流がこの前面に供給されるように、減衰ユニットに対し配置される。減衰ユニット33は、減衰ユニットの前面に二個のノズル列を持ち、各ノズル列が複数の小さなノズルを含む設計のような、それ自体は通常である設計を持つであろう。小さな水滴は、前面の近傍で通過する繊維ウェブ表面を湿らすように、ノズルを通して処理される。減衰ユニットの設計に関するより詳細な記述に対し、既存技術と、例えば、range VIBAir TechTMの出願減衰ユニットが参照される。
【0013】
上に記載した種類のロール手段3は、ロールセット2に近接しているポケット7内に置かれる。ポケットは、繊維ウェブが、ガイドロール32;32’と32;32’’を介して、ロールニップN;N2とN;N3で遊びロール5’’(遊びロールのマントル)に接触し、ロール手段3まわりを循環する空間内に形成される。ロール手段3は、一直線に並べられたロールセットのラインLから適切な距離にある。遊びロール5’’が近接する遊びロール5’と5’’’に最も近くに存在するロールニップN;N2とN;N3は、遊びロールの長手軸から見て、遊びロール5’’のマントルの反対側に概略位置する。ロールニップN;N3は、二個のポリマコート遊びロール(polymer−coated idle roll)5’’と5’’’間に置かれている“反転ニップ”である。ロールニップN2は、同様に、加熱さられた熱ロール5’(鋼鉄コート遊びロール)とポリマコート遊びロール5’’間に置かれる。
【0014】
このポケット内に通常置かれる伸張ロールを置き換えるために、ポケット7内で上で記載した種類の減衰ユニット31を含むロール手段3を配置することは、減衰ユニットとまたその湿潤性能を適切な大きさにすることを可能にするかなりの利点を生じる。
【0015】
減衰ユニットの性能は、通常、水が通過して吹かれる(前面)ところの面積に直接比例している。もしも同じポケットが、出力ロールと減衰ユニットの両方を、他のポケット内の補充手段とまた荷重補償手段のそばに、収納すべきならば、減衰ユニットは、減衰ユニットの増大する数を必要とするところの、より小さな寸法とより低い出力をもつ大きさにする必要があろう。オプションとして、ポケット7は、ロールセットのラインLから外側に出力ロール6を移すことによって、より大きな寸法を与えることが出来ようが、しかしながら、これは、ガイドロールの増加するトルクによって生じ、且つマルチニップ型カレンダのフレームに作用される振動による問題を引き起こす危険を冒すであろう。
【0016】
本発明の一つの簡単な湿潤装置は、上に記載されてきた、しかしそれでも、請求項に規定された本発明のアイデアの範囲から離れることなく、本発明が多くの他の方法で適切に修正され得ることは、技術的に熟練したものには明らかである。本発明の装置は、従って、分割されたフレームを持つマルチニップ型カレンダにおいてもまた使用されることが出来る。そのようなマルチニップ型カレンダでは、繊維ウェブは、繊維ウェブがロールセットの最初の部分から第二の部分に送り出されるウェブ上で、乾燥する傾向があるので、減衰を必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ロールセット端から直接見て、マルチニップ型カレンダ1内のロールセット2を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチニップ型カレンダでカレンダ処理される繊維ウェブ(W)を湿らせるマルチニップ型カレンダ用湿潤装置(1)であって、
ロールニップ(N)がロール間に形成されるロール(2)のセットを含み、
ロールのセットのライン(L)の近傍のポケット(7)内に配置され、繊維ウェブを湿らせるロール手段(3)を含み、
前記ポケットは、繊維ウェブ(W)、前記ロールのセット内の遊びロール(5)の1つ、及び、前記ロール手段(3)により画成される空間により形成され、
繊維ウェブは、ロールの長手軸から見て、ロールセット内のロールに、ロールマントルの反対側のロールニップ内で、2箇所で接触し、前記ロール手段(3)周りを循環する、湿潤装置において、
前記ロール手段(3)は、減衰ユニット(33)と、減衰ユニットに対して繊維ウェブ(W)をガイドするロール(32)とを含むことを特徴とする、湿潤装置。
【請求項2】
繊維ウェブ(W)は、反転ニップ(N;N3)の直前に配置されるロールニップにおいて前記ロールセット内のロールに接触する、請求項1に記載の湿潤装置。
【請求項3】
ロールのセットのライン(L)は、水平面に対して効果的には直交し、又は角度をなす、請求項1又は2に記載の湿潤装置。
【請求項4】
前記ロール手段(3)は、減衰ユニット(33)と、減衰ユニットに対して繊維ウェブ(W)をガイドするロール(32)と、が取り付けられるフレームを含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の湿潤装置。
【請求項5】
前記ロール手段は、減衰ユニットの長手軸に平行に、減衰ユニットの前面(33a)の両側に配置される2つのロール(32)を含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の湿潤装置。
【請求項6】
ガイドロール(32)は、複数の連続するロールセクションからなる、請求項1〜5の何れか1項に記載の湿潤装置。

【図1】
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【公表番号】特表2006−505708(P2006−505708A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551058(P2004−551058)
【出願日】平成15年11月11日(2003.11.11)
【国際出願番号】PCT/FI2003/000852
【国際公開番号】WO2004/044315
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(501249157)メッツォ ペーパー インコーポレイテッド (33)
【Fターム(参考)】