説明

マンゴーの加温施設による栽培方法

【課題】マンゴーの加温施設による従来の栽培方法は冬季に高温管理での栽培を行い、出荷時期が3月中旬より9月初旬までとなっており、周年における出荷及び生産性の向上、と省エネルギー化が望まれていた。
【解決手段】マンゴーの加温施設による栽培方法において、結果母枝育成期間の夜間最低温度を16℃〜25℃に加温し、また昼間最高温度を26℃〜35℃となるよう換気し、結果母枝育成期間が81〜170日間になるよう設定して、その間に結果母枝育成のための新梢育成を1回ないし2回に調整すること、その後の休眠期間中は、夜間最低温度を5℃〜15℃の範囲に、昼間最高温度を16℃〜25℃の範囲に、土壌湿度を潅水後36時間以降においてPF2.0〜2.9となるよう管理し、目標出荷時期に合わせるよう花芽分化促進及び花芽発芽成長を抑制する2ヶ月以上の休眠期間を設定するマンゴーの加温施設による栽培方法の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然法則を重視した栽培方法で、従来の加温施設による栽培方法での国内産マンゴー出荷の空白状態の9月中旬〜1月の収穫出荷を行う省エネルギー栽培方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来の国産マンゴーの結果母枝の生育は、自然状態又は屋根掛け状態で2〜3回有り、収穫、出荷は宮崎及び鹿児島を中心とする加温施設での3月中旬〜8月、沖縄を中心とする屋根掛け状態を主体とする施設の7月〜9月の初旬までの状況である。(非特許文献の1の28ページ及び非特許文献の2の53ページ参照)生産量も沖縄、宮崎を中心に2、000t台と少なく、本土を中心とする加温施設での栽培は歴史も浅く、公的研究機関も少なく技術に関する文献も少ない状態である。10月以降の収穫、出荷は特許文献1で解決の方向性は出来ているが、結果母枝の育成が1回と樹勢維持に課題があり、樹勢維持対策による生産性の向上と、さらなる省エネルギー対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−207489号 公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】西田学、「マンゴーの品種と生産技術」、農耕と園芸2月号28頁、誠文堂新光社、208年1月25日発行
【非特許文献2】米本仁己、新特産シリーズ「マンゴー」53頁、農山漁村文化協会、2008年1月25日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の日本におけるマンゴーの施設栽培の方法は無加温主体の沖縄及び南西諸島以外では、冬の寒い時期を中心に夜間最低温度20℃〜25℃、昼間最高温度30℃前後の高温管理を約5ヶ月間行い、収穫を迎える。鹿児島、宮崎等の産地では10a当たりA重油20kl前後を大量使用を行って栽培している。その上、沖縄を含めて3月中旬より9月上旬までの収穫、出荷で10月以降の収穫、出荷が無く周年供給体制が整っていなかった。A重油等の化石燃料使用量の削減と9月中旬より1月の収穫、出荷が可能な栽培方法の確立が望まれていた。本発明は従来の栽培方法による供給と合わせて2月の需要の少ない時期を除き国内産マンゴーの年間供給の実現とさらなる省エネルギーと生産性の向上を計る栽培方法を提供することを目的とするものです。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するための第1の発明は、マンゴーの加温施設による栽培方法において、結果母枝育成期間終了前の最後期を除く結果母枝育成期間中、施設を夜間は密閉状態とし夜間最低温度を16℃〜25℃に加温し、また昼間は換気等により最高温度を26℃〜35℃となるよう管理し、結果母枝育成期間が81〜170日間になるよう設定すること、その間に結果母枝育成のための新梢育成を1回ないし2回に調整すること、かつその結果母枝育成期間終了前の最後期3日〜10日間は、夜間最低温度を16℃〜17℃に加温し、また昼間最高温度を26℃〜27℃の範囲になるように管理すること、その後の休眠期間中は、夜間最低温度が5℃未満の場合に施設を密閉状態として加温する以外は、施設を開放状態として夜間最低温度を5℃〜15℃の範囲に、昼間最高温度を16℃〜25℃の範囲に管理し、そして土壌湿度を潅水後36時間以降においてPF2.0〜2.9となるよう管理し、目標出荷時期に合わせるよう花芽分化の促進及び花芽の発芽成長を抑制することで2ヶ月以上の休眠期間を設定し、終了すること、その後は、花芽の発芽及び開花、果実の肥大期を経て収穫することにより、9月中旬から翌年1月までをマンゴー果実の収穫期間として生産販売計画にあわせ出荷可能とすることができる。なお、昼間の施設の温度調節方法としては、昼間外気温が20℃を超える場合は、換気に加えて葉水及び細霧冷房を行い気化熱による樹体の冷却を計ること又は、冷房設備を利用して施設内を冷房する。これらの工程の組み合わせにより、5月以降の外気温上昇時の花芽分化促進と、発芽成長を抑制して、2ヶ月以上の休眠期間を設定し、目標とする出荷時期に合わせて休眠期間を終了することにより、その後花芽の発芽及び開花、果実の肥大期を経て収穫が可能となる。
【0007】
さらに、次のようにして所望する品質や収量にあわせ、生産計画を組むことができる。前出のマンゴーの加温施設による栽培方法において、結果母枝育成期間を81日〜119日に設定したときは、結果母枝育成期間終了前の最後期を除く結果母枝育成期間中81日以降は、夜間最低温度を17℃〜18℃に加温し、昼間は換気等により昼間最高温度を27℃〜29℃となるよう管理し、その間の結果母枝育成のための新梢育成を1回とし、その後の新梢は早期に切除することで、確実に休眠期を確保することができるようになる。また、結果母枝育成期間を120日〜170日に設定したときは、結果母枝育成期間終了前の最後期を除く結果母枝育成期間中において夜間最低温度を18℃〜25℃の範囲に加温し、昼間は換気等により昼間最高温度を30℃〜35℃となるよう管理し、その間の結果母枝育成のための新梢育成を2回とし、その後の新梢は早期に切除することで、樹勢維持と樹容積の拡大を図ることができ生産性の向上につながる。
【0008】
第2の発明は、前出マンゴーの加温施設による栽培方法において、結果母枝育成期間中、マンゴー樹の大きさに応じた地植え又は鉢植えの果実の品質および生産性を考慮した適正な栽植本数より1.5倍〜2.5倍の範囲の密植状態になるよう、鉢植えのマンゴー樹の配置を行い、休眠に入る時期にその施設で適正な植栽本数を残して隣接施設等への搬出移動を行い、それぞれの施設で樹体の大きさに応じた適正な栽植本数で休眠期間以降の管理を行うことで、加温のために使用する電気料金又はA重油等の燃料の大幅な削減が可能となる。
【0009】
従来法では、地植え及び鉢植え状態の一定面積の施設で結果母枝育成より収穫までの年間の栽培を決まった本数で行ってきたが、本発明では、結果母枝育成の秋より冬の期間に1.5倍ないし2.5倍の範囲の鉢植えしたマンゴー樹を蜜植状態に配置することにより加温に使用する電気料金やA重油等の大幅な削減ができ、前出のマンゴーの加温施設による栽培方法と組み合わせることにより、生産性の向上と省エネルギーの両立を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
従来の施設栽培の方法は無加温主体での栽培の沖縄及び南西諸島を除いて、鹿児島 宮崎を中心とする加温栽培では、10月中旬以降の冬を中心とする寒冷時期にA重油換算で10a当たり20kl〜30klの大量使用を行って栽培している。本発明は10月中旬以降の寒冷の時期には、結果母枝の育成の約3〜5ヶ月間夜間最低温度20℃を中心の加温栽培で、結果母枝育成後は夜間最低温度5℃〜15℃の休眠に入るので、果実成熟期の10〜12月の夜間最低温度20℃以上の管理を入れても10a当たりA重油換算では14kl前後である。
【0011】
さらに花芽の発芽及び開花、果実の肥大期を経て収穫に至る時期の栽培本数の2倍前後の密植状態に配置する事を結果母枝育成期間行って栽培することにより50%前後の燃料の削減が可能となり、本発明を有効利用することにより10a当たり加温燃料はA重油換算で10kl前後に削減出来ることが可能である。
【0012】
従来の栽培方法では主力品種のアーウインでは3月中旬より9月上旬までの収穫、出荷である。厳寒期で需要の少ない2月を除いた9月中旬〜1月の供給が望まれている。本発明では9月中旬より1月の収穫、出荷を可能とすることにより、国内産マンゴーのほぼ年間供給体制が整うこととなる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
従来の栽培方法はマンゴー樹の地植え及び防根シートによる根域制限栽培が主体で火山灰土壌の多い鹿児島では80lの鉢植えが行われている。本発明では12月〜1月収穫、出荷の場合6月〜7月の昇温による発芽の抑制が課題となるので、水分コントロールが容易な80l〜120lの鉢植えを主体とした栽培を中心に行う」。当初3〜4年は80l鉢を中心に10a当たり150〜300本の密植状態の配置で早期成園化を計り、その後排水の良い園地では防根シートでの根域制限栽培に移行し、排水の悪い園地では120l鉢へ移行し2〜3年鉢植え栽培を行う場合と、防根シートでの根域制限栽培とし10月収穫、出荷を主体とする栽培とする。排水の悪い園地では最終的には9月〜10月収穫 出荷を主体とするのが最良と考える。
【実施例1】
【0014】
80l鉢植えの3年生のマンゴー樹、48本を189mの施設で11月25日より夜間最低温度18℃〜20℃に加温し、昼間最高温度34℃で換気を行い、結果母枝育成の為の1回目の新梢の発生、及び生育を促進する栽培を2月12日迄の80日間行い新梢充実後の2月13日より、マンゴーは熱帯果樹で長期間の15℃以下の低温は樹勢の衰弱を招くので、樹勢の衰退を防ぎ新梢の2回目の発生を抑制する為に、マンゴーの生育温度の下限の夜間最低温度17℃〜18℃に加温し、昼間最高温度を27℃〜28℃の範囲で換気を行った状態で2回目の新梢は切除し3月15日まで管理して、3月16日より3月18日迄夜間最低温度16℃〜17℃に加温、昼間最高温度26℃〜27℃で管理する81日間〜115日間の工程、その後夜間最低温度が5℃以下の場合は夜間密閉状態として5℃以上に加温する以外は施設を開放状態とし、夜間最低温度5℃〜15℃、昼間最高温度16℃〜25℃の休眠に入り、土壌湿度を潅水後36時間以降はPF2,0〜2,9とし、5月より葉水を行い花芽分化の確認後の73日間の休眠を終了して6月1日よりたっぷりの潅水を行って花芽の発芽を促進し、開花、果実の肥大を経て9月中旬よりマンゴーの収穫を行った。
【実施例2】
【0015】
984mの施設で11月1日より二重張りの夜間密閉状態で6〜8年生の5本の地植及び80lの鉢植した4年生のマンゴー樹406本の密植状態の配置で夜間最低温度18℃〜20℃の加温し、昼間最高温度34℃で換気を行い1回目の結果母枝育成の新梢を育成し、その充実後の1月1日より省エネルギーの為に夜間最低温度を18℃に加温し、昼間最高温度33℃での換気を20日行い、1月21日より夜間最低温度21℃に加温し、昼間最高温度34℃の換気を行い、結果母枝育成の2回目の新梢の発生及び生育を促進し、新梢の充実後期の3月30日より夜間最低温度17℃に加温、昼間最高温度27℃での換気をし161日間の結果母枝育成を行って4月10日より夜間最低温度が5℃以下の時は密閉状態で5℃以上に加温し、それ以外は屋根掛け状態を主体とした、夜間最低温度5〜15℃、昼間最高温度16℃〜25℃の休眠に入り984mの施設へ224本残して隣接864mの施設へ6日間で187本を搬出移動を行って、984mの施設では土壌湿度を潅水後36時間以降はPF2、0〜2、9とし、5月より葉水を行い花芽分化の確認後80日間の休眠を終了して、6月30日よりたっぷりの潅水を行って花芽の発芽を促進し、開花、果実の肥大を経て10月中旬よりのマンゴーの収穫を行った。加温に要したA重油の使用量は10月〜11月を含めて15、300lであった。
【実施例3】
【0016】
実施例2において休眠状態のマンゴー樹187本の搬入を行った864mの施設では土壌湿度を潅水後36時間以降はPF2、0〜2、9とし、5月より葉水を行い70日間の休眠を経て花芽分化確認後の6月20日よりたっぷりの潅水を行って花芽の発芽を促進し開花、果実の肥大を経て、10月上旬よりマンゴーの収穫を行った。加温に要したA重油の使用量は10月〜11月の1、870lあった。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明を有効利用した場合、実施例2の984mの施設で加温に要したA重油は15、300lであり、実施例3の864mの施設では1、870lであった。それぞれを合算して10a当たりに換算するとA重油の使用量は9、291lである。宮崎を中心とするマンゴーの加温施設の栽培では10a当たり20、000l以上のA重油使用量と比較すると約50%のA重油の削減が可能である。近年産油国の政情不安の拡大と、昨年3月11日 東日本大地震による福島原子力発電事故の影響が大きく原油等の化石燃料の高騰が続くことが予想される。現在の作型のマンゴーの加温栽培を始め、ハウスミカン等高温での栽培が必要な施設では経営に困窮し、激滅することが心配される。本発明のマンゴー栽培は実施例の通り10a当たり加温に要するA重油が10、000l前後と少なく高付加価値が期待されるので需要に合わせて計画的な生産を行い安定した経営が可能なマンゴーの加温施設の栽培が出来ると確信している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】上段に本発明で栽培方法の3例を、下段には従来の栽培方法の代表的3例を示した図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンゴーの加温施設による栽培方法において、結果母枝育成期間終了前の最後期を除く結果母枝育成期間中、施設を夜間は密閉状態とし夜間最低温度を16℃〜25℃の範囲に加温し、また昼間は換気等により最高温度を26℃〜35℃となるよう換気し、結果母枝育成期間が81〜170日間になるよう設定すること、その間に結果母枝育成のための新梢育成を1回ないし2回に調整すること、かつその結果母枝育成期間終了前の最後期3日〜10日間は、夜間最低温度を16℃〜17℃の範囲に加温し、また昼間最高温度を26℃〜27℃の範囲になるように換気すること、その後の休眠期間中は、夜間最低温度が5℃未満の場合に施設を密閉状態として加温する以外は、施設を開放状態として夜間最低温度を5℃〜15℃の範囲に、昼間最高温度を16℃〜25℃の範囲に管理し、土壌湿度を潅水後36時間以降においてPF2.0〜2.9となるよう管理し、目標出荷時期に合わせるよう花芽分化の促進及び花芽の発芽成長を抑制することで2ヶ月以上の休眠期間を設定し、終了すること、その後は、花芽の発芽及び開花、果実の肥大期を経て収穫することを特徴とするマンゴーの加温施設による栽培方法。
【請求項2】
請求項1に記載のマンゴーの加温施設による栽培方法において、結果母枝育成期間を81日〜119日に設定したときは、結果母枝育成期間終了前の最後期を除く結果母枝育成期間中81日以降において夜間最低温度を17℃〜18℃の範囲に加温し、昼間は換気等により昼間最高温度を27℃〜29℃となるよう換気し、その間の結果母枝育成のための新梢育成を1回とし、その後の新梢は早期に切除することを特徴とするマンゴーの加温施設による栽培方法。
【請求項3】
請求項1に記載のマンゴーの加温施設による栽培方法において、結果母枝育成期間を120日〜170日に設定したときは、結果母枝育成期間終了前の最後期を除く結果母枝育成期間中において夜間最低温度を18℃〜25℃の範囲に加温し、昼間は換気等により昼間最高温度を30℃〜35℃となるよう管理し、その間の結果母枝育成のための新梢育成を2回とし、その後の新梢は早期に切除することを特徴とするマンゴーの加温施設による栽培方法。
【請求項4】
請求項1〜3の記載のマンゴーの加温施設による栽培方法において、結果母枝育成期間中、マンゴー樹の大きさに応じた地植え又は鉢植えの果実の品質および生産性を考慮した適正な栽植本数より1.5倍〜2.5倍の範囲の密植状態になるよう、鉢植えのマンゴー樹の配置を行い、休眠に入る時期にその施設で適正な植栽本数を残して搬出移動を行い、それぞれの施設で樹体の大きさに応じた適正な栽植本数で休眠期間以降の管理を行うことを特徴とするマンゴーの加温施設による栽培方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−31439(P2013−31439A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159030(P2012−159030)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(308005660)有限会社菊地園芸 (2)
【Fターム(参考)】