説明

マルチ作業機

【課題】フィルムロールから繰り出されたマルチフィルムが風等の影響でパタパタと振動乃至揺動しても、フィルム検出器が誤検出するのを防止できるようにする。
【解決手段】畦を覆うマルチフィルムを繰り出すフィルムロール107と、フィルムロールから繰り出されたマルチフィルム117の側部を土に向けて押圧する押えロール99とを備えたマルチ作業機において、フィルムロールと押えロールとの間に、フィルムロールから繰り出されたマルチフィルムにテンションを与えるテンションロール111、112が設けられ、フィルムロールからテンションロールに繰り出されたマルチフィルムを検出するように、フィルム検出器123の感知部126がテンションロールに設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マルチ作業機(マルチロータリ作業機)には、土を耕起するロータリ耕耘機と、ロータリ耕耘機で耕起した土を盛り上げて畦を形成する畦成型器と、畦成型器により形成した畦を覆うマルチフィルムを繰り出すフィルムロールと、フィルムロールから繰り出されたマルチフィルムの側部を土に向けて押圧する押えロールとを備えたものがあり、この種の従来のマルチ作業機では、フィルムロールから押えロールに繰り出されたマルチフィルムを検出するフィルム検出器が設けられ、このフィルム検出器の感知部は、フィルムロールと押えロールとの間の空間部(ロールから離れた位置)やテンションロール等の固定部材から離れた空間部に配置されていた(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【特許文献1】特公昭63−16093号公報
【特許文献2】実公昭57−52154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、従来では、風等の影響で、マルチフィルムがパタパタと振動乃至揺動すると、フィルム検出器の感知部に対してマルチフィルムが接離移動を繰り返して、フィルム検出器にチャタリングが生じて誤検出するおそれが大であった。
本発明は上記問題点に鑑み、フィルムロールから繰り出されたマルチフィルムが風等の影響でパタパタと振動乃至揺動しても、フィルム検出器が誤検出するのを防止できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、畦を覆うマルチフィルムを繰り出すフィルムロールと、フィルムロールから繰り出されたマルチフィルムの側部を土に向けて押圧する押えロールとを備えたマルチ作業機において、
フィルムロールと押えロールとの間に、フィルムロールから繰り出されたマルチフィルムにテンションを与えるテンションロールが設けられ、フィルムロールからテンションロールに繰り出されたマルチフィルムを検出するように、フィルム検出器の感知部がテンションロールに設けられている点にある。
【0005】
また、本発明の他の技術的手段は、前記テンションロールの中途部に凹溝が形成され、前記感知部が凹溝に出退移動自在に設けられ、フィルムロールからテンションロールに繰り出されたマルチフィルムにより押されて、感知部が凹溝内に後退すると共に、フィルムロールからテンションロールに繰り出されたマルチフィルムがなくなったとき、凹溝から感知部が突出するように、感知部を凹溝から突出する方向に付勢するバネが設けられている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、前記テンションロールは、支持軸に外嵌した複数のロール体を備え、各ロール体は支持軸廻りに回転自在に支持され、隣り合うロール体間に前記凹溝が形成されている点にある。
【0006】
また、本発明の他の技術的手段は、前記凹溝は、テンションロールの外周面に沿って環状に形成され、前記感知部は、環状の凹溝に対応して円弧状に形成され、感知部の先端は、テンションロールの支持軸に接当することによって感知部が凹溝から突出移動するのを規制するストッパーとされている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、一対の支持腕間に、テンションロールを回転自在に支持する支持軸が、支持腕を貫通して両外方に突出するように設けられ、前記テンションロールは複数のロール体を備え、複数のロール体は、支持軸にそれぞれ外嵌されて、一対の支持腕間と支持腕間の外方とに配置され、支持腕を挟んで隣り合うロール体間に前記凹溝が形成されている点にある。
【0007】
また、本発明の他の技術的手段は、前記感知部の先端部は、支持腕に接当することにより凹溝に対する感知部の突出移動を規制するストッパーとされている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、前記フィルム検出器は、揺動自在に支持された感知レバーと、感知レバーの揺動動作によりオンオフ動作する感知スイッチとを具備し、前記感知部が、感知レバーの揺動によって凹溝から出退するように、感知レバーの遊端側に形成され、感知部が凹溝内に後退する方向に感知レバーを付勢するように、前記バネが設けられている点にある。
【0008】
また、本発明の他の技術的手段は、前記フィルム検出器の感知部に、マルチフイルムに接触してその繰り出し動作により回転する転動ロールが設けられている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、フィルムロールと押えロールとの間に、第1テンションロールと第2テンションロールとが設けられ、第1テンションロールはフィルムロールの後下方に配置されて、フィルムロールから後下方に繰り出されたマルチフィルムを前下方に向けて屈曲させるように、第1テンションロールの後側にマルチフイルムが巻回され、第2テンションロールは第1テンションロールの前下方であって押えロールの前上方に配置されて、第1テンションロールから前下方に繰り出されたマルチフィルムを後下方に向けて屈曲させるように、第2テンションロールの前側にマルチフィルムが巻回され、第1テンションロールに前記感知部が設けられている点にある。
【0009】
また、本発明の他の技術的手段は、前記フィルム検出器がマルチフィルムを検出しなくなったときに作動する警報器が設けられている点にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フィルムロールから繰り出されたマルチフィルムが風等の影響でパタパタと振動乃至揺動しても、フィルム検出器が誤検出するのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2において、1はマルチロータリ作業機で、ロータリ耕耘作業と畝成形作業とマルチフィルム被覆作業とを一工程(同時作業)で行えるものである。このマルチロータリ作業機1は、センタドライブ駆動方式のロータリ作業機2と畝成形機3とマルチ作業機4とが一体的に連結された構成を有し、走行機体であるトラクタ6の後部に、リンク装着機構を構成する昇降基枠7と昇降機構8とを介して昇降自在に装着されている。
ロータリ作業機2の機枠であるロータリ機枠10は、ギアケース11とギアケース11から下方に突設する伝動ケース12とギアケース11から突出する左右一対のサポートアーム13から構成されている。
【0012】
前記伝動ケース12の下部には、圃場Fを耕耘する複数の耕耘爪15を有する爪軸16が、左右軸心回りに回転自在に設けられ、耕耘部17を形成している。
トラクタ6のPTO軸20からの駆動力は、ユニバーサルジョイント軸21により作業機1の入力軸に伝達され、ギアケース11及び伝導ケース12内に設けられた伝動機構を介して爪軸16に伝達される。この爪軸16が軸心回りに回転することで、耕耘爪15は土を耕起反転すると共に砕土する。
この耕耘部17は、耕耘爪15が土に対して下向きに回転切削してダウンカット耕耘するダウンカットロータリによって構成されており、耕耘爪15は、図1の矢印A方向に回転する。
【0013】
カバー体23は、爪軸16及び耕耘爪15の上方を覆う側面視略半円弧状のカバーであり、後述する畝成形機3の前部に形成されている挟角設定部材25の下部に、その上部が固着されている。したがって、畝成形機3と一体になり連動して爪軸回りに移動するようになっている。
このカバー体23は、耕耘爪15で耕耘される土の飛散を防止すると共に、耕耘爪15から放擲された土が衝突することによって砕土作用を行う。
前記ロータリ作業機2をトラクタ6の後部に連結するための昇降基枠7は、前記ギアケース11を左右両側より挟み込むように固着又は左右サポートアーム13に固着されており、前記ギアケース11又はサポートアーム13から前方へ突出している。昇降基枠7の前部はトラクタ6の後部に設けられたブラケット26に横軸回りで揺動自在に枢着される。
【0014】
昇降基枠7の中途部には昇降機構8が取り付けられている。すなわち、左右一対のリフトロッド27の一端が、前記昇降基枠7の中途部に横軸回り回動自在に枢支されており、このリフトロッド27の他端はリフトアーム28の一端とそれぞれ横軸回り回動自在に枢支されている。
リフトアーム28の他端(基端)側はトラクタ6の後部の油圧装置30に枢着され、この油圧装置30の内部に配置された油圧シリンダ(図示せず)により横軸周りに回動するようになっている。当該ロータリ作業機2(マルチロータリ作業機1)はトラクタ6後部に2点リンク機構で連結されており、油圧装置30を作動して、リフトアーム28を上下揺動することで昇降基枠7ひいてはロータリ作業機2(マルチロータリ作業機1)を昇降する。
【0015】
前記一対のリフトロッド27のどちらか一方で且つその中途部には、昇降基枠7の左右方向の傾きを調整するための水平制御手段(油圧シリンダ)29が設けられている。
前記昇降基枠7の後上部には、左右一対のマスト部材33が固着されている。また、サポートアーム13の中途部には、左右一対の後連結部材35が後方突設している。この後連結部材35の下端は、前記カバー体23の上面と隣接するため、カバー体23上面と略同一の曲率を有する円弧状となっており、カバー体23が前後方向に移動する際のガイドの役目も有している。
【0016】
前記ロータリ作業機2の後方に連結された畝成形機3は、畝立て機枠37を有しており、左右一対の畝立て縦枠38と、この畝立て縦枠38上部間に架け渡された畝立て横枠39とから形成されている。この畝立て機枠37には畝の左右の側面を形成する左右の側板41と、畝Rの上面を形成する上板とが備えられており、前後及び下方に開放状に畝立て部43を形成している。
前記畝立て横枠39の左右方向中途部に、左右一対の連結棒支持枠45が固着され、各連結棒支持枠45に挟角設定部材25が前方に突出するように設けられている。各挟角設定部材25は前記一対の後連結部材35をそれぞれの外側から挟み込むように配置されている。
【0017】
各挟角設定部材25には、前後方向に複数(2つ)の長孔47が形成されている。この長孔47は爪軸16を中心とした略円弧状である。この長孔47と後連結部材35に設けられた締結孔(図示せず)に、ボルト48を貫通させ締め付けることで、前記後連結部材35と挟角設定部材25とを締結し固定するようにしている。
これらによって締結手段50が構成されており、この締結手段50を締結する又は解除することで、ロータリ作業機2に対して畝成形機3を連結又は挟角調整可能にしている。
サポートアーム13と爪軸16とを結ぶ中心線に対して、畝立て横枠36と爪軸16とを結ぶ中心線がなす挟角αは、後連結部材35と挟角設定部材25との相対前後位置を調整することにより変更され、この挟角αの変更は互いの相対姿勢の変更となる。
【0018】
ゲージ手段53はロータリ作業機2の耕深を調整する左右一対のゲージ手段であり、畝成形機の構成部材に装着されていて、畝成形機3の圃場Fに対する高さも変更し形成される畝Rの高さを調整できる。この左右各ゲージ手段53は、畝立て機枠37に、上部リンク56と下部リンク55とを平行に支持した平行リンク機構となっている。
下部リンク55は前端が畝立て縦枠38に揺動自在に枢支され、上部リンク56は前端が左右方向に軸心が向く六角パイプ等の連結棒59に連結されている。連結棒59は畝立て横枠39に固定の連結棒支持枠45に回動自在に支持され、左右上部リンク56の前上固定枢支点を形成している。
【0019】
上部リンク56及び下部リンク55の後端には連結リンク61が連結され、この連結リンク61又は下部リンク55の後端に、ゲージ体であるゲージ輪62が回転自在に枢支される。
前記連結棒59の略中央には、六角筒体等の連結筒体67が嵌合しボルト68を介して固定されている。この連結筒体67から略上方に、側面視略くの字形の回動部材69が延設されている。この回動部材69の先端は、後述の連動体70に枢支軸71を介して回動自在に枢着されている。
【0020】
前記ゲージ手段53を高さ調整する高さ調整機構73は、長さ方向に伸縮可能な伸縮ロッド74と連動体70とを有している。
伸縮ロッド74は、雌ネジを有し且つ連動体70に連結ピン77を介して連結された先端ロッド78と、この先端ロッド78に螺合する雄ネジを有する駆動ロッド81と、ロッドカバー83と、駆動ロッド81の基端に設けられたハンドル84とを有している。前記ロッドカバー83はマスト部材33に横軸回りに回動自在に枢着されている。
前記高さ調整機構73はハンドル84を回動することで、伸縮ロッド74の長さが伸縮し、回動部材69を先端ロッド78に連動して、図3の矢印B方向へ移動することになる。すると、連結棒59が図3の矢印C方向へ回動し、上部リンク56が連結棒59回りに上下に揺動し、前記ゲージ輪62が昇降するようになる。
【0021】
ゲージ輪62を上方に上げることで、畝成形機3は圃場Fに対して下降することになり、耕深が深くなって高畝が形成され、逆に、ゲージ輪62を下方に下げることで、畝成形機3は圃場Fに対して上昇することになり、耕深が浅くなって低畝が形成されることになる。
また、前記連動体70には、マルチロータリ作業機1の耕耘開始時において、所望する耕耘深さに耕耘爪15が早期に達することを促す腰折れ機構86が設けられている。
腰折れ機構86は、連動体70の下部略中央から左右一対の押上片支持体89が下方へ突出しており、この押上片支持体89の間には側面視略くの字形の押上片90が、その屈曲部で横軸91回りに枢着されている。
【0022】
この押上片90の長片92を上方へ押し上げることにより、押上片90の作用部93が先端ロッド78の先端下部を上方へ押し上げることになる。このとき、この先端ロッド78が枢着している連動体70は下方へ開口しているため、先端ロッド78と連動体70は側面視略への字に折れ曲がるようになる。
この腰折れ状態では、ゲージ手段10すなわち回動部材30からの力が伸縮ロッド26には伝わらないようになるため、ゲージ輪53は畝成形機3を支える機能を有さずフリーの状態になる。
【0023】
この腰折れ機構86は、以下のようにして使用する。
マルチロータリ作業機1を用いて耕耘作業を開始する際には、前記ゲージ輪62が畝成形機3を支持している状態であれば、その支持が障害になり、ロータリ作業機2が圃場Fの土中に入り込みづらい状況となる。したがって、畦際から耕耘開始位置までの距離が長くなる等の不都合が生じる。
そのため、耕耘始めには、前記長片92を押し上げることで、腰折れ機構86を側面視略への字に折り曲げ、ゲージ輪62の支持状態をフリーとなる。
【0024】
すると、ロータリ作業機2や畝成形機3の自重により、耕耘爪15が早期に所望の深さに達するようになり、短時間で所望の耕耘深さを得ることができるようになる。
所望の耕耘深さになった後は、昇降機構8を介してマルチロータリ作業機1を上方へ持ち上げる。その際、ゲージ輪62がその自重で下にさがることで、回動部材69を前方へ回動し、作用部93が下方へ押し戻され、略への字に折れていた連動体70と先端ロッド78は一直線になる。これにより、腰折れ機構86は、ゲージ輪62の力を伸縮ロッド74へ伝えるようになり、ゲージ輪62は畝成形機3の上下位置を規制する機能を有するようになる。
【0025】
この畝成形機3の後方にはマルチ作業機4が設けられており、前記左右の畝立て縦枠38の略中央から後方へ、左右一対のマルチ作業機枠96が突設している。マルチ作業機枠96の後部からは支持体97が後下方に突設され、この支持体97の中途部にマルチフィルム117の側部を土に向けて押圧する押えロール99が設けられると共に、後端部には土掛けディスク100が設けられている。マルチ作業機枠96の後端から支持腕101を介して鎮圧輪102が左右方向の軸廻りに回転自在に支持されている。前記畝立て横枠39に、左右一対のロール支持部材106を介して、フィルムロール107が回転自在に支持され、フイルムロール107の回転に伴って、フィルムロール107から畦を覆うマルチフィルム117を繰り出すように構成されている。畝立て横枠39に、予備のマルチフィルムロール108を支持する予備フィルムロール受け部材109が設けられている。フィルムロール107と押えロール99との間に、第1テンションロール111と第2テンションロール112とが設けられている。
【0026】
図4〜図7にも示すように、横枠39に左右一対の支持腕114が後方に突設され、一対の支持腕114間に、第1テンションロール111を回転自在に支持する支持軸115が設けられ、支持軸115は一対の支持腕114を貫通して左右両側(左右方向両外側方)に突出されている。第2テンションロール112は、左右一対のマルチ作業機枠96等に突設した図示省略の支持腕を介して左右方向に軸廻りに回転自在に支持されている。
第1テンションロール111はフィルムロール107の後下方に配置されて、フィルムロール107から後下方に繰り出されたマルチフィルム117を前下方に向けて屈曲させるように、第1テンションロール111の後側にマルチフイルム117が巻回されている。第2テンションロール112は第1テンションロール111の前下方であって押えロール99の前上方に配置されて、第1テンションロール111から前下方に繰り出されたマルチフィルム117を後下方に向けて屈曲させるように、第2テンションロール112の前側にマルチフィルム117が巻回されている。第1テンションロール111及び第2テンションロール112によって、マルチフィルム117に張力を与えハリをもたせるようになっている。
【0027】
而して、マルチ作業機4は、フィルムロール107から、マルチフィルム117を第1テンションロール111及び第2テンションロール112で張力を与えながら巻き出し、畝成形機3により成形された畝Rに対して、マルチフィルム117の両側部を押えロール99で踏圧しながら被せ、土掛けディスク100によりマルチフィルム117の両側部に土をかぶせるように構成されている。また、マルチフィルム117を被せた畝Rの上面を、鎮圧輪102によりマルチフィルム117の上から鎮圧するようになっている。
図4〜図7において、第1テンションロール111は複数(図例では5個)のロール体119を備え、複数のロール体119は、支持軸115に、ブッシュ120等を介してそれぞれ軸心廻りに回転自在に外嵌されて、一対の支持腕114間に3個配置され、支持腕113間の両外方(左右方向の両外側方)に1個ずつ配置されている。一対の支持腕114を挟んで隣り合うロール体119間に、左右一対の凹溝121が形成されている。従って、第1テンションロール111の左右方向の中途部に一対の凹溝121が設けられ、一対の凹溝121は、第1テンションロール111の外周面に沿って環状に形成されている。
【0028】
前記一方の支持腕114に、フィルムロール107から繰り出されたマルチフィルム117を検出するフィルム検出器123が設けられている。フィルム検出器123は、揺動自在に支持された感知レバー124と、感知レバー124の揺動動作によりオンオフ動作する感知スイッチ125とを具備し、感知レバー124の遊端側にフィルム検出器123の感知部126が形成され、この感知部126は、後述するように第1テンションロール112に設けられ、フィルムロール107から第1テンションロール112に繰り出されたマルチフィルム117を検出するようになっている。
【0029】
感知レバー124は、支持腕114に上方突設した取付部材128の上端部に、横軸129廻りに揺動自在に支持され、感知スイッチ125は取付部材128の上部に設けられ、感知スイッチ125の作動片125aの後方側にバネ130が設けられ、バネ130は板バネにより構成され、感知レバー124を横軸129廻りに矢印a方向に付勢している。感知レバー124がバネ130の付勢に抗して横軸129廻りに矢印b方向に揺動したとき、作動片125aが感知レバー124に押圧されて、図8に示す感知スイッチ125のb接点125bが開き、感知レバー124がバネ130の付勢によって、横軸129廻りに矢印a方向に揺動したとき、感知レバー124による作動片125aの押圧が解除されて、図8に示す感知スイッチ125のb接点125bが閉じるように構成されている。
【0030】
前記感知部126は、環状の凹溝121に対応して円弧状に形成され、感知レバー124の揺動によって凹溝121から出退するように構成されている。感知部126の先端は、支持腕114に接当することによって感知部126が凹溝121から突出移動するのを規制するストッパー126aとされている。感知部126は、支持腕114に接当することにより凹溝121に対する突出移動が規制されている。感知部126が凹溝121から突出する方向に感知レバー124を付勢するように、バネ130が設けられている。感知部126が凹溝121に出退移動自在に設けられ、フィルムロール107から第1テンションロール111に繰り出されたマルチフィルム117により押されて、感知部126が凹溝121内に後退すると共に、フィルムロール107から第1テンションロール111に繰り出されたマルチフィルム117がなくなったとき、バネ130の付勢により凹溝121から感知部126が突出するようになっている。
【0031】
前記フィルム検出器123の感知スイッチ125は、図8に示すように、警報ブザー又は警報ランプ等の警報器131、トラクタのメインスイッチ132を介してトラクタ搭載のバッテリ133に接続され、フィルム検出器123がマルチフィルム117を検出しなくなったときに、感知レバー124が矢印a方向に揺動して、感知部126が凹溝121から突出すると共に、感知スイッチ125のb接点125bが閉じて、警報器131が作動して警報を発するようになっている。
前記実施の形態では、フィルムロール107から繰り出されたマルチフィルム117は、第1テンションロール111及び第2テンションロール112を通って、押えロール99に向けて繰り出されて、マルチフィルム117の両側部が押えロール99で踏圧され、マルチフィルム117は畝成形機3により成形された畝Rに対して被せられる。このとき、フィルムロール107から第1テンションロール111に繰り出されたマルチフィルム117によりフィルム検出器123の感知部126が押されて、該感知部126が凹溝121内に後退し、感知レバー124は、バネ130の付勢に抗して横軸129廻りに矢印b方向に揺動し、作動片125aが感知レバー124に押圧されて、図8に示す感知スイッチ125のb接点125bが開くので、警報器131は作動することはなく、警報を発しない。
【0032】
フィルムロール107にマルチフィルム117がなくなると、バネ130の付勢により凹溝121から感知部126が突出し、感知レバー124がバネ130の付勢によって、横軸129廻りに矢印a方向に揺動し、感知レバー124による作動片124aの押圧が解除されて、図7に示す感知スイッチ125のb接点125bが閉じる。即ち、フィルム検出器123がマルチフィルム117を検出しなくなったときに、感知レバー124が矢印a方向に揺動して、感知部126が凹溝121から突出すると共に、感知スイッチ125のb接点125bが閉じて、警報器131が作動して警報を発する。従って、警報器131の警報により、作業者はフィルムロール107からマルチフィルム117がなくなったことを容易に知ることができ、マルチフィルム117がないままで作業を継続することがなくなる。
【0033】
この場合、フィルム検出器123は、フィルムロール107から繰り出されたマルチフィルム117を、押えロール99及び第2テンションロール112よりも手前の第1テンションロール111の位置で検出するので、畝に被せるマルチフィルム117が完全になくなる前に、マルチフィルム117がなくなったことを警報器131で作業者に知らせることができて、次のマルチフィルム117を予備フィルムロール受け部材87等からフィルムロール107に追加することができて、マルチフィルム117が途切れることがなくなり、マルチフィルム117のつなぎをスムーズになすことができる。
【0034】
このため、マルチフィルム117の残量を気にかけることなく、マルチ作業をすることができるようになり、作業中に後を振り向く回数が極端に減少し、作業者は疲れにくくなる。また、作業途中でマルチフィルム117の畝への被覆が途切れないようにするために、従来はマルチフィルム117が残り少ないことを作業者に知らせるために2人で作業をすることが多かったが、2人で作業をする必要もなくなり、労力軽減になる。さらに、警報器131の回路構成が簡単で、警報器131としてトラクタ6に付属しているホーンブザーが使えるため、この点からマルチ作業機の製造コストを安価になし得る。
【0035】
また、フィルムロール107から第1テンションロール111に繰り出されたマルチフィルム117を検出するように、フィルム検出器123の感知部126が第1テンションロール111に設けられているので、フィルムロール107から繰り出されたマルチフィルム117が、風等の影響でパタパタと振動乃至揺動しても、マルチフィルム117が振動乃至揺動をしない位置又はマルチフィルム117の振動乃至揺動が極小さい位置で、フィルム検出器123の感知部126によってマルチフィルム117を検出することができるため、フィルム検出器123の感知部126に対してマルチフィルム117が接離移動を繰り返すようなことはなくなり、フィルム検出器123がチャタリングが生じて誤検出するのを未然に防止することができる。従って、フィルム検出器123により、フィルムロール107から繰り出されたマルチフィルム117を誤りなく確実かつ簡単に検出することができる。
【0036】
また、第1テンションロール112の中途部に凹溝121が形成され、前記感知部126が凹溝121に出退移動自在に設けられ、フィルムロール107から第1テンションロール111に繰り出されたマルチフィルム117により押されて、感知部126が凹溝121内に後退すると共に、フィルムロール107から第1テンションロール112に繰り出されたマルチフィルム117がなくなったとき、凹溝121から感知部126が突出するように、感知部126を凹溝121から突出する方向に付勢するバネ130が設けられているので、フィルム検出器123の感知部126が、フィルムロール107から第1テンションロール111へのマルチフィルム117の繰り出しの邪魔になるようなことはなくなり、感知部126がフィルムロール107から第1テンションロール111へのマルチフィルム117の繰り出しの大きな抵抗にならずに済み、フィルムロール107から押えロール99に向けてマルチフィルム117をスムーズに繰り出すことができる。
【0037】
凹溝121は、テンションロール111の外周面に沿って環状に形成され、前記感知部126は、環状の凹溝121に対応して円弧状に形成されているので、感知部126が邪魔にならずに済む。
また、感知部126の先端部は、支持腕114に接当することにより凹溝121に対する感知部126の突出移動を規制するストッパー126aとされているので、感知レバー124の揺動動作によって、感知部126が凹溝121から外れるのを防止することができ、感知部126が凹溝121から外れることによるフィルム検出器123の誤動作やフィルム検出器123が検出不能になるのを防ぐこともできる。
【0038】
図9は他の実施形態を示し、例えば支持腕114よりも左右方向内方側において、隣り合うロール体119及びそのブッシュ120を互いに離間させて、該隣り合うロール体119間に環状の凹溝121が形成され、この凹溝121に、感知レバー124の遊端側に形成した感知部126が出退自在に設けられ、感知部126の先端側は、上側(凹溝121の内方側)にくの字状に屈曲されてストッパー126aとされ、ストッパー126aは支持軸115に接当することによって感知部126が凹溝121から突出移動するのを規制するように構成されている。また、バネ130は、前記板バネ代えてコイルバネにより構成され、このバネ130で、感知レバー124を横軸129廻りに矢印a方向に付勢するようにしている。その他の点は前記実施の形態の場合と同様の構成である。
【0039】
この場合、感知レバー124の揺動動作によって、感知部126が凹溝121から外れるのを、ストッパー126aと支持軸115とによって防止することができ、前記実施の形態の場合と同様に、感知部126が凹溝121から外れることによるフィルム検出器123の誤動作やフィルム検出器123が検出不能になるのを防ぐことができる。
図10は他の実施形態を示し、例えば支持腕114よりも左右方向内方側において、第1テンションロール111の隣り合うロール体119及びそのブッシュ120を互いに離間させて、該隣り合うロール体119間に、環状の凹溝121が形成され、この凹溝121に、感知レバー124の遊端側に形成した感知部126が出退自在に設けられ、フィルム検出器123の感知部126に、マルチフイルム117に接触してその繰り出し動作により回転する転動ロール135が設けられている。その他の点は、前記図1〜図8の実施形態の場合と同様の構成である。
【0040】
この実施形態の場合、転動ロール135によって、感知部126がマルチフィルム117の繰り出しの抵抗にならないようになすことができ、このため、フィルム検出器123の感知部126が、フィルムロール107から第1テンションロール111へのマルチフィルム117の繰り出しの邪魔になるようなことはなくなり、フィルムロール107から押えロール99に向けてマルチフィルム117をスムーズに繰り出すことができる。
なお、前記実施の形態では、テンションロール111は複数のロール体119を備え、隣り合うロール体119間に凹溝121が形成されているが、これに代え、テンションロール111を1つのロール体等で構成し、テンションロール111の左右方向の中途部に凹溝121を没入形成するようにしてもよい。
【0041】
また、前記実施の形態では、フィルム検出器123の感知部126が、第1テンションロール112に設けられ、フィルムロール107から第1テンションロール112に繰り出されたマルチフィルム117を検出するようにしているが、これに代え、第2テンションロール112の中途部に凹溝121を形成し、フィルム検出器123の感知部126をこの凹溝121に出退移動自在に設け、フィルムロール107から第2テンションロール111に繰り出されたマルチフィルム117を感知部126により検出するようにしてもよい。
【0042】
また、前記実施の形態では、フィルムロール107と押えロール99との間に、第1テンションロール111と第2テンションロール112とが設けられ、フィルム検出器123の感知部126が、第1テンションロール112に設けられているが、これに代え、フィルムロール107と押えロール99との間に、1又は3以上のテンションロールを設けるようにし、これらのテンションロールのいずれか1つにフィルム検出器123の感知部126を設けるようにすればよい。
また、前記実施の形態では、本願発明のマルチ作業機を、マルチロータリ作業機で、ロータリ耕耘作業と畝成形作業とマルチフィルム被覆作業とを一工程で行えるようにしたマルチロータリ作業機1に設けられているマルチ作業機に適用実施しているが、これに代え、ロータリ作業機2及び畝成形機3とは別体に構成された、単独のマルチ作業機に適用実施するようにしてもよいし、畝成形機3のみと一体に構成されたマルチ作業機に適用実施するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態を示すマルチロータリ作業機の側面図である。
【図2】同背面図である。
【図3】同マルチ作業機の正面斜視図である。
【図4】同フィルムロール、テンションロール部分の側面図である。
【図5】同第1テンションロール部分の斜視図である。
【図6】同第1テンションロール部分の右側面図である。
【図7】同第1テンションロール部分の正面断面図である。
【図8】同警報装置の回路図である。
【図9】他の実施形態を示す第1テンションロール部分の右側面図である。
【図10】他の実施形態を示す第1テンションロール部分の右側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 マルチロータリ作業機
2 ロータリ作業機
3 畦成型機
4 マルチ作業機
99 押えロール
107 フィルムロール
111 第1テンションロール
112 第2テンションロール
114 支持腕
115 支持軸
117 マルチフィルム
119 ロール体
121 凹溝
123 フィルム検出器
124 感知レバー
126 感知部
126a ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畦を覆うマルチフィルム(117)を繰り出すフィルムロール(107)と、フィルムロール(107)から繰り出されたマルチフィルム(117)の側部を土に向けて押圧する押えロール(99)とを備えたマルチ作業機において、
フィルムロール(107)と押えロール(99)との間に、フィルムロール(107)から繰り出されたマルチフィルム(117)にテンションを与えるテンションロール(111)が設けられ、フィルムロール(107)からテンションロール(111)に繰り出されたマルチフィルム(117)を検出するように、フィルム検出器(123)の感知部(126)がテンションロール(111)に設けられていることを特徴とするマルチ作業機。
【請求項2】
前記テンションロール(111)の中途部に凹溝(121)が形成され、前記感知部(126)が凹溝(121)に出退移動自在に設けられ、フィルムロール(107)からテンションロール(111)に繰り出されたマルチフィルム(117)により押されて、感知部(126)が凹溝(121)内に後退すると共に、フィルムロール(107)からテンションロール(111)に繰り出されたマルチフィルム(117)がなくなったとき、凹溝(121)から感知部(126)が突出するように、感知部(126)を凹溝(121)から突出する方向に付勢するバネ(130)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマルチ作業機。
【請求項3】
前記テンションロール(111)は、支持軸(115)に外嵌した複数のロール体(119)を備え、各ロール体(119)は支持軸(115)廻りに回転自在に支持され、隣り合うロール体(119)間に前記凹溝(121)が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のマルチ作業機。
【請求項4】
前記凹溝(121)は、テンションロール(111)の外周面に沿って環状に形成され、前記感知部(126)は、環状の凹溝(121)に対応して円弧状に形成され、感知部(126)の先端は、テンションロール(111)の支持軸(115)に接当することによって感知部(126)が凹溝(121)から突出移動するのを規制するストッパー(126a)とされていることを特徴とする請求項2に記載のマルチ作業機。
【請求項5】
一対の支持腕(114)間に、テンションロール(111)を回転自在に支持する支持軸(115)が、支持腕(114)を貫通して両外方に突出するように設けられ、前記テンションロール(111)は複数のロール体(119)を備え、複数のロール体(119)は、支持軸(115)にそれぞれ外嵌されて、一対の支持腕(114)間と支持腕(114)間の外方とに配置され、支持腕(114)を挟んで隣り合うロール体(119)間に前記凹溝(121)が形成されていることを特徴する請求項2に記載のマルチ作業機。
【請求項6】
前記感知部(126)の先端部は、支持腕(114)に接当することにより凹溝(121に対する感知部(126)の突出移動を規制するストッパー(126a)とされていることを特徴する請求項5に記載のマルチ作業機。
【請求項7】
前記フィルム検出器(123)は、揺動自在に支持された感知レバー(124)と、感知レバー(124)の揺動動作によりオンオフ動作する感知スイッチ(125)とを具備し、前記感知部(126)が、感知レバー(124)の揺動によって凹溝(121)から出退するように、感知レバー(124)の遊端側に形成され、感知部(126)が凹溝(121)内に後退する方向に感知レバー(124)を付勢するように、前記バネ(130)が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のマルチ作業機。
【請求項8】
前記フィルム検出器(123)の感知部(126)に、マルチフイルム(117)に接触してその繰り出し動作により回転する転動ロール(135)が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のマルチ作業機。
【請求項9】
フィルムロール(107)と押えロール(99)との間に、第1テンションロール(111)と第2テンションロール(112)とが設けられ、第1テンションロール(111はフィルムロール(107)の後下方に配置されて、フィルムロール(107)から後下方に繰り出されたマルチフィルム(117)を前下方に向けて屈曲させるように、第1テンションロール(111)の後側にマルチフイルム(117)が巻回され、第2テンションロール(112)は第1テンションロール(111)の前下方であって押えロール(99)の前上方に配置されて、第1テンションロール(111)から前下方に繰り出されたマルチフィルム(117)を後下方に向けて屈曲させるように、第2テンションロール(112)の前側にマルチフィルム(117)が巻回され、第1テンションロール(111)に前記感知部(126)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマルチ作業機。
【請求項10】
前記フィルム検出器(123)がマルチフィルム(117)を検出しなくなったときに作動する警報器(131)が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のマルチ作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−14228(P2007−14228A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196824(P2005−196824)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】