ミクロソームワクチン
外部から導入されたペプチド抗原およびMHCのタンパク質に結合している動物細胞由来の反転ミクロソームまたはその断片を含む、ワクチン組成物が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ペプチドに基づくワクチン、ウイルス感染、および癌などのヒトおよび動物の疾患の予防および治療におけるこのようなワクチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
効果のあるワクチンの大半は、古典的な弱毒化または死滅した病原体によって産生される中和抗体に依存する。しかし、HIV、C型肝炎ウイルス、放線菌(mycobacteria)および寄生虫のような慢性的感染を引き起こす病原体に関しては、または癌の場合、T細胞介在性免疫応答が重要である。MHC抗原提示およびT細胞性免疫応答を分子学的に理解することによって、定義された抗原ペプチドおよびサイトカインならびに/または共刺激分子がワクチン開発の試みにおいて使用されるようになった。これらのすべての試みにおける基本的問題の一つは、インビボにおいて抗原提示細胞(APC)と質的および量的に等しい抗原送達系を再構築することが困難であることであった。
【0003】
CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、抗原を主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子と集合する小さな抗原ペプチドとして認識する。その抗原ペプチドはAPCのサイトゾルで産生され、その後、小胞体(ER)の腔内に移動する(Rock, K. L. & Goldberg, A. L. Annu Rev Immunol 17, 739-779 (1999))。MHCクラスI重鎖が合成されてERの腔内に挿入され、そこでb2-ミクログロブリン(b2M)と共に二量体を形成する(Natarajan et al Rev Immunogenet 1, 32-46 (1999); Pamer E, & Cresswell P, Annu Rev Immunol. 16 323-358(1998))。この二量体は、適切な抗原ペプチドと集合するまでER内に維持される。MHCクラスI二量体およびER内でのペプチドとの集合のプロセスは、BIP、カルネキシン、カルレティキュリンおよびErp57のようなシャペロンによって触媒される(Paulsson K, & Wang P., Biochim Biophys Acta. 1641(1) 1-12 (2003))。
【0004】
構築されたMHCクラスIは、感染細胞または悪性細胞のようなAPCの細胞表面で速やかに発現する。T細胞レセプターによってペプチド-MHCクラスIが認識されると、CTLは感染性抗原または腫瘍抗原を発現している標的細胞を死滅させる。
【0005】
ウイルスまたは癌のタンパク質に由来するエピトープを認識したCTLが特定されると、T細胞性免疫を誘発するように設計された合成ペプチドに基づくワクチンが感染症および悪性疾患の予防または治療のための魅力的なアプローチとなった(Furman MH, & Ploegh HL., J Clin Invest. 110 (7) 875-9 (2002); Berinstein N. Semin Oncol. 30 (3) (Suppl 8), 1-8 (2003); Falk et al Nature 348, 248-251. (1990); (Van Bleek GM, & Nathenson SG., Nature 348: 213-216 (1990); Kast, W.M. , & Melief, C.J. Immunol. Lett. 30: 229-232 (1991))。これらの送達系に基づく多くの異なる型のペプチドワクチンがある。最も単純な型はペプチドを水溶液に溶解したものである。可溶性抗原ペプチドを直接注入してもCTL反応を刺激できないことが示されたが、これは急速な生分解または未成熟なAPCによる抗原刺激に起因するT細胞無応答の誘発が原因である(Kyburz, D. et al. Eur. J. Immunol. 23: 1956-1962 (1993); Toes, R. E et al Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93: 7855-7860 (1996); Amoscato et al J. Immunol. 161, 4023-4032 (1998))。合成ペプチドから作製されたワクチンの使用に起因して報告されたその他の合併症はCTLの誘導であり、それらはペプチドを用いて外因性にパルス標識される標的細胞を死滅させることはできるが、感染細胞または悪性細胞のように、本来、ペプチドエピトープを処理および提示する標的細胞は認識できない(Dutoit, V. et al. J. Clin. Invest. 110: 1813-1822 (2002))。
【0006】
MHCクラスI抗原提示は適切なペプチドの選択に関してER内で質的に制御されることが報告されている。適切に構築されたMHCクラスIのみがAPCの表面で発現することができる。アジュバントを使用しても、合成ペプチドの提示品質はほとんど向上しなかった(Schijns, V. E. 2001. Crit. Rev. Immunol. 21: 75-85 (2001)。ペプチドワクチンの改良型は、ペプチドを付加した組換え型MHCクラスIを用いて人工脂質膜(BenMohamed et al Lancet Infect Dis. 2 (7), 425-31 (2002))として構築されている。リポソーム戦略は患者への注入前にペプチドを結合したMHCクラスI分子を脂質膜内に組み込むことができるが、組換え型MHCクラスI、合成ペプチドおよびリポソームを単純な混合物によってAPCのERにおける複雑な付加システムを容易に模倣することはできない。ごく少数のペプチドのみが、インビトロにおいて組換え型MHCクラスIと集合する(Ostergaard Pedersen L, et al Eur J Immunol. 31 (10), 2986-96 (2001)。
【0007】
さらに、挿入されたMHCクラスIの不適切な方向および共刺激分子の欠如のために、効果的な免疫応答の誘導が困難となった。専門のAPCは至適抗原の提示およびナイーブT細胞による細胞性免疫応答の開始において固有の作用を持つため、エクスビボにおけるワクチン媒体として、重要なAPCである自己樹状細胞(DC)を産生するための戦略が開発中である(Banchereau, J. et al. Annu. Rev. Immunol. 18: 767-811 (2000))。初期の試験では、インビボにおいてワクチンとして用いられた抗原ペプチドでパルス標識したDCがCTL反応を誘発できることが示された(Tsai, V. et al. J. Immunol. 158: 1796-1802 (1997))。ヒトにおける多くの臨床試験から明確な証拠が報告されたにも関わらず、パルス標識したペプチドが表面MHCクラスIに実際に付加することを示す生化学的所見はなく、ペプチドでパルス標識されたAPCの効果的な免疫応答誘発の有効性が疑問視される。
【0008】
従って、これらの問題を解決して従来のワクチンに取って代わる治療上有効な代替品を提示ことができるワクチン調製物が必要である。このようなワクチンは、高い有用性を維持して副作用を回避しつつ、APC細胞によって内因性に提示された抗原の品質を達成しなければならない。
【発明の開示】
【0009】
本発明の第一の局面に従って、外部から導入された(externally disposed)ペプチド抗原および主要組織適合複合体(MHC)のタンパク質に結合している動物細胞由来の単離された反転(inverted)ミクロソームまたはその膜断片を含む、ワクチン組成物が提供される。
【0010】
本発明のミクロソームは動物細胞に由来し、従って、真核細胞内に存在する以下のコンパートメントから作製され得る:小胞体、リソソーム;エンドソーム、またはエンドサイトーシス経路のコンポーネント。
【0011】
ミクロソームは、ミクロソームの膜またはその断片に既に存在するMHCのタンパク質を用いて単離することができる。または、MHCタンパク質は、その後、ミクロソームまたは断片に導入することができる。ER由来のミクロソームはMHCクラスIおよびクラスIIの双方の分子を含む(Bryant et al Adv Immunol. 80,71-114 (2002))。
【0012】
本発明は、MHCクラスII分子に加えてMHCクラスI拘束性抗原ペプチドに関して等しく応用可能である。組成物中のMHCのタンパク質は、ミクロソームが得られる細胞に関して異種性供給源由来であってもよい。
【0013】
MHCファミリーのタンパク質は、主要組織適合複合体(MHC)のクラスター遺伝子によってコードされる。MHC分子はすべての高等脊椎動物の細胞で発現する。それらは、マウスおよびいわゆるH-2抗原(細胞適合性2抗原)において最初に実証された。ヒトの場合、最初に白血球で実証されたことから、HLA抗原(ヒト白血球関連抗原)と呼ばれる。クラスIおよびクラスIIのMHC分子は公知の最も多型のタンパク質であり、つまり、個体によって最も顕著な遺伝的変異性を示し、それぞれ、細胞障害性T細胞およびヘルパーT細胞に対して外来タンパク質抗原の提示において重要な役割を担う。クラスI分子はほぼすべての脊椎動物細胞で発現するが、クラスIIの分子は、Bリンパ球およびマクロファージのようにヘルパーT細胞と相互に作用する少数の細胞タイプに限定される。両クラスのMHC分子は免疫グロブリン様ドメインおよび単一のペプチド結合溝を持ち、このペプチド結合溝は外来タンパク質から派生する小さなペプチド断片を結合する。それぞれのMHC分子は、細胞内でタンパク分解によって産生される大きく特徴的なペプチドセットを結合することができる。それらが標的細胞内で産生されると、ペプチド-MHC複合体は細胞表面に輸送されて、そこでT細胞レセプターによって産生される。標的細胞の表面でペプチド-MHC複合体を認識する抗原特異的レセプターに加えて、T細胞はCD4またはCD8コレセプターを発現して、これらのコレセプターは標的細胞のMHC分子の非多型領域を認識する:ヘルパー細胞はCD4を発現して、このCD4がクラスII MHC分子を認識し、これに対して細胞障害性T細胞はCD8を発現して、このCD8がクラスI MHC分子を認識する(Alberts et al,「Molecular Biology of the Cell」, 3rd edition, 1229-1235(1994))。
【0014】
MHCクラスIは重鎖およびβ-2-ミクログロブリンからなる。ヒトMHCクラスIの重鎖は、HLA A、B、Cと呼ばれる3つの分離した遺伝子座によってコードされる。それらは、β-2-ミクログロブリンと呼ばれる小さなタンパク質と非共有結合によって結合する。ヒトMHCクラスIタンパク質の一例は、図13(データベースアクセッション番号P01889)に示すHLAクラスI組織適合抗原のA-2α鎖前駆体(MHCクラスI抗原A*2);またはHLAクラスI組織適合抗原、B-7α鎖前駆物質(MHCクラスI抗原B*7)である。
【0015】
MHCクラスIIは、α鎖およびβ鎖という非共有結合によって結合した2つの鎖から構成される。双方の鎖は、遺伝子によってI領域関連(Ia)抗原内にコードされる。このようなタンパク質の例は、図14(データベースアクセッション番号P79483)に示すHLAクラスII組織適合性抗原、DRB3-1β鎖前駆体(MHCクラスI抗原DRB3*1);および同じく図14(データベースアクセッション番号A37044)に示すMHCクラスII組織適合性抗原HLA-DQ α1(DQw4特異性)前駆体である。
【0016】
MHCクラスIおよびIIのcDNAならびにゲノムDNAの配列は公表されており、入手することができる(www.ncbi.nlm.nih.gov/Genbank)。
【0017】
すべての真核細胞が小胞体(ER)を持つ。膜は、典型的には、平均的な動物細胞の膜全体の半分よりも多くを形成する。それは組織化されて枝分れした細管の網の目のような迷路となり、サイトゾル全体に伸張して扁平な嚢状構造物となる。細管および嚢状構造物はすべて相互に吻合すると考えら、従って、ER膜は単一の内部スペースを囲む一続きのシートを形成する。この高度に回旋したスペースはER腔またはER層板スペースと呼ばれて、しばしば細胞容積全体の10%よりも高い値を占めることがある。ER膜はER腔を細胞質から分離して、これら2つのコンパートメント間の物質の選択的輸送を介在する。
【0018】
ERは脂質およびタンパク質の生合成において中心的役割を担う。膜は、ER自身、ゴルジ装置、リソソーム、エンドソーム、分泌小胞および形質膜を含む大半の細胞小器官においてすべての膜貫通タンパク質および脂質の産生部位である。ER膜は、また、脂質の大半を産生することによってミトコンドリア膜およびペルオキシソーム膜に大きく貢献する。さらに、細胞外に分泌されるタンパク質、ならびにER、ゴルジ装置またはリソソームの腔に分泌されるタンパク質は、ほぼすべてが先ずERの腔に送達される(Alberts et al, "Molecular Biology of the Cell", 3rd edition, 577-595 (1994))。
【0019】
リソソームは、破壊される必要のある細胞内タンパク質の分解、または免疫系により破壊の標的とされた外来タンパク質もしくは寄生虫の破壊のために特化された酵素を含む特化された細胞小器官である。
【0020】
エンドソームは細胞内においてエンドサイトーシス経路の一部を形成する細胞小器官である。細胞表面からエンドソームまたはリソソームに向かう細胞内小胞の一定の流れがある。この小胞は、陥入として公知である外部形質膜からの「出芽」プロセスによって形成されるか、またはその内部の細胞小器官から形成されて最終的にその小器官に戻ることが可能である。エンドサイトーシスは時に結合リガンドを伴って細胞が外部レセプターを内側に取り込むプロセスであり、細胞がその外部環境をサンプリングすることができる一方向性のプロセスでもある。
【0021】
本発明の組成物は、任意で、適切なアジュバント、および/または例えばIL-2、IL-15、IL-6、GM-CSF、IFNγなどのインターフェロンもしくはインターロイキンのようにT細胞反応を促進するサイトカイン、T細胞反応を促進するその他のサイトカイン、ならびに/または通常のアジュバントを用いて製剤化することができる。これらは投与前に抗原を付加したミクロソームと適宜混合することができるか、またはミクロソームの膜結合型構成物として適宜調製してもよい。
【0022】
本発明の状況におけるミクロソームは、主要組織適合複合体(MHC)によって抗原ペプチドを提示することができる任意の動物細胞の小胞体(ER)、リソソームまたはエンドソームコンパートメントの無細胞性膜小胞である。ER由来ミクロソームの定義は、ERに通常含まれるBIP、p58、カルネキシン、カルレティキュリン、タパシンのようなタンパク質であるいわゆる「ERマーカー」の存在に基づく。リソソーム由来ミクロソームの定義は、特異的マーカーであるLAMP1および/またはLAMP2の存在に基づく。ミクロソームは、動物細胞からの調製後に電子顕微鏡下で見られる形態によってミクロソームと認識される。
【0023】
本発明の組成物に含まれるミクロソームは通常の任意の方法で単離することができる。適切な方法には、Sarasteらおよび/またはKnipeらの方法(Saraste et al Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83, 6425-6429 (1986) and Knipe et al J. Virol. 21, 1128-1139 (1977))が含まれる。このような方法は、細胞または組織のホモジナイズ、続く7500rpmでの10分間の遠心分離による細胞核の分離、その後の15500rpmでの54分間の遠心分離による「粗」ミクロソームの回収を含む。「粗」ミクロソームは、リボソームが付着したミクロソームである。次に、再懸濁した「粗」ミクロソームを、110,000g、60分間の分画遠心分離のためにショ糖クッションを介した遠心分離によりさらに精製する。粗ミクロソームを(等密度状態に達するために)ショ糖密度勾配において37,000rpmにて10時間さらに遠心分離して亜分画化して、ER含有分画を例えば抗p58抗体のような適切な抗体を用いたウェスタンブロット法により決定した。
【0024】
反転ミクロソームは、例えばミクロソームの外膜の破壊および再形成を引き起こす単離ミクロソームについて実施された反復凍結-融解処理工程のようなさらなる処理の産物であり、これによって、膜の「内」面が反転ミクロソームの「外側」に提示される。従って、このような処理によって得られるミクロソームは「裏返し」または「反転」ミクロソームと記載される。「裏返し」つまり反転ミクロソームの作製プロセスにより、通常のミクロソーム調製物に見られる腔構造が欠如する。
【0025】
本発明の組成物において、ミクロソームはその膜断片を含んでもよい。適切には、このような膜断片は、界面活性剤の使用またはミクロソーム構造を破壊する反復凍結-融解もしくは超音波処理を含む方法によって調製され得る。同様に、本発明の組成物を産生するために、このような断片にペプチド抗原を付加してもよい。好ましくは、膜断片はERまたはリソソームに特異的なマーカーを持つ細胞内膜から派生する。
【0026】
本発明のワクチン組成物において、一部のミクロソームは非反転構造、即ち、ミクロソーム調製前にER、エンドソームまたはリソソームの腔に対応する「内側」を用いて標準的なミクロソームを調製後のインサイチューの配列に対応する膜方向を持ってもよい。しかし、本発明のワクチン組成物中の少なくとも約75%〜約95%、適切には少なくとも約90%のミクロソームはインサイチューのミクロソームに対して逆の膜方向を持ち、従って、「裏返し」または反転ミクロソームであると記載される。従って、組成物はある割合の非反転ミクロソームをさらに含み得る。
【0027】
本発明のその他の態様において、組成物はさらに均質である可能性があり、さらなる処理を行わずに、細胞から調製されたミクロソームと比べて反転または逆転(つまり「裏返し」)の膜方向を持つ少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%のミクロソームを含んでよい。
【0028】
ミクロソームに先ず抗原を付加して、続いてER膜の内側表面を露出するように反転または「裏返し」のミクロソームを提供するようにさらに処理することができるか、またはミクロソームは好ましい抗原ペプチドが既にミクロソーム内に存在する細胞供給源から調製することができるか、または先ず反転または「裏返し」ミクロソームを提供するようにミクロソームを処理した後に抗原を付加してもよい。
【0029】
リソソームおよびエンドソームは同等の手順によって調製することができる。動物細胞のエンドサイトーシスコンパートメントから精製されるリソソームミクロソームはリソソームおよびエンドソームの双方を含む。ER由来ミクロソームの調製における精製手順において細胞膜全体を分画した後、リソソーム膜をそのマーカーであるLAMP1およびLAMP2に対する抗体により規定する。
【0030】
続いて、精製されたリソソームミクロソームを上記のように反転もしくは「裏返し」のミクロソームまたは膜断片が得られるように処理して、必要ならば、続いて、例えばpH 3よりも低いpH、好ましくはpH3からpH3、適切には約pH2.5のような酸性条件下でMHC拘束性ペプチドを付加することができる。
【0031】
単離されたミクロソーム集団が調製される動物細胞は、その細胞が発現するMHC分子を持つ任意の一般的に簡便な細胞タイプとすることができる。例えば、血液の細胞、またはB細胞およびマクロファージのような免疫系の細胞、いわゆる抗原提示細胞(APC)。しかし、肝臓、腎臓、肺、脳、心臓、皮膚、骨髄、膵臓などの組織由来の細胞タイプも使用できる。
【0032】
細胞はヒトの細胞またはヒト以外の動物の細胞であってよい。適切には、動物は哺乳動物である。動物は、例えばマウス、ラットもしくはモルモットのような齧歯類、またはウサギのような別の動物種、またはイヌもしくはネコ、またはヒツジ、ブタ、ウマ、ヤギ、ウシのような有蹄類、またはトリ(例えば、ニワトリまたは七面鳥のような家禽のような)などの哺乳類以外の動物種であってもよい。
【0033】
ミクロソームが調製される細胞は培養における細胞株であってよい。細胞株は不死化細胞株であってもよい。細胞株は最終的には非胎性の組織供給源に由来してもよい。
【0034】
本発明の一部の態様において、細胞の供給源は、細胞株のような動物細胞またはヒト以外のトランスジェニック動物の遺伝的に修飾された供給源であってよい。ミクロソームが調製される細胞または組織は、一つまたは複数のヒト遺伝子の挿入によってゲノムが修飾された、ヒト以外のトランスジェニック動物に由来するヒト化動物の組織または細胞であってよい。
【0035】
ヒト以外のトランスジェニック動物またはトランスジェニック細胞株から調製されるミクロソームに関する本発明の態様において、遺伝子組換えとは追加の遺伝子またはタンパク質をコードする核酸の配列の導入である。導入遺伝子は、任意で構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターの制御下において、異種性遺伝子または同種遺伝子の追加コピーであり得る。遺伝子組換えは、細胞もしくは細胞株の一過性もしくは安定性のトランスフェクション、または細胞もしくは細胞株におけるエピソーム発現系であり得る。
【0036】
しかし、それはヒト医薬品の分野においてであり、その分野において本発明のこの局面の組成物はワクチンとしての広い実用性を見出すことが期待される。従って、好ましくは、ミクロソームが調製される細胞の供給源は、ワクチンとして使用される場合、組成物のレシピエントのMHCに適合可能なMHCアロタイプを持つ。
【0037】
本発明のこの局面の一つの態様において、ミクロソームが調製される細胞の供給源は、ワクチンとして使用される際の組成物の最終的なレシピエントであってよい。
【0038】
または、ヒト細胞の適切な供給源は、例えば胚以外に由来する細胞株、適切には細胞株221のようなB細胞株などの細胞株であってもよい。さらにこのような細胞株は、好都合なことに、主要組織適合複合体(MHC)クラスIおよび/またはクラスIIのタイプのタンパク質を発現しない可能性がある。本発明のこの態様は商業規模でのワクチンの製造におけるより好ましい態様である可能性があり、この場合、一般的な(non-individual)ワクチンは異なるMHCアロタイプを用いて操作されたこのような細胞株から産生される。
【0039】
細胞株221はこのようなMHC陰性細胞株の一例である。このような細胞に天然のMHCクラスIが発現しないことは、任意の所望の遺伝子型のMHCクラスIを発現するためにその細胞株を修飾することを可能とする。ヒト集団が異なると異なるMHCタンパク質が発現することから、これはワクチン組成物の最大免疫効果を達成する際に特に重要となる可能性がある。従って、本発明のこのような組成物において、MHCタンパク質はミクロソームが採取される細胞に関して異種性供給源であってもよい。
【0040】
HLA A2のようなMHCクラスIのいくつかは集団の20%よりも多くで発現する。MHC陰性細胞株が用いられる場合は、一つまたは複数の適合性MHC遺伝子が簡便な遺伝子導入法によって細胞株にトランスフェクトされて、導入遺伝子が発現ベクター内に構築される。発現構築物の発現カセットは、至適発現を達成するために、通常、CMVプロモーターのような標準的なプロモーター、または延長因子Iプロモーターもしくはアクチンプロモーター、エンハンサー、挿入された導入遺伝子、およびポリAシグナルを含む。トランスフェクション前に、トランスフェクトした細胞における細菌性プラスミド遺伝子の発現を避けるためにプラスミドバックボーンから発現カセットが単離される。MHCクラスIおよびIIのcDNAならびにゲノムDNAの配列は公表されており、入手することができる(www.ncbi.nlm.nih.gov/Genbank)。大半のMHCクラスI遺伝子をトランスフェクトするために、それぞれ、MHCクラスI陰性細胞株または特定のMHCクラス陽性の細胞株を用いてMHCクラスIトランスフェクタントバンクを構築することができる。発現カセットの選択は、導入遺伝子の至適発現に依存する。
【0041】
抗原提示細胞のトランスフェクションは、例えば、関心対象のMHCタンパク質をコードする核酸配列を含む適切なベクターを用いるような、標準的な組換え技術を用いて実施することができる。「ベクター」という用語は、一般に、RNA、DNAまたはcDNAであり得る任意の核酸ベクターを指す。または、ベクターは「発現ベクター」と記載することができる。
【0042】
「ベクター」または「発現ベクター」という用語には、特に、例えば、細菌性プラスミドに由来するベクター、バクテリオファージに由来するベクター、トランスポゾンに由来するベクター、酵母エピソームに由来するベクター、挿入エレメントに由来するベクター、酵母染色体エレメントに由来するベクター、バキュロウイルス、SV40のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルスのようなウイルスに由来するベクター、ならびにプラスミドならびにコスミドおよびファージミドのようなバクテリオファージ遺伝子エレメントに由来するベクターのように、それらの組み合わせに由来するベクターなど、染色体、エピソームおよびウイルス由来のベクターが含まれ得る。一般に、宿主内でポリペプチドを発現するために核酸の維持、増加または発現に適した任意のベクターを、この点について、発現のために使用することができる。ベクターは、例えば、細菌プラスミドのpUC18のような細菌プラスミドから構築してもよい。
【0043】
ベクターは特異的発現を提供することができる。このような特異的発現は、誘導発現もしくは一部の細胞タイプのみにおける発現、または誘導発現および細胞特異的発現の双方であり得る。好ましくは、誘導ベクターの中でも、温度、栄養添加物、低酸素および/もしくはサイトカインの存在のように操作しやすい環境要因、またはその他の生物学的に活性な要因によって発現を誘導することができるベクターである。誘導ベクターの中でも、例えば、抗生物質のような化学的添加物などの化合物の量の変化によって発現を誘導することができるベクターが特に好ましい。当業者は、原核性および真核性宿主で用いられる構造的および誘導発現ベクターを含む本発明の用途に適した様々なベクターについて周知であり、日常的に使用している。
【0044】
組換え型発現ベクターには、例えば、複製開始点、好ましくは構造配列の転写を目的とする高頻度に発現する遺伝子に由来するプロモーター、およびベクターへの暴露後に、ベクターを含む細胞の単離を可能とする選択マーカーを含む。
【0045】
哺乳動物発現ベクターは、複製開始点、適切なプロモーターおよびエンハンサーを含みことができ、さらに必要な任意のリボソーム結合部位、ポリアデニル化領域、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写停止配列、および発現に必要な5'-隣接非転写配列を含んでもよい。本発明の好ましい哺乳動物発現ベクターはエンハンサーエレメントを持たなくてもよい。
【0046】
プロモーター配列は、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、CMV前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、早期および後期SV40プロモーター、またはラウス肉腫ウイルス(「RSV」)のプロモーターのようなレトロウイルスLTRのプロモーター、およびマウスメタロチオネインIプロモーターのようなメタロチオネインプロモーターなどの適切な任意の公知のプロモーターであってよい。プロモーターは、例えば、CMVプロモーターの最小配列(mCMV)などの、(エンハンサーエレメントを持たないTATAボックスのような)プロモーター活性に必要な最小配列を含み得る。好ましくは、プロモーターはエンハンサーエレメントがない低い基礎レベルにおいて機能することができる哺乳動物プロモーターである。
【0047】
好ましくは、プロモーターは、抗原提示細胞にトランスフェクトされるMHCタンパク質をコードする核酸配列に隣接する。本明細書に述べられるプロモーターの相同体またはオルソログのような変異体は本発明の一部であることが意図される。
【0048】
本発明の第一の局面の発現ベクターのバックボーンは、プラスミドベクターであるpGL2のように独自のプロモーターおよびエンハンサーエレメントを持たないベクターに由来し得る。エンハンサーは、DNA折りたたみ構造を介して数千塩基離れたところにあるプロモーター領域に結合することができる(Rippe et al TIBS 1995; 20: 500-506 (1995))。
【0049】
発現ベクターは、抗生物質抵抗性のような選択マーカーをさらに含んでよく、それによってベクターは増殖可能となる。
【0050】
トランスフェクトされるMHCタンパク質をコードする核酸を含むベクターの核酸配列は、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(「CAT」)転写ユニット、ルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)のような上記のレポータータンパク質をコードすることができる。レポーター遺伝子の適用は、形質転換した細胞を用いてアッセイすることができ、例えば、遺伝子発現の誘導および/または抑制を分析するために用いられるこれらの遺伝子の表現型に関連する。遺伝子調節の試験において用いられるレポーター遺伝子には、生物発光アッセイによって調べることができるルシフェラーゼをコードするlux遺伝子、組織化学的検査によって調べることができるβ-グルクロニダーゼをコードするuidA遺伝子、組織化学的検査によって調べることができるβ-ガラクトシダーゼをコードするlacZ遺伝子、UV光、UV顕微鏡もしくはFACSにより検出することができる変異型緑色蛍光タンパク質を含むその他の周知のレポーター遺伝子が含まれる。
【0051】
MHCタンパク質の核酸配列を含むDNAは一本鎖または二本鎖であってよい。一本鎖DNAはコーディング鎖またはセンス鎖であってよいか、または非コーディング鎖もしくはアンチセンス鎖であってもよい。治療用の用途において、核酸配列は治療されるべき対象において発現することができる型である。
【0052】
ベクターの停止配列は、ポリアデニル化シグナルをコードするアデニレートヌクレオチドの配列であり得る。典型的には、ポリアデニル化シグナルは、例えばヒト治療におけるSV40ウイルスのようなウイルス由来の対応する配列のように、治療される対象において認識可能である。その他の停止シグナルは当技術分野において周知であり、用いることができる。
【0053】
好ましくは、ポリアデニル化シグナルはRNA転写の双方向性のターミネーターである。停止シグナルは、SV40後期ポリ(A)のようなサル40ウイルス(SV40)のポリアデニル化シグナルであり得る。または、停止配列はウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナルであってよく、CMVプロモーターと混合した際に最大発現を示す(Yew et al. Human Gene Therapy, 8: 575-584 (1997))。
【0054】
さらに、発現ベクターは、SV40早期ポリ(A)のようなさらなるポリアデニル化配列を含んでもよい。このようなさらなるポリ(A)は、ベクター内で開始された可能性のある潜在的転写を抑制して、それによってベクターからの基本的遺伝子発現を徹底して最小限に抑制するために、MHCタンパク質をコードする核酸配列の上流に位置づけられる可能性がある。
【0055】
組み込まれたウイルスゲノムからの遺伝子発現は、染色体位置効果に対して感受性である可能性がある。このような効果には、転写サイレンシングおよび近くの異種性エンハンサーによるプロモーターの活性化が含まれる。さらに、組み込まれた配列は近くの遺伝子および腫瘍遺伝子の発現を活性化することができる。これらの効果は、挿入されたウイルスゲノムに対して境界を形成するエレメントを使用することによって抑制される。インシュレーターは、オープンクロマチンドメインおよび構成的に凝縮したクロマチンの境界を示すニワトリβ-グロビン5'DNアーゼI高感受性領域(5'HS4)のような遺伝的エレメントである。
【0056】
足場またはマトリックス付着領域(S/MAR)と呼ばれるその他のエレメントはクロマチンを核構造物に固定して、遠位調節エレメントを対応するプロモーターのごく近位に運搬する際に生理学的な役割を担い得る染色体ループを形成する。一例はヒトインターフェロン-γ遺伝子座にあり、IFN-SARと呼ばれる。インシュレーターおよびS/MARはいずれも位置効果を抑制することができ、最大活性はレンチウイルスベクター内で混合された際に示される(Ramezani et al, Blood 101: 4717-24, (2003))。このようなエレメントは、明らかに、宿主細胞ゲノムに組み込まれた後、本明細書に述べられるベクターのように調節されたベクターにおいて有用であることができる。
【0057】
本発明の組成物は、ミクロソームに付加されて外部から導入されたペプチド抗原に結合しているミクロソームまたはその断片を含む。その関連性は、ペプチド抗原の少なくとも一つのエピトープがミクロソームの外膜に関して露出するようにペプチド抗原がミクロソームの膜に挿入される関連性であり得る。ミクロソームの膜は、抗原が免疫系によって認識されるように、T細胞に対してペプチド抗原を提示するMHCのタンパク質をさらに含む。MHCタンパク質はミクロソームが形成された細胞の細胞小器官に天然に存在するか、またはミクロソームの調製前に組換えDNA技術によって細胞にトランスフェクトされて発現したMHCタンパク質である。挿入された抗原ペプチドおよびMHCタンパク質はミクロソームの膜において結合体を形成して、これによって、免疫系の細胞との相互作用のためにタンパク質の外層配列が可能となる。
【0058】
抗原ペプチドは、例えば、アデノシン三リン酸(ATP)およびNTP再生系のようなヌクレオシド三リン酸(NTP)の存在下においてミクロソームをペプチド抗原と共にインキュベートすることによって、ミクロソームに導入または付加することができる。ATPのようなNTPはミクロソームの膜に位置するタンパク質輸送体を介してペプチド抗原のミクロソームへの組み込みを促進すると思われる。理論によって不必要に拘束されることは望まないが、ミクロソームをNTPの存在下でペプチド抗原と共にインキュベートすると、抗原はミクロソームの膜に予め存在するMHCクラスIタンパク質と結合することができると思われる。または、抗原ペプチドは裏返し処理によってもミクロソームに付加することができ、この場合はNTPは不要である。
【0059】
ミクロソームに結合して存在する抗原ペプチドは、適切には、一つまたは複数のエピトープを持つ。エピトープは免疫グロブリンの結合部位によって認識可能な抗原の最小部分であり、線状または非連続的であり得る。従って、天然または合成もしくは人工的に修飾されたMHC結合ペプチドの任意のタイプが含まれる。
【0060】
抗原ペプチドは、外来性、即ち、非自己、または自己、即ち、自己抗原の供給源由来であり得る。外来抗原ペプチドは、ウイルス、細菌、酵母、真菌、原生動物、もしくはその他の微生物(即ち、感染性物質)、または植物もしくは動物のようにより高等な生物に由来してよい。本発明のいくつかの態様において、抗原は、新生物細胞または癌腫瘍の細胞によって発現する抗体のような自己抗原、正常な自己タンパク質(自己免疫疾患のための本発明の寛容ワクチンの場合)であり得る。
【0061】
抗原が腫瘍細胞または癌腫瘍の細胞由来である場合、細胞は黒色腫、肺腺癌、結腸癌、乳癌または白血病細胞由来であり得る。自己免疫疾患には、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス、I型またはインスリン依存性糖尿病、抗リン脂質抗体症候群、重症筋無力症、筋炎、シェーグレン症候群および慢性関節リウマチが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本発明のいくつかの態様において、複数のタイプの抗原ペプチド、または免疫原性を高めるように修飾された配列を持つ抗原ペプチドを含む組成物を調製することが好ましい可能性がある。細胞はミクロソームの調製前に複数のタイプのMHC分子を用いてトランスフェクトしてもよく、このMHC分子は複数のタイプのMHCアロタイプを持つレシピエントにおいて組成物がワクチンとして使用される場合に有効であり得る。
【0063】
本発明のこの局面の好ましい態様において、ミクロソームにおけるMHC分子に対する抗原の割合が特異的な免疫応答の誘発に至適であり、例えば、0.1〜1.5、好ましくは0.2〜1.2または0.5〜1.0、および最も好ましくは0.2ないし0.5〜1.0の範囲の上記の組成物が提供される。付加される抗原ペプチドの量は、誘発される免疫応答によって異なってもよい。
【0064】
主な疾患の定義された抗原ペプチドは、科学文献から容易に選択またはバイオインフォマティクス的手段によって容易に同定することができる(Renkvist et al Cancer Immunol Immunother 50, 3-15 (2001); Coulie et al Immunol Rev 188, 33-42 (2002); De Groot et al Vaccine 19 (31), 4385-95(2001))。
【0065】
例えば、インフルエンザウイルスは黒色腫細胞からSIINFEKLおよびASNENMETMのペプチド、またはYLQLVFGIEVのペプチドを受け継いだ。
【0066】
表1はクラスIHLA-拘束性癌/精巣抗原の詳細を示し;表2はクラスI HLA拘束性メラニン細胞分化抗原を示し;表3はクラスI HLA拘束性の汎発性に発現した抗原を示し;表4はクラスI HLA拘束性腫瘍特異的抗原を示し;表5はクラスII HLA拘束性抗原を示し;表6は融合タンパク質に由来するエピトープを示し;表7は所与のHLA対立遺伝子によって認識されるエピトープの頻度を示す。
【0067】
表8にはAnthony et al Clinical Immunol., vol. 103, pages 264-276 (2002)から入手したC型肝炎ウイルス(HCV)のペプチドのさらなる例を示し;表9にはKaul et al J. Clinical Invest., vol. 107, pages 1303-1310 (2001から入手した1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)のさらなる例を示し;表10にはKoziel et al J. Virol., vol. 67, pages 7522-7532 (1993)から入手したC型肝炎ウイルス(HCV)のペプチドのさらなる例を示し;表11にはHe et al PNAS USA, vol. 96, pages 5692-5697 (1999)から入手したC型肝炎ウイルス(HCV)のさらなる例を示す。
【0068】
抗原ペプチドエピトープは、モノマーとして、または二量体、三量体、四量体、もしくは五量体、六量体、七量体、八量体、九量体もしくは十量体のようなより多くの多量体のような、エピトープの反復配列として提示され得る。エピトープ配列の断片は、エピトープ配列を含む重複配列と同様に、使用することができる。
【0069】
「ペプチド」という用語は、文脈上明記する場合を除いて、ポリペプチドおよびタンパク質の双方を含む。
【0070】
このようなペプチドは、類似体、相同体、オルソログ、アイソフォーム、誘導体、融合タンパク質、および同様の構造を持つタンパク質を含むか、または本明細書に記載されるような関連するポリペプチドであるタンパク質である。
【0071】
本明細書で用いられる「類似体」という用語は、本明細書に記載されるタンパク質配列と同等もしくは同一の機能は持つが必ずしもそのようなアミノ酸配列と同等もしくは同一のアミノ酸配列を含むとは限らないペプチド、または本明細書に記載されるタンパク質の構造と同等もしくは同一の構造を持つペプチドを指す。ペプチドのアミノ酸配列は、それが少なくとも一つの次の基準を満たすならば、本明細書に記載されるペプチドのアミノ酸配列と「同等」である:(a)ペプチドは、本明細書に述べられるペプチドのアミノ酸配列と少なくとも30%(より好ましくは、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)同一であるアミノ酸配列を持つ;(b)ペプチドは本明細書に述べられるペプチド配列の少なくとも5つのアミノ酸残基(より好ましくは、少なくとも10個のアミノ酸残基、少なくとも15個のアミノ酸残基、少なくとも20個のアミノ酸残基、少なくとも25個のアミノ酸残基、少なくとも40個のアミノ酸残基、少なくとも50個のアミノ酸残基、少なくとも60個のアミノ酸残基、少なくとも70個のアミノ酸残基、少なくとも80個のアミノ酸残基、少なくとも90個のアミノ酸残基、少なくとも100個のアミノ酸残基、少なくとも125個のアミノ酸残基、または少なくとも150個のアミノ酸残基)をコードするヌクレオチド配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされる;または(c)ペプチドは本明細書に述べられるペプチドをコードするヌクレオチド配列と少なくとも30%(より好ましくは、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)同一であるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0072】
ハイブリダイゼーションのストリンジェントな条件は、低い塩濃度または高温の条件により特徴付けることができる。例えば、高度にストリンジェントな条件は、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中で65℃において固体支持体に結合しているDNAにハイブリダイズして、68℃において0.1×SSC/0.1%SDSで洗浄と定義することができる(Ausubel et al eds. "Current Protocols in Molecular Biology" 1, page 2.10.3、出版:Green Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., New York, (1989))。いくつかの状況において、より低いストリンジェントな条件が必要とされることもある。本出願で用いられるように、適度にストリンジェントな条件は、0.2×SSC/0.1%SDSにおいて42℃で洗浄する工程を含むとして定義することができる(Ausubel et al (1989)、前記)。ハイブリダイゼーションは、ハイブリッド核酸二重構造を不安定化させるために漸増量のホルムアミドを加えることによって、さらにストリンジェントとすることもできる。このように、特定のハイブリダイゼーションの条件は容易に操作することができ、一般的には所望の結果に応じて選択される。一般に、50%ホルムアミドの存在下における簡便なハイブリダイゼーション温度は、ターゲットDNAと95〜100%相同なプローブの場合は42℃であり、90〜95%相同な場合は37℃、70〜90%相同な場合は32℃である。
【0073】
本明細書に記載されるペプチドの構造と「同等の構造」を持つペプチドとは、本明細書に記載されるペプチドと同等の二次構造、三次構造または四次構造を持つペプチドを指す。ペプチドの構造は、X線結晶学、核磁気共鳴、および結晶電子顕微鏡学などを含む当業者に公知の方法で測定することができるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
本明細書で用いられる「融合タンパク質」という用語は、(i)本明細書に記載されるペプチド、その断片、関連するペプチドまたはその断片のアミノ酸配列、および(ii)異種性ペプチド(即ち、本明細書で記載されるペプチド配列でない)のアミノ酸配列を含むペプチドを指す。
【0075】
本明細書で用いられる「相同体」という用語は、本明細書に記載されるペプチドのアミノ酸配列と同等であるが、必ずしも同等または同一の機能を持つとは限らないアミノ酸配列を含むペプチドを指す。
【0076】
本明細書で用いられる「オルソログ」という用語は、(i)本明細書に記載されるペプチドのアミノ酸配列と同等のアミノ酸配列を含み、かつ(ii)同等または同一の機能を持つ、ペプチドを指す。
【0077】
本明細書で用いられる「関連ペプチド」という用語は、本明細書に記載されるペプチドの相同体、類似体、アイソフォーム、オルソログ、またはそれらの任意の組み合わせを指す。
【0078】
本明細書で用いられる「誘導体」という用語は、アミノ酸残基の置換、欠失または付加の導入によって変更された、本明細書に記載されるペプチドのアミノ酸配列を含むペプチドを指す。誘導体ペプチドは、本明細書に記載されるペプチドと同等または同一の機能を有する。
【0079】
本明細書で用いられる「断片」という用語は、必要に応じて変更を加えた、本明細書に記載されるペプチドのアミノ酸配列の少なくとも5個のアミノ酸残基(好ましくは、少なくとも10個のアミノ酸残基、少なくとも15個のアミノ酸残基、少なくとも20個のアミノ酸残基、少なくとも25個のアミノ酸残基、少なくとも40個のアミノ酸残基、少なくとも50個のアミノ酸残基、少なくとも60個のアミノ酸残基、少なくとも70個のアミノ酸残基、少なくとも80個のアミノ酸残基、少なくとも90個のアミノ酸残基、少なくとも100個のアミノ酸残基)を含むペプチドを指す。断片は、そのようなペプチドの機能的活性を保有してもよく、または保有しなくてもよい。
【0080】
本明細書で用いられる「アイソフォーム」という用語は、同一遺伝子によってコードされるが等電点(pI)もしくは分子量(MW)、または双方が異なるペプチドの変異体を指す。このようなアイソフォームは、(例えば、選択的スプライシングまたは限定的タンパク分解の結果として)それらのアミノ酸組成が異なってもよく、加えて、または示差的翻訳後修飾(例えば、糖化、アシル化、リン酸化)に起因することもある。さらに、本明細書で用いられる「アイソフォーム」という用語は、単一の型でのみ存在するペプチド、即ち、複数の変異体として発現しないペプチドを示す。
【0081】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性パーセントは、配列を至適な比較のために整列させて(例えば、ギャップはその配列との最適な整列のために第一の配列に導入してもよい)、対応する位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較することによって調べられる。「最適な整列」は、最も高い同一性パーセントが得られる二配列の整列である。同一性パーセントは、比較される配列中の同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドの数によって決定される(即ち、同一性%=同一位置の数/位置の総数×100)。
【0082】
二配列間の同一性パーセントの決定は、当業者に公知である数学的アルゴリズムを用いて実施することができる。二つの配列の比較のための数学的アルゴリズムの例は、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877のように修正されたKarlin and Altschul Proc. Natl. Acad.Sci. USA (1990) 87: 2264-2268のアルゴリズムである。Altschul et al, J. Mol. Biol. (1990) 215:403-410のNBLASTおよびXBLASTプログラムはこのようなアルゴリズムを組み入れている。本明細書に述べられるようなペプチド配列をコードする核酸分子の相同ヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラムをスコア=100、ワード長=12で用いてBLASTヌクレオチド検索を実施することができる。BLASTタンパク質検索はXBLASTプログラムをスコア=50、ワード長=3で用いて実施して、本明細書に述べられるようなペプチドに相同のアミノ酸配列を得ることができる。比較のためにギャップのある整列を得るためには、Gapped BLASTをAltschul et al, Nucleic Acids Res. (1997) 25: 3389-3402に記載されるように使用することができる。または、分子間のわずかな関係(Id.)を検出する反復検索を実施するためにPSI-Blastを使用することができる。BLAST、Gapped BLASTおよびPSI-Blastプログラムを用いる場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のパラメータ既定値を使用することができる。例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0083】
配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムのもう一つの例はMyersおよびMillerのアルゴリズムであるCABIOS(1989年)である。GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)にはこのようなアルゴリズムが組み込まれている。当技術分野で公知のその他の配列解析用アルゴリズムには、Torellis and Robotti Comput. Appl. Biosci. (1994) 10: 3-5に記載されたADVANCEおよびADAM;ならびにPearson and Lipman Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1988) 85: 2444-8に記載されたFASTAが含まれる。FASTAにおいて、ケータップ(ktup)は検索の感度および速度を設定する制御オプションである。
【0084】
当業者は、様々なアミノ酸が同等の特性を持つことを認識する。物質の一つまたは複数のこのようなアミノ酸は、時に、その物質の望ましい活性を失うことなく一つまたは複数のこのような別のアミノ酸によって置換することができる。従って、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンのアミノ酸は互いに(脂肪族側鎖を持つアミノ酸)置換することができることが多い。これらの考えられる置換の内、グリシンおよびアラニンは互いに置換するために用いられ(それらが比較的短い側鎖を持つため)、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは互いに置換するために用いられる(それらが疎水性のより長い脂肪族側鎖を持つため)ことが好ましい。しばしば互いに置換することのできるその他のアミノ酸には次が含まれる:フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン(芳香族側鎖を持つアミノ酸);リジン、アルギニンおよびヒスチジン(塩基性側鎖を持つアミノ酸);アスパラギン酸およびグルタミン酸(酸性側鎖を持つアミノ酸);アスパラギンおよびグルタミン(アミド側鎖をもつアミノ酸);ならびにシステインおよびメチオニン(硫黄を含む側鎖を持つアミノ酸)。この種の置換は、しばしば、「保存的」または「半保存的」アミノ酸置換と呼ばれる。
【0085】
本明細書に記載されるペプチド配列のアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失または挿入を行ってもよい。従って、例えば、このようなペプチドの活性に対して実質的な作用を持たない、またはこのような活性を少なくとも除去しないアミノ酸は欠失させることができる。本明細書に述べられるペプチドの配列に対するアミノ酸の挿入も行うことができる。これは、本発明のタンパク質の特性を変えるために実施することもできる(例えば、タンパク質が融合タンパク質を含む組換え供給源から得られる場合に、同定、精製または発現を補助するため)。組換え供給源に由来するペプチドの配列に対するこのようなアミノ酸の変化は、例えば部位特異的突然変異誘発を用いるなどの、任意の適切な技術を用いて実施することができる。勿論、分子は、例えば、固相ペプチド合成のような標準的な化合物合成技術によって、または有効な生化学的技術によって作製することもできる。
【0086】
本発明の範囲内であるアミノ酸の置換または挿入は、天然または非天然のアミノ酸を用いて行うことができることを認識すべきである。天然または合成のアミノ酸が用いられるか否かに関わらず、L-アミノ酸のみが存在することが好ましい。
【0087】
本発明に従って、抗原提示細胞(APC)の小胞体、リソソームまたはエンドソームを代表する精製ミクロソームはクラスIまたはIIのMHC分子に抗原ペプチドを付加するために用いることができる。本明細書に述べられるインビトロおよびインビボにおける免疫化の結果は、ペプチドを付加したミクロソームがT細胞の増殖およびIL-2の産生によって測定されるペプチド付加APCよりも著しく強い反応を引き起こすことを示す。ペプチド受容性MHCクラスI分子の量を定量した結果、APC表面における受容性クラスI分子は放射化学的検出限界未満である。しかし、ミクロソーム内では顕著な量のペプチド結合MHCクラスIが検出される。さらに、B7.1およびB7.2の共刺激分子のほぼ等量が、細胞表面と比べてミクロソーム内で検出される。このように、抗原ペプチドを付加したミクロソームは効果的なワクチン組成物である。
【0088】
本発明は、APCのERにおけるMHCクラスI分子の50%よりも多くがペプチド受容性であることを見出した。「裏返し」のプロセスによって、Kb特異的OVAペプチドを付加したミクロソームはインビトロおよびインビボにおいてT細胞の応答を誘発することができる。これに対して、同一ペプチドでパルス標識したAPCはT細胞応答刺激能は遙かに小さい。ミクロソームが共刺激分子を含むと仮定すると、APCから単離したミクロソームは、将来、様々な疾患におけるペプチドワクチンのための有望な媒体である。
【0089】
ミクロソームの調製前に特定のMHC遺伝子を動物細胞にトランスフェクトする工程に加えて、B7のような共刺激分子をコードする遺伝子および/または例えばIL-2のようなインターロイキンもしくはインターフェロンといったサイトカインをコードする遺伝子を細胞にトランスフェクトまたは同時トランスフェクトすることが望ましいことがある。サイトカインの場合、サイトカインのER膜へのターゲティングのために、導入遺伝子をCD2またはCD4の膜貫通ドメインに融合させる。さらに、MHC量を高めるために、共刺激分子、およびERの膜結合サイトカイン、KDELまたはその他のER保留シグナリング(Nilsson T, & Warren G., Curr Opin Cell Biol. 6 (4), 517-21 (1994))はERにおける導入遺伝子産物の保留のために導入遺伝子のC末端にタグ付けされる。これらの導入遺伝子の発現カセットは、MHCクラスI導入遺伝子とほぼ等しい。
【0090】
従って、本発明に基づいて、ワクチン組成物はIl-2、IL-15、IL-6、GM-CSF、IFNγのようにT細胞性免疫応答を促進することができるインターフェロンまたはインターロイキンのような一つもしくはいくつかのサイトカイン、T細胞応答を刺激するその他のサイトカイン、および/または通常用いられるアジュバントと共に同時投与することができる。これらは投与前に抗原を付加したミクロソームと適宜混合することができるか、またはミクロソームの膜結合型構成物として適宜調製してもよい。このような膜結合置換基は、ミクロソームを作製するために最終的に用いられる、細胞小器官におけるサイトカインの発現を操作するための上記のような組換えDNA技術を用いて導入してもよく、または、サイトカインをミクロソーム膜に付加もしくは表面タンパク質に結合させてもよい。
【0091】
ミクロソーム調製物において発現する膜結合サイトカインは、膜アンカータンパク質と融合したサイトカイン分子を含む構築物を用いて、任意でER保留シグナルを用いて、抗原提示細胞をトランスフェクトすることによって調製してもよい。例えば、膜結合IL-2分子を含むミクロソームは、IL-2のC末端に融合したCD2膜ドメインおよびE15-9Kアデノウイルスタンパク質由来の16個のアミノ酸配列のような、ER保留シグナルを含む融合タンパク質をコードする核酸を含むベクターを構築することによって調製することができ、この場合、ER保留シグナルはCD2タンパク質のC末端に融合する。ベクターが抗原提示細胞内で発現すると、細胞の小器官、即ち、ERにサイトカインが蓄積して、膜結合サイトカインを含むミクロソームの調製が可能となる。
【0092】
さらに、例えば、IL-2および/もしくはINFγのような血清サイトカインを検出するためのELISAのような技術、またはペプチドを付加したミクロソームを用いたインビトロにおけるT細胞応答アッセイ、もしくは増殖性細胞アッセイによって、ワクチンに対する特異的な免疫応答を検出およびモニターする工程を加えることは好都合であり得る。
【0093】
最も単純な型において、本発明は、外部から導入されたペプチド抗原および主要組織適合複合体(MHC)のタンパク質に結合している動物細胞の小胞体の単離されたミクロソームまたはその膜断片を含む成物を提供する。適切には、ワクチンとしての投与のために製剤化される。
【0094】
本発明の第二の局面に従って、医療分野での用途のために本発明の第一または第二の局面に従った組成物が提供される。従って、本発明のこの局面は、疾患または状態を患う対象の治療または予防の方法であって、上記のように対象にワクチンを投与する工程を含む方法に拡大する。
【0095】
本発明の第三の局面に従って、疾患状態の予防または治療のためのワクチンの調製における上記の組成物の使用を提供する。この疾患は、微生物もしくはウイルスによって引き起こされる感染症であってもよく、または腫瘍細胞の増殖および/または腫瘍形成を特徴とする癌であってもよい。または、疾患は自己免疫状態であってもよく、この場合、ワクチンは自己抗原に対する耐性の誘導において治療的用途を持ち得る。本発明のこの局面における用途は、このような疾患状態の治療の方法であって、それを必要とする対象に組成物を投与する工程を伴う方法にも拡大する。適切には、本発明のワクチン組成物は、筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、経口投与のような任意の簡便な経路によって、また脳脊髄液への注入によって投与することができる。
【0096】
本発明のワクチンを用いて治療することができる疾患または状態には、黒色腫、肺腺癌、結腸癌、乳癌、または白血病が含まれるが、これらに限定されるものではない。自己免疫疾患には、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス、I型またはインスリン依存性糖尿病、抗リン脂質抗体症候群、重症筋無力症、筋炎、シェーグレン症候群および慢性関節リウマチが含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、HIV感染、ヘルペスウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染のようなウイルス感染、またはマラリアの原因物質であるマラリア原虫の原生動物寄生感染、例えば熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、ネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei)、マウスマラリア原虫(Plasmoodium yoelii)もしくはサルマラリア原虫(Plasmodium knowlesi)、またはトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、またはトリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、または赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、またはランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)のような別の寄生虫の寄生虫感染症、または大腸菌(E. coli)O157、ビブリオ腸炎菌(Vibrio cholerae)などの細菌感染。
【0097】
ペプチド抗原を付加された本発明のミクロソームは、混合調製物の患者への投与に先立って抗原提示細胞(APC)と融合し得ることも予想される。適切には、APCは治療前に患者から採取されるが、同種供給源から採取されてもよい。このような細胞の同種供給源が用いられる場合、免疫抑制剤も治療プロトコールの一部を形成することができる。
【0098】
本発明の第四の局面に従って、上記のワクチン組成物を調製するためのプロセスであって、ミクロソームの集団および抗原ペプチドをヌクレオシド三リン酸(NTP)の存在下でインキュベートする工程、続いて反転ミクロソームを調製するためにさらに処理する工程、ならびに生理学的希釈剤および任意でアジュバントを用いて得られる調製物を製剤化する工程を含むプロセスを提供する。ブドウ糖のような試薬は調製されたミクロソームワクチンの立体構造を保持する能力を持ち、加えてもよい。適切には、インキュベートされたミクロソームは、ミクロソーム膜に存在するMHC-ペプチド複合体の分離を防ぐために一定量の抗原ペプチドを含む生理学的希釈剤のワクチン溶液で洗浄して再懸濁される。
【0099】
ミクロソームに抗原を付加するプロセスは、ATP、GTP、CTP、TTPまたはUTPのようなヌクレオシド三リン酸(NTP)の存在下で実施される。抗原付加プロセスは、複数のタイプの抗原ペプチドの存在下で実施することができる。この方法で、多くの抗原をミクロソームに付加することができる。
【0100】
反転ミクロソームは、膜の再形成を可能として「裏返し」ミクロソームの形成を促進する条件下でミクロソームの膜を破壊する、ミクロソームのさらなる処理によって調製され得る。従って、この点において、反復凍結-融解工程の使用は適切である。例えば、ミクロソームは適切な媒質、もしくは例えばリン酸緩衝生理食塩液(PBS)のような緩衝液に懸濁して、続いて、適切には1〜5分間、好ましくは2分間の適切な期間、液体窒素に軽く浸漬して、次に、適切には2〜6分間、好ましくは4分間の適切な期間、恒温水槽に入れるなど37℃に加温することができる。凍結-溶解の反復工程の回数は3〜5回、適切には4回の反復工程であってよい。
【0101】
本発明のこの局面における代替的な態様において、プロセスは上記のように調製された反転ミクロソームに抗原を付加する工程を含んでよい。抗原ペプチドを反転ミクロソームに付加する工程に関して、NTPの存在は(望ましくはあり得るが)必須でなくてもよい。
【0102】
本発明の第五の局面に従って、上記に示される組成物ならびに一つまたは複数のサイトカインおよび/もしくはアジュバントを含む成分の密閉容器入りのキットが提供される。適切には、キットは上記に示される本発明の方法または使用のための使用説明書を含む。
【0103】
本発明の第六の局面に従って、上記に示される組成物ならびに一つまたは複数のサイトカインおよび/もしくはアジュバント分子を含む成分のキットが、対象への別々の投与、順次投与または同時投与用に提供される。
【0104】
本発明の第二およびその後の局面における好ましい特徴は、第一の局面と同様に、必要に応じて変更を加えられることである。
【0105】
本発明の特に好ましい態様において、ある既定の抗原もしくは感染性物質によって潜在的に免疫原性であるペプチド配列の発現によって、または天然細胞の抗原の発現によって特徴付けることができる、疾患の予防もしくは治療のためのワクチン組成物であって、次の工程によって調製される組成物を提供する:
(1)MHCタンパク質を発現する抗原提示細胞の試料を得る工程;
(2)ミクロソーム調製物が単離されるような条件下で細胞をホモジナイズする工程;
(3)例えば、組換えDNA技術によって、または天然の組織供給源もしくは感染性物質の供給源から単離することによって、抗原ペプチド、または多くの場合は合成抗原ペプチドを調製する工程;
(4)ミクロソームに抗原ペプチドを付加するためにNTPの存在下において抗原ペプチドおよびミクロソームをインキュベートする工程;
(5)反転ミクロソームの集団を調製するために、工程(4)において付加されたミクロソームをさらに処理する工程;
(6)適切ならば生理学的希釈剤および/またはアジュバントを用いて付加した反転ミクロソームをワクチンとして製剤化する工程。
【0106】
上記の通り、ミクロソームは単離された細胞集団または細胞株から調製することもできる。細胞または細胞株は、ミクロソームの調製前に特定のタンパク質を発現するために核酸構築物を用いてトランスフェクトしてもよい。
【0107】
上記のプロトコールに従って、ミクロソームに抗原ペプチドを付加し、続いて、反転ミクロソームを調製するために処理する。しかし、代替的な態様において、反転ミクロソームを最初に調製し、その後抗原を付加してもよく、この場合、工程(4)におけるNTPの存在は必要ない可能性がある。
【0108】
上記のように、本発明のワクチン組成物は、好ましくは、反転ミクロソーム、より好ましくは反転ミクロソームの均質な集団を含む。しかし、反転ミクロソームの集団に非反転ミクロソームも含まれてよい。
【0109】
細胞は、ワクチンのための特定のMHCクラス分子をコードする適切な核酸を用いた細胞株のトランスフェクションを可能とするためにMHC陰性であってもよい。抗原の調製には、化学的方法による抗原ペプチドの合成も含むことができる。
【0110】
非反転ミクロソームの抗原ペプチドの付加は、NTPの存在下で行われる。反転ミクロソームの付加には、好ましい可能性はあるが、NTPの存在は必要でないと思われる。
【0111】
本発明は次の実施例および図への参照によってより詳細に説明され、実施例および図は専ら例証目的のために提供されるものであって、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。参照は、後述の図の番号をもって行う。
【0112】
材料および方法
細胞株および動物
B3Zは、H-2Kb MHCクラスI分子によって提示されたSIINFEKLペプチドに特異的なT細胞応答の活性化に対応してLacZを発現するCD8 T細胞ハイブリドーマである。APCとして用いたKd/Kbマウスマクロファージ細胞株であるRAW309Cr.1細胞はATCCから入手した(ATCC TIB-69)。すべての細胞を、10%ウシ胎児血清を加えたDulbeccoの修正Eagle培地で培養した。雌性C57BL/6マウスH-2bおよびBalb/cマウスH-2dは6週齢の齢期にて入手した。動物を用いたすべての操作は承認されたプロトコールに従って実施された。
【0113】
抗体、ペプチド、およびペプチド修飾
すべてのペプチドは、通常のF-moc化学を用いてペプチド合成装置(モデル431A、Applied Biosystems, Foster City, CA)で合成された後、HPLCにより精製した。精製されたペプチドはPBSに溶解した。
【0114】
ペプチドであるOVA 257-264(SIINFEKL)は、ヨウ素化するために三番目の残基のイソロイシンをチロシンに置換して、フェニルアジドを7位のリジンのε-アミノ基のニトロ基と共有結合させることによって修飾した。このニトロ基は光活性化することができる。架橋剤の修飾は、200μl DMSOに溶解した0.5mgのANB-NOS(N-5-アジド-2-ニトロベンゾイルオキシサクシミド)を100μl PBSおよび50μl CAPS(3-[シクロヘキシルアミノ]-1-プロパンスルホン酸)に溶解した100μg ペプチド(0.5M、pH 10)と混合して、実施した。反応は氷冷しながら30分間、進行させた。過剰のANB-NOSおよびイオンを除去するために、混合物をSephadex G-10を用いたゲル濾過およびHPLCにより順次、精製した。ペプチドのアリコート(1μg)をクロラミン-Tで触媒したヨウ素化によって標識した(125I)。修飾および標識実験は暗所で実施した。
【0115】
抗血清、免疫沈降法、およびSDS-PAGE
H2に対するウサギ抗血清(R218)は、Dr. Sune Kvist, Karolinska Instituteより厚意により提供された。確認されたH2に特異的なモノクローナル抗体(Y3)はTim Elliot, Cambridge Universityより厚意により提供された。JNK、ERK、p-ERK、およびp-JNKに対する抗血清は(Santa Cruz Biotechnology)から入手した。免疫沈降法、免疫ブロッティングおよびSDS-PAGEはLiらの報告(J Biol Chem. 274 (13), 8649-54 (1999))の通りに実施した。プロテイン-A-セファロースはPharmacia(Uppsala, Sweden)から入手した。
【0116】
実施例1:ミクロソームの調製およびペプチド結合アッセイ
Kd/Kbマウスマクロファージ細胞株であるRAW309Cr.1に由来するミクロソームは、Sarasteらの方法(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83, 6425-6429 (1986))に従って調製および精製した。クラスIの免疫遺伝学は、RAW細胞およびBalb/cマウスの場合、Kbである。
【0117】
ミクロソーム膜の分画化のためのSarasteら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83, 6425-6429 (1986))およびKnipeら(J. Virol. 21, 1128-1139 (1977))の変法に基づくB細胞からのミクロソームの調製を用いた。すべての工程は0〜4℃で実施した)。
【0118】
・3×109個の細胞を採取して、冷却PBSで1回洗浄した。
・細胞を、10μlのPMSF(100mM)を加えた20ml STKMM-緩衝液に再懸濁した。
・1500rpmにて4℃で5分間、遠心した。
・10ml H2O(5μl PMSFを添加)に再懸濁した。
・40mlDounceを用いて20回、ホモジナイズした。
・30ml STKMMを加えて、十分に混合した。
・JA-18試験管に注いだ。
・7500rpmにて4℃で10分間、遠心分離した。
・上清を慎重に新しい試験管に回収した。
・15500rpmにて4℃で54分間、遠心分離した。
・ペレットを10ml STKMM緩衝液で入念に洗った後、ピペットを用いてペレットを1ml RM緩衝液に再懸濁して、15ml douncer中でホモジナイズした。粗ミクロソームはAOD280=60の濃度に希釈する。
・総ミクロソーム(上記)を5mMベンズアミジンを含む0.33Mショ糖の5ml上に重層して、次に2Mショ糖/5mMベンズアミジンの1mlを含むショ糖クッション上に重層した。
・SW41ローターを用いて110,000×gで60分間、遠心分離して、クッションの上部に総ミクロソームバンドを得た。総ミクロソームバンドを注意深く回収した。続いて、45%(w/v)ショ糖の最終濃度となるように、ミクロソームに2Mショ糖/5mMベンズアミジンをゆっくりと加えた。
・ミクロソームをPaulssonらの方法(J Biol Chem. 277 (21), 18266-71 (2002))の変法を用いて浮上法により亜分画化した。総ミクロソーム100μlを45%(w/v)ショ糖の3mlに混合して、SW41超遠心管の底部に入れて、次のショ糖液を重層した:30%を1ml、ならびに27.5%、25%、22.5%および20.0%を各1.9ml(すべての溶液が5mMベンズアミジンを含んだ)。
・4℃、37,000rpmにて10時間、遠心分離後(等核濃縮条件に到達させるため)、各300μlの25分画を上方への移動によって採取した。
・ER分画は、抗p58抗体(p58はERタンパク質である)を用いたウェスタンブロッティングにより測定される。
・注入したER分画はペプチド付加実験および免疫化実験に使用する。
【0119】
架橋混合液は、50nMまたは100nM(125I)ANB-NOS-ペプチドおよびミクロソーム(60 A280/ml)10μlを総液量100μlのRM緩衝液(250mMショ糖、50mM TEA-HCl、50mM KOAc、2mM MgOAc2、および1mM DTT)中に含む。混合後、直ちに試料を室温で5分間、366nmにて照射した。次に、RM緩衝液中0.5Mショ糖クッションを介して遠心分離によって膜を回収した。膜を冷却RM緩衝液で1回、洗浄した。洗浄膜を免疫沈降法または免疫ブロッティングのために溶解した。ATPとの架橋形成反応には、Liら(J Biol Chem. 274 (13), 8649-54 (1999))が報告したATP再生系が含まれた。RAW309Cr.1細胞上の表面Kb分子の架橋結合は、100nM(125I)ANB-NOS-ペプチドを、総液量100μlのRM緩衝液中10μlのミクロソームを作製するために用いられた細胞数と等しい107個の細胞と混合して実施した。混合後、直ちに試料を室温で5分間、照射した。過剰のペプチドは、RM緩衝液を用いた洗浄によって除去した。Y3抗体を用いた免疫沈降法のために、細胞を溶解した。
【0120】
表面MHCクラスIの検出は、RAW309Cr.1細胞をY3抗体と共に4℃で15分間、インキュベートして実施した。洗浄後、細胞を1% NP40溶解緩衝液で溶解して、清澄化した溶解液をタンパク質Aのビーズを用いて沈降させた。沈降したMHCクラスIを、R218抗血清を用いた免疫ブロッティングにより検出した。
【0121】
T細胞の刺激におけるペプチド編集(peptide-editing)は、天然のペプチドを持つミクロソームをATP再生系と共に室温で10分間混合して実施した。
【0122】
過剰のペプチドはRM緩衝液中のショ糖クッションを介した遠心分離によって除去した。または、付加したミクロソームを液体窒素中で繰り返し凍結/融解処理して、続いて、37℃の恒温水槽に10分間、浸漬した。処理されたミクロソームをPBSに(6 A280/ml)の濃度で再懸濁して、使用時まで-80℃にて維持した。ペプチドでパルス標識したRAW309Cr.1細胞は、ペプチド100nMを1mlの培地中で107個の細胞と37℃で一晩、または1ml PBS中で4時間、混合して調製した。パルス標識した細胞は、B3Z T細胞との混合前にPBSで洗浄するか、またはその混合物を直接B3Zに加えた。
【0123】
実施例2:B3Z T細胞ハイブリドーマの活性化
ペプチド編集したミクロソーム、ペプチドでパルス標識したRAW309Cr.1細胞、OVAペプチドを含む調製した刺激物質を105個のB3Z細胞の培養物に総液量200μlにて加えた。PBSおよび抗CD3/CD28でコーティングしたビーズを添加して、それぞれ、陰性または陽性対照とした。一晩インキュベート後、B3Zの活性化は、基質であるo-ニトロフェニルb-D-ガラクトピラノシド(Sigma)を用いたLacZ活性によって示された。B3Z細胞自体がKbを発現してSIINFEKLを示すことから、OVA反応の線形範囲はSIINFEKLの段階希釈物を培地に添加することによって測定した。
【0124】
実施例3:APCの表面ではなくミクロソーム内のペプチド受容性MHCクラスI分子の検出
RAW309Cr.1細胞由来のERの架橋剤で修飾したペプチドおよび単離したミクロソームを用いたインビトロにおけるペプチド輸送および付加アッセイが報告されている(Li et al J Biol Chem. 274 (13), 8649-54 (1999))。アッセイは、ATPの存在下においてERの膜を介してのペプチドの移動およびその後のMHCクラスI分子へのペプチド付加の双方についての検討を可能とする(Wang et al J Immunol. 157(1), 213-20 (1996))。
【0125】
ミクロソーム膜内のペプチド受容性MHCクラスI分子を検出するため、架橋剤(ANB-NOS)をH2-Kb結合オバルブミン(OVA)ペプチド(残基257〜264、SIIFEKL)のリジン残基のε-アミノ基に結合させて、ヨウ素化するために3位のイソロイシンをチロシンと置換した。これらの修飾によって、構築中にOVAペプチドのH2-Kb分子への光架橋結合が可能となった。RAW309Cr.1生細胞のミクロソーム内および細胞表面におけるペプチド受容性H2-Kbを量的に比較するために、修飾したOVAペプチドを125Iで標識して、UV照射下にてRAW309Cr.1のミクロソームおよびRAW309Cr.1生細胞と共にインキュベートした。続いて、ペプチド結合したH2-Kb分子を抗H2抗体であるY3を用いた免疫沈降法により分析した。ATPが存在しない場合は、ごく小数のKb分子がOVAペプチドと集合したが、ATPが存在すると顕著な量のKb分子がOVAペプチドと架橋結合した(図1)。この結果は、ペプチド受容性クラスI分子の実質的な量がERに存在することを確認するものである。
【0126】
RAW309Cr.1のミクロソーム内および表面におけるOVA架橋結合したKbの半定量的分析の結果、ミクロソーム内における多量のペプチド受容性Kb分子に対して、APC表面のOVA結合Kb分子は放射化学的検出量よりも低いことが示され(図2)、この場合もペプチド受容性MHCクラスI分子は主としてERに検出されてAPCの表面には検出されないことを示唆する。競合実験において、このKbに対する修飾OVAペプチドの結合が特異的であることを示している。修飾OVA-ペプチドの親和性を調べるために、標識したOVAペプチドを異なる濃度の天然の型で競合させた。天然のOVAペプチドはレポートペプチドの濃度においてレポートペプチドの50%と競合して、レポートペプチドの10倍の濃度では結合を完全に消失させた(図2)。さらに、Ld特異的ペプチドはOVA結合と競合できなかった。このことは、修飾OVA-ペプチドの結合親和性がKb特異的であり、天然型とほぼ等しいことを示している。106個のRAW309Cr.1に由来するミクロソーム内のKb分子に結合するペプチドの量を定量するために、標識したペプチドをATPの存在下でミクロソームと共にインキュベートした。架橋結合後、MHCクラスIを沈降させて、ペプチド結合Kbのdpmを測定してペプチド濃度に換算した。結果は、約500〜1000のペプチドが1個の細胞のミクロソーム内でKb分子に結合することを示した。さらに、ER内の全MHCクラスI分子の量はRAW309Cr.1細胞の表面にある分子の量よりも多い(図3)。このように、APCに由来するミクロソームは十分なペプチド-MHCクラスI複合体をT細胞に送達することができ得る。
【0127】
実施例4:B7およびICAM1はAPCのミクロソーム内に存在する
十分なT細胞応答には抗原-MHC複合体およびB7のような共刺激分子の双方からのシグナルが必要である(Acuto et al, Immunol Rev. 192, 21-31 (2003))。すべての膜タンパク質と同様に、共刺激分子はER内で合成されて、その後、APCの表面で発現する。単離されたミクロソーム内のB7およびICAM-1の共刺激分子の量を定量するために、5×106個のRAW309Cr.1に相当するミクロソームを溶解して、透明な溶解液をこれらの分子に特異的な抗血清を用いてウェスタンブロッティングによりそれぞれ分析した。比較として、5×106個のRAW309Cr.1の総細胞溶解液についても同一の抗体を用いてブロットした。B7.1、B7.2およびICAM-1のバンドの強度を密度分析により定量した。B7およびICAM-1の双方とも、ミクロソーム試料中で容易に検出された(図4)。ミクロソーム内の検出量は総細胞溶解液の約半分であった。ペプチド編集ミクロソームに十分な量の共刺激分子が存在することは、抗原-MHCおよび共刺激分子の双方のシグナルをT細胞に提供するためにAPCの機能性表面を模倣することができる。
【0128】
実施例5:Kb特異的OVAペプチドを付加したミクロソームはインビトロにおいてT細胞を刺激する
ペプチド付加ミクロソームの特異的T細胞応答誘発能を調べるために、天然のOVAペプチド編集ミクロソームを反復凍結-融解法(「材料および方法」)によって裏返しのために処理した。処理したミクロソームおよびOVA-ペプチドでパルス標識したRAW309Cr.1を、Kb-SIINFEKL複合体を認識するB3Z T細胞ハイブリドーマを刺激するために使用した(Fremont et al Proc Natl Acad Sci U S A. 92 (7), 2479-83 (1995); Shastri N, & Gonzalez F., J Immunol. 150 (7), 2724-36 (1993))。過剰なペプチドを洗浄した後、OVA編集ミクロソームは、IL-2産生およびIL-2プロモーターに由来するLacZの発現を誘発することによって、B3Z T細胞を刺激した(図5)。OVA-Kbに誘発されたB3Z反応の特異性は、ペプチドを持たないミクロソームまたはLd特異的なペプチドを付加されたミクロソームに対するB3Z細胞の無応答によって裏付けられる(図5)。さらに、OVA編集ミクロソームに対するB3Zの応答レベルはOVA-ペプチドの量に相関した(図6)。OVAでパルス標識したRAW309Cr.1は、過剰なペプチドの存在下においてB3Zの応答を誘発することができる(Schott et al Proc Natl Acad Sci U S A. 99 (21), 13735-40 (2002))。
【0129】
しかし、過剰なペプチドが洗浄によって除去されると、OVAでパルス標識したRAW309Cr.1はもはやB3Z応答を誘発できなかった。OVA自身がB3Z細胞によるIL-2産生を誘発し得るとすると(図5)、RAW309Cr.1ではなくOVAそのものがB3Zの刺激物質であることが示唆される。SIINFEKLがインビトロにおいてKb拘束性T細胞応答を誘発し得ることが近年報告されていて、CTLが互いにペプチドを提示することを示唆している(Schott et al Proc Natl Acad Sci U S A. 99 (21), 13735-40 (2002))。しかし、ペプチドでパルス標識したRAW309Cr.1によってではなくペプチド編集ミクロソームによってインビトロにおけるCTL応答が誘発されることはペプチド結合の結果と一致して(図2)、ペプチド編集ミクロソームがAPCを模倣してTCRに抗原ペプチドを効率的に提示してCTLの十分な応答を刺激することができることを示している。
【0130】
実施例6:Kb特異的OVAペプチドを付加されたミクロソームはインビボにおいてOVA-ペプチド反応を誘発する
OVA編集ミクロソームのインビボにおける免疫応答誘発能についてさらに調べるために、RAW309Cr.1細胞由来のOVA編集ミクロソーム、Ld特異的ペプチドを付加したミクロソーム、可溶性OVAペプチド、OVAペプチドでパルス標識したRAW309Cr.1、およびPBSをインビボにおける免疫応答の誘発に使用した。各群5匹のマウスからなる5群のC57BL/6またはBalb/cマウスに、上記の刺激物質をそれぞれ2回ずつ皮下注入した。注入の間隔は1週間とした。2回目注入の6日後に脾臓からT細胞を単離して、最初の5種類の刺激物質を用いて、それぞれ、インビトロにおいて交差刺激した。さらに、抗CD3/CD28でコーティングしたビーズを陽性対照として使用した。PBSで刺激したT細胞はいずれの刺激に対しても応答しなかったが、抗CD3/CD28はすべての群において増殖反応を誘発した。OVAペプチドでパルス標識したRAW309Cr.1およびLd特異的ペプチドを付加したミクロソームはT細胞応答を誘発しなかった(図7)。これに対して、OVA編集ミクロソームおよびOVAペプチドのC57BL/6の群から得られたT細胞はインビトロにおいてOVA編集ミクロソームに応答したが、OVAでパルス標識したRAW309Cr.1またはLd-ペプチドを付加したミクロソームに対しては応答しなかった(図7)。IL-2産生からの強制的な結果(図7)も、OVA編集ミクロソームがインビボにおいて特異的なT細胞応答を誘発できることを裏付けている(図7)。Balb/cはH-2dを持ち、従って、OVA反応は誘発されなかった。
【0131】
実施例7:TCRシグナリング経路はOV-ミクロソームによって活性化される
OVA-ミクロソーム刺激に反応してのTCRシグナリングを分析するために、OVA-ミクロソームで免疫したC57BL/6マウスから単離したT細胞を用いて、インビトロにおいてTCRシグナリングを誘発した。ERKおよびJNKの活性化は、抗CD3/CD28またはOVA編集ミクロソームで刺激したT細胞では検出されたが、OVAでパルス標識したRAW309Cr.1で刺激した場合には検出されなかった(図8)。従って、生化学的エビデンスはミクロソームにおけるOVA-Kbに対する特異的TCRシグナリングを示して、抗原ペプチドで編集したミクロソームはインビボにおいて特異的な免疫応答を誘発し得ることをさらに裏付けている。
【0132】
実施例8:インフルエンザウイルスペプチドを付加したミクロソーム
マウスインフルエンザウイルスから得られたKb特異的ペプチド(ASNENMETM)をKb特異的RAW細胞由来のミクロソームに付加した。付加したミクロソームを用いて、C57BL/6マウスを免疫した。別の群では、PBSまたはペプチドを対照として用いた。2種類の抗原を7日間にわたって投与した後、脾臓からT細胞を単離して、PBSもしくはペプチド、ペプチドもしくはペプチド付加ミクロソームと共に3日間培養した。免疫4日後にT細胞増殖を測定した。結果を図10に示す。
【0133】
実施例9:黒色腫細胞に対する影響
3名のA2黒色腫患者(P1、P2、P3)からそれぞれ単離したT細胞を、外科的生検標本から精製した自己腫瘍細胞で1対1で刺激して、r-ヒトIL-2(10U/mL)を用いて5日間の投与間隔で4回刺激した。特異的な抗腫瘍反応は、細胞毒性アッセイにより、腫瘍細胞株であるK259と比較して調べた。MAGEペプチドをMHC遺伝子座が欠失した221-A2ヒトB細胞株から単離したミクロソームに付加して、その後、HLA-A2を用いてトランスフェクトした。黒色腫患者由来のT細胞をペプチド、ミクロソームまたはペプチド付加したミクロソームと共に通常の培地で3日間培養した。3日目に増殖を測定した。結果を図12に示す。
【0134】
考察
これらの結果は、ERから派生したミクロソームがMHCクラスI分子上の編集された抗原ペプチドを処理するために使用できること、および処理されたミクロソームはCTL応答を誘発するためにAPCの機能性表面を再構築できることを実証している。従って、共刺激分子に関連してミクロソームMHCクラスIによって送達される抗原ペプチドはペプチドワクチンの新しい型である。
【0135】
表1〜7の参考文献
【0136】
(表1)クラスI HLA拘束性癌/精巣抗原
これらのすべての抗原が、精巣の正常な精母細胞および/または精原細胞によって発現されることが見出された。MAGE-3、MAGE-4およびGAGE遺伝子が時に胎盤でも発現することが見出された[26,24]。NY-ESO-1抗原は正常な卵巣細胞で発現することが見出された[18]。
a エピトープの配列を最初に報告した論文と異なる場合の、所与の参考文献に記載された腫瘍における組織分布。
【0137】
(表2)クラスI HLA拘束性黒色腫の分化抗原
これらの抗原は同一細胞系譜の正常および新生物細胞(つまり、メラニン細胞、皮膚、網膜、末梢神経節)または前立腺の正常な細胞でのみ発現することができる。
a 2つの異なるグループが同時にこの遺伝子を発見し、それぞれMART-1およびMelan-Aと異なる2つの名称が付与された。
【0138】
(表3)クラスI HLA拘束性の広範に発現される抗原
a CAP-1はこのペプチドの別名である。
b エピトープの配列を最初に報告した論文と異なる場合の、所与の参考文献に記載される腫瘍における組織分布。
c テロメラーゼは大半のヒト腫瘍において発現される:記載した腫瘍は細胞傷害性Tリンパ球による溶解に感受性であることが示された。
d すべての上皮組織はムチン様の高度にグリコシル化された分子を発現する。
【0139】
(表4)固有抗原(CDK-4、MUM-1、MUM-2、β-カテニン、HLA-A2-R170I、ELF2m、ミオシン-m、カスパーゼ-8、KIAA0205、HSP70-2m)および共通抗原(CAMEL、TRP-2/INT2、GnT-V、G250)を含む、クラスI HAL拘束性腫瘍特異性抗原
a VLPDVFIRC(V)=九量体および十量体のペプチドはいずれもCTLによって認識される。
b この抗原は正常な細胞では発現されないが、精巣の組織が検査されなかったため、より詳細な情報が入手できるまではこの抗原がどのカテゴリーに属するかは明らかでない。
【0140】
(表5)クラスII HAL拘束性抗原
a すべての上皮組織は高度にグリコシル化されたムチンを発現するが、腫瘍細胞はしばしば正常なタンパク質配列を持つ低グリコシル化ムチンを示す。
b エピトープの配列を最初に報告した論文と異なる場合の、所与の参考文献に記載された腫瘍における組織分布。
【0141】
(表6)融合タンパク質に由来するエピトープ(融合タンパク質は正常組織では決して見出されない)
a これらのbcr-ablエピトープは、外部のbcr-abl接合部に由来するため、真の融合タンパク質生成エピトープではない。
【0142】
(表7)所与のHLA対立遺伝子によって認識されるエピトープの頻度
【0143】
(表8)HCV暴露患者において認識されることが予め確認されたHCVペプチド
出典:Anthony et al Clinical Immunol., vol. 103, page 264-276 (2002)
【0144】
(表9)HIV-CTLペプチドエピトープ
出典:Kaul et al J. Clinical Invest., vol. 107, pages 1303-1310 (2001)
【0145】
(表10)HCVウイルス性ペプチド抗原
出典:Koziel et al J. Virol., vol. 67, pages 7522-7532 (1993)
【0146】
(表11)HCVウイルス性ペプチド抗原
出典:He et al PNAS USA, vol. 96, pages 5692-5697 (1999)
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】RAW309Cr.1細胞のミクロソームにおける架橋剤で修飾されたOVAペプチドによるH2-Kb分子の架橋結合を示す。125Iで標識したANB-NOS-OVAペプチドを、ATP再生系または10倍の過剰モル濃度の天然のOVAペプチドの存在下または非存在下でRAW309Cr.1細胞のミクロソームと混合した。架橋結合したH-2Kbが示された。
【図2】RAW309Cr.1細胞のミクロソームにおけるOVA-ペプチド受容性H-2Kbの濃度を示す。OVA-ペプチド受容性H-2Kbの半定量化のため、標識したペプチドの10nMをUV照射下でミクロソームまたはRAW309Cr.l細胞と共にそれぞれインキュベートした。H-2分子をR218抗血清で沈降させて、架橋結合したKb分子をリン画像化によって定量した。
【図3】RAW309Cr.1細胞のミクロソーム内または表面上のH-2分子の検出を示す。RAW309Cr.1ミクロソームまたはRAW309Cr.1細胞のNP40溶解液に由来するタンパク質30μgを10%SDS-PAGEで分離した。溶解液を記載の力価にて希釈して、SDS-PAGEで分離した。H-2分子の免疫ブロッティングはR218抗H-2抗血清で検出した。
【図4】RAW309Cr.1細胞のミクロソームにおけるB7.1、B7.2およびICAM-1の検出を示す。RAW309Cr.1ミクロソームまたはRAW309Cr.1細胞のNP40溶解液に由来するタンパク質30μgを10%SDS-PAGEで分離した。B7.1、B7.2およびICAM-1の免疫ブロッティングを特異的抗体で検出した。
【図5】OVA-ペプチド編集ミクロソームによるB3Z T細胞の刺激を示す。2×105個のRAW309Cr.1細胞から得られたミクロソームを用いて、「材料および方法」に記載するようにOVAまたはLd特異的ペプチドを付加した。2×105個のRAW309Cr.1細胞をOVAペプチドでパルス標識した(「材料および方法」を参照)。洗浄後、ペプチドでパルス標識した2×105個のRAW309Cr.1細胞、OVAを付加したミクロソーム、Ld-ペプチドを付加したミクロソーム、およびペプチドを持たないミクロソームを105個のB3Z細胞と共に一晩、同時培養した。A)PBSで洗浄後、B3Z細胞のLacZ活性をLacZ基質のONPGを加えた総細胞溶解液によりアッセイした。37℃で4時間インキュベートした後、吸光度(415nM)を判定した。100nM OVAペプチドと共に培養したB3Z細胞、および通常の培地をB3Z刺激における陽性および陰性対照として用いた。B)これらの培養物の上清について、ELISAによりIL-2産生を測定した。実験は4回反復実施して、ほぼ等しい結果が得られた。誤差棒は三連の培養物のSEMを示す。
【図6】異なる濃度のOVA-ペプチドを予め付加した2×105個のRAW309Cr.1細胞のミクロソームによるB3Z T細胞の刺激を示す。記載した異なる濃度のOVA-ペプチドを付加したミクロソームは、LacZ活性のアッセイ前に一晩、B3Z細胞と共に同時培養した。
【図7】OVA-ペプチド編集ミクロソームがインビボにおいて特異的T細胞応答を刺激することを示す。C57BL/6(H-2b)マウスはOVA編集ミクロソームもしくはLd-ペプチドを付加したミクロソーム、またはOVAペプチドもしくはOVAでパルス標識したRAW309Cr.1細胞によって初回抗原刺激して、7日後に同一の刺激によって誘発した。誘発から6日後に濃縮したT細胞を脾臓から単離して、記載の刺激と共に105個の細胞/ウェルで培養した。RAW309Cr.1細胞はT細胞と同時培養する前に放射線照射した。3日後にサイトカインのELISA(b)のために上清を回収して、培養物を[3H]チミジン(a)でパルス標識した。結果は投与群当たり少なくとも3匹のマウスの群を示し、実験は4回反復実施されてほぼ等しい結果が得られた。誤差棒は三連の培養物のSEMを示す。Balb/c(H-2d)マウスを用いて実施されたほぼ同一セットの実験を陰性対照とした。
【図8】TCR誘発性MAKキナーゼの活性化を示す。OVAミクロソームで免疫したC57BL/6由来の107個のT細胞をOVAでパルス標識したRAW309Cr.1細胞、OVA-ミクロソームおよび抗CD3/CD28で、それぞれ刺激した。ERKおよびJNKの活性化は抗p-ERKおよび抗p-JNK抗体により検出した。抗ERKおよび抗JNKにより検出されたほぼ同量のERKおよびJNKを付加対照とした。
【図9】OVA受容性H-2KbがRAW309Cr.1細胞のミクロソーム内には検出されるが表面には検出されないことを示す。125Iで標識したANB-NOS-OVAペプチドの10nMを、天然のOVAペプチドを加えずに、または記載の濃度で加えて混合した。混合したペプチドは、107個のRAW309Cr.1細胞に相当するミクロソームと共に、または107個のRAW309Cr.1細胞と共にインキュベートした。架橋結合したH2-Kb分子が示された。
【図10】インフルエンザウイルスペプチド編集Kb-ミクロソームがインビボにおいてT細胞応答を誘発した試験(各群マウス5匹)の結果を示す。
【図11】DCおよび調製したミクロソームの電子顕微鏡像を示す:(A)倍率12000倍および(B)倍率40000倍はRAW細胞由来のミクロソーム調製物である;(C)倍率40000倍は反復凍結-融解により反転させてペプチドを付加したミクロソームであり、オープンまたは反転ミクロソームを示す。この像には、付加されたペプチドは見られない。
【図12】A2黒色腫患者由来のMAGE-A2特異的T細胞について実施した試験の結果を示す。
【図13】MHCクラスI抗原であるA2α鎖前駆体およびB7α鎖前駆体のアミノ酸配列を示す(それぞれ、アクセッション番号 P01892およびP01889)。
【図14】MHCクラスII抗原であるDRB3-1β鎖前駆体およびHLA-DQα1(DQw4特異性)前駆体、ヒト(それぞれ、アクセッション番号P79483およびA37044)のアミノ酸配列を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ペプチドに基づくワクチン、ウイルス感染、および癌などのヒトおよび動物の疾患の予防および治療におけるこのようなワクチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
効果のあるワクチンの大半は、古典的な弱毒化または死滅した病原体によって産生される中和抗体に依存する。しかし、HIV、C型肝炎ウイルス、放線菌(mycobacteria)および寄生虫のような慢性的感染を引き起こす病原体に関しては、または癌の場合、T細胞介在性免疫応答が重要である。MHC抗原提示およびT細胞性免疫応答を分子学的に理解することによって、定義された抗原ペプチドおよびサイトカインならびに/または共刺激分子がワクチン開発の試みにおいて使用されるようになった。これらのすべての試みにおける基本的問題の一つは、インビボにおいて抗原提示細胞(APC)と質的および量的に等しい抗原送達系を再構築することが困難であることであった。
【0003】
CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、抗原を主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子と集合する小さな抗原ペプチドとして認識する。その抗原ペプチドはAPCのサイトゾルで産生され、その後、小胞体(ER)の腔内に移動する(Rock, K. L. & Goldberg, A. L. Annu Rev Immunol 17, 739-779 (1999))。MHCクラスI重鎖が合成されてERの腔内に挿入され、そこでb2-ミクログロブリン(b2M)と共に二量体を形成する(Natarajan et al Rev Immunogenet 1, 32-46 (1999); Pamer E, & Cresswell P, Annu Rev Immunol. 16 323-358(1998))。この二量体は、適切な抗原ペプチドと集合するまでER内に維持される。MHCクラスI二量体およびER内でのペプチドとの集合のプロセスは、BIP、カルネキシン、カルレティキュリンおよびErp57のようなシャペロンによって触媒される(Paulsson K, & Wang P., Biochim Biophys Acta. 1641(1) 1-12 (2003))。
【0004】
構築されたMHCクラスIは、感染細胞または悪性細胞のようなAPCの細胞表面で速やかに発現する。T細胞レセプターによってペプチド-MHCクラスIが認識されると、CTLは感染性抗原または腫瘍抗原を発現している標的細胞を死滅させる。
【0005】
ウイルスまたは癌のタンパク質に由来するエピトープを認識したCTLが特定されると、T細胞性免疫を誘発するように設計された合成ペプチドに基づくワクチンが感染症および悪性疾患の予防または治療のための魅力的なアプローチとなった(Furman MH, & Ploegh HL., J Clin Invest. 110 (7) 875-9 (2002); Berinstein N. Semin Oncol. 30 (3) (Suppl 8), 1-8 (2003); Falk et al Nature 348, 248-251. (1990); (Van Bleek GM, & Nathenson SG., Nature 348: 213-216 (1990); Kast, W.M. , & Melief, C.J. Immunol. Lett. 30: 229-232 (1991))。これらの送達系に基づく多くの異なる型のペプチドワクチンがある。最も単純な型はペプチドを水溶液に溶解したものである。可溶性抗原ペプチドを直接注入してもCTL反応を刺激できないことが示されたが、これは急速な生分解または未成熟なAPCによる抗原刺激に起因するT細胞無応答の誘発が原因である(Kyburz, D. et al. Eur. J. Immunol. 23: 1956-1962 (1993); Toes, R. E et al Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93: 7855-7860 (1996); Amoscato et al J. Immunol. 161, 4023-4032 (1998))。合成ペプチドから作製されたワクチンの使用に起因して報告されたその他の合併症はCTLの誘導であり、それらはペプチドを用いて外因性にパルス標識される標的細胞を死滅させることはできるが、感染細胞または悪性細胞のように、本来、ペプチドエピトープを処理および提示する標的細胞は認識できない(Dutoit, V. et al. J. Clin. Invest. 110: 1813-1822 (2002))。
【0006】
MHCクラスI抗原提示は適切なペプチドの選択に関してER内で質的に制御されることが報告されている。適切に構築されたMHCクラスIのみがAPCの表面で発現することができる。アジュバントを使用しても、合成ペプチドの提示品質はほとんど向上しなかった(Schijns, V. E. 2001. Crit. Rev. Immunol. 21: 75-85 (2001)。ペプチドワクチンの改良型は、ペプチドを付加した組換え型MHCクラスIを用いて人工脂質膜(BenMohamed et al Lancet Infect Dis. 2 (7), 425-31 (2002))として構築されている。リポソーム戦略は患者への注入前にペプチドを結合したMHCクラスI分子を脂質膜内に組み込むことができるが、組換え型MHCクラスI、合成ペプチドおよびリポソームを単純な混合物によってAPCのERにおける複雑な付加システムを容易に模倣することはできない。ごく少数のペプチドのみが、インビトロにおいて組換え型MHCクラスIと集合する(Ostergaard Pedersen L, et al Eur J Immunol. 31 (10), 2986-96 (2001)。
【0007】
さらに、挿入されたMHCクラスIの不適切な方向および共刺激分子の欠如のために、効果的な免疫応答の誘導が困難となった。専門のAPCは至適抗原の提示およびナイーブT細胞による細胞性免疫応答の開始において固有の作用を持つため、エクスビボにおけるワクチン媒体として、重要なAPCである自己樹状細胞(DC)を産生するための戦略が開発中である(Banchereau, J. et al. Annu. Rev. Immunol. 18: 767-811 (2000))。初期の試験では、インビボにおいてワクチンとして用いられた抗原ペプチドでパルス標識したDCがCTL反応を誘発できることが示された(Tsai, V. et al. J. Immunol. 158: 1796-1802 (1997))。ヒトにおける多くの臨床試験から明確な証拠が報告されたにも関わらず、パルス標識したペプチドが表面MHCクラスIに実際に付加することを示す生化学的所見はなく、ペプチドでパルス標識されたAPCの効果的な免疫応答誘発の有効性が疑問視される。
【0008】
従って、これらの問題を解決して従来のワクチンに取って代わる治療上有効な代替品を提示ことができるワクチン調製物が必要である。このようなワクチンは、高い有用性を維持して副作用を回避しつつ、APC細胞によって内因性に提示された抗原の品質を達成しなければならない。
【発明の開示】
【0009】
本発明の第一の局面に従って、外部から導入された(externally disposed)ペプチド抗原および主要組織適合複合体(MHC)のタンパク質に結合している動物細胞由来の単離された反転(inverted)ミクロソームまたはその膜断片を含む、ワクチン組成物が提供される。
【0010】
本発明のミクロソームは動物細胞に由来し、従って、真核細胞内に存在する以下のコンパートメントから作製され得る:小胞体、リソソーム;エンドソーム、またはエンドサイトーシス経路のコンポーネント。
【0011】
ミクロソームは、ミクロソームの膜またはその断片に既に存在するMHCのタンパク質を用いて単離することができる。または、MHCタンパク質は、その後、ミクロソームまたは断片に導入することができる。ER由来のミクロソームはMHCクラスIおよびクラスIIの双方の分子を含む(Bryant et al Adv Immunol. 80,71-114 (2002))。
【0012】
本発明は、MHCクラスII分子に加えてMHCクラスI拘束性抗原ペプチドに関して等しく応用可能である。組成物中のMHCのタンパク質は、ミクロソームが得られる細胞に関して異種性供給源由来であってもよい。
【0013】
MHCファミリーのタンパク質は、主要組織適合複合体(MHC)のクラスター遺伝子によってコードされる。MHC分子はすべての高等脊椎動物の細胞で発現する。それらは、マウスおよびいわゆるH-2抗原(細胞適合性2抗原)において最初に実証された。ヒトの場合、最初に白血球で実証されたことから、HLA抗原(ヒト白血球関連抗原)と呼ばれる。クラスIおよびクラスIIのMHC分子は公知の最も多型のタンパク質であり、つまり、個体によって最も顕著な遺伝的変異性を示し、それぞれ、細胞障害性T細胞およびヘルパーT細胞に対して外来タンパク質抗原の提示において重要な役割を担う。クラスI分子はほぼすべての脊椎動物細胞で発現するが、クラスIIの分子は、Bリンパ球およびマクロファージのようにヘルパーT細胞と相互に作用する少数の細胞タイプに限定される。両クラスのMHC分子は免疫グロブリン様ドメインおよび単一のペプチド結合溝を持ち、このペプチド結合溝は外来タンパク質から派生する小さなペプチド断片を結合する。それぞれのMHC分子は、細胞内でタンパク分解によって産生される大きく特徴的なペプチドセットを結合することができる。それらが標的細胞内で産生されると、ペプチド-MHC複合体は細胞表面に輸送されて、そこでT細胞レセプターによって産生される。標的細胞の表面でペプチド-MHC複合体を認識する抗原特異的レセプターに加えて、T細胞はCD4またはCD8コレセプターを発現して、これらのコレセプターは標的細胞のMHC分子の非多型領域を認識する:ヘルパー細胞はCD4を発現して、このCD4がクラスII MHC分子を認識し、これに対して細胞障害性T細胞はCD8を発現して、このCD8がクラスI MHC分子を認識する(Alberts et al,「Molecular Biology of the Cell」, 3rd edition, 1229-1235(1994))。
【0014】
MHCクラスIは重鎖およびβ-2-ミクログロブリンからなる。ヒトMHCクラスIの重鎖は、HLA A、B、Cと呼ばれる3つの分離した遺伝子座によってコードされる。それらは、β-2-ミクログロブリンと呼ばれる小さなタンパク質と非共有結合によって結合する。ヒトMHCクラスIタンパク質の一例は、図13(データベースアクセッション番号P01889)に示すHLAクラスI組織適合抗原のA-2α鎖前駆体(MHCクラスI抗原A*2);またはHLAクラスI組織適合抗原、B-7α鎖前駆物質(MHCクラスI抗原B*7)である。
【0015】
MHCクラスIIは、α鎖およびβ鎖という非共有結合によって結合した2つの鎖から構成される。双方の鎖は、遺伝子によってI領域関連(Ia)抗原内にコードされる。このようなタンパク質の例は、図14(データベースアクセッション番号P79483)に示すHLAクラスII組織適合性抗原、DRB3-1β鎖前駆体(MHCクラスI抗原DRB3*1);および同じく図14(データベースアクセッション番号A37044)に示すMHCクラスII組織適合性抗原HLA-DQ α1(DQw4特異性)前駆体である。
【0016】
MHCクラスIおよびIIのcDNAならびにゲノムDNAの配列は公表されており、入手することができる(www.ncbi.nlm.nih.gov/Genbank)。
【0017】
すべての真核細胞が小胞体(ER)を持つ。膜は、典型的には、平均的な動物細胞の膜全体の半分よりも多くを形成する。それは組織化されて枝分れした細管の網の目のような迷路となり、サイトゾル全体に伸張して扁平な嚢状構造物となる。細管および嚢状構造物はすべて相互に吻合すると考えら、従って、ER膜は単一の内部スペースを囲む一続きのシートを形成する。この高度に回旋したスペースはER腔またはER層板スペースと呼ばれて、しばしば細胞容積全体の10%よりも高い値を占めることがある。ER膜はER腔を細胞質から分離して、これら2つのコンパートメント間の物質の選択的輸送を介在する。
【0018】
ERは脂質およびタンパク質の生合成において中心的役割を担う。膜は、ER自身、ゴルジ装置、リソソーム、エンドソーム、分泌小胞および形質膜を含む大半の細胞小器官においてすべての膜貫通タンパク質および脂質の産生部位である。ER膜は、また、脂質の大半を産生することによってミトコンドリア膜およびペルオキシソーム膜に大きく貢献する。さらに、細胞外に分泌されるタンパク質、ならびにER、ゴルジ装置またはリソソームの腔に分泌されるタンパク質は、ほぼすべてが先ずERの腔に送達される(Alberts et al, "Molecular Biology of the Cell", 3rd edition, 577-595 (1994))。
【0019】
リソソームは、破壊される必要のある細胞内タンパク質の分解、または免疫系により破壊の標的とされた外来タンパク質もしくは寄生虫の破壊のために特化された酵素を含む特化された細胞小器官である。
【0020】
エンドソームは細胞内においてエンドサイトーシス経路の一部を形成する細胞小器官である。細胞表面からエンドソームまたはリソソームに向かう細胞内小胞の一定の流れがある。この小胞は、陥入として公知である外部形質膜からの「出芽」プロセスによって形成されるか、またはその内部の細胞小器官から形成されて最終的にその小器官に戻ることが可能である。エンドサイトーシスは時に結合リガンドを伴って細胞が外部レセプターを内側に取り込むプロセスであり、細胞がその外部環境をサンプリングすることができる一方向性のプロセスでもある。
【0021】
本発明の組成物は、任意で、適切なアジュバント、および/または例えばIL-2、IL-15、IL-6、GM-CSF、IFNγなどのインターフェロンもしくはインターロイキンのようにT細胞反応を促進するサイトカイン、T細胞反応を促進するその他のサイトカイン、ならびに/または通常のアジュバントを用いて製剤化することができる。これらは投与前に抗原を付加したミクロソームと適宜混合することができるか、またはミクロソームの膜結合型構成物として適宜調製してもよい。
【0022】
本発明の状況におけるミクロソームは、主要組織適合複合体(MHC)によって抗原ペプチドを提示することができる任意の動物細胞の小胞体(ER)、リソソームまたはエンドソームコンパートメントの無細胞性膜小胞である。ER由来ミクロソームの定義は、ERに通常含まれるBIP、p58、カルネキシン、カルレティキュリン、タパシンのようなタンパク質であるいわゆる「ERマーカー」の存在に基づく。リソソーム由来ミクロソームの定義は、特異的マーカーであるLAMP1および/またはLAMP2の存在に基づく。ミクロソームは、動物細胞からの調製後に電子顕微鏡下で見られる形態によってミクロソームと認識される。
【0023】
本発明の組成物に含まれるミクロソームは通常の任意の方法で単離することができる。適切な方法には、Sarasteらおよび/またはKnipeらの方法(Saraste et al Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83, 6425-6429 (1986) and Knipe et al J. Virol. 21, 1128-1139 (1977))が含まれる。このような方法は、細胞または組織のホモジナイズ、続く7500rpmでの10分間の遠心分離による細胞核の分離、その後の15500rpmでの54分間の遠心分離による「粗」ミクロソームの回収を含む。「粗」ミクロソームは、リボソームが付着したミクロソームである。次に、再懸濁した「粗」ミクロソームを、110,000g、60分間の分画遠心分離のためにショ糖クッションを介した遠心分離によりさらに精製する。粗ミクロソームを(等密度状態に達するために)ショ糖密度勾配において37,000rpmにて10時間さらに遠心分離して亜分画化して、ER含有分画を例えば抗p58抗体のような適切な抗体を用いたウェスタンブロット法により決定した。
【0024】
反転ミクロソームは、例えばミクロソームの外膜の破壊および再形成を引き起こす単離ミクロソームについて実施された反復凍結-融解処理工程のようなさらなる処理の産物であり、これによって、膜の「内」面が反転ミクロソームの「外側」に提示される。従って、このような処理によって得られるミクロソームは「裏返し」または「反転」ミクロソームと記載される。「裏返し」つまり反転ミクロソームの作製プロセスにより、通常のミクロソーム調製物に見られる腔構造が欠如する。
【0025】
本発明の組成物において、ミクロソームはその膜断片を含んでもよい。適切には、このような膜断片は、界面活性剤の使用またはミクロソーム構造を破壊する反復凍結-融解もしくは超音波処理を含む方法によって調製され得る。同様に、本発明の組成物を産生するために、このような断片にペプチド抗原を付加してもよい。好ましくは、膜断片はERまたはリソソームに特異的なマーカーを持つ細胞内膜から派生する。
【0026】
本発明のワクチン組成物において、一部のミクロソームは非反転構造、即ち、ミクロソーム調製前にER、エンドソームまたはリソソームの腔に対応する「内側」を用いて標準的なミクロソームを調製後のインサイチューの配列に対応する膜方向を持ってもよい。しかし、本発明のワクチン組成物中の少なくとも約75%〜約95%、適切には少なくとも約90%のミクロソームはインサイチューのミクロソームに対して逆の膜方向を持ち、従って、「裏返し」または反転ミクロソームであると記載される。従って、組成物はある割合の非反転ミクロソームをさらに含み得る。
【0027】
本発明のその他の態様において、組成物はさらに均質である可能性があり、さらなる処理を行わずに、細胞から調製されたミクロソームと比べて反転または逆転(つまり「裏返し」)の膜方向を持つ少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%のミクロソームを含んでよい。
【0028】
ミクロソームに先ず抗原を付加して、続いてER膜の内側表面を露出するように反転または「裏返し」のミクロソームを提供するようにさらに処理することができるか、またはミクロソームは好ましい抗原ペプチドが既にミクロソーム内に存在する細胞供給源から調製することができるか、または先ず反転または「裏返し」ミクロソームを提供するようにミクロソームを処理した後に抗原を付加してもよい。
【0029】
リソソームおよびエンドソームは同等の手順によって調製することができる。動物細胞のエンドサイトーシスコンパートメントから精製されるリソソームミクロソームはリソソームおよびエンドソームの双方を含む。ER由来ミクロソームの調製における精製手順において細胞膜全体を分画した後、リソソーム膜をそのマーカーであるLAMP1およびLAMP2に対する抗体により規定する。
【0030】
続いて、精製されたリソソームミクロソームを上記のように反転もしくは「裏返し」のミクロソームまたは膜断片が得られるように処理して、必要ならば、続いて、例えばpH 3よりも低いpH、好ましくはpH3からpH3、適切には約pH2.5のような酸性条件下でMHC拘束性ペプチドを付加することができる。
【0031】
単離されたミクロソーム集団が調製される動物細胞は、その細胞が発現するMHC分子を持つ任意の一般的に簡便な細胞タイプとすることができる。例えば、血液の細胞、またはB細胞およびマクロファージのような免疫系の細胞、いわゆる抗原提示細胞(APC)。しかし、肝臓、腎臓、肺、脳、心臓、皮膚、骨髄、膵臓などの組織由来の細胞タイプも使用できる。
【0032】
細胞はヒトの細胞またはヒト以外の動物の細胞であってよい。適切には、動物は哺乳動物である。動物は、例えばマウス、ラットもしくはモルモットのような齧歯類、またはウサギのような別の動物種、またはイヌもしくはネコ、またはヒツジ、ブタ、ウマ、ヤギ、ウシのような有蹄類、またはトリ(例えば、ニワトリまたは七面鳥のような家禽のような)などの哺乳類以外の動物種であってもよい。
【0033】
ミクロソームが調製される細胞は培養における細胞株であってよい。細胞株は不死化細胞株であってもよい。細胞株は最終的には非胎性の組織供給源に由来してもよい。
【0034】
本発明の一部の態様において、細胞の供給源は、細胞株のような動物細胞またはヒト以外のトランスジェニック動物の遺伝的に修飾された供給源であってよい。ミクロソームが調製される細胞または組織は、一つまたは複数のヒト遺伝子の挿入によってゲノムが修飾された、ヒト以外のトランスジェニック動物に由来するヒト化動物の組織または細胞であってよい。
【0035】
ヒト以外のトランスジェニック動物またはトランスジェニック細胞株から調製されるミクロソームに関する本発明の態様において、遺伝子組換えとは追加の遺伝子またはタンパク質をコードする核酸の配列の導入である。導入遺伝子は、任意で構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターの制御下において、異種性遺伝子または同種遺伝子の追加コピーであり得る。遺伝子組換えは、細胞もしくは細胞株の一過性もしくは安定性のトランスフェクション、または細胞もしくは細胞株におけるエピソーム発現系であり得る。
【0036】
しかし、それはヒト医薬品の分野においてであり、その分野において本発明のこの局面の組成物はワクチンとしての広い実用性を見出すことが期待される。従って、好ましくは、ミクロソームが調製される細胞の供給源は、ワクチンとして使用される場合、組成物のレシピエントのMHCに適合可能なMHCアロタイプを持つ。
【0037】
本発明のこの局面の一つの態様において、ミクロソームが調製される細胞の供給源は、ワクチンとして使用される際の組成物の最終的なレシピエントであってよい。
【0038】
または、ヒト細胞の適切な供給源は、例えば胚以外に由来する細胞株、適切には細胞株221のようなB細胞株などの細胞株であってもよい。さらにこのような細胞株は、好都合なことに、主要組織適合複合体(MHC)クラスIおよび/またはクラスIIのタイプのタンパク質を発現しない可能性がある。本発明のこの態様は商業規模でのワクチンの製造におけるより好ましい態様である可能性があり、この場合、一般的な(non-individual)ワクチンは異なるMHCアロタイプを用いて操作されたこのような細胞株から産生される。
【0039】
細胞株221はこのようなMHC陰性細胞株の一例である。このような細胞に天然のMHCクラスIが発現しないことは、任意の所望の遺伝子型のMHCクラスIを発現するためにその細胞株を修飾することを可能とする。ヒト集団が異なると異なるMHCタンパク質が発現することから、これはワクチン組成物の最大免疫効果を達成する際に特に重要となる可能性がある。従って、本発明のこのような組成物において、MHCタンパク質はミクロソームが採取される細胞に関して異種性供給源であってもよい。
【0040】
HLA A2のようなMHCクラスIのいくつかは集団の20%よりも多くで発現する。MHC陰性細胞株が用いられる場合は、一つまたは複数の適合性MHC遺伝子が簡便な遺伝子導入法によって細胞株にトランスフェクトされて、導入遺伝子が発現ベクター内に構築される。発現構築物の発現カセットは、至適発現を達成するために、通常、CMVプロモーターのような標準的なプロモーター、または延長因子Iプロモーターもしくはアクチンプロモーター、エンハンサー、挿入された導入遺伝子、およびポリAシグナルを含む。トランスフェクション前に、トランスフェクトした細胞における細菌性プラスミド遺伝子の発現を避けるためにプラスミドバックボーンから発現カセットが単離される。MHCクラスIおよびIIのcDNAならびにゲノムDNAの配列は公表されており、入手することができる(www.ncbi.nlm.nih.gov/Genbank)。大半のMHCクラスI遺伝子をトランスフェクトするために、それぞれ、MHCクラスI陰性細胞株または特定のMHCクラス陽性の細胞株を用いてMHCクラスIトランスフェクタントバンクを構築することができる。発現カセットの選択は、導入遺伝子の至適発現に依存する。
【0041】
抗原提示細胞のトランスフェクションは、例えば、関心対象のMHCタンパク質をコードする核酸配列を含む適切なベクターを用いるような、標準的な組換え技術を用いて実施することができる。「ベクター」という用語は、一般に、RNA、DNAまたはcDNAであり得る任意の核酸ベクターを指す。または、ベクターは「発現ベクター」と記載することができる。
【0042】
「ベクター」または「発現ベクター」という用語には、特に、例えば、細菌性プラスミドに由来するベクター、バクテリオファージに由来するベクター、トランスポゾンに由来するベクター、酵母エピソームに由来するベクター、挿入エレメントに由来するベクター、酵母染色体エレメントに由来するベクター、バキュロウイルス、SV40のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルスのようなウイルスに由来するベクター、ならびにプラスミドならびにコスミドおよびファージミドのようなバクテリオファージ遺伝子エレメントに由来するベクターのように、それらの組み合わせに由来するベクターなど、染色体、エピソームおよびウイルス由来のベクターが含まれ得る。一般に、宿主内でポリペプチドを発現するために核酸の維持、増加または発現に適した任意のベクターを、この点について、発現のために使用することができる。ベクターは、例えば、細菌プラスミドのpUC18のような細菌プラスミドから構築してもよい。
【0043】
ベクターは特異的発現を提供することができる。このような特異的発現は、誘導発現もしくは一部の細胞タイプのみにおける発現、または誘導発現および細胞特異的発現の双方であり得る。好ましくは、誘導ベクターの中でも、温度、栄養添加物、低酸素および/もしくはサイトカインの存在のように操作しやすい環境要因、またはその他の生物学的に活性な要因によって発現を誘導することができるベクターである。誘導ベクターの中でも、例えば、抗生物質のような化学的添加物などの化合物の量の変化によって発現を誘導することができるベクターが特に好ましい。当業者は、原核性および真核性宿主で用いられる構造的および誘導発現ベクターを含む本発明の用途に適した様々なベクターについて周知であり、日常的に使用している。
【0044】
組換え型発現ベクターには、例えば、複製開始点、好ましくは構造配列の転写を目的とする高頻度に発現する遺伝子に由来するプロモーター、およびベクターへの暴露後に、ベクターを含む細胞の単離を可能とする選択マーカーを含む。
【0045】
哺乳動物発現ベクターは、複製開始点、適切なプロモーターおよびエンハンサーを含みことができ、さらに必要な任意のリボソーム結合部位、ポリアデニル化領域、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写停止配列、および発現に必要な5'-隣接非転写配列を含んでもよい。本発明の好ましい哺乳動物発現ベクターはエンハンサーエレメントを持たなくてもよい。
【0046】
プロモーター配列は、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、CMV前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、早期および後期SV40プロモーター、またはラウス肉腫ウイルス(「RSV」)のプロモーターのようなレトロウイルスLTRのプロモーター、およびマウスメタロチオネインIプロモーターのようなメタロチオネインプロモーターなどの適切な任意の公知のプロモーターであってよい。プロモーターは、例えば、CMVプロモーターの最小配列(mCMV)などの、(エンハンサーエレメントを持たないTATAボックスのような)プロモーター活性に必要な最小配列を含み得る。好ましくは、プロモーターはエンハンサーエレメントがない低い基礎レベルにおいて機能することができる哺乳動物プロモーターである。
【0047】
好ましくは、プロモーターは、抗原提示細胞にトランスフェクトされるMHCタンパク質をコードする核酸配列に隣接する。本明細書に述べられるプロモーターの相同体またはオルソログのような変異体は本発明の一部であることが意図される。
【0048】
本発明の第一の局面の発現ベクターのバックボーンは、プラスミドベクターであるpGL2のように独自のプロモーターおよびエンハンサーエレメントを持たないベクターに由来し得る。エンハンサーは、DNA折りたたみ構造を介して数千塩基離れたところにあるプロモーター領域に結合することができる(Rippe et al TIBS 1995; 20: 500-506 (1995))。
【0049】
発現ベクターは、抗生物質抵抗性のような選択マーカーをさらに含んでよく、それによってベクターは増殖可能となる。
【0050】
トランスフェクトされるMHCタンパク質をコードする核酸を含むベクターの核酸配列は、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(「CAT」)転写ユニット、ルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)のような上記のレポータータンパク質をコードすることができる。レポーター遺伝子の適用は、形質転換した細胞を用いてアッセイすることができ、例えば、遺伝子発現の誘導および/または抑制を分析するために用いられるこれらの遺伝子の表現型に関連する。遺伝子調節の試験において用いられるレポーター遺伝子には、生物発光アッセイによって調べることができるルシフェラーゼをコードするlux遺伝子、組織化学的検査によって調べることができるβ-グルクロニダーゼをコードするuidA遺伝子、組織化学的検査によって調べることができるβ-ガラクトシダーゼをコードするlacZ遺伝子、UV光、UV顕微鏡もしくはFACSにより検出することができる変異型緑色蛍光タンパク質を含むその他の周知のレポーター遺伝子が含まれる。
【0051】
MHCタンパク質の核酸配列を含むDNAは一本鎖または二本鎖であってよい。一本鎖DNAはコーディング鎖またはセンス鎖であってよいか、または非コーディング鎖もしくはアンチセンス鎖であってもよい。治療用の用途において、核酸配列は治療されるべき対象において発現することができる型である。
【0052】
ベクターの停止配列は、ポリアデニル化シグナルをコードするアデニレートヌクレオチドの配列であり得る。典型的には、ポリアデニル化シグナルは、例えばヒト治療におけるSV40ウイルスのようなウイルス由来の対応する配列のように、治療される対象において認識可能である。その他の停止シグナルは当技術分野において周知であり、用いることができる。
【0053】
好ましくは、ポリアデニル化シグナルはRNA転写の双方向性のターミネーターである。停止シグナルは、SV40後期ポリ(A)のようなサル40ウイルス(SV40)のポリアデニル化シグナルであり得る。または、停止配列はウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナルであってよく、CMVプロモーターと混合した際に最大発現を示す(Yew et al. Human Gene Therapy, 8: 575-584 (1997))。
【0054】
さらに、発現ベクターは、SV40早期ポリ(A)のようなさらなるポリアデニル化配列を含んでもよい。このようなさらなるポリ(A)は、ベクター内で開始された可能性のある潜在的転写を抑制して、それによってベクターからの基本的遺伝子発現を徹底して最小限に抑制するために、MHCタンパク質をコードする核酸配列の上流に位置づけられる可能性がある。
【0055】
組み込まれたウイルスゲノムからの遺伝子発現は、染色体位置効果に対して感受性である可能性がある。このような効果には、転写サイレンシングおよび近くの異種性エンハンサーによるプロモーターの活性化が含まれる。さらに、組み込まれた配列は近くの遺伝子および腫瘍遺伝子の発現を活性化することができる。これらの効果は、挿入されたウイルスゲノムに対して境界を形成するエレメントを使用することによって抑制される。インシュレーターは、オープンクロマチンドメインおよび構成的に凝縮したクロマチンの境界を示すニワトリβ-グロビン5'DNアーゼI高感受性領域(5'HS4)のような遺伝的エレメントである。
【0056】
足場またはマトリックス付着領域(S/MAR)と呼ばれるその他のエレメントはクロマチンを核構造物に固定して、遠位調節エレメントを対応するプロモーターのごく近位に運搬する際に生理学的な役割を担い得る染色体ループを形成する。一例はヒトインターフェロン-γ遺伝子座にあり、IFN-SARと呼ばれる。インシュレーターおよびS/MARはいずれも位置効果を抑制することができ、最大活性はレンチウイルスベクター内で混合された際に示される(Ramezani et al, Blood 101: 4717-24, (2003))。このようなエレメントは、明らかに、宿主細胞ゲノムに組み込まれた後、本明細書に述べられるベクターのように調節されたベクターにおいて有用であることができる。
【0057】
本発明の組成物は、ミクロソームに付加されて外部から導入されたペプチド抗原に結合しているミクロソームまたはその断片を含む。その関連性は、ペプチド抗原の少なくとも一つのエピトープがミクロソームの外膜に関して露出するようにペプチド抗原がミクロソームの膜に挿入される関連性であり得る。ミクロソームの膜は、抗原が免疫系によって認識されるように、T細胞に対してペプチド抗原を提示するMHCのタンパク質をさらに含む。MHCタンパク質はミクロソームが形成された細胞の細胞小器官に天然に存在するか、またはミクロソームの調製前に組換えDNA技術によって細胞にトランスフェクトされて発現したMHCタンパク質である。挿入された抗原ペプチドおよびMHCタンパク質はミクロソームの膜において結合体を形成して、これによって、免疫系の細胞との相互作用のためにタンパク質の外層配列が可能となる。
【0058】
抗原ペプチドは、例えば、アデノシン三リン酸(ATP)およびNTP再生系のようなヌクレオシド三リン酸(NTP)の存在下においてミクロソームをペプチド抗原と共にインキュベートすることによって、ミクロソームに導入または付加することができる。ATPのようなNTPはミクロソームの膜に位置するタンパク質輸送体を介してペプチド抗原のミクロソームへの組み込みを促進すると思われる。理論によって不必要に拘束されることは望まないが、ミクロソームをNTPの存在下でペプチド抗原と共にインキュベートすると、抗原はミクロソームの膜に予め存在するMHCクラスIタンパク質と結合することができると思われる。または、抗原ペプチドは裏返し処理によってもミクロソームに付加することができ、この場合はNTPは不要である。
【0059】
ミクロソームに結合して存在する抗原ペプチドは、適切には、一つまたは複数のエピトープを持つ。エピトープは免疫グロブリンの結合部位によって認識可能な抗原の最小部分であり、線状または非連続的であり得る。従って、天然または合成もしくは人工的に修飾されたMHC結合ペプチドの任意のタイプが含まれる。
【0060】
抗原ペプチドは、外来性、即ち、非自己、または自己、即ち、自己抗原の供給源由来であり得る。外来抗原ペプチドは、ウイルス、細菌、酵母、真菌、原生動物、もしくはその他の微生物(即ち、感染性物質)、または植物もしくは動物のようにより高等な生物に由来してよい。本発明のいくつかの態様において、抗原は、新生物細胞または癌腫瘍の細胞によって発現する抗体のような自己抗原、正常な自己タンパク質(自己免疫疾患のための本発明の寛容ワクチンの場合)であり得る。
【0061】
抗原が腫瘍細胞または癌腫瘍の細胞由来である場合、細胞は黒色腫、肺腺癌、結腸癌、乳癌または白血病細胞由来であり得る。自己免疫疾患には、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス、I型またはインスリン依存性糖尿病、抗リン脂質抗体症候群、重症筋無力症、筋炎、シェーグレン症候群および慢性関節リウマチが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本発明のいくつかの態様において、複数のタイプの抗原ペプチド、または免疫原性を高めるように修飾された配列を持つ抗原ペプチドを含む組成物を調製することが好ましい可能性がある。細胞はミクロソームの調製前に複数のタイプのMHC分子を用いてトランスフェクトしてもよく、このMHC分子は複数のタイプのMHCアロタイプを持つレシピエントにおいて組成物がワクチンとして使用される場合に有効であり得る。
【0063】
本発明のこの局面の好ましい態様において、ミクロソームにおけるMHC分子に対する抗原の割合が特異的な免疫応答の誘発に至適であり、例えば、0.1〜1.5、好ましくは0.2〜1.2または0.5〜1.0、および最も好ましくは0.2ないし0.5〜1.0の範囲の上記の組成物が提供される。付加される抗原ペプチドの量は、誘発される免疫応答によって異なってもよい。
【0064】
主な疾患の定義された抗原ペプチドは、科学文献から容易に選択またはバイオインフォマティクス的手段によって容易に同定することができる(Renkvist et al Cancer Immunol Immunother 50, 3-15 (2001); Coulie et al Immunol Rev 188, 33-42 (2002); De Groot et al Vaccine 19 (31), 4385-95(2001))。
【0065】
例えば、インフルエンザウイルスは黒色腫細胞からSIINFEKLおよびASNENMETMのペプチド、またはYLQLVFGIEVのペプチドを受け継いだ。
【0066】
表1はクラスIHLA-拘束性癌/精巣抗原の詳細を示し;表2はクラスI HLA拘束性メラニン細胞分化抗原を示し;表3はクラスI HLA拘束性の汎発性に発現した抗原を示し;表4はクラスI HLA拘束性腫瘍特異的抗原を示し;表5はクラスII HLA拘束性抗原を示し;表6は融合タンパク質に由来するエピトープを示し;表7は所与のHLA対立遺伝子によって認識されるエピトープの頻度を示す。
【0067】
表8にはAnthony et al Clinical Immunol., vol. 103, pages 264-276 (2002)から入手したC型肝炎ウイルス(HCV)のペプチドのさらなる例を示し;表9にはKaul et al J. Clinical Invest., vol. 107, pages 1303-1310 (2001から入手した1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)のさらなる例を示し;表10にはKoziel et al J. Virol., vol. 67, pages 7522-7532 (1993)から入手したC型肝炎ウイルス(HCV)のペプチドのさらなる例を示し;表11にはHe et al PNAS USA, vol. 96, pages 5692-5697 (1999)から入手したC型肝炎ウイルス(HCV)のさらなる例を示す。
【0068】
抗原ペプチドエピトープは、モノマーとして、または二量体、三量体、四量体、もしくは五量体、六量体、七量体、八量体、九量体もしくは十量体のようなより多くの多量体のような、エピトープの反復配列として提示され得る。エピトープ配列の断片は、エピトープ配列を含む重複配列と同様に、使用することができる。
【0069】
「ペプチド」という用語は、文脈上明記する場合を除いて、ポリペプチドおよびタンパク質の双方を含む。
【0070】
このようなペプチドは、類似体、相同体、オルソログ、アイソフォーム、誘導体、融合タンパク質、および同様の構造を持つタンパク質を含むか、または本明細書に記載されるような関連するポリペプチドであるタンパク質である。
【0071】
本明細書で用いられる「類似体」という用語は、本明細書に記載されるタンパク質配列と同等もしくは同一の機能は持つが必ずしもそのようなアミノ酸配列と同等もしくは同一のアミノ酸配列を含むとは限らないペプチド、または本明細書に記載されるタンパク質の構造と同等もしくは同一の構造を持つペプチドを指す。ペプチドのアミノ酸配列は、それが少なくとも一つの次の基準を満たすならば、本明細書に記載されるペプチドのアミノ酸配列と「同等」である:(a)ペプチドは、本明細書に述べられるペプチドのアミノ酸配列と少なくとも30%(より好ましくは、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)同一であるアミノ酸配列を持つ;(b)ペプチドは本明細書に述べられるペプチド配列の少なくとも5つのアミノ酸残基(より好ましくは、少なくとも10個のアミノ酸残基、少なくとも15個のアミノ酸残基、少なくとも20個のアミノ酸残基、少なくとも25個のアミノ酸残基、少なくとも40個のアミノ酸残基、少なくとも50個のアミノ酸残基、少なくとも60個のアミノ酸残基、少なくとも70個のアミノ酸残基、少なくとも80個のアミノ酸残基、少なくとも90個のアミノ酸残基、少なくとも100個のアミノ酸残基、少なくとも125個のアミノ酸残基、または少なくとも150個のアミノ酸残基)をコードするヌクレオチド配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされる;または(c)ペプチドは本明細書に述べられるペプチドをコードするヌクレオチド配列と少なくとも30%(より好ましくは、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)同一であるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0072】
ハイブリダイゼーションのストリンジェントな条件は、低い塩濃度または高温の条件により特徴付けることができる。例えば、高度にストリンジェントな条件は、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中で65℃において固体支持体に結合しているDNAにハイブリダイズして、68℃において0.1×SSC/0.1%SDSで洗浄と定義することができる(Ausubel et al eds. "Current Protocols in Molecular Biology" 1, page 2.10.3、出版:Green Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., New York, (1989))。いくつかの状況において、より低いストリンジェントな条件が必要とされることもある。本出願で用いられるように、適度にストリンジェントな条件は、0.2×SSC/0.1%SDSにおいて42℃で洗浄する工程を含むとして定義することができる(Ausubel et al (1989)、前記)。ハイブリダイゼーションは、ハイブリッド核酸二重構造を不安定化させるために漸増量のホルムアミドを加えることによって、さらにストリンジェントとすることもできる。このように、特定のハイブリダイゼーションの条件は容易に操作することができ、一般的には所望の結果に応じて選択される。一般に、50%ホルムアミドの存在下における簡便なハイブリダイゼーション温度は、ターゲットDNAと95〜100%相同なプローブの場合は42℃であり、90〜95%相同な場合は37℃、70〜90%相同な場合は32℃である。
【0073】
本明細書に記載されるペプチドの構造と「同等の構造」を持つペプチドとは、本明細書に記載されるペプチドと同等の二次構造、三次構造または四次構造を持つペプチドを指す。ペプチドの構造は、X線結晶学、核磁気共鳴、および結晶電子顕微鏡学などを含む当業者に公知の方法で測定することができるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
本明細書で用いられる「融合タンパク質」という用語は、(i)本明細書に記載されるペプチド、その断片、関連するペプチドまたはその断片のアミノ酸配列、および(ii)異種性ペプチド(即ち、本明細書で記載されるペプチド配列でない)のアミノ酸配列を含むペプチドを指す。
【0075】
本明細書で用いられる「相同体」という用語は、本明細書に記載されるペプチドのアミノ酸配列と同等であるが、必ずしも同等または同一の機能を持つとは限らないアミノ酸配列を含むペプチドを指す。
【0076】
本明細書で用いられる「オルソログ」という用語は、(i)本明細書に記載されるペプチドのアミノ酸配列と同等のアミノ酸配列を含み、かつ(ii)同等または同一の機能を持つ、ペプチドを指す。
【0077】
本明細書で用いられる「関連ペプチド」という用語は、本明細書に記載されるペプチドの相同体、類似体、アイソフォーム、オルソログ、またはそれらの任意の組み合わせを指す。
【0078】
本明細書で用いられる「誘導体」という用語は、アミノ酸残基の置換、欠失または付加の導入によって変更された、本明細書に記載されるペプチドのアミノ酸配列を含むペプチドを指す。誘導体ペプチドは、本明細書に記載されるペプチドと同等または同一の機能を有する。
【0079】
本明細書で用いられる「断片」という用語は、必要に応じて変更を加えた、本明細書に記載されるペプチドのアミノ酸配列の少なくとも5個のアミノ酸残基(好ましくは、少なくとも10個のアミノ酸残基、少なくとも15個のアミノ酸残基、少なくとも20個のアミノ酸残基、少なくとも25個のアミノ酸残基、少なくとも40個のアミノ酸残基、少なくとも50個のアミノ酸残基、少なくとも60個のアミノ酸残基、少なくとも70個のアミノ酸残基、少なくとも80個のアミノ酸残基、少なくとも90個のアミノ酸残基、少なくとも100個のアミノ酸残基)を含むペプチドを指す。断片は、そのようなペプチドの機能的活性を保有してもよく、または保有しなくてもよい。
【0080】
本明細書で用いられる「アイソフォーム」という用語は、同一遺伝子によってコードされるが等電点(pI)もしくは分子量(MW)、または双方が異なるペプチドの変異体を指す。このようなアイソフォームは、(例えば、選択的スプライシングまたは限定的タンパク分解の結果として)それらのアミノ酸組成が異なってもよく、加えて、または示差的翻訳後修飾(例えば、糖化、アシル化、リン酸化)に起因することもある。さらに、本明細書で用いられる「アイソフォーム」という用語は、単一の型でのみ存在するペプチド、即ち、複数の変異体として発現しないペプチドを示す。
【0081】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性パーセントは、配列を至適な比較のために整列させて(例えば、ギャップはその配列との最適な整列のために第一の配列に導入してもよい)、対応する位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較することによって調べられる。「最適な整列」は、最も高い同一性パーセントが得られる二配列の整列である。同一性パーセントは、比較される配列中の同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドの数によって決定される(即ち、同一性%=同一位置の数/位置の総数×100)。
【0082】
二配列間の同一性パーセントの決定は、当業者に公知である数学的アルゴリズムを用いて実施することができる。二つの配列の比較のための数学的アルゴリズムの例は、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877のように修正されたKarlin and Altschul Proc. Natl. Acad.Sci. USA (1990) 87: 2264-2268のアルゴリズムである。Altschul et al, J. Mol. Biol. (1990) 215:403-410のNBLASTおよびXBLASTプログラムはこのようなアルゴリズムを組み入れている。本明細書に述べられるようなペプチド配列をコードする核酸分子の相同ヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラムをスコア=100、ワード長=12で用いてBLASTヌクレオチド検索を実施することができる。BLASTタンパク質検索はXBLASTプログラムをスコア=50、ワード長=3で用いて実施して、本明細書に述べられるようなペプチドに相同のアミノ酸配列を得ることができる。比較のためにギャップのある整列を得るためには、Gapped BLASTをAltschul et al, Nucleic Acids Res. (1997) 25: 3389-3402に記載されるように使用することができる。または、分子間のわずかな関係(Id.)を検出する反復検索を実施するためにPSI-Blastを使用することができる。BLAST、Gapped BLASTおよびPSI-Blastプログラムを用いる場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のパラメータ既定値を使用することができる。例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0083】
配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムのもう一つの例はMyersおよびMillerのアルゴリズムであるCABIOS(1989年)である。GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)にはこのようなアルゴリズムが組み込まれている。当技術分野で公知のその他の配列解析用アルゴリズムには、Torellis and Robotti Comput. Appl. Biosci. (1994) 10: 3-5に記載されたADVANCEおよびADAM;ならびにPearson and Lipman Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1988) 85: 2444-8に記載されたFASTAが含まれる。FASTAにおいて、ケータップ(ktup)は検索の感度および速度を設定する制御オプションである。
【0084】
当業者は、様々なアミノ酸が同等の特性を持つことを認識する。物質の一つまたは複数のこのようなアミノ酸は、時に、その物質の望ましい活性を失うことなく一つまたは複数のこのような別のアミノ酸によって置換することができる。従って、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンのアミノ酸は互いに(脂肪族側鎖を持つアミノ酸)置換することができることが多い。これらの考えられる置換の内、グリシンおよびアラニンは互いに置換するために用いられ(それらが比較的短い側鎖を持つため)、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは互いに置換するために用いられる(それらが疎水性のより長い脂肪族側鎖を持つため)ことが好ましい。しばしば互いに置換することのできるその他のアミノ酸には次が含まれる:フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン(芳香族側鎖を持つアミノ酸);リジン、アルギニンおよびヒスチジン(塩基性側鎖を持つアミノ酸);アスパラギン酸およびグルタミン酸(酸性側鎖を持つアミノ酸);アスパラギンおよびグルタミン(アミド側鎖をもつアミノ酸);ならびにシステインおよびメチオニン(硫黄を含む側鎖を持つアミノ酸)。この種の置換は、しばしば、「保存的」または「半保存的」アミノ酸置換と呼ばれる。
【0085】
本明細書に記載されるペプチド配列のアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失または挿入を行ってもよい。従って、例えば、このようなペプチドの活性に対して実質的な作用を持たない、またはこのような活性を少なくとも除去しないアミノ酸は欠失させることができる。本明細書に述べられるペプチドの配列に対するアミノ酸の挿入も行うことができる。これは、本発明のタンパク質の特性を変えるために実施することもできる(例えば、タンパク質が融合タンパク質を含む組換え供給源から得られる場合に、同定、精製または発現を補助するため)。組換え供給源に由来するペプチドの配列に対するこのようなアミノ酸の変化は、例えば部位特異的突然変異誘発を用いるなどの、任意の適切な技術を用いて実施することができる。勿論、分子は、例えば、固相ペプチド合成のような標準的な化合物合成技術によって、または有効な生化学的技術によって作製することもできる。
【0086】
本発明の範囲内であるアミノ酸の置換または挿入は、天然または非天然のアミノ酸を用いて行うことができることを認識すべきである。天然または合成のアミノ酸が用いられるか否かに関わらず、L-アミノ酸のみが存在することが好ましい。
【0087】
本発明に従って、抗原提示細胞(APC)の小胞体、リソソームまたはエンドソームを代表する精製ミクロソームはクラスIまたはIIのMHC分子に抗原ペプチドを付加するために用いることができる。本明細書に述べられるインビトロおよびインビボにおける免疫化の結果は、ペプチドを付加したミクロソームがT細胞の増殖およびIL-2の産生によって測定されるペプチド付加APCよりも著しく強い反応を引き起こすことを示す。ペプチド受容性MHCクラスI分子の量を定量した結果、APC表面における受容性クラスI分子は放射化学的検出限界未満である。しかし、ミクロソーム内では顕著な量のペプチド結合MHCクラスIが検出される。さらに、B7.1およびB7.2の共刺激分子のほぼ等量が、細胞表面と比べてミクロソーム内で検出される。このように、抗原ペプチドを付加したミクロソームは効果的なワクチン組成物である。
【0088】
本発明は、APCのERにおけるMHCクラスI分子の50%よりも多くがペプチド受容性であることを見出した。「裏返し」のプロセスによって、Kb特異的OVAペプチドを付加したミクロソームはインビトロおよびインビボにおいてT細胞の応答を誘発することができる。これに対して、同一ペプチドでパルス標識したAPCはT細胞応答刺激能は遙かに小さい。ミクロソームが共刺激分子を含むと仮定すると、APCから単離したミクロソームは、将来、様々な疾患におけるペプチドワクチンのための有望な媒体である。
【0089】
ミクロソームの調製前に特定のMHC遺伝子を動物細胞にトランスフェクトする工程に加えて、B7のような共刺激分子をコードする遺伝子および/または例えばIL-2のようなインターロイキンもしくはインターフェロンといったサイトカインをコードする遺伝子を細胞にトランスフェクトまたは同時トランスフェクトすることが望ましいことがある。サイトカインの場合、サイトカインのER膜へのターゲティングのために、導入遺伝子をCD2またはCD4の膜貫通ドメインに融合させる。さらに、MHC量を高めるために、共刺激分子、およびERの膜結合サイトカイン、KDELまたはその他のER保留シグナリング(Nilsson T, & Warren G., Curr Opin Cell Biol. 6 (4), 517-21 (1994))はERにおける導入遺伝子産物の保留のために導入遺伝子のC末端にタグ付けされる。これらの導入遺伝子の発現カセットは、MHCクラスI導入遺伝子とほぼ等しい。
【0090】
従って、本発明に基づいて、ワクチン組成物はIl-2、IL-15、IL-6、GM-CSF、IFNγのようにT細胞性免疫応答を促進することができるインターフェロンまたはインターロイキンのような一つもしくはいくつかのサイトカイン、T細胞応答を刺激するその他のサイトカイン、および/または通常用いられるアジュバントと共に同時投与することができる。これらは投与前に抗原を付加したミクロソームと適宜混合することができるか、またはミクロソームの膜結合型構成物として適宜調製してもよい。このような膜結合置換基は、ミクロソームを作製するために最終的に用いられる、細胞小器官におけるサイトカインの発現を操作するための上記のような組換えDNA技術を用いて導入してもよく、または、サイトカインをミクロソーム膜に付加もしくは表面タンパク質に結合させてもよい。
【0091】
ミクロソーム調製物において発現する膜結合サイトカインは、膜アンカータンパク質と融合したサイトカイン分子を含む構築物を用いて、任意でER保留シグナルを用いて、抗原提示細胞をトランスフェクトすることによって調製してもよい。例えば、膜結合IL-2分子を含むミクロソームは、IL-2のC末端に融合したCD2膜ドメインおよびE15-9Kアデノウイルスタンパク質由来の16個のアミノ酸配列のような、ER保留シグナルを含む融合タンパク質をコードする核酸を含むベクターを構築することによって調製することができ、この場合、ER保留シグナルはCD2タンパク質のC末端に融合する。ベクターが抗原提示細胞内で発現すると、細胞の小器官、即ち、ERにサイトカインが蓄積して、膜結合サイトカインを含むミクロソームの調製が可能となる。
【0092】
さらに、例えば、IL-2および/もしくはINFγのような血清サイトカインを検出するためのELISAのような技術、またはペプチドを付加したミクロソームを用いたインビトロにおけるT細胞応答アッセイ、もしくは増殖性細胞アッセイによって、ワクチンに対する特異的な免疫応答を検出およびモニターする工程を加えることは好都合であり得る。
【0093】
最も単純な型において、本発明は、外部から導入されたペプチド抗原および主要組織適合複合体(MHC)のタンパク質に結合している動物細胞の小胞体の単離されたミクロソームまたはその膜断片を含む成物を提供する。適切には、ワクチンとしての投与のために製剤化される。
【0094】
本発明の第二の局面に従って、医療分野での用途のために本発明の第一または第二の局面に従った組成物が提供される。従って、本発明のこの局面は、疾患または状態を患う対象の治療または予防の方法であって、上記のように対象にワクチンを投与する工程を含む方法に拡大する。
【0095】
本発明の第三の局面に従って、疾患状態の予防または治療のためのワクチンの調製における上記の組成物の使用を提供する。この疾患は、微生物もしくはウイルスによって引き起こされる感染症であってもよく、または腫瘍細胞の増殖および/または腫瘍形成を特徴とする癌であってもよい。または、疾患は自己免疫状態であってもよく、この場合、ワクチンは自己抗原に対する耐性の誘導において治療的用途を持ち得る。本発明のこの局面における用途は、このような疾患状態の治療の方法であって、それを必要とする対象に組成物を投与する工程を伴う方法にも拡大する。適切には、本発明のワクチン組成物は、筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、経口投与のような任意の簡便な経路によって、また脳脊髄液への注入によって投与することができる。
【0096】
本発明のワクチンを用いて治療することができる疾患または状態には、黒色腫、肺腺癌、結腸癌、乳癌、または白血病が含まれるが、これらに限定されるものではない。自己免疫疾患には、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス、I型またはインスリン依存性糖尿病、抗リン脂質抗体症候群、重症筋無力症、筋炎、シェーグレン症候群および慢性関節リウマチが含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、HIV感染、ヘルペスウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染のようなウイルス感染、またはマラリアの原因物質であるマラリア原虫の原生動物寄生感染、例えば熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、ネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei)、マウスマラリア原虫(Plasmoodium yoelii)もしくはサルマラリア原虫(Plasmodium knowlesi)、またはトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、またはトリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、または赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、またはランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)のような別の寄生虫の寄生虫感染症、または大腸菌(E. coli)O157、ビブリオ腸炎菌(Vibrio cholerae)などの細菌感染。
【0097】
ペプチド抗原を付加された本発明のミクロソームは、混合調製物の患者への投与に先立って抗原提示細胞(APC)と融合し得ることも予想される。適切には、APCは治療前に患者から採取されるが、同種供給源から採取されてもよい。このような細胞の同種供給源が用いられる場合、免疫抑制剤も治療プロトコールの一部を形成することができる。
【0098】
本発明の第四の局面に従って、上記のワクチン組成物を調製するためのプロセスであって、ミクロソームの集団および抗原ペプチドをヌクレオシド三リン酸(NTP)の存在下でインキュベートする工程、続いて反転ミクロソームを調製するためにさらに処理する工程、ならびに生理学的希釈剤および任意でアジュバントを用いて得られる調製物を製剤化する工程を含むプロセスを提供する。ブドウ糖のような試薬は調製されたミクロソームワクチンの立体構造を保持する能力を持ち、加えてもよい。適切には、インキュベートされたミクロソームは、ミクロソーム膜に存在するMHC-ペプチド複合体の分離を防ぐために一定量の抗原ペプチドを含む生理学的希釈剤のワクチン溶液で洗浄して再懸濁される。
【0099】
ミクロソームに抗原を付加するプロセスは、ATP、GTP、CTP、TTPまたはUTPのようなヌクレオシド三リン酸(NTP)の存在下で実施される。抗原付加プロセスは、複数のタイプの抗原ペプチドの存在下で実施することができる。この方法で、多くの抗原をミクロソームに付加することができる。
【0100】
反転ミクロソームは、膜の再形成を可能として「裏返し」ミクロソームの形成を促進する条件下でミクロソームの膜を破壊する、ミクロソームのさらなる処理によって調製され得る。従って、この点において、反復凍結-融解工程の使用は適切である。例えば、ミクロソームは適切な媒質、もしくは例えばリン酸緩衝生理食塩液(PBS)のような緩衝液に懸濁して、続いて、適切には1〜5分間、好ましくは2分間の適切な期間、液体窒素に軽く浸漬して、次に、適切には2〜6分間、好ましくは4分間の適切な期間、恒温水槽に入れるなど37℃に加温することができる。凍結-溶解の反復工程の回数は3〜5回、適切には4回の反復工程であってよい。
【0101】
本発明のこの局面における代替的な態様において、プロセスは上記のように調製された反転ミクロソームに抗原を付加する工程を含んでよい。抗原ペプチドを反転ミクロソームに付加する工程に関して、NTPの存在は(望ましくはあり得るが)必須でなくてもよい。
【0102】
本発明の第五の局面に従って、上記に示される組成物ならびに一つまたは複数のサイトカインおよび/もしくはアジュバントを含む成分の密閉容器入りのキットが提供される。適切には、キットは上記に示される本発明の方法または使用のための使用説明書を含む。
【0103】
本発明の第六の局面に従って、上記に示される組成物ならびに一つまたは複数のサイトカインおよび/もしくはアジュバント分子を含む成分のキットが、対象への別々の投与、順次投与または同時投与用に提供される。
【0104】
本発明の第二およびその後の局面における好ましい特徴は、第一の局面と同様に、必要に応じて変更を加えられることである。
【0105】
本発明の特に好ましい態様において、ある既定の抗原もしくは感染性物質によって潜在的に免疫原性であるペプチド配列の発現によって、または天然細胞の抗原の発現によって特徴付けることができる、疾患の予防もしくは治療のためのワクチン組成物であって、次の工程によって調製される組成物を提供する:
(1)MHCタンパク質を発現する抗原提示細胞の試料を得る工程;
(2)ミクロソーム調製物が単離されるような条件下で細胞をホモジナイズする工程;
(3)例えば、組換えDNA技術によって、または天然の組織供給源もしくは感染性物質の供給源から単離することによって、抗原ペプチド、または多くの場合は合成抗原ペプチドを調製する工程;
(4)ミクロソームに抗原ペプチドを付加するためにNTPの存在下において抗原ペプチドおよびミクロソームをインキュベートする工程;
(5)反転ミクロソームの集団を調製するために、工程(4)において付加されたミクロソームをさらに処理する工程;
(6)適切ならば生理学的希釈剤および/またはアジュバントを用いて付加した反転ミクロソームをワクチンとして製剤化する工程。
【0106】
上記の通り、ミクロソームは単離された細胞集団または細胞株から調製することもできる。細胞または細胞株は、ミクロソームの調製前に特定のタンパク質を発現するために核酸構築物を用いてトランスフェクトしてもよい。
【0107】
上記のプロトコールに従って、ミクロソームに抗原ペプチドを付加し、続いて、反転ミクロソームを調製するために処理する。しかし、代替的な態様において、反転ミクロソームを最初に調製し、その後抗原を付加してもよく、この場合、工程(4)におけるNTPの存在は必要ない可能性がある。
【0108】
上記のように、本発明のワクチン組成物は、好ましくは、反転ミクロソーム、より好ましくは反転ミクロソームの均質な集団を含む。しかし、反転ミクロソームの集団に非反転ミクロソームも含まれてよい。
【0109】
細胞は、ワクチンのための特定のMHCクラス分子をコードする適切な核酸を用いた細胞株のトランスフェクションを可能とするためにMHC陰性であってもよい。抗原の調製には、化学的方法による抗原ペプチドの合成も含むことができる。
【0110】
非反転ミクロソームの抗原ペプチドの付加は、NTPの存在下で行われる。反転ミクロソームの付加には、好ましい可能性はあるが、NTPの存在は必要でないと思われる。
【0111】
本発明は次の実施例および図への参照によってより詳細に説明され、実施例および図は専ら例証目的のために提供されるものであって、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。参照は、後述の図の番号をもって行う。
【0112】
材料および方法
細胞株および動物
B3Zは、H-2Kb MHCクラスI分子によって提示されたSIINFEKLペプチドに特異的なT細胞応答の活性化に対応してLacZを発現するCD8 T細胞ハイブリドーマである。APCとして用いたKd/Kbマウスマクロファージ細胞株であるRAW309Cr.1細胞はATCCから入手した(ATCC TIB-69)。すべての細胞を、10%ウシ胎児血清を加えたDulbeccoの修正Eagle培地で培養した。雌性C57BL/6マウスH-2bおよびBalb/cマウスH-2dは6週齢の齢期にて入手した。動物を用いたすべての操作は承認されたプロトコールに従って実施された。
【0113】
抗体、ペプチド、およびペプチド修飾
すべてのペプチドは、通常のF-moc化学を用いてペプチド合成装置(モデル431A、Applied Biosystems, Foster City, CA)で合成された後、HPLCにより精製した。精製されたペプチドはPBSに溶解した。
【0114】
ペプチドであるOVA 257-264(SIINFEKL)は、ヨウ素化するために三番目の残基のイソロイシンをチロシンに置換して、フェニルアジドを7位のリジンのε-アミノ基のニトロ基と共有結合させることによって修飾した。このニトロ基は光活性化することができる。架橋剤の修飾は、200μl DMSOに溶解した0.5mgのANB-NOS(N-5-アジド-2-ニトロベンゾイルオキシサクシミド)を100μl PBSおよび50μl CAPS(3-[シクロヘキシルアミノ]-1-プロパンスルホン酸)に溶解した100μg ペプチド(0.5M、pH 10)と混合して、実施した。反応は氷冷しながら30分間、進行させた。過剰のANB-NOSおよびイオンを除去するために、混合物をSephadex G-10を用いたゲル濾過およびHPLCにより順次、精製した。ペプチドのアリコート(1μg)をクロラミン-Tで触媒したヨウ素化によって標識した(125I)。修飾および標識実験は暗所で実施した。
【0115】
抗血清、免疫沈降法、およびSDS-PAGE
H2に対するウサギ抗血清(R218)は、Dr. Sune Kvist, Karolinska Instituteより厚意により提供された。確認されたH2に特異的なモノクローナル抗体(Y3)はTim Elliot, Cambridge Universityより厚意により提供された。JNK、ERK、p-ERK、およびp-JNKに対する抗血清は(Santa Cruz Biotechnology)から入手した。免疫沈降法、免疫ブロッティングおよびSDS-PAGEはLiらの報告(J Biol Chem. 274 (13), 8649-54 (1999))の通りに実施した。プロテイン-A-セファロースはPharmacia(Uppsala, Sweden)から入手した。
【0116】
実施例1:ミクロソームの調製およびペプチド結合アッセイ
Kd/Kbマウスマクロファージ細胞株であるRAW309Cr.1に由来するミクロソームは、Sarasteらの方法(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83, 6425-6429 (1986))に従って調製および精製した。クラスIの免疫遺伝学は、RAW細胞およびBalb/cマウスの場合、Kbである。
【0117】
ミクロソーム膜の分画化のためのSarasteら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83, 6425-6429 (1986))およびKnipeら(J. Virol. 21, 1128-1139 (1977))の変法に基づくB細胞からのミクロソームの調製を用いた。すべての工程は0〜4℃で実施した)。
【0118】
・3×109個の細胞を採取して、冷却PBSで1回洗浄した。
・細胞を、10μlのPMSF(100mM)を加えた20ml STKMM-緩衝液に再懸濁した。
・1500rpmにて4℃で5分間、遠心した。
・10ml H2O(5μl PMSFを添加)に再懸濁した。
・40mlDounceを用いて20回、ホモジナイズした。
・30ml STKMMを加えて、十分に混合した。
・JA-18試験管に注いだ。
・7500rpmにて4℃で10分間、遠心分離した。
・上清を慎重に新しい試験管に回収した。
・15500rpmにて4℃で54分間、遠心分離した。
・ペレットを10ml STKMM緩衝液で入念に洗った後、ピペットを用いてペレットを1ml RM緩衝液に再懸濁して、15ml douncer中でホモジナイズした。粗ミクロソームはAOD280=60の濃度に希釈する。
・総ミクロソーム(上記)を5mMベンズアミジンを含む0.33Mショ糖の5ml上に重層して、次に2Mショ糖/5mMベンズアミジンの1mlを含むショ糖クッション上に重層した。
・SW41ローターを用いて110,000×gで60分間、遠心分離して、クッションの上部に総ミクロソームバンドを得た。総ミクロソームバンドを注意深く回収した。続いて、45%(w/v)ショ糖の最終濃度となるように、ミクロソームに2Mショ糖/5mMベンズアミジンをゆっくりと加えた。
・ミクロソームをPaulssonらの方法(J Biol Chem. 277 (21), 18266-71 (2002))の変法を用いて浮上法により亜分画化した。総ミクロソーム100μlを45%(w/v)ショ糖の3mlに混合して、SW41超遠心管の底部に入れて、次のショ糖液を重層した:30%を1ml、ならびに27.5%、25%、22.5%および20.0%を各1.9ml(すべての溶液が5mMベンズアミジンを含んだ)。
・4℃、37,000rpmにて10時間、遠心分離後(等核濃縮条件に到達させるため)、各300μlの25分画を上方への移動によって採取した。
・ER分画は、抗p58抗体(p58はERタンパク質である)を用いたウェスタンブロッティングにより測定される。
・注入したER分画はペプチド付加実験および免疫化実験に使用する。
【0119】
架橋混合液は、50nMまたは100nM(125I)ANB-NOS-ペプチドおよびミクロソーム(60 A280/ml)10μlを総液量100μlのRM緩衝液(250mMショ糖、50mM TEA-HCl、50mM KOAc、2mM MgOAc2、および1mM DTT)中に含む。混合後、直ちに試料を室温で5分間、366nmにて照射した。次に、RM緩衝液中0.5Mショ糖クッションを介して遠心分離によって膜を回収した。膜を冷却RM緩衝液で1回、洗浄した。洗浄膜を免疫沈降法または免疫ブロッティングのために溶解した。ATPとの架橋形成反応には、Liら(J Biol Chem. 274 (13), 8649-54 (1999))が報告したATP再生系が含まれた。RAW309Cr.1細胞上の表面Kb分子の架橋結合は、100nM(125I)ANB-NOS-ペプチドを、総液量100μlのRM緩衝液中10μlのミクロソームを作製するために用いられた細胞数と等しい107個の細胞と混合して実施した。混合後、直ちに試料を室温で5分間、照射した。過剰のペプチドは、RM緩衝液を用いた洗浄によって除去した。Y3抗体を用いた免疫沈降法のために、細胞を溶解した。
【0120】
表面MHCクラスIの検出は、RAW309Cr.1細胞をY3抗体と共に4℃で15分間、インキュベートして実施した。洗浄後、細胞を1% NP40溶解緩衝液で溶解して、清澄化した溶解液をタンパク質Aのビーズを用いて沈降させた。沈降したMHCクラスIを、R218抗血清を用いた免疫ブロッティングにより検出した。
【0121】
T細胞の刺激におけるペプチド編集(peptide-editing)は、天然のペプチドを持つミクロソームをATP再生系と共に室温で10分間混合して実施した。
【0122】
過剰のペプチドはRM緩衝液中のショ糖クッションを介した遠心分離によって除去した。または、付加したミクロソームを液体窒素中で繰り返し凍結/融解処理して、続いて、37℃の恒温水槽に10分間、浸漬した。処理されたミクロソームをPBSに(6 A280/ml)の濃度で再懸濁して、使用時まで-80℃にて維持した。ペプチドでパルス標識したRAW309Cr.1細胞は、ペプチド100nMを1mlの培地中で107個の細胞と37℃で一晩、または1ml PBS中で4時間、混合して調製した。パルス標識した細胞は、B3Z T細胞との混合前にPBSで洗浄するか、またはその混合物を直接B3Zに加えた。
【0123】
実施例2:B3Z T細胞ハイブリドーマの活性化
ペプチド編集したミクロソーム、ペプチドでパルス標識したRAW309Cr.1細胞、OVAペプチドを含む調製した刺激物質を105個のB3Z細胞の培養物に総液量200μlにて加えた。PBSおよび抗CD3/CD28でコーティングしたビーズを添加して、それぞれ、陰性または陽性対照とした。一晩インキュベート後、B3Zの活性化は、基質であるo-ニトロフェニルb-D-ガラクトピラノシド(Sigma)を用いたLacZ活性によって示された。B3Z細胞自体がKbを発現してSIINFEKLを示すことから、OVA反応の線形範囲はSIINFEKLの段階希釈物を培地に添加することによって測定した。
【0124】
実施例3:APCの表面ではなくミクロソーム内のペプチド受容性MHCクラスI分子の検出
RAW309Cr.1細胞由来のERの架橋剤で修飾したペプチドおよび単離したミクロソームを用いたインビトロにおけるペプチド輸送および付加アッセイが報告されている(Li et al J Biol Chem. 274 (13), 8649-54 (1999))。アッセイは、ATPの存在下においてERの膜を介してのペプチドの移動およびその後のMHCクラスI分子へのペプチド付加の双方についての検討を可能とする(Wang et al J Immunol. 157(1), 213-20 (1996))。
【0125】
ミクロソーム膜内のペプチド受容性MHCクラスI分子を検出するため、架橋剤(ANB-NOS)をH2-Kb結合オバルブミン(OVA)ペプチド(残基257〜264、SIIFEKL)のリジン残基のε-アミノ基に結合させて、ヨウ素化するために3位のイソロイシンをチロシンと置換した。これらの修飾によって、構築中にOVAペプチドのH2-Kb分子への光架橋結合が可能となった。RAW309Cr.1生細胞のミクロソーム内および細胞表面におけるペプチド受容性H2-Kbを量的に比較するために、修飾したOVAペプチドを125Iで標識して、UV照射下にてRAW309Cr.1のミクロソームおよびRAW309Cr.1生細胞と共にインキュベートした。続いて、ペプチド結合したH2-Kb分子を抗H2抗体であるY3を用いた免疫沈降法により分析した。ATPが存在しない場合は、ごく小数のKb分子がOVAペプチドと集合したが、ATPが存在すると顕著な量のKb分子がOVAペプチドと架橋結合した(図1)。この結果は、ペプチド受容性クラスI分子の実質的な量がERに存在することを確認するものである。
【0126】
RAW309Cr.1のミクロソーム内および表面におけるOVA架橋結合したKbの半定量的分析の結果、ミクロソーム内における多量のペプチド受容性Kb分子に対して、APC表面のOVA結合Kb分子は放射化学的検出量よりも低いことが示され(図2)、この場合もペプチド受容性MHCクラスI分子は主としてERに検出されてAPCの表面には検出されないことを示唆する。競合実験において、このKbに対する修飾OVAペプチドの結合が特異的であることを示している。修飾OVA-ペプチドの親和性を調べるために、標識したOVAペプチドを異なる濃度の天然の型で競合させた。天然のOVAペプチドはレポートペプチドの濃度においてレポートペプチドの50%と競合して、レポートペプチドの10倍の濃度では結合を完全に消失させた(図2)。さらに、Ld特異的ペプチドはOVA結合と競合できなかった。このことは、修飾OVA-ペプチドの結合親和性がKb特異的であり、天然型とほぼ等しいことを示している。106個のRAW309Cr.1に由来するミクロソーム内のKb分子に結合するペプチドの量を定量するために、標識したペプチドをATPの存在下でミクロソームと共にインキュベートした。架橋結合後、MHCクラスIを沈降させて、ペプチド結合Kbのdpmを測定してペプチド濃度に換算した。結果は、約500〜1000のペプチドが1個の細胞のミクロソーム内でKb分子に結合することを示した。さらに、ER内の全MHCクラスI分子の量はRAW309Cr.1細胞の表面にある分子の量よりも多い(図3)。このように、APCに由来するミクロソームは十分なペプチド-MHCクラスI複合体をT細胞に送達することができ得る。
【0127】
実施例4:B7およびICAM1はAPCのミクロソーム内に存在する
十分なT細胞応答には抗原-MHC複合体およびB7のような共刺激分子の双方からのシグナルが必要である(Acuto et al, Immunol Rev. 192, 21-31 (2003))。すべての膜タンパク質と同様に、共刺激分子はER内で合成されて、その後、APCの表面で発現する。単離されたミクロソーム内のB7およびICAM-1の共刺激分子の量を定量するために、5×106個のRAW309Cr.1に相当するミクロソームを溶解して、透明な溶解液をこれらの分子に特異的な抗血清を用いてウェスタンブロッティングによりそれぞれ分析した。比較として、5×106個のRAW309Cr.1の総細胞溶解液についても同一の抗体を用いてブロットした。B7.1、B7.2およびICAM-1のバンドの強度を密度分析により定量した。B7およびICAM-1の双方とも、ミクロソーム試料中で容易に検出された(図4)。ミクロソーム内の検出量は総細胞溶解液の約半分であった。ペプチド編集ミクロソームに十分な量の共刺激分子が存在することは、抗原-MHCおよび共刺激分子の双方のシグナルをT細胞に提供するためにAPCの機能性表面を模倣することができる。
【0128】
実施例5:Kb特異的OVAペプチドを付加したミクロソームはインビトロにおいてT細胞を刺激する
ペプチド付加ミクロソームの特異的T細胞応答誘発能を調べるために、天然のOVAペプチド編集ミクロソームを反復凍結-融解法(「材料および方法」)によって裏返しのために処理した。処理したミクロソームおよびOVA-ペプチドでパルス標識したRAW309Cr.1を、Kb-SIINFEKL複合体を認識するB3Z T細胞ハイブリドーマを刺激するために使用した(Fremont et al Proc Natl Acad Sci U S A. 92 (7), 2479-83 (1995); Shastri N, & Gonzalez F., J Immunol. 150 (7), 2724-36 (1993))。過剰なペプチドを洗浄した後、OVA編集ミクロソームは、IL-2産生およびIL-2プロモーターに由来するLacZの発現を誘発することによって、B3Z T細胞を刺激した(図5)。OVA-Kbに誘発されたB3Z反応の特異性は、ペプチドを持たないミクロソームまたはLd特異的なペプチドを付加されたミクロソームに対するB3Z細胞の無応答によって裏付けられる(図5)。さらに、OVA編集ミクロソームに対するB3Zの応答レベルはOVA-ペプチドの量に相関した(図6)。OVAでパルス標識したRAW309Cr.1は、過剰なペプチドの存在下においてB3Zの応答を誘発することができる(Schott et al Proc Natl Acad Sci U S A. 99 (21), 13735-40 (2002))。
【0129】
しかし、過剰なペプチドが洗浄によって除去されると、OVAでパルス標識したRAW309Cr.1はもはやB3Z応答を誘発できなかった。OVA自身がB3Z細胞によるIL-2産生を誘発し得るとすると(図5)、RAW309Cr.1ではなくOVAそのものがB3Zの刺激物質であることが示唆される。SIINFEKLがインビトロにおいてKb拘束性T細胞応答を誘発し得ることが近年報告されていて、CTLが互いにペプチドを提示することを示唆している(Schott et al Proc Natl Acad Sci U S A. 99 (21), 13735-40 (2002))。しかし、ペプチドでパルス標識したRAW309Cr.1によってではなくペプチド編集ミクロソームによってインビトロにおけるCTL応答が誘発されることはペプチド結合の結果と一致して(図2)、ペプチド編集ミクロソームがAPCを模倣してTCRに抗原ペプチドを効率的に提示してCTLの十分な応答を刺激することができることを示している。
【0130】
実施例6:Kb特異的OVAペプチドを付加されたミクロソームはインビボにおいてOVA-ペプチド反応を誘発する
OVA編集ミクロソームのインビボにおける免疫応答誘発能についてさらに調べるために、RAW309Cr.1細胞由来のOVA編集ミクロソーム、Ld特異的ペプチドを付加したミクロソーム、可溶性OVAペプチド、OVAペプチドでパルス標識したRAW309Cr.1、およびPBSをインビボにおける免疫応答の誘発に使用した。各群5匹のマウスからなる5群のC57BL/6またはBalb/cマウスに、上記の刺激物質をそれぞれ2回ずつ皮下注入した。注入の間隔は1週間とした。2回目注入の6日後に脾臓からT細胞を単離して、最初の5種類の刺激物質を用いて、それぞれ、インビトロにおいて交差刺激した。さらに、抗CD3/CD28でコーティングしたビーズを陽性対照として使用した。PBSで刺激したT細胞はいずれの刺激に対しても応答しなかったが、抗CD3/CD28はすべての群において増殖反応を誘発した。OVAペプチドでパルス標識したRAW309Cr.1およびLd特異的ペプチドを付加したミクロソームはT細胞応答を誘発しなかった(図7)。これに対して、OVA編集ミクロソームおよびOVAペプチドのC57BL/6の群から得られたT細胞はインビトロにおいてOVA編集ミクロソームに応答したが、OVAでパルス標識したRAW309Cr.1またはLd-ペプチドを付加したミクロソームに対しては応答しなかった(図7)。IL-2産生からの強制的な結果(図7)も、OVA編集ミクロソームがインビボにおいて特異的なT細胞応答を誘発できることを裏付けている(図7)。Balb/cはH-2dを持ち、従って、OVA反応は誘発されなかった。
【0131】
実施例7:TCRシグナリング経路はOV-ミクロソームによって活性化される
OVA-ミクロソーム刺激に反応してのTCRシグナリングを分析するために、OVA-ミクロソームで免疫したC57BL/6マウスから単離したT細胞を用いて、インビトロにおいてTCRシグナリングを誘発した。ERKおよびJNKの活性化は、抗CD3/CD28またはOVA編集ミクロソームで刺激したT細胞では検出されたが、OVAでパルス標識したRAW309Cr.1で刺激した場合には検出されなかった(図8)。従って、生化学的エビデンスはミクロソームにおけるOVA-Kbに対する特異的TCRシグナリングを示して、抗原ペプチドで編集したミクロソームはインビボにおいて特異的な免疫応答を誘発し得ることをさらに裏付けている。
【0132】
実施例8:インフルエンザウイルスペプチドを付加したミクロソーム
マウスインフルエンザウイルスから得られたKb特異的ペプチド(ASNENMETM)をKb特異的RAW細胞由来のミクロソームに付加した。付加したミクロソームを用いて、C57BL/6マウスを免疫した。別の群では、PBSまたはペプチドを対照として用いた。2種類の抗原を7日間にわたって投与した後、脾臓からT細胞を単離して、PBSもしくはペプチド、ペプチドもしくはペプチド付加ミクロソームと共に3日間培養した。免疫4日後にT細胞増殖を測定した。結果を図10に示す。
【0133】
実施例9:黒色腫細胞に対する影響
3名のA2黒色腫患者(P1、P2、P3)からそれぞれ単離したT細胞を、外科的生検標本から精製した自己腫瘍細胞で1対1で刺激して、r-ヒトIL-2(10U/mL)を用いて5日間の投与間隔で4回刺激した。特異的な抗腫瘍反応は、細胞毒性アッセイにより、腫瘍細胞株であるK259と比較して調べた。MAGEペプチドをMHC遺伝子座が欠失した221-A2ヒトB細胞株から単離したミクロソームに付加して、その後、HLA-A2を用いてトランスフェクトした。黒色腫患者由来のT細胞をペプチド、ミクロソームまたはペプチド付加したミクロソームと共に通常の培地で3日間培養した。3日目に増殖を測定した。結果を図12に示す。
【0134】
考察
これらの結果は、ERから派生したミクロソームがMHCクラスI分子上の編集された抗原ペプチドを処理するために使用できること、および処理されたミクロソームはCTL応答を誘発するためにAPCの機能性表面を再構築できることを実証している。従って、共刺激分子に関連してミクロソームMHCクラスIによって送達される抗原ペプチドはペプチドワクチンの新しい型である。
【0135】
表1〜7の参考文献
【0136】
(表1)クラスI HLA拘束性癌/精巣抗原
これらのすべての抗原が、精巣の正常な精母細胞および/または精原細胞によって発現されることが見出された。MAGE-3、MAGE-4およびGAGE遺伝子が時に胎盤でも発現することが見出された[26,24]。NY-ESO-1抗原は正常な卵巣細胞で発現することが見出された[18]。
a エピトープの配列を最初に報告した論文と異なる場合の、所与の参考文献に記載された腫瘍における組織分布。
【0137】
(表2)クラスI HLA拘束性黒色腫の分化抗原
これらの抗原は同一細胞系譜の正常および新生物細胞(つまり、メラニン細胞、皮膚、網膜、末梢神経節)または前立腺の正常な細胞でのみ発現することができる。
a 2つの異なるグループが同時にこの遺伝子を発見し、それぞれMART-1およびMelan-Aと異なる2つの名称が付与された。
【0138】
(表3)クラスI HLA拘束性の広範に発現される抗原
a CAP-1はこのペプチドの別名である。
b エピトープの配列を最初に報告した論文と異なる場合の、所与の参考文献に記載される腫瘍における組織分布。
c テロメラーゼは大半のヒト腫瘍において発現される:記載した腫瘍は細胞傷害性Tリンパ球による溶解に感受性であることが示された。
d すべての上皮組織はムチン様の高度にグリコシル化された分子を発現する。
【0139】
(表4)固有抗原(CDK-4、MUM-1、MUM-2、β-カテニン、HLA-A2-R170I、ELF2m、ミオシン-m、カスパーゼ-8、KIAA0205、HSP70-2m)および共通抗原(CAMEL、TRP-2/INT2、GnT-V、G250)を含む、クラスI HAL拘束性腫瘍特異性抗原
a VLPDVFIRC(V)=九量体および十量体のペプチドはいずれもCTLによって認識される。
b この抗原は正常な細胞では発現されないが、精巣の組織が検査されなかったため、より詳細な情報が入手できるまではこの抗原がどのカテゴリーに属するかは明らかでない。
【0140】
(表5)クラスII HAL拘束性抗原
a すべての上皮組織は高度にグリコシル化されたムチンを発現するが、腫瘍細胞はしばしば正常なタンパク質配列を持つ低グリコシル化ムチンを示す。
b エピトープの配列を最初に報告した論文と異なる場合の、所与の参考文献に記載された腫瘍における組織分布。
【0141】
(表6)融合タンパク質に由来するエピトープ(融合タンパク質は正常組織では決して見出されない)
a これらのbcr-ablエピトープは、外部のbcr-abl接合部に由来するため、真の融合タンパク質生成エピトープではない。
【0142】
(表7)所与のHLA対立遺伝子によって認識されるエピトープの頻度
【0143】
(表8)HCV暴露患者において認識されることが予め確認されたHCVペプチド
出典:Anthony et al Clinical Immunol., vol. 103, page 264-276 (2002)
【0144】
(表9)HIV-CTLペプチドエピトープ
出典:Kaul et al J. Clinical Invest., vol. 107, pages 1303-1310 (2001)
【0145】
(表10)HCVウイルス性ペプチド抗原
出典:Koziel et al J. Virol., vol. 67, pages 7522-7532 (1993)
【0146】
(表11)HCVウイルス性ペプチド抗原
出典:He et al PNAS USA, vol. 96, pages 5692-5697 (1999)
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】RAW309Cr.1細胞のミクロソームにおける架橋剤で修飾されたOVAペプチドによるH2-Kb分子の架橋結合を示す。125Iで標識したANB-NOS-OVAペプチドを、ATP再生系または10倍の過剰モル濃度の天然のOVAペプチドの存在下または非存在下でRAW309Cr.1細胞のミクロソームと混合した。架橋結合したH-2Kbが示された。
【図2】RAW309Cr.1細胞のミクロソームにおけるOVA-ペプチド受容性H-2Kbの濃度を示す。OVA-ペプチド受容性H-2Kbの半定量化のため、標識したペプチドの10nMをUV照射下でミクロソームまたはRAW309Cr.l細胞と共にそれぞれインキュベートした。H-2分子をR218抗血清で沈降させて、架橋結合したKb分子をリン画像化によって定量した。
【図3】RAW309Cr.1細胞のミクロソーム内または表面上のH-2分子の検出を示す。RAW309Cr.1ミクロソームまたはRAW309Cr.1細胞のNP40溶解液に由来するタンパク質30μgを10%SDS-PAGEで分離した。溶解液を記載の力価にて希釈して、SDS-PAGEで分離した。H-2分子の免疫ブロッティングはR218抗H-2抗血清で検出した。
【図4】RAW309Cr.1細胞のミクロソームにおけるB7.1、B7.2およびICAM-1の検出を示す。RAW309Cr.1ミクロソームまたはRAW309Cr.1細胞のNP40溶解液に由来するタンパク質30μgを10%SDS-PAGEで分離した。B7.1、B7.2およびICAM-1の免疫ブロッティングを特異的抗体で検出した。
【図5】OVA-ペプチド編集ミクロソームによるB3Z T細胞の刺激を示す。2×105個のRAW309Cr.1細胞から得られたミクロソームを用いて、「材料および方法」に記載するようにOVAまたはLd特異的ペプチドを付加した。2×105個のRAW309Cr.1細胞をOVAペプチドでパルス標識した(「材料および方法」を参照)。洗浄後、ペプチドでパルス標識した2×105個のRAW309Cr.1細胞、OVAを付加したミクロソーム、Ld-ペプチドを付加したミクロソーム、およびペプチドを持たないミクロソームを105個のB3Z細胞と共に一晩、同時培養した。A)PBSで洗浄後、B3Z細胞のLacZ活性をLacZ基質のONPGを加えた総細胞溶解液によりアッセイした。37℃で4時間インキュベートした後、吸光度(415nM)を判定した。100nM OVAペプチドと共に培養したB3Z細胞、および通常の培地をB3Z刺激における陽性および陰性対照として用いた。B)これらの培養物の上清について、ELISAによりIL-2産生を測定した。実験は4回反復実施して、ほぼ等しい結果が得られた。誤差棒は三連の培養物のSEMを示す。
【図6】異なる濃度のOVA-ペプチドを予め付加した2×105個のRAW309Cr.1細胞のミクロソームによるB3Z T細胞の刺激を示す。記載した異なる濃度のOVA-ペプチドを付加したミクロソームは、LacZ活性のアッセイ前に一晩、B3Z細胞と共に同時培養した。
【図7】OVA-ペプチド編集ミクロソームがインビボにおいて特異的T細胞応答を刺激することを示す。C57BL/6(H-2b)マウスはOVA編集ミクロソームもしくはLd-ペプチドを付加したミクロソーム、またはOVAペプチドもしくはOVAでパルス標識したRAW309Cr.1細胞によって初回抗原刺激して、7日後に同一の刺激によって誘発した。誘発から6日後に濃縮したT細胞を脾臓から単離して、記載の刺激と共に105個の細胞/ウェルで培養した。RAW309Cr.1細胞はT細胞と同時培養する前に放射線照射した。3日後にサイトカインのELISA(b)のために上清を回収して、培養物を[3H]チミジン(a)でパルス標識した。結果は投与群当たり少なくとも3匹のマウスの群を示し、実験は4回反復実施されてほぼ等しい結果が得られた。誤差棒は三連の培養物のSEMを示す。Balb/c(H-2d)マウスを用いて実施されたほぼ同一セットの実験を陰性対照とした。
【図8】TCR誘発性MAKキナーゼの活性化を示す。OVAミクロソームで免疫したC57BL/6由来の107個のT細胞をOVAでパルス標識したRAW309Cr.1細胞、OVA-ミクロソームおよび抗CD3/CD28で、それぞれ刺激した。ERKおよびJNKの活性化は抗p-ERKおよび抗p-JNK抗体により検出した。抗ERKおよび抗JNKにより検出されたほぼ同量のERKおよびJNKを付加対照とした。
【図9】OVA受容性H-2KbがRAW309Cr.1細胞のミクロソーム内には検出されるが表面には検出されないことを示す。125Iで標識したANB-NOS-OVAペプチドの10nMを、天然のOVAペプチドを加えずに、または記載の濃度で加えて混合した。混合したペプチドは、107個のRAW309Cr.1細胞に相当するミクロソームと共に、または107個のRAW309Cr.1細胞と共にインキュベートした。架橋結合したH2-Kb分子が示された。
【図10】インフルエンザウイルスペプチド編集Kb-ミクロソームがインビボにおいてT細胞応答を誘発した試験(各群マウス5匹)の結果を示す。
【図11】DCおよび調製したミクロソームの電子顕微鏡像を示す:(A)倍率12000倍および(B)倍率40000倍はRAW細胞由来のミクロソーム調製物である;(C)倍率40000倍は反復凍結-融解により反転させてペプチドを付加したミクロソームであり、オープンまたは反転ミクロソームを示す。この像には、付加されたペプチドは見られない。
【図12】A2黒色腫患者由来のMAGE-A2特異的T細胞について実施した試験の結果を示す。
【図13】MHCクラスI抗原であるA2α鎖前駆体およびB7α鎖前駆体のアミノ酸配列を示す(それぞれ、アクセッション番号 P01892およびP01889)。
【図14】MHCクラスII抗原であるDRB3-1β鎖前駆体およびHLA-DQα1(DQw4特異性)前駆体、ヒト(それぞれ、アクセッション番号P79483およびA37044)のアミノ酸配列を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から導入された(externally disposed)ペプチド抗原および主要組織適合複合体(MHC)のタンパク質に結合している動物細胞由来の単離された反転(inverted)ミクロソームまたはその断片を含む、ワクチン組成物。
【請求項2】
ミクロソームが細胞の小胞体に由来する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
MHCのタンパク質がミクロソームが得られた細胞に関して異種性供給源由来である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
一つまたは複数の共刺激分子をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
共刺激分子がB7およびIL-2からなる群から選択される、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
抗原がウイルス、細菌、酵母、真菌または原生動物起源に由来する、請求項1〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
抗原が自己抗原である、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
抗原が新生物細胞もしくは癌腫瘍の細胞、または正常な自己タンパク質である、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
新生物細胞または癌細胞の腫瘍が黒色腫、肺腺癌、結腸癌、乳癌または白血病細胞に由来する、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
医学分野での使用に関して請求項1〜9のいずれか一項において定義される組成物。
【請求項11】
疾患または状態を患う対象を治療または予防する方法であって、該疾患または状態を治療するために請求項1〜9のいずれか一項に定義されるワクチンを対象に投与する工程を含む方法。
【請求項12】
疾患状態の予防または治療のためのワクチンの調製における、請求項1〜9のいずれか一項に定義される組成物の使用。
【請求項13】
疾患がウイルス、細菌、酵母、真菌または原生動物によって引き起こされる感染症である、請求項12記載の使用。
【請求項14】
疾患が癌である、請求項12記載の使用。
【請求項15】
癌が黒色腫、肺腺癌、結腸癌、乳癌または白血病である、請求項14記載の使用。
【請求項16】
疾患が自己免疫状態である、請求項12記載の使用。
【請求項17】
自己免疫状態が多発性硬化症、慢性関節リウマチ、または全身性エリテマトーデスである、請求項16記載の使用。
【請求項18】
請求項1〜9のいずれか一項に定義されるワクチン組成物の調製のためのプロセスであって、以下の工程を含むプロセス:
ヌクレオシド三リン酸の存在下においてミクロソームの集団および抗原をインキュベートする工程、
続いて反転ミクロソームを調製するために処理する工程、および
得られた調製物を生理学的希釈剤および任意でアジュバント中で製剤化する工程。
【請求項19】
ミクロソームが細胞の小胞体に由来する、請求項18記載のプロセス。
【請求項20】
MHCのタンパク質が、ミクロソームが得られた細胞に関して異種性供給源に由来する、請求項18記載のプロセス。
【請求項21】
MHCのタンパク質が、ミクロソームが得られた細胞に関して自己供給源に由来する、請求項18記載のプロセス。
【請求項22】
組成物が一つまたは複数の共刺激分子をさらに含む、請求項18〜21のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項23】
共刺激分子がB7およびIL-2からなる群から選択される、請求項22記載のプロセス。
【請求項24】
抗原がウイルス、細菌、酵母、真菌または原生動物抗原に由来する、請求項18〜23のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項25】
抗原が自己抗原である、請求項18〜23のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項26】
抗原が新生物細胞もしくは癌腫瘍の細胞、または正常な自己タンパク質である、請求項18〜23のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項27】
新生物細胞または癌細胞の腫瘍が黒色腫、肺腺癌、結腸癌、乳癌または白血病の細胞に由来する、請求項26記載のプロセス。
【請求項28】
請求項1〜9のいずれか一項に定義される組成物ならびに一つまたは複数のサイトカインおよび/またはアジュバントを含む成分の密閉容器入りのキット。
【請求項29】
サイトカインがIl-2またはIFNγである、請求項28記載の成分のキット。
【請求項30】
請求項1〜9のいずれか一項に定義される組成物ならびに一つまたは複数のサイトカインおよび/またはアジュバントを含む成分の、対象に別々に投与、順次投与、または同時投与するためのキット。
【請求項31】
サイトカインがIl-2またはIFNγである、請求項30記載の成分のキット。
【請求項1】
外部から導入された(externally disposed)ペプチド抗原および主要組織適合複合体(MHC)のタンパク質に結合している動物細胞由来の単離された反転(inverted)ミクロソームまたはその断片を含む、ワクチン組成物。
【請求項2】
ミクロソームが細胞の小胞体に由来する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
MHCのタンパク質がミクロソームが得られた細胞に関して異種性供給源由来である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
一つまたは複数の共刺激分子をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
共刺激分子がB7およびIL-2からなる群から選択される、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
抗原がウイルス、細菌、酵母、真菌または原生動物起源に由来する、請求項1〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
抗原が自己抗原である、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
抗原が新生物細胞もしくは癌腫瘍の細胞、または正常な自己タンパク質である、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
新生物細胞または癌細胞の腫瘍が黒色腫、肺腺癌、結腸癌、乳癌または白血病細胞に由来する、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
医学分野での使用に関して請求項1〜9のいずれか一項において定義される組成物。
【請求項11】
疾患または状態を患う対象を治療または予防する方法であって、該疾患または状態を治療するために請求項1〜9のいずれか一項に定義されるワクチンを対象に投与する工程を含む方法。
【請求項12】
疾患状態の予防または治療のためのワクチンの調製における、請求項1〜9のいずれか一項に定義される組成物の使用。
【請求項13】
疾患がウイルス、細菌、酵母、真菌または原生動物によって引き起こされる感染症である、請求項12記載の使用。
【請求項14】
疾患が癌である、請求項12記載の使用。
【請求項15】
癌が黒色腫、肺腺癌、結腸癌、乳癌または白血病である、請求項14記載の使用。
【請求項16】
疾患が自己免疫状態である、請求項12記載の使用。
【請求項17】
自己免疫状態が多発性硬化症、慢性関節リウマチ、または全身性エリテマトーデスである、請求項16記載の使用。
【請求項18】
請求項1〜9のいずれか一項に定義されるワクチン組成物の調製のためのプロセスであって、以下の工程を含むプロセス:
ヌクレオシド三リン酸の存在下においてミクロソームの集団および抗原をインキュベートする工程、
続いて反転ミクロソームを調製するために処理する工程、および
得られた調製物を生理学的希釈剤および任意でアジュバント中で製剤化する工程。
【請求項19】
ミクロソームが細胞の小胞体に由来する、請求項18記載のプロセス。
【請求項20】
MHCのタンパク質が、ミクロソームが得られた細胞に関して異種性供給源に由来する、請求項18記載のプロセス。
【請求項21】
MHCのタンパク質が、ミクロソームが得られた細胞に関して自己供給源に由来する、請求項18記載のプロセス。
【請求項22】
組成物が一つまたは複数の共刺激分子をさらに含む、請求項18〜21のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項23】
共刺激分子がB7およびIL-2からなる群から選択される、請求項22記載のプロセス。
【請求項24】
抗原がウイルス、細菌、酵母、真菌または原生動物抗原に由来する、請求項18〜23のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項25】
抗原が自己抗原である、請求項18〜23のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項26】
抗原が新生物細胞もしくは癌腫瘍の細胞、または正常な自己タンパク質である、請求項18〜23のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項27】
新生物細胞または癌細胞の腫瘍が黒色腫、肺腺癌、結腸癌、乳癌または白血病の細胞に由来する、請求項26記載のプロセス。
【請求項28】
請求項1〜9のいずれか一項に定義される組成物ならびに一つまたは複数のサイトカインおよび/またはアジュバントを含む成分の密閉容器入りのキット。
【請求項29】
サイトカインがIl-2またはIFNγである、請求項28記載の成分のキット。
【請求項30】
請求項1〜9のいずれか一項に定義される組成物ならびに一つまたは複数のサイトカインおよび/またはアジュバントを含む成分の、対象に別々に投与、順次投与、または同時投与するためのキット。
【請求項31】
サイトカインがIl-2またはIFNγである、請求項30記載の成分のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−501207(P2007−501207A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522392(P2006−522392)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003285
【国際公開番号】WO2005/011730
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(501008923)クイーン メアリー アンド ウェストフィールド カレッジ (14)
【氏名又は名称原語表記】Queen Mary and Westfield College
【住所又は居所原語表記】Mile End Road,London,U.K.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003285
【国際公開番号】WO2005/011730
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(501008923)クイーン メアリー アンド ウェストフィールド カレッジ (14)
【氏名又は名称原語表記】Queen Mary and Westfield College
【住所又は居所原語表記】Mile End Road,London,U.K.
【Fターム(参考)】
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