説明

マルチプルビュー表示装置

【課題】視差バリアを任意の位置に形成可能な液晶表示装置において、厚さ、重量および製造コストを削減する。
【解決手段】液晶表示パネル100は、画像信号が供給される複数の画素電極11が配設された画像表示用TFTアレイ基板10と、視差バリアの位置を規定する制御信号が供給される複数の画素電極21が配設された視差バリア用TFTアレイ基板20と、それらの間に配設された液晶分離シート30とを備える。画像表示用TFTアレイ基板10は、液晶分離シート30との間の液晶層31を駆動して画像を表示し、視差バリア用TFTアレイ基板20は、液晶分離シート30との間の液晶層32を駆動して、視差バリアを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の視点に対してそれぞれ異なる画像を表示可能な表示装置(マルチプルビュー表示装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の視点に対してそれぞれ異なる画像を表示する液晶表示装置が知られている。その応用例としては、車載の液晶表示パネルであって、その表示パネルを運転席側から見た場合と助手席側から見た場合とで、異なる画像が見えように構成されたものがある(2画面表示装置)。
【0003】
この技術は、通常の液晶表示パネル上に、「視差バリア」と呼ばれる遮光層を形成することによって実現されている。2画面表示装置において、表示パネルには、運転席側から見た画像(運転席用画像)と助手席側から見た画像(助手席用画像)の両方が表示されており、その表示パネル上の視差バリアが、運転席側に対しては助手席用画像を遮光し、助手席側に対しては運転席用画像を遮光するように構成されている。
【0004】
また他の応用例としては、3D表示技術への適用が挙げられる。すなわち、表示パネルを、観察者の右目には右目用画像が見え、左目には左目用画像が見えるように構成したものである(3D表示装置)。3D表示装置において、表示パネルには、右目用画像と左目用画像の両方が表示され、視差バリアが、右目に対しては左目用画像を遮光し、左目に対しては右目用画像を遮光している。
【0005】
上記のように、2画面表示装置と3D表示装置は、表示パネルの各画素に対する視差バリアの位置が異なるが、その動作原理は同様である。よって、視差バリアの位置を変えることができれば、2画面表示と3D表示を切り替え可能な表示装置が実現できる。また、本体を傾けるとそれに応じて表示画面の映像が回転する携帯端末装置などがあるが、映像と一緒に視差バリアも回転させれば、3D映像にも対応することが可能になる。
【0006】
従来、視差バリアは、液晶表示パネル上に金属や樹脂で形成されていたため、ユーザーがその位置を変更することはできなかったが、例えば下記の特許文献1には、それを可能とした液晶表示装置が提案されている。
【0007】
特許文献1の液晶表示装置の表示パネルは、画像表示用の第1の液晶パネル(表示用液晶パネル)の上に、視差バリアとして機能する第2の液晶パネル(スイッチング液晶パネル)を貼り合わせて成っている。この技術によれば、第2の液晶パネルの各画素を制御することで視差バリアを任意の位置に形成でき、2画面表示/3D表示の切り替えや、2D表示/3D表示の切り替え、視点位置の調整、3D映像の回転などが可能になる。
【0008】
以下の説明においては、2画面表示や3D表示を含む、複数の視点に対してそれぞれ異なる画像を表示する機能を「マルチプルビュー表示」と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−139054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したように、特許文献1に係る液晶表示パネルは、2つの液晶パネルを貼り合わせることによって形成される。その具体的な構成は特許文献1の図1に示されているが、第1および第2の液晶パネルのそれぞれが2枚のガラス基板(アクティブマトリクス基板と対向基板)を有しているため、合計4枚のガラス基板が必要となる。そのため、通常の液晶表示パネルに比べ、厚さおよび重量が約2倍、製造コストは2倍以上となる。
【0011】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、視差バリアを任意の位置に形成可能なマルチプルビュー表示装置において、厚さ、重量および製造コストを削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るマルチプルビュー表示装置は、画像信号が供給される複数の画素電極が配設された第1基板と、視差バリアの位置を規定する制御信号が供給される複数の画素電極が配設された第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶と、前記液晶を前記第1基板側と前記第2基板側とに分離する液晶分離シートとを備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るマルチプルビュー表示装置は、2枚の基板(第1および第2基板)を用いて構成される。つまり、それぞれが2枚の基板を含む2つの表示パネルを貼り合わせて得られる従来装置よりも少ない基板を用いてマルチプルビュー表示装置が実現され、その厚さ、重量および製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係る液晶表示パネルの平面図である。
【図2】実施の形態1に係る液晶表示パネルの断面図である。
【図3】実施の形態1に係る液晶表示パネルの断面拡大図である。
【図4】TFTアレイ基板に形成されるTFT素子の断面図である。
【図5】実施の形態1に係る液晶表示パネルの変形例を示す平面図である。
【図6】実施の形態2に係る液晶表示パネルの断面拡大図である。
【図7】実施の形態2に係る液晶表示パネルの断面拡大図である。
【図8】実施の形態2に係る液晶表示パネルの断面拡大図である。
【図9】実施の形態3に係る液晶表示パネルの端部近傍の断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る液晶表示パネル100の平面図である。また図2は、液晶表示パネル100の断面図であり、図1のA1−A2線に沿った断面に対応している。液晶表示パネル100は、画像表示を行うTFT(Thin Film Transistor)アレイ基板(画像表示用TFTアレイ基板)10の上に、マルチプルビュー表示を可能にする視差バリアを形成するTFTアレイ基板(視差バリア用TFTアレイ基板)20が重ね合わさって構成されている。画像表示用TFTアレイ基板10および視差バリア用TFTアレイ基板20のそれぞれには、TCP(Tape Carrier Package)等の実装部品61,62が実装される。
【0016】
図2の如く、画像表示用TFTアレイ基板10と視差バリア用TFTアレイ基板20の間には、液晶分離シート30が配設される。この液晶分離シート30は、画像表示用TFTアレイ基板10と視差バリア用TFTアレイ基板20との間に挟持される液晶を、画像表示用TFTアレイ基板10側の液晶層31と、視差バリア用TFTアレイ基板20側の液晶層32とに分離する。また、画像表示用TFTアレイ基板10および視差バリア用TFTアレイ基板20の表面(液晶表示パネル100の外面)には、それぞれ偏光板41,42が設けられている。
【0017】
図3は、液晶表示パネル100の断面拡大図である。本実施の形態では、画像表示用TFTアレイ基板10側の液晶層31および視差バリア用TFTアレイ基板20側の液晶層32が、共にTN(Twisted Nematic)型の駆動モードで駆動される例を示す。つまり、液晶層31,32の液晶は、液晶分離シート30に垂直な方向の縦方向電界によって駆動される。
【0018】
画像表示用TFTアレイ基板10には、画像信号が供給される複数の画素電極11が配設される。なお、画像表示用TFTアレイ基板10には、画素電極11に画素信号を供給するためのTFT素子や、そのTFT素子に接続される配線等も形成されているが、図3では図示を省略している。
【0019】
画素電極11上には、赤(R)、緑(G)、青(B)各色の色材12を用いて構成されるカラーフィルタが設けられる。カラーフィルタの上層には、オーバーコート(OC)膜13が設けられる。OC膜13は、色材12による液晶の汚染を防ぐと共に、色材12から噴出するガスにより液晶層31内に気泡が発生することを防ぐ効果がある。
【0020】
本実施の形態では、液晶分離シート30は、可視光領域における光透過性を有すると共に導電性を有しており、且つ、画素電極11との間で液晶層31を駆動する縦方向電界を発生する共通電極としても機能する。この場合、液晶層31を挟むOC膜13と液晶分離シート30の両方の表面に配向膜14が設けられる。
【0021】
さらに、画像表示用TFTアレイ基板10上には、液晶分離シート30との間隔を規定する柱スペーサ15が、所定の間隔で形成されている。
【0022】
視差バリア用TFTアレイ基板20には、視差バリアの位置を規定する制御信号が供給される複数の画素電極21が配設される。なお、視差バリア用TFTアレイ基板20には、画素電極21に制御信号を供給するためのTFT素子や、そのTFT素子に接続される配線も形成されているが、図3では図示を省略している。視差バリア用TFTアレイ基板20の基本構造は、カラーフィルタ(色材およびOC膜)を有しないことを除いて、画像表示用TFTアレイ基板10とほぼ同様である。
【0023】
液晶分離シート30は、画素電極21との間で液晶層32を駆動する縦方向電界を発生する共通電極としても機能する。よって、液晶層32を挟む画素電極21と液晶分離シート30の両方の表面に配向膜24が設けられる。
【0024】
また、視差バリア用TFTアレイ基板20上にも、液晶分離シート30との間の間隔を規定する柱スペーサ25が、所定の間隔で形成されている。
【0025】
画像表示用TFTアレイ基板10は、液晶層31を用いて、画素電極11に供給される画像信号に応じた画像を表示するように動作する。一方、視差バリア用TFTアレイ基板20は、液晶層32を用いて、画素電極21に供給される制御信号に応じた位置に視差バリアを形成するように動作する。これによりマルチプルビュー表示が可能になる。また、視差バリア用TFTアレイ基板20を制御することによって、液晶層32に形成される視差バリアの位置を変更できるため、2画面表示/3D表示の切り替えや、2D表示/3D表示の切り替え、視点位置の調整、3D映像の回転なども可能である。
【0026】
なお図3では、簡単のため、画像表示用TFTアレイ基板10の画素電極11と視差バリア用TFTアレイ基板20の画素電極21とが同じピッチで示したが(つまり、画像表示用TFTアレイ基板10と視差バリア用TFTアレイ基板20とが解像度が同じ)、互いに異なるピッチでもよい。視差バリア用TFTアレイ基板20の画素電極21のピッチ(視差バリア用TFTアレイ基板20の解像度)は、液晶表示パネル100の用途に応じて決定すればよい。例えば、比較的大まかな視点変更ができれば足りる場合には、視差バリア用TFTアレイ基板20の解像度を低く(画素電極21のピッチを広く)すればよく、より細かい視点変更を行う必要がある場合には、視差バリア用TFTアレイ基板20の解像度を高く(画素電極21のピッチを狭く)すればよい。
【0027】
本実施の形態の液晶表示パネル100は、2枚のガラス基板(画像表示用TFTアレイ基板10および視差バリア用TFTアレイ基板20)を用いて構成されている。つまり、特許文献1に開示された従来装置よりも2枚少ないガラス基板を用いて、視差バリアを任意の位置に形成可能なマルチプルビュー表示装置を実現している。よってその厚さ、重量および製造コストは、従来装置よりも低減される。
【0028】
次に、本実施の形態に係る液晶表示パネル100の製造方法を説明する。
【0029】
まず、画像表示用TFTアレイ基板10および視差バリア用TFTアレイ基板20をそれぞれ作製する。画像表示用TFTアレイ基板10および視差バリア用TFTアレイ基板20の基本構造は、通常の液晶表示パネルのTFTアレイ基板と同様であるため、その形成方法も一般的な手法に則って行うことができる。
【0030】
画像表示用TFTアレイ基板10の形成手法を説明する。まず、例えば厚さ0.5mmのガラス基板50上に、図4のようなTFT素子500を、マトリクス状に複数個形成する。即ち、ガラス基板50上にゲート電極51を形成し、その上にゲート絶縁膜52を形成する。そしてゲート絶縁膜52の上に半導体層53およびオーミックコンタクト膜54を積層してパターニングする。次に、金属薄膜を形成してパターニングすることで、ソース電極55およびドレイン電極56を形成する。続いて、ソース電極55およびドレイン電極56をマスクとするエッチングにより、オーミックコンタクト膜54をソース側とドレイン側に分割する。これによりTFT素子500の構造が完成する。
【0031】
図示は省略するが、TFT素子500のゲート電極51は、TFT素子500の駆動信号が供給される駆動信号線(ゲート配線)に接続し、ソース電極55は画像信号が供給されるデータ線(ソース配線)に接続している。
【0032】
その後、TFT素子500の上に層間絶縁膜57を形成し、当該層間絶縁膜57に、ドレイン電極56に達するコンタクトホールを形成する。そして層間絶縁膜57上に、コンタクトホールを介してドレイン電極56に接続する画素電極11を形成する。画素電極11は、例えばITOやIZOなどの透明導電膜により形成される。
【0033】
続いて、画像表示用TFTアレイ基板10上に、アクリル樹脂の柱スペーサ15を形成する。これにより、液晶層31を駆動するための電極間距離(液晶セルギャップ)、すなわち共通電極としての液晶分離シート30と画素電極11との間隔が規定される。液晶セルギャップは、光学設計に基づき決定され、通常は数μm程度であるが、本実施の形態では2μmとした。また、液晶セルギャップを確保する手段として、画像表示用TFTアレイ基板10上に散布するビーズ状スペーサを用いる場合には、柱スペーサ15の形成を省略できる。但し、ビーズ状スペーサは、散布時に凝集する問題が生じる恐れがあるため、柱スペーサを用いることが好ましい。
【0034】
次に、画像表示用TFTアレイ基板10上に、赤、緑、青それぞれの色材12を写真製版にて塗布して現像する。そして色材12の上にOC膜13を形成する。これにより上層にOC膜13を備えるカラーフィルタ(CF)が形成される。ここまでの一連の工程は「CF on allay」と呼ばれ、TFTアレイ基板にCF機能を持たせるための一般的な技術である。
【0035】
次に、視差バリア用TFTアレイ基板20の形成手法を説明する。視差バリア用TFTアレイ基板20は、上記した画像表示用TFTアレイ基板10の形成手法とほぼ同様である。すなわち、視差バリア用TFTアレイ基板20にも、図4のようなTFT素子500を複数個形成し、そのドレイン電極56に接続する透明導電膜の画素電極21を形成する。さらに、必要に応じて柱スペーサ25を形成する。
【0036】
そして、形成された画像表示用TFTアレイ基板10および視差バリア用TFTアレイ基板20の上に、それぞれ配向膜14,24を塗布し、それら配向膜14,24に対し液晶を配向させるためのラビング処理を行う。
【0037】
また、本実施の形態では、導電性の液晶分離シート30を対向電極として用いるため、液晶分離シート30の両面にも配向膜14,24を塗布し、同じくラビング処理を行う。液晶分離シート30の両面の配向膜14,24は、両方同時に行う必要はない。例えば、配向膜14のラビング処理は、液晶分離シート30と画像表示用TFTアレイ基板10との貼り合わせ前に行われれば任意のタイミングでよく、配向膜24のラビング処理も、液晶分離シート30と視差バリア用TFTアレイ基板20との貼り合わせ前に行われれば任意のタイミングでよい。
【0038】
次に、ラビング処理後の画像表示用TFTアレイ基板10の表示領域を囲むようにシール材を形成し、その内側に液晶を滴下する。また、画像表示用TFTアレイ基板10の所定個所に、液晶分離シート30に所定の電位を印加するための、トランスファと呼ばれる導電ペーストを打点塗布する。液晶分離シート30は、画像表示用TFTアレイ基板10と貼り合わされたとき、このトランスファを介して、画像表示用TFTアレイ基板10と電気的に接続される。
【0039】
そして画像表示用TFTアレイ基板10上に、シール剤を用いて、液晶分離シート30を貼り合わせる。このとき柱スペーサ15(もしくはビーズ状スペーサ)により、画像表示用TFTアレイ基板10と液晶分離シート30との間の液晶セルギャップが確保される。
【0040】
またラビング処理後の視差バリア用TFTアレイ基板20にも、同様に、シール材形成、液晶滴下、トランスファの打点塗布を行い、その後、視差バリア用TFTアレイ基板20に、画像表示用TFTアレイ基板10と一体化した液晶分離シート30を貼り合わせる。このとき柱スペーサ25(もしくはビーズ状スペーサ)により、視差バリア用TFTアレイ基板20と液晶分離シート30との間の液晶セルギャップが確保される。
【0041】
ここで、画像表示用TFTアレイ基板10と視差バリア用TFTアレイ基板20との貼り合わせの際の位置合わせは、両基板の表面に形成された目印(アライメントマーク)を利用して行わる。それによって、画像表示用TFTアレイ基板10と視差バリア用TFTアレイ基板20との位置合わせ精度が確保される。
【0042】
通常、アライメントマークは、TFT素子の形成と同時に形成されるため、TFT素子が配設されるのと同じ面、すなわち液晶を挟持する側の面に形成される。図2に、画像表示用TFTアレイ基板10のアライメントマーク形成面10Aと、視差バリア用TFTアレイ基板20のアライメントマーク形成面20Aを示す。本実施の形態の液晶表示パネル100では、アライメントマーク形成面10A,10Bが液晶層31,32および液晶分離シート30を介して対向しており、画像表示用TFTアレイ基板10のアライメントマークと視差バリア用TFTアレイ基板20のアライメントマークとのギャップは狭い。そのギャップの大きさは、液晶分離シート30の厚さ(100μm程度)にほぼ等しい。そのため、両アライメントマークをそれらに同時にピントを合わせて観察できるため、正確な位置合わせ画可能である。
【0043】
一方、特許文献1のように、それぞれが液晶を挟持する2つの液晶パネル(画像表示用液晶パネルと視差バリア用液晶パネル)を貼り合わせる場合、基板のアライメントマークが形成されていない面同士が貼り合わせられるので、両アライメントマークの間には少なくとも基板2枚の厚さ分のギャップが生じる(例えば厚さ0.5mmの基板を用いた場合、少なくとも1mmのギャップが生じる)。そのため、両アライメントマークに同時にピントを合わせることができず、正確な位置合わせが困難である。
【0044】
マルチプルビュー表示装置では、画像を表示する画素と視差バリアとのずれを、数μmオーダー以下で管理する必要がある。本実施の形態によれば、画像表示用TFTアレイ基板10と視差バリア用TFTアレイ基板20との位置合わせ精度が格段に向上し、歩留まりの向上に寄与できる。
【0045】
画像表示用TFTアレイ基板10、視差バリア用TFTアレイ基板20および液晶分離シート30を貼り合わせて一体化させた後、それを所定のパネル寸法に切断する。具体的には、画像表示用TFTアレイ基板10と視差バリア用TFTアレイ基板20に、スクライブ技術により切断のための傷を入れ、さらにレーザを用いて液晶分離シート30を切断する。スクライブ工程と液晶分離シート30の切断工程は、どちらを先に行ってもよい。その後、基板に外力を印加し、スクライブ工程でつけた傷を起点に画像表示用TFTアレイ基板10および視差バリア用TFTアレイ基板20を切断する。
【0046】
特許文献1では、2つの液晶パネルを貼り合わせて作成するため、2つの液晶パネルそれぞれの形成過程で切断工程が必要となるが、本実施の形態では、切断工程を、画像表示用TFTアレイ基板10、視差バリア用TFTアレイ基板20および液晶分離シート30を貼り合わせた後の1回だけで済む。
【0047】
なお、本実施の形態では、画像表示用TFTアレイ基板10および視差バリア用TFTアレイ基板20それぞれの配線(ゲート配線、ソース配線等)に、信号制御基板などの実装部品61,62を実装する必要がある。そのため、画像表示用TFTアレイ基板10の実装部品61を接続させる端子部が視差バリア用TFTアレイ基板20で隠れないように、且つ、視差バリア用TFTアレイ基板20の実装部品62を接続させる端子部が画像表示用TFTアレイ基板10で隠れないように、画像表示用TFTアレイ基板10および視差バリア用TFTアレイ基板20を切断する必要がある(図1参照)。
【0048】
一般的なTFTアレイ基板において、ゲート配線の接続端子とソース配線の接続端子は、TFTアレイ基板の縦と横の二辺に配設される。その場合、図1のように液晶表示パネル100の四辺に実装部品61,62が実装される。
【0049】
一方、小型の液晶表示パネルでは、ゲート配線とソース配線をTFTアレイ基板の一辺に引き回し、それらの接続端子を一辺に集約させる技術がしばしば用いられる。その技術を本発明の画像表示用TFTアレイ基板10および視差バリア用TFTアレイ基板20に適用すれば、図5のように実装部品61,62の実装個所を液晶表示パネル100の二辺に減らすことができる。このように構成が簡素化されると、液晶表示パネル100を小型化できるため、表示パネルの配置スペースが制限される小型の表示装置に有効である。
【0050】
画像表示用TFTアレイ基板10、視差バリア用TFTアレイ基板20および液晶分離シート30の切断を行った後、実装部品61,62を実装し、偏光板41,42を装着することで、図1に示した液晶表示パネル100の構成が得られる。さらに、液晶表示パネル100にバックライト等の周辺装置(不図示)を取り付けることにより、液晶表示装置が完成する。
【0051】
ここで、実施の形態1で用いられる導電性を有する液晶分離シート30について詳細に説明する。液晶分離シート30には、光透過性、耐熱性ならびに強度が求められ、例えばアクリル樹脂を主成分とするシートを用いるとよい。アクリル樹脂は、光透過性が高く、液晶パネルの製造工程における熱履歴(最大で約200度)にも耐えられ、さらに貼り付けなどに対する高い強度を有している。
【0052】
本実施の形態では、液晶分離シート30として、アクリル樹脂を100μmの厚さまで引き延ばし、その両面にITOを約100〜200nm塗布した透明導電性シートを用いた。液晶分離シート30において、設計的に要求されるシート抵抗は10kΩ/□(ohm/square)程度以下であるが、500Ω/□以下であることが望ましい。更に、液晶分離シート30における可視光領域(光の波長400〜700nm)の透過率は80%以上を確保することが望ましいが、そのためには、ITOの塗布膜厚を200nm以下にすることが望ましい。本実施の形態ではITOの膜厚を150nmとした。
【0053】
一方、液晶分離シート30厚さは、強度と透過性、並びに光の干渉効果を考慮した光学設計により決定される。例えば、液晶分離シート30が10μm以下と薄い場合、透過率が高い反面、貼り合わせ時に液晶分離シート30自体にシワが生じ易く、しかも強度が弱いのでシワの発生抑えるために液晶分離シート30を強く張ることもできない。逆に、液晶分離シート30の厚みを500μm以上にすると、高い強度が得られるが、透過率の低下や(可視光領域での透過率が80%以上であることが望ましい)、光の干渉効果や位相差により色再現性が低下する。従って、液晶分離シート30の厚さは30〜400μmの範囲が望ましく、特に最適範囲である50〜150μmがより望ましい。
【0054】
本実施の形態では、アクリル樹脂の表面にITOを塗布することにより、液晶分離シート30の表面部分に導電性を持たせたが、塗布する透明導電膜はIZOなど他の材料でもよい。あるいは、液晶分離シート30を構成するアクリル樹脂自体に導電性物質を添加し、液晶分離シート30の全体に導電性を持たせてもよい。
【0055】
また、液晶分離シート30の膜厚は、液晶表示パネル100の用途に応じて定めてもよい。例えば、3D表示を主目的とする場合と、2画面表示を主目的とする場合とでは、液晶分離シート30の厚さの最適値は異なるであろう。
【0056】
本実施の形態では、液晶分離シート30を100μmとしたが、この液晶分離シート30の厚さでは所望の光学特性が得られないようであれば、液晶分離シート30に偏光機能を持たせて、光学特性の修正を行ってもよい。その場合、可視光領域の透過率が80%以下となることが懸念されるが、透過率よりも偏光方向の調整を優先させる場合には、有効な手段となる。
【0057】
また、画像表示用TFTアレイ基板10と液晶分離シート30との間の液晶層31と、視差バリア用TFTアレイ基板20と液晶分離シート30との間の液晶層32とは、同じ種類の液晶でよいが、それぞれ異なる種類の液晶を用いてもよい。一般に、視差バリアの位置は高速に変更する必要はないため、視差バリア用TFTアレイ基板20側の液晶層32の液晶は、画像表示用TFTアレイ基板10側の液晶層31の液晶よりも応答速度が遅いものを用いても、液晶表示パネル100が表示する画像の視認性に悪影響はない。応答速度が遅い液晶は比較的安価であるため、液晶表示パネル100の製造コストを削減できる。
【0058】
一方、液晶分離シート30に、ピンホールの発生などによる歩留まりの問題がある場合は、画像表示用TFTアレイ基板10側の液晶層31の液晶と、視差バリア用TFTアレイ基板20側の液晶層32の液晶とが混ざる可能性があるため、両者に異なる種類の液晶を用いると問題が生じる場合がある。その場合、2つの液晶層31,32に同じ種類の液晶を用いると、液晶の混在の問題は生じないため、結果的に液晶表示パネル100の歩留まりが向上し、製造コストの削減に寄与できる。このように、液晶層31,32のそれぞれに用いる液晶の種類は、要求される応答速度、コスト、歩留まりの観点から選定するとよい。
【0059】
<実施の形態2>
実施の形態1では、液晶層31,32の液晶を縦方向電界により駆動する例(TN型駆動モード)を示したが、本発明の適用はそれに限定されるものではない。実施の形態2では、液晶層31,32の液晶を液晶分離シート30に平行な横方向電界により駆動する例を示す。
【0060】
図6および図7は、画像表示用TFTアレイ基板10側の液晶層31および視差バリア用TFTアレイ基板20側の液晶層32の駆動モードとして、横方向電界を用いる駆動モードを採用した場合における、液晶表示パネル100の構成を示す断面拡大図である。そのうち図6は、IPS(In-Plane Switching)型の駆動モードを用いる場合の構成を示しており、図7は、FFS(Fringe-Field Switching)型の駆動モードを用いる場合の構成を示している。
【0061】
IPS型、FFS型のいずれの場合も、画像表示用TFTアレイ基板10には、画素電極11および、当該画素電極11との間で液晶を駆動する電界を発生する共通電極16の両方が形成される。同様に、視差バリア用TFTアレイ基板20には、画素電極21と共通電極26の両方が形成される。IPS型の場合には、図6のように画素電極11(21)と共通電極16(26)とが同層に配設される。FFS型の場合には、図7のように画素電極11(21)と共通電極16(26)とが、異なる層(層間絶縁膜17(27)の上層と下層)に配設される。
【0062】
本実施の形態では、液晶分離シート30を共通電極として機能させる必要がないため、液晶分離シート30には導電性を持たせなくてよい。また液晶分離シート30の表面に、配向膜14,24を設ける必要がない。
【0063】
なお、図6および図7の液晶表示パネル100の製造方法は、画像表示用TFTアレイ基板10および視差バリア用TFTアレイ基板20をIPS型またはFFS型のものにすること、液晶分離シート30に導電性を持たせないこと、並びに、液晶分離シート30への配向膜14,24の塗布およびそのラビング処理が不要であることを除いて、実施の形態1と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0064】
本実施の形態によれば、実施の形態1と比較して、液晶分離シート30に導電性を持たせる必要がなく、また液晶分離シート30への配向膜の塗布やラビング処理が不要になるため、液晶分離シート30の作成に係るコストを削減できる。
【0065】
また、IPS型、FFS型の液晶表示パネルは、TN型のものよりも視野角が広いことで知られる。従って、本実施の形態は、例えばカーナビゲーションシステムの表示パネルのように、広い視野角が必要な用途に有効である。
【0066】
本実施の形態において、画像表示用TFTアレイ基板10が発生する液晶層31の駆動電界と、視差バリア用TFTアレイ基板20が発生する液晶層32の駆動電界との干渉が懸念される場合には、液晶分離シート30に電界遮蔽機能を持たせるとよい。すなわち液晶分離シート30の構造を、図8のように電界遮蔽のための導電性の層(電界遮蔽導電層)35を絶縁性の層(アクリル樹脂など)で挟んで成る多層構造とすればよい。これは、IPS型、FFS型の両方に対して有効である。
【0067】
図3および図6〜図8では、画像表示用TFTアレイ基板10による液晶層31の駆動モードと、視差バリア用TFTアレイ基板20による液晶層32の駆動モードとを同じにした例を示したが、それらは互いに異なるものであってもよい。例えば、画像表示用TFTアレイ基板10はIPS型、視差バリア用TFTアレイ基板20はTN型、というように、要求される特性に基づき任意に選択できる。なお、縦方向電界を用いる駆動モード(TN型)と横方向電界を用いる駆動モード(IPS型、FFS型)を組み合わせる場合、液晶分離シート30には、縦方向電界を用いる駆動モードを行う側の面(共通電極として用いる面)だけに導電性を持たせ、且つ、その面に配向膜を塗布してラビング処理を行う。
【0068】
また、以上の説明では、液晶表示パネル100を透過型としたが、画像表示用TFTアレイ基板10の画素電極11の一部に反射膜を備えた半透過型としてもよく、同様の効果が得られる。
【0069】
<実施の形態3>
図9は、実施の形態3に係る液晶表示パネルの端部近傍の断面拡大図である。本実施の形態では、液晶表示パネル100の端部領域(液晶を封止するシール18,28よりも外側)において、液晶分離シート30に、画像表示用TFTアレイ基板10上の電極101と視差バリア用TFTアレイ基板20上の電極201とを電気的に接続するための導電パス301を設けている。導電パス301の上下には、導電パス301と電極101との間を接続するトランスファ102、および、導電パス301と電極201との間を接続するトランスファ202が配設される。
【0070】
液晶分離シート30が導電パス301を備えることにより、画像表示用TFTアレイ基板10上の電極101と視差バリア用TFTアレイ基板20上の電極201とを接続できるため、画像表示用TFTアレイ基板10の実装部品61を接続するための実装端子と、視差バリア用TFTアレイ基板20の実装部品62を接続するための実装端子とを、画像表示用TFTアレイ基板10および視差バリア用TFTアレイ基板20の片方にまとめることが可能になる。これにより液晶表示パネルの全体の外形を小さくでき、いわゆる狭額縁化が可能となる。
【0071】
<実施の形態4>
上記の各実施の形態においては、画像信号に応じた表示を行うデバイスとして、液晶層31を駆動する画像表示用TFTアレイ基板10を用いたが、それらに代えて、有機EL表示デバイスが配設された背面基板を用いることもできる。言い換えれば、視差バリア用TFTアレイ基板20と液晶分離シート30とが貼り合わさって成る構造体を、有機EL表示デバイスの前面基板として使用することによって、有機EL表示デバイスを用いたマルチプルビュー表示装置を実現できる。
【0072】
この場合、視差バリア用TFTアレイ基板20と液晶分離シート30の視差バリア用TFTアレイ基板20との間にだけ、液晶(液晶層32)が挟持され、液晶分離シート30は、その液晶と有機EL表示デバイスの背面基板とを分離する。
【0073】
本実施の形態によれば、それぞれ2枚のガラス基板を有する有機EL表示パネルと、視差バリア用の液晶パネルとを貼り合わせる場合に比べ、厚さ、重量、製造コストを大きく削減できる。
【0074】
有機ELを用いた表示装置は画素自体が発光するため、バックライトが不要である。また液晶分離シート30の視差バリア用TFTアレイ基板20側にだけ、液晶(液晶層32)が必要となる。先に述べたように、視差バリア用TFTアレイ基板20側の液晶層32には、高い応答速度は要求されないので、安価な液晶を使用できる。よって製造コストの低減にも寄与できる。
【符号の説明】
【0075】
100 液晶表示パネル、10 画像表示用TFTアレイ基板、20 視差バリア用TFTアレイ基板、30 液晶分離シート、11,21 画素電極、12 色材、13 オーバーコート膜、14,24 配向膜、15,25 柱スペーサ、16,26 共通電極、17,27 層間絶縁膜、18,28 シール、31,32 液晶層、35 電界遮蔽導電層、41,42 偏光板、61,62 実装部品、102,202 トランスファ、301 導電パス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号が供給される複数の画素電極が配設された第1基板と、
視差バリアの位置を規定する制御信号が供給される複数の画素電極が配設された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶と、
前記液晶を前記第1基板側と前記第2基板側とに分離する液晶分離シートとを備える
ことを特徴とするマルチプルビュー表示装置。
【請求項2】
前記液晶分離シートは、可視光領域における光透過性を有する
請求項1記載のマルチプルビュー表示装置。
【請求項3】
前記液晶分離シートは、少なくとも片面が導電性を有している
請求項1または請求項2記載のマルチプルビュー表示装置。
【請求項4】
前記液晶分離シートは、絶縁性の透明材料で形成されており、
前記液晶分離シートの導電性を有する面には、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛のいずれかを含む透明導電膜が形成されている
請求項3記載のマルチプルビュー表示装置。
【請求項5】
前記液晶分離シートは、アクリル系樹脂を主成分とする材料で形成されている
請求項4記載のマルチプルビュー表示装置。
【請求項6】
前記液晶分離シートの導電性を有する面側の前記液晶は、当該液晶分離シートの表面に垂直な向きの縦方向電界によって駆動される
請求項3から請求項5のいずれか一項記載のマルチプルビュー表示装置。
【請求項7】
前記液晶分離シートは、少なくとも片面が導電性を有しておらず、
前記液晶分離シートの導電性を有さない面側の前記液晶は、当該液晶分離シートの表面に水平な向きの横方向電界によって駆動される
請求項1または請求項2記載のマルチプルビュー表示装置。
【請求項8】
前記液晶分離シートの両面が導電性を有していない
請求項7記載のマルチプルビュー表示装置。
【請求項9】
前記第1基板上に形成されたカラーフィルタをさらに備える
請求項1から請求項8のいずれか一項記載のマルチプルビュー表示装置。
【請求項10】
前記第1基板および第2基板のそれぞれに、前記液晶分離シートとの間隔を規定する柱スペーサが形成されている
請求項1から請求項9のいずれか一項記載のマルチプルビュー表示装置。
【請求項11】
前記液晶分離シートは、偏光機能を備える
請求項1から請求項10のいずれか一項記載のマルチプルビュー表示装置。
【請求項12】
前記第2基板の画素電極は、前記第1基板の画素電極よりも狭いピッチで配設されている
請求項1から請求項11のいずれか一項記載のマルチプルビュー表示装置。
【請求項13】
前記液晶分離シートを挟んで、前記第1基板側の液晶は、前記第2基板側の液晶よりも応答速度が速い
請求項1から請求項12のいずれか一項記載のマルチプルビュー表示装置。
【請求項14】
前記液晶分離シートは、前記第1基板側と前記第2基板側との間で電界を遮蔽する導電層を含んでいる
請求項1から請求項13のいずれか一項記載のマルチプルビュー表示装置。
【請求項15】
前記液晶分離シートは、当該液晶分離シートを通して前記第1基板上の電極と前記第2基板上の電極とを接続するための導電パスを備える
請求項1から請求項14のいずれか一項記載のマルチプルビュー表示装置。
【請求項16】
画像信号に応じた表示を行う有機EL表示デバイスが配設された第1基板と、
視差バリアの位置を規定する制御信号が供給される複数の画素電極が配設された第2基板と、
前記第2基板との間で液晶を挟持すると共に、前記第1基板を前記液晶から分離する液晶分離シートとを備える
ことを特徴とするマルチプルビュー表示装置。
【請求項17】
前記液晶分離シートは、可視光領域における光透過性を有する
請求項16記載のマルチプルビュー表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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