マンコンベア監視装置及びマンコンベア監視システム
【課題】
マンコンベア制御装置からのデータをPHS端末装置まで通信するために必要なケーブル敷設工数及び費用を低減し、PHS回線網利用頻度を低減できるマンコンベア監視装置及びマンコンベア監視システムを提供する。
【解決手段】
マンコンベア毎に設置されたマンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブル9を介して通信する子局通信装置6,7,8と、マンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブル9に各マンコンベアの子局通信装置6,7,8と通信するように接続される親局通信装置5と、親局通信装置5に通信された各子局通信装置6,7,8からの通信信号をPHS回線網10へ送信し、PHS回線網10からの通信信号を受信するPHS端末装置4を備えた。
マンコンベア制御装置からのデータをPHS端末装置まで通信するために必要なケーブル敷設工数及び費用を低減し、PHS回線網利用頻度を低減できるマンコンベア監視装置及びマンコンベア監視システムを提供する。
【解決手段】
マンコンベア毎に設置されたマンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブル9を介して通信する子局通信装置6,7,8と、マンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブル9に各マンコンベアの子局通信装置6,7,8と通信するように接続される親局通信装置5と、親局通信装置5に通信された各子局通信装置6,7,8からの通信信号をPHS回線網10へ送信し、PHS回線網10からの通信信号を受信するPHS端末装置4を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや動く歩道などのマンコンベアを監視するマンコンベア監視装置及びマンコンベア監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エスカレータや動く歩道などのマンコンベアについて、不具合時の迅速な対応のために、例えば〔特許文献1〕に記載のように、マンコンベアの状態を遠隔的に保守監視センタにて監視するシステムが提案されている。〔特許文献1〕には、マンコンベア制御装置からの信号をPHS端末装置で取込み、PHS回線網との通信を行う技術が開示されている。又、〔特許文献2〕には、エスカレータの監視装置をPHS網に接続するPHS端末をエスカレータ乗り口のポールに取付けることが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−137556号公報
【特許文献2】特開2007−1729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
〔特許文献1〕,〔特許文献2〕に記載の従来の技術では、マンコンベア制御装置からの信号をPHS端末装置で取込むために、マンコンベア制御装置毎にPHS端末装置が必要になり高価になるばかりか、さらにPHS通信回線がその分必要になり、通信費が高くなるという問題が生じる。
【0005】
又、〔特許文献1〕では、複数のマンコンベア制御装置からの信号を専用の通信線で1台のPHS端末装置まで夫々通信し、PHS端末装置から無線でPHS回線網に通信するようにもしているが、マンコンベア制御装置から1台のPHS端末装置まで各々専用の通信線を敷設しなければならず、その工事費が膨大になるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、マンコンベア制御装置からのデータをPHS端末装置まで通信するために必要なケーブル敷設工数及び費用を低減し、PHS回線網利用頻度を低減できるマンコンベア監視装置及びマンコンベア監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のマンコンベア監視装置は、マンコンベア毎に設置されたマンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する子局通信装置と、マンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルに各マンコンベアの子局通信装置と通信するように接続される親局通信装置と、親局通信装置に通信された各子局通信装置からの通信信号をPHS回線網へ送信し、PHS回線網からの通信信号を受信するPHS端末装置を備えたものである。
【0008】
又、マンコンベア監視システムは、マンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置と、マンコンベア毎に設置され、マンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する子局通信装置と、マンコンベアに敷設される通信ケーブルに接続される親局通信装置と、各マンコンベアの子局通信装置と親局通信装置間で通信できるように各マンコンベア間の通信ケーブルは接続されており、親局通信装置に通信された各子局通信装置からの通信信号をPHS回線網へ送信し、PHS回線網からの通信信号を受信するPHS端末装置と、PHS回線網に接続され、マンコンベア制御装置からのデータを監視する監視センタとを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マンコンベア制御装置からのデータを無線端末装置で取込んで無線通信回線網に通信する場合に、マンコンベア制御装置からのデータを無線端末装置まで通信するために必要なケーブル敷設工数及び費用を低減すると共に、無線通信回線網利用頻度を低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図面を参照して本発明の各実施形態を説明する。以下に説明する本発明の実施形態は、(1)マンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して子局通信装置と親局通信装置間で通信し、子局通信装置が、マンコンベア制御装置から取込んだデータを親局通信装置に通信できるように各マンコンベア間の通信ケーブルが接続され、親局通信装置にPHS端末装置が接続されて、各子局通信装置からの通信信号を親局通信装置,PHS端末装置を介してPHS回線網へ送信する第一の実施形態と、(2)昇り乗り継ぎ用マンコンベアと下り乗り継ぎ用マンコンベアがある場合に、マンコンベア内に敷設される通信ケーブルは、電力線を通信路とする電力線搬送通信装置に接続され、電力線搬送通信装置を介して昇り乗り継ぎ用マンコンベアと下り乗り継ぎ用マンコンベア間の通信を行い、親局通信装置にPHS端末装置が接続され、各子局通信装置からの通信信号を親局通信装置、PHS端末装置を介してPHS回線網へ送信する第二の実施形態と、(3)第二の実施形態において、電力線搬送通信装置からの通信信号を電力線に重畳させる際に非接触で重畳させる構成とした第三の実施形態に大別して説明する。
【0011】
〔第一の実施形態〕
図1は、マンコンベアの一例としてエスカレータを例示した図である。本実施形態のエスカレータは、昇り乗り継ぎエスカレータ1,2,3、又は下り乗り継ぎエスカレータが、1階(1F)と2階(2F)の間、2階と3階(3F)の間、3階と4階(4F)の間に順次設置されている場合を示している。
【0012】
エスカレータ1,2,3のトラス1a,2a,3a内の上部に設置される上部機械室内には、エスカレータ制御装置(マンコンベア制御装置ともいう)が設置されている。このエスカレータ制御装置内には、それぞれ子局通信装置6,7,8が設置されている。エスカレータ1の下部には、親局通信装置5が設置され、親局通信装置5には、無線端末装置、例えばPHS端末装置4が接続されている。PHS端末装置4は、PHS網10と無線通信により通信し、公衆網11を介してカスタマーセンタ12と通信する。
【0013】
子局通信装置6,7,8には、エスカレータ制御装置からのデータ、例えば非常停止スイッチ状態信号,モータ電源喪失信号などの発報情報がカスタマーセンタ12に取込まれ発報情報をカスタマーセンタ12で遠隔監視することが可能となる。この他に、機器の状態を監視するための保守情報(機器状態信号,振動データなど)を取込む場合もある。なお、トラス内部には、制御盤,駆動機,移動手すり駆動装置などが組込まれている。
【0014】
エスカレータのトラス内に予め通信ケーブル9が敷設される子局通信装置は、図2,図3に示すように、工場でエレベータを製作する時に、1台ごとに通信ケーブル9を敷設し、エスカレータ据付時に各エスカレータの通信ケーブルを相互に接続する。
【0015】
例えば、図2に示すように、エスカレータ3のトラス3a内の機械室内には子局通信装置8が設けられ、子局通信装置8に通信ケーブル9が取付けられている。又、図3に示すように、エスカレータ2のトラス2a内の機械室内には子局通信装置7が設けられ、子局通信装置7に通信ケーブル9が取付けられている。
【0016】
エスカレータ3とエスカレータ2を設置すると、図2に示す子局通信装置8に接続された通信ケーブル9を、図3に示す子局通信装置7に接続することにより、各エスカレータ内の通信ケーブルを接続することができる。この結果、図1に示すように、エスカレータ1,2,3に設置する親局通信装置5と子局通信装置6,7,8は通信ケーブル9によって相互に通信が可能になる。
【0017】
図4は、PHS端末装置4,親局通信装置5,子局通信装置6,7,8の接続関係を示した図である。子局通信装置6,7,8には、エスカレータ制御装置67,77,87からの非常停止スイッチ状態信号,モータ電源喪失信号などの発報情報、場合によっては機器の状態を監視するための機器状態信号,振動データなどの保守情報のデータを取込む。
【0018】
発報情報は、非常停止スイッチ状態信号,モータ電源喪失信号などの検出器6a,7a,8aで検出される。保守情報は、機器状態信号,振動データなどのセンサ6N,7N,8Nで検出される。検出器6a,7a,8a、センサ6N,7N,8Nからの信号はエスカレータ制御装置67,77,87を介して子局通信装置6,7,8に取込まれる。
【0019】
子局通信装置6,7,8の構成は同一であり、子局通信装置8を例にとり説明する。
【0020】
子局通信装置8は、通信ケーブル9に接続された分離・多重回路81,エスカレータ制御装置87に接続されたデータ収集回路84,分離・多重回路81に接続されたポーリング要求受信回路82,ポーリング要求受信回路82とデータ収集回路84に接続されたデータフォーマット変換回路83,データ収集回路84に接続された異常判定回路85,異常判定回路85に接続された送信データ編集回路86で構成される。
【0021】
分離・多重回路81は、通信ケーブル9を介して送信されてきたデータを取出して分離し、多重化してデータ送信を行う。ポーリング要求受信回路82は、親局通信装置5から送信されてくるポーリング要求信号を取込み、ポーリング要求信号に応じてデータ収集回路84で取込んだデータを送信できるようにする。データフォーマット変換回路83は、データ収集回路84で取込んだ信号を通信のためのデータフォーマットに変化し、送信データ編集回路86に出力する。
【0022】
この結果、ポーリング要求受信回路82で判断したポーリング要求信号に従って、データ収集回路84で取込んだデータを送信データ編集回路86に出力することになる。異常判定回路85は、エスカレータに異常が発生したか否かを判定する部分であり、入力するエスカレータ制御装置87からのデータで判定する。
【0023】
具体的には、非常停止スイッチ状態信号,モータ電源喪失信号が取込まれると異常と判定し、これらを発報情報として、子局通信装置8から親局通信装置5に送信する。通常は、ポーリング要求信号を受信した時にエスカレータ制御装置87から取込んだデータを通信するが、上記のように異常を検出した場合には、ポーリング要求信号を受信しなくても発報情報を送信することになる。
【0024】
送信データ編集回路86は、ポーリング要求信号に対応した送信データ、或は異常を検出した場合の発報情報を区別したデータに編集して分離・多重回路81にデータを出力する。
【0025】
親局通信装置5は、子局通信装置6,7,8との通信を行い、子局通信装置6,7,8からの通信データをPHS端末装置4を介してカスタマーセンタ12に送信し、カスタマーセンタ12からの通信情報をPHS端末装置4を介して受信する。
【0026】
親局通信装置5は、通信ケーブル9に接続された分離・多重回路51,分離・多重回路51に接続されたデータ受信回路52,データ受信回路52に接続されたフォーマット変換回路53,フォーマット変換回路53に接続されたプロトコル変換回路54,分離・多重回路51に接続されたポーリング要求回路55,プロトコル変換回路54に接続された状態監視回路56で構成される。プロトコル変換回路54は、PHS端末装置4に接続されている。
【0027】
分離・多重回路51は、通信ケーブル9を介して送信されてきたデータを取出して分離し、多重化されたデータ送信を行う。ポーリング要求回路55は、子局通信装置6,7,8から順次通信データを送信してもらうためのポーリング要求信号を出力する。データ受信回路52は、子局通信装置6,7,8から送信されてきた通信データを取出し、フォーマット変換回路53に出力する。フォーマット変換回路53は、PHS端末装置4を介してカスタマーセンタ12と通信するためのデータフォーマット変換を行う。プロトコル変換回路54は、PHS端末装置4とのデータ授受を行うためのプロトコル変換を行う。
【0028】
状態監視回路56は、どの子局通信装置から発報情報が出力されたかを示す情報とカスタマーセンタ12からの指示情報を取込み保持し、例えば保守員が専用の装置(図示していない)を接続してその指示内容を確認することができる。
【0029】
このように、エスカレータ制御装置67,77,87からのデータをエスカレータ1,2,3に敷設される通信ケーブル9を介して各々の子局通信装置6,7,8から親局通信装置5に通信し、親局通信装置5に接続されるPHS端末装置4から無線通信回線網へ送信できるようになるために、エスカレータ制御装置からのデータを無線端末装置まで通信するために必要なケーブル敷設工数及び費用を低減すると共に、無線通信回線網利用頻度を低減できる。
【0030】
〔第二の実施形態〕
本発明の第二の実施形態を図5及び図6により説明する。本実施形態は、図5に示すように、昇り乗り継ぎ用のエスカレータ1,2,3と、下り乗り継ぎ用のエスカレータ21,22,23が設置されている例を示す。
【0031】
1階と2階の間にはエスカレータ1,21が設置され、2階と3階の間にはエスカレータ2,22が設置され、3階と4階の間にはエスカレータ3,23が設置されている。
【0032】
エスカレータ1,2,3のトラス内の上部に設置される上部機械室内には、エスカレータ制御装置が設置され、上部機械室内或はこのエスカレータ制御装置内には、それぞれ子局通信装置6,7,8が設置されている。エスカレータ1の下部には、親局通信装置5が設置され、親局通信装置5には、無線通信装置、例えばPHS端末装置4が接続されている。
【0033】
エスカレータ21,22,23のトラス内の上部に設置される上部機械室内には、エスカレータ制御装置が設置され、上部機械室内或はこのエスカレータ制御装置内には、それぞれ子局通信装置26,25,24が設置されている。
【0034】
子局通信装置と親局通信装置は、第一の実施形態と同様に構成されている。
【0035】
子局通信装置8には、電力線搬送通信装置30が接続され、子局通信装置24には電力線搬送通信装置31が接続されている。電源装置34には、ブレーカ35と、ブレーカ35から分岐したサブブレーカ36,37が並列に設けられている。サブブレーカ37と電力線搬送通信装置30とは電力線32で接続され、サブブレーカ36と電力線搬送通信装置31とは電力線33で接続されている。
【0036】
図6は、PHS端末装置4,親局通信装置5,子局通信装置8,電力線搬送通信装置30の接続関係を説明する図で、電力線搬送通信装置30の構成を示している。図6は、図4に示す構成に、電力線搬送通信装置30が追加された構成となっている。
【0037】
電力線搬送通信装置30は、通信ケーブル9に接続された分離・多重回路301,分離・多重回路301に接続された変調回路302,変調回路302に接続された送信アンプ303,送信アンプ303に接続された結合器304,結合器304に接続された受信アンプ305,受信アンプ305に接続された復調回路306で構成される。復調回路306は、分離・多重回路301に接続され、結合器304は、電力線32に接続されている。
【0038】
この例では、電力線搬送通信装置30,31をサブブレーカ37,36に接続した場合を示したが、床面に設けられた電力線で接続してもよい。
【0039】
電力線32は、AC100Vの電線である。親局通信装置5から送信されてくる通信信号は、分離・多重回路301で取出されて分離され、変調回路のデータが送信される。変調回路302では電力線を通信路として通信するために所定の変調方式(BPSK,QPSK,QAM,スペクトル拡散など)に従って入力データを変調し、送信アンプ303に出力する。
【0040】
送信アンプ303で増幅された通信信号は、結合器304を介して電力線32に重畳される。電力線32に重畳された通信信号は、図5に示したサブブレーカ37,36を介して電力線搬送通信装置31に伝送される。
【0041】
電力線搬送通信装置31から電力線32を介して送信される通信信号が電力線搬送通信装置30に入力されると、結合器304を介して受信アンプ305に入力され、受信信号が増幅される。この増幅された受信信号は、復調回路306に入力され、受信信号が受信データに復調される。復調されたデータは、分離・多重回路302に入力され、多重化されて通信ケーブル9を介して親局通信装置5に通信される。
【0042】
本実施形態によれば、マンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアに敷設される通信ケーブルを介して各々の子局通信装置から親局通信装置に通信し、親局通信装置に接続されるPHS端末装置からPHS回線網へ送信できるようになるために、マンコンベア制御装置からのデータをPHS端末装置まで通信するために必要なケーブル敷設工数及び費用を低減すると共に、PHS回線網利用頻度を低減できる。
【0043】
又、本実施形態によれば、昇り乗り継ぎ用マンコンベアと下り乗り継ぎ用マンコンベアがある場合には、これらマンコンベア内に敷設される通信ケーブルは電力線を通信路とする電力線搬送通信装置に接続され、昇り乗り継ぎ用マンコンベア或は下り乗り継ぎ用マンコンベア内に敷設される通信ケーブルに親局通信装置が接続され、親局通信装置間はマンコンベア内の前記通信ケーブルに接続される子局通信装置との直接的な通信と電力線搬送通信装置を介した通信により、1台の親局通信装置で乗り継ぎ用マンコンベアと下り乗り継ぎ用マンコンベアの子局通信装置間でマンコンベア制御装置からのデータを通信できるようになり、該親局通信装置に接続される1台のPHS端末装置かマンコンベア制御装置からのデータをPHS回線網へ送信することが可能になり、マンコンベア制御装置からのデータをPHS端末装置まで通信するために必要なケーブル敷設工数及び費用を低減すると共に、PHS回線網利用頻度を低減できる。
【0044】
〔第三の実施形態〕
本発明の第三の実施形態を図7から図10により説明する。本実施形態は、第二の実施形態と同様に構成されているが、本実施形態では、電源装置38のブレーカ39,40により、外部に電力線32と電力線33が引き出されている。このため、ブレーカ39,40の前段に誘導結合器41が設けられている。
【0045】
図8は、誘導結合器41の構成を示した図である。電磁結合器42,43は貫通型のフェライトコア又は貫通型のアモルファスコアであり、電力線32,33と誘導通信線44をそれぞれ電磁結合器42,43内に貫通させている。
【0046】
例えば、電力線32に重畳される通信信号は、電磁結合器43の電磁結合により誘導通信線44に誘導され、誘導された通信信号が電磁結合器42の電磁結合により電力線33に誘導される。この結果、電力線32に重畳される通信信号は、誘導結合器41により非接触で電力線33に誘導され、電力線33上に通信信号が重畳されることになる。このため、誘導結合器41の取付けが容易になり、かつ安全性も向上する。
【0047】
電磁結合器42,43は、アモルファスコアあるいはフェライトコアを用いて構成する。アモルファスコアは、飽和磁束密度がフェライトコアより高いために、高いエネルギーのノイズが入っても飽和しづらい。つまり、アモルファスコアは電力線に流れる商用周波数電源の電流値が高くてもフェライトコアと比較し、飽和しづらく、電磁結合器の性能を高く維持することが可能である。
【0048】
図9,図10は電磁結合器の構造を示す図であり、図9が電磁結合器の鳥瞰図、図10が電磁結合器を開いた場合の平面図である。図9,図10に示すように、電力線への電磁結合器の取付けが容易なように半割れ構造としている。保護カバー42aで、42bのフェライトコア又はアモルファスコアを包むように構成されている。
【0049】
本実施形態によれば、第二の実施形態と同様な効果が得られ、電力線32,33が相互に接続されていない場合にも対応できる。
【0050】
さらに、図11のように、電力線32,33を利用しなくても、予め通信ケーブル9(本実施例では4Fに敷設)を敷設しておくことで、エスカレータ取付け時に、昇り乗り継ぎエスカレータと降り乗り継ぎエスカレータの通信ケーブル9を接続して、昇り乗り継ぎ用マンコンベア或は下り乗り継ぎ用マンコンベア内に敷設される通信ケーブルに親局通信装置が接続され、1台の親局通信装置で乗り継ぎ用マンコンベアと下り乗り継ぎ用マンコンベアの子局通信装置間でマンコンベア制御装置からのデータを通信できるようになり、該親局通信装置に接続される1台のPHS端末装置かマンコンベア制御装置からのデータをPHS回線網へ送信することが可能になり、マンコンベア制御装置からのデータをPHS端末装置まで通信するために必要なケーブル敷設工数及び費用を低減すると共に、PHS回線網利用頻度を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第一の実施形態であるマンコンベアの構成図である。
【図2】本実施形態のエスカレータ3の構成図である。
【図3】本実施形態のエスカレータ2の構成図である。
【図4】PHS端末,親局通信装置,子局通信装置の接続関係を説明する図である。
【図5】本発明の第二の実施形態であるマンコンベアの構成図である。
【図6】PHS端末,親局通信装置,子局通信装置,電力線搬送装置の接続関係を説明する図である。
【図7】本発明の第三の実施形態であるマンコンベアの構成図である。
【図8】誘導結合器の構成図である。
【図9】電磁結合器の構成を示す鳥瞰図である。
【図10】電磁結合器を開いた場合の平面図である。
【図11】本発明の第一の実施形態を拡張したマンコンベアの構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1,2,3 昇り乗り継ぎエスカレータ
4 PHS端末装置
5 親局通信装置
6,7,8 子局通信装置
9 通信ケーブル
21,22,23 下り乗り継ぎエスカレータ
30,31 電力線搬送通信装置
32,33 電力線
44 誘導通信線
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや動く歩道などのマンコンベアを監視するマンコンベア監視装置及びマンコンベア監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エスカレータや動く歩道などのマンコンベアについて、不具合時の迅速な対応のために、例えば〔特許文献1〕に記載のように、マンコンベアの状態を遠隔的に保守監視センタにて監視するシステムが提案されている。〔特許文献1〕には、マンコンベア制御装置からの信号をPHS端末装置で取込み、PHS回線網との通信を行う技術が開示されている。又、〔特許文献2〕には、エスカレータの監視装置をPHS網に接続するPHS端末をエスカレータ乗り口のポールに取付けることが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−137556号公報
【特許文献2】特開2007−1729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
〔特許文献1〕,〔特許文献2〕に記載の従来の技術では、マンコンベア制御装置からの信号をPHS端末装置で取込むために、マンコンベア制御装置毎にPHS端末装置が必要になり高価になるばかりか、さらにPHS通信回線がその分必要になり、通信費が高くなるという問題が生じる。
【0005】
又、〔特許文献1〕では、複数のマンコンベア制御装置からの信号を専用の通信線で1台のPHS端末装置まで夫々通信し、PHS端末装置から無線でPHS回線網に通信するようにもしているが、マンコンベア制御装置から1台のPHS端末装置まで各々専用の通信線を敷設しなければならず、その工事費が膨大になるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、マンコンベア制御装置からのデータをPHS端末装置まで通信するために必要なケーブル敷設工数及び費用を低減し、PHS回線網利用頻度を低減できるマンコンベア監視装置及びマンコンベア監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のマンコンベア監視装置は、マンコンベア毎に設置されたマンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する子局通信装置と、マンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルに各マンコンベアの子局通信装置と通信するように接続される親局通信装置と、親局通信装置に通信された各子局通信装置からの通信信号をPHS回線網へ送信し、PHS回線網からの通信信号を受信するPHS端末装置を備えたものである。
【0008】
又、マンコンベア監視システムは、マンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置と、マンコンベア毎に設置され、マンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する子局通信装置と、マンコンベアに敷設される通信ケーブルに接続される親局通信装置と、各マンコンベアの子局通信装置と親局通信装置間で通信できるように各マンコンベア間の通信ケーブルは接続されており、親局通信装置に通信された各子局通信装置からの通信信号をPHS回線網へ送信し、PHS回線網からの通信信号を受信するPHS端末装置と、PHS回線網に接続され、マンコンベア制御装置からのデータを監視する監視センタとを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マンコンベア制御装置からのデータを無線端末装置で取込んで無線通信回線網に通信する場合に、マンコンベア制御装置からのデータを無線端末装置まで通信するために必要なケーブル敷設工数及び費用を低減すると共に、無線通信回線網利用頻度を低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図面を参照して本発明の各実施形態を説明する。以下に説明する本発明の実施形態は、(1)マンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して子局通信装置と親局通信装置間で通信し、子局通信装置が、マンコンベア制御装置から取込んだデータを親局通信装置に通信できるように各マンコンベア間の通信ケーブルが接続され、親局通信装置にPHS端末装置が接続されて、各子局通信装置からの通信信号を親局通信装置,PHS端末装置を介してPHS回線網へ送信する第一の実施形態と、(2)昇り乗り継ぎ用マンコンベアと下り乗り継ぎ用マンコンベアがある場合に、マンコンベア内に敷設される通信ケーブルは、電力線を通信路とする電力線搬送通信装置に接続され、電力線搬送通信装置を介して昇り乗り継ぎ用マンコンベアと下り乗り継ぎ用マンコンベア間の通信を行い、親局通信装置にPHS端末装置が接続され、各子局通信装置からの通信信号を親局通信装置、PHS端末装置を介してPHS回線網へ送信する第二の実施形態と、(3)第二の実施形態において、電力線搬送通信装置からの通信信号を電力線に重畳させる際に非接触で重畳させる構成とした第三の実施形態に大別して説明する。
【0011】
〔第一の実施形態〕
図1は、マンコンベアの一例としてエスカレータを例示した図である。本実施形態のエスカレータは、昇り乗り継ぎエスカレータ1,2,3、又は下り乗り継ぎエスカレータが、1階(1F)と2階(2F)の間、2階と3階(3F)の間、3階と4階(4F)の間に順次設置されている場合を示している。
【0012】
エスカレータ1,2,3のトラス1a,2a,3a内の上部に設置される上部機械室内には、エスカレータ制御装置(マンコンベア制御装置ともいう)が設置されている。このエスカレータ制御装置内には、それぞれ子局通信装置6,7,8が設置されている。エスカレータ1の下部には、親局通信装置5が設置され、親局通信装置5には、無線端末装置、例えばPHS端末装置4が接続されている。PHS端末装置4は、PHS網10と無線通信により通信し、公衆網11を介してカスタマーセンタ12と通信する。
【0013】
子局通信装置6,7,8には、エスカレータ制御装置からのデータ、例えば非常停止スイッチ状態信号,モータ電源喪失信号などの発報情報がカスタマーセンタ12に取込まれ発報情報をカスタマーセンタ12で遠隔監視することが可能となる。この他に、機器の状態を監視するための保守情報(機器状態信号,振動データなど)を取込む場合もある。なお、トラス内部には、制御盤,駆動機,移動手すり駆動装置などが組込まれている。
【0014】
エスカレータのトラス内に予め通信ケーブル9が敷設される子局通信装置は、図2,図3に示すように、工場でエレベータを製作する時に、1台ごとに通信ケーブル9を敷設し、エスカレータ据付時に各エスカレータの通信ケーブルを相互に接続する。
【0015】
例えば、図2に示すように、エスカレータ3のトラス3a内の機械室内には子局通信装置8が設けられ、子局通信装置8に通信ケーブル9が取付けられている。又、図3に示すように、エスカレータ2のトラス2a内の機械室内には子局通信装置7が設けられ、子局通信装置7に通信ケーブル9が取付けられている。
【0016】
エスカレータ3とエスカレータ2を設置すると、図2に示す子局通信装置8に接続された通信ケーブル9を、図3に示す子局通信装置7に接続することにより、各エスカレータ内の通信ケーブルを接続することができる。この結果、図1に示すように、エスカレータ1,2,3に設置する親局通信装置5と子局通信装置6,7,8は通信ケーブル9によって相互に通信が可能になる。
【0017】
図4は、PHS端末装置4,親局通信装置5,子局通信装置6,7,8の接続関係を示した図である。子局通信装置6,7,8には、エスカレータ制御装置67,77,87からの非常停止スイッチ状態信号,モータ電源喪失信号などの発報情報、場合によっては機器の状態を監視するための機器状態信号,振動データなどの保守情報のデータを取込む。
【0018】
発報情報は、非常停止スイッチ状態信号,モータ電源喪失信号などの検出器6a,7a,8aで検出される。保守情報は、機器状態信号,振動データなどのセンサ6N,7N,8Nで検出される。検出器6a,7a,8a、センサ6N,7N,8Nからの信号はエスカレータ制御装置67,77,87を介して子局通信装置6,7,8に取込まれる。
【0019】
子局通信装置6,7,8の構成は同一であり、子局通信装置8を例にとり説明する。
【0020】
子局通信装置8は、通信ケーブル9に接続された分離・多重回路81,エスカレータ制御装置87に接続されたデータ収集回路84,分離・多重回路81に接続されたポーリング要求受信回路82,ポーリング要求受信回路82とデータ収集回路84に接続されたデータフォーマット変換回路83,データ収集回路84に接続された異常判定回路85,異常判定回路85に接続された送信データ編集回路86で構成される。
【0021】
分離・多重回路81は、通信ケーブル9を介して送信されてきたデータを取出して分離し、多重化してデータ送信を行う。ポーリング要求受信回路82は、親局通信装置5から送信されてくるポーリング要求信号を取込み、ポーリング要求信号に応じてデータ収集回路84で取込んだデータを送信できるようにする。データフォーマット変換回路83は、データ収集回路84で取込んだ信号を通信のためのデータフォーマットに変化し、送信データ編集回路86に出力する。
【0022】
この結果、ポーリング要求受信回路82で判断したポーリング要求信号に従って、データ収集回路84で取込んだデータを送信データ編集回路86に出力することになる。異常判定回路85は、エスカレータに異常が発生したか否かを判定する部分であり、入力するエスカレータ制御装置87からのデータで判定する。
【0023】
具体的には、非常停止スイッチ状態信号,モータ電源喪失信号が取込まれると異常と判定し、これらを発報情報として、子局通信装置8から親局通信装置5に送信する。通常は、ポーリング要求信号を受信した時にエスカレータ制御装置87から取込んだデータを通信するが、上記のように異常を検出した場合には、ポーリング要求信号を受信しなくても発報情報を送信することになる。
【0024】
送信データ編集回路86は、ポーリング要求信号に対応した送信データ、或は異常を検出した場合の発報情報を区別したデータに編集して分離・多重回路81にデータを出力する。
【0025】
親局通信装置5は、子局通信装置6,7,8との通信を行い、子局通信装置6,7,8からの通信データをPHS端末装置4を介してカスタマーセンタ12に送信し、カスタマーセンタ12からの通信情報をPHS端末装置4を介して受信する。
【0026】
親局通信装置5は、通信ケーブル9に接続された分離・多重回路51,分離・多重回路51に接続されたデータ受信回路52,データ受信回路52に接続されたフォーマット変換回路53,フォーマット変換回路53に接続されたプロトコル変換回路54,分離・多重回路51に接続されたポーリング要求回路55,プロトコル変換回路54に接続された状態監視回路56で構成される。プロトコル変換回路54は、PHS端末装置4に接続されている。
【0027】
分離・多重回路51は、通信ケーブル9を介して送信されてきたデータを取出して分離し、多重化されたデータ送信を行う。ポーリング要求回路55は、子局通信装置6,7,8から順次通信データを送信してもらうためのポーリング要求信号を出力する。データ受信回路52は、子局通信装置6,7,8から送信されてきた通信データを取出し、フォーマット変換回路53に出力する。フォーマット変換回路53は、PHS端末装置4を介してカスタマーセンタ12と通信するためのデータフォーマット変換を行う。プロトコル変換回路54は、PHS端末装置4とのデータ授受を行うためのプロトコル変換を行う。
【0028】
状態監視回路56は、どの子局通信装置から発報情報が出力されたかを示す情報とカスタマーセンタ12からの指示情報を取込み保持し、例えば保守員が専用の装置(図示していない)を接続してその指示内容を確認することができる。
【0029】
このように、エスカレータ制御装置67,77,87からのデータをエスカレータ1,2,3に敷設される通信ケーブル9を介して各々の子局通信装置6,7,8から親局通信装置5に通信し、親局通信装置5に接続されるPHS端末装置4から無線通信回線網へ送信できるようになるために、エスカレータ制御装置からのデータを無線端末装置まで通信するために必要なケーブル敷設工数及び費用を低減すると共に、無線通信回線網利用頻度を低減できる。
【0030】
〔第二の実施形態〕
本発明の第二の実施形態を図5及び図6により説明する。本実施形態は、図5に示すように、昇り乗り継ぎ用のエスカレータ1,2,3と、下り乗り継ぎ用のエスカレータ21,22,23が設置されている例を示す。
【0031】
1階と2階の間にはエスカレータ1,21が設置され、2階と3階の間にはエスカレータ2,22が設置され、3階と4階の間にはエスカレータ3,23が設置されている。
【0032】
エスカレータ1,2,3のトラス内の上部に設置される上部機械室内には、エスカレータ制御装置が設置され、上部機械室内或はこのエスカレータ制御装置内には、それぞれ子局通信装置6,7,8が設置されている。エスカレータ1の下部には、親局通信装置5が設置され、親局通信装置5には、無線通信装置、例えばPHS端末装置4が接続されている。
【0033】
エスカレータ21,22,23のトラス内の上部に設置される上部機械室内には、エスカレータ制御装置が設置され、上部機械室内或はこのエスカレータ制御装置内には、それぞれ子局通信装置26,25,24が設置されている。
【0034】
子局通信装置と親局通信装置は、第一の実施形態と同様に構成されている。
【0035】
子局通信装置8には、電力線搬送通信装置30が接続され、子局通信装置24には電力線搬送通信装置31が接続されている。電源装置34には、ブレーカ35と、ブレーカ35から分岐したサブブレーカ36,37が並列に設けられている。サブブレーカ37と電力線搬送通信装置30とは電力線32で接続され、サブブレーカ36と電力線搬送通信装置31とは電力線33で接続されている。
【0036】
図6は、PHS端末装置4,親局通信装置5,子局通信装置8,電力線搬送通信装置30の接続関係を説明する図で、電力線搬送通信装置30の構成を示している。図6は、図4に示す構成に、電力線搬送通信装置30が追加された構成となっている。
【0037】
電力線搬送通信装置30は、通信ケーブル9に接続された分離・多重回路301,分離・多重回路301に接続された変調回路302,変調回路302に接続された送信アンプ303,送信アンプ303に接続された結合器304,結合器304に接続された受信アンプ305,受信アンプ305に接続された復調回路306で構成される。復調回路306は、分離・多重回路301に接続され、結合器304は、電力線32に接続されている。
【0038】
この例では、電力線搬送通信装置30,31をサブブレーカ37,36に接続した場合を示したが、床面に設けられた電力線で接続してもよい。
【0039】
電力線32は、AC100Vの電線である。親局通信装置5から送信されてくる通信信号は、分離・多重回路301で取出されて分離され、変調回路のデータが送信される。変調回路302では電力線を通信路として通信するために所定の変調方式(BPSK,QPSK,QAM,スペクトル拡散など)に従って入力データを変調し、送信アンプ303に出力する。
【0040】
送信アンプ303で増幅された通信信号は、結合器304を介して電力線32に重畳される。電力線32に重畳された通信信号は、図5に示したサブブレーカ37,36を介して電力線搬送通信装置31に伝送される。
【0041】
電力線搬送通信装置31から電力線32を介して送信される通信信号が電力線搬送通信装置30に入力されると、結合器304を介して受信アンプ305に入力され、受信信号が増幅される。この増幅された受信信号は、復調回路306に入力され、受信信号が受信データに復調される。復調されたデータは、分離・多重回路302に入力され、多重化されて通信ケーブル9を介して親局通信装置5に通信される。
【0042】
本実施形態によれば、マンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアに敷設される通信ケーブルを介して各々の子局通信装置から親局通信装置に通信し、親局通信装置に接続されるPHS端末装置からPHS回線網へ送信できるようになるために、マンコンベア制御装置からのデータをPHS端末装置まで通信するために必要なケーブル敷設工数及び費用を低減すると共に、PHS回線網利用頻度を低減できる。
【0043】
又、本実施形態によれば、昇り乗り継ぎ用マンコンベアと下り乗り継ぎ用マンコンベアがある場合には、これらマンコンベア内に敷設される通信ケーブルは電力線を通信路とする電力線搬送通信装置に接続され、昇り乗り継ぎ用マンコンベア或は下り乗り継ぎ用マンコンベア内に敷設される通信ケーブルに親局通信装置が接続され、親局通信装置間はマンコンベア内の前記通信ケーブルに接続される子局通信装置との直接的な通信と電力線搬送通信装置を介した通信により、1台の親局通信装置で乗り継ぎ用マンコンベアと下り乗り継ぎ用マンコンベアの子局通信装置間でマンコンベア制御装置からのデータを通信できるようになり、該親局通信装置に接続される1台のPHS端末装置かマンコンベア制御装置からのデータをPHS回線網へ送信することが可能になり、マンコンベア制御装置からのデータをPHS端末装置まで通信するために必要なケーブル敷設工数及び費用を低減すると共に、PHS回線網利用頻度を低減できる。
【0044】
〔第三の実施形態〕
本発明の第三の実施形態を図7から図10により説明する。本実施形態は、第二の実施形態と同様に構成されているが、本実施形態では、電源装置38のブレーカ39,40により、外部に電力線32と電力線33が引き出されている。このため、ブレーカ39,40の前段に誘導結合器41が設けられている。
【0045】
図8は、誘導結合器41の構成を示した図である。電磁結合器42,43は貫通型のフェライトコア又は貫通型のアモルファスコアであり、電力線32,33と誘導通信線44をそれぞれ電磁結合器42,43内に貫通させている。
【0046】
例えば、電力線32に重畳される通信信号は、電磁結合器43の電磁結合により誘導通信線44に誘導され、誘導された通信信号が電磁結合器42の電磁結合により電力線33に誘導される。この結果、電力線32に重畳される通信信号は、誘導結合器41により非接触で電力線33に誘導され、電力線33上に通信信号が重畳されることになる。このため、誘導結合器41の取付けが容易になり、かつ安全性も向上する。
【0047】
電磁結合器42,43は、アモルファスコアあるいはフェライトコアを用いて構成する。アモルファスコアは、飽和磁束密度がフェライトコアより高いために、高いエネルギーのノイズが入っても飽和しづらい。つまり、アモルファスコアは電力線に流れる商用周波数電源の電流値が高くてもフェライトコアと比較し、飽和しづらく、電磁結合器の性能を高く維持することが可能である。
【0048】
図9,図10は電磁結合器の構造を示す図であり、図9が電磁結合器の鳥瞰図、図10が電磁結合器を開いた場合の平面図である。図9,図10に示すように、電力線への電磁結合器の取付けが容易なように半割れ構造としている。保護カバー42aで、42bのフェライトコア又はアモルファスコアを包むように構成されている。
【0049】
本実施形態によれば、第二の実施形態と同様な効果が得られ、電力線32,33が相互に接続されていない場合にも対応できる。
【0050】
さらに、図11のように、電力線32,33を利用しなくても、予め通信ケーブル9(本実施例では4Fに敷設)を敷設しておくことで、エスカレータ取付け時に、昇り乗り継ぎエスカレータと降り乗り継ぎエスカレータの通信ケーブル9を接続して、昇り乗り継ぎ用マンコンベア或は下り乗り継ぎ用マンコンベア内に敷設される通信ケーブルに親局通信装置が接続され、1台の親局通信装置で乗り継ぎ用マンコンベアと下り乗り継ぎ用マンコンベアの子局通信装置間でマンコンベア制御装置からのデータを通信できるようになり、該親局通信装置に接続される1台のPHS端末装置かマンコンベア制御装置からのデータをPHS回線網へ送信することが可能になり、マンコンベア制御装置からのデータをPHS端末装置まで通信するために必要なケーブル敷設工数及び費用を低減すると共に、PHS回線網利用頻度を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第一の実施形態であるマンコンベアの構成図である。
【図2】本実施形態のエスカレータ3の構成図である。
【図3】本実施形態のエスカレータ2の構成図である。
【図4】PHS端末,親局通信装置,子局通信装置の接続関係を説明する図である。
【図5】本発明の第二の実施形態であるマンコンベアの構成図である。
【図6】PHS端末,親局通信装置,子局通信装置,電力線搬送装置の接続関係を説明する図である。
【図7】本発明の第三の実施形態であるマンコンベアの構成図である。
【図8】誘導結合器の構成図である。
【図9】電磁結合器の構成を示す鳥瞰図である。
【図10】電磁結合器を開いた場合の平面図である。
【図11】本発明の第一の実施形態を拡張したマンコンベアの構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1,2,3 昇り乗り継ぎエスカレータ
4 PHS端末装置
5 親局通信装置
6,7,8 子局通信装置
9 通信ケーブル
21,22,23 下り乗り継ぎエスカレータ
30,31 電力線搬送通信装置
32,33 電力線
44 誘導通信線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンコンベア毎に設置されたマンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する子局通信装置と、マンコンベアのトラス内に敷設される前記通信ケーブルに各マンコンベアの子局通信装置と通信するように接続される親局通信装置と、該親局通信装置に通信された各子局通信装置からの通信信号をPHS回線網へ送信し、PHS回線網からの通信信号を受信するPHS端末装置を備えたことを特徴とするマンコンベア監視装置。
【請求項2】
マンコンベアの各々に設置されたマンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する子局通信装置を具備した昇り乗り継ぎ用マンコンベア及び下り乗り継ぎ用マンコンベアと、昇り乗り継ぎ用マンコンベア又は下り乗り継ぎ用マンコンベアの各マンコンベアの前記子局通信装置と前記通信ケーブルを介して通信が可能なように接続される昇り乗り継ぎ用マンコンベア又は下り乗り継ぎ用マンコンベアに設置される親局通信装置と、前記昇り乗り継ぎ用マンコンベア及び下り乗り継ぎ用マンコンベアの子局通信装置を電力線を介して通信が可能なように接続する電力線搬送装置とを備え、前記親局通信装置に通信された各子局通信装置からの通信信号をPHS回線網へ送信し、PHS回線網からの通信信号を受信するPHS端末装置を備えたことを特徴とするマンコンベア監視装置。
【請求項3】
昇り乗り継ぎ用マンコンベアの各々に設置され、マンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する昇り子局通信装置と、前記昇り子局通信装置の1つと接続され電力線を介した通信が可能である第1の電力線搬送通信装置と、下り乗り継ぎ用マンコンベアの各々に設置され、マンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する下り子局通信装置と、前記下り子局通信装置の1つと接続され電力線を介した通信が可能である第2の電力線搬送通信装置と、第1の電力線搬送通信装置と第2の電力線搬送通信装置を接続する電力線と、前記昇り乗り継ぎ用マンコンベア或は下り乗り継ぎ用マンコンベア内に敷設され前記通信ケーブルに接続される親局通信装置を備え、該親局通信装置に通信された各子局通信装置からの通信信号をPHS回線網へ送信すると共に、PHS回線網からの通信信号を受信するPHS端末装置とを備えたことを特徴とするマンコンベア監視装置。
【請求項4】
マンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置と、マンコンベア毎に設置され、マンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する子局通信装置と、マンコンベアに敷設される前記通信ケーブルに接続される親局通信装置と、各マンコンベアの子局通信装置と該親局通信装置間で通信できるように各マンコンベア間の前記通信ケーブルは接続されており、親局通信装置に通信された各子局通信装置からの通信信号をPHS回線網へ送信し、PHS回線網からの通信信号を受信するPHS端末装置と、前記PHS回線網に接続され、前記マンコンベア制御装置からのデータを監視する監視センタとを備えたことを特徴とするマンコンベア監視システム。
【請求項5】
昇り乗り継ぎ用マンコンベアの各々に設置されマンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置と、該マンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する昇り子局通信装置と、前記昇り子局通信装置の1つと電力線を介した通信が可能である第1の電力線搬送通信装置と、下り乗り継ぎ用マンコンベアの各々に設置されマンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置と、該マンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する下り子局通信装置と、前記下り子局通信装置の1つと電力線を介した通信が可能である第2の電力線搬送通信装置と、第1の電力線搬送通信装置と第2の電力線搬送通信装置を接続する電力線と、前記昇り乗り継ぎ用マンコンベア或は下り乗り継ぎ用マンコンベア内に敷設され前記通信ケーブルに接続される親局通信装置と、各マンコンベアの子局通信装置は親局通信装置と通信できるように昇り乗り継ぎ用マンコンベア間と下り乗り継ぎ用マンコンベア間で夫々接続されており、親局通信装置に通信された各子局通信装置からの通信信号をPHS回線網へ送信すると共に、PHS回線網からの通信信号を受信するPHS端末装置、前記PHS回線網に接続され、前記マンコンベア制御装置からのデータを監視する監視センタとを備えたことを特徴とするマンコンベア監視システム。
【請求項6】
前記第1及び2の電力線搬送通信装置は、電力線搬送装置からの通信信号を電力線に重畳させ、かつ電力線の通信信号を抽出する電磁結合器を備え、電磁結合器は貫通型のフェライトコア又は貫通型のアモルファスコアであり、かつ貫通型のフェライトコア又は貫通型のアモルファスコアに電力線と通信信号線を貫通させるように構成することを特徴とする請求項3に記載のマンコンベア監視装置。
【請求項7】
前記第1及び2の前記電力線搬送通信装置は、電力線搬送装置からの通信信号を電力線に重畳させ、かつ電力線の通信信号を抽出する電磁結合器を備え、電磁結合器は貫通型のフェライトコア又は貫通型のアモルファスコアであり、かつ貫通型のフェライトコア又は貫通型のアモルファスコアに電力線と通信信号線を貫通させるように構成することを特徴とする請求項5に記載のマンコンベア監視システム。
【請求項1】
マンコンベア毎に設置されたマンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する子局通信装置と、マンコンベアのトラス内に敷設される前記通信ケーブルに各マンコンベアの子局通信装置と通信するように接続される親局通信装置と、該親局通信装置に通信された各子局通信装置からの通信信号をPHS回線網へ送信し、PHS回線網からの通信信号を受信するPHS端末装置を備えたことを特徴とするマンコンベア監視装置。
【請求項2】
マンコンベアの各々に設置されたマンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する子局通信装置を具備した昇り乗り継ぎ用マンコンベア及び下り乗り継ぎ用マンコンベアと、昇り乗り継ぎ用マンコンベア又は下り乗り継ぎ用マンコンベアの各マンコンベアの前記子局通信装置と前記通信ケーブルを介して通信が可能なように接続される昇り乗り継ぎ用マンコンベア又は下り乗り継ぎ用マンコンベアに設置される親局通信装置と、前記昇り乗り継ぎ用マンコンベア及び下り乗り継ぎ用マンコンベアの子局通信装置を電力線を介して通信が可能なように接続する電力線搬送装置とを備え、前記親局通信装置に通信された各子局通信装置からの通信信号をPHS回線網へ送信し、PHS回線網からの通信信号を受信するPHS端末装置を備えたことを特徴とするマンコンベア監視装置。
【請求項3】
昇り乗り継ぎ用マンコンベアの各々に設置され、マンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する昇り子局通信装置と、前記昇り子局通信装置の1つと接続され電力線を介した通信が可能である第1の電力線搬送通信装置と、下り乗り継ぎ用マンコンベアの各々に設置され、マンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する下り子局通信装置と、前記下り子局通信装置の1つと接続され電力線を介した通信が可能である第2の電力線搬送通信装置と、第1の電力線搬送通信装置と第2の電力線搬送通信装置を接続する電力線と、前記昇り乗り継ぎ用マンコンベア或は下り乗り継ぎ用マンコンベア内に敷設され前記通信ケーブルに接続される親局通信装置を備え、該親局通信装置に通信された各子局通信装置からの通信信号をPHS回線網へ送信すると共に、PHS回線網からの通信信号を受信するPHS端末装置とを備えたことを特徴とするマンコンベア監視装置。
【請求項4】
マンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置と、マンコンベア毎に設置され、マンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する子局通信装置と、マンコンベアに敷設される前記通信ケーブルに接続される親局通信装置と、各マンコンベアの子局通信装置と該親局通信装置間で通信できるように各マンコンベア間の前記通信ケーブルは接続されており、親局通信装置に通信された各子局通信装置からの通信信号をPHS回線網へ送信し、PHS回線網からの通信信号を受信するPHS端末装置と、前記PHS回線網に接続され、前記マンコンベア制御装置からのデータを監視する監視センタとを備えたことを特徴とするマンコンベア監視システム。
【請求項5】
昇り乗り継ぎ用マンコンベアの各々に設置されマンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置と、該マンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する昇り子局通信装置と、前記昇り子局通信装置の1つと電力線を介した通信が可能である第1の電力線搬送通信装置と、下り乗り継ぎ用マンコンベアの各々に設置されマンコンベアの運転制御を行うマンコンベア制御装置と、該マンコンベア制御装置からのデータをマンコンベアのトラス内に敷設される通信ケーブルを介して通信する下り子局通信装置と、前記下り子局通信装置の1つと電力線を介した通信が可能である第2の電力線搬送通信装置と、第1の電力線搬送通信装置と第2の電力線搬送通信装置を接続する電力線と、前記昇り乗り継ぎ用マンコンベア或は下り乗り継ぎ用マンコンベア内に敷設され前記通信ケーブルに接続される親局通信装置と、各マンコンベアの子局通信装置は親局通信装置と通信できるように昇り乗り継ぎ用マンコンベア間と下り乗り継ぎ用マンコンベア間で夫々接続されており、親局通信装置に通信された各子局通信装置からの通信信号をPHS回線網へ送信すると共に、PHS回線網からの通信信号を受信するPHS端末装置、前記PHS回線網に接続され、前記マンコンベア制御装置からのデータを監視する監視センタとを備えたことを特徴とするマンコンベア監視システム。
【請求項6】
前記第1及び2の電力線搬送通信装置は、電力線搬送装置からの通信信号を電力線に重畳させ、かつ電力線の通信信号を抽出する電磁結合器を備え、電磁結合器は貫通型のフェライトコア又は貫通型のアモルファスコアであり、かつ貫通型のフェライトコア又は貫通型のアモルファスコアに電力線と通信信号線を貫通させるように構成することを特徴とする請求項3に記載のマンコンベア監視装置。
【請求項7】
前記第1及び2の前記電力線搬送通信装置は、電力線搬送装置からの通信信号を電力線に重畳させ、かつ電力線の通信信号を抽出する電磁結合器を備え、電磁結合器は貫通型のフェライトコア又は貫通型のアモルファスコアであり、かつ貫通型のフェライトコア又は貫通型のアモルファスコアに電力線と通信信号線を貫通させるように構成することを特徴とする請求項5に記載のマンコンベア監視システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−58932(P2010−58932A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227718(P2008−227718)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】
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