説明

マーキングトルクレンチのソケット装着構造

【課題】簡単な構成で、且つ、外観に基づいてソケットの装着状態をユーザーが確認することが容易なマーキングトルクレンチのソケット装着構造を提供する。
【解決手段】ロック部材40は、ソケット本体30の他端部の側面上に配置され、ソケット本体30に向かって突出してロック孔34に挿入されるロックピン64と、ソケット本体30を挟んでロックピン64の反対側に位置する作用部55とを有し、作用部55がソケット本体30の被覆部33から離間する第1の位置と、作用部55が第1の位置よりも被覆部33に近接する第2の位置との間で移動可能であり、コイルバネ20によって第1の位置に付勢される。ロックピン64の先端部65は、第1の位置への移動に伴って、ドライブ11の係合凹部12に進入して係合凹部12と係合し、第2の位置への移動に伴って、ドライブ11の係合凹部12から外れて係合凹部12との係合を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト又はナットを締め付け、締め付けたボルト又はナットに対してマーキングするマーキングトルクレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
マーキングトルクレンチとして、複数種類の大きさのボルト又はナットに対応させたり、マーキングの色を変更したりするために、トルクを出力する部材に対して、ボルト又はナットに係合するソケットが複数用意されて着脱自在に取り付けられる構造が知られている。
【0003】
特開2006−136994号公報には、棒状ハンドルとソケットとを有するマーキング機能付きレンチが記載されている。
【0004】
棒状ハンドルは、ソケットを嵌め付けるための角ドライブが設けられ、作業者により回動される。ソケットは、一端部側に、角ドライブの横穴に係合する鋼球が円錐コイルバネで弾発された状態で設けられている。また、鋼球と円錐コイルバネの脱落を防止するための蓋部材が設けられている。また、他端側に、ボルト又はナットに嵌合する雌形嵌合部が形成されている。
【0005】
特開2000−263460号公報には、ねじ締め出力軸と、ねじ締め出力軸に着脱自在の嵌合保持されるマーカー筒と、マーカー筒に螺着されナットに係合するソケットとを有するトルクレンチのマーカー機構が記載されている。
【0006】
ねじ締め出力軸は、下端部外側周面に複数の鋼球受け凹部が形成されている。マーカー筒は、鋼球と押え環とを有する。鋼球は、押え環の位置に応じて、ねじ締め出力軸の鋼球受け凹部に押し込まれる位置と押し込まれない位置とに移動する。
【0007】
【特許文献1】特開2006−136994号公報
【特許文献2】特開2000−263460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特開2006−136994号公報の構成では、角ドライブの横穴に付勢される鋼球が蓋部材によって覆われているため、外観に基づいて角ドライブの横穴に鋼球が付勢されている状態であるか否かを作業者が判断することが難しい。
【0009】
また、上記特開2000−263460号公報の構成では、押え環の位置に応じて、ねじ締め出力軸の鋼球受け凹部に押し込まれる位置と押し込まれない位置とに鋼球が移動するため、外部に露出した押え環の位置に基づいて、マーカー筒がねじ締め出力軸に嵌合保持されている状態であるか否かを作業者が判断することが可能であると考える。
【0010】
しかし、かかる構成では、鋼球や押え環のほかに、当該鋼球や押え環の移動範囲を規制して外れ落ちることを防止する構成が必要であるため、構造の複雑化や、部品点数の増大を招いてしまう。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、且つ、外観に基づいてソケットの装着状態をユーザーが確認することが容易なマーキングトルクレンチのソケット装着構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、本発明のマーキングトルクレンチのソケット装着構造は、ソケット本体とトルク出力部材とマーキング機構とロック部材と付勢部材とを備える。
【0013】
ソケット本体は、一端部と他端部とを有する。一端部は、ボルト又はナットと係合可能である。他端部は、端面から凹む装着凹部と側面から装着凹部へ貫通するロック孔とが形成される。トルク出力部材は、装着凹部に差し込まれて装着凹部と回転方向に係合する装着軸部を有し、装着凹部と装着軸部との係合によってソケット本体が着脱自在に取り付けられる。マーキング機構は、ソケット本体がトルク出力部材に取り付けられた状態で、ソケット本体の他端部からソケット本体の内部を通り、一端部で係合するボルト又はナットに対してマーキングする。ロック部材は、ソケット本体の他端部の側面上に配置されて露出し、ロックピンと作用部とを有する。ロックピンは、ソケット本体に向かって突出してロック孔に挿入された状態に維持される。作用部は、ソケット本体を挟んでロックピンの反対側に位置する。ロック部材は、作用部がソケット本体の他端部の側面から離間する第1の位置と、作用部が第1の位置よりも他端部の側面に近接する第2の位置との間で移動可能である。付勢部材は、ロック部材を第1の位置に付勢する。
【0014】
トルク出力部材の装着軸部は、軸側面から凹む係合凹部を有する。ロックピンの先端部は、ロック部材の第1の位置への移動に伴って、装着凹部に差し込まれた装着軸部の係合凹部に進入して係合凹部と係合し、ロック部材の第2の位置への移動に伴って、装着凹部に差し込まれた装着軸部の係合凹部から外れて係合凹部との係合を解除する。
【0015】
上記構成では、トルク出力部材にソケット本体が装着されていないときには、ロック部材が付勢部材によって第1の位置に付勢されている。
【0016】
ユーザーがマーキングトルクレンチを使用するためにトルク出力部材にソケット本体を装着する場合、まず、ロックピンの先端部が装着凹部に突出している状態で第1の位置に付勢されているロック部材を、ロックピンの先端部が装着凹部に突出しない第2の位置に向けて移動させる。ロック部材を第1の位置から第2の位置に向けて移動させるには、例えば、ロック部材の作用部がソケット本体の他端部の側面に近接するように、付勢部材の付勢力に抗する方向にロック部材をソケット本体に向けて押圧してもよい。次に、ロック部材を第1の位置から第2の位置に向けて移動させた状態で、ソケット本体の装着凹部にトルク出力部材の装着軸部を差し込んで、装着軸部の係合凹部とソケット本体のロック孔とを対向させる。付勢部材の付勢力に抗する力が解除された状態で、係合凹部とロック孔とが対向すると、付勢部材によってロック部材が第1の位置に移動して、トルク出力部材にソケット本体が完全に装着される完全装着状態となる。完全装着状態では、装着軸部が装着凹部に回転方向に係合するとともに、装着軸部の係合凹部にロックピンの先端部が進入して係合凹部と係合してトルク出力部材からソケット本体が抜け落ちないため、良好な使用感でマーキングトルクレンチを使用することができる。
【0017】
また、ユーザーがトルク出力部材からソケット本体を取り外す場合は、まず、ロック部材の作用部がソケット本体の他端部の側面に近接するように、付勢部材の付勢力に抗する方向にロック部材をソケット本体に向けて押圧して、ロック部材を第1の位置から第2の位置に向けて移動させる。ロック部材が第2の位置のときは、装着軸部の係合凹部からロックピンの先端部が外れて係合凹部との係合が解除される。このため、ソケット本体の装着凹部からトルク出力部材の装着軸部を引き抜くことによって、トルク出力部材からソケット本体を取り外し、ソケット本体の交換作業などを行うことができる。
【0018】
従って、ユーザーがロック部材を第1の位置から第2の位置に向けて移動させるという簡単な作業によって、トルク出力部材にソケット本体を着脱することができる。
【0019】
また、トルク出力部材にソケット本体を装着する作業を行う場合に、係合凹部とロック孔とが対向していないときには、ロックピンの先端部が係合凹部に係合しないため、トルク出力部材へのソケット本体の装着が完全ではない不完全取付状態となる。不完全取付状態では、露出するロック部材が第1の位置に戻らない。従って、ユーザーは、ロック部材が第1の位置であるか否かを確認することによって、トルク出力部材にソケット本体が完全装着状態で取り付けられているか否かを、容易に判断することが可能である。
【0020】
また、トルク出力部材に装着されたソケット本体をロックするロック機構のうち、ソケット本体側は、ソケット本体の側面に形成されたロック孔と、ソケット本体の側面上に配置されたロック部材と付勢部材とを備えていればよい。従って、マーキング機構の一部が配置されるソケット本体の内部構造を変更することなく、ロック機構を追加して構成することができる。
【0021】
また、ソケット本体の他端部は、側面のうちロック部材の作用部と対向する位置から凹んでロック孔の貫通方向と略平行に延びるガイド凹部を有してもよく、ロック部材は、作用部から突出してガイド凹部に挿入された状態に維持されるガイド突起を有してもよい。ロック部材が第1の位置から移動する際に、ガイド凹部は、ロック部材が第2の位置に案内されるようにガイド突起の移動方向を規制する。
【0022】
上記構成では、ガイド凹部がガイド突起の移動方向を規制するため、ユーザーがロック部材を第2の位置から第1の位置に押圧する際に、押圧する力の方向がロック孔の貫通方向と完全に平行でなくある程度の角度を有している場合であっても、第1の位置から第2の位置にロック部材を円滑に移動させることができ、操作性が良好である。
【0023】
また、ロック部材は、リング形状を有してもよく、ソケット本体の他端部の側面は、ロック部材の近傍で露出する円周面状部を有してもよい。ロック部材が第1の位置にあるとき、ロック部材の外周面と、ソケット本体の円周面状部とは、略同心円状に配置される。
【0024】
上記構成では、ユーザーは、ロック部材の外周面とソケット本体の円周面状部との外観が略同心円で揃っている第1の位置と、それらの外観が揃っていない第2の位置との何れにロック部材が位置しているかを一見して判別することができ、ソケット本体の装着状態を非常に容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、簡単な構成で、且つ、外観に基づいてソケットの装着状態をユーザーが確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0027】
図1は本発明の実施形態に係るマーキングトルクレンチの断面図であり、図2は図1のマーキングトルクレンチのソケットの断面図であり、図3は図2のソケットのIII−III方向から視た断面図であり、図4は図3のソケットのロック部材が第2の位置に移動した状態の断面図である。なお、図1及び図2の断面は、ボルト又はナットが締め付けられるときのソケットの回転軸を含む面である。また、図3及び図4の断面は、ボルト又はナットが締め付けられるときのソケットの回転軸に対して垂直方向の断面である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係るマーキングトルクレンチ1は、ハンドル10とソケット15とを備え、さらに図示しないマーキング装置を備える。
【0029】
ハンドル10は、トルク出力部材を構成し、ドライブ11を有する。
【0030】
ドライブ11は、装着軸部を構成し、中心に孔を有する四角柱形状部材であり、4つの外側面のうち1つの面にカップ状に凹む係合凹部12を有する。
【0031】
ソケット15は、コイルバネ20とソケット本体30とロック部材40とを備え、ハンドル10に対して着脱自在に取付けられる。
【0032】
コイルバネ20は、付勢部材を構成し、円筒形状の圧縮コイルバネである。
【0033】
ソケット本体30は、締結部(図示省略)と装着凹部32と被覆部33とロック孔34と、ガイド凹部35とを有する。ソケット本体30の外側面は、所定の軸を中心とする同心円形状の円周面を有する。係る所定の軸は、ボルト又はナットを締め付けるときの回転軸と同じである。
【0034】
締結部は、ソケット本体30の一端部(図1下方であり図示省略)の内側面に形成され、ボルト又はナットが係合する多面形状を有する。本実施形態では、使用される複数のボルト又はナットの径に対応する締結部を有するソケット15がそれぞれ用意される。
【0035】
装着凹部32は、ソケット本体30の他端部の内側面に形成され、図3、図4方向から視て断面が四角形状の凹状部である。装着凹部32とドライブ11との係合によってソケット本体30がハンドル10に着脱自在に取り付けられる。装着凹部32にドライブ11が差し込まれて、ドライブ11の軸を中心にハンドル10がユーザーによって回動されると、装着凹部32とドライブ11とが回転方向に係合し、発生したトルクがドライブ11を介してソケット本体30に入力する。
【0036】
被覆部33は、ソケット本体30の他端部の外側面に形成され、近傍よりも径の小さい円形の断面形状を有する。
【0037】
ロック孔34は、被覆部33に形成された孔状部であり、装着凹部32へ貫通する。
【0038】
ガイド凹部35は、被覆部33に形成された凹状部であり、ロック孔34の貫通する方向と平行に延びる。本実施形態では、ガイド凹部35は、ロック孔34が貫通する直線状に形成される。ガイド凹部35は、コイルバネ20の外径とほぼ同じ大きさの孔状部で、コイルバネ20の一端を保持する。
【0039】
ロック部材40は、リング部材50とピン部材60とガイド部材70とにより形成され、ロックピン64と、作用部55とを有し、ソケット本体30の被覆部33上に配置されて露出する。
【0040】
リング部材50は、厚肉部51と薄肉部52とロック固定孔53とガイド固定孔54とを有する。リング部材50は、図3、図4方向から視た断面が、外周面と内周面とが偏心の円形を有するリング状部材であり、かかる形状によって、リング部材50のうち、外周面と内周面との2つの円の中心を通る直線と交叉する部分は、外周面の円の中心に近い部分が肉厚状の厚肉部51となり、内周面の円の中心に近い部分が肉薄状の薄肉部52となる。
【0041】
ロック固定孔53は、厚肉部51に形成され、ナット状のネジ溝を有する貫通された孔状部である。ガイド固定孔54は、薄肉部52に形成され、ナット状のネジ溝を有する貫通された孔状部である。
【0042】
ピン部材60は、極低頭六角穴付ボルト61に六角柱状の足を有する装飾部材62が固着形成された部材であり、リング部材50のロック固定孔53と係合するボルト状のネジ溝が首下の根元部分に形成されている。ピン部材60は、ロック固定孔53に係合する。
【0043】
ガイド部材70は、極低頭六角穴付ボルト71に六角柱状の足を有する装飾部材72が固着形成された部材であり、リング部材50のガイド固定孔54と係合するボルト状のネジ溝が首下の根元部分に形成されている。ガイド部材70は、ガイド固定孔54に係合する。
【0044】
ピン部材60のうち露出する頭部63と、ガイド部材70のうち露出する頭部73とは異なる形態を有する。具体的には、ガイド部材70の頭部73が、ピン部材60の頭部63よりも突出した形状を有する。
【0045】
なお、本実施形態では、ピン部材60とガイド部材70とは、どちらも2部品で構成されているが、1部品によって構成してもよい。
【0046】
ロックピン64は、ピン部材60の足部によって形成される部分であり、ソケット本体30に向かって突出してロック孔34に挿入された状態に維持される。
【0047】
作用部55は、リング部材50の薄肉部52及びガイド部材70の足部によって構成される部分であり、ソケット本体30を挟んでロックピン64の反対側で、ガイド凹部35に対向配置され、ガイド部74を有する。
【0048】
ガイド部74は、ガイド突起を構成し、ガイド凹部35に向けて突出する。ガイド部74は、コイルバネ20のうちガイド凹部35に保持されている一端に対する他端側へ先端部75が進入した状態で、コイルバネ20の他端を保持する。ガイド部74は、先端部75がコイルバネ20の中で、ガイド凹部35に挿入された状態に維持され、ガイド凹部35に沿って進入可能である。
【0049】
ロック部材40は、作用部55がソケット本体30の被覆部33から離間する第1の位置(図3に示す)と、第1の位置よりも作用部55がソケット本体30の被覆部33に近接する第2の位置(図4に示す)とに移動可能である。
【0050】
ロック部材40が第1の位置にあるとき、ロック部材40のリング部材50の外周面と、ソケット本体30の円周面とは、略同心円状に配置される。
【0051】
なお、ロック部材40のリング部材50の厚肉部51の厚さは、ソケット本体30の被覆部33の円周面とその近傍の円周面との半径の差の距離に近いことが望ましい。係る厚さに厚肉部51を構成することにより、第1の位置のときにソケット本体30とロック部材40との外面の位置が揃い、ソケット15全体として均整の取れた外観になる。
【0052】
また、ロックピン64の先端部65は、ロック部材40の第1の位置への移動に伴って、装着凹部32に差し込まれたドライブ11の係合凹部12に進入して係合凹部12と係合し、ロック部材40の第2の位置への移動に伴って、装着凹部32に差し込まれたドライブ11の係合凹部12から外れて係合凹部12との係合を解除する。
【0053】
また、ロック部材40が第1の位置から移動する際に、ガイド凹部35は、ロック部材40が第2の位置に案内されるようにガイド部74の移動方向を規制する。
【0054】
また、ロック部材40は、ソケット本体30のガイド凹部35に一端が当接するコイルバネ20の他端がガイド部74に当接することによって、第1の位置に付勢される。すなわち、コイルバネ20には、第1の位置の状態で圧縮される大きさのものが使用される。
【0055】
マーキング装置は、マーキング機構を構成し、ハンドル10内及びソケット15内に構成の一部が設けられ、ソケット15がハンドル10に取り付けられた状態で、ソケット15の他端側からソケット15の内部を通り、インクを備えたマーキング部が締結部の上方に配置される。マーキング装置は、ボルト又はナットを締め付けるトルクが所定値を超えたときに、マーキング部によって、ボルト又はナットをインクによってマーキングする。
【0056】
上記構成では、ハンドル10にソケット15が装着されていないときには、ロック部材40がコイルバネ20によって第1の位置に付勢されている。
【0057】
ユーザーがマーキングトルクレンチ1を使用するためにハンドル10にソケット15を装着する場合、まず、ロックピン64の先端部65が装着凹部32に突出している状態で第1の位置に付勢されているロック部材40を、ロックピン64の先端部65が装着凹部32に突出しない第2の位置に向けて移動させる。ロック部材40を第1の位置から第2の位置に向けて移動させるには、例えば、ロック部材40の作用部55がソケット本体30の被覆部33に近接するように、コイルバネ20の付勢力に抗する方向にロック部材40をソケット本体30に向けて押圧してもよい。次に、ロック部材40を第1の位置から第2の位置に向けて移動させた状態で、ソケット本体30の装着凹部32にハンドル10のドライブ11を差し込んで、ドライブ11の係合凹部12とソケット本体30のロック孔34とを対向させる。コイルバネ20の付勢力に抗する力が解除された状態で、係合凹部12とロック孔34とが対向すると、コイルバネ20によってロック部材40が第1の位置に移動して、ハンドル10にソケット15が完全に装着される完全装着状態となる。完全装着状態では、ドライブ11が装着凹部32に回転方向に係合するとともに、ドライブ11の係合凹部12にロックピン64の先端部65が進入して係合凹部12と係合してハンドル10からソケット15が抜け落ちないため、良好な使用感でマーキングトルクレンチ1を使用することができる。
【0058】
また、ユーザーがハンドル10からソケット15を取り外す場合は、まず、ロック部材40の作用部55がソケット本体30の被覆部33に近接するように、コイルバネ20の付勢力に抗する方向にロック部材40をソケット本体30に向けて押圧して、ロック部材40を第1の位置から第2の位置に向けて移動させる。ロック部材40が第2の位置のときは、ドライブ11の係合凹部12からロックピン64の先端部65が外れて係合凹部12との係合が解除される。このため、ソケット本体30の装着凹部32からハンドル10のドライブ11を引き抜くことによって、ハンドル10からソケット15を取り外し、ソケット15の交換作業などを行うことができる。
【0059】
従って、ユーザーがロック部材40を第1の位置から第2の位置に向けて移動させるという簡単な作業によって、ハンドル10にソケット15を着脱することができる。
【0060】
また、ハンドル10にソケット15を装着する作業を行う場合に、係合凹部12とロック孔34とが対向していないときには、ロックピン64の先端部65が係合凹部12に係合しないため、ハンドル10へのソケット15の装着が完全ではない不完全取付状態となる。不完全取付状態では、露出するロック部材40が第1の位置に戻らない。従って、ユーザーは、ロック部材40が第1の位置であるか否かを確認することによって、ハンドル10にソケット15が完全装着状態で取り付けられているか否かを、容易に判断することが可能である。
【0061】
また、ハンドル10とソケット15とをロックするロック部材40を、ソケット本体30の側面上に配置するとともに、ソケット本体30の側面にロック孔34を形成する。このため、マーキング機構の一部が配置されるソケット本体30の内部構造を変更することなく、ソケット着脱構造を追加して構成することができる。
【0062】
また、ハンドル10に装着されたソケット15をロックするロック機構のうち、ソケット15側は、ソケット本体30の側面に形成されたロック孔34と、ソケット本体30の側面上に配置されたロック部材40とコイルバネ20とを備えていればよい。従って、マーキング機構の一部が配置されるソケット本体30の内部構造を変更することなく、ロック機構を追加して構成することができる。
【0063】
また、ガイド凹部35がガイド部74の移動方向を規制するため、ユーザーがロック部材40を第2の位置から第1の位置に押圧する際に、押圧する力の方向が、ロック孔34の貫通方向と完全に平行でなくある程度の角度を有している場合であっても、第1の位置から第2の位置にロック部材40を円滑に移動させることができ、操作性が良好である。
【0064】
また、ピン部材60の露出する頭部63とガイド部材70の露出する頭部73とが異なる形態を有することによって、ロックピン64を備える側とガイド部74を備える側とをユーザーが判別することができ、ユーザーがロック部材40を第1の位置から第2の位置へ移動する場合に押圧する箇所の目印となる。
【0065】
また、リング部材50に対してピン部材60とガイド部材70とをネジによる締結構造としているため、リング部材50、ピン部材60、ガイド部材70、コイルバネ20の各構成部品に磨耗などの不具合が生じた場合に、当該不具合が生じた部品のみを交換することが可能である。
【0066】
また、ユーザーは、ロック部材40のリング部材50の露出する外周面と、その近傍で露出するソケット本体30の円周面との外観が略同心円で揃っている第1の位置と、それらの外観が揃っていない第2の位置との何れにロック部材40が位置しているかを一見して判別することができ、ソケット15の装着状態を非常容易に確認することができる。
【0067】
また、リング部材50が厚肉部51と薄肉部52とを有するため、ロック部材40と比較して大型の部材であるソケット本体30の外周面を所定の軸に対して略同心円の外周面を有する比較的単純な形状にすることができるため、作成が容易となる。
【0068】
なお、ロック部材40が第1の位置のときのロック部材40とソケット本体30との外観を略同心円で揃えるためには、上記構成に限らず、例えば、ロック部材40のリング部材50を、薄肉部52と同じ厚さで均一の圧さの形状で構成してもよい。この場合、リング部材50のうちロックピン64が固定される部分の内周面側に、ソケット本体30へ向けて突出したボス部を一体又は別体として設けたり、また、ソケット本体30のロック孔34のうち第1の位置におけるロック部材40との当接部に、ロック部材40へ向けて突出したボス部を一体又は別体として設けたりしてもよい。また、ソケット本体30の被覆部33の断面形状のうち第1の位置におけるロック部材40との当接側を肉厚に予め形成してもよい。
【0069】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【0070】
例えば、上記した実施形態では、ロックピン64が、ロック部材の第2の位置から第1の位置への移動方向に突出した形状(円柱形)を有すると共に、ドライブ11の先端部及び係合凹部12のうちソケット15の着脱時にロックピン64と接触し得る部分が、ロック部材40の第2の位置から第1の位置への移動方向の面を有する。このため、ハンドル10にソケット15を装着する場合も取り外す場合も、ユーザーがロック部材40を第1の位置から第2の位置へ移動させる必要があった。しかし、これに限らず、ロックピン64の上側(ソケット本体30の他端部側)と、ドライブ11の先端部とのうち、少なくとも一方に、ハンドル10にソケット15を取り付けるときに相手部材へ面を向けて傾斜する形状のガイド面を、相手部材に接触する部分に形成してもよい。
【0071】
係る構成により、ユーザーによって装着凹部32にドライブ11を差し込む作業がなされたときには、ユーザーがロック部材40を第1の位置から第2の位置へ向けて押圧しなくとも、ロックピン64の先端部65にドライブ11の先端部が当接してガイド面に案内されることによってロック部材40が一旦第2の位置まで移動し、さらに係合凹部12がロック孔34に対向する位置まで差し込まれると、コイルバネ20の付勢力によってロック部材40が第1の位置に移動して、ハンドル10にソケット15が完全装着状態で取り付けられる。このため、ハンドル10にソケット15を装着させる作業の作業性が向上する。また、完全装着状態でハンドル10に取り付けられたソケット15は、前記した実施形態と同様に、ユーザーがロック部材40を第1の位置から第2の位置へ移動させなければ取り外すことができないため、マーキングトルクレンチ1の使用中にソケット15が抜け落ちてしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は本発明の実施形態に係るマーキングトルクレンチの断面図である。
【図2】図1のマーキングトルクレンチのソケットの断面図である。
【図3】図2のソケットのIII−III方向から視た断面図である。
【図4】図3のソケットのロック部材が第2の位置に移動した状態の断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1:マーキングトルクレンチ
10:ハンドル(トルク出力部材)
11:ドライブ(装着軸部)
12:係合凹部
30:ソケット本体
32:装着凹部
34:ロック孔
35:ガイド凹部
40:ロック部材
55:作用部
74:ガイド部(ガイド突起)
64:ロックピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト又はナットと係合可能な一端部と、端面から凹む装着凹部と側面から前記装着凹部へ貫通するロック孔とが形成された他端部と、を有するソケット本体と、
前記装着凹部に差し込まれて当該装着凹部と回転方向に係合する装着軸部を有し、前記装着凹部と前記装着軸部との係合によって前記ソケット本体が着脱自在に取り付けられるトルク出力部材と、
前記ソケット本体が前記トルク出力部材に取り付けられた状態で、前記ソケット本体の前記他端部から当該ソケット本体の内部を通り、前記一端部で係合するボルト又はナットに対してマーキングするマーキング機構と、
前記ソケット本体の前記他端部の側面上に配置されて露出し、前記ソケット本体に向かって突出して前記ロック孔に挿入された状態に維持されるロックピンと、前記ソケット本体を挟んで前記ロックピンの反対側に位置する作用部と、を有し、前記作用部が前記ソケット本体の前記他端部の側面から離間する第1の位置と前記作用部が当該第1の位置よりも前記他端部の側面に近接する第2の位置との間で移動可能なロック部材と、
前記ロック部材を前記第1の位置に付勢する付勢部材と、を備え、
前記トルク出力部材の前記装着軸部は、軸側面から凹む係合凹部を有し、
前記ロックピンの先端部は、前記ロック部材の前記第1の位置への移動に伴って、前記装着凹部に差し込まれた前記装着軸部の前記係合凹部に進入して当該係合凹部と係合し、前記ロック部材の前記第2の位置への移動に伴って、前記装着凹部に差し込まれた前記装着軸部の前記係合凹部から外れて当該係合凹部との係合を解除する
ことを特徴とするマーキングトルクレンチのソケット装着構造。
【請求項2】
請求項1に記載のマーキングトルクレンチのソケット装着構造であって、
前記ソケット本体の前記他端部は、前記側面のうち前記ロック部材の前記作用部と対向する位置から凹んで前記ロック孔の貫通方向と略平行に延びるガイド凹部を有し、
前記ロック部材は、前記作用部から突出して前記ガイド凹部に挿入された状態に維持されるガイド突起を有し、
前記ロック部材が前記第1の位置から移動する際に、前記ガイド凹部は、前記ロック部材が前記第2の位置に案内されるように前記ガイド突起の移動方向を規制する
ことを特徴とするマーキングトルクレンチのソケット装着構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のマーキングトルクレンチのソケット装着構造であって、
前記ロック部材は、リング形状を有し、
前記ソケット本体の前記他端部の側面は、前記ロック部材の近傍で露出する円周面状部を有し、
前記ロック部材が前記第1の位置にあるとき、前記ロック部材の外周面と、前記ソケット本体の前記円周面状部とは、略同心円状に配置される
ことを特徴とするマーキングトルクレンチのソケット装着構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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