説明

マーカーフリーのトランスジェニック植物を作る方法

本発明は、アグロバクテリウムを用いる植物形質転換の分野に関する。極端に高い同時形質転換法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の形質転換の分野、トランスジェニック植物細胞および植物を作るための方法、マーカーフリー(marker free)のトランスジェニック植物を作るための方法に関する。アグロバクテリウム ツメファシエンスまたはアグロバクテリウム リゾゲネスの株を用いて植物細胞を効率的に同時形質転換する方法が提供される。また、前記方法に使用するため適切なアグロバクテリウムの株が提供される。
【0002】
[背景技術]
1980年代以降、害虫, 除草薬または苛酷な環境条件への抵抗性(いわゆる、作物生産の間に農家に有益な「入力形質(input traits)」)のみならず、栄養または健康の価値の改善(例えば、ゴールデンライス, 低リノレン酸ダイズ, など) (いわゆる、消費者および加工産業に有益な「出力形質(output traits)」)などの様々な目的のために遺伝子組換え(Genetically modified)または「トランスジェニック」の植物が開発された。安全性について論争されてきたが、新しいトランスジェニック植物が開発されており、新しい価値を加えられた形質が今後市場にでまわるだろうことが予想される。
【0003】
選択可能なマーカー遺伝子を使用することは外来性のDNAが導入された植物細胞を選択するために遺伝子組換え植物の作製に不可欠であるが、GM植物が再生(regenerated)された後に選択可能なマーカー遺伝子(一般に、抗生物質抵抗性遺伝子または除草剤抵抗性遺伝子)は痕跡(obsolete)となる。GM 植物に選択可能なマーカー遺伝子が連続的に存在することは、幾つかの理由のため望ましくない。遺伝子組換え生物(GMOs)の安全性について公で論議された結果、抗生物質抵抗性の選択可能なマーカー遺伝子はGMOsの承認に関して好ましくは存在すべきではないことを述べているガイドライン(EU 指令 2001/18 EC)が策定された。また、現存のGMOの付加的な所望の遺伝子(GOI)での新しい遺伝的な形質転換への期待には、選択可能なマーカー遺伝子が存在しないこと〔または、遺伝子スタッキング(gene stacking)を導く代替のマーカー遺伝子の使用〕が必要とされており、これにより新しい形質転換サイクルにおける同一の選択マーカーでの選択において新しいラウンド(new round)が許容される。
【0004】
選択マーカーを排除するため最も直接的なアプローチは、形質転換した植物細胞 および所望の遺伝子(GOI)を選択するため使用される選択マーカーを二つの別のT-DNAs(通常、二つのアグロバクテリウムの株)に配置する同時形質転換(co-transformation)と称される方法を適用することである。二つのT-DNAsは、同時(simultaneously)に植物細胞に導入されるが、互いに独立に植物の核ゲノムにおける異なる座位に統合される。交配(crossing)に際して、両方の遺伝子は引き続いて次の世代で隔離(segregate)し、GOIのみを有するGM 植物を選択できる。しかしながら、このプロセスにおいて、多くの植物は選択可能なマーカー遺伝子のみ得られる。というのも、所望の遺伝子は、植物の形質転換および再生の過程で選択されないからである。同時形質転換における挑戦は、両方の遺伝子を含んでいる形質転換した植物細胞(即ち、両方の遺伝子で同時形質転換されている同じ植物細胞)を高いパーセンテージで得ることである。現存の同時形質転換法で、両方の遺伝子を含んでいる植物細胞のパーセンテージ(即ち、同時形質転換効率)は低い。というのも、多くの細胞がマーカー遺伝子を有するT-DNAのみを受け取り、GOIを有するT-DNAを受け取らないからである。効率は、50%以下である。図 4Aも参照されたい。
【0005】
同時形質転換に関するより詳細な情報は、文献〔De Block et al. (1991) Theoretical Applied Genetics 82: 257-263), Depicker et al. (1985) Molecular General Genetics 201: 477-484; Matthews et al. (2001) Mol. Breeding 7:195-202; Daley et al (1998) PlantCell Rep. 17:489-496; McKnight et al (1987) Plant Molecular Biol. 8:439-445; および De Framond et al (1986) Mol.Gen.Genet. 202:125-131〕をも参照されたい。
【0006】
アグロバクテリウム媒介性形質転換(Agrobacterium-mediated transformation)の同時形質転換効率の幾つかの改善が記載される。例えば、Japan Tobaccoは、スーパーバイナリー(superbinary)ベクターを用いて同時形質転換の原理を適用するための独特のアプローチを開発し、タバコ および イネにおいて47%の同時形質転換された植物が得られた(Komari et al., 1996, Plant J. 10-165-174; US 5,731,179)。Gent 大学の研究者(De Buck et al., 1998, Mol. Plant. Microbe Interact 11: 449-457)は、最大50%の同時形質転換をシロイヌナズナで報告したが、頻繁に同じ座位での両方のT-DNAsの共統合(co-integration)も見つけられた。これらの全てのケースにおいて、同時形質転換は、二つの機能的なアグロバクテリウム株を同時に適用することで行われた(即ち、単独で使用された際に各株はT-DNAを植物細胞に転移(transfer)でき、核の植物ゲノムへの転移および統合が促進される)。しかしながら、全体の効率は低いか予測不可能のままであり、面倒で高価なものとなっている。そのため、一般に他の形質転換法が、当該技術において使用される(例えば、選択可能なマーカーおよびGOIが物理的にT-DNAに連結され、T-DNAの一つの断片上で植物細胞に移される伝統的な方法)。それゆえ、マーカー遺伝子を有していることが選択される全ての形質転換した細胞は、GOIも含むのであるが、マーカー遺伝子の除去はより困難となる。マーカー遺伝子は、それから引き続いて植物ゲノムから部位特異的組換え(例えば、Cre - loxまたはFLP - frtシステムを用いる)を用いる切除によって除去される(ポスト-形質転換)。他の代替は、例えば、選択マーカーを全く有さない転移因子または形質転換の使用である(EP1279737)。De Vetten等〔De Vetten et al. (2003) Nature Biotechnol. 21:439-442〕をも参照されたい。
【0007】
このように高い同時形質転換効率(理想的には、100%に近づく)の同時形質転換法が必要とされる。このような極端に高い効率の同時形質転換法が、本出願で提供される(前記方法に使用するため適切な株として)。
【0008】
アグロバクテリウム株は、オピン合成およびオピンカタボリズム領域, Vir タンパク質をコード化している遺伝子を含んでいるビルレンス領域およびT-DNA 領域を含むTi-プラスミドを含む。アグロバクテリウム媒介性の植物形質転換の間、傷から放出された化学物質(例えば、フェノール化合物および糖)がアグロバクテリウムのVirA 膜貫通タンパク質により認識される。次に、VirA タンパク質は、VirG タンパク質をリン酸化して、vir 領域の他のビルレンス 遺伝子の転写を活性化する。
【0009】
VirD1 および VirD2 タンパク質はボーダーを切断し、VirD2はライトボーダー(RB)に共有結合で結合したまま残る。VirB および VirD4 タンパク質は、T-DNA/VirD2 複合体を植物細胞へ輸送するための線毛(pili)を形成する。VirE1 タンパク質は、VirE2 タンパク質に結合し、T-複合体と別に、VirE1 タンパク質がVirE2 タンパク質を放出する植物の細胞質へ共に輸送される。次に、VirE2 タンパク質は、一本鎖の (ss) T-DNAをコートして、T-DNAをヌクレアーゼから防御する。完全なT-複合体が核(ここでVirE2は核膜にチャンネルを形成して、T-複合体の核へのインポートに適応する)へ輸送される。核中でVirD2は、植物ゲノムにおけるT-DNAの統合に関与する。上記のプロセスは、図 3に説明される〔Zhu et al, 2000, Journal of Bacteriology 182(14):3885-3895〕。
【0010】
定 義
「形質転換(Transformation)」および「形質転換した(transformed)」は、DNA〔一般に、キメラの所望の遺伝子 (GOI)を含んでいるDNA〕を植物細胞の核ゲノムへ転移して、「トランスジェニック」植物細胞および導入遺伝子(transgene)を含んでいる植物を作出することを意味する。宿主植物自身からのDNA配列のみが導入される所謂「シス-ジェネシス(cis-genesis)」による所謂「シス-ジェニック(cis-genic)」植物の作出も、「形質転換」と理解すべきである。導入されたDNAは、一般(必ずしもそうとは限らないが)に宿主植物ゲノムに統合される。DNA統合が起こらない状況は、例えば、遺伝子サイレンシングのための二本鎖のRNAを産生する逆方向反復構築物(inverted repeat constructs)の使用,または一時的に植物細胞に投与されて永続的(permanent)な効果が得られるジンクフィンガーヌクレアーゼまたは他の DNA 修飾酵素をコードするDNA配列の使用である。
【0011】
「トランスフェクション(Transfection)」および「トランスフェクト(transfect)」は、植物細胞へのT-DNA転移(植物の細胞質から核への転移に先行する工程)を参照するため使用される。
【0012】
本願の明細書等において「同時形質転換(Co-transformation)」は、植物細胞を一つはGOIを含んでおり、他は選択可能なマーカー遺伝子を含んでいる二つの分離したT-DNAsで同時(simultaneous)に形質転換することを参照する。本発明によると、二つのT-DNAsは、二つの別々のアグロバクテリウム株に存在する。
【0013】
「同時形質転換効率(Co-transformation efficiency)」は、マーカー遺伝子を用いて選択された再生し、形質転換し、核のゲノムに統合された二つのT-DNAsの両方を含んでいる植物(形質転換体)のパーセンテージ(%数)を参照する。
【0014】
「(選択可能な)マーカーフリーの植物」または「マーカーフリーのトランスジェニック植物(marker free transgenic plant)」は、本願の明細書等において細胞のGOIが統合された核のゲノムを含んでいるが、形質転換体の子孫において隔離されている植物選択可能(またはスコラブル)なマーカー遺伝子を欠いているトランスジェニック植物を参照する。「子孫(Offspring)」または「子(descendents)」または「後代(progeny)」は、キメラ遺伝子(即ち、GOI)を保持する初代または自殖または交配で得られるさらなる世代であってもよい。
【0015】
「T-DNA」(または「転移-DNA」)または「人工的な又はキメラのT-DNA」は、ライトボーダー(RB) および レフトボーダー(LB) 配列を、何れかの終端(end)で含んでいる一本または二本鎖のDNAを意味する(またはGOIを転移するため使用される人工的なT-DNAの場合において少なくともRB 配列)。また、アグロバクテリウムのTi-プラスミドに見つけられる「天然(natural)」で内因性のT-DNA領域もT-DNAと称されるが、ライトおよびレフトボーダーの間の腫瘍誘導のための遺伝子を含む。植物の形質転換のため、これらの腫瘍誘導遺伝子 (tms および tmr 領域)が削除され、置換され、非機能的とされている「安全化した(disarmed)」アグロバクテリウム株が使用される。次に、植物細胞に移されるT-DNAは、一般に、プラスミドまたは他のベクターに、例えば、Ti-プラスミドに統合されないバイナリーベクターに、または相同的組換えで(安全化した)Ti-プラスミドに統合される同時統合ベクター(co-integrate vector)において安全化した株に導入される。
【0016】
アグロバクテリウム株 および Ti-プラスミドは、Ti-プラスミドのオピン遺伝子に基づいて異なるタイプに分類できる。Ti-プラスミドは、オピン合成遺伝子(T-DNA領域における) および/または オピンカタボリズム遺伝子 (Ti-プラスミドバックボーンにおける)、例えば、オクトピン, ノパリンまたはスクシナモピンの合成 および/または カタボリズム遺伝子を含んでもよい。このように、異なる「オピンタイプ(opine type)」のTi-プラスミドが存在する。
【0017】
本発明の「virE2 ヘルパープラスミド(virE2 helper plasmid)」は、アグロバクテリウムに導入でき、アグロバクテリウム Ti-プラスミドの少なくとも一つの virE2 遺伝子 および/または 少なくとも一つの 完全なvirE オペロンを含み、機能的な virE2 タンパク質を産生するプラスミドを参照する。
【0018】
「所望の遺伝子(GOI; Gene of interest)」は、植物細胞の核のゲノムに統合されるキメラ遺伝子を参照する。GOIは、所望のタンパク質または遺伝子サイレンシング構築物(gene silencing construct)をコード化してもよい。
【0019】
「virE2 ドナー 株(virE2 donor strain)」は、機能的な virE2 タンパク質を産生する能力があり、GOIを含んでいるT-DNAを導入される又は導入できるアグロバクテリウムを参照する。
【0020】
「virE2 変異体株(virE2 mutant strain)」は、機能的な virE2 タンパク質を産生する能力がない、選択可能なマーカー遺伝子を含んでいるT-DNAを導入される又は導入できるアグロバクテリウムを参照する。前記株自身は、単独で使用された場合に非病原性(形質転換した植物細胞を作ることができない)であるが、(病原性の) virE2 ドナー株と共に使用された場合に形質転換した植物細胞を作る能力がある。Ti-プラスミドにおける内因性のvirE2 遺伝子は、かように修飾され、機能的な virE2 タンパク質を産生しない。
【0021】
「プラスミド」および「ベクター」は、アグロバクテリウム属 および/またはDNA 操作および複製のため使用される他の細菌(例えば、E. coli)において機能的な複製開始点 (ori), 一または二以上の所望の遺伝子, 細菌宿主または植物宿主における選択のためのマーカー遺伝子などの特定の機能を含みえるDNA分子を参照するため本願の明細書等において互換的に使用される。植物の形質転換において一般に知られるプラスミドは、バイナリープラスミド(Ti-プラスミドに統合されず、植物に転移されるT-DNAを含む), スーパー-バイナリーベクター, ヘルパープラスミド, Ti プラスミド, Ti ヘルパープラスミド, などである。
【0022】
「Ti プラスミド」は、A. ツメファシエンスまたはA. リゾゲネス(後者において、それらは Ri プラスミドと称されるが、我々は本願の明細書等において単純に Ti プラスミドを使用して、両方のタイプのプラスミドを参照する)などのアグロバクテリウム属の種に見つけられた天然の Ti プラスミドまたはそれから由来し、腫瘍原性ではない(T-DNAの機能的な腫瘍誘導遺伝子を欠いている)が、Ti プラスミドのvir 領域を含む「安全化した」 Ti プラスミドなどの植物の形質転換に一般に使用されるTi プラスミドを参照する。一般的な総説に関して、Hooykaas および Beijersbergen (Ann Rev Phytopathol 1994, 32: 157-179またはWO00/18939)を参照されたい。以上のように、天然の Ti プラスミドは、アグロバクテリウム株に見つけられた大きい環状のDNA分子であり、ビルレンス (vir) 領域およびT-DNA 領域〔T-DNA 領域は、RB およびLB 配列に接し(flanked)、オーキシンおよびサイトカイニン産生および腫瘍形成を導く遺伝子を有する腫瘍誘導領域、腫瘍誘導領域の次にオピン合成領域を含んでいる〕、さらにオピンカタボリズム領域, 複製開始点および接合性転移領域(conjugative transfer region)を含む。
【0023】
その内因性のTi-プラスミドに関して矯正(cured)されたアグロバクテリウム株は、自身のTi-プラスミドが除去され、異なる Ti-プラスミドを導入できる株である。
【0024】
「LB」または「レフトボーダー」および「RB」または「ライトボーダー」配列または「T-DNA ボーダー」配列は、Ti-プラスミドのT-DNA領域に隣接する約 25 bpの短い ヌクレオチド 配列であり、アグロバクテリウムから植物細胞に移されるDNAのエンドポイント(end points)を規定する。ボーダー配列は、Gielen等〔Gielen et al. (1984, EMBO J 3,835-845)〕に記載される。RB および LB 配列は、マーカー遺伝子またはGOIを含んでいる人工的なT-DNAsに付与でき、例えば、プラスミドは、作動可能に連関されたRB ― 遺伝子(例えば、マーカー遺伝子またはGOI) ― LB(オプション)のDNA配列を含んでいてもよく、プラスミドに及び植物細胞または植物の形質転換のためのアグロバクテリウムに挿入されえる。
【0025】
「核酸配列」(または核酸分子)の用語は、一本または二本鎖の形態のDNAまたはRNA分子を参照する。
【0026】
「単離された核酸配列(isolated nucleic acid sequence)」は、細菌性の宿主細胞または植物の核ゲノムにおける核酸配列などの、もはや天然環境にない単離された核酸配列を参照する。
【0027】
「タンパク質」または「ポリペプチド」は、互換的に使用され、特定の作用様式, サイズ, 3-次元構造または起源と無関係にアミノ酸の鎖からなる分子を参照する。従って、タンパク質の「断片(fragment)」または「部分(portion)」は、なお「タンパク質」と参照されえる。「単離されたタンパク質(isolated protein)」は、インビトロまたは組換え型の細菌性または植物性の宿主細胞に存在するなどで、その天然の環境にもはやないタンパク質を参照するため使用される。
【0028】
「遺伝子(gene)」は、適切な転写調節性の領域(例えば、プロモーター)に作動可能に連関され、細胞中でRNA分子(例えば、mRNA)に転写される領域(転写された領域)を含んでいるDNA 配列を意味する。従って、遺伝子は、プロモーター, 翻訳開始に関与する配列などを含んでいる5' 非翻訳リーダー配列(翻訳開始コドンの上流の転写されたmRNA 配列に対応する5'UTRとも参照される), (タンパク質)翻訳領域(cDNAまたはゲノムの DNA)および転写終結部位およびポリアデニル化部位(例えば、AAUAAA又はそのバリアント)などを含んでいる3'非翻訳配列(3' 非翻訳領域,または3'UTRとも参照される)などの幾つかの作動可能に連関された配列を含みえる。
【0029】
「キメラ遺伝子」(組換え型の遺伝子)は、一または二以上の部分的な核酸配列が存在する特定の遺伝子において、通常天然で種に見つけられない、互いに天然で関連していない任意の遺伝子を参照する。例えば、プロモーターは、天然で転写される領域の部分または全てと又は別の調節領域と関連しない。「キメラ遺伝子(chimeric gene)」の用語は、プロモーターまたは転写調節配列が一または二以上のセンス配列(例えば、コード配列)またはアンチセンス(センス鎖の逆の相補物)または逆方向反復配列(センスおよびアンチセンス, そのRNA 転写物が転写に際して、二本鎖のRNAを形成する)に作動可能に連関された発現構築物を含むと理解される。
【0030】
「シス-ジェネシス(cis-genesis)」および「シス-遺伝子(cis-gene)」は、形質転換した又は密接に関連(性的に適合)する植物種の遺伝的な因子から構成される遺伝子を有するトランスジェニック植物または植物細胞の産生を参照する。シス-遺伝子は、そのイントロンを含み、その本来(native)のプロモーター および ターミネーターと通常のセンスの配向性(orientation)で接する。シス-ジェニック植物は、一または二以上のci-s遺伝子を保持(harbour)できるが、それらはキメラ遺伝子を含まない。本願の明細書等の全体で、キメラ遺伝子を用いることの代わりに又はキメラ遺伝子を用いることに加えて、シス-遺伝子も使用でき、この態様が本願の明細書等の全体に包含されることは明らかである。
【0031】
「トランスに(In trans)」は分離したDNA分子に存在することを参照し、「シスに(in cis)」は、同じDNA分子に存在することを参照する。例えば、アグロバクテリウム vir 遺伝子は、転移されるT-DNAに関連してアグロバクテリウム株にトランスに存在でき、他方でT-DNA ボーダー配列は接する所望の遺伝子に関連してシスである。
【0032】
「3' UTR」または「3' 非翻訳配列」(しばしば3' 非翻訳領域,または3’末端と参照される)は、転写終結点および(殆どであるが、全てではない真核生物のmRNAs)ポリアデニル化シグナル〔例えば、AAUAAA又はそのバリアント(variants)〕などを含む、遺伝子のコード配列の下流に見つけられる核酸配列を参照する。転写終結の後、mRNA転写物はポリアデニル化シグナルの下流で切断されえる。また、ポリ(A)テールが付加されてもよく、これはmRNAの細胞質(翻訳が生じる)への輸送に関与する。
【0033】
「遺伝子の発現」は、適切な調節領域(特に、プロモーター)に作動可能に連関されたDNA領域が、生物学的に活性〔即ち、生物学的に活性なタンパク質またはペプチド(または活性なペプチド断片)に翻訳される能力がある又はそれ自身活性である(例えば、転写後の遺伝子サイレンシングまたはRNAi)〕であるRNAに転写されるプロセスを参照する。特定の態様における活性タンパク質は、存在するリプレッサードメインが原因でドミナントネガティブ機能を有しているタンパク質を参照する。コード配列は、好ましくはセンス配向にあり、所望の, 生物学的に活性なタンパク質またはペプチド,または活性なペプチド断片(即ち、GOIでコードされたタンパク質またはペプチド)をコードする。遺伝子サイレンシングアプローチにおいて、DNA配列は、好ましくはアンチセンスで,またはセンスおよびアンチセンス配向(センスおよびアンチセンスRNAは、互いにハイブリダイズしてdsRNAまたはステム−ループ構造を形成できる)で標的遺伝子の短配列を含んでいるアンチセンス DNAまたは逆方向反復DNAの形態で存在する。「異所性発現(Ectopic expression)」は、遺伝子が通常発現されない組織における発現を参照する。
【0034】
「転写調節配列(transcription regulatory sequence)」は、本願の明細書等において、転写調節配列に作動可能に連関された核酸配列の転写の割合を制御する能力のある核酸配列と規定される。従って、本願の明細書等で規定される転写制御配列は、転写を維持するため及び制御するための転写の開始に必要な全ての配列因子(プロモーター因子)を含み、例えば、アテニュエータ(attenuators)またはエンハンサー, サイレンサーも含まれる。たいていはコード配列の (5')上流の転写調節配列が参照されるが、コード配列の(3')下流に認められる調節配列もこの規定で包含される。
【0035】
本願の明細書等における「プロモーター」の用語は核酸断片を意味し、該断片は、機能して一以上の遺伝子の転写をコントロールし、前記遺伝子の転写開始部位の転写の方向に対し(5')上流に配置され(転写開始は、配列のポジション+1と参照され、それと相対的に上流のヌクレオチドはマイナスの番号を用いて参照される)、DNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位、転写開始部位および任意の他のDNAドメイン(シス作動性配列)の存在により構造的に同定され、転写因子結合部位、リプレッサーおよびアクチベータータンパク質の結合部位、および当業者に既知の、プロモーターからの転写量を直接的または間接的に作用して制御するヌクレオチドの任意の他の配列を含むが、それらに限定されない。真核生物の転写開始(+1)の上流のシス作用性配列の例には、TATAボックス (一般に、転写開始部位の約 -20〜-30 のポジション), CAAT ボックス (一般に、転写開始部位に対し約 -75 のポジション), 5'エンハンサーまたはサイレンサ因子などが含まれる。「構成的な」プロモーターは、大抵の生理的な及び発生の条件下で、大抵の組織(または器官)において活性なプロモーターである。より好ましくは、構成的なプロモーターは、全ての主要な器官〔例えば、少なくとも葉, 茎(stems), 根, 種子, 果実および花〕における基本的に全ての生理的および発生の条件下で活性である。最も好ましくは、前記プロモーターは、全ての器官で大抵(好ましくは、全て)の生理的および発生の条件下で活性である。
【0036】
「誘導性」プロモーターは、生理的(例えば、特定の化合物の外部の適用により)又は発生的に制御されるプロモーターである。「組織特異的」プロモーターは、特定のタイプの組織または細胞においてのみ活性である。
【0037】
本願の明細書等に使用される、「作動可能に連関された(operably linked)」の用語は、機能的な関連性におけるポリヌクレオチド因子の連関を参照する。核酸が「作動可能に連関される」とは、それが別の核酸配列と機能的に関連付けられ配置された場合である。例えば、プロモーターまたは転写調節配列がコード配列に作動可能に連関されるとは、それが前記コード配列の転写に影響する場合である。作動可能に連関されるとは、連関されているDNA配列が典型的には近接し、領域をコード化している二つのタンパク質を連結することが必要な場合には、「キメラタンパク質」を産生するために近接し、読み枠内にあることを意味する。「キメラタンパク質(chimeric protein)」または「ハイブリッドタンパク質(hybrid protein)」は、それ自体として天然に見つけられないが、連結されて機能的なタンパク質を形成し、連結されたドメインの機能(例えば、DNA結合ドメインまたはドミナントネガティブな機能を導く機能ドメインの抑圧)を呈する様々なタンパク質「ドメイン」から構成されるタンパク質である。また、キメラタンパク質は、天然で生じる二または三以上のタンパク質の融合タンパク質であってもよい。本願の明細書等に使用される「ドメイン」の用語は、少なくともドメインの機能的な特徴を有する新しいハイブリッドタンパク質を提供するため別のタンパク質に移すことができる特定の構造または機能を有するタンパク質の部分またはドメインを意味する。
【0038】
「標的ペプチド(target peptide)」の用語は、タンパク質から細胞内のオルガネラ(例えば、プラスチド, 好ましくは葉緑体, ミトコンドリア),または細胞外間隙(分泌シグナルペプチド)を標的(target)とするアミノ酸配列を参照する。標的ペプチドをコード化している核酸配列は、タンパク質のアミノ末端の終端(N末端の終端)をコード化している核酸配列に(インフレームで)融合されてもよい。
【0039】
「核酸構築物」または「ベクター」または「プラスミド」は、本願の明細書等で、組換えDNA技術の使用から生じ、外因性DNAを宿主細胞に送達するため使用される人造(通常、環状)の核酸分子を意味すると理解される。
【0040】
ベクターバックボーン(vector backbone)は、例えば、当該技術分野において既知であり、本願の明細書等の他で記載される、バイナリーまたはスーパーバイナリーベクター(例えば、US 5,591,616, US2002138879およびWO 95/06722を参照されたい), 同時統合ベクター(Ti-プラスミドへと統合される)、またはT-DNAベクターであってもよく、そのなかにキメラ遺伝子が統合される又は適切な転写調節配列 / プロモーターが既に存在する場合、所望の核酸配列 (例えば、コード配列, アンチセンスまたは逆方向反復配列)のみが転写 調節配列 / プロモーターの下流に統合される。
【0041】
通常、ベクターは、選択可能なマーカー, マルチプルクローニングサイトなどの分子クローニングにおける使用を促進するための更なる遺伝的な因子を含む(以下の記載を参照されたい)。
【0042】
「宿主細胞(host cell)」または「組換え型の宿主細胞(recombinant host cell)」または「形質転換した細胞(transformed cell)」は、特に所望のタンパク質または転写の際に標的遺伝子/遺伝子ファミリーのサイレンシングのためのアンチセンスRNAまたは逆方向反復RNA(またはヘアピンRNA)を産出する核酸配列をコード化しているキメラ遺伝子を含んでいる少なくとも一つの核酸分子を前記細胞に導入した結果として生じる新しい個々の細胞(または生物体)を参照している用語である。宿主細胞は、好ましくは植物細胞であるが、細菌細胞(例えば、アグロバクテリウム属の株), 真菌細胞(酵母細胞を含む), などであってもよい。宿主細胞は、染色体外(extra-chromosomally)の(エピソーム)複製分子として核酸構築物,または宿主細胞の核に統合されるキメラ遺伝子を含んでもよい。
【0043】
「選択可能なマーカー(selectable marker)」または「スコラブルマーカー(scorable marker)」の用語は、当業者に馴染みのある用語であり、発現した場合に選択可能なマーカーを含んでいる細胞(a cell)または細胞(cells)を選択するため使用できる遺伝的な実体(genetic entity)を記載するため本願の明細書等において使用される、例えば、「植物選択可能なマーカー遺伝子」はその遺伝子を含んでいる植物細胞を選択するため使用できる。選択可能なマーカー遺伝子産物によって、例えば、抗生物質抵抗性,またはより好ましくは除草剤抵抗性または表現型の形質(例えば、色素の変化)または栄養要求性(nutritional requirement)などの別の選択可能な形質が与えられる。「レポーター(reporter)」の用語は、主に可視のマーカー, 例えば、緑色蛍光タンパク質 (GFP), eGFP, ルシフェラーゼ, GUSなどを言及するため使用される。
【0044】
「相同(homologous)」および「異種(heterologous)」の用語は、核酸またはアミノ酸の配列とその宿主の細胞または生物体(特に、トランスジェニック生物体)との間の関連性を参照する。それゆえ、相同的な配列は宿主の種において天然で見つけられ(例えば、トマト遺伝子で形質転換されたトマト植物)、異種性の配列は宿主細胞において天然で見つけられない(例えば、ジャガイモ植物からの配列で形質転換されたトマト植物)。
【0045】
本明細書及び請求項において、「含む(to comprise)」の動詞及びその変化形は、その単語につづく事項が含まれるが、具体的に言及されない事項が除外されない非限定的な意味で使用される。加えて、不定冠詞「a」または「an」による事項の参照によって、僅か一つの事項が存在することを明らかに必要とする文脈がないかぎり一を超える事項が存在する可能性が除外されない。従って、不定冠詞「a」または「an」は、通常「少なくとも一つ(at least one)」を意味する。本願の明細書等において「配列(sequences)」を参照している場合、一般にサブユニットの特定の配列を有する実際の物理的な分子(例えば、核酸またはアミノ酸)が参照されることがさらに理解される。
【0046】
本発明の「植物(plant)」または「植物(plants)」(または複数の植物)の参照がなされる場合は常に、植物の部分(細胞, 組織または器官, 種子, 切断された又は収穫された部分, 葉, 実生, 花, 花粉, 果実, 茎, 根, カルス, プロトプラスト, など), 親を区別している特徴(例えば、トランス遺伝子の存在)を保持する植物の後代またはクローンの繁殖体(clonal propagations)、例えば、自殖および/またはハイブリッド種子などの交配で得られる種子(二つの近交系の親株を交配することで得られる), ハイブリッド植物及びそれから由来する植物の部分が、他に断らない限り本願の明細書等に包含されることが理解される。
【0047】
「実質的に同一(substantially identical)」, 「実質的な同一性(substantial identity)」または「本質的に類似(essentially similar)」または「必須な類似性(essential similarity)」または「バリアント(variant)」の用語は、初期設定パラメータを用いてプログラム GAPまたはBESTFITなどで至適に整列させた場合に二つのペプチドまたは二つのヌクレオチド配列が少なくとも特定のパーセント配列同一性(percent sequence identity)を共有することを意味する。GAP(ギャップ)は、Needleman および Wunsch のグローバルアラインメントアルゴリズムを使用して二つの配列を全体長に対して整列させ、マッチする数を最大化し、ギャップの数を最小化させる。一般に, ギャップ初期設定パラメータは、ギャップクリエーションペナルティー = 50 (ヌクレオチド) / 8 (タンパク質) およびギャップエクステンションペナルティー = 3 (ヌクレオチド) / 2 (タンパク質)で使用される。ヌクレオチドに関して使用される初期設定のスコアリングマトリックスはnwsgapdnaであり、タンパク質に関して初期設定のスコアリングマトリックスはBlosum62である(Henikoff & Henikoff, 1992, PNAS 89, 915-919)。RNA配列が本質的に類似,またはDNA配列とある程度の配列同一性を有すると言われる場合、DNA配列におけるチミン (T)は、RNA配列におけるウラシル (U)と等しいと考えられることは明らかである。配列アラインメントおよびパーセンテージ配列同一性のためのスコアは、コンピュータ・プログラム(例えば、Accelrys Inc., 9685 Scranton Road, San Diego, CA 92121-3752 USA.から利用可能なGCG Wisconsin Package, Version 10.3)を用いて又はEmbossWIN(version 2.10.0)におけるプログラム「needle」を用いて、上記の同じGAP パラメータを用いて又はギャップオープニングペナルティー 10.0 およびギャップエクステンションペナルティー 0.5を用いて、DNAFULLをマトリックスとして用いて、決定しえる。類似しない長さの配列の間の配列同一性を比較するため、ローカルアラインメントアルゴリズムが使用されることが好適である〔例えば、Smith Waterman アルゴリズム(Smith TF, Waterman MS (1981) J. Mol. Biol 147(1);195-7), 例えば、EmbossWINプログラムにおける「water」〕。初期設定パラメータは、ギャップオープニングペナルティー 10.0 および ギャップエクステンションペナルティー 0.5であり、タンパク質に関してBlosum62および核酸に関してDNAFULL マトリックスが用いられる。
【0048】
[発明の詳細な記述]
本発明は、50%を超える, 特に60%, 70%, 80%, 90%と等しいか又は超える同時形質転換効率を有している及び特に約 100%の同時形質転換効率を有している極めて高い効率の同時形質転換法を提供する。
【0049】
二つのアグロバクテリウム株の使用が見つけられ、一つは機能的な virE2 タンパク質(virE2 ドナー株)の遺伝子を含んでおり、一つは機能的な virE2 タンパク質 (virE2 変異体株)を産生する能力のない株を使用して、非常に高い同時形質転換効率を達成できる。単独で使用されるvirE2 変異体株は、選択可能なマーカー遺伝子を有する自身のT-DNA鎖を植物細胞に輸送(即ち、細胞をトランスフェクトする)できるが、T-DNAをさらに処理できず、T-DNAを植物細胞の核のゲノムに統合できない(即ち、植物細胞および植物は選択可能なマーカー遺伝子で作出できない)。
【0050】
virE2 ドナー 株がvirE2 変異体株と共に同時播種(co-inoculations)に使用される場合、ドナー株のvirE2 タンパク質 および T-DNA (GOIを含んでいる)が植物細胞に移される。ドナー株により産生されたvirE2 タンパク質は植物細胞に進入し、GOIを含んでいるT-DNAおよび選択可能なマーカー遺伝子(virE2 変異体株から導入される)を含んでいるT-DNAの両方と相互作用し、両方のT-DNAsの同じ植物細胞の核のゲノムへの統合を可能とする。従って、virE2 ドナー株およびvirE2 変異体株の両方で同時播種されている植物細胞のみが、両方のT-DNAsを核のゲノムに統合できる。発現されている選択可能なマーカー遺伝子により与えられる表現型の選択によって、形質転換体の核のゲノムに統合されたマーカー遺伝子 および GOIの両方を含んでいる選択された形質転換体の少なくとも約 60%以上(100%まで)を生じる。別々のT-DNAsはゲノム中でランダムな位置に統合するので、それらは独立に受け継がれ、引き続きGOI および マーカー遺伝子の隔離が形質転換体の子孫で生じ、マーカー遺伝子がGOIから選択され離れる(selected away)ことが可能となる(所望の遺伝子のみを含み、選択可能なマーカー遺伝子を含まないマーカーフリー植物が作られる)。
【0051】
従って、一態様において、所望の遺伝子を含んでいる(マーカーフリー)のトランスジェニック植物を作出する方法が提供され、該方法は以下の工程を含む:
a) 機能的な virE2 タンパク質をコード化している遺伝子を含んでいるvirE2 ドナー株および機能的な virE2 タンパク質を産生する能力がないvirE2 変異体株の二つのアグロバクテリウム株を提供すること、
b) 所望の遺伝子を含んでいるT-DNAを前記virE2 ドナー株に導入すること、
c) 選択可能なマーカー遺伝子を含んでいるT-DNAを前記virE2 変異体株に導入すること、
d) 植物細胞を両方の株と接触させること(例えば、同時播種または同時感染させること)、および
e) 植物細胞および/または再生した植物(または苗)を選択可能なマーカー遺伝子産物により与えられた表現型を用いて選択すること、および、任意で、
f) 選択した植物(または選択した植物または苗から由来する植物)を交配および/または自殖(selfing)して子孫を産生すること、および、任意で、
g) 選択可能なマーカー遺伝子を含む子孫を廃棄(discarding)すること及び所望の遺伝子を含むが、選択可能なマーカー遺伝子を欠く子孫を保持(retaining)すること(即ち、前記マーカー遺伝子を所望の遺伝子から隔離して、所望の遺伝子を含んでいるマーカーフリー植物を産生する)。
【0052】
アグロバクテリウム株で形質転換できる植物宿主を、本発明により形質転換できる(即ち、当該技術分野において既知の方法を用いて、本発明による二つのアグロバクテリウム株と組み合わせた単子葉または双子葉の種)。例えば、アグロバクテリウム媒介性の遺伝子の転移に関して、Fraley等 (Fraley et al. 1983, Proc Natl Acad Sci USA 80:4803; Comai等 (Comai et al. 1994, Nature 317:741), Shah et al. (1986, Science 233: 478) および他を参照されたい。植物細胞を形質転換し、その後に形質転換した植物を形質転換した植物細胞から再生するためのアグロバクテリウムの使用は、例えば、EP 0 116 718, EP 0 270 822, PCT 公開 WO 84/02913パンフレットおよび公開された欧州特許出願 EP 0 242 246 およびGould等(Gould et al. 1991, Plant Physiol. 95,426-434)に記載の処置を使用する。アグロバクテリウム媒介性の植物の形質転換のためのT-DNAベクターの構築は、当該技術において周知である。T-DNA ベクターは、EP 0 120 561 および EP 0 120 515に記載のバイナリーベクターまたはEP 0 116 718に記載のアグロバクテリウムTi-プラスミドに相同的組換えで統合できる同時統合ベクターのいずれであってもよい。
【0053】
前記方法の工程 (a)は、二つのアグロバクテリウム株, 機能的な virE2 タンパク質をコード化している遺伝子を含んでいるvirE2 ドナー株 (virE2+ 株) および 機能的な virE2 タンパク質を産生する能力がないvirE2 変異体株 (virE20 株)を提供することが関与する。植物細胞を両方の株で同時感染させた場合、virE2+ 株はvirE20 株を補うことができ、一つの株により供給されたvirE2 タンパク質は、両方の T-DNAs (第一の株からおよび第二の株からトランスフェクトされたT-DNA)のトランスフェクトされた植物細胞の核のゲノムへの統合を導く。virE2 タンパク質がT-DNA 鎖と独立に植物細胞に進入できるとの事実は、当該技術において補完実験で既に示されており、二つのアグロバクテリウム株(一方はT-DNAを欠いているが機能的な virE2を含んでおり、他方はvirE2を欠いているがT-DNAを含んでいる)での同時感染によって、ゲノムに統合されたT-DNAを含んでいる植物細胞が導かれる(Otten et al. 1984 Mol Gen Genet 175, 159-163; Dombek and Ream J of Bacteriol 1997, Vol. 79, 1165-1173)。しかしながら、現在までこの所見が植物細胞の同時形質転換効率を有意に改善するため探索できただろうことは知られておらず、だれひとり植物選択可能なマーカー遺伝子を含んでいるT-DNAをvirE20 株に及びGOIを含んでいるT-DNAをvirE2+ 株に導入せず、これらの二株を共に植物細胞の同時感染に使用して、マーカーフリーの植物を産生していなかった。Dombek および Ream (1997, 上記)において、機能的な virE2 タンパク質を供給する株は、T-DNAを含まず、所望の遺伝子も含まない。というのも、そこでのアイデアは、天然でのvirE2の役割を研究するためvirE2 タンパク質が他のヌル株(null strain)におけるvirE2 変異を機能的に補完するかどうかを試験することだからである。また、使用された変異体/ヌル株は、腫瘍原性であり、安全化されていなく、機能的に補完された場合に腫瘍形成を導く。本発明において、好ましくは安全化されたTi-プラスミド、安全化されたアグロバクテリウム株が使用される。
【0054】
さらに、驚くべきことに本発明の発明者により、ドナー株における少なくとも一つのさらなるvirE2 遺伝子の使用が、二つの異なるT-DNAsと相互作用するため及びこれらを同じ植物細胞の核のゲノムに転移するため十分なvirE2 タンパク質の量が提供されることが見つけられた。従って、本発明の好適な態様において、virE2 ドナー株は、各々が機能的な virE2 タンパク質をコード化している少なくとも二つのvirE2 遺伝子を含む。virE2 遺伝子は、前記株内のゲノムのDNA, Ti-プラスミドおよび/または更なるプラスミドに統合されてもよく、同じ遺伝因子に存在する必要はない(存在してもよい)。
【0055】
任意で、virE2 ドナー株は、さらに機能的な virG タンパク質をコード化しているvirG 遺伝子を含む。従って、一態様において、前記株は少なくとも二つのvirE2 遺伝子および少なくとも二つのvirG 遺伝子を含み、全て機能的なタンパク質をコード化している。遺伝子は、本来のプロモーター(即ち、本来のvirE2 および virG プロモーター)から又は誘導性のプロモーター, 構成的なプロモーター, 他のアグロバクテリウム株のvirE2またはvirG遺伝子からのプロモーター, などのアグロバクテリウムにおいて機能的な異なるプロモーターから転写されてもよい。様々な株からのアグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のVirGの核酸およびタンパク質配列は、当該技術において利用可能であり、例えば、Schrammeijer (Journal of Experimental Botany, Vol. 51, No. 347, pp. 1167-1169, June 2000)またはGenBank アクセッション番号 X62885 (配列番号 4), NP_059810, AAA91602 などを参照されたい。従って、VirG タンパク質は、例えば、配列番号 4 (X62885)のタンパク質またはEHA105 (pTiBo542)のVirG (Chen,C.Y. et al. Mol. Gen. Genet. 230 (1-2), 302-309 (1991)と整列させた場合、例えば、少なくとも80%, 90%, 95%, 98%, 99%またはそれ以上のアミノ酸同一性を含む。
【0056】
virE2 ドナー株
適切な virE2 ドナー 株には、天然で植物細胞を感染する能力のあるアグロバクテリウム株(例えば、アグロバクテリウム ツメファシエンスの株およびアグロバクテリウム リゾゲネスの株)が含まれる。好ましくは、前記株は、天然(野生型)のvirEオペロン、それゆえ天然のvirE2 遺伝子を保持する(好ましくは安全化された)Ti-プラスミドを含む。植物の形質転換法に一般に使用されるアグロバクテリウム株は、前記株がビルレント(virulent)である限り適切である。好ましくは、前記株は、安全化される(即ち、A. ツメファシエンスの天然のT-DNA 領域に見つけられたtmr および tms 遺伝子が除去される又は非機能的であり、植物腫瘍がT-DNA 転移後に発生しない)。天然のTi-プラスミドの全体の本来のT-DNA 領域を除去して前記株を安全化してもよい。Ti-プラスミドおよび/またはアグロバクテリウム株は任意のオピン型であってもよいが、好適な態様においてスクシナモピン(succinamopine)Ti-プラスミドが使用され、これはスクシナモピンのカタボリズムのための遺伝子を含む。スクシナモピン Ti-プラスミドは、当該技術において利用可能である(例えば、EHA105株)。(安全化した)Ti-プラスミドはアグロバクテリウムの内側および外側で操作でき、本来のTi-プラスミドが矯正された株などの任意のアグロバクテリウム株に導入または転移できることが理解される。同様に, 他のプラスミドがアグロバクテリウム株に導入されてもよく、これによってさらなる機能が提供される(例えば、植物細胞に導入されるT-DNA, 追加のvirE2 および/またはvirG 遺伝子, など)。加えて、遺伝的な因子が、株のゲノムのDNAに導入されてもよい。このように、本発明によると本願の明細書等で参照される遺伝的な因子が、アグロバクテリウム株の一または二以上の異なる部分に導入されてもよい(例えば、一または二以上のTi-プラスミド, 一または二以上の更なるプラスミド, ゲノムのDNA, など)。この事項が記載中で明示的に言及されないとしても、本願の明細書等に包含されることが理解される。
【0057】
(好ましくは、安全化した)Ti-プラスミドに見つけられるvirE2 遺伝子の代わりに又はそれに加えて、一または二以上の更なるvirE2 遺伝子がアグロバクテリウム株のTi-プラスミドに天然で見つけられ、ビルレンスに必要とされる他の vir 遺伝子に対してシスまたはトランスで供給されてもよい。このように、一態様において、アグロバクテリウム株は、Ti-プラスミド, ゲノムのDNA および/または更なるプラスミドに一または二以上の virE2 遺伝子を含む。
【0058】
例えば、株において活性または誘導性の適切な転写調節領域に作動可能に連関された機能的な virE2 タンパク質をコード化しているvirE2 遺伝子を含んでいる一または二以上のプラスミド(例えば、Ti-プラスミド および/または 他のプラスミド)が、株に導入される。また、プラスミドは、アグロバクテリウムTi-プラスミドに見つけられる全 virE オペロンを含んでもよい。好ましくは、少なくとも二つの機能的な virE2 タンパク質をコード化している遺伝子が株に存在するが、それより多く(例えば、3, 4, 5又はそれ以上)が存在してもよい。Ti-プラスミドおよび少なくとも一つの機能的な virE2 タンパク質をコード化しているvirE2 遺伝子を含んでいる安全化したアグロバクテリウム株は、当該技術において広く利用可能である。
【0059】
付加的な virE2 遺伝子は、virE2 遺伝子のコード配列をアグロバクテリウムにおいて活性なプロモーター(例えば、天然の virE2 プロモーター)と作動可能に連関させること、および前記遺伝子を適切なプラスミドに及び/又は前記株のTi-プラスミドに及び/又はゲノムのDNAに挿入することなどによる既知の方法を用いて導入できる。付加的な virE2 遺伝子は、例えば、Ti-プラスミドのvir-領域に,またはTi-プラスミドの別の位置に挿入されてもよい。一態様において、少なくとも二つの virE2 遺伝子は、一つの遺伝的な因子(例えば、Ti-プラスミドまたは別のプラスミド)にトランスに存在する。別の態様において、少なくとも二つの virE2 遺伝子は、異なる遺伝的な因子などにシスに存在する。例えば、一つのvirE2 遺伝子がTi-プラスミドに存在し、一つのvirE2 遺伝子がヘルパープラスミドに存在する。
【0060】
機能的なVirE2 タンパク質をコード化するvirE2 遺伝子。
【0061】
さらに、virE2 ドナー株は、少なくとも一つ(任意で、少なくとも 2, 3, 4又はそれ以上)の機能的な virE1 タンパク質をコード化しているvirE1 遺伝子(virE2 タンパク質を植物細胞に輸送することに用いられる)も含む。virE1 遺伝子は、アグロバクテリウムゲノム, Ti-プラスミド(即ち、Ti-プラスミドは、本来のvirE1 遺伝子およびプロモーターを含んでいてもよい及び/又は一または二以上の他の virE1 遺伝子およびプロモーターが挿入されてもよい)および/または別のプラスミドに存在してもよい。従って、virE2 遺伝子を導入するため使用されるTi-プラスミドまたは他のプラスミドは、一態様において好ましくはアグロバクテリウムにおいて活性なプロモーター(例えば、virE オペロンプロモーター)と作動可能に連関させる少なくとも一つの virE1 遺伝子を含んでもよい。アグロバクテリウムのvirE タンパク質をコード化している遺伝子は、当該技術において利用可能である〔例えば、GenBank アクセッション AAZ50537 (配列番号 5; pTiBo152のvirE1)を参照されたい〕。「VirE1」には、配列番号 5と少なくとも 80%, 90%, 95%, 98%, 99%又はそれ以上のアミノ酸配列 同一性を含んでいるvirE2 タンパク質などのバリアント(variants)が含まれる。
【0062】
好ましくは、前記株は、virE2変異体株との同時播種に際して、virE2変異体株により提供される一本鎖T-DNA(マーカー遺伝子含有T-DNA)およびvirE2 ドナー株により提供される一本鎖T-DNA(GOI含有T-DNA)の両方と相互作用するため十分な virE2 タンパク質を作出する能力がある。「十分(sufficient)」なvirE2 タンパク質が作出されたかどうかは、ルーチンの実験を用いて当業者によって決定されえる。例えば、同時形質転換効率が50%より低い場合、作出されるvirE2 タンパク質は不十分である可能性があり、レベルを一または二以上のさらなるvirE2 遺伝子を付加すること(例えば、ヘルパープラスミド上)などで増加させる必要がある。
【0063】
virE2 遺伝子は、クローン化され、所望のとおり任意のプラスミド および/または アグロバクテリウム株に導入できる。配列番号 1 (cDNA) および 配列番号 2 (配列番号 1によりコードされたタンパク質)によって、Ti プラスミド pTiBo542のvirE2 遺伝子 / タンパク質が提供される。また、VirE2 遺伝子 および タンパク質は、公共のデータベースにおいて利用可能である〔AAZ50538 (pTiBo542からのvirE2), NP_059819 および他を参照されたい〕。
【0064】
配列番号 3は、virE2 オープンリーディングフレームに挿入があるvirE2 遺伝子を提供する。挿入は、virE2 オープンリーディングフレーム (ORF)の一部分を含んでいるプラスミドを本来のvirE2 ORFに統合(相同的組換え)することで作られた。挿入は、virE2 ORFにおける任意のポジションで生じてもよく、以下では配列番号 1のヌクレオチド 203の後で生じる。このように、本願でCBS121809として寄託されたvirE2変異体株は、配列番号 3 (配列番号 1の破壊を含んでいる)を有するTi-プラスミドを含み、virE2 タンパク質がインビボで産生されなくなる(以下を参照されたい)。
【0065】
明らかに、機能的な virE2 タンパク質をコード化している他の virE2 配列を、当該技術分野において既知の方法を用いてアグロバクテリウム株から作出または同定(例えば、インシリコ)または単離できる。本発明によるvirE2 遺伝子は、配列番号 2 と少なくとも 70%, 好ましくは 少なくとも 80%, 85%, 90%, 95%, 98%, 99%又はそれ以上のアミノ酸配列の同一性(全体長に対してペアワイズアラインメントを用いて、例えば、EmbossWINのプログラム「needle」で10.0のギャップオープニングペナルティーおよび0.5のギャップエクステンションペナルティーでマトリックスとしてBlosum62を用いて)を含むタンパク質をコード化しているヌクレオチド配列などの本質的に類似するアミノ酸配列をコード化している遺伝子(「バリアント」とも参照される)を包含する。従って、機能的な virE2 タンパク質又はそのバリアント(例えば、ホモログ)をコード化しているvirE2 遺伝子は、他の生物体(特に、他のアグロバクテリウム株)から単離でき、virE2 ドナー株において機能的な virE2 タンパク質を産生するため使用される。他の virE2の核酸 および/または アミノ酸配列も、DNA および/または タンパク質 データベースにおいてインシリコで又はvirE2の配列又はその部分をプローブまたはプライマーとして用いる核酸ハイブリダイゼーションまたはPCRで同定しえる。同じ事項は、更に上記のvirG および virE1 遺伝子およびタンパク質(および、そのバリアント)に適用される。
【0066】
コードされたvirE2 タンパク質 および/または バリアントの機能性は、例に記載される補完アッセイ(complementation assays)などを用いて容易に試験できる。
【0067】
明らかに、本発明によるvirE2 核酸配列は、配列番号 1 と少なくとも 70%, 好ましくは 少なくとも 80%, 85%, 90%, 95%, 98%, 99%又はそれ以上の核酸配列の同一性(全体長に対してペアワイズアラインメントを用いて、例えば、EmbossWINのプログラム「needle」で10.0のギャップオープニングペナルティーおよびギャップエクステンションペナルティー0.5でマトリックスとしてDNAfullを用いて)を含んでいる核酸配列などのバリアントも包含する。
【0068】
virE2変異体株
前記方法に使用される第二の株は、機能的な virE2 タンパク質を産生する能力がないvirE2 変異体株である。「機能的ではないvirE2が作出される」を参照する場合、この事項には如何なるvirE2 タンパク質も全く株により作出されない/作出できない又は非機能的(non-functional)なタンパク質が作出される/作出できる可能性が含まれる。
【0069】
また、(好ましくは安全化した)Ti-プラスミドに見つけられる内因性のvirE2 遺伝子が機能的なタンパク質を作出しない/作出できないように修飾されているかぎり、任意のアグロバクテリウム株を使用できる(および任意のTi-プラスミド)。VirE2変異体株は、プラスミドをvirE2 ORFに相同組換えで挿入することなどにより、EHA105-dE2 (CBS121809)の例に記載される様式と同様に作出できる。明らかに、多くの他の方法が当該技術において利用可能であり、同じ結果が達成される。Ti-プラスミドにおけるvirE2 遺伝子の全てまたは部分(例えば、配列番号 1又はそのバリアント)の挿入, 欠失 および/または置換によって、virE2変異体株に、変異体 virE2 遺伝子を含んでいる又はvirE2 遺伝子を欠いているTi-プラスミドを生じる。「変異体(mutant)」virE2 遺伝子を参照する場合、作出される実質的に機能的なvirE2 タンパク質が生じない任意の遺伝的な修飾が包含される(即ち、DNAをコード化しているvirE2-タンパク質の全てまたは部分の挿入, 置換または削除による変異/遺伝的な修飾)。また、変異体 virE2 遺伝子を、単離しえる又は合成または分子生物学の技術を用いて作出しえる。そして、これを使用して株に使用されるTi-プラスミドにおける機能的な virE2 遺伝子を置換しえる。
【0070】
virE2 活性の欠損は、例に記載のとおり決定できる。代わりに, 既知の他のアッセイを使用してもよい。
【0071】
本発明の一態様において、virE2 変異体は、アクセッション番号CBS 121809で寄託された株(又は、その派生体),又はそこに含まれるTi-プラスミドを含んでいるアグロバクテリウム株,又はそこに含まれる変異体 virE2 遺伝子である。virE2 変異体遺伝子を含んでいるTi-プラスミドを、矯正(cured)された株などの別の株に転移してもよい。代わりに, 変異体遺伝子は、寄託された株から単離されてもよく、別の株および/または別のTi-プラスミドに転移してもよい。
【0072】
また、幾つかの他の VirE2 変異体 アグロバクテリウム株は当該技術において既に記載されているが、これらの株は同時形質転換法に使用されていなく、virE2の機能を研究するのみである。例えば、文献〔Simone et al. 2001 (Mol Microbiol Vol 41: 1283-1293), Dombek and Ream (1997, J of Bacteriology Vol 179: 1165-1173), Binns et al. (1995, J of Bacteriol. Vol 177: 4890-4899) および Stachel and Nester (1986; EMBO J Vol. 5: 1445-1454)〕は、virE2 変異体 および virE2変異体株の産生を記載する。しかしながら、株は安全化されず、彼らは同時形質転換に使用されず、補完アッセイは野性株を利用して機能的な virE2が提供されている(しかしながら、GOIを有するT-DNAを含まない)。加えて、全ての virE2変異体株は、オクトピン型の株である。
【0073】
また、上記で記載されるvirE2変異体株を本発明に使用してもよいが、好ましくは前記株は使用前に安全化される。前記株には、virE2がnptII で置換されたpTiA6NCを含んでいるA. ツメファシエンス 株 WR5000(Dombek および Ream, 上記, 図1を参照されたい)またはTi-プラスミド pTiA6NC (例えば、A348株で見つけられる)におけるvirE2 遺伝子を変異させることにより派生した別のvirE2 変異体; Binnes 等(上記)の表 1にリストされたA. ツメファシエンス 株, 例えば, プラスミドがvirE2のORFに統合されているA348::virE2; virE2 遺伝子にトランスポゾンの挿入を含んでいるStachel および Nester (上記)に記載されたアグロバクテリウム株 358mxが含まれる。
【0074】
基本的に、任意のアグロバクテリウム株を修飾して、virE2 遺伝子に変異を又はvirE2 遺伝子に欠損(lack)を含ませることができる。本発明の一態様において、virE2変異体株および/またはvirE2 変異 Ti-プラスミドであって、変異体株 および/または Ti-プラスミドがスクシナモピン Ti-プラスミド および/または係るプラスミドを含んでいる株であるものが提供される。本発明のvirE2変異体株は、一態様において、好ましくはpTiBo542から由来するTi プラスミド(EHA101, EHA105)などを保持しているスクシナモピン株である。これらの株は広い宿主範囲を有し、彼等が多くの異なる植物宿主種を形質転換する能力があることを意味している。
【0075】
virE2 遺伝子はvirE2 遺伝子の全てまたは部分の挿入, 削除または置換を含み、そのためvirE2 タンパク質は作出されず、非機能的(例えば、短縮型または正しくフォールドされない)である。一態様において、virE2変異体株はアクセッション番号 CBS 121809として寄託されたEHA105-dE2であり、Ti-プラスミドはこの株に存在するプラスミド又はこれらの任意の派生体(derivative)である。また、単離された変異体 virE2 DNAは、配列番号 1のvirE2 cDNAに挿入(ノックアウト)を含んでいる配列番号3に示されるとおり提供される。配列番号 3は、処理中で破壊されるvirE2 ORFに挿入されたプラスミドを含んでいる変異体株の全 VirE オペロン領域を示す。
【0076】
従って、本発明の一態様において、virE2変異体株は、virE2 遺伝子において一または二以上の挿入, 欠失および/または置換を含み、前記virE2 遺伝子の部分または全てが削除および/または置換され及び/又はDNAが挿入され、それによる変化がvirE2 タンパク質の非存在を導く又は非機能的な virE2 タンパク質の作出(例えば、短縮された, 非機能的なタンパク質)を導く。
【0077】
前記方法の工程(b)において所望の遺伝子を含んでいるT-DNAはvirE2 ドナー 株に導入され、工程(c)において選択可能なマーカー 遺伝子を含んでいるT-DNAはvirE2変異体株に導入される。従って、例えば、RB および (任意で) LB, GOIまたはマーカーなどの作動可能に連関された因子を含んでいる、適切なT-DNAが提供される。T-DNAは、標準的な分子生物学の方法を用いて作出できる。好ましくは、T-DNAは、バイナリーベクターまたは同時統合ベクターなどのプラスミドベクターに存在する。T-DNA,またはT-DNAを含んでいるベクターのアグロバクテリウム株への導入は、エレクトロポレーションなどで実施できる。
【0078】
従って、前記方法の一態様において、T-DNAsはDNAベクターまたはプラスミドに導入され、T-DNAsは少なくともライトボーダー配列を含む。
【0079】
GOIは、タンパク質をコード化している又は異なる機能を有している任意の遺伝子であってもよく、例えば、生物の遺伝子(cDNAまたはゲノムDNAなどのコード配列)および/または非生物的なストレス耐性, 耐病性, 除草剤 抵抗性, 農業的な形質(agronomic traits), 出力形質, などから選択される(しかし、これらに限定されない)。GOIは植物または植物由来の遺伝子であってもよく、または天然で細菌, 真菌, 動物 (ヒトを含む), などで見つけられた遺伝子であってもよい。一態様において、遺伝子は、シス-遺伝子(cis-gene)である。ゲノムDNAおよびcDNAの適切なコード配列は、当該技術において利用可能である(例えば、核酸データベース)。
【0080】
マーカー遺伝子には、植物の選択可能なマーカーが含まれ、例えば、抵抗性遺伝子(例えば、抗生物質抵抗性, 除草剤抵抗性, など)または形質転換体を選択するため使用できる形質(例えば、表現型の形質を与えるもの)を与える他の遺伝子である(しかし、これらに限定されない)。
【0081】
工程 (d)において形質転換される植物, 植物の部分, 植物の細胞または組織は、両方の株(即ち、少なくとも一つの virE2 ドナー 株 および 少なくとも一つの virE2変異体株)の適切な量および/または比率と、例えば、確立されたアグロバクテリウム形質転換プロトコール又はそれから適応させたものに記載されたとおり適切な条件下で適切な期間で接触される。トマトの形質転換の文献およびプロトコールの概要に関して例 2を参照されたい。同時播種または同時感染は、本願の明細書等において、両方が共に物理的に細胞/組織(混合物として又は同じ時間に)に付加されること又は株に連続的(consecutively)に付加されることのいずれかを参照する。連続的な接触の場合において、GOIを含んでいる株を最初に加えることが好適である。というのも、GOIは(通常)選択されないからであり、短い時間インターバル内で選択可能なマーカー遺伝子を含んでいる株が続く。
【0082】
植物の細胞または組織は、例えば、根培養(root cultures), リーフディスク(leaf discs), などの当該技術分野において既知の子葉または他の組織のエクスプラント(explants)であってもよい。代わりに、植物の部分または全てが、浸潤(infiltration)などで接触されてもよい。アグロバクテリウム形質転換のプロトコールは、当該技術分野において既知であり、本発明にしたがい使用されえる。植物細胞, 組織または植物は、アグロバクテリウムの形質転換を受け入れられる任意の種であってもよい。従って、任意の植物が適切であり、例えば、単子葉植物または双子葉植物、例えば、トウモロコシ/コーン(Zeaの種, 例えば、Z. mays, Z. diploperennis (chapule), Zea luxurians (Guatemalan teosinte), Zea mays subsp. huehuetenangensis (San Antonio Huista teosinte), Z. mays subsp. mexicana (メキシコのブタモロコシ), Z. mays subsp. parviglumis (Balsas teosinte), Z. perennis (多年生のブタモロコシ) および Z. ramosa, コムギ (Triticumの種), オオムギ (例えば、Hordeum vulgare), カラスムギ (例えば、Avena sativa), ソルガム(Sorghum bicolor), ライ麦 (Secale cereale), ダイズ (Glycine spp, 例えば、G. max), 綿 (Gossypiumの種, 例えば、G. hirsutum, G. barbadense), Brassica spp(例えば、B. napus, B. juncea, B. oleracea, B. rapa, など), ヒマワリ (Helianthus annus), タバコ (Nicotiana species), アルファルファ (Medicago sativa), イネ (Oryza species, 例えば、O. sativa indica 栽培品種群またはjaponica栽培品種群), 飼料用草(forage grasses), pearl millet (Pennisetumの種. 例えば、P. glaucum), 樹木の種(tree species), 野菜の種(vegetable species), 例えば、 Lycopersicon ssp (最近、Solanum属に属するとして再分類された), 例えば、トマト (L. esculentum, syn. Solanum lycopersicum)、例えば、サクランボトマト, var. cerasiformeまたは現代のトマト, var. pimpinellifolium)またはトマトノキ (S. betaceum, syn. Cyphomandra betaceae), ジャガイモ (Solanum tuberosum) および他のSolanum種, 例えば、 ナス (Solanum melongena), ペピーノ(S. muricatum), ココナ (S. sessiliflorum) および ナランヒージャ(S. quitoense); ペッパー類(Capsicum annuum, Capsicum frutescens), エンドウ(例えば、Pisum sativum), マメ (例えば、Phaseolusの種), ニンジン (Daucus carota), Lactucaの種 (例えば、Lactuca sativa, Lactuca indica, Lactuca perennis), キュウリ (Cucumis sativus), メロン (Cucumis melo), ズッキーニ (Cucurbita pepo), カボチャ (Cucurbita maxima, Cucurbita pepo, Cucurbita mixta), カボチャ (Cucurbita pepo), スイカ (Citrullus lanatus syn. Citrullus vulgaris), 多肉果の種(ブドウ, モモ, プラム, イチゴ, マンゴ, メロン), 観賞植物の種(例えば、Rose, Petunia, Chrysanthemum, Lily, Tulip, Gerberaの種), 樹木(woody trees) (例えば、species of Populus, Salix, Quercus, Eucalyptus),
線維の種、例えば、アマ (Linum usitatissimum) および アサ (Cannabis sativa)である。一態様において、野菜の種, 特にSolanumの種(Lycopersiconの種を含む)が、好適である。
【0083】
従って、例えば、次の属の種を形質転換しえる: Cucurbita, Rosa, Vitis, Juglans, Fragaria, Lotus, Medicago, Onobrychis, Trifolium, Trigonella, Vigna, Citrus, Linum, Geranium, Manihot, Daucus, Arabidopsis, Brassica, Raphanus, Sinapis, Atropa, Capsicum, Datura, Cucumis, Hyoscyamus, Lycopersicon, Solanum, Nicotiana, Malus, Petunia, Digitalis, Majorana, Ciahorium, Helianthus, Lactuca, Bromus, Citrullus, Asparagus, Antirrhinum, Heterocallis, Nemesis, Pelargonium, Panieum, Pennisetum, Ranunculus, Senecio, Salpiglossis, Browaalia, Glycine, Pisum, Phaseolus, Gossypium, Glycine, Lolium, Festuca, Agrostis。
【0084】
一態様において、virE2 変異体 (選択可能なマーカー遺伝子を含んでいる)とvirE2 ドナー 株 (GOIを含んでいる)との比率は、約 1 : 3である。他の適切な比率には、好ましくは、virE2変異体株に対して多いドナー株(例えば、1 : 1をこえる比率, 例えば、1:2, 1:4, 1:5,またはその他)が使用される任意の比率を含む。しかしながら、例えば、タバコに関して1 : 1の比率が、1 : 1をこえる比率よりも適切であることが見つけられた。
【0085】
二つの株は、好ましくは新しく成長(freshly grown)させられる。株は、植物または植物組織と接触させる前に混合してもよい、または細胞と別々の工程(例えば、連続的または同時)で接触させてもよい。
【0086】
各株の量には、例えば、液体のMS20培地において600 nmでのODが約 0.100および約 0.300の間,または均等な量を含む。
【0087】
工程 (e)において、植物細胞, 組織, 器官または植物 (また苗) および/または再生した植物または苗は、マーカー遺伝子及びその発現産物に基づく選択工程にかけられる。このように工程 (e)は、植物細胞および/または再生した植物(または苗)を選択可能なマーカー遺伝子産物により与えられた表現型を用いて選択する工程を含む。本工程の目的は、同時形質転換体を選択することである。
【0088】
この工程において、標準的な方法を使用しえる。例えば、根および/または新芽(shoots)が再生されてもよく、再生された組織(の一部)をマーカー遺伝子及び/又はその発現産物又はそれにより与えられ表現型に基づいて選抜および選択してもよい。上記で既に言及されたとおり、形質転換された植物細胞から植物全体(whole plants)を再生するための方法は、当該技術分野において既知であり、形質転換された及び/又は選択された細胞に適用できる。使用されたマーカー遺伝子のタイプに応じて、選択法は異なってもよい。マーカー遺伝子が除草剤抵抗性遺伝子である場合、苗(plantlets)または葉の一部を除草剤と接触させてもよい。次に、除草剤に耐性である苗が選択される。選択された植物は一次形質転換体(T1 世代)であってもよいが、選択を後の段階(例えば、自殖および/または交配により得られる後の世代)で代わりに又は加えて行ってもよい。従って、任意で植物を更に交配および/または自殖して、マーカー遺伝子DNAをゲノム中に含んでいる植物全体および子孫を産生してもよい。
【0089】
本発明の同時形質転換の高い効率により、高いパーセンテージでマーカー遺伝子を含んでいる一次形質転換体(primary tranformants)はGOIも含む。従って、50%をこえる、例えば、少なくとも 60%, 70%, 80%, 90%またはそれ以上(95%, 99%, 100%)の選択された形質転換体がGOIもマーカー遺伝子に加えて含む。非選択の植物は、廃棄されてもよい。形質転換効率が高いほど、より好ましい。というのも、GOIのためPCRまたはGOIのため核酸ハイブリダイゼーション(例えば、サザンブロット分析)などの面倒な分子生物学の方法を用いてGOIの存在に関して分析する必要がある形質転換体がより少ないからである。本願の明細書等の例において、選択した植物の100%が両方のT-DNAsを含むことがPCR 分析で確認された。このように伝統的な同時形質転換と比較して、非常に少ないトータル数の形質転換体が必要とされる。
【0090】
必要に応じて、前記方法は、さらに f) 選択した植物(または選択した植物または苗から由来する植物)を交配および/または自殖(selfing)して子孫を産生すること、 g) 任意で、選択可能なマーカー遺伝子を含む子孫を廃棄(discarding)すること及び所望の遺伝子を含むが、選択可能なマーカー遺伝子を欠く子孫を保持(retaining)すること(即ち、前記マーカー遺伝子を所望の遺伝子から隔離して、所望の遺伝子を含んでいるマーカーフリー植物を産生すること)を含む。
【0091】
マーカー遺伝子 および GOIは互いに隔離できるので、必要に応じて、これらの選択可能なマーカー遺伝子を含む植物または子孫を廃棄してもよく、GOIを含むが、しかし選択可能なマーカー遺伝子を欠く植物または子孫をさらに使用するため保持してもよい。従って、ゲノムに統合されたGOIのみを含んでいる植物を生産でき、その植物からマーカー遺伝子は離れて隔離(segregated away)されている。かかる植物の選択は、PCRスクリーニング, ハイブリダイゼーションに基づく方法および/または表現型の選抜を用いることなどの既知の方法を用いて実施できる。
【0092】
本発明によるアグロバクテリウム株およびTi-プラスミド
上記の方法に使用するためのアグロバクテリウム株およびアグロバクテリウム株のペア(少なくとも一つの virE2 ドナー 株 および 少なくとも一つの virE2変異体株)を提供することも本発明の態様である。
【0093】
virE2 ドナー 株は好ましくはさらに細胞内(例えば、プラスミド上)にGOIを含むT-DNAを含む、他方でvirE 変異体株は好ましくはさらに細胞内(例えば、プラスミド上)にマーカー遺伝子を含むT-DNAを含む。
【0094】
一態様において、virE2変異体株は、virE2 遺伝子中に変異(好ましくは、DNA挿入)を有しているTi-プラスミドを含み、株により作られる機能的な virE2 タンパク質が生じない。好適な態様において、virE2変異体株はアクセッション番号 CBS 121809として寄託された株,又はその中に見つけられるTi-プラスミドを保持するその派生体である。別の態様において、CBS121809のTi-プラスミドを含んでいる株、CBS121809株のTi-プラスミドで見つけられる変異 virE2 遺伝子を含んでいる株が提供される。
【0095】
本発明による使用
使用は、既に本願の明細書等において上記の記載から明らかである。一態様において、機能的な virE2 タンパク質を産生する能力がなく、選択可能なマーカー 遺伝子を含んでいるT-DNAを含んでいる第一のアグロバクテリウム株と共に、機能的な virE2 タンパク質をコード化している遺伝子および所望の遺伝子を含んでいるT-DNAを含んでいる第二のアグロバクテリウム株の、植物, 植物細胞または植物組織と前記二つのT-DNAsとの同時形質転換のための使用が提供される。
【0096】
第一のアグロバクテリウム株のvirE2 遺伝子は、好ましくはvirE2 遺伝子の全てまたは部分の挿入, 削除または置換を含んでいる。
【0097】
本発明によるキット
また、同時形質転換キットが提供され、このキットは第一および第二のアグロバクテリウム株を含み、前記第一の株は該株に存在するTi-プラスミドのvirE2 遺伝子の全てまたは部分の挿入, 削除または置換が原因で機能的な virE2 タンパク質を産生する能力がなく、前記第二の株は機能的な virE2 タンパク質をコード化している遺伝子を含んでいる。
【0098】
好ましくは、前記第二の株は、記載のとおり機能的な virE2 タンパク質をコード化している少なくとも二つのvirE2 遺伝子を含む。
【0099】
前記株は、プレート上などに凍結した又はフリーズドライされた生存可能な培養物に又は生きた培養物として供給されてもよい。また、前記株は、例えば、適切な比率で及び/又は同時形質転換における使用のための濃度で、別々に又は混合物として提供されてもよい。他のものをキットに提供してもよく、例えば、プロトコール, コントロール, virE2 DNA (例えば、プローブ および/または プライマー), 緩衝剤などである。
【0100】
また、上記の方法を用いて生産した形質転換された及び/又は再生されたトランスジェニック植物細胞および植物(および/または植物の部分)も包含される。
【0101】
配列
配列番号1: virE2 cDNA
配列番号2: 配列番号 1でコード化されたvirE2 タンパク質。
【0102】
配列番号3: 挿入による(ノックアウト) 変異体 virE2 cDNAを含んでいるvirE オペロン
配列番号4: virG タンパク質(X62885)
配列番号5: virE1 タンパク質(AA250537)
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】プラスミド pKG6305のマップ。
【図2】プラスミド pKG6330のマップ。
【図3】アグロバクテリウム(下)から植物細胞(上)へのT-DNA転移の概要。
【図4A】非変異体株を用いた同時形質転換。同時形質転換効率は50%未満である(黒のドットはvirE2タンパク質を示す)。
【図4B】高い同時形質転換効率が導かれる本発明による方法(黒のドットはvirE2タンパク質を示す)。
【0104】
以下の限定されない例は、同時形質転換法および本発明による株を記載する。例で他に記載しないかぎり、全ての組換えDNA技術は、文献〔Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, および Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY; および in Volumes 1 and 2 of Ausubel et al. (1994) Current Protocols in Molecular Biology, Current Protocols, USA. Standard materials and methods for plant molecular work are described in Plant Molecular Biology Labfax (1993) by R.D.D. Croy, jointly published by BIOS Scientific Publications Ltd (UK) and Blackwell Scientific Publications, UK〕に記載の標準プロトコールにしたがって実施される。
【0105】
[例]
例 1: EHA105-dE2の構築および確認
アグロバクテリウム ツメファシエンス株 EHA105-dE2(「d」鎖に関して破壊)を、アグロバクテリウム ツメファシエンスにおいて複製する能力がない破壊プラスミド(disruption plasmid) (pKG6328と称される)をEHA105 VirE2 遺伝子に相同的組換えで統合することによって作出した。EHA105のTi プラスミドは、Ti プラスミド pTiBo542の派生体である。VirE2 オープンリーディングフレーム (ORF)へのpKG6328の挿入は、pKG6328のボーダー部分をTi プラスミドに増幅すること、それらをシークエンシングすることによって確認された。(機能障害)機能に関して試験するために、形質転換実験を行った。この実験には、コントロールとして、アグロバクテリウム ツメファシエンス中で複製する能力があり、VirE オペロン プロモーターで駆動されるpTiBo542 VirE1 および VirE2 遺伝子の双方を発現しているプラスミド(プラスミド pKG6330)を添加することによるノックアウトの補完(complementation)が含まれる。
【0106】
EHA105-dE2株は、出願人によりブタペスト条約下で「Centraalbureau voor Schimmelcultures」(CBS, P.O. Box 85167, 3508 AD Utrecht, The Netherlands)または「Fungal Biodiversity Centre」(Utrecht, The Netherlands)にアクセッション番号 CBS 121809として2007年8月30日に寄託された。
【0107】
破壊ベクターpKG6328の構築
pTiBo542 ORFの一部を、直接的にEHA105 細菌において三つのリーディングフレームに停止コドンを有する特定の部分を含んでいるVirE2 遺伝子特異的なプライマーで増幅した。
【0108】
(Fw: 5'-TGAATGAATGATGATGACACTGAC-3' および
Rev: 5'-TTAGTCAATTAGTCGCCGGCAAACCTGT-3')。
【0109】
次のPCRプロフィールを使用した: 3分間 80゜C - 2分間 94゜C - (30 秒間 94゜C - 1分間 55゜C - 1分間 72゜C) 30 回 - 4゜C 長時間。生じたPCR産物を、InvitrogenのPCR クローニング ベクターにR6K 複製開始点を用いて結合させた。生じたプラスミドをシークエンシングして、VirE2 ORFの部分の各側で停止コドンの取り込みを確認した。このプラスミドは、pKG6328と称された。
【0110】
アグロバクテリウム ツメファシエンス 株 EHA105 VirE2 遺伝子の破壊
プラスミド pKG6328を、EHA105から作出したコンピテント細胞にエレクトロポレーションした。このプラスミドはアグロバクテリウム ツメファシエンスのなかで複製する能力がなく、VirE2 ORF 部分を用いて相同的組換えによりそのプロセス中で内因性のVirE2 遺伝子を破壊することを必要とする。形質転換体を、カナマイシン(pKG6328 ベクター バックボーンに存在する選択マーカー)で選択した。VirE2 遺伝子の破壊は、統合部位を増幅すること、それらをシークエンシングすることにより確認された(配列番号 3)。この 新しい 株は、EHA105-dE2と命名され、CBS 121809として寄託された。
【0111】
pKG6305の構築
プラスミド pBBR1MCS (GENBANK NR.U02374, Kovach et al. 1994, BioTechniques 16 (5), 800-802)は、pKG6305 および pKG6330の両方に関するバックボーン ベクター(backbone vector)である。VirG 遺伝子は、次の プライマーを用いて増幅された: リバース: 5'- CTCGCGTCATTCTTTGCTGGAG - 3' およびフォワード: 5'- TCCGGGATCGATTTCAACAATAC -3'。A. ツメファシエンス 株 EHA105からの50 ngのトータルDNAを鋳型として、次の PCR プロフィールに使用した: 2 min 94゜C - (30 sec 94゜C - 1 min 58゜C -2 min 68゜C) x30 - 10 min 72゜C - 4゜C 長時間。プルーフリーディングDNAポリメラーゼを使用してPCRエラーのリスクを減少させた(Perkin Elmer からのrTth ポリメラーゼ)。Perkin ElmerのAmpliTaq red を用いて、1 ユニットのこのポリメラーゼをPCR 反応に加えること、10 分間72゜Cでインキュベーションすることにより「A-オーバーハング」を作った。このPCR産物を、InvitrogenからのpCR2.1 PCR クローニング ベクターにライゲーションし、シークエンシングした。
【0112】
このベクターからVirG 遺伝子を、プラスミドをPstI および SacIで切断し、ゲルから前記遺伝子を有する1393 bpsの断片を単離して取得した。この 断片を、pBBR1MCSの対応する部位にライゲーションした。この 新しいプラスミドに、後のクローニング工程のための新しい複数の クローニング 部位 (MSC)が提供された。この MCSは2 つのオリゴ: 5'- TTCTAGAACTAGTGGGCCCCTGCAGGTTAACATGCA -3' および 5'- TGTTAACCTGCAGGGGCCCACTAGTTCTAGAAGGCC -3'からなる。これらの二つのオリゴがリン酸化後にDNAの二本鎖断片を形成する場合、ApaI および PstIにより作られるオーバーハングに適合する一本鎖DNAオーバーハングを有するだろう。これらの二酵素を用いて、アダプターをこれらの部位にライゲーションした。この最終産物は、pKG6305である。図 1にプラスミド pKG6305のマップが見つけられる。
【0113】
pKG6330の構築
VirE オペロン プロモーター, VirE1 遺伝子, および VirE2 遺伝子は、EHA105から遺伝子特異的なプライマーを用いて増幅され、pBBR 複製開始点 および クロラムフェニコール 抵抗性遺伝子(細菌で選択するため)を保持しているプラスミド バックボーンにクローン化された。この VirE オペロン 部分を増幅するため、次の プライマーを使用した:
Fw: 5'- ACTAGTTGCCCGCGAAACAGCATTGACT -3' および
Rv: 5'- GGGTACCATGACGCGGCAGCAGGAAC -3'。
【0114】
フォワードプライマーでSpeI 制限酵素部位を組み込み、リバースプライマーでKpnI 部位を組み込んだ。部位を、プライマー 配列中に下線で示した。A. ツメファシエンス 株 EHA105からの50 ngのトータルDNAを鋳型として、次の PCR プロフィールに使用した: 2 min 94゜C - (30 sec 94゜C - 1 min 58゜C - 3 min 68゜C) x30 - 10 min 72゜C - 4゜C 長時間。プルーフリーディングDNAポリメラーゼを使用してPCRエラーのリスクを減少させた(Perkin Elmer からのrTth ポリメラーゼ)。PCR産物を、引き続いてSpeI および KpnIで切断し、pKG6305の対応する部位にライゲーションした。このプラスミドは、大腸菌 および アグロバクテリウム ツメファシエンスの両方において複製できる。配列を検証後、この プラスミドをアグロバクテリウムにエレクトロポレーションで移した。図 2にプラスミド pKG6330のマップが見つけられる。
【0115】
ビルレンスおよび補完試験
植物の形質転換に関してgusA 発現のためのT-DNAを補充されたEHA105-dE2を用いた場合、生じた形質転換した細胞の数は、VirE2 遺伝子の破壊が理由でゼロに近い。また、VirE オペロンのインタクト(intact)なコピーをこの株に添加した場合、表現型が補完し、ビルレンスは非破壊のVirE2を有する株 (VirE2 遺伝子の破壊のないEHA105)のレベルに復帰する。タバコ(Nicotiana benthamiana)の形質転換が行われ(リーフディスク形質転換および アグロバクテリウム浸潤の両方)、EHA105-dE2のビルレンスが評価された。次の株-プラスミドの組み合わせが使用された:
1. EHA105 とT-DNA (ポジティブコントロール);
2. EHA105-dE2 とT-DNA (ゼロに近いはずである);
3. EHA105-dE2 と T-DNA, および pKG6330 (補完試験)。
【0116】
リーフディスク形質転換のために、1 cm 直径のリーフディスクをタバコの葉から切断した。タバコのリーフディスク形質転換のために使用したプロトコールは、Horsch等(Horsch et al, 1988, Plant molecular biology manual A5:1-9)に記載されている。各アグロバクテリウムの処理に関して、40のリーフディスクを形質転換した。同時培養(co-cultivation)の開始後10 日後、リーフディスクをXglucを基質として用いたGUS 染色に使用した(Jefferson et al. 1987 EMBO J. December 20; 6(13): 3901-3907)。各リーフディスクに関して、青色スポットの数を計数した。リーフディスク形質転換の結果を以下の表1に提供する。
【0117】
表 1: 形質転換後に異なる株 ― プラスミドの組み合わせを用いて得られたリーフディスク毎のgusスポットの平均 (AVG) 数。各標準偏差 (SD)に関して、最大数 (MAX) および 最小数 (MIN)も同様に計数した。
【0118】
【表1】

【0119】
リーフディスク形質転換およびアグロバクテリウム浸潤(データ示さず)の双方によって、EHA105-dE2が、VirEの破壊の結果としてT-DNAを植物細胞に有意に伝達する能力がないことが示された。しかしながら、VirE2中への挿入は、VirE2を発現している別々のプラスミドを加えることで補完できる。
【0120】
例 2: EHA105-dE2を用いる同時形質転換
次の同時形質転換実験において、EHA105-dE2株はnptII 遺伝子(植物の形質転換体の選択のため, カナマイシン抵抗性を与える; nptII遺伝子は、本発明による植物選択可能なマーカー遺伝子を例示する)を有するT-DNAを送達するための株として使用され、EHA105はgusA 遺伝子〔gusA 遺伝子は、本発明による所望の遺伝子(GOI)を例示する〕を有するT-DNAを送達するため使用される。このカップルの性能を比較するため、他の組み合わせが同様に使用された。
【0121】
使用されたプラスミド
pTiBo542 VirE オペロン(の部分)を保持しているプラスミド pKG6330は、例 1 および 図 2に記載されている。プラスミド pKG6305は、pKG6330と同じベクター バックボーンを有するが、pTiBo542 VirG 遺伝子 プロモーター および VirG 遺伝子 ORFを保持する(例 1 および 図 1に記載されている)。さらに、T-DNAを有する二つのプラスミドが使用される。一方のプラスミドはアグロバクテリウムのRBおよびLB配列の間にnosプロモーター ― nptII遺伝子 ― nosターミネーター構築物を保持し、他方はアグロバクテリウムのRBおよびLB配列の間に35S プロモーター ― gusA遺伝子(ジャガイモ LS1 イントロンをともなう) ― nosターミネーター構築物を保持する〔LS1 イントロンをともなうgusA 遺伝子は、Vancanneyt等(Vancanneyt et al 1990, MGG 220(2):245-250)により記載されている〕。nptII T-DNAを有する株は「nptII ドナー」と称され、gusA T-DNAを有する株は「gusA ドナー」と称される。
【0122】
同時形質転換に使用される株 ― プラスミドの組み合わせ
以下の表 2に試験した株 ― プラスミドの組み合わせを示す。各実験のこれらの組み合わせに加えて、選択培地(selection medium)および選択なしの培地(medium without selection)の両方に非形質転換のコントロールも同様に含められた。
【0123】
表 2: アグロバクテリウム ツメファシエンス株および(同時)形質転換実験に使用されたプラスミドの組み合わせ。
【0124】
【表2】

【0125】
トマトの子葉のエクスプラントの形質転換実験
トマトの形質転換プロトコールは、Koornneef等(Koornneef et al.(Transformation of tomato; In: Tomato Biotechnology, Donald Nevins and Richard Jones, eds.Alan Liss Inc., New York, USA, pag.169-178))およびKoornneef等(Koornneef et al. 1987, Theor.Appl.Genet. 74: 633-641)記載されている。同時形質転換に関して、希釈したアグロバクテリウム培養物は、それぞれnptII ドナー 株 および gusA ドナー 株に関して1:3の比率で混合された。記載されたプロトコールの残りは、変化させていない。
【0126】
トマトの新芽が出現したときに、それらを収穫し、1 mg/l IBA, 200 mg/l セフォタキシム, 200 mg/l バンコマイシン, および 100 mg/l カナマイシンを含んでいる固形のMS20 培地に根付かせた。
【0127】
得られた苗の分析
DNAは、再生された苗から単離され、T-DNAsの存在に関してPCRを用いて分析された。nptIIに関して、PCRプライマーは、次のとおりである: Fw 5'- GTCCCGCTCAGAAGAACT -3' および Rv 5'- GGCACAACAGACAATCGG -3'; gusAのプライマーペアは、次のとおりである: Fw 5'- GGGCAGGCCAGCGTATCGT -3' および Rv 5'- GTGTTCGGCGTGGTGTAGAGCAT -3'。各反応に関して、50 ngの植物DNA および 1 ユニットのAmpliTaq red (Perkin Elmer)が使用された。使用されるPCR プロフィールは、3 min 94゜C - (30 sec 94゜C - 30 sec 55゜C - 1 min 72゜C) x30 - 4゜C 長時間である。1x TAE中の1.5% アガロース ゲルでエチジウムブロマイド(EtBr)での染色で10 μlの各反応が分析される。
【0128】
両方のT-DNAsがゲノムに統合された様式(カップルした様式又は非カップルの様式)を評価するため、オリジナルの形質転換体と自殖した。後代を、上記のとおり両方のT-DNAsの存在に関してPCRを用いて分析した。
【0129】
結果
EHA105-dE2 (nptII ドナー)とEHA105 (gusA ドナー)との処理で(表 2, 試験組み合わせ1)、五つの植物が再生された。上記のとおりPCRを用いて、両方のT-DNAsの存在を示しているPCR産物が全ての五つの植物から得られた(100%の同時形質転換効率)。
【0130】
例 3: タバコの同時形質転換
第二の同時形質転換実験を、当該技術分野において周知のアグロバクテリウムの形質転換および再生およびGUS 染色プロトコールを用いてタバコ (Nicotiana tabacum) cv.SR1で行った。適用された同時形質転換処理は、nptII T-DNAを保持しているVirE2-欠損株とgus T-DNAのみを保持している野生株との1:3の比率(または代わりに1:1の比率)の混合物から構成された。両方の処理に関して、コントロールの条件も適用され、非欠損(VirE2 野生型)株のみの同じ混合比率からなるものであった。結果を表3に要約する。最高の条件(1:1の混合比率)において、コントロール株の53.3%(処理 4)の同時形質転換効率に対して、82.5%の同時形質転換効率が観察された(処理 3)。この効果は、P < 0.05 (カイ二乗 = 25.82)で有意である。二つの株の1:3の混合比率が適用された場合(処理 1)、同時形質転換効率は74.5% 対 55.6%(コントロールにおいて)であった。この差は、P < 0.05 (カイ二乗 = 6.81)で同様に有意であった。
【0131】
表 3: タバコをVirE2-欠損株で形質転換した後に得られたGUS陽性植物の平均(AVG)数。同時形質転換体の処理 1は、nptII T-DNAを有する EHA105-dE2 : gus T-DNAを有するEHA105のアグロバクテリウム株の1:3 混合物である。同時形質転換体の処理 2は、nptII T-DNAを有する EHA105 : gus T-DNAを有するEHA105のアグロバクテリウム株の1:3 混合物である。同時形質転換体の処理 3は、nptII T-DNAを有する EHA105-dE2 : gus T-DNAを有するEHA105のアグロバクテリウム株の1:1 混合物である。同時形質転換体の処理 4は、nptII T-DNAを有する EHA105 : gus T-DNAを有するEHA105のアグロバクテリウム株の1:1 混合物である。
【0132】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の遺伝子を含んでいる選択可能なマーカーフリーのトランスジェニック植物を作出するための方法であって、以下の工程を含んでいる方法:
a) 二つのアグロバクテリウム株、機能的な virE2 タンパク質をコード化している遺伝子を含んでいるvirE2 ドナー株および機能的な virE2 タンパク質を産生する能力がないvirE2 変異体株を提供すること、
b) 所望の遺伝子を含んでいるT-DNAを前記virE2 ドナー株に導入すること、
c) 選択可能なマーカー遺伝子を含んでいるT-DNAを前記virE2 変異体株に導入すること、
d) 植物細胞を両方の株と接触させること、および
e) 植物細胞または再生した植物を選択可能なマーカー遺伝子産物により与えられた表現型を用いて選択すること、および、任意で、
f) 選択した植物を交配または自殖して子孫を産生すること、および、任意で、
g) 選択可能なマーカー遺伝子を含む子孫を廃棄(discarding)すること及び所望の遺伝子を含むが、選択可能なマーカー遺伝子を欠く子孫を保持(retaining)すること。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記virE2 ドナー株は、各々が機能的な virE2 タンパク質をコード化している少なくとも二つのvirE2 遺伝子を含む方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記virE2変異体株は前記virE2 遺伝子に挿入を含む及び/又は前記virE2 遺伝子の部分または全てが削除および/または置換される方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記virE2変異体株はアクセッション番号 CBS 121809として寄託された株,又はその派生体である方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、一つのvirE2 遺伝子がTi-プラスミドに存在し、一つのvirE2 遺伝子がヘルパープラスミドに存在する方法。
【請求項6】
先行する請求項の何れか一項に記載の方法であって、前記T-DNAsはDNAベクターまたはプラスミドに導入され、前記T-DNAsは少なくともライトボーダー配列を含む方法。
【請求項7】
先行する請求項の何れか一項に記載の方法であって、前記virE2変異体株と前記virE2 ドナー株との比率が1 : 1, 1 : 2, 1 : 3, 1 : 4, 1 : 5又はそれ以上である方法。
【請求項8】
先行する請求項の何れか一項に記載の方法であって、前記同時形質転換効率が少なくとも 60%, 好ましくは少なくとも 80%, 90%または100%である方法。
【請求項8】
前記virE2 遺伝子にDNA挿入を含んでおり、機能的な virE2 タンパク質を作出できないアグロバクテリウム株。
【請求項9】
アクセッション番号 CBS 121809として寄託された株,又はその派生体である、請求項8に記載の株。
【請求項10】
機能的な virE2 タンパク質を産生する能力がなく、選択可能なマーカー 遺伝子を含んでいるT-DNAを含んでいるアグロバクテリウム株と共に、機能的な virE2 タンパク質をコード化している遺伝子および所望の遺伝子を含んでいるT-DNAを含んでいるアグロバクテリウム株の、植物細胞と前記二つのT-DNAsとの同時形質転換のための使用。
【請求項11】
請求項10に記載の使用であって、内因性のvirE2 遺伝子が前記virE2 遺伝子の全てまたは部分の挿入, 削除および/または置換を含んでいる使用。
【請求項12】
第一および第二のアグロバクテリウム株を含んでいる同時形質転換キットであって、前記第一の株は前記Ti-プラスミドのvirE2 遺伝子における挿入, 削除および/または置換が原因で機能的な virE2 タンパク質を産生する能力がなく、前記第二の株は機能的な virE2 タンパク質をコード化している遺伝子を含んでいるキット。
【請求項13】
請求項12に記載のキットであって、前記第二の株は、機能的な virE2 タンパク質をコード化している少なくとも二つのvirE2 遺伝子を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2011−505806(P2011−505806A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536869(P2010−536869)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050775
【国際公開番号】WO2009/072883
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(505477187)ケイヘーネ・エヌ・ブイ (10)
【Fターム(参考)】