説明

マンホール用便座装置

【課題】地震、災害等で便所が使用できなくなった際に、屋外に点在しているマンホールを活用して用便が容易に行なえ、不使用時には面状に折り畳んで効率良く収納できるマンホール用便座装置を得る。
【解決手段】上部後方に向かって延びる枠状の主フレーム4の上下中間部に、後下方に向かって延びる後部脚5を前後回動可能に連結し、主フレーム4の上下中間部と後部脚5の上部とに環状の座フレーム7を水平配置して回動可能に連結し、座フレーム7に環状の便座10を載置するとともに該便座10の後部を座フレーム7の後部に回動可能に連結し、座フレーム7に可撓性資材からなる筒状の便シュート13を下方に向けて懸垂支持し、マンホール25よりも広面積であってかつ中心部に便孔16が形成されたベース板15を設け、該ベース板15に主フレーム4の下部を回動可能に連結するとともに、便シュート13の下部を便孔16に嵌合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外のマンホールを活用して用便が行なえるようにしたマンホール用便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として特許文献1があった。即ち、折畳み式椅子の座部に取り付け穴を形成し、該取り付け穴にバケツ状の便槽を着脱可能に嵌合支持し、座部の上面に用便穴がくり抜かれた座面用基板を載置するとともに、該座面用基板を座部の前端部に上方に向けて揺動自在に連結し、前記座面用基板の上面に前記用便穴を覆うように座面用クッションを着脱自在に設けてなるポータブルトイレがあった。
【0003】
前記特許文献1は、ベッドサイド、寝床、寝室等、便所以外の室内でトイレとして手軽に使用でき、また、不使用時には折り畳んで収納が容易となる。しかしながら、排泄物を座部に取り付けた便槽で受けるため、該便槽で受けた排泄物の異臭が周囲に洩れ、環境を損ねることになる。また、便槽で受けた排泄物の処理、該処理した後の便槽の清掃に手数を要するものであった。
【特許文献1】特許第3465229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、地震、災害等で便所が使用できなくなった非常時に、屋外に点在しているマンホールを活用して用便が容易に行なえ、不使用時には面状に折り畳んで防災小屋、倉庫等に効率良く収納できる新規なマンホール用便座装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記目的を達成するために以下の如く構成したものである。即ち、請求項1に係る発明は、下部から上部後方に向かって延びる枠状の主フレームの上下中間部に、後下方に向かって延びる後部脚を前後回動可能に連結し、前記主フレームの上下中間部と前記後部脚の上部とに環状の座フレームを水平配置して回動可能に連結し、前記座フレームに環状の便座を載置するとともに該便座の後部を前記座フレームの後部に回動可能に連結し、前記便座を覆う便座カバーを設けるとともに該便座カバーの後部を前記便座の後部に回動可能に連結し、前記座フレームに可撓性資材からなる筒状の便シュートを下方に向けて懸垂支持し、マンホールよりも広面積であってかつ中心部に便孔が形成されたベース板を設け、該ベース板に前記主フレームの下部を回動可能に連結するとともに、前記便シュートの下部を前記便孔に嵌合させる構成にしたものである。
請求項2に係る発明は、前記ベース板の便孔を下面側から開閉する開閉蓋を設け、該開閉蓋と便座カバーとを同期させて連結する連動具を設けたものである。
請求項3に係る発明は、前記ベース板にマンホールと係脱可能な係合具を設けたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明は、蓋を除去したマンホールにベース板を載置すると、便シュートの下部がマンホール内に臨むとともに、前記ベース板がマンホールの周囲を閉塞し、便座カバーが便シュートの周壁を介して前記マンホールの中心部を閉塞する。この状態で便座カバーを開き、便座に腰掛けて排便すると、便が便シュートを通過して前記マンホール内に落下する。また、男性が前記便座カバー及び便座を開いて小便すると、該小便が便シュートに案内されてマンホール内に流下する。このため、排泄物の処理が不要になるとともに、排泄物の異臭が外部に放散しなくなり、環境を損ねることがなくなる。
【0007】
次に、マンホール用便座装置を防災小屋、倉庫等に収納する際には、座フレーム、便座及び便座カバーを上方に回動させるとともに、後部脚を前方に回動させると、これらが主フレームに沿って重なる。この状態で主フレームをその下部を中心として後方に回動させると、該主フレームがベース板に重なる。また、便シュートをベース板に沿って面状に変形させる。これにより、マンホール用便座装置が面状に折り畳まれ、これを防災小屋、倉庫等に小スペースで収納することができる。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、便座カバーを開く方向に回動させると、開閉蓋が連動具を介して開作動され、これにより用便が可能となる。また、前記便座カバーを閉じる方向に回動させると、開閉蓋が連動具を介して閉作動される。これにより、マンホール内の臭気の漏洩が防止される。
【0009】
本発明の請求項3に係る発明は、ベース板が係合具によってマンホールに係合されるので、ベース板が風、振動等の外部負荷によってマンホールから不用意に離脱することがなくなり、安全性が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図において、図1はマンホールへの取り付け状態を示す断面図、図2はベース板の平面図、図3は拡開した便座本体部の斜視図、図4は図3の右側面図、図5はテントによる包囲状態を示す斜視図である。
【0011】
図1〜図4において、1はマンホール用便座装置であり、便座本体部2、及びベース板15を主要部として構成される。便座本体部2は図1、図3、図4に示すように、金属パイプ製の折畳みフレーム3に便座10、便座カバー12、及び便シュート13を取り付けてなる。前記折畳みフレーム3は、パイプ材を折り曲げて上下に長い長方形状の主フレーム4を形成し、該主フレーム4の左右杆4aの上下中間部に左右一対の棒状の後部脚5を、リンク6を介して前後(図4において左右)回動可能に連結する。即ち、主フレーム4とリンク6の前端部、及び該リンク6の後端部と後部脚5の上端部とを、左右に配置した水平ピンP1,P2によりそれぞれ回動可能に連結する。なお、前記後部脚5はパイプ材をU形に折り曲げ、その左右上端部を、前記リンク6を介して主フレーム4に回動可能に連結するようにしてもよい。
【0012】
また、パイプ材を折り曲げて長方形状の座フレーム7を形成し、該座フレーム7を水平配置して前記主フレーム4の上下中間部と前記後部脚5の上部とに、前記水平ピンP1、P2の下方に位置する左右の水平ピンP1、P2により回動可能に連結する。これにより、前記座フレーム7を、水平ピン3を中心として上方に回動させ、主フレーム4の上部側に重ねると、前記後部脚5が水平ピンP4を中心として前方に回動し、主フレーム4の下部側に重なるようにする。
【0013】
前記座フレーム7に環状の便座10を載置し、該便座10の後部を左右の水平ピンP5により前記座フレーム7の後部に回動可能に連結し、また、前記便座10の上部に便座カバー12を載置し、該便座カバー12の後部を前記水平ピンP5と略同軸の水平ピンにより前記便座10の後部に回動可能に連結する。
【0014】
前記座フレーム7に可撓性資材(例えば塩化ビニール)からなる筒状の便シュート13を下方に向けて懸垂支持する。該便シュート13は、図1に示すように、市販の便器形状に対応する如く、前部側から後部側の下部に向かって小径に絞り、下端部13aが後述するベース板15の便孔16に嵌合可能とする。
【0015】
15はベース板であり、前記便座本体部2を支持するとともに、マンホール25を閉塞するものある。該ベース板15は厚さ約15mmのベニヤ板により形成されるもので、図2に示すように、前後幅W1が約1200mm、左右幅W2が約900mmとなる長方形状とし、後端から約550mmの位置で前後に2分割するとともに、両者を蝶番22で折畳み可能に連結する。また、後部板15aに前後幅L1が約250mm、左右幅L2が約150mmとなる楕円状の便孔16を形成する。該便孔16はベース板15の中心から後部側に偏倚させる。本例では、便孔16の中心がベース板15の後端から約375mmの位置となるようにする。
【0016】
前記ベース板15の中心部に前述した便座本体部2を前後に向けて載置するとともに、その主フレーム4の下部杆4aを連結具8によりベース板15に左右軸心を中心として回動可能に連結し、前記便座本体部2の便シュート13の下端部13aを前記ベース板15の便孔16に嵌合させる。
【0017】
前記ベース板15の下面内周部に、マンホール25の内周面に係合する4個のガイド17を円周方向に配置して固定する。また、ベース板15の外周部にマンホール25の内周に対応する2個の係合具18を取り付ける。該係合具18は、マンホール25の内周に形成されたリング状の鉤溝26(図1)に係脱するもので、図1に示すように、ベース板15に操作軸18aを貫通させ、上部の露出部に操作レバー18bを固定し、下部の露出部にレバー形の第1係合爪18c,及び第2係合爪18dを上下にずらせて固定する。
【0018】
前記第1係合爪18c、第2係合爪18dは、鉤溝26の深さが異なるマンホールに対応させるもので、互いに円周方向に90度位相をずらせて固定し、操作レバー18bを基準点から一方に回動させると、第1係合爪18cが浅い鉤溝26を有する種類のマンホールに係合し、前記操作レバー18bを基準点から他方に回動させると、第2係合爪18dが深い鉤溝26を有する種類のマンホールに係合するようになっている。
【0019】
前記ベース板15の下面に便孔16と対面する開閉蓋19を配置し、その後端部を蝶番20によりベース板15に回動可能に取り付ける。該開閉蓋19は前記便孔16よりも若干広面積にし、便孔6を下面から閉塞可能とする。前記開閉蓋19と前述した便座カバー12とをワイヤからなる連動具21により連結する。即ち、連動具21の下端を蝶番20の前部側に位置する開閉蓋19に連結し、該連動具21の上端部を水平ピンP5の前部側に位置する便座カバー12の後部上面に連結する。これにより、前記便座カバー12を開閉させると、これと連動して開閉蓋19が開閉するようにする。
【0020】
前述した便座本体部2は、図5に示すように、テント30により包囲する。該テント30は、可撓性のシートをバネ線材により角錐状に保形し、前面30aをファスナー31により開閉可能とし、左右側面の上部に通気性のネット32を逢着してなる。33はテント内に取り付けたトイレットペーパーである。前記テント30は、その4隅部を棒状の留め具34によりベース板15に係脱可能に固定する。
【0021】
前記実施例によれば、マンホール25の蓋を除去し、該マンホール25にベース板15を載置し、係合具18の操作レバー18bを係合方向に操作すると、一方の係合爪、例えば第1係合爪18cがマンホール25の鍵溝26に係合し、前記ベース板15がマンホール25に固定される。次いで、折畳みフレーム3の主フレーム4を下部杆を中心として上方に回動させるとともに、座フレーム7を水平ピンP3を中心として前方(水平)に回動させると、後部脚5が水平ピンP4を中心として後方に回動し、折畳みフレーム3が図1に示すように、ベース板15上で椅子状に拡開する。
【0022】
この状態で便座カバー12を上方に開作動させると、開閉蓋19が連動具21を介して開作動され、これにより用便が可能となる。また、前記便座カバー12を閉作動させると、前記開閉蓋19が連動具21を介して閉作動され、該開閉蓋19によりマンホール25内の臭気が便座本体部2から外部に漏洩するのを防止する。
【0023】
次に、マンホール用便座装置1を防災小屋、倉庫等に収納する際には、座フレーム7、便座10及び便座カバー12を上方に回動させるとともに、後部脚5を前方に回動させると、これらが主フレーム4に沿って重なる。この状態で主フレーム4をその下部を中心として後方に回動させると、該主フレーム4がベース板15に重なり、これに伴って 便シュート13がベース板15に沿って面状に変形される。
【0024】
次いで、係合具18の操作レバー18bを離脱方向に操作すると、前記第1係合爪18cがマンホール25の鍵溝26から外れ、前記ベース板15がマンホール25から離脱する。次いで、前記ベース板15を蝶番20を介して前後に折り畳む。これにより、マンホール用便座装置1が面状に折り畳まれ、これを防災小屋、倉庫等に小スペースで収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】マンホールへの取り付け状態を示す断面図である。
【図2】ベース板の平面図である。
【図3】拡開した便座本体部の斜視図である。
【図4】図3の右側面図である。
【図5】テントによる包囲状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 マンホール用便座装置
2 便座本体部
3 折畳みフレーム
4 主フレーム
4a 左右杆
4b 下部杆
5 後部脚
6 リンク
7 座フレーム
8 連結具
10 便座
12 便座カバー
13 便シュート
13a 下端部
15 ベース板
16 便孔
17 ガイド
18 係合具
18a 操作軸
18b 操作レバー
18c 第1係合爪
18d 第2係合爪
19 開閉蓋
20 蝶番
21 連動具
25 マンホール
26 鉤溝
30 テント
30a 前面
31 ファスナー
32 ネット
33 トイレットペーパー
34 止め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部から上部後方に向かって延びる枠状の主フレーム(4)の上下中間部に、後下方に向かって延びる後部脚(5)を前後回動可能に連結し、前記主フレーム(4)の上下中間部と前記後部脚(5)の上部とに環状の座フレーム(7)を水平配置して回動可能に連結し、前記座フレーム(7)に環状の便座(10)を載置するとともに該便座(10)の後部を前記座フレーム(7)の後部に回動可能に連結し、前記便座(10)を覆う便座カバー(12)を設けるとともに該便座カバー(12)の後部を前記便座(10)の後部に回動可能に連結し、前記座フレーム(7)に可撓性資材からなる筒状の便シュート(13)を下方に向けて懸垂支持し、マンホールよりも広面積であってかつ中心部に便孔(16)が形成されたベース板(15)を設け、該ベース板(15)に前記主フレーム(4)の下部を回動可能に連結するとともに、前記便シュート(13)の下部を前記便孔(16)に嵌合させたことを特徴とするマンホール用便座装置。
【請求項2】
ベース板(15)の便孔(16)を下面側から開閉する開閉蓋(19)を設け、該開閉蓋(19)と便座カバー(12)とを同期させて連結する連動具(21)を設けたことを特徴とする請求項1記載のマンホール用便座装置。
【請求項3】
ベース板(15)にマンホールと係脱可能な係合具(18)を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のマンホール用便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−161512(P2008−161512A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355507(P2006−355507)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(591235902)株式会社アオノ (6)
【Fターム(参考)】