マルチ作業機、及びマルチ作業方法
【課題】畦の成形終端部で切断されて、マルチ作業機と一体に上昇されたフィルムの繰出し端部が、マルチ作業機の前方に巻き込まれないようにして、一人の運転者のみによってマルチ作業ができるようにすることである。
【解決手段】マルチ作業機M1 のフレームKを構成する後方機枠13に取付けられた第1支持板34の回動支点ピン35に対して回動可能に取付けられている踏圧輪支持ロッド37の第2支持板36の両側壁部から、マルチ作業機M1 の幅方向Qに沿って突出された外側のばね支持ピン36aに、それぞれ弾性バー把持部材41を装着し、各弾性バー把持部材41に把持された一対の弾性バーBの先端部を、前後方向及び幅方向Qに弾性変形させたわん曲状態で、フィルムロール15から繰り出されたフィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 で前記一対の踏圧輪32の直後に突刺し、前記フィルムFの両端部F1 に張力Tを付与させる。
【解決手段】マルチ作業機M1 のフレームKを構成する後方機枠13に取付けられた第1支持板34の回動支点ピン35に対して回動可能に取付けられている踏圧輪支持ロッド37の第2支持板36の両側壁部から、マルチ作業機M1 の幅方向Qに沿って突出された外側のばね支持ピン36aに、それぞれ弾性バー把持部材41を装着し、各弾性バー把持部材41に把持された一対の弾性バーBの先端部を、前後方向及び幅方向Qに弾性変形させたわん曲状態で、フィルムロール15から繰り出されたフィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 で前記一対の踏圧輪32の直後に突刺し、前記フィルムFの両端部F1 に張力Tを付与させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接畦の成形始端部において畦成形板により成形された畦の上面全体にフィルムを支障なく被覆可能なマルチ作業機、及びマルチ作業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マルチ作業機は、所定のブレーキトルクが加えられた状態で、両端部がフレームに回転可能に支持されたフィルムロールと、ロータリー装置により膨軟にされた土壌を畦形状に成形するために前記ロータリー装置の直後に配設された畦成形板と、前記畦成形板により成形された畦の上面全体を覆ったフィルムの幅方向の両端部を踏圧しながら従動回転する左右一対の踏圧輪とを備えていて、前記各踏圧輪の従動回転により、前記フィルムロールを回転させて繰り出されたフィルムを前記畦の全面に被覆し、覆土具によって前記繰り出された直後のフィルムの幅方向の両端部に覆土して、成形された直後の畦面にフィルムを被覆する構成の農用作業機である。
【0003】
マルチ作業機において、畦の成形終端部ではフィルムを切断した後に、マルチ作業機を上昇させて隣接する畦の成形予定部まで旋回させ、その後に、マルチ作業機を隣接する畦の成形始端部に下降させて、隣接する畦のマルチ作業を開始させている。畦の成形終端部においてフィルムを切断すると、フィルムの繰出し端部がフィルムロール側に浮遊状態となって残る。このため、マルチ作業機を上昇させると、後方からの風等によって、フィルムの繰出し端部が前方のロータリー装置の側に巻き込まれ、マルチ作業機を隣接する畦の成形予定部まで旋回させてそのまま下降させると、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が左右一対の踏圧輪により踏圧されなくなり、このままマルチ作業機が前進しても、成形された畦にはフィルムがマルチされない。よって、隣接する畦の成形予定部においてマルチ作業機を下降させる際に、補助者又は運転席から下りた運転者がフィルムの繰出し端部を後方に引き出すと共に、畦全体を覆うように幅方向に広げて、左右一対の踏圧輪の下方に配置させて、マルチ作業開始当初における覆土を可能にした状態で、マルチ作業機を下降させる必要があったため、フィルムの繰出し端部を上記のように操作する作業が非常に面倒であり、その結果、作業能率も低下していた。
【特許文献1】特開平10−327683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した不具合に鑑み、畦の成形終端部で切断されて、マルチ作業機と一体に上昇されたフィルムの繰出し端部が、マルチ作業機の前方に巻き込まれないようにすると共に、隣接畦でのマルチ作業の開始時に人手によりフィルムを幅方向に広げることなく、マルチ作業開始当初より覆土具による覆土を可能にして、隣接する畦でのマルチ作業が確実に行われるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、所定のブレーキトルクが加えられた状態で、両端部がフレームに回転可能に支持されたフィルムロールと、ロータリー装置により膨軟にされた土壌を畦形状に成形するために前記ロータリー装置の直後に配設された畦成形板と、前記畦成形板により成形された畦の上面全体を覆ったフィルムの幅方向の両端部が移動しないように踏圧しながら前進することにより、従動回転する左右一対の踏圧輪と、前記踏圧されたフィルムの幅方向の両端部に覆土するための一対の覆土具とを備え、前記各踏圧輪の従動回転により前記フィルムロールを回転させて繰り出されたフィルムを前記畦の全面に被覆するためのマルチ作業機であって、畦の幅方向に沿って所定間隔をおいて前記フレームから後方に向けて片持ち状態に支持された左右一対の弾性バーを備え、前記畦の成形終端部において繰り出されたフィルムを切断することにより、フィルムロールの側に浮遊状態で残ったフィルムの繰出し端部が前方のロータリー装置の側に巻き込まれるのを防止すべく、前記繰出し端部の幅方向の両端部に前記各弾性バーの先端部をわん曲状態で突刺して、前記わん曲による弾性バーの弾性復元力により前記繰出し端部の幅方向の両端部に前後方向に沿った張力を付与するように構成されていることを特徴としている。
【0006】
また、請求項2の発明は、請求項1のマルチ作業機を使用して、隣接畦に移行する際にフィルムの繰出し端部がマルチ作業機の前方のロータリー装置の側に巻き込まれるのを防止して、隣接畦の成形始端部において畦成形板により成形された畦の上面全体にフィルムを支障なく被覆開始可能とするマルチ作業方法であって、畦の成形終端部において各弾性バーをわん曲させて先端部をフィルムの繰出し端部に突刺して、マルチ作業機の少なくとも前後方向に沿った張力を前記繰出し端部に付与した状態でマルチ作業機を上昇させて旋回させ、隣接畦の成形始端部においてマルチ作業機を下降させ、各弾性バーをわん曲させてフィルムの繰出し端部の幅方向の両端部に突刺したまま前進させると、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が各踏圧輪により踏圧されると共に、フィルムの繰出し済部の幅方向の両端部が一対の覆土具によって覆土されて、地表面に対してフィルムの繰出し済部が不動となることにより、わん曲状態の前記弾性バーは徐々に原形状である直線状に復元して、復元途中において弾性バーの先端部はフィルムの繰出し済部から自然に抜け出るようにしたことを特徴としている。
【0007】
請求項1,2の発明により、以下の作用効果が奏される。畦の成形終端部において各弾性バーをわん曲させて先端部を、フィルムロールから繰り出されたフィルムの繰出し端部に突刺すると、わん曲された弾性バーの復元力により、前記繰出し端部の幅方向の中央部は所定の弛みを有した状態で、前記繰出し端部の幅方向の両端部にはマルチ作業機の前後方向に沿った張力が付与され、この状態でマルチ作業機を上昇させて旋回させる。フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部には、マルチ作業機の少なくとも前後方向には張力が付与されているため、前記繰出し端部の幅方向の両端部がマルチ作業機の前後方向に撓むことはなくなって、マルチ作業を終えた畦の成形終端部から隣接畦の成形始端部においてマルチ作業を開始するまでの間において、左右一対の踏圧輪の下方にフィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が配置された状態が維持されて、フィルムの繰出し端部がマルチ作業機の前方に巻き込まれる恐れはなくなる。なお、フィルムの繰出し端部に対する弾性バーの先端部の突刺は、フィルムの切断の前後のいずれでもよいが、繰出し済(マルチ済)のフィルムに張力が付与されている状態で弾性バーの先端部を突刺する方が、前記突刺作業が容易であるので、前記突刺後にフィルムを切断するのが好ましい。
【0008】
隣接畦の成形始端部においてマルチ作業機を下降させて前進させると、フィルムの繰出し端部は幅方向に広げられた状態を維持しているので、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部は各踏圧輪により踏圧されると共に、フィルムの繰出し済部の幅方向の両端部が一対の覆土具によって覆土されて、地表面に対してフィルムの繰出し済部が不動となるために、フィルムの繰出し済部の端部である繰出し端部に突刺されている弾性バーの先端部は、地表面に対して不動となる。この結果、マルチ作業機の前進により、わん曲状態の前記弾性バーは徐々に原形状である直線上に復元して、復元途中において弾性バーの先端部はフィルムの繰出し端部から自然に抜け出て、フレームの後方に向けてほぼ水平に突出した状態となる。このため、左右一対の踏圧輪によるフィルムの繰出し端部の「踏み損じ」がなくなって、運転者は、マルチ作業機の旋回下降時の都度、「踏圧輪によるフィルムの繰出し端部の踏圧状態」の確認を一切行うことなく、そのまま運転を継続すればよい。よって、運転者の心理的負担も少なくなって、マルチ作業の能率も高まる。また、補助者が不要となるため、一人の運転者のみによって、しかも、当該運転者が運転席から下りることもなくマルチ作業を支障なく行うことができる。なお、踏圧輪は、フレームに回動可能に支持された踏圧輪支持ロッドの下端部に取付けられていて、マルチ作業機を上昇させると、踏圧輪支持ロッドの下端部に取付けてある踏圧輪は、自重により前記踏圧輪支持ロッドの回動支点を中心にマルチ作業機の前方に回動して、畦成形板の後端の挟持部と踏圧輪との間でフィルムの幅方向の両端部が挟持される。この挟持力は、フィルムの繰出し端部に作用する前後方向の張力(弾性バーの復元力)よりも大きいので、前記張力によりフィルムが更に繰り出されることはない。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明を前提として、前記一対の弾性バーは、原位置に対して幅方向に中央側に向けて所定長だけ寄せた状態で、全体をわん曲させて先端部をフィルムの繰出し端部に突刺させることを特徴としている。
【0010】
弾性バーは、原位置に対して幅方向に中央側に向けて所定長だけ寄せられた状態で、先端部がフィルムの繰出し端部に突刺されるので、フィルムの繰出し端部には、マルチ作業機の前後方向に沿った張力のみならず、幅方向の張力も付与されるため、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部には、幅方向に沿っても弛みが発生しにくい状態となる。請求項2のマルチ作業方法において重要なことは、フィルムの繰出し端部にマルチ作業機の前後方向に沿った張力が付与されて、前記繰出し端部がマルチ作業機の前方に巻き込まれないようにすることのみならず、隣接畦でマルチ作業機を下降させた場合に、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が左右一対の踏圧輪により踏圧された状態を確保することである。この状態が確保されないと、隣接畦においてフィルムの繰出し端部がマルチ作業機と一体に前進して、マルチ作業ができなくなるからである。このため、フィルムの繰出し端部に幅方向の張力が付与されて、フィルムの繰出し端部が同方向に沿って弛みが発生しにくい状態となることは、マルチ作業機の旋回後において隣接畦のマルチ作業を開始する際に、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が左右一対の踏圧輪により踏圧され易いことを意味し、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が踏圧輪の内側に入り込んで、踏圧不能な状態(即ち、マルチ不能な状態)となるのを回避できる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2又は3の発明を前提として、前記一対の弾性バーは、原位置において支持端から自由端に向けて間隔が広くなるように前記フレームに支持されていることを特徴としている。
【0012】
フィルムの繰出し端部に対する弾性バーの先端部の突刺位置が、前記繰出し端部の幅方向の外側に位置し易くなって(フィルムの繰出し端部の両端縁を基準にすると、前記両端縁に近づくことになって)、フィルムの繰出し端部の幅方向に沿った張力付与範囲が広くなる。このことは、マルチ作業機の旋回後において隣接畦のマルチ作業を開始する際に、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が左右一対の踏圧輪により踏圧され易いことになる。一方、請求項3の発明のように、一対の弾性バーを原位置に対して幅方向に中央側に向けて所定長だけ寄せた状態においても、一対の弾性バーの先端部の間隔が基端部の間隔よりも狭くならないようにできる。このため、弾性バーのわん曲による復元力の分力のうち、フィルムの繰出し端部の幅方向に沿った分力がフィルムの繰出し端部の中央に向くのを防止できて、フィルムの繰出し端部のうち幅方向の中央部を除く残りの部分である幅方向の両端部のほぼ全域に亘って幅方向の張力を付与できる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかの発明を前提として、前記一対の弾性バーは、下端部に踏圧輪が取付けられていて前記フレームに回動可能に支持されている踏圧輪支持ロッドの上端部に支持されていることを特徴としている。トラクターの後部に装着されたマルチ作業機を圃場に搬入出させる際には、前記踏圧輪支持ロッドは、ほぼ上方を向くように回動されて、その位置で固定される。一方、マルチ作業時においては、踏圧輪支持ロッドは前傾姿勢となって配置されると共に、弾性バーは、非使用時においてほぼ水平に配置されるために、踏圧輪支持ロッドがほぼ上方を向いてフレームに固定されると、弾性バーは、他の部材と干渉することなく斜前上方に向けて配置される。
【0014】
請求項6の発明は、所定のブレーキトルクが加えられた状態で、両端部がフレームに回転可能に支持されたフィルムロールと、ロータリー装置により膨軟にされた土壌を畦形状に成形するために前記ロータリー装置の直後に配設された畦成形板と、前記畦成形板により成形された畦の上面全体を覆ったフィルムの幅方向の両端部を踏圧しながら従動回転する左右一対の踏圧輪と、畦の幅方向に沿って所定間隔をおいて前記フレームから後方に向けて片持ち状態に支持され、前記畦の成形終端部において切断されたフィルムの幅方向の両端部を把持するための把持部材が先端部に取付けられた左右一対の支持バーとを備え、前記各踏圧輪の従動回転により前記フィルムロールを回転させて繰り出されたフィルムを畦の全面に被覆するためのマルチ作業機を使用して、隣接畦に移行する際にフィルムの繰出し端部がマルチ作業機の前方のロータリー装置の側に巻き込まれるのを防止して、隣接畦の成形始端部において畦成形板により成形された畦の上面全体にフィルムを支障なく被覆開始可能とするマルチ作業方法であって、畦の成形終端部において一対の支持バーに取付けられた各把持部材により、一対の踏圧輪の直下にフィルムの幅方向の両端部が配置された状態で前記フィルムを把持してマルチ作業機を上昇させて旋回させ、隣接畦の成形始端部においてマルチ作業機を下降させ、各把持部材がフィルムの繰出し端部の幅方向の両端部を把持したまま前進させると、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が各踏圧輪に踏圧されると共に、フィルムの繰出し済部の幅方向の両端部が一対の覆土具によって覆土されてマルチ作業が開始されることを特徴としている。
【0015】
畦の成形終端部において、フィルムの繰出し端部を切断し、一対の支持バーの先端部に取付けられた各把持部材により、前記繰出し端部における幅方向の両端部を把持し、持ち上げる。この状態で、フィルムの幅方向の繰出し端部は、一対の踏圧輪の直下に配置されているため、マルチ作業機を上昇させて旋回させる際に、前記フィルムの繰出し端部が後方からの風等によって、マルチ作業機の前方に巻き込まれる恐れはなくなる。隣接畦の成形始端部においてマルチ作業機を下降させて前進させると、フィルムの幅方向の繰出し端部は、各把持部材によって把持されて各踏圧輪に踏圧されたまま接地され、覆土具によって覆土されるので、マルチ作業を安定して行うことができる。また、補助者が不要となるため、一人の運転者のみによって、しかも、当該運転者が運転席から下りることもなくマルチ作業を支障なく行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、所定のブレーキトルクが加えられた状態で、両端部がフレームに回転可能に支持されたフィルムロールと、ロータリー装置により膨軟にされた土壌を畦形状に成形するために前記ロータリー装置の直後に配設された畦成形板と、前記畦成形板により成形された畦の上面全体を覆ったフィルムの幅方向の両端部が移動しないように踏圧しながら前進することにより、従動回転する左右一対の踏圧輪と、前記踏圧されたフィルムの幅方向の両端部に覆土するための一対の覆土具とを備え、前記各踏圧輪の従動回転により前記フィルムロールを回転させて繰り出されたフィルムを前記畦の全面に被覆するためのマルチ作業機であって、畦の幅方向に沿って所定間隔をおいて前記フレームから後方に向けて片持ち状態に支持された左右一対の弾性バーを備え、前記畦の成形終端部において繰り出されたフィルムを切断することにより、フィルムロールの側に浮遊状態で残ったフィルムの繰出し端部が前方のロータリー装置の側に巻き込まれるのを防止すべく、前記繰出し端部の幅方向の両端部に前記各弾性バーの先端部をわん曲状態で突刺して、前記わん曲による弾性バーの弾性復元力により前記繰出し端部の幅方向の両端部に前後方向に沿った張力を付与するように構成されていることを特徴としている。このため、畦の成形終端部においてフィルムが切断され、該畦から離脱されたフィルムが浮遊状態に配置されても、該フィルムの幅方向の両端部には一対の弾性バーの張力が作用していて、後方からの風等によってフィルムの繰出し端部が、マルチ作業機の前方に巻き込まれることが防止される。また、隣接する畦の成形始端部にマルチ作業機を下降させたときにも、一対の踏圧輪の直下にフィルムの幅方向の両端部が配置されているため、「踏み損じ」を生ずることはない。また、フィルムの繰出し端部は、その幅を広げられた状態を維持しているので、補助者がフィルムを広げる作業が不要になる。そして、フィルムの繰出し済部における幅方向の両端部は覆土具によって覆土される。上記した結果、補助者が不要となるため、一人の運転者のみによって、しかも、当該運転者が運転席から下りることもなくマルチ作業を支障なく行うことができる。この場合、各弾性バーの先端部が土中に差し込まれることが多く、一層作業が確実になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図1は本発明の第1実施例のマルチ作業機M1 の後方からの斜視図、図2はトラクタEに連結されたマルチ作業機M1 の一部を破断した側面図、図3は同じく平面図、図4は同じく背面図、図5は畦成形板23の斜視図、図6は踏圧輪支持ロッド37を回動させて垂直に配置させた状態の側面図である。
【実施例1】
【0018】
最初に、第1実施例のマルチ作業機M1 の全体構成について説明する。図1及び図2に示されるように、本発明の第1実施例のマルチ作業機M1 は、牽引車の一例であるトラクタE(図2参照)の後方に、三点リンクヒッチHを構成する1本の上側リンク1と2本の下側リンク2を介して連結されている。前記マルチ作業機M1 の前部(トラクタEと相対向する部分)には、圃場を膨軟にするためのロータリー装置3が配設されている。該ロータリー装置3の各ロータリー刃3aは、トラクタEのPTO軸(図示せず)からユニバーサルジョイント4を介して伝達される動力によって所定方向に連続回転される。トラクタEに牽引されたマルチ作業機M1 は、前記トラクタEの前進に伴い、矢印P1 の方向に前進される。なお、図2において、6はトラクタEの後輪であり、7は運転席である。
【0019】
第1実施例のマルチ作業機M1 を構成するフレームKは、前述したロータリー装置3の直後で、マルチ作業機M1 の幅方向Qに沿って配設された水平機枠8と、該水平機枠8から垂下された一対の垂直機枠9を備えている。前記ロータリー装置3は、2本の連結ブラケット11を介して前記水平機枠8に連結されている。前記一対の垂直機枠9から後方に向かって、平面視においてわん曲状態を呈する一対の連結部材12が延設されている。各連結部材12の後端部には、それぞれ角筒状の後方機枠13が固着されていて、各後方機枠13には各フィルムロール支持部材14が挿入されている。各後方機枠13に対する各フィルムロール支持部材14の挿入長さを調整することにより、異なる長さのフィルムロール15を装着することができる。圃場に成形された畦Rの全面を被覆するフィルムFは、ロール状に巻回されたフィルムロール15となって前記各フィルムロール支持部材14に回転可能に支持されている。即ち、図3及び図4に示されるように、各フィルムロール支持部材14の上端部には、圧縮ばね16が弾装された紙管チャック17が取付けられていて、前記フィルムロール15は、その両端部が対応する紙管チャック17に挿入されている。そして、前記各圧縮ばね16による所定の付勢力(ブレーキトルク)が加えられた状態で回転され、フィルムロール15からフィルムFが繰り出される。
【0020】
前記水平機枠8の背面部には、マルチ作業機M1 の幅方向Qに所定の間隔をおいて2本の中間ガイドローラ支持部材18が取付けられている。各中間ガイドローラ支持部材18には、マルチ作業機M1 の幅方向Qに沿って支承軸18aが挿通されていて、該支承軸18aに複数本(本実施例の場合、5本)の中間ガイドローラ19が直列状態で回転可能に支承されている。各中間ガイドローラ19は、フィルムロール15のほぼ直下に配置されている。また、前記水平機枠8の背面部で、マルチ作業機M1 の幅方向Qのほぼ中央部には、弛み吸収ローラ支持部材21が後方に張り出した状態で固着されている。該弛み吸収ローラ支持部材21は、側面視において略L字状であり、フィルムロール15と干渉しないように、該フィルムロール15の上方を通ってその背後に回り込む形態で取付けられている。そして、前記弛み吸収ローラ支持部材21には、高さ位置を調整可能にして弛み吸収ローラ22が、マルチ作業機M1 の幅方向Qに沿って取付けられている。該弛み吸収ローラ22は、マルチ作業機M1 の幅方向Qのほぼ中央部で、前記各中間ガイドローラ19の直下に配置されている。前記弛み吸収ローラ22は、フィルムロール15から繰り出され、各中間ガイドローラ19にガイドされたフィルムFの弛みを吸収するためのものであり、前記弛み吸収ローラ22の直下に配設された畦成形板23(後述)によって成形される畦Rの上面部R1 の幅に対応する長さを有している。
【0021】
次に、接地輪24について説明する。前述した一対の連結ブラケット11には、マルチ作業機M1 の幅方向Qに沿って支持軸25が回動自在に取付けられていて、該支持軸25の両端部に一対の接地輪支持ロッド26が取付けられている。各接地輪支持ロッド26は、一対の垂直機枠9の側方に配置されていて、それらの先端部には、それぞれ接地輪24が回転可能に支承されている。また、前記接地輪支持ロッド26の軸方向のほぼ中央部には、高さ調整ロッド27が取付けられている。前記高さ調整ロッド27の上端部に設けられたハンドル27aを回転させることにより、高さ調整ロッド27の長さが変化し、それに伴って支持軸25が回動される。これにより、各接地輪支持ロッド26の高さ位置が変化し、各接地輪24の高さ方向の取付位置が調整される。
【0022】
次に、畦成形板23について説明する。前述したように、マルチ作業機M1 のフレームKを構成する水平機枠8及び一対の垂直機枠9の直後方の部分には、畦成形板23が配設されている。図5に示されるように、本実施例の畦成形板23は、後方に向かって上面部が切除され、断面略放物線形状にわん曲された一対の主成形板部28と、各主成形板部28の内側面部に取付けられた上面成形板部29と、前記一対の主成形板部28の前端部に取付けられた一対の誘導板部30と、同じく主成形板部28の後方下端部から斜め後方外側に張り出して取付けられた一対の狭溝成形板部31とから成る。即ち、前記一対の主成形板部28の前端部には、前端周縁の全長に亘って前記各主成形板部28の外方に向けて一対の誘導板部30が平面視で緩やかなハの字状となって、しかも、各主成形板部28の前端周縁よりも外方の部分を周囲から取り囲むように取付けられている。一対の誘導板部30は、前方のロータリー装置3により膨軟にされた土壌を畦中央に寄せ集めると共に、全土壌を畦成形に寄与すべく、畦成形予定部以外の部分に土壌が残存するのを防止している。そして、前記各主成形板部28と各狭溝成形板部31との間には、一対の踏圧輪32(後述)を当接するための当接板33が固着されている。
【0023】
次に、踏圧輪32について説明する。前述した一対の後方機枠13における内側の端部には、側面視において略台形状の一対の第1支持板34が、マルチ作業機M1 の幅方向Qに所定の間隔をおいて取付けられている。各後方機枠13における一対の第1支持板34の取付位置は、調整可能である。一対の第1支持板34の後端部には、マルチ作業機M1 の幅方向Qに沿って回動支点ピン35が挿通されていて、該回動支点ピン35に断面略逆U字形状の第2支持板36と踏圧輪支持ロッド37が、一体となって回動可能に支承されている。また、前記第2支持板36の両側壁部には、マルチ作業機M1 の幅方向Qに沿ってばね支持ピン36aが突出されていると共に、踏圧輪支持ロッド37の上面部には、ばね支持部材37aが取付けられていて、前記ばね支持ピン36aと前記ばね支持部材37aとの間に2本の引張りばね38が弾装されている。なお、図4及び図5では、ばね支持部材37a及び引張りばね38の図示を省略してある。
【0024】
各踏圧輪支持ロッド37の先端部で、それらの内側部分には、それぞれ踏圧輪32が回転可能に支承されていると共に、同じく外側部分には、覆土具の一例である各覆土輪39が取付けられている。前記一対の踏圧輪32は、フィルムロール15から繰り出されたフィルムFの幅方向Qの両端部F1 を踏圧して、畦成形板23によって圃場に形成された畦Rの両裾部R2 に押し付けるという機能を有しており、それらの前部を僅かに内側に向けて配置されている。また、前記一対の覆土輪39は、前記一対の踏圧輪32によって畦Rの両裾部R2 に押し付けられたフィルムFの幅方向Qの両端部F1 を覆土するという機能を有しており、各踏圧輪32の後方でそれらの前部を少し外側に向けて配置されている。そして、後方機枠13に対する第1支持板34の取付位置を調整することにより、一対の踏圧輪32及び一対の覆土輪39どうしの間隔を調整することができる。
【0025】
圃場にマルチ作業が行われている状態で、各踏圧輪支持ロッド37は、自重により、回動支点ピン35の軸心35aを中心に下方(当接板33に接近する方向)に向かって回動されている。これにより、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 が、畦Rの両裾部R2 に押し付けられる。更に、各引張りばね38の弾性復元力により、前記フィルムFの幅方向Qの両端部F1 は畦Rの両裾部R2 に、より強く押し付けられる。マルチ作業が終了して、マルチ作業機M1 を搬送させる場合には、前記各踏圧輪支持ロッド37を、回動支点ピン35の軸心35aを中心として上方(当接板33から離間させる方向)に回動させる。図6に示されるように、各踏圧輪支持ロッド37は第2支持板36と一体となって回動され、ほぼ垂直状態に配置される。これにより、マルチ作業機M1 の搬送中に、一対の踏圧輪32と一対の覆土輪39が、圃場と無用に接触することが回避される。
【0026】
次に、一対の接地輪24と一対の踏圧輪32の高さ方向の取付位置の関係について説明する。図2に示されるように、一対の接地輪24の高さ方向の取付位置は、該一対の接地輪24が圃場に接地されたとき、一対の踏圧輪32が畦成形板23に設けられた当接板33から少し離れた状態で接地されるように調整される。例えば、マルチ作業機M1 が上昇されて、一対の踏圧輪支持ロッド37が回動自由な状態に配置されたとき、一対の踏圧輪32は、畦成形板23の当接板33に当接した状態で停止する。この状態で、一対の接地輪24の最下端部は、停止状態の一対の踏圧輪32の最下端部よりも少し上方に配置される。このため、マルチ作業機M1 が下降されると、一対の踏圧輪32は一対の接地輪24よりも先に圃場に接地され、一対の踏圧輪支持ロッド37は上方に回動される。この結果、一対の接地輪24が圃場に接地された状態で、一対の踏圧輪32と対応する当接板33との間に隙間Vが形成され、フィルムロール15から繰り出されたフィルムFが、踏圧輪32と当接板33との間を通過可能である。
【0027】
次に、弾性バーBについて説明する。図4に示されるように、各第2支持板36の両側壁部から側方に突出された一対のばね支持ピン36aのうち、一方側(本実施例のマルチ作業機M1 の場合、外側)のばね支持ピン36aに弾性バー把持部材41が装着されている。図6に示されるように、本実施例の弾性バー把持部材41は、ばね支持ピン36aに装着されるピン装着部と、該ピン装着部とほぼ同一形状で、弾性バーBを把持するためのバー把持部が、相互に直交した状態で上下に固着された形態である。前記ピン装着部は、断面略三角形状の半角筒体42の開放部分にナット体43が固着された形態であり、前記半角筒体42の部分に挿通させたばね支持ピン36aを、前記ナット体43に螺合させた六角ボルト44で押圧して把持するものである。同様に、弾性バーBは、バー把持部の半角筒体42に固着されたナット体43に螺合された六角ボルト44によって把持される。各踏圧輪支持ロッド37が、回動支点ピン35の軸心35aを中心に上方に回動されると、各第2支持板36に取付けられた弾性バー把持部材41も同時に同方向に回動される。このため、各踏圧輪支持ロッド37を回動させたときに、一対の踏圧輪32及び一対の覆土輪39と、各弾性バーBが干渉するおそれはない。
【0028】
各弾性バー把持部材41におけるバー把持部に、一対の弾性バーBの基端部が把持されていて、それらの先端部(自由端部)はマルチ作業機M1 の後方に向かって突出されている。本実施例の場合、一対の弾性バーBは、平面視においてほぼ平行に配置される(図3参照)と共に、側面視においてほぼ水平に配置され、それらの先端部は自然撓みの状態を呈する(図2参照)。後述するように、一対の弾性バーBは、運転者によってわん曲されて、繰出し状態のフィルムFの幅方向Qの両端部F1 に突刺される。図1ないし図3において、自然配置状態における一対の弾性バーBを二点鎖線で示し、突刺状態の弾性バーBを実線で示す。このため、本実施例の一対の弾性バーBは、運転者により、弾性状態のまま容易にわん曲できる程度の直径と、わん曲させた状態でそれらの先端部を、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 に突刺できる程度の長さを有している。
【0029】
本実施例のマルチ作業機M1 の作用について説明する。本明細書では、最初にマルチ作業機M1 の一般的な作用について説明し、次に、第1実施例のマルチ作業機M1 の特徴部分の作用について説明する。図2に示されるように、圃場において、矢印P1 に沿ってマルチ作業機M1 を前進させ、ロータリー装置3によって膨軟にされた土を、畦成形板23によってかき寄せながら成形した畦Rの全面にフィルムFを被覆する(マルチ作業)。即ち、図4に示されるように、マルチ作業機M1 が前進すると、一対の踏圧輪32がフィルムロール15から繰り出されているフィルムFの幅方向Qの両端部F1 を踏圧しながら従動回転される。一対の踏圧輪32とフィルムFの幅方向Qの両端部F1 との間に作用する摩擦力により、前記フィルムFは、フィルムロール支持部材14の部分におけるブレーキトルク(圧縮ばね16の付勢力)に抗して繰り出される。フィルムロール15から繰り出されたフィルムFは、各中間ガイドローラ19にガイドされ、弛み吸収ローラ22によって弛みが吸収された後、畦成形板23によって断面略放物線形状に成形された畦Rの上面部R1 を覆う。この状態で、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 は、一対の踏圧輪32に踏圧されているため、該フィルムFは、幅方向Qに一定の張力が付与された状態で畦Rの上面部R1 と両裾部R2 を被覆する。そして、前記フィルムFの幅方向Qの両端部F1 は、一対の踏圧輪32の直後に配設された各覆土輪39によって覆土される。一対の弾性バーBは、後方に向かってほぼ水平に突出された状態であり、一対の弾性バーBがマルチ作業の支障となることはない。
【0030】
図7に示されるように、マルチ作業機M1 を牽引するトラクタEが、圃場の端部(圃場境界線45)に到達すると、トラクタEが停止される。圃場には、前記圃場境界線45の近傍まで畦Rが成形されていて、マルチ作業機M1 は、畦Rの成形終端部46に配置されている。畦Rの上面部R1 及び両裾部R2 は、マルチ作業機M1 から繰り出されたフィルムFの繰出し済部のうち、その端部(繰出し端部F2 )によって被覆されている。図8に示されるように、トラクタEの運転席7から下りた運転者が一対の弾性バーBを前後方向にわん曲させ、それらの先端部40を、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 で、一対の踏圧輪32の近傍部分に突刺する。前記近傍部分は既に覆土されているため、一対の弾性バーBは、覆土された土47を通ってフィルムFの幅方向Qの両端部F1 に突刺され、その先端部40は土中に差し込まれる。本実施例の場合、各弾性バーBは、それらの前後方向(畦Rの長手方向)だけでなく、左右方向(幅方向Q)にもわん曲された状態でフィルムFの幅方向Qの両端部F1 に突刺される。この結果、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 には、一対の弾性バーBの弾性復元力により、前後方向(畦Rの長手方向)に沿った分力T1 と左右方向(幅方向Q)に沿った分力T2 とが発生し、それらを合成した張力Tが、後方斜め外側に向かって作用する。一対の弾性バーBは、前後方向にわん曲されて突刺されるため、一対の覆土輪39と干渉することが回避される。
【0031】
図8に示されるように、一対の弾性バーBの突刺位置は、一対の踏圧輪32の直後で、しかも各踏圧輪32の外側であることが望ましい。なぜならば、後述するように、畦Rの成形終端部46において畦Rを被覆しているフィルムFが切断されるのであるが、該フィルムFは一対の弾性バーBの突刺位置の直後で切断されるため、前記一対の弾性バーBの突刺位置が各踏圧輪32に近い程、切断後のフィルムFの繰出し端部F2 の長さL1(一対の踏圧輪32が踏圧している部分からフィルムFの切断端縁部48までの長さ)が短くなり、フィルムFの歩留りが良好となるからである。
【0032】
上記したように、畦Rの成形終端部46において、該畦Rを被覆しているフィルムFが、一対の弾性バーBの突刺位置の直後で切断される。図9に示されるように、トラクタEの三点リンクヒッチHの作用により、マルチ作業機M1 の全体が持ち上げられて上昇される。一対の踏圧輪支持ロッド37は自重により、回動支点ピン35の軸心35aを中心に下方に回動され、一対の踏圧輪32が畦成形板23に設けられた当接板33に当接して停止する。これにより、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 が、一対の踏圧輪32と各当接板33とによって挟持される。この挟持力は、フィルムFの幅方向Qの繰出し端部F2 に作用する張力Tのうちの前後方向の分力T1 よりも大きいので、前記張力TによりフィルムFが更に繰り出されることはない。このため、フィルムFの繰出し済部のうち、フィルムロール15から当接板33までの部分は不動状態に保持される。また、フィルムFの繰出し済部のうち、繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 には、マルチ作業機M1 が上昇された状態であっても一対の弾性バーBが突刺されているため、前記繰出し端部F2 には張力Tが、後方斜め外側に向かって作用している。このため、上昇されて畦Rから離脱されたフィルムFの繰出し端部F2 は、浮遊状態であっても、ほぼ畦Rを被覆したままの状態に保持される。換言すれば、フィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 が、一対の踏圧輪32の直下に配置されたままの状態が保持されるため、前記繰出し端部F2 が後方からの風等によってあおられても、ロータリー装置3の側に巻き込まれるおそれはない。なお、本実施例では、一対の弾性バーBを突刺させてからフィルムFを切断している。この場合、一対の踏圧輪32が、フィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 を踏圧した状態で突刺されるため、一対の弾性バーBの突刺作業が容易になるという利点がある。しかし、前記フィルムFを切断してから一対の弾性バーBを突刺させても構わない。
【0033】
図7に示されるように、マルチ作業機M1 を上昇させた状態でトラクタEが旋回され、該トラクタEが、マルチ作業が終了した畦Rに隣接して畦Rが成形される圃場(隣接する畦Rの成形予定部49)の成形始端部49aに配置される。図7において、トラクタEが旋回する状態を矢印51で示し、旋回後のマルチ作業機M1 が前進する方向を矢印P2(矢印P1 と逆の方向)で示す。図10に示されるように、マルチ作業機M1 が下降される。フィルムFの繰出し端部F2 には、一対の弾性バーBによる張力Tが作用しているため、前記フィルムFの繰出し端部F2 は、その幅を維持したまま接地される。隣接する畦Rの成形始端部49aに接地されたフィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 は、一対の踏圧輪32に踏圧したままの状態が保持される。また、フィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 から突出した各弾性バーBの先端部40は、そのまま土中に差し込まれる。
【0034】
一対の接地輪24が圃場に接地されると、一対の踏圧輪支持ロッド37は各回動支点ピン35の軸心35aを中心に上方に回動され、一対の踏圧輪32と当接板33との間に隙間Vが形成される。この状態で、マルチ作業機M1 が矢印P2 の方向に沿って前進されると、ロータリー装置3によって膨軟にされた圃場の土が畦成形板23によってかき寄せられて成形された畦Rの全面に、フィルムFが被覆される。フィルムFの繰出し端部F2 は、その幅を維持したままであるので、マルチ作業の開始時から、繰り出されたフィルムFの幅方向の両端部F1 に突刺された各弾性バーBの先端部40が土中に差し込まれた状態で、繰り出されたフィルムFには、その繰出し端部F2 が一対の踏圧輪32に踏圧された状態で、各弾性バーBの復元力により後方に引っ張られたフィルムFの繰出し端部F2 の自由端部から一対の覆土輪39により覆土される。覆土により、フィルムFの幅方向の両端部F1 がそのままの状態で保持され、該フィルムFの繰出し端部F2 が引きずられて移動することもない。
【0035】
上記した三つの各作用(即ち、一対の弾性バーBがフィルムFの繰出し端部F2 の幅方向の両端部F1 に張力Tを有して突刺されていること、一対の踏圧輪32がフィルムFの繰出し端部F2 を踏圧していること、一対の覆土輪39がフィルムFの繰出し端部F2 の自由端部を覆土すること)が相乗して、隣接畦Rにおいてマルチ作業の開始時には、フィルムFが前方に引っ張られることなく、しかも、補助者によりマルチ開始時のフィルムFの繰出し端部F2 の幅を畦Rの幅に対応するように広げることなく、一人の運転者のみによって、しかも、当該運転者が運転席7から下りることもなくマルチ作業を支障なく行うことができる。よって、運転者の心理的負担も少なくなって、マルチ作業の能率が高まる。
【0036】
また、仮りに、各弾性バーBの先端部40が土中に差し込まれない状態であっても、フィルムFの繰出し端部F2 には突刺された各弾性バーBの張力Tが作用していて、前記フィルムFの繰出し端部F2 は、その幅方向に広げられたまま地表面に接地されるため、一対の踏圧輪32がフィルムFの繰出し端部F2 の両端部F1 を踏圧すること、及び一対の覆土輪39が覆土することに支障が生じることはない。
【0037】
図11及び図12に示されるように、フィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 にわん曲状態で突刺されていた一対の弾性バーBは、マルチ作業機M1 の前進に伴い、それらのわん曲部分が徐々に延伸された後、前記フィルムFの幅方向Qの繰出し端部F2 から自然に抜け出る。一対の弾性バーBのわん曲部分が徐々に延伸されることにより、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 に作用する各弾性バーBの張力Tは徐々に低下する。図11の(イ)において、一対の弾性バーBがフィルムFから抜け出る直前の張力をT'(前後方向の分力T1',幅方向Qの分力T2')とすると、張力T’は、接地直後の張力Tよりも小さい。しかし、一対の弾性バーBの突刺位置よりも後方の両端部F1 は、各覆土輪39によって覆土されるため、マルチ作業の安定性が確保される。また、図11の(ロ)に示されるように、一対の弾性バーBが突刺された位置から、該一対の弾性バーBが抜け出る直前における一対の踏圧輪32の踏圧位置までの長さL2 とすると、前記長さL2 が長い程、フィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 に張力Tが付与されている時間が長くなり、より安定状態でマルチ作業が行われる。フィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 から抜け出た一対の弾性バーBは、原形状である直線状に復元されるため、マルチ作業の支障となることはない。なお、図12の(イ)において、52は、フィルムFの繰出し端部F2 に残った一対の弾性バーBの突刺孔である。
【0038】
マルチ作業が終了したマルチ作業機M1 を搬送させるとき、一対の踏圧輪支持ロッド37を上方に回動させて、一対の踏圧輪32及び一対の覆土輪39を圃場面から退避させる場合がある。このときであっても、図6に示されるように、一対の弾性バーBは、前記各踏圧輪支持ロッド37と一体となって回動され、両者が干渉することはない。
【0039】
上記した第1実施例のマルチ作業機M1 では、一対の弾性バーBは、第2支持板36の両側壁板から突出された一対のばね支持ピン36aのうち、外側のばね支持ピン36aに装着された弾性バー把持部材41に把持されている。これにより、一対の弾性バーBの幅方向Qの取付間隔が最も広くなると共に、それらの取付位置が、フィルムFにおける突刺位置よりも外側に配置され、前記一対の弾性バーBは、幅方向Qに弾性変形された状態で突刺される。このときの張力T(幅方向Qの分力T2)が大きい程、上昇されて浮遊状態となったフィルムFの繰出し端部F2 は、より確実に一対の踏圧輪32の直下に配置される。しかも、各踏圧輪支持ロッド37を回動させるときに、一対の弾性バーBと干渉するおそれもなくなる。
【0040】
上記した第1実施例のマルチ作業機M1 では、図3に示されるように、原位置における一対の弾性バーBは、平面視においてほぼ平行状態に配置されている。換言すれば、一対の弾性バーBにおける基端部どうしの取付間隔W1 と、先端部どうしの取付間隔W2 とは同一である。しかし、フィルムFに突刺されたときの一対の弾性バーBの幅方向Qの分力T2 を大きくするために、一対の弾性バーBの先端部どうしの取付間隔W2 を、それらの基端部どうしの取付間隔W1 よりも広くして取付けてもよい。この場合、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 に作用する分力T2 が大きくなり、該フィルムFは更に確実に外側に引っ張られ、一対の踏圧輪32の直下に配置され易くなる。
【実施例2】
【0041】
上記した第1実施例のマルチ作業機M1 は、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 に一対の弾性バーBを突刺させ、各弾性バーBの張力TをフィルムFの両端部F1 に作用させることにより、浮遊状態となった前記フィルムFの両端部F1 を、一対の踏圧輪32の直下に確実に配置させる構成である。これにより、マルチ作業が終了した畦Rに隣接する畦Rの成形始端部49aにマルチ作業機M1 が接地されたとき、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 は、確実に一対の踏圧輪32の直下に配置される。しかし、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 を一対の踏圧輪32の直下に配置させるためには、前記一対の弾性バーBを突刺させること以外の手段を用いても構わない。例えば、図13に示される第2実施例のマルチ作業機M2 のように、一対の踏圧輪支持ロッド37から対応する各踏圧輪32の直後方まで延設させた一対のバー材53の先端部に、引張りばね54を介してクリップ等の把持部材55を取付け、前記一対の踏圧輪32の直下にフィルムFの幅方向Qの両端部F1 が配置されるようにして、前記把持部材55で把持したフィルムFの幅方向Qの両端部F1 を持ち上げる形態であってもよい。この実施例のマルチ作業機M2 であっても、フィルムFの繰出し端部F2 が一対の把持部材55によって持ち上げられているため、マルチ作業機M2 の上昇状態で前記繰出し端部F2 が後方からの風等によって、前方に巻き込まれるおそれはない。また、隣接する畦Rの成形始端部49aでマルチ作業機M2 を下降させたとき、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 は、一対の踏圧輪32の直下に配置され、隣接する畦Rでのマルチ作業に支障が生ずることはない。一対の踏圧輪32によって踏圧された直後のフィルムFは、一対の覆土輪39によって覆土され、覆土によるフィルムFの保持力が各引張りばね54の引張り力を超えると、前記各引張りばね54がフィルムFの繰出し端部F2 から自然に外れる。このため、第1実施例のマルチ作業機M1 と同様に、補助者が不要となるため、一人の運転者のみによって、しかも、当該運転者が運転席から下りることもなくマルチ作業を支障なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施例のマルチ作業機M1 の後方からの斜視図である。
【図2】トラクタEに連結されたマルチ作業機M1 の一部を破断した側面図である。
【図3】同じく平面図である。
【図4】同じく背面図である。
【図5】畦成形板23の斜視図である。
【図6】踏圧輪支持ロッド37を回動させて垂直に配置させた状態の側面図である。
【図7】マルチ作業機M1 を旋回させる状態の模式平面図である。
【図8】(イ)は、畦Rの成形終端部46に配置されたマルチ作業機M1 の模式平面図であり、(ロ)は、(イ)の模式側面図である。
【図9】(イ)は、マルチ作業機M1 を上昇させた状態の模式平面図であり、(ロ)は、(イ)の模式側面図である。
【図10】(イ)は、隣接する畦Rにおいてマルチ作業機M1 を下降させた状態の模式平面図であり、(ロ)は、(イ)の模式側面図である。
【図11】(イ)は、隣接する畦Rにおいてマルチ作業機M1 を前進させた状態の模式平面図であり、(ロ)は、(イ)の模式側面図である。
【図12】(イ)は、マルチ作業機M1 の一対の弾性バーBが、フィルムFから抜け出た状態の模式平面図であり、(ロ)は、(イ)の模式側面図である。
【図13】(イ)は、第2実施例のマルチ作業機M2 を上昇させた状態の模式平面図であり、(ロ)は、(イ)の模式側面図である。
【符号の説明】
【0043】
B:弾性バー
F:フィルム
F1 :フィルムの幅方向の両端部
F2 :フィルムの繰出し端部
K:フレーム
M1,M2 :マルチ作業機
Q:幅方向
R:畦
R1 :畦の上面部
R2 :畦の両裾部
W1,W2 :弾性バーの取付間隔(間隔)
T',T:張力(弾性復元力)
3:ロータリー装置
15:フィルムロール
16:圧縮ばね(ブレーキトルク)
23:畦成形板
32:踏圧輪
39:覆土輪(覆土具)
40:先端部
46:成形終端部
49a:成形始端部
55:把持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接畦の成形始端部において畦成形板により成形された畦の上面全体にフィルムを支障なく被覆可能なマルチ作業機、及びマルチ作業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マルチ作業機は、所定のブレーキトルクが加えられた状態で、両端部がフレームに回転可能に支持されたフィルムロールと、ロータリー装置により膨軟にされた土壌を畦形状に成形するために前記ロータリー装置の直後に配設された畦成形板と、前記畦成形板により成形された畦の上面全体を覆ったフィルムの幅方向の両端部を踏圧しながら従動回転する左右一対の踏圧輪とを備えていて、前記各踏圧輪の従動回転により、前記フィルムロールを回転させて繰り出されたフィルムを前記畦の全面に被覆し、覆土具によって前記繰り出された直後のフィルムの幅方向の両端部に覆土して、成形された直後の畦面にフィルムを被覆する構成の農用作業機である。
【0003】
マルチ作業機において、畦の成形終端部ではフィルムを切断した後に、マルチ作業機を上昇させて隣接する畦の成形予定部まで旋回させ、その後に、マルチ作業機を隣接する畦の成形始端部に下降させて、隣接する畦のマルチ作業を開始させている。畦の成形終端部においてフィルムを切断すると、フィルムの繰出し端部がフィルムロール側に浮遊状態となって残る。このため、マルチ作業機を上昇させると、後方からの風等によって、フィルムの繰出し端部が前方のロータリー装置の側に巻き込まれ、マルチ作業機を隣接する畦の成形予定部まで旋回させてそのまま下降させると、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が左右一対の踏圧輪により踏圧されなくなり、このままマルチ作業機が前進しても、成形された畦にはフィルムがマルチされない。よって、隣接する畦の成形予定部においてマルチ作業機を下降させる際に、補助者又は運転席から下りた運転者がフィルムの繰出し端部を後方に引き出すと共に、畦全体を覆うように幅方向に広げて、左右一対の踏圧輪の下方に配置させて、マルチ作業開始当初における覆土を可能にした状態で、マルチ作業機を下降させる必要があったため、フィルムの繰出し端部を上記のように操作する作業が非常に面倒であり、その結果、作業能率も低下していた。
【特許文献1】特開平10−327683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した不具合に鑑み、畦の成形終端部で切断されて、マルチ作業機と一体に上昇されたフィルムの繰出し端部が、マルチ作業機の前方に巻き込まれないようにすると共に、隣接畦でのマルチ作業の開始時に人手によりフィルムを幅方向に広げることなく、マルチ作業開始当初より覆土具による覆土を可能にして、隣接する畦でのマルチ作業が確実に行われるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、所定のブレーキトルクが加えられた状態で、両端部がフレームに回転可能に支持されたフィルムロールと、ロータリー装置により膨軟にされた土壌を畦形状に成形するために前記ロータリー装置の直後に配設された畦成形板と、前記畦成形板により成形された畦の上面全体を覆ったフィルムの幅方向の両端部が移動しないように踏圧しながら前進することにより、従動回転する左右一対の踏圧輪と、前記踏圧されたフィルムの幅方向の両端部に覆土するための一対の覆土具とを備え、前記各踏圧輪の従動回転により前記フィルムロールを回転させて繰り出されたフィルムを前記畦の全面に被覆するためのマルチ作業機であって、畦の幅方向に沿って所定間隔をおいて前記フレームから後方に向けて片持ち状態に支持された左右一対の弾性バーを備え、前記畦の成形終端部において繰り出されたフィルムを切断することにより、フィルムロールの側に浮遊状態で残ったフィルムの繰出し端部が前方のロータリー装置の側に巻き込まれるのを防止すべく、前記繰出し端部の幅方向の両端部に前記各弾性バーの先端部をわん曲状態で突刺して、前記わん曲による弾性バーの弾性復元力により前記繰出し端部の幅方向の両端部に前後方向に沿った張力を付与するように構成されていることを特徴としている。
【0006】
また、請求項2の発明は、請求項1のマルチ作業機を使用して、隣接畦に移行する際にフィルムの繰出し端部がマルチ作業機の前方のロータリー装置の側に巻き込まれるのを防止して、隣接畦の成形始端部において畦成形板により成形された畦の上面全体にフィルムを支障なく被覆開始可能とするマルチ作業方法であって、畦の成形終端部において各弾性バーをわん曲させて先端部をフィルムの繰出し端部に突刺して、マルチ作業機の少なくとも前後方向に沿った張力を前記繰出し端部に付与した状態でマルチ作業機を上昇させて旋回させ、隣接畦の成形始端部においてマルチ作業機を下降させ、各弾性バーをわん曲させてフィルムの繰出し端部の幅方向の両端部に突刺したまま前進させると、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が各踏圧輪により踏圧されると共に、フィルムの繰出し済部の幅方向の両端部が一対の覆土具によって覆土されて、地表面に対してフィルムの繰出し済部が不動となることにより、わん曲状態の前記弾性バーは徐々に原形状である直線状に復元して、復元途中において弾性バーの先端部はフィルムの繰出し済部から自然に抜け出るようにしたことを特徴としている。
【0007】
請求項1,2の発明により、以下の作用効果が奏される。畦の成形終端部において各弾性バーをわん曲させて先端部を、フィルムロールから繰り出されたフィルムの繰出し端部に突刺すると、わん曲された弾性バーの復元力により、前記繰出し端部の幅方向の中央部は所定の弛みを有した状態で、前記繰出し端部の幅方向の両端部にはマルチ作業機の前後方向に沿った張力が付与され、この状態でマルチ作業機を上昇させて旋回させる。フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部には、マルチ作業機の少なくとも前後方向には張力が付与されているため、前記繰出し端部の幅方向の両端部がマルチ作業機の前後方向に撓むことはなくなって、マルチ作業を終えた畦の成形終端部から隣接畦の成形始端部においてマルチ作業を開始するまでの間において、左右一対の踏圧輪の下方にフィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が配置された状態が維持されて、フィルムの繰出し端部がマルチ作業機の前方に巻き込まれる恐れはなくなる。なお、フィルムの繰出し端部に対する弾性バーの先端部の突刺は、フィルムの切断の前後のいずれでもよいが、繰出し済(マルチ済)のフィルムに張力が付与されている状態で弾性バーの先端部を突刺する方が、前記突刺作業が容易であるので、前記突刺後にフィルムを切断するのが好ましい。
【0008】
隣接畦の成形始端部においてマルチ作業機を下降させて前進させると、フィルムの繰出し端部は幅方向に広げられた状態を維持しているので、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部は各踏圧輪により踏圧されると共に、フィルムの繰出し済部の幅方向の両端部が一対の覆土具によって覆土されて、地表面に対してフィルムの繰出し済部が不動となるために、フィルムの繰出し済部の端部である繰出し端部に突刺されている弾性バーの先端部は、地表面に対して不動となる。この結果、マルチ作業機の前進により、わん曲状態の前記弾性バーは徐々に原形状である直線上に復元して、復元途中において弾性バーの先端部はフィルムの繰出し端部から自然に抜け出て、フレームの後方に向けてほぼ水平に突出した状態となる。このため、左右一対の踏圧輪によるフィルムの繰出し端部の「踏み損じ」がなくなって、運転者は、マルチ作業機の旋回下降時の都度、「踏圧輪によるフィルムの繰出し端部の踏圧状態」の確認を一切行うことなく、そのまま運転を継続すればよい。よって、運転者の心理的負担も少なくなって、マルチ作業の能率も高まる。また、補助者が不要となるため、一人の運転者のみによって、しかも、当該運転者が運転席から下りることもなくマルチ作業を支障なく行うことができる。なお、踏圧輪は、フレームに回動可能に支持された踏圧輪支持ロッドの下端部に取付けられていて、マルチ作業機を上昇させると、踏圧輪支持ロッドの下端部に取付けてある踏圧輪は、自重により前記踏圧輪支持ロッドの回動支点を中心にマルチ作業機の前方に回動して、畦成形板の後端の挟持部と踏圧輪との間でフィルムの幅方向の両端部が挟持される。この挟持力は、フィルムの繰出し端部に作用する前後方向の張力(弾性バーの復元力)よりも大きいので、前記張力によりフィルムが更に繰り出されることはない。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明を前提として、前記一対の弾性バーは、原位置に対して幅方向に中央側に向けて所定長だけ寄せた状態で、全体をわん曲させて先端部をフィルムの繰出し端部に突刺させることを特徴としている。
【0010】
弾性バーは、原位置に対して幅方向に中央側に向けて所定長だけ寄せられた状態で、先端部がフィルムの繰出し端部に突刺されるので、フィルムの繰出し端部には、マルチ作業機の前後方向に沿った張力のみならず、幅方向の張力も付与されるため、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部には、幅方向に沿っても弛みが発生しにくい状態となる。請求項2のマルチ作業方法において重要なことは、フィルムの繰出し端部にマルチ作業機の前後方向に沿った張力が付与されて、前記繰出し端部がマルチ作業機の前方に巻き込まれないようにすることのみならず、隣接畦でマルチ作業機を下降させた場合に、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が左右一対の踏圧輪により踏圧された状態を確保することである。この状態が確保されないと、隣接畦においてフィルムの繰出し端部がマルチ作業機と一体に前進して、マルチ作業ができなくなるからである。このため、フィルムの繰出し端部に幅方向の張力が付与されて、フィルムの繰出し端部が同方向に沿って弛みが発生しにくい状態となることは、マルチ作業機の旋回後において隣接畦のマルチ作業を開始する際に、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が左右一対の踏圧輪により踏圧され易いことを意味し、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が踏圧輪の内側に入り込んで、踏圧不能な状態(即ち、マルチ不能な状態)となるのを回避できる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2又は3の発明を前提として、前記一対の弾性バーは、原位置において支持端から自由端に向けて間隔が広くなるように前記フレームに支持されていることを特徴としている。
【0012】
フィルムの繰出し端部に対する弾性バーの先端部の突刺位置が、前記繰出し端部の幅方向の外側に位置し易くなって(フィルムの繰出し端部の両端縁を基準にすると、前記両端縁に近づくことになって)、フィルムの繰出し端部の幅方向に沿った張力付与範囲が広くなる。このことは、マルチ作業機の旋回後において隣接畦のマルチ作業を開始する際に、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が左右一対の踏圧輪により踏圧され易いことになる。一方、請求項3の発明のように、一対の弾性バーを原位置に対して幅方向に中央側に向けて所定長だけ寄せた状態においても、一対の弾性バーの先端部の間隔が基端部の間隔よりも狭くならないようにできる。このため、弾性バーのわん曲による復元力の分力のうち、フィルムの繰出し端部の幅方向に沿った分力がフィルムの繰出し端部の中央に向くのを防止できて、フィルムの繰出し端部のうち幅方向の中央部を除く残りの部分である幅方向の両端部のほぼ全域に亘って幅方向の張力を付与できる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかの発明を前提として、前記一対の弾性バーは、下端部に踏圧輪が取付けられていて前記フレームに回動可能に支持されている踏圧輪支持ロッドの上端部に支持されていることを特徴としている。トラクターの後部に装着されたマルチ作業機を圃場に搬入出させる際には、前記踏圧輪支持ロッドは、ほぼ上方を向くように回動されて、その位置で固定される。一方、マルチ作業時においては、踏圧輪支持ロッドは前傾姿勢となって配置されると共に、弾性バーは、非使用時においてほぼ水平に配置されるために、踏圧輪支持ロッドがほぼ上方を向いてフレームに固定されると、弾性バーは、他の部材と干渉することなく斜前上方に向けて配置される。
【0014】
請求項6の発明は、所定のブレーキトルクが加えられた状態で、両端部がフレームに回転可能に支持されたフィルムロールと、ロータリー装置により膨軟にされた土壌を畦形状に成形するために前記ロータリー装置の直後に配設された畦成形板と、前記畦成形板により成形された畦の上面全体を覆ったフィルムの幅方向の両端部を踏圧しながら従動回転する左右一対の踏圧輪と、畦の幅方向に沿って所定間隔をおいて前記フレームから後方に向けて片持ち状態に支持され、前記畦の成形終端部において切断されたフィルムの幅方向の両端部を把持するための把持部材が先端部に取付けられた左右一対の支持バーとを備え、前記各踏圧輪の従動回転により前記フィルムロールを回転させて繰り出されたフィルムを畦の全面に被覆するためのマルチ作業機を使用して、隣接畦に移行する際にフィルムの繰出し端部がマルチ作業機の前方のロータリー装置の側に巻き込まれるのを防止して、隣接畦の成形始端部において畦成形板により成形された畦の上面全体にフィルムを支障なく被覆開始可能とするマルチ作業方法であって、畦の成形終端部において一対の支持バーに取付けられた各把持部材により、一対の踏圧輪の直下にフィルムの幅方向の両端部が配置された状態で前記フィルムを把持してマルチ作業機を上昇させて旋回させ、隣接畦の成形始端部においてマルチ作業機を下降させ、各把持部材がフィルムの繰出し端部の幅方向の両端部を把持したまま前進させると、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が各踏圧輪に踏圧されると共に、フィルムの繰出し済部の幅方向の両端部が一対の覆土具によって覆土されてマルチ作業が開始されることを特徴としている。
【0015】
畦の成形終端部において、フィルムの繰出し端部を切断し、一対の支持バーの先端部に取付けられた各把持部材により、前記繰出し端部における幅方向の両端部を把持し、持ち上げる。この状態で、フィルムの幅方向の繰出し端部は、一対の踏圧輪の直下に配置されているため、マルチ作業機を上昇させて旋回させる際に、前記フィルムの繰出し端部が後方からの風等によって、マルチ作業機の前方に巻き込まれる恐れはなくなる。隣接畦の成形始端部においてマルチ作業機を下降させて前進させると、フィルムの幅方向の繰出し端部は、各把持部材によって把持されて各踏圧輪に踏圧されたまま接地され、覆土具によって覆土されるので、マルチ作業を安定して行うことができる。また、補助者が不要となるため、一人の運転者のみによって、しかも、当該運転者が運転席から下りることもなくマルチ作業を支障なく行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、所定のブレーキトルクが加えられた状態で、両端部がフレームに回転可能に支持されたフィルムロールと、ロータリー装置により膨軟にされた土壌を畦形状に成形するために前記ロータリー装置の直後に配設された畦成形板と、前記畦成形板により成形された畦の上面全体を覆ったフィルムの幅方向の両端部が移動しないように踏圧しながら前進することにより、従動回転する左右一対の踏圧輪と、前記踏圧されたフィルムの幅方向の両端部に覆土するための一対の覆土具とを備え、前記各踏圧輪の従動回転により前記フィルムロールを回転させて繰り出されたフィルムを前記畦の全面に被覆するためのマルチ作業機であって、畦の幅方向に沿って所定間隔をおいて前記フレームから後方に向けて片持ち状態に支持された左右一対の弾性バーを備え、前記畦の成形終端部において繰り出されたフィルムを切断することにより、フィルムロールの側に浮遊状態で残ったフィルムの繰出し端部が前方のロータリー装置の側に巻き込まれるのを防止すべく、前記繰出し端部の幅方向の両端部に前記各弾性バーの先端部をわん曲状態で突刺して、前記わん曲による弾性バーの弾性復元力により前記繰出し端部の幅方向の両端部に前後方向に沿った張力を付与するように構成されていることを特徴としている。このため、畦の成形終端部においてフィルムが切断され、該畦から離脱されたフィルムが浮遊状態に配置されても、該フィルムの幅方向の両端部には一対の弾性バーの張力が作用していて、後方からの風等によってフィルムの繰出し端部が、マルチ作業機の前方に巻き込まれることが防止される。また、隣接する畦の成形始端部にマルチ作業機を下降させたときにも、一対の踏圧輪の直下にフィルムの幅方向の両端部が配置されているため、「踏み損じ」を生ずることはない。また、フィルムの繰出し端部は、その幅を広げられた状態を維持しているので、補助者がフィルムを広げる作業が不要になる。そして、フィルムの繰出し済部における幅方向の両端部は覆土具によって覆土される。上記した結果、補助者が不要となるため、一人の運転者のみによって、しかも、当該運転者が運転席から下りることもなくマルチ作業を支障なく行うことができる。この場合、各弾性バーの先端部が土中に差し込まれることが多く、一層作業が確実になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図1は本発明の第1実施例のマルチ作業機M1 の後方からの斜視図、図2はトラクタEに連結されたマルチ作業機M1 の一部を破断した側面図、図3は同じく平面図、図4は同じく背面図、図5は畦成形板23の斜視図、図6は踏圧輪支持ロッド37を回動させて垂直に配置させた状態の側面図である。
【実施例1】
【0018】
最初に、第1実施例のマルチ作業機M1 の全体構成について説明する。図1及び図2に示されるように、本発明の第1実施例のマルチ作業機M1 は、牽引車の一例であるトラクタE(図2参照)の後方に、三点リンクヒッチHを構成する1本の上側リンク1と2本の下側リンク2を介して連結されている。前記マルチ作業機M1 の前部(トラクタEと相対向する部分)には、圃場を膨軟にするためのロータリー装置3が配設されている。該ロータリー装置3の各ロータリー刃3aは、トラクタEのPTO軸(図示せず)からユニバーサルジョイント4を介して伝達される動力によって所定方向に連続回転される。トラクタEに牽引されたマルチ作業機M1 は、前記トラクタEの前進に伴い、矢印P1 の方向に前進される。なお、図2において、6はトラクタEの後輪であり、7は運転席である。
【0019】
第1実施例のマルチ作業機M1 を構成するフレームKは、前述したロータリー装置3の直後で、マルチ作業機M1 の幅方向Qに沿って配設された水平機枠8と、該水平機枠8から垂下された一対の垂直機枠9を備えている。前記ロータリー装置3は、2本の連結ブラケット11を介して前記水平機枠8に連結されている。前記一対の垂直機枠9から後方に向かって、平面視においてわん曲状態を呈する一対の連結部材12が延設されている。各連結部材12の後端部には、それぞれ角筒状の後方機枠13が固着されていて、各後方機枠13には各フィルムロール支持部材14が挿入されている。各後方機枠13に対する各フィルムロール支持部材14の挿入長さを調整することにより、異なる長さのフィルムロール15を装着することができる。圃場に成形された畦Rの全面を被覆するフィルムFは、ロール状に巻回されたフィルムロール15となって前記各フィルムロール支持部材14に回転可能に支持されている。即ち、図3及び図4に示されるように、各フィルムロール支持部材14の上端部には、圧縮ばね16が弾装された紙管チャック17が取付けられていて、前記フィルムロール15は、その両端部が対応する紙管チャック17に挿入されている。そして、前記各圧縮ばね16による所定の付勢力(ブレーキトルク)が加えられた状態で回転され、フィルムロール15からフィルムFが繰り出される。
【0020】
前記水平機枠8の背面部には、マルチ作業機M1 の幅方向Qに所定の間隔をおいて2本の中間ガイドローラ支持部材18が取付けられている。各中間ガイドローラ支持部材18には、マルチ作業機M1 の幅方向Qに沿って支承軸18aが挿通されていて、該支承軸18aに複数本(本実施例の場合、5本)の中間ガイドローラ19が直列状態で回転可能に支承されている。各中間ガイドローラ19は、フィルムロール15のほぼ直下に配置されている。また、前記水平機枠8の背面部で、マルチ作業機M1 の幅方向Qのほぼ中央部には、弛み吸収ローラ支持部材21が後方に張り出した状態で固着されている。該弛み吸収ローラ支持部材21は、側面視において略L字状であり、フィルムロール15と干渉しないように、該フィルムロール15の上方を通ってその背後に回り込む形態で取付けられている。そして、前記弛み吸収ローラ支持部材21には、高さ位置を調整可能にして弛み吸収ローラ22が、マルチ作業機M1 の幅方向Qに沿って取付けられている。該弛み吸収ローラ22は、マルチ作業機M1 の幅方向Qのほぼ中央部で、前記各中間ガイドローラ19の直下に配置されている。前記弛み吸収ローラ22は、フィルムロール15から繰り出され、各中間ガイドローラ19にガイドされたフィルムFの弛みを吸収するためのものであり、前記弛み吸収ローラ22の直下に配設された畦成形板23(後述)によって成形される畦Rの上面部R1 の幅に対応する長さを有している。
【0021】
次に、接地輪24について説明する。前述した一対の連結ブラケット11には、マルチ作業機M1 の幅方向Qに沿って支持軸25が回動自在に取付けられていて、該支持軸25の両端部に一対の接地輪支持ロッド26が取付けられている。各接地輪支持ロッド26は、一対の垂直機枠9の側方に配置されていて、それらの先端部には、それぞれ接地輪24が回転可能に支承されている。また、前記接地輪支持ロッド26の軸方向のほぼ中央部には、高さ調整ロッド27が取付けられている。前記高さ調整ロッド27の上端部に設けられたハンドル27aを回転させることにより、高さ調整ロッド27の長さが変化し、それに伴って支持軸25が回動される。これにより、各接地輪支持ロッド26の高さ位置が変化し、各接地輪24の高さ方向の取付位置が調整される。
【0022】
次に、畦成形板23について説明する。前述したように、マルチ作業機M1 のフレームKを構成する水平機枠8及び一対の垂直機枠9の直後方の部分には、畦成形板23が配設されている。図5に示されるように、本実施例の畦成形板23は、後方に向かって上面部が切除され、断面略放物線形状にわん曲された一対の主成形板部28と、各主成形板部28の内側面部に取付けられた上面成形板部29と、前記一対の主成形板部28の前端部に取付けられた一対の誘導板部30と、同じく主成形板部28の後方下端部から斜め後方外側に張り出して取付けられた一対の狭溝成形板部31とから成る。即ち、前記一対の主成形板部28の前端部には、前端周縁の全長に亘って前記各主成形板部28の外方に向けて一対の誘導板部30が平面視で緩やかなハの字状となって、しかも、各主成形板部28の前端周縁よりも外方の部分を周囲から取り囲むように取付けられている。一対の誘導板部30は、前方のロータリー装置3により膨軟にされた土壌を畦中央に寄せ集めると共に、全土壌を畦成形に寄与すべく、畦成形予定部以外の部分に土壌が残存するのを防止している。そして、前記各主成形板部28と各狭溝成形板部31との間には、一対の踏圧輪32(後述)を当接するための当接板33が固着されている。
【0023】
次に、踏圧輪32について説明する。前述した一対の後方機枠13における内側の端部には、側面視において略台形状の一対の第1支持板34が、マルチ作業機M1 の幅方向Qに所定の間隔をおいて取付けられている。各後方機枠13における一対の第1支持板34の取付位置は、調整可能である。一対の第1支持板34の後端部には、マルチ作業機M1 の幅方向Qに沿って回動支点ピン35が挿通されていて、該回動支点ピン35に断面略逆U字形状の第2支持板36と踏圧輪支持ロッド37が、一体となって回動可能に支承されている。また、前記第2支持板36の両側壁部には、マルチ作業機M1 の幅方向Qに沿ってばね支持ピン36aが突出されていると共に、踏圧輪支持ロッド37の上面部には、ばね支持部材37aが取付けられていて、前記ばね支持ピン36aと前記ばね支持部材37aとの間に2本の引張りばね38が弾装されている。なお、図4及び図5では、ばね支持部材37a及び引張りばね38の図示を省略してある。
【0024】
各踏圧輪支持ロッド37の先端部で、それらの内側部分には、それぞれ踏圧輪32が回転可能に支承されていると共に、同じく外側部分には、覆土具の一例である各覆土輪39が取付けられている。前記一対の踏圧輪32は、フィルムロール15から繰り出されたフィルムFの幅方向Qの両端部F1 を踏圧して、畦成形板23によって圃場に形成された畦Rの両裾部R2 に押し付けるという機能を有しており、それらの前部を僅かに内側に向けて配置されている。また、前記一対の覆土輪39は、前記一対の踏圧輪32によって畦Rの両裾部R2 に押し付けられたフィルムFの幅方向Qの両端部F1 を覆土するという機能を有しており、各踏圧輪32の後方でそれらの前部を少し外側に向けて配置されている。そして、後方機枠13に対する第1支持板34の取付位置を調整することにより、一対の踏圧輪32及び一対の覆土輪39どうしの間隔を調整することができる。
【0025】
圃場にマルチ作業が行われている状態で、各踏圧輪支持ロッド37は、自重により、回動支点ピン35の軸心35aを中心に下方(当接板33に接近する方向)に向かって回動されている。これにより、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 が、畦Rの両裾部R2 に押し付けられる。更に、各引張りばね38の弾性復元力により、前記フィルムFの幅方向Qの両端部F1 は畦Rの両裾部R2 に、より強く押し付けられる。マルチ作業が終了して、マルチ作業機M1 を搬送させる場合には、前記各踏圧輪支持ロッド37を、回動支点ピン35の軸心35aを中心として上方(当接板33から離間させる方向)に回動させる。図6に示されるように、各踏圧輪支持ロッド37は第2支持板36と一体となって回動され、ほぼ垂直状態に配置される。これにより、マルチ作業機M1 の搬送中に、一対の踏圧輪32と一対の覆土輪39が、圃場と無用に接触することが回避される。
【0026】
次に、一対の接地輪24と一対の踏圧輪32の高さ方向の取付位置の関係について説明する。図2に示されるように、一対の接地輪24の高さ方向の取付位置は、該一対の接地輪24が圃場に接地されたとき、一対の踏圧輪32が畦成形板23に設けられた当接板33から少し離れた状態で接地されるように調整される。例えば、マルチ作業機M1 が上昇されて、一対の踏圧輪支持ロッド37が回動自由な状態に配置されたとき、一対の踏圧輪32は、畦成形板23の当接板33に当接した状態で停止する。この状態で、一対の接地輪24の最下端部は、停止状態の一対の踏圧輪32の最下端部よりも少し上方に配置される。このため、マルチ作業機M1 が下降されると、一対の踏圧輪32は一対の接地輪24よりも先に圃場に接地され、一対の踏圧輪支持ロッド37は上方に回動される。この結果、一対の接地輪24が圃場に接地された状態で、一対の踏圧輪32と対応する当接板33との間に隙間Vが形成され、フィルムロール15から繰り出されたフィルムFが、踏圧輪32と当接板33との間を通過可能である。
【0027】
次に、弾性バーBについて説明する。図4に示されるように、各第2支持板36の両側壁部から側方に突出された一対のばね支持ピン36aのうち、一方側(本実施例のマルチ作業機M1 の場合、外側)のばね支持ピン36aに弾性バー把持部材41が装着されている。図6に示されるように、本実施例の弾性バー把持部材41は、ばね支持ピン36aに装着されるピン装着部と、該ピン装着部とほぼ同一形状で、弾性バーBを把持するためのバー把持部が、相互に直交した状態で上下に固着された形態である。前記ピン装着部は、断面略三角形状の半角筒体42の開放部分にナット体43が固着された形態であり、前記半角筒体42の部分に挿通させたばね支持ピン36aを、前記ナット体43に螺合させた六角ボルト44で押圧して把持するものである。同様に、弾性バーBは、バー把持部の半角筒体42に固着されたナット体43に螺合された六角ボルト44によって把持される。各踏圧輪支持ロッド37が、回動支点ピン35の軸心35aを中心に上方に回動されると、各第2支持板36に取付けられた弾性バー把持部材41も同時に同方向に回動される。このため、各踏圧輪支持ロッド37を回動させたときに、一対の踏圧輪32及び一対の覆土輪39と、各弾性バーBが干渉するおそれはない。
【0028】
各弾性バー把持部材41におけるバー把持部に、一対の弾性バーBの基端部が把持されていて、それらの先端部(自由端部)はマルチ作業機M1 の後方に向かって突出されている。本実施例の場合、一対の弾性バーBは、平面視においてほぼ平行に配置される(図3参照)と共に、側面視においてほぼ水平に配置され、それらの先端部は自然撓みの状態を呈する(図2参照)。後述するように、一対の弾性バーBは、運転者によってわん曲されて、繰出し状態のフィルムFの幅方向Qの両端部F1 に突刺される。図1ないし図3において、自然配置状態における一対の弾性バーBを二点鎖線で示し、突刺状態の弾性バーBを実線で示す。このため、本実施例の一対の弾性バーBは、運転者により、弾性状態のまま容易にわん曲できる程度の直径と、わん曲させた状態でそれらの先端部を、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 に突刺できる程度の長さを有している。
【0029】
本実施例のマルチ作業機M1 の作用について説明する。本明細書では、最初にマルチ作業機M1 の一般的な作用について説明し、次に、第1実施例のマルチ作業機M1 の特徴部分の作用について説明する。図2に示されるように、圃場において、矢印P1 に沿ってマルチ作業機M1 を前進させ、ロータリー装置3によって膨軟にされた土を、畦成形板23によってかき寄せながら成形した畦Rの全面にフィルムFを被覆する(マルチ作業)。即ち、図4に示されるように、マルチ作業機M1 が前進すると、一対の踏圧輪32がフィルムロール15から繰り出されているフィルムFの幅方向Qの両端部F1 を踏圧しながら従動回転される。一対の踏圧輪32とフィルムFの幅方向Qの両端部F1 との間に作用する摩擦力により、前記フィルムFは、フィルムロール支持部材14の部分におけるブレーキトルク(圧縮ばね16の付勢力)に抗して繰り出される。フィルムロール15から繰り出されたフィルムFは、各中間ガイドローラ19にガイドされ、弛み吸収ローラ22によって弛みが吸収された後、畦成形板23によって断面略放物線形状に成形された畦Rの上面部R1 を覆う。この状態で、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 は、一対の踏圧輪32に踏圧されているため、該フィルムFは、幅方向Qに一定の張力が付与された状態で畦Rの上面部R1 と両裾部R2 を被覆する。そして、前記フィルムFの幅方向Qの両端部F1 は、一対の踏圧輪32の直後に配設された各覆土輪39によって覆土される。一対の弾性バーBは、後方に向かってほぼ水平に突出された状態であり、一対の弾性バーBがマルチ作業の支障となることはない。
【0030】
図7に示されるように、マルチ作業機M1 を牽引するトラクタEが、圃場の端部(圃場境界線45)に到達すると、トラクタEが停止される。圃場には、前記圃場境界線45の近傍まで畦Rが成形されていて、マルチ作業機M1 は、畦Rの成形終端部46に配置されている。畦Rの上面部R1 及び両裾部R2 は、マルチ作業機M1 から繰り出されたフィルムFの繰出し済部のうち、その端部(繰出し端部F2 )によって被覆されている。図8に示されるように、トラクタEの運転席7から下りた運転者が一対の弾性バーBを前後方向にわん曲させ、それらの先端部40を、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 で、一対の踏圧輪32の近傍部分に突刺する。前記近傍部分は既に覆土されているため、一対の弾性バーBは、覆土された土47を通ってフィルムFの幅方向Qの両端部F1 に突刺され、その先端部40は土中に差し込まれる。本実施例の場合、各弾性バーBは、それらの前後方向(畦Rの長手方向)だけでなく、左右方向(幅方向Q)にもわん曲された状態でフィルムFの幅方向Qの両端部F1 に突刺される。この結果、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 には、一対の弾性バーBの弾性復元力により、前後方向(畦Rの長手方向)に沿った分力T1 と左右方向(幅方向Q)に沿った分力T2 とが発生し、それらを合成した張力Tが、後方斜め外側に向かって作用する。一対の弾性バーBは、前後方向にわん曲されて突刺されるため、一対の覆土輪39と干渉することが回避される。
【0031】
図8に示されるように、一対の弾性バーBの突刺位置は、一対の踏圧輪32の直後で、しかも各踏圧輪32の外側であることが望ましい。なぜならば、後述するように、畦Rの成形終端部46において畦Rを被覆しているフィルムFが切断されるのであるが、該フィルムFは一対の弾性バーBの突刺位置の直後で切断されるため、前記一対の弾性バーBの突刺位置が各踏圧輪32に近い程、切断後のフィルムFの繰出し端部F2 の長さL1(一対の踏圧輪32が踏圧している部分からフィルムFの切断端縁部48までの長さ)が短くなり、フィルムFの歩留りが良好となるからである。
【0032】
上記したように、畦Rの成形終端部46において、該畦Rを被覆しているフィルムFが、一対の弾性バーBの突刺位置の直後で切断される。図9に示されるように、トラクタEの三点リンクヒッチHの作用により、マルチ作業機M1 の全体が持ち上げられて上昇される。一対の踏圧輪支持ロッド37は自重により、回動支点ピン35の軸心35aを中心に下方に回動され、一対の踏圧輪32が畦成形板23に設けられた当接板33に当接して停止する。これにより、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 が、一対の踏圧輪32と各当接板33とによって挟持される。この挟持力は、フィルムFの幅方向Qの繰出し端部F2 に作用する張力Tのうちの前後方向の分力T1 よりも大きいので、前記張力TによりフィルムFが更に繰り出されることはない。このため、フィルムFの繰出し済部のうち、フィルムロール15から当接板33までの部分は不動状態に保持される。また、フィルムFの繰出し済部のうち、繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 には、マルチ作業機M1 が上昇された状態であっても一対の弾性バーBが突刺されているため、前記繰出し端部F2 には張力Tが、後方斜め外側に向かって作用している。このため、上昇されて畦Rから離脱されたフィルムFの繰出し端部F2 は、浮遊状態であっても、ほぼ畦Rを被覆したままの状態に保持される。換言すれば、フィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 が、一対の踏圧輪32の直下に配置されたままの状態が保持されるため、前記繰出し端部F2 が後方からの風等によってあおられても、ロータリー装置3の側に巻き込まれるおそれはない。なお、本実施例では、一対の弾性バーBを突刺させてからフィルムFを切断している。この場合、一対の踏圧輪32が、フィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 を踏圧した状態で突刺されるため、一対の弾性バーBの突刺作業が容易になるという利点がある。しかし、前記フィルムFを切断してから一対の弾性バーBを突刺させても構わない。
【0033】
図7に示されるように、マルチ作業機M1 を上昇させた状態でトラクタEが旋回され、該トラクタEが、マルチ作業が終了した畦Rに隣接して畦Rが成形される圃場(隣接する畦Rの成形予定部49)の成形始端部49aに配置される。図7において、トラクタEが旋回する状態を矢印51で示し、旋回後のマルチ作業機M1 が前進する方向を矢印P2(矢印P1 と逆の方向)で示す。図10に示されるように、マルチ作業機M1 が下降される。フィルムFの繰出し端部F2 には、一対の弾性バーBによる張力Tが作用しているため、前記フィルムFの繰出し端部F2 は、その幅を維持したまま接地される。隣接する畦Rの成形始端部49aに接地されたフィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 は、一対の踏圧輪32に踏圧したままの状態が保持される。また、フィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 から突出した各弾性バーBの先端部40は、そのまま土中に差し込まれる。
【0034】
一対の接地輪24が圃場に接地されると、一対の踏圧輪支持ロッド37は各回動支点ピン35の軸心35aを中心に上方に回動され、一対の踏圧輪32と当接板33との間に隙間Vが形成される。この状態で、マルチ作業機M1 が矢印P2 の方向に沿って前進されると、ロータリー装置3によって膨軟にされた圃場の土が畦成形板23によってかき寄せられて成形された畦Rの全面に、フィルムFが被覆される。フィルムFの繰出し端部F2 は、その幅を維持したままであるので、マルチ作業の開始時から、繰り出されたフィルムFの幅方向の両端部F1 に突刺された各弾性バーBの先端部40が土中に差し込まれた状態で、繰り出されたフィルムFには、その繰出し端部F2 が一対の踏圧輪32に踏圧された状態で、各弾性バーBの復元力により後方に引っ張られたフィルムFの繰出し端部F2 の自由端部から一対の覆土輪39により覆土される。覆土により、フィルムFの幅方向の両端部F1 がそのままの状態で保持され、該フィルムFの繰出し端部F2 が引きずられて移動することもない。
【0035】
上記した三つの各作用(即ち、一対の弾性バーBがフィルムFの繰出し端部F2 の幅方向の両端部F1 に張力Tを有して突刺されていること、一対の踏圧輪32がフィルムFの繰出し端部F2 を踏圧していること、一対の覆土輪39がフィルムFの繰出し端部F2 の自由端部を覆土すること)が相乗して、隣接畦Rにおいてマルチ作業の開始時には、フィルムFが前方に引っ張られることなく、しかも、補助者によりマルチ開始時のフィルムFの繰出し端部F2 の幅を畦Rの幅に対応するように広げることなく、一人の運転者のみによって、しかも、当該運転者が運転席7から下りることもなくマルチ作業を支障なく行うことができる。よって、運転者の心理的負担も少なくなって、マルチ作業の能率が高まる。
【0036】
また、仮りに、各弾性バーBの先端部40が土中に差し込まれない状態であっても、フィルムFの繰出し端部F2 には突刺された各弾性バーBの張力Tが作用していて、前記フィルムFの繰出し端部F2 は、その幅方向に広げられたまま地表面に接地されるため、一対の踏圧輪32がフィルムFの繰出し端部F2 の両端部F1 を踏圧すること、及び一対の覆土輪39が覆土することに支障が生じることはない。
【0037】
図11及び図12に示されるように、フィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 にわん曲状態で突刺されていた一対の弾性バーBは、マルチ作業機M1 の前進に伴い、それらのわん曲部分が徐々に延伸された後、前記フィルムFの幅方向Qの繰出し端部F2 から自然に抜け出る。一対の弾性バーBのわん曲部分が徐々に延伸されることにより、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 に作用する各弾性バーBの張力Tは徐々に低下する。図11の(イ)において、一対の弾性バーBがフィルムFから抜け出る直前の張力をT'(前後方向の分力T1',幅方向Qの分力T2')とすると、張力T’は、接地直後の張力Tよりも小さい。しかし、一対の弾性バーBの突刺位置よりも後方の両端部F1 は、各覆土輪39によって覆土されるため、マルチ作業の安定性が確保される。また、図11の(ロ)に示されるように、一対の弾性バーBが突刺された位置から、該一対の弾性バーBが抜け出る直前における一対の踏圧輪32の踏圧位置までの長さL2 とすると、前記長さL2 が長い程、フィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 に張力Tが付与されている時間が長くなり、より安定状態でマルチ作業が行われる。フィルムFの繰出し端部F2 における幅方向Qの両端部F1 から抜け出た一対の弾性バーBは、原形状である直線状に復元されるため、マルチ作業の支障となることはない。なお、図12の(イ)において、52は、フィルムFの繰出し端部F2 に残った一対の弾性バーBの突刺孔である。
【0038】
マルチ作業が終了したマルチ作業機M1 を搬送させるとき、一対の踏圧輪支持ロッド37を上方に回動させて、一対の踏圧輪32及び一対の覆土輪39を圃場面から退避させる場合がある。このときであっても、図6に示されるように、一対の弾性バーBは、前記各踏圧輪支持ロッド37と一体となって回動され、両者が干渉することはない。
【0039】
上記した第1実施例のマルチ作業機M1 では、一対の弾性バーBは、第2支持板36の両側壁板から突出された一対のばね支持ピン36aのうち、外側のばね支持ピン36aに装着された弾性バー把持部材41に把持されている。これにより、一対の弾性バーBの幅方向Qの取付間隔が最も広くなると共に、それらの取付位置が、フィルムFにおける突刺位置よりも外側に配置され、前記一対の弾性バーBは、幅方向Qに弾性変形された状態で突刺される。このときの張力T(幅方向Qの分力T2)が大きい程、上昇されて浮遊状態となったフィルムFの繰出し端部F2 は、より確実に一対の踏圧輪32の直下に配置される。しかも、各踏圧輪支持ロッド37を回動させるときに、一対の弾性バーBと干渉するおそれもなくなる。
【0040】
上記した第1実施例のマルチ作業機M1 では、図3に示されるように、原位置における一対の弾性バーBは、平面視においてほぼ平行状態に配置されている。換言すれば、一対の弾性バーBにおける基端部どうしの取付間隔W1 と、先端部どうしの取付間隔W2 とは同一である。しかし、フィルムFに突刺されたときの一対の弾性バーBの幅方向Qの分力T2 を大きくするために、一対の弾性バーBの先端部どうしの取付間隔W2 を、それらの基端部どうしの取付間隔W1 よりも広くして取付けてもよい。この場合、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 に作用する分力T2 が大きくなり、該フィルムFは更に確実に外側に引っ張られ、一対の踏圧輪32の直下に配置され易くなる。
【実施例2】
【0041】
上記した第1実施例のマルチ作業機M1 は、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 に一対の弾性バーBを突刺させ、各弾性バーBの張力TをフィルムFの両端部F1 に作用させることにより、浮遊状態となった前記フィルムFの両端部F1 を、一対の踏圧輪32の直下に確実に配置させる構成である。これにより、マルチ作業が終了した畦Rに隣接する畦Rの成形始端部49aにマルチ作業機M1 が接地されたとき、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 は、確実に一対の踏圧輪32の直下に配置される。しかし、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 を一対の踏圧輪32の直下に配置させるためには、前記一対の弾性バーBを突刺させること以外の手段を用いても構わない。例えば、図13に示される第2実施例のマルチ作業機M2 のように、一対の踏圧輪支持ロッド37から対応する各踏圧輪32の直後方まで延設させた一対のバー材53の先端部に、引張りばね54を介してクリップ等の把持部材55を取付け、前記一対の踏圧輪32の直下にフィルムFの幅方向Qの両端部F1 が配置されるようにして、前記把持部材55で把持したフィルムFの幅方向Qの両端部F1 を持ち上げる形態であってもよい。この実施例のマルチ作業機M2 であっても、フィルムFの繰出し端部F2 が一対の把持部材55によって持ち上げられているため、マルチ作業機M2 の上昇状態で前記繰出し端部F2 が後方からの風等によって、前方に巻き込まれるおそれはない。また、隣接する畦Rの成形始端部49aでマルチ作業機M2 を下降させたとき、フィルムFの幅方向Qの両端部F1 は、一対の踏圧輪32の直下に配置され、隣接する畦Rでのマルチ作業に支障が生ずることはない。一対の踏圧輪32によって踏圧された直後のフィルムFは、一対の覆土輪39によって覆土され、覆土によるフィルムFの保持力が各引張りばね54の引張り力を超えると、前記各引張りばね54がフィルムFの繰出し端部F2 から自然に外れる。このため、第1実施例のマルチ作業機M1 と同様に、補助者が不要となるため、一人の運転者のみによって、しかも、当該運転者が運転席から下りることもなくマルチ作業を支障なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施例のマルチ作業機M1 の後方からの斜視図である。
【図2】トラクタEに連結されたマルチ作業機M1 の一部を破断した側面図である。
【図3】同じく平面図である。
【図4】同じく背面図である。
【図5】畦成形板23の斜視図である。
【図6】踏圧輪支持ロッド37を回動させて垂直に配置させた状態の側面図である。
【図7】マルチ作業機M1 を旋回させる状態の模式平面図である。
【図8】(イ)は、畦Rの成形終端部46に配置されたマルチ作業機M1 の模式平面図であり、(ロ)は、(イ)の模式側面図である。
【図9】(イ)は、マルチ作業機M1 を上昇させた状態の模式平面図であり、(ロ)は、(イ)の模式側面図である。
【図10】(イ)は、隣接する畦Rにおいてマルチ作業機M1 を下降させた状態の模式平面図であり、(ロ)は、(イ)の模式側面図である。
【図11】(イ)は、隣接する畦Rにおいてマルチ作業機M1 を前進させた状態の模式平面図であり、(ロ)は、(イ)の模式側面図である。
【図12】(イ)は、マルチ作業機M1 の一対の弾性バーBが、フィルムFから抜け出た状態の模式平面図であり、(ロ)は、(イ)の模式側面図である。
【図13】(イ)は、第2実施例のマルチ作業機M2 を上昇させた状態の模式平面図であり、(ロ)は、(イ)の模式側面図である。
【符号の説明】
【0043】
B:弾性バー
F:フィルム
F1 :フィルムの幅方向の両端部
F2 :フィルムの繰出し端部
K:フレーム
M1,M2 :マルチ作業機
Q:幅方向
R:畦
R1 :畦の上面部
R2 :畦の両裾部
W1,W2 :弾性バーの取付間隔(間隔)
T',T:張力(弾性復元力)
3:ロータリー装置
15:フィルムロール
16:圧縮ばね(ブレーキトルク)
23:畦成形板
32:踏圧輪
39:覆土輪(覆土具)
40:先端部
46:成形終端部
49a:成形始端部
55:把持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のブレーキトルクが加えられた状態で、両端部がフレームに回転可能に支持されたフィルムロールと、
ロータリー装置により膨軟にされた土壌を畦形状に成形するために前記ロータリー装置の直後に配設された畦成形板と、
前記畦成形板により成形された畦の上面全体を覆ったフィルムの幅方向の両端部が移動しないように踏圧しながら前進することにより、従動回転する左右一対の踏圧輪と、
前記踏圧されたフィルムの幅方向の両端部に覆土するための一対の覆土具とを備え、
前記各踏圧輪の従動回転により前記フィルムロールを回転させて繰り出されたフィルムを前記畦の全面に被覆するためのマルチ作業機であって、
畦の幅方向に沿って所定間隔をおいて前記フレームから後方に向けて片持ち状態に支持された左右一対の弾性バーを備え、
前記畦の成形終端部において繰り出されたフィルムを切断することにより、フィルムロールの側に浮遊状態で残ったフィルムの繰出し端部が前方のロータリー装置の側に巻き込まれるのを防止すべく、前記繰出し端部の幅方向の両端部に前記各弾性バーの先端部をわん曲状態で突刺して、前記わん曲による弾性バーの弾性復元力により前記繰出し端部の幅方向の両端部に前後方向に沿った張力を付与するように構成されていることを特徴とするマルチ作業機。
【請求項2】
請求項1のマルチ作業機を使用して、隣接畦に移行する際にフィルムの繰出し端部がマルチ作業機の前方のロータリー装置の側に巻き込まれるのを防止して、隣接畦の成形始端部において畦成形板により成形された畦の上面全体にフィルムを支障なく被覆開始可能とするマルチ作業方法であって、
畦の成形終端部において各弾性バーをわん曲させて先端部をフィルムの繰出し端部に突刺して、マルチ作業機の少なくとも前後方向に沿った張力を前記繰出し端部に付与した状態でマルチ作業機を上昇させて旋回させ、
隣接畦の成形始端部においてマルチ作業機を下降させ、各弾性バーをわん曲させてフィルムの繰出し端部の幅方向の両端部に突刺したまま前進させると、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が各踏圧輪により踏圧されると共に、フィルムの繰出し済部の幅方向の両端部が一対の覆土具によって覆土されて、地表面に対してフィルムの繰出し済部が不動となることにより、わん曲状態の前記弾性バーは徐々に原形状である直線状に復元して、復元途中において弾性バーの先端部はフィルムの繰出し済部から自然に抜け出るようにしたことを特徴とするマルチ作業方法。
【請求項3】
前記一対の弾性バーは、原位置に対して幅方向に中央側に向けて所定長だけ寄せた状態で、全体をわん曲させて先端部をフィルムの繰出し端部に突刺させることを特徴とする請求項2に記載のマルチ作業方法。
【請求項4】
前記一対の弾性バーは、原位置において支持端から自由端に向けて間隔が広くなるように前記フレームに支持されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のマルチ作業方法。
【請求項5】
前記一対の弾性バーは、下端部に踏圧輪が取付けられていて前記フレームに回動可能に支持されている踏圧輪支持ロッドの上端部に支持されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のマルチ作業方法。
【請求項6】
所定のブレーキトルクが加えられた状態で、両端部がフレームに回転可能に支持されたフィルムロールと、
ロータリー装置により膨軟にされた土壌を畦形状に成形するために前記ロータリー装置の直後に配設された畦成形板と、
前記畦成形板により成形された畦の上面全体を覆ったフィルムの幅方向の両端部を踏圧しながら従動回転する左右一対の踏圧輪と、
畦の幅方向に沿って所定間隔をおいて前記フレームから後方に向けて片持ち状態に支持され、前記畦の成形終端部において切断されたフィルムの幅方向の両端部を把持するための把持部材が先端部に取付けられた左右一対の支持バーとを備え、
前記各踏圧輪の従動回転により前記フィルムロールを回転させて繰り出されたフィルムを畦の全面に被覆するためのマルチ作業機を使用して、隣接畦に移行する際にフィルムの繰出し端部がマルチ作業機の前方のロータリー装置の側に巻き込まれるのを防止して、隣接畦の成形始端部において畦成形板により成形された畦の上面全体にフィルムを支障なく被覆開始可能とするマルチ作業方法であって、
畦の成形終端部において一対の支持バーに取付けられた各把持部材により、一対の踏圧輪の直下にフィルムの幅方向の両端部が配置された状態で前記フィルムを把持してマルチ作業機を上昇させて旋回させ、
隣接畦の成形始端部においてマルチ作業機を下降させ、各把持部材がフィルムの繰出し端部の幅方向の両端部を把持したまま前進させると、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が各踏圧輪に踏圧されると共に、フィルムの繰出し済部の幅方向の両端部が一対の覆土具によって覆土されてマルチ作業が開始されることを特徴とするマルチ作業方法。
【請求項1】
所定のブレーキトルクが加えられた状態で、両端部がフレームに回転可能に支持されたフィルムロールと、
ロータリー装置により膨軟にされた土壌を畦形状に成形するために前記ロータリー装置の直後に配設された畦成形板と、
前記畦成形板により成形された畦の上面全体を覆ったフィルムの幅方向の両端部が移動しないように踏圧しながら前進することにより、従動回転する左右一対の踏圧輪と、
前記踏圧されたフィルムの幅方向の両端部に覆土するための一対の覆土具とを備え、
前記各踏圧輪の従動回転により前記フィルムロールを回転させて繰り出されたフィルムを前記畦の全面に被覆するためのマルチ作業機であって、
畦の幅方向に沿って所定間隔をおいて前記フレームから後方に向けて片持ち状態に支持された左右一対の弾性バーを備え、
前記畦の成形終端部において繰り出されたフィルムを切断することにより、フィルムロールの側に浮遊状態で残ったフィルムの繰出し端部が前方のロータリー装置の側に巻き込まれるのを防止すべく、前記繰出し端部の幅方向の両端部に前記各弾性バーの先端部をわん曲状態で突刺して、前記わん曲による弾性バーの弾性復元力により前記繰出し端部の幅方向の両端部に前後方向に沿った張力を付与するように構成されていることを特徴とするマルチ作業機。
【請求項2】
請求項1のマルチ作業機を使用して、隣接畦に移行する際にフィルムの繰出し端部がマルチ作業機の前方のロータリー装置の側に巻き込まれるのを防止して、隣接畦の成形始端部において畦成形板により成形された畦の上面全体にフィルムを支障なく被覆開始可能とするマルチ作業方法であって、
畦の成形終端部において各弾性バーをわん曲させて先端部をフィルムの繰出し端部に突刺して、マルチ作業機の少なくとも前後方向に沿った張力を前記繰出し端部に付与した状態でマルチ作業機を上昇させて旋回させ、
隣接畦の成形始端部においてマルチ作業機を下降させ、各弾性バーをわん曲させてフィルムの繰出し端部の幅方向の両端部に突刺したまま前進させると、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が各踏圧輪により踏圧されると共に、フィルムの繰出し済部の幅方向の両端部が一対の覆土具によって覆土されて、地表面に対してフィルムの繰出し済部が不動となることにより、わん曲状態の前記弾性バーは徐々に原形状である直線状に復元して、復元途中において弾性バーの先端部はフィルムの繰出し済部から自然に抜け出るようにしたことを特徴とするマルチ作業方法。
【請求項3】
前記一対の弾性バーは、原位置に対して幅方向に中央側に向けて所定長だけ寄せた状態で、全体をわん曲させて先端部をフィルムの繰出し端部に突刺させることを特徴とする請求項2に記載のマルチ作業方法。
【請求項4】
前記一対の弾性バーは、原位置において支持端から自由端に向けて間隔が広くなるように前記フレームに支持されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のマルチ作業方法。
【請求項5】
前記一対の弾性バーは、下端部に踏圧輪が取付けられていて前記フレームに回動可能に支持されている踏圧輪支持ロッドの上端部に支持されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のマルチ作業方法。
【請求項6】
所定のブレーキトルクが加えられた状態で、両端部がフレームに回転可能に支持されたフィルムロールと、
ロータリー装置により膨軟にされた土壌を畦形状に成形するために前記ロータリー装置の直後に配設された畦成形板と、
前記畦成形板により成形された畦の上面全体を覆ったフィルムの幅方向の両端部を踏圧しながら従動回転する左右一対の踏圧輪と、
畦の幅方向に沿って所定間隔をおいて前記フレームから後方に向けて片持ち状態に支持され、前記畦の成形終端部において切断されたフィルムの幅方向の両端部を把持するための把持部材が先端部に取付けられた左右一対の支持バーとを備え、
前記各踏圧輪の従動回転により前記フィルムロールを回転させて繰り出されたフィルムを畦の全面に被覆するためのマルチ作業機を使用して、隣接畦に移行する際にフィルムの繰出し端部がマルチ作業機の前方のロータリー装置の側に巻き込まれるのを防止して、隣接畦の成形始端部において畦成形板により成形された畦の上面全体にフィルムを支障なく被覆開始可能とするマルチ作業方法であって、
畦の成形終端部において一対の支持バーに取付けられた各把持部材により、一対の踏圧輪の直下にフィルムの幅方向の両端部が配置された状態で前記フィルムを把持してマルチ作業機を上昇させて旋回させ、
隣接畦の成形始端部においてマルチ作業機を下降させ、各把持部材がフィルムの繰出し端部の幅方向の両端部を把持したまま前進させると、フィルムの繰出し端部の幅方向の両端部が各踏圧輪に踏圧されると共に、フィルムの繰出し済部の幅方向の両端部が一対の覆土具によって覆土されてマルチ作業が開始されることを特徴とするマルチ作業方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−325533(P2006−325533A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156596(P2005−156596)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000183967)鋤柄農機株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000183967)鋤柄農機株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]