説明

マーキング装置及びマーキング方法

【課題】マーキングによるマークの鮮明さを向上させることが可能なマーキング装置及びマーキング方法を提供する。
【解決手段】マーキング装置80は、長手方向に移送される被覆電線125の保護層123に、被覆電線125の周方向に所定の長さを有するマークを施すものである。このマーキング装置80は、それぞれが被覆電線125の長手方向に所要の間隔で設けられ、周方向に所定の長さ未満となるマークを保護層123に施す複数のマーキングローラ81f,82fを備えている。さらに、マーキング装置80は、複数のマーキングローラ81f,82fによって施された複数の線状マークによって、周方向に所定の長さを有する幅広線状マークを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマーキング装置及びマーキング方法に関し、さらに詳しくは、被覆電線の表面にマークを施す印刷技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の被覆部にマーキングを施すマーキング装置及びマーキング方法としては、インクを付着させたマーキングローラにより電線被覆部にマーキングを施すものと、ノズル先端からインクを吐出してマーキングを施すものとが知られている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】実開平7−25517号公報
【特許文献2】特開平10−31918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載のようなマーキング装置及び方法では、電線の周方向に所定の長さ(幅寸法)を超えるマーキングを施すと、インク量が大きくなるため、マークがにじんだり、インクが飛び散ったりして、マークが不鮮明になる場合がある。加えて、このようにインク供給量が大きくなると、インクが乾燥するまでの時間が長くなり、マーキングに要する処理時間が長くなると言う課題がある。
【0004】
そこで、本発明の目的は、マーキングによるマークの鮮明さを向上させると共に、マーキングに要する処理時間を短縮できるマーキング装置及びマーキング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るマーキング装置は、長手方向に移送される被覆電線の被覆部に、前記被覆電線の周方向に所定の長さを有するマークを施すものであって、それぞれが被覆電線の長手方向に所要の間隔で設けられ、周方向に所定の長さ未満となるマークを被覆部に施す複数のマーキング部を備え、複数のマーキング部によって施された複数のマークによって、周方向に前記所定の長さを有するマークを形成することを特徴とする。
【0006】
本発明に係るマーキング装置において、所要の間隔は、特定のマーキング部によって施されたマークが、前記特定のマーキング部の移送方向側に設けられる直近のマーキング部に移送されるまでに乾燥する距離であることが好ましい。
【0007】
本発明に係るマーキング装置において、各マーキング部によって施されるマークの周方向の長さは、0.3ミリメートル以上1.5ミリメートル以下であることが好ましい。
【0008】
本発明に係るマーキング装置において、マーキング部はマーキングローラを備える構成が好ましい。
【0009】
また、本発明のマーキング方法は、長手方向に移送される被覆電線の被覆部に、前記被覆電線の周方向に所定の長さを有するマークを施す方法であって、周方向に所定の長さ未満となるマークを被覆部に順次施す複数のマーキング工程を有し、複数のマーキング工程において施された複数のマークによって、周方向に前記所定の長さを有するマークを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマーキング装置によれば、それぞれが被覆電線の長手方向に所要の間隔で設けられ、周方向に所定の長さ未満となるマークを被覆部に施す複数のマーキング部を備えるため、被覆電線には周方向に所定の長さ未満となるマークが順次施されることとなり、各マーキング部によるマーキングの際には、マークのにじみ等が発生し難くなる。また、複数のマークによって、周方向に前記所定の長さを有するマークを形成するため、最終的に周方向に所定の長さを有するマークを形成したとしても、それぞれのマーキング部によってマーキングされるマークはにじみ等が発生し難くなることから、最終的なマークについてもにじみ等を発生し難くすることができる。従って、マーキングによるマークの鮮明さを向上させることができる。
【0011】
また、特定のマーキング部と直近のマーキング部との間の所要の間隔は、特定のマーキング部によって施されたマークが、直近のマーキング部に移送されるまでに乾燥する距離となっている。このため、特定のマーキング部によって施されたマークは乾燥して直近のマーキング部まで到達することとなり、未乾燥の状態のマークが直近のマーキング部に転写してマークが不鮮明となってしまう事態を防止することができる。
【0012】
また、マークの周方向の長さは、0.3ミリメートル以上1.5ミリメートル以下である。ここで、周方向の長さが0.3mm未満であるとインク量が足らずにマークにかすれが生じ易くなり、周方向の長さが1.5mmを超えるとマークがにじみ易くなる。このため、マークの周方向の長さは、0.3ミリメートル以上1.5ミリメートル以下とすることにより、マーキングによるマークの鮮明さをより確実に向上させることができる。
【0013】
また、本発明のマーキング方法によれば、周方向に所定の長さ未満となるマークを被覆部に順次施す複数のマーキング工程を有するため、被覆電線には周方向に前記所定の長さ未満となるマークが順次施されることとなり、各マーキング部によるマーキングの際には、マークのにじみ等が発生し難くなる。また、複数のマークによって、周方向に前記所定の長さを有するマークを形成するため、最終的に周方向に所定の長さを有するマークを形成したとしても、それぞれのマーキング部によってマーキングされるマークはにじみ等が発生し難くなることから、最終的なマークについてもにじみ等を発生し難くすることができる。従って、マーキングによるマークの鮮明さを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るマーキング装置の詳細を図面に基づいて説明する。なお、マーキング装置の説明に先駆けて、本発明に係るマーキング装置が組み込まれた電線製造装置について簡単に説明する。
【0015】
(電線製造装置)
図1は、本発明の実施の形態に係るマーキング装置80を含む電線製造装置を示す構成図である。図1に示すように、電線製造装置1は、伸線機10と、第1着色剤配合装置20と、絶縁体押出機30と、第1冷却水槽40と、第2着色剤配合装置50と、保護層押出機60と、第2冷却水槽70と、マーキング装置80と、束取機90と、包装機100と、束積機110とを備えて大略構成されている。図1に示すように、電線製造装置1は、芯線の周囲を絶縁内皮122で覆い、さらに絶縁内皮122の周囲を保護層123で覆うVVFケーブルなどの被覆電線125の製造を行う。
【0016】
伸線機10は、鋼線120を所定の径となるように伸ばして芯線121を製造するものである。第1着色剤配合装置20は、芯線121を被覆する絶縁内皮122に着色する着色剤を配合するものである。絶縁体押出機30は、第1着色剤配合装置20により配合された着色剤により絶縁体を着色し、芯線121の周囲を絶縁体により覆って絶縁内被122を形成するものである。第1冷却水槽40は、絶縁内皮122を冷却するためのものである。
【0017】
第2着色剤配合装置50は、絶縁内皮122の周囲を覆う保護層(被覆部)123に着色する着色剤を配合するものである。保護層押出機60は、第2着色剤配合装置50により配合された着色剤により絶縁体を着色し、絶縁内皮122の周囲を絶縁体により覆って保護層123を形成するものである。第2冷却水槽70は、保護層123を冷却するためのものである。このような構成の電線製造装置1により、被覆電線125が製造される。
【0018】
マーキング装置80は、長手方向に移送される被覆電線125の保護層123にマークを施すものである。束取機90は、マーキング装置80によってマークが施された被覆電線125を束となるように巻き取るものである。包装機100は、束取機90によって束とされた電線束を包装用紙にて包装するものである。束積機110は、包装された電線束を電線の種類に応じて、分別仕分けして積載していくものである。
【0019】
図2は、図1に示した電線製造装置1により製造される電線の一例を示す構成図であり、(a)は一例を示し、(b)は他の例を示している。図2(a)に示すように、本実施の形態に係る電線製造装置1により製造される電線はVVFケーブルである。具体的に説明すると、伸線機10により鋼線120が引き延ばされて芯線121が製造され、絶縁体押出機30により芯線121の周囲に絶縁内皮122が形成される。その後、保護層押出機60により絶縁内皮122の周囲に保護層123が形成されて、VVFケーブルが製造される。なお、図2(b)に示すように、電線製造装置1は、VVRケーブルなど、芯線121を1層の絶縁体により覆う電線を製造するものであってもよい。さらに、芯線121は多線であっても単線であってもよい。
【0020】
(マーキング装置)
図3は、図1に示したマーキング装置80及びその周囲を示す拡大図である。図3に示すように、第2冷却水槽70により冷却された被覆電線125は、第1マーキング部81と、第2マーキング部82によってマーキングが施される。なお、図1及び図2においてマーキング部81,82は2つであるが、3つ以上により構成されていてもよい。
【0021】
図4は、図3に示した第1マーキング部81の詳細を示す構成図である。なお、図4に示した第1マーキング部81と第2マーキング部82はほぼ同じ構成であるため、第1マーキング部81のみを説明し、第2マーキング部82の説明を省略するものとする。図4に示すように、第1マーキング部81は、インク供給タンク81aと、インク供給通路81bと、インク排出通路81cと、インク槽81dと、平板81eと、マーキングローラ81fと、インク量調整ヘラ81gと、電線抑えコロ81h,81iとからなっている。
【0022】
インク供給タンク81aは、被覆電線125の保護層123にマーキングを施すためのインクを貯留しておくものである。このインク供給タンク81aは、循環機能を備えており、貯留しているインクをインク供給通路81bを介してインク槽81dに送る構成となっている。また、インク槽81d内のインクはインク排出通路81cを介してインク供給タンク81aに戻ることとなる。
【0023】
平板81eは、保護層123にマーキングするマークの形状に対応した貫通孔を有し、マーキングローラ81fの外周部所定箇所にインクを塗布し、所定箇所を除く他の箇所にインクを塗布しないようにするものである。マーキングローラ81fは、保護層123にマーキングを施すものであり、回転軸を中心に回転する構成となっている。また、マーキングローラ81fは、平板81eを介して外周部に塗られたインクを保護層123に転写する構成となっている。
【0024】
図5は、第1マーキング部81及び第2マーキング部82の平板81e,82eの詳細を示す上面図であり、(a)は第1マーキング部81の平板81eを示し、(b)は第2マーキング部82の平板82eを示している。図5(a)に示すように、第1マーキング部81の平板81eは上面から見て長方形状となる板材である。この平板81eは、電線の移送方向に伸びる長尺の貫通孔81e1〜81e3を3つ有している。インク槽81d内のインクは、これら貫通孔81e1〜81e3からマーキングローラ81fの外周部に付着することとなる。このため、マーキングローラ81fの外周部には、インクが3本線を描くように付着することとなる。
【0025】
一方、図5(b)に示すように、第2マーキング部82の平板82eは第1マーキング部81の平板81eと同様に上面から見て長方形状となっている。また、第2マーキング部82の平板82eは電線の移送方向に伸びる長尺の貫通孔82e1,82e2を2つ有している。このため、マーキングローラ82fの外周部には、インクが2本線を描くように付着することとなる。
【0026】
図4に示すように、インク量調整ヘラ81gは、マーキングローラ81fの外周部に付着したインク量が多い場合に、余分なインクを除去するものであって、マーキングローラ81fの外周部に近接配置されている。すなわち、回転するマーキングローラ81fに余分なインクが付着している場合には、余分なインクのみはインク量調整ヘラ81gにあたることによって除去される。一方、余分なインクが付着せず適量のインクのみが付着している場合、適量のインクはインク量調整ヘラ81gにあたらず除去されない。
【0027】
なお、2つの電線抑えコロ81h,81iは、被覆電線125を挟むマーキングローラ81fの反対側(鉛直上方側)に設けられており、マーキングローラ81fによるマーキングの際に電線が浮いてマーキングが不充分とならないようにするものである。
【0028】
図6は、第1マーキング部81及び第2マーキング部82のマーキングローラ81f,82fを示す構成図であり、(a)は双方のマーキングローラ81f,82fの側面(回転軸と平行に見た面)を示し、(b)は第1マーキング部81のマーキングローラ81fの外周部断面を示し、(c)は第2マーキング部82のマーキングローラ82fの外周部断面を示している。
【0029】
図6(a)に示すように、マーキングローラ81f,82fは、回転軸側、すなわち中心側に設けられる基材部81f1,82f1と、基材部81f1,82f1の外周側に設けられるインク供給ヘッド81f2,82f2とからなっている。インク供給ヘッド81f2,82f2は、弾性材料で形成され、平板81e,82eに当接すると、貫通孔81e1〜81e3,82e1,81e2に対応する箇所が貫通孔81e1〜81e3,82e1,81e2内に食い込むようになっている。この食い込みにより、インク供給ヘッド81f2,82f2には貫通孔81e1〜81e3,82e1,81e2の形状に対応してインクが付着することとなる。
【0030】
また、図6(b)に示すように、第1マーキング部81のマーキングローラ81fは、外周面に凹部a〜cを有している。この凹部a〜cは、貫通孔81e1〜81e3に対応しており、インクは凹部a〜c内に付着することとなる。同様に、図6(c)に示すように、第2マーキング部82のマーキングローラ82fは、外周面に凹部d,eを有している。この凹部d,eは、貫通孔82e1,82e2に対応しており、インクは凹部d,e内に付着することとなる。
【0031】
次に、図7を参照して、本実施の形態に係るマーキング装置80によるマーキング方法を説明する。図7は、図1に示したマーキング装置80によるマーキング方法を示す概略図である。マーキング装置80の稼働中において第1マーキング部81のマーキングローラ81f外周部には、3本線描くようにインクが付着させられる。同様に、第2マーキング部82のマーキングローラ82f外周部には、2本線描くようにインクが付着させられる。
【0032】
そして、保護層123が被覆された被覆電線125がマーキング装置80の第1マーキング部81に供給される。これにより、第1マーキング部81のインク供給ヘッド81f2に付着した3本線が保護層123に転写されることとなる。これにより、3つの線状マーク131〜133が保護層123にマーキングされる。ここで、第1マーキング部81のマーキングローラ81fによって施される3つの線状マーク131〜133は、それぞれが被覆電線125の周方向に0.3mm以上1.5mm以下の幅を有する線となっている。ここで、マークの周方向の長さが0.3mm未満であると、インク量が足らずにマークにかすれが生じ易くなり、マークの周方向の長さが1.5mmを超えると、マークがにじみ易くなる傾向がある。このため、3つの線状マーク131〜133を周方向に0.3mm以上1.5mm以下とすることにより、にじみ等が抑制され、鮮明なマークなる。
【0033】
次いで、被覆電線125は、第2マーキング部82に供給される。これにより、第2マーキング部82のインク供給ヘッド82f2に付着した2本線が保護層123に転写されることとなる。これにより、2つの線状マーク134,135が保護層123にマーキングされる。ここで、第2マーキング部82のマーキングローラ82fによって施される2つの線状マーク134,135は、それぞれが被覆電線125の周方向に0.3mm以上1.5mm以下の幅を有する線となっている。このため、2つの線状マーク134,135についても、にじみ等が抑制され、鮮明なマークとなる。
【0034】
また、図7に示すように、本実施の形態に係るマーキング装置80では、5つの線状マーク131〜135によって周方向に1.5mmを超える長さ(所定の長さ)を有する幅広線状マーク130が形成されている。ここで、1つのマーキングローラによって周方向に1.5mmを超える長さを有する幅広線状マークをマーキングすると、にじみ等が発生し易くなるが、本実施の形態では2つのマーキングローラ81f,82fによって1.5mm以下の幅の線状マーク131〜135を描き、これらによって幅広線状マーク130を形成している。このため、各マーキングローラ81f、82fによるマーキングの際に、にじみ等を発生し難くして、最終的な幅広線状マーク130についてもにじみ等の発生を抑制し、マークの鮮明さを向上させるようにしている。
【0035】
なお、第2マーキング部82のマーキングローラ82fは、第1マーキング部81のマーキングローラ81fと電線長手方向に所要の距離だけ離れている。この所要の距離は、第1マーキング部81のマーキングローラ81f(特定のマーキングローラ)によって施されたマークが、第1マーキング部81のマーキングローラ81fの移送方向側に設けられる第2マーキング部82のマーキングローラ82f(直近のマーキングローラ)に移送されるまでに乾燥する距離である。このため、第1マーキング部81のマーキングローラ81fによって施されたマークが未乾燥のまま第2マーキング部82のマーキングローラ82fに到達して、第2マーキング部82のマーキングローラ82fに転写されてしまう
事態についても防止できることとなる。さらに、本実施の形態では、第1マーキング部81のマーキングローラ81fによりマーキングされるマークが周方向に0.3mm以上1.5mm以下の細線となっているため、乾燥が早く所要の距離を比較的短くすることもできる。
【0036】
(マーキング装置の第1変形例)
次に、本実施の形態に係るマーキング装置80の第1変形例を説明する。図8は、第1変形例に係るマーキング装置80のマーキングローラ81f,82fの外周部断面図であり、(a)は第1マーキング部81のマーキングローラ81fを示し、(b)は第2マーキング部82のマーキングローラ82fを示している。図8(a)及び図8(b)に示すように、インク供給ヘッド81f2,82f2は、凹部a〜eに代えて凸部f〜jを有していてもよい。これによっても、図7に示したように、5つの線状マーク131〜135をマーキングして幅広線状マーク130を形成することができ、マークの鮮明さを向上させることができる。
【0037】
(マーキング装置の第2変形例)
次に、本実施の形態に係るマーキング装置80の第2変形例を説明する。図9は、第2変形例に係るマーキング方法を示す概略図である。図7に示した例では、被覆電線125の移送方向に伸びる長尺の線状マーク131〜135がマーキングされていた。これに対し、第2変形例では、図9に示すように長尺の線状マーク131〜135を切断した点状マーク141a〜141c,142a〜142c,143a〜143c,144a〜144c,145a〜145e,146a〜146eを間欠的にマーキングようになっている。そして、これらによって幅広点状マーク145,146を形成するようにし、マークの鮮明さを向上させるようにしている。
【0038】
なお、図7に示す例において、線状マーク131〜135はそれぞれが隣接する線状マーク131〜135に一部重なっていてもよいし、隙間無く重ならないようになっていてもよい。また、図9に示す点状マーク141a〜141c,142a〜142c,143a〜143c,144a〜144c,145a〜145e,146a〜146eも同様に重なっていても、重なっていなくともよい。
【0039】
このようにして、本実施の形態に係るマーキング装置80及びマーキング方法によれば、被覆電線125には周方向に所定の長さ未満となるマークが順次施されることとなり、各マーキングローラ81f,82fによるマーキングの際には、マークのにじみ等が発生し難くなる。また、複数のマークによって、周方向に所定の長さを有するマークを形成するため、最終的に周方向に所定の長さを有するマークを形成したとしても、それぞれのマーキングローラ81f,82fによってマーキングされるマークはにじみ等が発生し難くなることから、最終的なマークについてもにじみ等を発生し難くすることができる。従って、マーキングによるマークの鮮明さを向上させることができる。
【0040】
また、第1マーキング部81のマーキングローラ81fと第2マーキング部82のマーキングローラ82fとの間の所要の距離は、第1マーキング部81のマーキングローラ81fによって施されたマークが、第2マーキング部82のマーキングローラ82fに移送されるまでに乾燥する距離となっている。このため、第1マーキング部81のマーキングローラ81fによって施されたマークは乾燥して第2マーキング部82のマーキングローラ82fまで到達することとなり、未乾燥の状態のマークが第2マーキング部82のマーキングローラ82fに転写してマークが不鮮明となってしまう事態を防止することができる。
【0041】
また、マークの周方向の長さは、0.3mm以上1.5mm以下である。ここで、周方向の長さが0.3mm未満であるとインク量が足らずにマークにかすれが生じ易くなり、周方向の長さが1.5mmを超えるとマークがにじみ易くなる。このため、マークの周方向の長さは、0.3ミリメートル以上1.5ミリメートル以下とすることにより、マーキングによるマークの鮮明さをより確実に向上させることができる。
【0042】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。 例えば、上記実施の形態では、最終的に幅広線状マーク130や幅広点状マーク145,146を形成する例を説明したが、マークの形状はこれらに限られるものではなく、星形や菱形など他のマークであってもよいし、文字であってもよい。
【0043】
上記実施の形態では、2つのマーキングローラ81f,82fによってマーキングする例を説明したが、これに限らず、3つ以上のマーキングローラによってマーキングして、最終的なマークを形成するようにしてもよい。なお、3つ以上のマーキングローラによってマーキングする場合、各マーキングローラの間隔は、それぞれのマーキングローラによりマーキングされたマークが次のマーキングローラに到達するまでに乾燥する距離とすることが望ましい。これにより、次のマーキングローラにインクが転写されてしまう事態を防止できるからである。
【0044】
上記実施の形態では、マーキングローラを用いたが、インクジェット方式のマーキング部を適用することも可能である。
【0045】
上記実施の形態では、1つのマークを構成する複数のマークの電線周方向の長さを0.3mm以上1.5mm以下に設定することにより、鮮明なマークを形成したが、インクや被覆樹脂、ならびに被覆電線の規格などに応じて寸法を適宜変更しても勿論よい。
【0046】
上記実施の形態では、VVRなど絶縁内皮122の外周に保護層123を設ける電線を例に説明したが、これに限らず、VVRなど芯線121を1層の絶縁体で覆うだけの電線であってもよい。また、電線は、単芯電線であってもよいし、多芯電線であってもよい。
【0047】
また、上記実施の形態において、マーキング装置80の後段には冷却水槽が設けられていないが、インクを乾燥定着させるために、さらに第3冷却水槽が設けられていてもよい。
【0048】
上記実施の形態において、それぞれのマーキングローラ81f,82fは、電線の鉛直下方側のみからマーキングを施しているが、これに限らず、側方や鉛直上方からマーキングを施してもよい。なお、鉛直下方側のみからマーキングをした場合には、電線に付着したインクが電線の周方向に広がり難くなるため、一層にじみを防止できる点で有利である。
【0049】
上記実施の形態において、複数のマーキングローラ81f,82fを用いて、濃い色のマークをマーキングするようにしてもよい。すなわち、1つめのマーキングローラ81fによりマーキングを施した後に、2つ目のマーキングローラ82fにより同一箇所を同一色でマーキングして、濃い色のマークをマーキングするようにしてもよい。
【0050】
上記実施の形態においては、一例として電線製造装置1に本発明に係るマーキング装置80を組み込んだ構成としたが、これに限定されるものではなく、マーキング装置は必ずしも電線製造装置に組み込んで用いなくても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係るマーキング装置を含む電線製造装置を示す構成図である。
【図2】図1に示した電線製造装置により製造される電線の一例を示す構成図であり、(a)は一例を示し、(b)は他の例を示している。
【図3】図1に示したマーキング装置及びその周囲を示す拡大図である。
【図4】図3に示した第1マーキング部の詳細を示す構成図である。
【図5】第1マーキング部及び第2マーキング部の平板の詳細を示す上面図であり、(a)は第1マーキング部の平板を示し、(b)は第2マーキング部の平板を示している。
【図6】第1マーキング部及び第2マーキング部のマーキングローラを示す構成図であり、(a)は双方のマーキングローラの側面(回転軸と平行に見た面)を示し、(b)は第1マーキング部のマーキングローラの外周部断面を示し、(c)は第2マーキング部のマーキングローラの外周部断面を示している。
【図7】本実施の形態に係るマーキング装置によるマーキング方法を説明する。
【図8】変形例に係るマーキング装置のマーキングローラの外周部断面図であり、(a)は第1マーキング部のマーキングローラを示し、(b)は第2マーキング部のマーキングローラを示している。
【図9】第2変形例に係るマーキング方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0052】
80 マーキング装置
81 第1マーキング部
82 第2マーキング部
81f マーキングローラ
120 鋼線
121 芯線
122 絶縁内皮
123 保護層
125 被覆電線
130 幅広線状マーク
131〜135 線状マーク
145,146 幅広点状マーク
141a〜141c,142a〜142c,143a〜143c,144a〜144c,145a〜145e,146a〜146e 点状マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に移送される被覆電線の被覆部に、前記被覆電線の周方向に所定の長さを有するマークを施すマーキング装置であって、
それぞれが被覆電線の長手方向に所要の間隔で配置され、それぞれが被覆電線の表面へインク供給を行って前記周方向に前記所定の長さ未満となるマークを前記被覆部に施す複数のマーキング部を備え、
前記複数のマーキング部によって施された複数のマークによって、前記周方向に前記所定の長さを有するマークを形成することを特徴とするマーキング装置。
【請求項2】
前記所要の間隔は、特定のマーキング部によって供給されたインクが、前記特定のマーキング部の移送方向側に設けられる直近のマーキング部に移送されるまでに乾燥する距離であることを特徴とする請求項1に記載のマーキング装置。
【請求項3】
前記各マーキング部によって施されるマークの周方向の長さは、0.3ミリメートル以上1.5ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマーキング装置。
【請求項4】
前記マーキング部は、マーキングローラを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のマーキング装置。
【請求項5】
長手方向に移送される被覆電線の被覆部に、前記被覆電線の周方向に所定の長さを有するマークを施すマーキング方法であって、
前記周方向に前記所定の長さ未満となるマークを前記被覆部に順次施す複数のマーキング工程を有し、
前記複数のマーキング工程において施された複数のマークによって、前記周方向に前記所定の長さを有するマークを形成することを特徴とするマーキング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−104879(P2009−104879A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275138(P2007−275138)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】