説明

ミキサーの圧力調整器およびその使用方法

【課題】ミキサーの内部圧力が上昇しても圧力を吸収してガスが外部に噴出することを防止するとともに、圧力調整器の内部に付着した粉塵を容易に除去できて耐久性も優れている、新規なミキサーの圧力調整器を提供する。
【解決手段】本発明のミキサーの圧力調整器は、処理部材を混練するミキサー1とミキサー1の排気経路につながる集塵機との相互間に配置され、ミキサー1から排出されたガスを、外周壁3aによって区画形成されて内部空間をなす圧力吸収体3に導入してガスの圧力を吸収するミキサーの圧力調整器であって、圧力吸収体3の入側排気経路に、ミキサー1から排出されたガスの導入と停止を行うダンパー6を設け、外周壁3aに、内部空間と外界との通気を可能とする複数の微細開孔を設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム等を混練する際に、ミキサーの内部圧力が上昇してガスが外部に噴出することを防止する、ミキサーの圧力調整器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミキサーで各種ゴムを混練するにあたっては、ミキサーに投入する各種部材分の体積増加によってミキサー内部の圧力が上昇し、カーボンや薬品を含んだガスがミキサーの外部に噴出するおそれがあって、このような課題に関するものとしては、例えば図1に示すような、ミキサーと集塵機をつなぐ排気経路に気密性の高い素材で製作した袋状の部材を取り付けて、この袋状部材を膨張(図1の実線で示す形状)させてミキサーの内部圧力を吸収し、この袋状部材の膨張で吸収しきれなかったガスは集塵機で吸引する、圧力調整器がある。前記圧力調整器は、ミキサーからガスの流入がない場合には前記袋状部材が収縮(図1の破線で示す形状)するために、ミキサーから集塵機までの気流が遮断されて粉塵が滞留、堆積することがあり、このような場合に粉塵を取り除く方法として例えば圧力エアーの噴射によって袋状部材を振動させるパルスジェット方式(例えば特許文献1参照)が知られているが、粉塵の堆積が進んで、前記袋状部材や前記圧力調整器と集塵機との間のガスの流路となるダクト内部が閉塞する状態になると、前記パルスジェット方式でも粉塵を取り除くことはできず、分解して人手で除去する必要があった。また前記袋状部材はミキサー内部からの排気圧力を受けて常時膨張と収縮を繰り返しているため、屈曲によってピンホールが開いたり裂け目が発生しやすくなったりすることがあり、作業性の改善と耐久性の向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−113318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ミキサーの内部圧力が上昇しても圧力を吸収してガスが外部に噴出することを防止するとともに、圧力調整器の内部に付着した粉塵を容易に除去できて耐久性も優れている、新規なミキサーの圧力調整器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、処理部材を混練するミキサーと該ミキサーの排気経路につながる集塵機との相互間に配置され、該ミキサーから排出されたガスを、外周壁によって区画形成された内部空間を有する圧力吸収体に導入して該ガスの圧力を吸収するミキサーの圧力調整器であって、
前記圧力吸収体の入側排気経路に、前記ミキサーから排出されたガスの導入と停止を行うダンパーを設け、
前記外周壁に、前記内部空間と外界との通気を可能とする複数の微細開孔を設けることを特徴とする、ミキサーの圧力調整器である。
【0006】
前記圧力吸収体は、前記外周壁を形成する可撓性のシートと、該シートを支持して前記内部空間を形成するフレームからなることが望ましい。
【0007】
前記ダンパーは、前記ミキサーの運転状況に応じて前記入側排気経路を開閉するアクチュエータを備えることが望ましい。
【0008】
前記ミキサーの圧力調整器にて、前記ガスの圧力の吸収及び前記圧力吸収体の逆流洗浄を行うにあたり、前記集塵機は前記圧力吸収体の内部空間の空気を常時吸引させておくことが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
ミキサーから排出されたガスのうち、カーボンや薬品は圧力吸収体の外周壁でろ過されて空気だけが外界に排出されるので、ガスの圧力は圧力吸収体で吸収されてカーボン等を外界に漏らすことがない。また入側排気経路に配置されるダンパーを閉めて圧力吸収体へのガスの導入を停止する際には、逆に外界の空気が外周壁の微細開口を通して内部空間に至り集塵機に送給されるために、ろ過によって圧力吸収体の外周壁に堆積したカーボン等が払い落とされて(逆流洗浄)、目詰まりが解消される。
【0010】
圧力吸収体は、外周壁を形成する可撓性のシートと、該シートを支持して内部空間を形成するフレームからなることとしたため、ミキサー内部からの排気圧力が加わっても該シートは過剰に屈曲することがなく、耐久性を向上させることが可能となる。
【0011】
ダンパーは、ミキサーの運転状況に応じて入側排気経路を開閉するアクチュエータを備えているため、最適な条件でガスの圧力の吸収や逆流洗浄を行うことができるとともに、人がダンパーを誤って操作することを防止する。またミキサー内のガス排気を行わない場合は、ダンパーを閉じて圧力吸収体の内側に付着したカーボン等が不用意にミキサー内に入ることを抑制できる。
【0012】
集塵機を吸引したまま、ガスの圧力の吸収と圧力吸収体の逆流洗浄の両方の動作を実現できるので、集塵機の運転を切り替える必要がなくなり、これにより装置の構成も簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来のミキサーの圧力調整器を示した図であり、実線はミキサーからの排気により袋状部材が膨張する状態を示し、破線はミキサーからのガスの流入が無く袋状部材が収縮する状態を示す。
【図2】本発明にしたがうミキサーの内部圧力調整器の実施の形態を示した図であり、圧力調整体の下方に入側排気経路を設け、上方に出側排気経路を設けた場合を示す。
【図3】本発明にしたがうミキサーの内部圧力調整器の実施の形態のうち、入側排気経路を開閉するアクチュエータの制御部分の構成を示す図である。
【0014】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
【0015】
図2における1は、隔壁によって外界と遮断する内部空間を有し、該内部空間に投入される各種ゴムや、カーボン、薬剤等の処理部材を図示しない羽のついたローター等で混練するミキサーである。前記ミキサー1は、カーボンや薬剤等が外界に漏れることを防止するため、ガスの排気経路を除いて気密となっている。このため前記ミキサー1に前記処理部材を投入する際には該処理部材の体積が増加する分、該ミキサー1の内部の圧力が上昇する。また混練によって前記ミキサー1の内部圧力は常に変動している。
【0016】
2は、前記ミキサー1から排出されたガスを後述する圧力吸収体3へ導入する、入側排気経路となるシュートである。本発明にしたがうミキサーの圧力調整器の実施の形態では、前記シュート2の一端が前記ミキサー1の内部空間とつながってその結合部から上方へ傾斜して延びる筒状体2aと、下部開口が該筒状体2aの他端とつながるとともに上部開口が上方へ向かってテーパー状に拡開するテーパー体2bを備えている。
【0017】
3は、前記ガスの内部圧力の上昇を吸収する、圧力吸収体である。前記圧力吸収体3は、外周壁3aの胴部3aが、前記テーパー体2bと気密につながる下端開口から上方に向かってストレートに伸びるとともに、上端を天蓋3aで密閉して区画形成された内部空間を形成している。前記外周壁3aは、前記内部空間と外界との通気を可能とする複数の微細開孔を備えており、前記ガスのうちカーボンや薬品等は透過させず、空気のみを通過させることが可能である。前記圧力吸収体3は、形状、大きさ、厚さ等各種選択可能である。
【0018】
4は、前記圧力吸収体3の内部空間を形成するフレームである。前記フレーム4は、前記圧力吸収体3がそれ自体で内部空間を強固に形成できる場合は省略可能であるが、前記外周壁3aとして可撓性のシートを選択する場合には、前記フレーム4で該シートを支持することで前記ガスの内部圧力による該シートの屈曲を抑制できる。本発明にしたがう実施の形態では、前記フレーム4と前記シュート2とを結合させて一体化させている。
【0019】
5は、一端が前記圧力吸収体3の内部空間とつながり、他端が図示しない集塵機とつながる、出側排気経路接続部である。前記出側排気経路接続部5は、前記圧力吸収体3の上部に配置されており、前記ミキサー1から排気されたガスは該圧力吸収体3の下方から一旦該圧力吸収体3の内部空間に導入されるため、該ガスの圧力が直接集塵機にかかることはない。
【0020】
6は、入側排気経路であるシュート2に配置されて、該入側排気経路の開閉にて前記ミキサー1から排出されたガスの導入と停止を行うダンパーである。前記ダンパー6は、バタフライダンパー、スライドゲートダンパー等各種ダンパーを採用することが可能である。
【0021】
前記ダンパー6は、手動で駆動して前記入側排気経路を開閉させてもよいが、より好ましくは図3に示すアクチュエータ7によって駆動させることがよい。前記アクチュエータ7は、エアーシリンダー、油圧シリンダー、モータ等各種方式が選択可能である。
【0022】
8は、ミキサーに投入される処理部材の情報を取得する、処理部材情報取得手段である。前記処理部材の情報とは、例えば処理部材の種類や量をいう。前記処理部材情報取得手段8は、例えばコンピュータに接続されたキーボード等の外部入力機器で構成することができる。
【0023】
9は、前記処理部材の情報に応じて前記ダンパー6を駆動する条件を記憶する、ダンパー駆動条件記憶手段である。前記ダンパー6を駆動する条件とは、例えば前記処理部材の情報に基づいて前記入側排気経路を開くか閉じるか、またどのタイミングで該入側排気経路を開閉するか等の条件である。前記ダンパー駆動条件記憶手段9は、例えばコンピュータのメモリで構成することができる。
【0024】
10は、前記処理部材情報取得手段8及び前記ダンパー駆動条件記憶手段9から処理部材に応じたダンパー駆動条件を呼び出し、該ダンパー駆動条件に応じてアクチュエータ7の駆動を制御する、制御手段である。前記制御手段10は、図示しない各種センサにより前記ミキサー1や前記シュート2、前記圧力吸収体3等の内部圧力やガスの流量を測定し、これら各種センサの測定情報のフィードバックを加えて前記アクチュエータ7を制御することも可能である。前記制御手段10は、例えばコンピュータのCPUとそれに接続されたシーケンサ等の外部出力機器で構成することができる。
【0025】
上記の構成となるミキサーの圧力調整器にて、前記ガスの圧力の吸収及び前記圧力吸収体3の逆流洗浄を行うにあたり、前記集塵機は前記圧力吸収体3の内部空間の空気を常時吸引させておく。
【0026】
前記ミキサー1から排気されるガスの圧力を吸収するには、前記ダンパー6を駆動して前記入側排気経路を開いた状態にする。これにより前記ガスは前記圧力吸収体3に導入される。前記ガスのうち、前記圧力吸収体3の外周壁3aは、カーボンや薬品等は透過させず、空気のみを外界に排出する(図2に示す、前記圧力吸収体3から外側に向かう矢印の方向に空気が流れる)。これにより前記ガスの圧力は前記圧力吸収体3によって吸収される。また前記集塵機は常に吸引しているので、圧力吸収体3から排出しきれなかった前記ガスは、該集塵機で吸収される。したがって前記ミキサー1の内部圧力が上がりすぎることはない。
【0027】
また前記集塵機の吸引により、前記ガスは前記圧力吸収体3の内部空間で滞留することが無く、ろ過された前記カーボン等が前記外周壁3aの特定の場所だけに堆積することを抑制する。
【0028】
前記圧力吸収体3の逆流洗浄を行うには、前記ダンパー6を駆動して前記入側排気経路を閉めた状態にする。前記集塵機は常に吸引しているので、外界から前記圧力吸収体3の内部空間に空気が取り込まれ(図2に示す、外側から前記圧力吸収体3に向かう矢印の方向に空気が流れる)、前記外周壁3aの内側に堆積したカーボン等が払い落とされる。前記入側排気経路を閉めなくても前記ミキサー1からの排気が弱いか、または止まっている場合には、前記逆流洗浄を行うことが可能である。
【0029】
したがって、上記の構成となるミキサーの圧力調整器では、前記集塵機の吸引動作を切り替えることなく前記ガスの圧力の吸収及び逆流洗浄を行うことが可能となる。
【0030】
前記圧力吸収体3の外周壁3aが可撓性シートであっても、該シートは前記フレーム4で支持されており、前記ガスの圧力の吸収及び逆流洗浄を行っても過剰に屈曲することが無く、耐久性を向上させることが可能となる。
【0031】
前記アクチュエータ7によって前記ダンパー6を駆動するには、まず前記処理部材情報取得手段8により、ミキサーに投入する処理部材に関する情報を取得する。処理部材に関する情報を取得するには、作業者が情報を入力してもよいし、投入する処理部材に種類や量を示す識別符号を付けておき、その識別符号を読み取るセンサによる方法でもよい。前記制御手段10は、前記処理部材の情報を取得した前記処理部材情報取得手段8からの処理部材情報の出力に応じて、前記ダンパー駆動条件記憶手段9から所定のダンパー駆動条件を選択し、該ダンパー駆動条件に基づいて前記アクチュエータ7を駆動させる。また前記ミキサー1や前記シュート2等の内部圧力やガスの流量を測定した各種センサ測定情報
を、前記制御手段10にフィードバックさせて前記アクチュエータ7を駆動させてもよい。これらミキサーの運転状況である、処理部材に関する情報やダンパーの駆動条件、各種センサの測定情報に応じて前記アクチュエータ7を駆動させることで、前記ガスの圧力の吸収及び逆流洗浄を最適な条件で、かつ自動で行うことが可能となる。
【実施例】
【0032】
図1の構成となる従来の圧力調整器では、気密性の袋状部材3a´に孔が開いたり、亀裂が入ったりして1〜3ヶ月の頻度で交換が必要であった。また圧力調整器内部を月に1回程度カーボン等を除去する清掃が必要であった。
【0033】
一方、本発明にしたがう外周壁3aが通気性の可撓性シートであり、該シートをフレーム4で支持した圧力調整器では、6ヶ月後でも該シートに破損が見られなかった。またこの6ヶ月間の運転中、圧力調整器内部や圧力調整器と集塵機との間のガスの流路となるダクト内部の清掃は不要であった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、ミキサーの内部圧力が上昇しても圧力を吸収してガスが外部に噴出することを防止するとともに、圧力調整器の内部に付着した粉塵を容易に除去できて耐久性も優れている、新規なミキサーの圧力調整器を安定的に供給できる。
【符号の説明】
【0035】
1 ミキサー
2 シュート
3 圧力吸収体
3a 外周壁
4 フレーム
5 出側排気経路接続部
6 ダンパー
7 アクチュエータ
8 処理部材情報取得手段
9 ダンパー駆動条件記憶手段
10 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理部材を混練するミキサーと該ミキサーの排気経路につながる集塵機との相互間に配置され、該ミキサーから排出されたガスを、外周壁によって区画形成された内部空間を有する圧力吸収体に導入して該ガスの圧力を吸収するミキサーの圧力調整器であって、
前記圧力吸収体の入側排気経路に、前記ミキサーから排出されたガスの導入と停止を行うダンパーを設け、
前記外周壁に、前記内部空間と外界との通気を可能とする複数の微細開孔を設けることを特徴とする、ミキサーの圧力調整器。
【請求項2】
前記圧力吸収体は、前記外周壁を形成する可撓性のシートと、該シートを支持して前記内部空間を形成するフレームからなることを特徴とする、請求項1記載のミキサーの圧力調整器。
【請求項3】
前記ダンパーは、前記ミキサーの運転状況に応じて前記入側排気経路を開閉するアクチュエータを備えることを特徴とする、請求項1又は2記載のミキサーの圧力調整器。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載されたミキサーの圧力調整器にて、前記ガスの圧力の吸収及び前記圧力吸収体の逆流洗浄を行うにあたり、
前記集塵機は前記圧力吸収体の内部空間の空気を常時吸引させておくことを特徴とする、ミキサーの圧力調整器の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−110514(P2011−110514A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270269(P2009−270269)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】