説明

マルチホップ通信方法、及び通信装置

【課題】マルチホップ通信における伝送性能を向上させる。
【解決手段】第1通信装置10が、第2通信装置20との間でセッションを確立した後、第2通信装置20との間でデータの送受信が行われていない時間を計測し、セッションがタイムアウトして切断する前に、第2通信装置20に自動的にセッションを維持するための信号であるセッション維持信号1200を送信するようにする。セッション維持信号1200は、例えば、PINGコマンドなどの第1通信装置10と第2通信装置20との間の通信経路の健全性を確認するためのコマンドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マルチホップ通信方法、及び通信装置に関し、特に伝送性能を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無線通信ネットワークにおける送り元ノードと送り先ノードとの間に構築された仮想チャネルを介して送信されるチャネルデータを、チャネルデータの送信前に指定された送信リソースを使用して送り先ノードで受信し、仮想チャネルのための送信リソースが指定された後、予約制御メッセージを送り先ノードから送信することが記載され、上記予約制御メッセージには、指定された送信リソースの使用を任意の周辺ノードに知らせるために指定された送信リソースに関する情報が含まれることが開示されている。
【0003】
特許文献2には、電力系統で停電が発生した場合、所定の送信局が、各分散型電源のそれぞれに付設された受信局に所定の信号を送信し、この信号を受信した受信局が分散型電源を電力系統から解列(遮断)させる通信ネットワークシステム(分散型電源用転送遮断システム)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−500753号公報
【特許文献2】特開2009−240092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分散型電源用転送遮断システムにおいては、ラストワンマイル部における通信(中継局と子局との間の通信)に電力線通信(PLC:Power Line Communication)を用いている。しかし電力線通信を用いた場合、柱上変圧器ごとに中継局を設置する必要があり、とくに分散型電源用転送遮断システムを広域に展開しようとする場合は、中継局の設置にかかる費用が問題となる。
【0006】
そこで例えば、子局間でマルチホップ方式による無線通信を行い、一つの中継局がカバーするエリアを拡げることが考えられる。しかし現状のマルチホップ方式による無線通信技術では、経路設定やセッションの確立などに起因する伝送遅延が大きく、規定時間内に転送遮断を完了することが難しい。
【0007】
本発明はこのような背景に基づいてなされたもので、伝送性能を向上させることが可能な、マルチホップ通信方法、及び通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一つは、マルチホップ通信方法であって、第1通信装置が、第2通信装置との間でセッションを確立した後、前記第2通信装置との間でデータの送受信が行われていない時間を計測し、前記セッションがタイムアウトして切断する前に、前記第2通信装置に自動的に前記セッションを維持するための信号であるセッション維持信号を送信するようにする。
【0009】
本発明によれば、第1通信装置が、セッションがタイムアウトして切断する前に、第2通信装置に自動的にセッション維持信号を送信するので、セッションが確立された後、第1通信装置と第2通信装置との間でデータの送受信が行われていない場合でも、確立されたセッションがそのまま維持されることとなる。このため、セッションが再確立される頻度が減り、マルチホップ通信の伝送性能を向上させることができる。
【0010】
本発明の他の一つは、上記マルチホップ通信方法であって、前記セッション維持信号は、前記第1通信装置と前記第2通信装置との間の通信経路の健全性の確認に用いるコマンドを含むこととする。
【0011】
このように通信経路の健全性を確認するためのコマンドをセッション維持信号として送信するようにすれば、セッションの切断を防ぐとともに通信経路の健全性を確認することができる。尚、第1通信装置と第2通信装置がTCP/IPに従って通信する場合、上記コマンドは、例えばPINGコマンドである。
【0012】
本発明の他の一つは、上記マルチホップ通信方法であって、前記セッションは、前記第1通信装置がハローパケットをブロードキャスト送信し、前記第2通信装置が前記ハローパケットを受信して前記第1通信装置に返信パケットを送信し、前記第1通信装置が前記返信パケットを受信して記憶し、前記第1通信装置が前記第2通信装置にセッション確立要求を送信し、前記第2通信装置が前記セッション確立要求を受信してセッション確立パケットを前記第1通信装置に送信し、前記第1通信装置が前記セッション確立パケットを受信することにより確立されることとする。
【0013】
このように第1通信装置と第2通信装置との間のセッションの確立は、第1通信装置がブロードキャスト送信したハローパケットに応答してきた一つ以上の第2通信装置について纏めて行うことができる。そのため、例えば、通信の少ない時間帯に纏めてセッションを確立しておくことで、通信が頻発する時間帯にセッションの確立が発生する頻度が減少し、通信が頻発する時間帯における伝送性能を向上させることができる。
【0014】
本発明の他の一つは、上記マルチホップ通信方法であって、前記第1通信装置は、前記セッション維持信号以外に前記第2通信装置との間でデータの送受信が行われていない時間である累積無通信時間が所定時間(>セッションがタイムアウトする時間)を超えた後は、前記セッション維持信号の送信を中止することとする。
【0015】
このように累積無通信時間が所定時間(>セッションがタイムアウトする時間)を超えた後はセッション維持信号の送信を中止するようにすることで、長期に亘り不必要にセッションが維持されることによる弊害、例えば、帯域の減少やリソースの浪費を防ぐことができる。
【0016】
本発明の他の一つは、上記マルチホップ通信方法であって、電力系統と分散型電源との間の接続/切断を制御する開閉器に前記第2通信装置を設け、前記第2通信装置に、前記第1通信装置から受信したデータに応じて前記開閉器を制御させることとする。
【0017】
本発明によれば、マルチホップ通信を用い、電力系統と分散型電源との間の接続/切断を確実に制御することが可能な分散型電源用転送遮断システムを実現することができる。
【0018】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、マルチホップ通信における伝送性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】分散型電源用転送遮断システム1の概略的構成を説明する図である。
【図2】第1通信装置10のハードウエア構成を示す図である。
【図3】第2通信装置20のハードウエア構成を示す図である。
【図4】第1通信装置10が備える主な機能を示す図である。
【図5】第2通信装置20が備える主な機能を示す図である。
【図6】セッション確立処理S600を説明するフローチャートである。
【図7】ハローパケット700の一例である。
【図8】ハローパケット応答800の一例である。
【図9】セッション確立要求900の一例である。
【図10】セッション確立パケット1000の一例である。
【図11】セッション維持処理S1100を説明するフローチャートである。
【図12】セッション維持信号1200の一例である。
【図13】セッション維持信号1200の応答1300の一例である。
【図14】設定画面1400の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明を実施するための形態について図面とともに説明する。
図1に実施形態として説明する、分散型電源用転送遮断システム1の概略的な構成を示している。同図に示すように、分散型電源用転送遮断システム1は、商用電力系統4を構成している配電設備2(柱上変圧器等)に付設されている第1通信装置10と、開閉器3を介して商用電力系統4に接続している一つ以上の分散型電源5の夫々に付設されている第2通信装置20とを含む。
【0022】
第1通信装置10は、中央制御所6に設けられている情報処理装置(不図示)と所定の通信手段7(例えば、インターネット、電力線通信(PLC:Power Line Communication))、専用線(電力系統制御用情報伝送システム(CDT:Cyclic Digital data Transmission equipment)、メタル線、光ファイバ等)、無線又は有線による公衆通信網)を介して通信する。また第1通信装置10は、第2通信装置20の夫々とマルチホップ方式による無線通信(以下、マルチホップ通信と称する。)により通信する。
【0023】
開閉器3は、自身に付設されている第2通信装置20からの指示に応じて、分散型電源5の商用電力系統4への接続、もしくは分散型電源5の商用電力系統4からの切断(解列)を行う。第1通信装置10は、中央制御所6から制御信号を受信すると、受信した制御信号を第2通信装置20とマルチホップ通信を行って第2通信装置20に伝達する。第2通信装置20は、受信した制御信号に応じて開閉器3を制御し、上記接続又は切断を行う。
【0024】
図2に第1通信装置10のハードウエア構成を示している。同図に示すように、第1通信装置10は、中央処理装置11、主記憶装置12、入力装置13、表示装置14、第1通信インターフェース15A(第1通信I/F)、第2通信インターフェース15B(第2通信I/F)、及び計時装置16を備えている。
【0025】
中央処理装置11は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などを用いて構成されており、第1通信装置10の統括的な制御を行う。主記憶装置12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non Volatile RAM)等を用いて構成されており、プログラムやデータを記憶する。入力装置13はテンキーやタッチパネル等のユーザインタフェースであり、ユーザから操作入力を受け付ける。表示装置14は、液晶パネルなどであり、視覚的な情報を出力する。
【0026】
第1通信インターフェース15Aは、第2通信装置20とマルチホップ通信を行う。また第2通信インターフェース15Bは、中央制御所6に設けられている情報処理装置と有線又は無線による通信を行う。計時装置16は、RTC(Real Time Clock)等を用いて構成されており、現在日時等の日時情報(タイムスタンプ)を出力する。
【0027】
図3に第2通信装置20のハードウエア構成を示している。同図に示すように、第2通信装置20は、中央処理装置21、主記憶装置22、表示装置23、及び通信インターフェース24を備える。
【0028】
中央処理装置21は、CPUやMPUを用いて構成されており、第2通信装置20の統括的な制御を行う。主記憶装置22は、RAM、ROM、NVRAM等を用いて構成されており、プログラムやデータを記憶する。表示装置23は、液晶パネルなどであり、視覚的な情報を出力する。通信インターフェース24(通信I/F)は、第1通信装置10及び他の第2通信装置20とマルチホップ通信を行う。
【0029】
図4に第1通信装置10が備える主な機能を示している。同図に示すように、第1通信装置10は、セッション確立部151、データ送受信部152、無通信時間計測部153、及び累積無通信時間計測部154を備えている。これらの機能は、第1通信装置10のハードウエアによって、もしくは、第1通信装置10の中央処理装置11が、主記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0030】
セッション確立部151は、第2通信装置20との間でセッションを確立する。尚、セッションを確立するための前提となる、第1通信装置10と第2通信装置20との間の通信経路の確立は、両者間のマルチホップ通信を実現しているプロトコル(例えば、RIP(Routing Information Protocol)、OSPF(Open Shortest Path First)、BGP(Border Gateway Protocol)等)に従い、動的又は静的に行われる。
【0031】
データ送受信部152は、中央制御所6の情報処理装置又は、第2通信装置20との間でデータの送受信を行う。データ送受信部152のセッション維持信号送信部1521は、自身と現在セッションを確立している第2通信装置20との間で、セッションを維持するための信号(以下、セッション維持信号と称する。)を送信する。
【0032】
無通信時間計測部153は、自身と現在セッションを確立している相手方の第2通信装置20との間で、セッションを確立してからデータの送受信が行われていない時間期間(以下、無通信時間と称する。)を計測する。
【0033】
累積無通信時間計測部154は、セッション維持信号以外に第2通信装置20との間でデータの送受信が行われていない時間期間(以下、累積無通信時間と称する。)を計測する。
【0034】
図5に第2通信装置20が備える主な機能を示している。同図に示すように、第2通信装置20は、データ送受信部251、及びデータ転送部252を備えている。これらの機能は、第2通信装置20のハードウエアによって、もしくは、第2通信装置20の中央処理装置21が、主記憶装置22に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0035】
データ送受信部251は、第1通信装置10又は他の第2通信装置20との間でデータの送受信を行う。データ送受信部251のセッション維持信号受信部2511は、第1通信装置10又は他の第2通信装置20から送られてくるセッション維持信号を受信する。
【0036】
データ転送部252は、第1通信装置10又は他の第2通信装置20から送られてくるデータを、第1通信装置10又は更に別の第2通信装置20に転送する。データ転送部252のセッション維持信号転送部2521は、第1通信装置10又は他の第2通信装置20から送られてくるセッション維持信号を、第1通信装置10又は更に別の第2通信装置20に転送する。
【0037】
=処理説明=
次に以上の構成からなる分散型電源用転送遮断システム1において行われる処理について説明する。
【0038】
<セッション確立処理>
第1通信装置10と各第2通信装置20との間では、所定のタイミングで随時セッションの確立が行われる。上記タイミングは、例えば、分散型電源用転送遮断システム1に新たな分散型電源5が導入された場合や、分散型電源5の障害復旧時、中央制御所6の情報処理装置から開閉器3の制御指示を受信した場合などである。
【0039】
図6は、上記セッションの確立に際し第1通信装置10と第2通信装置20との間で行われる処理(以下、セッション確立処理S600と称する。)を説明するフローチャートである。同図に示すように、まず第1通信装置10は、全ての第2通信装置20に向けてハローパケット700をブロードキャスト送信する(S611)。
【0040】
図7にハローパケット700の一例を示している。同図に示すように、ハローパケット700には、送信元情報701(例えば、第1通信装置10のネットワークアドレス。)及び宛先情報702(例えば、第2通信装置20のネットワークアドレス。)などの情報が含まれている。
【0041】
第2通信装置20は、ハローパケット700を受信すると(S612)、受信したハローパケット700に対する返信パケット(以下、ハローパケット応答800と称する。)を、第1通信装置10に送信する(S613)。
【0042】
図8にハローパケット応答800の一例を示している。同図に示すように、ハローパケット応答800には、送信元情報801(例えば、第2通信装置20のネットワークアドレス。)及び宛先情報802(例えば、第1通信装置10のネットワークアドレス。)などの情報が含まれている。
【0043】
次に第1通信装置10は、第2通信装置20から送られてきたハローパケット応答800を受信すると、これを記憶する(S614)。次いで第1通信装置10は、ハローパケット応答800を送信してきた一つ以上の第2通信装置20にセッション確立要求900を送信する(S615)。
【0044】
図9にセッション確立要求900の一例を示している。同図に示すように、セッション確立要求900には、送信元情報901(例えば、第1通信装置10のネットワークアドレス。)及び宛先情報902(例えば、第2通信装置20のネットワークアドレス。)などの情報が含まれている。
【0045】
第2通信装置20は、第1通信装置10から送られてきたセッション確立要求900を受信すると(S616)、その応答であるセッション確立パケット1000を第1通信装置10に送信する(S617)。
【0046】
図10にセッション確立パケット1000の一例を示している。同図に示すように、セッション確立パケット1000には、送信元情報1001(例えば、第2通信装置20のネットワークアドレス。)、及び宛先情報1002(例えば、第1通信装置10のネットワークアドレス。)などの情報が含まれている。
【0047】
第1通信装置10は、第2通信装置20から送られてきたセッション確立パケット1000を受信すると、これを記憶する(S618)。
【0048】
次に第1通信装置10は、S618でセッション確立パケット1000を受信した一つ以上の第2通信装置20との間の各セッションについて、前述した無通信時間の計測を開始する(S619)。
【0049】
続いて第1通信装置10は、S614でハローパケット応答800を送信してきた全ての第2通信装置20から、セッション確立パケット1000を受信しているか否か判断する(S620)。ハローパケット応答800を受信した全ての第2通信装置20からセッション確立パケット1000を受信していれば(S620:YES)、処理は終了する。一方、未だセッション確立パケット1000を受信していない第2通信装置20が存在する場合には(S620:NO)、S615に戻る。
【0050】
尚、セッション確立パケット1000を無期限に待機することのないように、セッション確立要求900のリトライ送信回数について上限を設けたり、セッション確立パケット1000の待機時間にタイムアウトを設定するようにしてもよい。セッション確立処理S600は以上のようにして行われる。
【0051】
<セッション維持処理>
セッション確立処理S600が行われた後、第1通信装置10は、第2通信装置20との間で確立されている各セッションについて、前述した無通信時間が、セッションがタイムアウトする時間に近づいているか否かのリアルタイムな監視を開始し、近づいている場合はセッションがタイムアウトして切断しないように相手方の第2通信装置20にセッション維持信号を送信する。図11はこの処理(以下、セッション維持処理S1100と称する。)の詳細を説明したフローチャートである。以下、同図とともに説明する。
【0052】
第1通信装置10は、第2通信装置20の間で確立されている各セッションについて、無通信時間tが予め設定された第1閾値時間T1(アイドルタイムリミット)を超えているか否かをリアルタイム監視する(S1111)。尚、第1閾値時間T1(<セッションがタイムアウトする時間)は、少なくとも第1通信装置10から第2通信装置20にセッション維持信号が到達するのに要する時間より長い時間に設定される。
【0053】
無通信時間tが予め設定された第1閾値時間T1を超えていることを検知すると(S1111:YES)、第1通信装置10は、そのセッションの相手方の第2通信装置20にセッション維持信号1200を送信する(S1112)。
【0054】
図12にセッション維持信号1200の一例を示している。同図に示すように、セッション維持信号1200には、送信元情報1201(例えば、第1通信装置10のネットワークアドレス。)、及び宛先情報1202(例えば、第2通信装置20のネットワークアドレス。)などの情報が含まれている。
【0055】
尚、第1通信装置10と第2通信装置20がTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)に従って通信している場合には、セッション維持信号1200として、通信経路の健全性の確認に用いるコマンド(例えばPINGコマンド)を用いることができる。このようにセッション維持信号1200として、通信経路の健全性の確認に用いるコマンドを送信するようにすれば、セッションの切断を防ぐとともに、通信経路の健全性を確認することができる。
【0056】
第2通信装置20は、第1通信装置10からセッション維持信号1200を受信すると(S1113)、その応答1300を第1通信装置10に送信する(S1114)。そして第1通信装置10は、第2通信装置20から送られてきた応答1300を受信する(S1115)。
【0057】
図13に上記応答1300の一例を示している。同図に示すように、上記応答1300には、当該応答の送信元情報1301(例えば、第2通信装置20のネットワークアドレス。)、及び宛先情報1302(例えば、第1通信装置10のネットワークアドレス。)などの情報が含まれている。セッション維持処理S1100は以上のようにして行われる。
【0058】
以上に説明した通り、本実施形態の分散型電源用転送遮断システム1においては、第1通信装置10が、第2通信装置20との間でセッションを確立した後、第2通信装置20との間でデータの送受信が行われていない時間を計測し、セッションがタイムアウトする前に第2通信装置20に自動的にセッション維持信号1200を送信するので、セッションが確立された後、第1通信装置10と第2通信装置20との間でデータの送受信が行われていない場合でも、既に確立されているセッションが維持される。これによれば、セッションが再確立される頻度が減ってマルチホップ通信の伝送性能を向上させることができる。またこのように第1通信装置10と第2通信装置20との間で通信が行われたか否かに拘わらずセッションが長期間維持されるので、中央制御所6から第2通信装置20に迅速に制御指示を伝達して開閉器3を確実に制御することができる。
【0059】
以上に説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0060】
例えば、セッション維持信号1200以外に第2通信装置20との間でデータの送受信が行われていない時間(前述した累積無通信時間)が所定の第2閾値時間T2(>セッションがタイムアウトする時間)を超えた後は、第1通信装置10から第2通信装置20へのセッション維持信号1200の送信を中止するようにしてもよい。そのようにすれば、長期に亘って不必要にセッションが維持されることによる帯域の減少やリソースの浪費を防ぐことができる。尚、累積無通信時間と第2閾値時間T2との比較に代えて、累積無通信時間内におけるセッション維持信号1200の送信回数を制限するようにしてもよい。また累積無通信時間が第2閾値時間T2を超えた際、セッションとともにコネクションを切断するようにしてもよいし、セッションのみを切断してコネクションについてはそのまま維持しておくようにしてもよい。このようにコネクションについてはそのまま維持しておくようにすることで、次回接続時にコネクションの確立を省略することができ、その分、通信効率を向上させることができる。
【0061】
また本実施形態では、図6とともに説明したように、第1通信装置10と一つ以上の複数の第2通信装置20との間のセッションの確立を一斉に行うようにしているが、第1通信装置10が第2通信装置20の夫々と個別にセッションを確立するようにしてもよい。
【0062】
また本実施形態では、第1通信装置10と第2通信装置20との間のセッションを維持する仕組みについて説明したが、同様の仕組みを第2通信装置20と他の第2通信装置20との間のマルチホップ通信に適用すれば、第2通信装置20間のセッションが自動的に維持されるようにすることもできる。
【0063】
また第1通信装置10又は第2通信装置20に、第1閾値時間T1又は第2閾値時間T2をユーザに設定させるためのユーザインタフェースを設けてもよい。図14にユーザインタフェース(以下、設定画面1400と称する。)の一例を示す。同図に示すように、この設定画面1400には、第1閾値時間T1の設定欄141及び第2閾値時間T2の設定欄142などが設けられている。
【0064】
また以上の仕組みは、分散型電源用転送遮断システム1以外の様々な無線通信システムに応用することができる。例えば、車載端末のマルチホップ通信(車車間通信システム等)に適用することができる。
【0065】
また以上の仕組みは、例えば、特開2004−184078号公報、特開2005−351877号公報、特開2005−351878号公報、特開2006−23261号公報に開示されている、高精度位置検知システムに応用することができる。即ち、これらの文献に開示されている高精度位置検知システムは、携帯端末の夫々から送信される電波を、基地局の複数のアンテナで受信し、各アンテナで受信した受信波の位相差から携帯端末の位置、方向を算出するものであるが、上記携帯端末間で行われるマルチホップ通信に本発明を提供すれば、携帯端末及び基地局の夫々の間で行われるマルチホップ通信の伝送性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 分散型電源用転送遮断システム
3 開閉器
4 商用電力系統
5 分散型電源
10 第1通信装置
20 第2通信装置
1200 セッション維持信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信装置が、第2通信装置との間でセッションを確立した後、前記第2通信装置との間でデータの送受信が行われていない時間を計測し、前記セッションがタイムアウトして切断する前に、前記第2通信装置に自動的に前記セッションを維持するための信号であるセッション維持信号を送信することを特徴とするマルチホップ通信方法。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチホップ通信方法であって、
前記セッション維持信号は、前記第1通信装置と前記第2通信装置との間の通信経路の健全性の確認に用いるコマンドを含むことを特徴とするマルチホップ通信方法。
【請求項3】
請求項2に記載のマルチホップ通信方法であって、
前記第1通信装置と前記第2通信装置はTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)に従って通信を行い、前記コマンドはPINGコマンドであることを特徴とするマルチホップ通信方法。
【請求項4】
請求項1に記載のマルチホップ通信方法であって、
前記セッションは、
前記第1通信装置がハローパケットをブロードキャスト送信し、
前記第2通信装置が前記ハローパケットを受信して前記第1通信装置に返信パケットを送信し、
前記第1通信装置が前記返信パケットを受信して記憶し、
前記第1通信装置が前記第2通信装置にセッション確立要求を送信し、
前記第2通信装置が前記セッション確立要求を受信してセッション確立パケットを前記第1通信装置に送信し、
前記第1通信装置が前記セッション確立パケットを受信する
ことにより確立される
ことを特徴とするマルチホップ通信方法。
【請求項5】
請求項1に記載のマルチホップ通信方法であって、
前記第1通信装置は、前記セッション維持信号以外に前記第2通信装置との間でデータの送受信が行われていない時間である累積無通信時間が所定時間(>セッションがタイムアウトする時間)を超えた後は、前記セッション維持信号の送信を中止することを特徴とするマルチホップ通信方法。
【請求項6】
請求項1に記載のマルチホップ通信方法であって、
電力系統と分散型電源との間の接続/切断を制御する開閉器に前記第2通信装置を設け、前記第2通信装置に、前記第1通信装置から受信したデータに応じて前記開閉器を制御させる
ことを特徴とするマルチホップ通信方法。
【請求項7】
マルチホップ通信を行う通信装置であって、他の通信装置との間でセッションを確立した後、前記他の通信装置との間でデータの送受信が行われていない時間を計測し、前記セッションがタイムアウトして切断する前に、前記他の通信装置に自動的に前記セッションを維持するための信号であるセッション維持信号を送信する
ことを特徴とする通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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