説明

マンホールトイレ用の汚物回収具及びその保管方法

【課題】簡易な構成で、トイレ使用時の汚物回収の効率性及び作業性を向上させたマンホールトイレ用の汚物回収具及びこれを用いた防災セットを提供することを目的とする。
【解決手段】災害時に、マンホール2の地上側開口端2aに便器4を組み立てて使用するマンホールトイレ1に用いられ、該便器4より排出されたトイレ使用時の汚物を収容するマンホールトイレ1用の汚物回収具6であって、マンホール2内に配置され、収容したトイレ使用時の汚物の内、液分をろ過し、固分を回収する本体部60を具備してなる。また、本体部60は、一端に開口部60aを有する袋状に形成され、該開口部60aよりトイレ使用時の汚物が収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールトイレ用の汚物回収具及びその保管方法に関し、より詳細には、マンホールの地上側開口端に便器を設置したマンホールトイレに用いられ、該マンホール内の空間に配置してトイレ使用時の汚物を回収するマンホールトイレ用の汚物回収具及びその保管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
災害時のトイレ対策として、これまでに多数の災害トイレが提案されている。そのような災害トイレの構成としては、例えば、便器と便槽とが一体に組み付けられた仮設式若しくは組立式の簡易トイレユニットや、屎尿を凝固等させて処理する便袋や、近年ではバイオテクノロジー技術を用いて屎尿処理を行うバイオ式トイレ等が公知である。
【0003】
上述した災害トイレ製品の中でも、トイレ使用後の(排泄物の)汲み取り作業の低減が期待できるという点から「マンホールトイレ」が注目されている。マンホールトイレとは、マンホールの地上側開口端からマンホール内に屎尿やゴミ等の「トイレ使用時の汚物」を廃棄して使用する災害トイレの総称であって、地中に埋設されたマンホールを介して屎尿等の汚物を下水管や暗渠などへと廃棄するものである。
【0004】
従来のマンホールトイレの構造としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されるように、マンホール蓋の上面に便器を設置する構造が一般的である(特許文献1及び特許文献2参照)。このような構成の場合、トイレ使用時の汚物は、便器からマンホールを介して下水管や暗渠などへ廃棄される。
【0005】
ところで、特許文献1及び特許文献2に開示されるマンホールトイレのように、従来のマンホールトイレは、トイレ使用時の汚物をマンホール内に廃棄して、マンホールや、これに接続される下水管や暗渠等を便槽として利用するものである。そのため、マンホールや下水管等にかかる汚物が山状に堆積していく。そして、このようなマンホールトイレにおいては、堆積した汚物は、下水管や暗渠内に多量の水を流すことで下流側に流し出して清掃・回収することを想定している。
【0006】
しかしながら、下水管や暗渠などは、災害によって破損等してしまう場合がある。かかる場合には、上述の汚物を流し出すための多量の水を確保することは困難であり、その結果、堆積した汚物がマンホール内を塞ぐようにして堆積し、やがてトイレ機能が停止してしまう恐れがあった。また、堆積した汚物が固形化することによって、下水復旧工事が却って妨げられてしまうといった課題があった。
【0007】
この点、特許文献3には、マンホール蓋の開口部の下方に着脱可能な汚物タンクを設けたマンホールトイレの構造が開示されている(特許文献3参照)。
なるほど、このようにマンホールの空間を利用して汚物タンクを配置することで、屎尿等を回収して下水管に汚物が直接廃棄されることが防止できる。
【0008】
しかしながら、トイレ使用時の汚物には、固分と液分からなる屎尿や、固分としてのペーパ製品及び生理用品などが含まれるため、特許文献3に開示される構成のように汚物タンクに固分と液分とが同時に回収されるような構成では、汚物の収容量が制限されて、マンホールトイレの長期・多人数の使用が困難であるといった問題があった。また、収容物は固分と液分とが混在するために、収容物のハンドリングが悪く、取扱性に劣るという問題があった。
また、汚物の収容量を増やすために汚物タンクを大型化させると、一方でタンク荷重が増大してしまい、汚物タンクの回収作業が煩雑となるという問題があった。
【特許文献1】特開平11−140952号公報
【特許文献2】特開2005−143871号公報
【特許文献3】特開2004−183264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明においては、マンホールトイレ用の汚物回収具及びその保管方法に関し、前記従来の課題を解決するもので、簡易な構成で、トイレ使用時の汚物を効率よく回収して、マンホールトイレの長期かつ多人数の使用を可能としたマンホールトイレ用の汚物回収具及びその保管方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
すなわち、請求項1においては、災害時に、マンホールの地上側開口端に便器を組み立てて使用するマンホールトイレに用いられ、該便器より排出されたトイレ使用時の汚物を収容するマンホールトイレ用の汚物回収具であって、マンホール内に配置され、収容したトイレ使用時の汚物の内、液分をろ過し、固分を回収する本体部を具備してなるものである。
【0012】
請求項2においては、前記本体部は、一端に開口部を有する袋状に形成され、該開口部よりトイレ使用時の汚物が収容されるものである。
【0013】
請求項3においては、前記本体部は、マンホール蓋の下面に取り外し可能に掛止されて、マンホール内に垂設されるものである。
【0014】
請求項4においては、前記本体部は、マンホールの内壁に取り外し可能に掛止されて、マンホール内に垂設されるものである。
【0015】
請求項5においては、前記本体部は、少なくとも一部がポリプロピレン又はポリエチレンのフラットヤーンを原糸とした基布より形成されるものである。
【0016】
請求項6においては、前記本体部は、前記開口部を閉止可能な閉止手段が設けられるものである。
【0017】
請求項7においては、前記請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のマンホールトイレ用の汚物回収具を、マンホール内に垂下した状態で保管するものである。
【0018】
請求項8においては、前記本体部に、便器部材群、便器の周囲を囲繞するテント部材群、ペーパ製品群、及びサニタリー製品群の内、少なくとも1種以上の群又は群の一部を収納した状態で保管するものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に示す構成としたので、簡易な構成で、トイレ使用時の汚物を効率よく回収でき、マンホールトイレの長期かつ多人数の使用が可能となる。また、マンホール内に汚物が堆積しないので、固形化した汚物によって下水復旧工事が妨げられることがない。
【0020】
請求項2に示す構成としたので、成形が容易であり、一回の設置で多量のトイレ使用時の汚物(固分)を回収することができる。
【0021】
請求項3に示す構成としたので、マンホール蓋ごと汚物回収具を持ち上げることで、マンホール内から汚物回収具を回収することができ、汚物回収具の回収作業が容易となる。
【0022】
請求項4に示す構成としたので、既存のマンホールに、例えば掛止部材を打ち込むだけで汚物回収具を垂設することができるため、設置効率がよい。また、汚物回収具をマンホールより取り出す際には、マンホール蓋に荷重が掛からないので、これを容易に開口端から取り外すことができ、汚物回収具の回収作業が容易となる。
【0023】
請求項5に示す構成としたので、本体部の液分のろ過性能(透水性及びフィルタ性)や耐久性を向上できる。
【0024】
請求項6に示す構成としたので、開口部を閉止させておくことで、マンホールより汚物回収具を取り出す際や、搬送する際などに、本体部に回収したトイレ使用時の汚物(固分)が開口部からこぼれ落ちることがなく、回収作業が容易となる。
【0025】
請求項7に示す構成としたので、災害時には、マンホールから汚物回収具を容易に取り出すことができ、マンホールトイレを迅速かつ容易に組み立てることができる。
【0026】
請求項8に示す構成としたので、マンホールトイレの構成部材の保管が容易となるとともに、災害時には、マンホールから汚物回収具を取り出すことで、一度に多数の構成部材を取り出すことができ、マンホールトイレを迅速に組み立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本実施例の汚物回収具が用いられるマンホールトイレの全体的な構成を示した側断面図、図2は汚物回収具を垂設した状態のマンホールトイレの側断面図、図3は汚物回収具の開口部近傍の構造を示した側面図、図4は汚物回収具によってトイレ使用時の汚物を回収する様子を示した状態図、図5は汚物回収具等を保管した状態を示したマンホールの側断面図、図6は別実施例の汚物回収具を垂設した状態のマンホールトイレの側断面図、図7は別実施例の汚物回収具を垂設した状態のマンホールトイレの側断面図、図8は別実施例の汚物回収具の開口部近傍の構造を示した側面図である。
【0028】
以下、本実施例における「トイレ使用時の汚物」には、排泄物たる屎尿に加えて、トイレ使用時に消費されるトイレットペーパ等のペーパ製品や生理用品等のサニタリー製品などが含まれる。また、トイレ使用時の汚物の内、固分とは、排泄物たる屎尿に含まれる糞便や、トイレ使用時に消費されたペーパ製品やサニタリー製品等をいい、液分とは、排泄物たる屎尿に含まれる尿や汚水等をいう。
【0029】
まず、本実施例の汚物回収具6が用いられるマンホールトイレ1の全体構成について、以下に説明する。
図1及び図2に示すように、本実施例のマンホールトイレ1は、災害時に、マンホール2の地上側開口端2aに便器4等を組み立てて使用するマンホールトイレ1であって、地表面に対して略垂直に埋設されたマンホール2と、マンホール2の地上側開口端2aに嵌合されるマンホール蓋3と、マンホール蓋3の上面に設置される便器4と、便器4を囲繞するようにして組み立てられるテント5と、便器4からマンホール2に排出されるトイレ使用時の汚物を収容する汚物回収具6等とで構成される。
【0030】
マンホール2は、断面円形の直管状に形成され、地表面に開口端2aが開口するようにして、地表面に対して略垂直に地中に埋設される。本実施例のマンホール2は、地下に延設された下水管9に対して地上面に対して略垂直となるように接続され、隣接するマンホール2同士が略等間隔となるように配設されている(図1参照)。
【0031】
また、マンホール2は、内壁に複数の掛止突起21(本実施例では4個)が円周方向に沿って略等間隔に設けられている。具体的には、掛止突起21は、先端が上方に向けて略垂直に屈曲するようにして内壁に突設されている。
なお、後述するように、マンホールトイレ1を組み立てる前は、便器4や汚物回収具6などは、掛止突起21に掛止された状態でマンホール2内に保管される。この保管方法の詳細は、後述する(図5参照)。また、この掛止突起21・21・・・に汚物回収具6を掛止させて、マンホール2内に垂設してもよい。
【0032】
マンホール2の構造としては、特に限定されず、一般の下水用マンホールとは異なり、マンホールトイレ用に埋設されたものであってもよく、また、暗渠に接続されるマンホールであってもよい。また、マンホール2の形状としては、断面円形の直管状に形成される他に、断面矩形のものや円形及び/又は矩形との連続形となるように形成されてもよい。
【0033】
マンホール蓋3は、平面視円形に形成され、マンホール2の開口端2aに地表面側上方から図示せぬワッシャーや調整リング等を介して嵌合される。本実施例のマンホール蓋3は、略中心部に平面視略矩形の挿通口3aが開口されており、便器4を設置しない状態(マンホールトイレ1を組み立てる前)では、挿通口3aは小蓋30によって閉止されている(図5参照)。
【0034】
マンホール蓋3は、裏面に複数の掛止突起31・31・・・(本実施例では4個)が円周方向に沿って略等間隔に配設されている。具体的には、掛止突起31は、先端が略J字型に曲するようにしてマンホール蓋3の裏面に突設され、マンホール蓋3の略中央部に対してそれぞれが対称位置となる4箇所に設けられている。掛止突起31には、後述するように汚物回収具6に設けられた掛止具61が取り外し可能に掛止される。このように、マンホールトイレ1が組み立てられた状態では、汚物回収具6は、掛止突起31に掛止された状態でマンホール2内に垂設される。
【0035】
マンホール蓋3の構造としては、特に限定されず、例えば、平面視円形に形成される他に、平面視略矩形に形成されてもよい。平面視略矩形に形成される場合には、マンホール2の開口端2aの形状も略同じ形状とされる。また、挿通口3a及び小蓋30の形状も特に限定するものではなく、小蓋30によって挿通口3aが閉止可能な形状とされればよく、また、マンホール蓋3に対してヒンジ部材を介して挿通口3aが閉接自在となるように取り付けられてもよい。
【0036】
便器4は、洋式便器として構成されており、マンホール蓋3の上面に載置して組み立てられ、具体的には、マンホール蓋3の上面に設けられた図示せぬ位置決め突起に係合され、図示せぬボルト等によって固設される。本実施例の便器4は、トイレ使用時の汚物が下方に排出される排出穴4aが設けられており、マンホール蓋3に設置された状態(マンホールトイレ1が組み立てられた状態)で、上述した挿通口3aと排出穴4aとが連結される。
【0037】
便器4の構造としては、特に限定されず、例えば、本実施例の便器4は、洋式便器として構成されているが、座着部を構成しない和式便器として構成されてもよい。また、その形状も、円筒形、角柱形、半球形、及び角錐形等に形成される。また、マンホール2の地上側開口端2aにマンホール蓋3を介することなく、直接に便器4を組み立ててもよい。
【0038】
テント5は、便器4の四方及び上方を囲繞するようにして壁状に立設される(図1参照)。テント5の構造としては、例えば、地表面に直接立設される立設型や、補助具に吊り下げられる吊下型などで構成され、また、上方部には採光口や通風口が設けられる。
特に、本実施例では、テント5の上方部は透明のシート素材より構成されるのが好ましい。すなわち、かかる構成とすることで、例えば、本実施例のマンホールトイレ1が設けられた近傍位置に、太陽電池などの自動蓄電装置を備えた防犯灯(図略)が配設されることで、災害時の照明手段としての防犯灯を、トイレ使用時の採光用として併用することができる。
【0039】
次に、本実施例の汚物回収具6について、以下に詳述する。
図2乃至図4に示すように、汚物回収具6は、一端に開口部60aを有する袋状に形成された本体部60と、開口部60a近傍に設けられた掛止具61と、開口部60aを閉止可能な閉止手段としての口紐62等とで構成されている。この汚物回収具6によって、便器4より排出されたトイレ使用時の汚物が回収される。
【0040】
具体的には、本体部60は、一端に開口部60aを有する袋状に形成され、マンホールトイレ1が組み立てられた状態で、便器4より排出されたトイレ使用時の汚物を開口部60aより収容し、収容したトイレ使用時の汚物の内、液分のみをろ過してマンホール2内の下方に排出し、固分を回収するように構成される。
【0041】
本体部60を形成する素材としては、ろ過機能(透水性及びフィルタ性)、耐久性、及び強度が確保される素材が好ましく用いられる。
具体的には、本体部60を構成する素材としては、透水性の織布や、不織布や、開孔プラスチックフィルムや、及びネット等を用いることができる。好ましくは、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂のフラットヤーンを原糸とした基布が用いられる。
【0042】
上述したフラットヤーンを原糸とした基布が用いられる場合、その製造方法は特に限定されず、例えば、平織りや綾織り等の織組織として形成するか、又は織成すること無く経糸と緯糸を各々引き揃えて形成される。また、本体部60の強度を高めるべく、その他の熱可塑性樹脂より成るフラットヤーン、モノフィラメント、マルチフィラメント等が、経糸或いは緯糸として必要に応じて、基布の経、緯の融着を阻害しない範囲で打ち込まれてもよい。
【0043】
基布の打込密度は、トイレ使用時の汚物の内、少なくとも通常時の排泄物に含有する固分は透過しない程度であればよいが、本体部60の機械的強度を高く維持するためには、できるだけ高密度のものがよい。特に、本体部60には、回収物の重さに耐えるだけの強度が必要とされるので、基布の打込密度は、例えば、1000デニールのフラットヤーンを用いた場合、およそ縦14本/インチ、横14本/インチの範囲が好ましい。
【0044】
このように、ポリプロピレンやポリエチレン等のフラットヤーンを編織した基布を用いることで、本体部60の液分のろ過性能(透水性及びフィルタ性)や耐久性を向上できる。また、本体部60の嵩高性を低くして、コンパクトに折り畳むことができ、かつ軽量でその取り扱い性を向上できる。
【0045】
また、不織布が用いられる場合、かかる不織布の製造法は特に限定されず、例えば、スパンボンドで得られる長繊維不織布や、ニ−ドルパンチ法、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、及び水流絡合法等による短繊維不織布などが用いられる。
繊維素材としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の熱融着性ポリオレフィン系繊維、ナイロンやその共重合体等のポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコ−ル系繊維、及び炭素繊維などが用いられる。
なお、本体部60を不織布で形成する場合には、織編物等に比して強度が弱い。
【0046】
本体部60は、上述した基布等を単層で用いても、同種又は異種のシート素材を複数枚積層して用いてもよく、さらにはそれぞれが樹脂等でコ−テイングされていてもよい。本体部60の袋状内側に対向する最外層に、ろ過機能(透水性及びフィルタ性)を有しているフィルタが積層されてもよい。かかる最外層に積層されるフィルタは、汚物に含まれる固分によって、シート素材の目が潰れて透水性・フィルタ性が損なわれないように目付けや形状等が適宜設定される。
【0047】
また、本体部60は、その構成箇所に応じて異なる素材より形成されてもよく、例えば、本体部60の全体を上述した基布で形成しても、少なくともその一部を上述した基布で形成してもよい。また、その構成箇所に応じて異なる種類の基布、例えば、目付けの異なる基布等を用いて形成してもよい。
【0048】
本体部60の形状としては、上述した素材よりなる基布等を用いて、一端に開口部60aを有する袋状に形成される。具体的には、同形状に形成された一対の矩形の基布を中表に張り合わせ、短手側の一辺を除く他の辺を縫製し、各辺を縫成したのち裏返すことで成形される。本体部60の成形方法として、このように、「中表に張り合わせ」、「縫成し」、「その後に裏返す」ことで、加工が容易であるとともに、接合部での漏れを防止することができる。
縫製されない一辺に、開口部60aが形成される。特に、本実施例では、長手方向に長い形状とされることで、マンホール2の軸方向に沿って、マンホール2内に配置することができ、一回の設置で多量の汚物(固分)を回収することができる。
【0049】
本体部60の開口部60aは、略円形に開口させた状態で垂設され、かかる状態で開口部60aの直径R1が、マンホール2の内径R2よりも小さく、便器4の排出穴4aの内径R3よりも大きくなるように形成される(R3<R1<R2)(図2参照)。
【0050】
本体部60の容量(容積)として、1袋当たり200人〜250人分の屎尿(固分)を3日間程度、連続して処理可能な容量であるのが好ましい。通常、一日当たりの一般成人の屎尿排泄量が1.4l/日、さらに屎尿の排泄量の内、固分(ここでは簡便のため糞便のみとする)がおよそ0.1〜0.2l、液分(尿)がおよそ1.2lとされており、また、3日間でののべ排泄回数は600回〜800回分と試算される。本実施例の本体部60の容量は、このような屎尿等を十分に回収できるように調整される。
【0051】
図3に示すように、掛止具61は、本体部60の開口部60a側の縁部に沿って略等間隔に複数(本実施例では4個)取り付けられている。本実施例の掛止具61は、帯状部材が両端61a・61aを近づけるようにして曲げられた状態で、その両端61a・61aが本体部60に固定される。そして、掛止具61は、上述したように、マンホール蓋3の裏面に設けられた対応する掛止突起31に取り外し可能に掛止される。
このようにして、本実施例の本体部60は、マンホールトイレ1が組み立てられた状態では、この掛止具61を介してマンホール蓋3の下方に垂下される。そのため、マンホール蓋3ごと汚物回収具6を持ち上げることで、マンホール2内から汚物回収具6を回収することができ、汚物回収具6の回収作業が容易となる。
【0052】
掛止具61の素材としては、マンホール蓋3の下方に垂下され、トイレ使用時の汚物を回収した本体部60を支持するために必要な強力を有する素材であれば特に限定されず、ロープ素材や、ナイロン、アラミド、ケブラー等のベルト素材や金属製やゴム製のチェーンなどが用いられる。
【0053】
図3に示すように、口紐62は、開口部60aを閉止可能な閉止手段として構成されている。具体的には、口紐62は、開口部60aの周囲に形成される収納部60bに収納されて、両端部62a・62aのみが収納部60bから引き出されている。
このような構成とすることで、本体部60は、トイレ使用時の汚物を回収した後マンホール2から取り出して廃棄する際には、口紐62を縮径させるようにして結ぶことにより、開口部60aを閉止させておくことができる。そのため、マンホール2より汚物回収具6を取り出す際や、搬送する際などに、本体部60に回収したトイレ使用時の汚物(固分)が開口部60aからこぼれ落ちることがなく、回収作業が容易となる。
【0054】
図2及び図4に示すように、マンホールトイレ1が組み立てられた状態では、汚物回収具6は、開口部60aが、マンホール2の開口端2aに向けて開口された状態でマンホール2内に垂設される。具体的には、本体部60が、開口部60aがマンホール蓋3の挿通口3a及び便器4の排出穴4aと略同一軸心上に位置するようにして位置決めされ、マンホール2の略垂直方向に沿うようにして配設される。
【0055】
トイレ使用時の汚物は、便器4の排出穴4aからマンホール蓋3の挿通口3aを介して、マンホール2内に落下されて、開口部60aより本体部60に収容される(図4(a)参照)。トイレ使用時の汚物は、本体部60に収容されて堆積していき(図4(b)参照)、やがて、収容されたトイレ使用時の汚物の内、液分がろ過されてマンホール2の下方に排出され、固分が本体部60に回収される(図4(c)参照)。
【0056】
汚物回収具6は、トイレ使用時の汚物を回収した後は、マンホール蓋3ごと汚物回収具6を持ち上げられて、マンホール2内から引き上げられて、次いで、掛止具61に図示せぬリフタが掛止されて移動される。
【0057】
図1及び図5に示すように、本実施例のマンホールトイレ1は、組立/解体が可能なように構成されており、通常時は解体されて、マンホール2内に収容して保管される。
【0058】
具体的には、便器4を収納した便器収納袋40、テント5、及び汚物回収具6は、マンホール2の内壁に設けられた掛止突起21に掛止されて、マンホール2内に垂下した状態で保管される。便器4及びテント5は、各部品に分解され、特に、便器4はトイレットペーパ等を含むペーパ製品とともに便器収納袋40に入れられた状態で、マンホール2の係止突起21に掛止される。汚物回収具6は、本体部60が小さく折り畳まれて、掛止具61がマンホール2の掛止突起21に取り外し可能に掛止されることで、マンホール2の内壁に沿って垂下した状態で保管される。
【0059】
災害時には、マンホール蓋3が開けられて、マンホール2内からそれぞれ便器4(便器収納袋40)、テント5、及び汚物回収具6が取り出される。次いで、上述したように、マンホール2の地上側開口端2aに便器4が組み立てられ、便器4の周囲を囲繞するようにしてテント5が組み立てられ、汚物回収具6がマンホール2内に配置されるマンホールトイレ1が組み立てられる(図1参照)。
【0060】
このように、このように汚物回収具6を保管することで、災害時には、マンホール2から汚物回収具6を容易に取り出すことができ、マンホールトイレ1を迅速かつ容易に組み立てることができる。
【0061】
以上のように、本実施例の汚物回収具6は、災害時に、マンホール2の地上側開口端2aに便器4を組み立てて使用するマンホールトイレ1に用いられ、該便器4より排出されたトイレ使用時の汚物を回収する汚物回収具6であって、マンホール2内に配置され、回収したトイレ使用時の汚物の内、液分をろ過し、固分を収容する本体部60を具備してなるため、簡易な構成で、トイレ使用時の汚物を効率よく回収して、従来の汚物タンク等の汚物回収具と比べて、マンホールトイレ1の長期・多人数の使用が可能となる。
【0062】
すなわち、汚物回収具6によって、便器4の排出穴4aから排出されたトイレ使用時の汚物は、一旦、本体部60の開口部60aを介して回収された後、液分のみがろ過され、固分が本体部60に残渣として収容される。そのため、汚物(固分)がマンホール内に堆積することがないため、汚物回収具6を交換さえすれば、トイレ機能を停止させることなく継続して使用することができる。また、この汚物回収具6を用いることで、一箇所のマンホールトイレ1で繰り返し回収作業を行うことができ、災害時のトイレの絶対数不足を回避することができる。
【0063】
また、災害時に下水管や暗渠などが破損等して水を確保することができない状況であっても、汚物がマンホール2内に堆積して固形化することがないため、下水復旧工事が支障をきたすことがない。また、回収した汚物(固分)は、汚物回収具6を交換することでマンホール2内より容易に回収することができ、その作業効率を向上できる。
【0064】
また、本実施例の汚物回収具6は、マンホール2内で垂設された状態で、トイレ使用時の汚物の内で固分のみを回収するため、回収した固分を乾燥させることができる。そのため、使用後の汚物回収具6の回収作業が容易である。
【0065】
さらに、災害時には、ペットボトル等のトイレ使用時の汚物以外の固分がマンホール2内に排棄されることが多いが、本実施例の構成とすることで、かかる固分の分別作業が容易となる。
【0066】
なお、本実施例の汚物回収具6の構成及びその保管方法は、上述した実施例に限定されない。
【0067】
すなわち、マンホールトイレ1が組み立てられた状態で、汚物回収具6の本体部60内に、汎用の防臭剤や殺菌剤等を混在させてもよい。消臭剤等を混在させることで、衛生的であり、かつ運搬時にも悪臭を発生することがないため好ましい。
【0068】
本体部60の形状としては、四角柱や円柱形状に形成されてもよい。また、上下方向中間部から下端に向かって先細りテーパ状となるように形成されてもよい。このように本体部60が先細りテーパ状に形状されることで、目詰まりを防止しつつ、本体部60に収容されたトイレ使用時の汚物が荷重を受けて、そのろ過機能を向上できる。テーパ形状としては、直線的に先細り状に形成されてもよく、段階的に先細り状に形成されてもよい。
【0069】
上述した実施例の汚物回収具6は、本体部60に掛止具61が設けられるが(図3等参照)、例えば、本体部60に掛止具61を設ける代わりに、マンホール蓋3(の掛止突起31)に本体部60を直接掛止させてもよい。また、マンホール蓋3に、同様の掛止具を設け、これを本体部60に設けた係止突起部に掛止するような構成としてもよい。
【0070】
上述した実施例の汚物回収具6は、マンホールトイレ1が組み立てられた状態で、マンホール蓋3の下面に設けられた掛止突起31に掛止されることでマンホール2内に垂設されるが(図2参照)、例えば、図6に示すように、マンホール2の内壁に設けられた掛止突起21に掛止されることでマンホール2内に垂設されてもよい。かかる場合には、マンホール蓋3には掛止突起31が設けられない。
このように、本体部60を、マンホール2の内壁に設けられた掛止突起21に取り外し可能に掛止させて、マンホール2内に垂設されるように構成することで、既存のマンホール2に掛止突起21を打ち込むだけで汚物回収具6を垂設することができるため、設置効率がよい。また、汚物回収具6をマンホール2より取り出す際には、マンホール蓋3に荷重が掛からないので、これを容易に開口端2aから取り外すことができ、汚物回収具6の回収作業が容易となる。
【0071】
また、上述した実施例では、マンホール蓋3に掛止突起31・31・・・が設けられるが、例えば、図7に示すように、掛止突起31・31・・・を、マンホール2の開口端2aに嵌合して取り付けられるマンホール蓋3の枠体3bに設けられてもよい。かかる場合には、汚物回収具6は、マンホール蓋3ではなく枠体3b側(固定側)に設けられるため、汚物回収具6を安定して取り付けることができる。
【0072】
掛止具61は、その配置や個数等は特に限定されず、対応する各掛止突起21・31の配置や個数等も特に限定されない。例えば、図8に示すように、掛止具61・61が2個設けられてもよい。かかる場合には、一組のひも状部材の両端61a・61aが本体部60の開口部60aに固定される。そして、一の掛止具61が、対応する2個の各掛止突起21・31に掛止可能とされる。
【0073】
上述した閉止手段としては、口紐62の他に、ファスナや粘着テープ等を用いることができる。
【0074】
上述した実施例の汚物回収具6等の保管方法では、マンホール2の内壁に設けられた掛止突起21に掛止具61が掛止された状態で保管されるが(図5参照)、例えば、上述したマンホール蓋3に設けられた掛止突起31に掛止された状態で保管してもよい。
【0075】
特に、汚物回収具6等の保管方法としては、汚物回収具6の本体部60に、予め、便器4の他にトイレ使用時に姿勢を保持するための把持具や、ネジやボルト等の組立部品などを含む便器部材、テント5の他にこれらの組立部品(例えば、杭やボルト等)などを含むテント部材、トイレットペーパ等を含むペーパ製品、及び生理用品等を含むサニタリー製品の内、少なくとも1種以上又はその一部を収納した状態で、かかる汚物回収具6をマンホール2内に垂下して保管してもよい。
このように保管することで、マンホールトイレ1の構成部材の保管が容易となるとともに、災害時には、マンホール2から汚物回収具6を取り出すことで、一度に多数の構成部材を取り出すことができ、マンホールトイレ1を迅速に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本実施例の汚物回収具が用いられるマンホールトイレの全体的な構成を示した側断面図。
【図2】汚物回収具を垂設した状態のマンホールトイレの側断面図。
【図3】汚物回収具の開口部近傍の構造を示した側面図。
【図4】汚物回収具によってトイレ使用時の汚物を回収する様子を示した状態図。
【図5】汚物回収具等を保管した状態を示したマンホールの側断面図。
【図6】別実施例の汚物回収具を垂設した状態のマンホールトイレの側断面図。
【図7】別実施例の汚物回収具を垂設した状態のマンホールトイレの側断面図。
【図8】別実施例の汚物回収具の開口部近傍の構造を示した側面図。
【符号の説明】
【0077】
1 マンホールトイレ
2 マンホール
2a 開口端
3 マンホール蓋
4 便器
5 テント
6 汚物回収具
60 本体部
60a 開口部
61 掛止具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害時に、マンホールの地上側開口端に便器を組み立てて使用するマンホールトイレに用いられ、該便器より排出されたトイレ使用時の汚物を収容するマンホールトイレ用の汚物回収具であって、
マンホール内に配置され、収容したトイレ使用時の汚物の内、液分をろ過し、固分を回収する本体部を具備してなることを特徴とするマンホールトイレ用の汚物回収具。
【請求項2】
前記本体部は、一端に開口部を有する袋状に形成され、該開口部よりトイレ使用時の汚物が収容されることを特徴とする請求項1に記載のマンホールトイレ用の汚物回収具。
【請求項3】
前記本体部は、マンホール蓋の下面に取り外し可能に掛止されて、マンホール内に垂設されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマンホールトイレ用の汚物回収具。
【請求項4】
前記本体部は、マンホールの内壁に取り外し可能に掛止されて、マンホール内に垂設されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマンホールトイレ用の汚物回収具。
【請求項5】
前記本体部は、少なくとも一部がポリプロピレン又はポリエチレンのフラットヤーンを原糸とした基布より形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のマンホールトイレ用汚物回収具。
【請求項6】
前記本体部は、前記開口部を閉止可能な閉止手段が設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のマンホールトイレ用の汚物回収具。
【請求項7】
前記請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のマンホールトイレ用の汚物回収具を、マンホール内に垂下した状態で保管することを特徴とするマンホールトイレ用の汚物回収具の保管方法。
【請求項8】
前記本体部に、便器部材群、便器の周囲を囲繞するテント部材群、ペーパ製品群、及びサニタリー製品群の内、少なくとも1種以上の群又は群の一部を収納した状態で保管することを特徴とする請求項7に記載のマンホールトイレ用の汚物回収具の保管方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−136223(P2007−136223A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2007−35343(P2007−35343)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【出願人】(000167820)広島化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】