説明

ミシン目形成装置

【課題】ミシン目から容易に包装体を破くことができ、包装体の製造コストを低減するミシン目形成装置を提供する。
【解決手段】筐体30の上部31の縦方向Yの下方には、駆動機構40に接続されたトッププレート50が形成される。トッププレート50の下方にはミシン刃70を保持する刃保持プレート60が取り付けられる。刃保持プレート60の下方には、支持部81と、ゴム部82とを含む押えプレート80が形成され、押えプレート80とトッププレート50との間には、刃保持プレート60が位置する。押えプレート80には、その厚み方向に貫通する押さえ細隙87を形成している。押えプレート80の下方には、その厚さ方向に貫通する載置細隙105が形成され、フィルムシート14を載置する載置プレート100が形成される。載置プレート100の下方にはベースプレート110が形成され、ベースプレート110は下部32に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミシン目の形成装置に関し、さらに詳しくは複数の使い捨てのおむつ等の衛生用品を包装する包装体に対して、おむつを取り出す際に開口させるためのミシン目を形成する形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の使い捨ておむつを並べて収納する包装体として、例えば、特開2006−290383号公報(特許文献1)が公知である。この特許文献1では、ポリエチレンフィルムなどの柔軟な材料で包装体を形成し、包装体内に圧縮した複数の使い捨ておむつを収納する。包装体にはミシン目を形成し、ミシン目に沿って破いた包装体内からおむつを取り出すことができるようにしている。
【特許文献1】特開2006−290383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
包装体のミシン目は、ミシン刃が包装体を形成するポリエチレンフィルムを挟んで弾性プレート側へと押し付けられることによって形成される。このときフィルムは弾性プレートの上に載置され、弾性プレート側へと押し付けられたミシン刃がフィルムを貫通するとともに、ミシン刃の一部が弾性プレートに突き刺さることによって、ミシン目が形成される。
しかし、上記のようにミシン刃が弾性プレートに押し付けられたとき、フィルムも弾性プレート側に食い込むように巻き込まれてしまい、ミシン刃がフィルムを貫通し難くなる。ミシン刃がフィルムを貫通し難くなった場合には、ミシン刃によって形成されるスリットの長さが短くなったり、ミシン目が形成されなかったりすることも懸念され、包装体が破き難くなるという問題がある。
また、ミシン目形成のたびに、ミシン刃が弾性プレートに突き刺さるから、ミシン刃が損傷し、その交換頻度が高くなり、製造コストが増加するという問題がある。
【0004】
この発明では、ミシン目から容易に包装体を破くことができ、包装体の製造コストを低減することができる包装体形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、フィルムシートが載置される載置プレートと、前記フィルムシートにミシン目を形成するミシン刃と、前記ミシン刃を前記フィルムシートの厚さに対して縦方向に上下動させる駆動機構とを含むミシン目形成装置の改良に関わる。
この発明において、「ミシン目」とは、シートに点線状に切り込み目を入れた切り目または点線状に孔またはスリットを穿った目を意味し、その目が概して点線状に列設されており、シートをその点線状の目の列を介して連続的に引き裂くことができるものである。
【0006】
この発明は前記ミシン目形成装置において、前記載置プレートに対向し、前記フィルムシートを前記載置プレートに押し付ける押えプレートを含み、前記載置プレートは、前記ミシン刃に噛み合う載置細隙を形成し、前記押えプレートは、前記フィルムシートに対向する面に滑り止め手段を有することを特徴とする。
【0007】
好ましい実施態様のひとつとして、前記ミシン刃は、刃保持プレートに保持され、前記刃保持プレートと、前記押えプレートとの間には、これらを前記縦方向に付勢する付勢手段が形成され、前記保持プレートは、前記付勢手段の付勢に抗して前記ミシン刃を前記載置細隙に挿入可能である。
【0008】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記載置プレートは、前記フィルムシートに対向する面において少なくとも前記縦方向に弾性を有する。
【0009】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記載置プレートは、前記フィルムシートに対向する面に滑り止め手段を有する。滑り止め手段としては、載置プレート自身が滑り止めの機能を有する場合も含む。
【0010】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記ミシン刃は、一列に並んで形成される複数の刃部を含み、前記刃部は、前記フィルムシート側先端における尖鋭部と、前記尖鋭部から前記縦方向に直交する横方向に広がりながら前記縦方向に延びる拡大部と、前記拡大部から前記縦方向に延びる平行部とを含む。
【0011】
好ましい他の実施態様のひとつとして、少なくとも前記刃部の前記尖鋭部から前記平行部までが、前記載置細隙に挿入可能である。
【0012】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記押えプレートは、その厚さ方向に貫通するとともに前記載置細隙と略同一形状の押え細隙を含み、前記刃部が、前記押え細隙を前記厚さ方向に貫通して前記載置細隙に噛み合う。
【0013】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記フィルムシートは、複数枚がその厚さ方向に積層されて、前記載置プレートに載置される。
【発明の効果】
【0014】
フィルムシートを載置プレートに載置し、押えプレートに形成した滑り止め手段でフィルムシートを押さえつけながらミシン刃でミシン目を形成することができるので、フィルムシートが、載置プレート側に食い込むように巻き込まれることを抑制することができる。したがって、フィルムシートに、確実にミシン目を形成することができるとともに、設定どおり一定にミシン目を形成することができ、ミシン目から容易に包装体を破ることが可能になる。
載置プレートには、ミシン刃に噛み合う溝部を形成することとしたので、ミシン刃がこの溝部に挿入されることによってミシン目を形成することができる。ミシン刃が載置プレートに突き刺さることがないので、刃の損傷を防止することができる。したがって、ミシン刃を頻繁に交換する必要がなく、製造コストの低減を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、複数の使い捨ておむつが収納された包装体1の斜視図であり、図2は、包装体1におむつを収納する前の折り畳まれた包装体1の斜視図である。包装体1は略直方体を形成しているが、その角にミシン目11を形成し、このミシン目11を破ることによっておむつがひとつずつ取り出しやすいようにしている。
包装体1は、柔軟性を有する低密度ポリエチレン(LDPE)等のフィルムシート14によって形成されている。ミシン目11は、包装体1が図2のように折り畳まれた状態で、その折り目に沿って形成される。図示したように、フィルムシート14は環状に形成され、両側において輪を形成している部分を内側に折り込んで、いわゆるガゼット折りとしている。ミシン目11は、このガゼット折りの部分であって、フィルムシート14が4枚重なっている部分に形成される。このようなフィルムシート14から形成された包装体1を広げておむつを収納したときに、その角に沿ってミシン目11が形成される。ミシン目11は、平行に延びる二本の第1部分12と、これら二本の第1部12をつなぐ第2部分13とによって構成される。
【0016】
包装体1に、ミシン目11を形成する装置の一例を説明する。
図3は、装置20の斜視図であり、説明のためにその一部を破断している。図4は、図3の装置20を交差方向CDに見た側面図である。装置20は、縦方向Yとこれに直交する横方向とを含むが、この横方向は、包装体1を形成するフィルムシート14が搬送される機械方向MDと、機械方向MDに直交する交差方向CDとによって構成されている。また、縦方向Yとは、搬送されたフィルムシート14を厚さ方向に貫通する方向である。
【0017】
装置20は、筐体30と、筐体30の内部に位置する複数のプレートと、筐体30の外部に位置しプレートの一部を上下動させる駆動機構40とを含む。
筐体30は、縦方向Yの上方に位置する上部31と、下方に位置する下部32と、交差方向CDの両側に位置する両側部33とを含む。
筐体30の上部31の縦方向Yの下方、すなわち筐体30の内部には、トッププレート50が形成され、このトッププレート50は駆動機構40を形成するスライドベアリング41に接続されて縦方向Yに上下動する。駆動機構40の詳細は図示しないが、例えば油圧制御機構によって実現される。トッププレート50の縦方向Yの下方には、ミシン刃70を保持する刃保持プレート60が取り付けられ、刃保持プレート60はトッププレート50と連動して上下するようにトッププレート50に固定されている。
【0018】
図5は、ミシン刃70斜視図であり刃保持プレート60を仮想線で示している。図6は、図5の一部の拡大図である。刃保持プレート60は、機械方向MDに延びる両側縁61,62と、交差方向CDに延びる前後端縁63,64とを含み、刃保持プレート60の縦方向Yの下方にはミシン刃70を形成している。ミシン刃70は、前端縁63から後端縁64に向かって延びる第1部分71と、第1部分71の後端縁64側で曲線を画きながら折れ曲がり交差方向CDに延びる第2部分72とを含む。すなわち、ミシン刃70は、略L字に形成されている。第1部分71は、ミシン目11の第1部分12を形成し、第2部分72は、ミシン目11の第2部分13を形成するように対応する(図1および図2参照)。
【0019】
ミシン刃70は、複数の刃部73を含み、それぞれの刃部73は、縦方向Yに延びるとともに、縦方向Yの下方であってその先端に位置する尖鋭部74と、尖鋭部74から機械方向MDの前後に広がりながら縦方向Yに延びる拡大部75と、拡大部75から縦方向Yに平行に延びる平行部76とを含む。これら刃部73では、その縁に向かって厚さが薄くなっており、鋭利な刃を形成しフィルムシート14を切裂きスリットの形成を可能にしている。平行部76の縦方向Yの上方には、刃保持プレート60と接続する基部77が形成されるが、この基部77では、鋭利な刃を形成せずフィルムシート14が切裂かれ難くなっている。
【0020】
尖鋭部74からの両拡大部75の角度αは、約60度としており、これら拡大部75によって刃部73は、二等辺三角形の一部を形成する。この実施形態では、刃部73の平行部76から隣接する刃部73の平行部76までの寸法t1を約1.5mmとし、刃部73の機械方向MDの幅寸法t2を約3mmとし、刃部73の交差方向CDの厚さを約0.7mmとしている。また、刃部73の平行部76から尖鋭部74までの縦方向Yの長さ寸法t3を約10mmとしている。ただし、寸法t1は、第1部分71の寸法であり、第2部分72では約2mmとしている。また、第2部分72では、刃部73の厚さ寸法が機械方向MDで表される。その他の寸法は、第1部分71と第2部分72とで共通している。
【0021】
刃保持プレート60の縦方向Yの下方には、押えプレート80が形成される。押えプレート80は、縦方向Yの上方に位置する支持部81と、下方に位置するゴム部82とを含む。支持部81にはステンレス等の金属を用いることができ、ゴム部82にはシリコン系ゴムを用いることができる。このゴム部82によって、フィルムシート14に対する滑り止め手段を構成している。このような押えプレート80は、一対のシャフト91,91を介してトッププレート50に取り付けられている。押えプレート80とトッププレート50との間には、刃保持プレート60が位置するが、この刃保持プレート60には、シャフト91,91が貫通するシャフト孔が形成され、シャフト91,91はこのシャフト孔を摺動可能に形成されている。また、トッププレート50と押えプレート80との間には、これらを縦方向Yに付勢する付勢手段90が取り付けられている。付勢手段90としてはスプリングを用いることができ、スプリングはシャフト91を軸として取り付けることができる。
【0022】
図7は押えプレート80の平面図であり、この押えプレート80は、機械方向MDに延びる両側縁83,84と交差方向CDに延びる前後端縁85,86とを含む。押えプレート80には、その厚み方向すなわち縦方向Yに貫通する押さえ細隙87を形成している。押え細隙87は、ミシン刃70の刃部73を貫通可能とするために、その形状をミシン刃70の形状とほぼ等しくしている。すなわち、押え間隙87は、前端縁85から後端縁86に向かって機械方向MDに延びる第1部分88と、第1部分88の後端縁86側から側縁83に向かって交差方向CDに延びる第2部分89とを含み、第1部分88と第2部分89とで略L字状に形成されている。この押え細隙87は、その隙間寸法が、刃部73の厚さ寸法よりも大きくしている。このような寸法関係にすることによって、押え間隙87をミシン刃70が貫通可能とすることができる。
【0023】
押えプレート80の縦方向Yの下方には、フィルムシート14を載置する載置プレート100を形成している。図8は、載置プレート100の平面図である。載置プレート100は、機械方向MDに延びる両側縁101,102と、交差方向CDに延びる前後端縁103,104とを含む。載置プレート100には、その厚さ方向すなわち縦方向Yに貫通する載置細隙105が形成されている。載置細隙105は、ミシン刃70および押え細隙87の形状とほぼ一致するように形成されている。すなわち、載置細隙105は、前端縁103から後端縁104へと向かって機械方向MDに延びる第1部分106と、後端縁104側において第1部分106から曲線を画きながら折れ曲がり交差方向CDに延びる第2部分107とを含み、載置細隙105は、略L字に形成されている。
このような載置プレート100は、硬度Hs90のウレタンで形成されており、少なくとも縦方向Yにおいて弾性を有し、このウレタンによって、載置プレート100における滑り止め手段を形成している。載置プレート100の硬度は、JIS Z 2246によって測定される。
【0024】
載置プレート100の縦方向Yの下方にはベースプレート110が形成されている。ベースプレート110には、細隙が形成されず、このベースプレート110によって載置プレート100の載置細隙105を塞いでいる。ベースプレート110としては、載置プレート100と同様のウレタンを用いることができる。ただし、載置プレート100の細隙を塞ぐことができれば、他の素材を用いることが可能である。
このようなベースプレート110は、その縦方向Yの下方において筐体30の下部32に固定されている。すなわち、載置プレート100およびベースプレート110が一体的に筐体30に固定されている。
【0025】
上記のような構成において、装置20の作動を図9〜11を用いて説明する。図9は図4のIX部の拡大図であり、その一部を断面で表している。図9に示したように、装置20にフィルムシート14が搬送され、フィルムシート14は載置プレート100に載置される。フィルムシート14が載置されると、図示しない駆動機構によってトッププレート50および刃保持プレート60が縦方向Yの下方に移動する。トッププレート50には、シャフト91を介して押えプレート80が接続されている。すなわち、トッププレート50の縦方向Yには、シャフト91の上方側を保持する保持部92が形成され、シャフト91をトッププレート50のシャフト孔51に摺動可能に保持するとともに、シャフト91の下方側を押えプレート80に固定している。
【0026】
シャフト91は、刃保持プレート60のシャフト孔65を貫通するとともに、このシャフト孔65は、トッププレート50のシャフト孔51よりもその径を大きくしている。したがって、これらシャフト孔51,65の間には段差が形成される。
また、刃保持プレート60のシャフト孔65には、付勢手段90が取り付けられており、その上端をトッププレート50の下面に当接させ、下端を押えプレート80に当接させることによって、これらトッププレート50と押えプレート80とを縦方向Yに付勢している。
【0027】
上記のような状態からトッププレート50が縦方向Yの下方に移動すると、図10に示したように、シャフト91を介して押えプレート80も縦方向Yの下方に移動する。押えプレート80の下方にはゴム部82が形成されているから、そのゴム部82が載置プレート100に載置されたフィルムシート14に当接する。すなわち、フィルムシート14は押えプレート80のゴム部82と載置プレート100とによって挟持される。
【0028】
図10の状態から、さらにトッププレート50が縦方向Yに押し付けられると、図11の状態になる。すなわち、トッププレート50は、付勢手段90を縦方向Yに撓ませながら、トッププレート50および刃保持プレート60が下方に移動し、支持部92がストッパ93から離間する。付勢手段90が、トッププレート50の下面と押えプレート80の支持部81の上面とによって、縦方向Yに押し付けられて縦方向Yに撓むと、ミシン刃70が押えプレート80の押え細隙87を貫通し、載置プレート100の載置細隙105に到達する。
【0029】
ミシン刃70と押え細隙87と載置細隙105との形状をほぼ同一となるようにしているので、ミシン刃70は押えプレート80および載置プレート100に接触することなく、押え細隙87を通過し、載置細隙105に挿入される。押えプレート80と載置プレート100との間にはフィルムシート14が位置しているので、フィルムシート14には刃部73によってスリットを形成することができ、このスリットによってミシン目が形成される。
【0030】
押えプレート80が、載置プレート100側に付勢手段90の付勢力に抗して押し付けられることによって、押えプレート80と載置プレート100との間に位置するフィルムシート14は、載置プレート100側に圧接され、これら押えプレート80と載置プレート100との間で強固に保持される。特に、この実施形態のように、フィルムシート14を複数枚重ねてからミシン目を形成しようとした場合には、重ねたフィルムシート14が互いに滑ってずれやすいが、これら重ねたフィルムシート14を圧接して保持することによって、これらが互いに滑ってずれるのを防止することができる。
【0031】
フィルムシート14が押えプレート80と載置プレート100との間で強固に挟持されることによって、ミシン刃70がフィルムシート14を切裂きながら縦方向Yに移動した場合であっても、フィルムシート14がミシン刃70の移動に巻き込まれるのを抑制することができる。したがって、フィルムシート14に確実にミシン刃70を突き刺すことができ、刃部73の幅寸法に対応した設定どおりのスリットを形成することができる。設定どおりのスリットが形成されるので、フィルムシート14が部分的に裂け難くなることがなく、容易にミシン目に沿ってフィルムシート14を裂くことができる。
【0032】
刃部73の長さ寸法t3は、押えプレート80の縦方向Yの厚さ寸法と、フィルムシート14の縦方向Yの厚さ寸法との和よりも大きくしている。また、寸法t3は、押えプレート80の厚さ寸法と、フィルムシート14の厚さ寸法と、これに載置細隙105の縦方向Yの寸法t4を加えた和よりも小さくしている。したがって、刃部73は、フィルムシート14を確実に貫通し、かつ、載置細隙105を超えてベースプレート110に突き刺さることがない。ベースプレート110に刃部73が突き刺さらないので、刃部73が損傷するのを防止することができ、刃部73の交換頻度を少なくして、製造コストの低減を図ることができる。
【0033】
フィルムシート14は、押えプレート80の滑り止め手段と、載置プレート100の滑り止め手段とで挟持されるので、より一層フィルムシート14がずれ難く、確実にミシン目を形成することができる。
【0034】
刃部73は、その機械方向MDの両側に傾斜した拡大部75を形成し、いわゆる両刃となるようにしているので、尖鋭部74からその両外側に向かってスリットを大きくすることができ、その一側のみが傾斜した片刃に比べて、傾斜した部分すなわち拡大部75の縦方向Yの長さ寸法を小さくすることができる。このように拡大部75の長さ寸法を小さくすることができるので、刃部73の平行部76を確実にフィルムシート14にまで移動させることができる。平行部76がフィルムシート14にまで移動することによって、刃部73によって形成されるスリットの長さを一定にすることができる。すなわち、拡大部75までフィルムシート14に刺さらなかったとしたら、その縦方向Yのわずかな移動差によってスリットの長さが一定にならない。スリットの長さが一定にならないと、スリットの長い部分では、ミシン目が裂けやすく、スリットの短い部分ではスリットが避けにくいという事態が生じる。
【0035】
スリットの長さを一定にすることができるので、特にフィルムシート14を複数枚重ねてミシン目を形成する際であっても、そのミシン目が裂け難くなることを防止することができる。すなわち、重ねたフィルムシート14の下方のシートにおいては、ミシン刃が刺さり難く、スリットの長さが一定にならない可能性もあるが、重ねたフィルムシート14を押えプレート80と載置プレート100との間で挟持して上記のような刃部73によってスリットを形成することができるので、重ねた下方のフィルムシート14にも確実に刃部73が突き刺さり、形成されたスリットの長さを一定にすることができる。
さらに、平行部76の長さ寸法を短くすることによって、載置プレート100と刃保持プレート60との離間寸法も短くすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0036】
載置プレート100は、ウレタンによって形成し、少なくとも縦方向Yにおいて弾性を有している。したがって、押えプレート80によって押し付けられたときに、ゴム部82との弾性によって、フィルムシート14を押圧保持することができ、より確実にフィルムシート14を移動しないように支持することができる。さらに、縦方向Yに弾性化されることによって、押えプレート80の当接による衝撃を干渉することもできる。
載置プレート100は、その硬度Hs90としているが、押えプレート80による押圧力によって載置細隙105を変形させることがなく、フィルムシート14を押圧保持できるものであれば、この数値に限定されるものではない。フィルムシート14を押圧保持することを可能とするためには、押えプレート80の上方に取り付けられた付勢手段90としてのスプリングは、フィルムシート14がずれない程度のバネ定数を有するものであることは当然のことである。また、この発明では、載置プレート100自身で滑り止め手段を形成しているが、載置プレート100とは別体のゴム等の滑り止め手段を取り付けるようにしてもよい。
【0037】
この発明では、刃部73を略L字に並べ、ミシン目がL字に形成されるようにしているが、これに限ったものではなく、あらゆる並び方をした刃部73に適用することができる。
滑り止め手段として、ゴムおよびウレタンを用いているが、フィルムを押圧しながら挟持できるものであって、フィルムとの間で高い摩擦力を有することによって、フィルムが滑るのを抑制することができるものであれば、これに限られることなく、一般的な材料を用いることができる。
【0038】
刃部73は、少なくとも尖鋭部74から平行部76までが、載置細隙105に挿入可能とすることによって、一定のスリットをフィルムシート14に形成することができる。この実施の形態では、フィルムシート14をいわゆるガゼット折りにして、フィルムシート14が4枚重ねになった部分にミシン目を形成するようにしているが、少なくとも上方の2枚に一定のスリットが形成されればよい。言い換えれば、図2で示した包装体のいずれかの角がミシン目に沿って切裂き可能となっていればよい。4枚すべてに一定間隔のスリットを形成する場合には、ミシン刃70がより縦方向Yの下方に移動するように設定することができる。すなわち、フィルムシート14を複数枚重ねた場合には、ミシン刃70の縦方向Yの下方への移動距離を調整することによって、そのうちの何枚のシートに引き裂き可能なスリットを形成するのかを設定することができる。なお、当然のこととして、一枚のフィルムシート14にミシン目を形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】包装体の斜視図。
【図2】包装体の平面図。
【図3】ミシン目形成装置の斜視図。
【図4】装置の正面図。
【図5】ミシン刃の斜視図。
【図6】ミシン刃の説明図。
【図7】押えプレートの平面図。
【図8】載置プレートの平面図。
【図9】図4のIX部拡大図。
【図10】装置の説明図。
【図11】装置の説明図。
【符号の説明】
【0040】
1 包装体
11 ミシン目
14 フィルムシート
20 装置
40 駆動機構
50 トッププレート
60 刃保持プレート
70 ミシン刃
73 刃部
74 尖鋭部
75 拡大部
76 平行部
80 押えプレート
82 ゴム部(滑り止め手段)
87 押え細隙
90 付勢手段
100 載置プレート
105 載置細隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムシートが載置される載置プレートと、前記フィルムシートにミシン目を形成するミシン刃と、前記ミシン刃を前記フィルムシートの厚さに対して縦方向に上下動させる駆動機構とを含むミシン目形成装置において、
前記載置プレートに対向し、前記フィルムシートを前記載置プレートに押し付ける押えプレートを含み、
前記載置プレートは、前記ミシン刃に噛み合う載置細隙を形成し、
前記押えプレートは、前記フィルムシートに対向する面に滑り止め手段を有することを特徴とする前記ミシン目形成装置。
【請求項2】
前記ミシン刃は、刃保持プレートに保持され、
前記刃保持プレートと、前記押えプレートとの間には、これらを前記縦方向に付勢する付勢手段が形成され、
前記保持プレートは、前記付勢手段の付勢に抗して前記ミシン刃を前記載置細隙に挿入可能である請求項1記載のミシン目形成装置。
【請求項3】
前記載置プレートは、前記フィルムシートに対向する面において少なくとも前記縦方向に弾性を有する請求項1または2記載のミシン目形成装置。
【請求項4】
前記載置プレートは、前記フィルムシートに対向する面に滑り止め手段を有する請求項1〜3のいずれかに記載のミシン目形成装置。
【請求項5】
前記ミシン刃は、一列に並んで形成される複数の刃部を含み、前記刃部は、前記フィルムシート側先端における尖鋭部と、前記尖鋭部から前記縦方向に直交する横方向に広がりながら前記縦方向に延びる拡大部と、前記拡大部から前記縦方向に延びる平行部とを含む請求項1〜4のいずれかに記載のミシン目形成装置。
【請求項6】
少なくとも前記刃部の前記尖鋭部から前記平行部までが、前記載置細隙に挿入可能である請求項5記載のミシン目形成装置。
【請求項7】
前記押えプレートは、その厚さ方向に貫通するとともに前記載置細隙と略同一形状の押え細隙を含み、
前記刃部が、前記押え細隙を前記厚さ方向に貫通して前記載置細隙に噛み合う請求項5または6に記載のミシン目形成装置。
【請求項8】
前記フィルムシートは、複数枚がその厚さ方向に積層されて、前記載置プレートに載置される請求項1〜7のいずれかに記載のミシン目形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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