説明

ミスト発生装置およびこれを備えた浴室空調装置

【課題】ミストの粗さを容易かつ適切に変更することが可能なミスト発生装置を提供する。
【解決手段】複数の回転板20A〜20Cと、これら複数の回転板20A〜20Cにミスト発生用の液体を供給するための液体供給手段5a〜5cとを備えており、複数の回転板20A〜20Cが回転し、かつそれらに液体が供給されたときには、この液体が複数の回転板20A〜20Cの周囲に飛散してミスト化されるように構成されているミスト発生装置MGであって、複数の回転板20A〜20Cのそれぞれから液体が飛散して発生するミストの粗さは相違するように構成されており、液体供給手段5a〜5cは、複数の回転板20A〜20Cのそれぞれに対する液体供給を個別に選択して行なうことを可能とするバルブVa〜Vcを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水などの液体のミスト化(霧状化、微細粒子化)を図ることが可能なミスト発生装置、およびこれを備えた浴室空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミスト発生装置の具体例としては、特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載されたミスト発生装置は、モータにより回転される複数の回転板と、これら複数の回転板のそれぞれの上面に液体を供給するための配管とを備えている。このような構成によれば、モータを駆動させて複数の回転板が回転すると、それらの上面に供給された液体が各回転板の回転に基づく遠心力によって各回転板の周囲に向けて高速で飛散する。このことにより、前記液体がミスト化される。回転板は複数設けられているために、ミストの発生量を多くすることが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき点があった。
【0004】
すなわち、ミスト発生装置を実際に使用する場合、ミストの粗さを変えることができれば、好ましい場合がある。具体例を挙げると、浴室の天井部などにミスト発生装置を設置し、ミストシャワーを浴びる用途に用いる場合、ユーザとしては、粒子径が細かなミストのシャワーを浴びたい場合もあれば、これとは異なり、粒子径が大きいミストのシャワーを浴びたい場合もある。ところが、前記従来技術においては、複数の回転板を用いることによってミスト発生量を多くしてはいるものの、ミストの粗さを積極的に変化させるための手段は講じられておらず、前記したような要請に的確に応えることはできないものとなっていた。回転板の回転速度を変更すれば、ミストの粗さは変化するものの、このような回転速度の変更のみでは、ミストの粗さを大きく変化させることは難しい。また、粒子径が細かなミストと粒子径が大きいミストとを混合させて発生させるといったことも困難である。従来においては、このような点において、未だ改善すべき余地があった。
【0005】
【特許文献1】特開平4−118068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、ミストの粗さを容易かつ適切に変更することが可能なミスト発生装置、およびこれを備えた浴室空調装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供されるミスト発生装置は、複数の回転板と、これら複数の回転板にミスト発生用の液体を供給するための液体供給手段と、を備えており、前記複数の回転板が回転し、かつそれらに液体が供給されたときには、この液体が前記複数の回転板の周囲に飛散してミスト化されるように構成されている、ミスト発生装置であって、前記複数の回転板のそれぞれから液体が飛散して発生するミストの粗さは相違するように構成されているとともに、前記液体供給手段は、前記複数の回転板のそれぞれに対する液体供給を個別に選択して行なうことを可能とするバルブを備えていることを特徴としている。
ここで、本発明において、「ミストの粗さは相違する」とは、必ずしも複数の回転板のそれぞれによって発生されるミストの全てが、粗さの相違するものである必要はなく、少なくとも1つの回転板によって発生されるミストの粗さが、他の回転板によって発生されるミストの粗さと相違していればよい意である。なぜなら、本発明においては、ミスト発生装置に設けられる複数の回転板のなかに、ミストの粗さが同一となる回転板をあえて含ませた構成とすることが可能であり、このような構成も本発明の技術的範囲に包摂されるべきだからである。
また、本発明において、「液体供給を個別に選択して行なう」とは、必ずしも複数の回転板の全てについて液体供給のオン・オフが個別になされる必要はなく、複数の回転板のうち、一部のものについては、液体供給が一括して行なわれてもよい意である。なぜなら、既述したように、本発明においては、ミストの粗さが同一となる回転板を含ませた構成とすることが可能であり、このような回転板については一括して液体供給のオン・オフを行なえば足りるからである。
【0009】
本発明の前記した構成によれば、複数の回転板のうち、いずれを選択してミストを発生させるかによってミストの粗さは異なったものとなる。このような回転板の選択は、液体供給手段のバルブを利用し、所望の回転板に対する液体供給を個別に行なわせることにより行なうことができる。このため、粗さが相違するミストを選択的に発生させることができ、ミストの粗さを変更したいというユーザの要望に的確に応えることが可能となる。本発明においては、回転板の回転速度を単に変更させることによってミストの粗さを変更する場合と比較すると、ミストの粗さを大きく変化させることが容易かつ的確に実現できる。また、たとえばきめ細かなミストと粗いミストとを同時に発生させるといったことも可能となる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数の回転板として、直径が互いに相違する少なくとも2つの回転板を備えている。
【0011】
このような構成によれば、直径が相違する回転板の回転速度(角速度)が同一であっても、その周速は相違することとなり、回転板の周囲に液体が飛散する速度も相違することとなる。このことにより、ミストの粗さを的確に相違させることができる。また、ミストの粗さを相違させることを目的として回転板の回転速度を複雑に制御する必要がなくなり、モータなどの駆動手段の制御が容易となる効果もある。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数の回転板の周囲には、これら複数の回転板から飛散してきた液体を衝突させてミスト化を図るための複数の衝突壁部が設けられており、前記複数の回転板のそれぞれから前記複数の衝突壁部までの距離が相違する構成、前記複数の衝突壁部のそれぞれの液体衝突面積が相違する構成、または前記距離および前記液体衝突面積がともに相違する構成とされている。
【0013】
このような構成によれば、回転板から飛散した液体を衝突壁部に衝突させることによってミストを発生させることが可能であり、液体が衝突壁部に衝突する速度や、衝突面積が相違することによって、粗さが異なるミストを適切に発生させることができる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数の回転板として、液体を衝突させてミスト化を図るための衝突壁部が周囲に設けられている第1の回転板と、そのような衝突壁部が周囲に設けられておらず、または衝突壁部の数が前記第1の回転板よりも少なくされた第2の回転板とを備えている。
【0015】
このような構成によれば、回転板から飛散した液体が衝突壁部に衝突することによって発生するミストと、そのような衝突がなく、またはそのような衝突が少ない状態で発生されるミストとが得られることとなり、このようなことによっても粗さが相違するミストが適切に発生する。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数の回転板を内部に収容するケースを備えており、かつこのケースの周壁部にはミスト噴出口が設けられているとともに、このケースの底部は貯液部とされており、前記複数の回転板のうち、少なくとも1つの回転板は、前記貯液部に一部分が位置する軸状部を有し、かつ回転時には前記貯液部に存在する液体が前記軸状部を介してこの回転板まで汲み上げられることによってこの回転板の周囲に飛散するように構成されており、前記複数の回転板の周囲に飛散した液体のうち、前記ケースの外部に噴出されなかった液体は、前記貯液部に回収されてから前記軸状部を備えた回転板によって再度のミスト化が図られるように構成されている。
【0017】
このような構成によれば、回転板の周囲に飛散した液体のうち、ケースの外部に噴出されなかった一部の液体は、ケースの底部の貯液部に回収された後に、軸状部を有する回転板によって再度のミスト化が図られる。したがって、最終的には、ケース内に供給された液体の略全量をミスト化してケースの外部に噴出させることが可能となり、液体の利用率を高くすることができる。また、ケースの外部に噴出されなかった液体の処理に苦慮するといったことも好適に回避される。
【0018】
本発明の第2の側面により提供されるミスト発生装置を備えた浴室空調装置は、浴室の上部に設置されて、前記浴室の空調を行なうのに用いられる浴室空調装置であって、本発明の第1の側面により提供されるミスト発生装置を備えていることを特徴としている。
前記浴室空調装置は、たとえば、浴室の上部に設置されるケースと、浴室の空気を前記ケース内に吸入させて送風口から浴室に吹き出すファンと、このファンの駆動により前記ケース内に吸入された空気を調整するための空気調整手段と、を備えた構成とすることができる。
【0019】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供されるミスト発生装置について述べたのと同様な効果が得られる。また、浴室空調装置をミスト発生装置のブラケットとして利用し、ミスト発生装置の施工作業の省略化あるいは簡略化などを図ることもできる。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1は、本発明が適用されたミスト発生装置を備えた浴室空調装置の一例を示している。本実施形態の浴室空調装置Aは、浴室暖房乾燥機として構成されており、ユニットバスなどの浴室の天井部80に取り付けられている。浴室空調装置Aのパネル41には、ミスト発生装置MGが取り付けられている。浴室空調装置Aの説明に先立ち、ミスト発生装置MGの構成について、図2〜図7を参照して説明する。
【0023】
図2によく表われているように、ミスト発生装置MGは、ケース1、複数(たとえば3つ)の回転板20A〜20Cを有するロータ2、このロータ2を回転させるためのモータM、およびミスト発生用の水をロータ2に向けて直接または間接的に供給するための複数の給水管5a〜5cを備えている。
【0024】
ケース1は、合成樹脂製であり、その全体の概略形状は、上部が開口した平面視円形のカップ状である。このケース1は、その上部に設けられた複数のネジ孔10とこれらに螺合するネジ体90とを利用してパネル41の下面部に取り付けられている。このケース1には、複数の衝突壁部12、複数のミスト噴出口13、および貯液部14が設けられている。
【0025】
複数の衝突壁部12は、ロータ2が回転して回転板20A〜20Cからその周囲に水が飛散したときにこの水を衝突させるための部位であり、この衝突によりミストを的確に発生させることができる。ただし、後述するように、衝突壁部12を設けることなくミストを発生させることも可能である。また、複数の衝突壁部12は、幅La〜Lcが相違する3つの領域12a〜12cに区分されているが、この点についても後述する。図3および図4に示すように、複数の衝突壁部12は、ケース1の中心軸周りに略等間隔で放射状に並んだリブ状である。互いに隣り合う衝突壁部12どうしの隙間はケース1の周囲に向けて開口しており、この開口部分がミスト噴出口13である。複数の衝突壁部12に水が衝突して発生したミストは、このミスト噴出口13をそのまま通過してケース1の周囲に噴出する。図2および図5において、貯液部14は、ケース1の底部に形成されており、この貯液部14には適当量の水を貯留可能である。
【0026】
ロータ2は、モータMの駆動軸30に支持されてケース1内に収容されており、前記した回転板20A〜20Cに加えて、最下段の回転板20Aの中央部から下向きに突出した揚水用の軸状部21を有している。ロータ2の各部は、たとえば合成樹脂製である。図面では、ロータ2の全体が一体成形されたものとして示されているが、これに限定されないことは言うまでもない。回転板20A〜20Cは、駆動軸30に上部が連結された軸部22を中心軸とする同心状であり、モータMが駆動したときには同時に回転する。
【0027】
このミスト発生装置MGにおいては、回転板20A〜20Cのそれぞれによって発生されるミストの粗さが相違し、このミストの粗さは、回転板20A〜20Cの順序で徐々に大きくなるように構成されている。このための手段として、次のような手段が講じられている。
第1の手段として、回転板20A〜20Cの直径は不揃いとされており、回転板20Cは、他の回転板20A,20Bと比較すると、小径であり、回転時の周速が遅くなるように構成されている。周速が遅いと、衝突壁部12に対する水の衝突速度も遅くなるため、衝突によって発生するミストは粗くなる。
第2の手段として、各衝突壁部12は、回転板20A〜20Cのそれぞれに対応する3つの領域12a〜12cに区分されており、それらの幅La〜Lbは、La>Lb>Lcの関係に形成されている。このことにより、3つの領域12a〜12cに対する水の衝突面積(液体衝突面積)についても、領域12a〜12cの順序で段階的に小さくなっている。衝突壁部12は、水を衝突させて水滴の微粒子化を図るものであり、水が衝突する面積が小さくなるほど、ミストは粗くなる。
第3の手段として、回転板20A〜20Cの外周から領域12a〜12cまでの距離Sa〜Scも不揃いとされており、Sa<Sb<Scの関係となっている。距離Sa〜Scが大きくなるほど、衝突壁部12に対する水の衝突速度は、その初速度と比較して遅くなり、ミストが粗くなる。
【0028】
複数の給水管5a〜5cは、本発明でいう液体供給手段の一例に相当し、遠隔操作可能な電磁駆動式などの開閉バルブVa〜Vcを備えている。給水管5aは、貯液部14への給水が可能に設けられており、この貯液部14に供給された水は、後述するように、軸状部21を介して回転板20Aの下面に汲み上げられる。給水管5b,5cは、回転板20B,20Cのそれぞれの上面部のうち、それらの中心寄りの位置に給水が可能に設けられている。
【0029】
ロータ2の軸状部21は、上部寄りの部分ほど大径となる円錐状または円錐台状であり、その下部は、ケース1の底部に設けられた排水用の孔部16に挿通している。排水用の孔部16の内周面と軸状部21の外周面との間には、たとえば1〜3mmほどの隙間が形成されている。ロータ2の回転時には、後述する原理により、貯液部14の水が孔部16から漏れることはなく、貯液部14の一部の水は軸状部21の外周面に沿った水膜となって上昇し、回転板20Aの下面まで汲み上げられる。すると、この水は、遠心力により、回転板20の中央寄り領域から外周方向に向けて加速され、この回転板20の周囲に飛散する。
【0030】
図7は、前記した動作の原理説明図である。同図を参照して、軸状部21の外周面上に水膜が形成されて上昇する原理をまず説明する。
軸状部21の外周面上の水膜の微小要素ΔWについて考察すると、前記外周面と直交する方向には、軸状部21の外周面に対する水の付着力Fが生じている。また、微小要素ΔWの質量をmとすると、鉛直方向の下向きにはmgが作用するが、これは、分力mgn,mgtに分解することができる。水平方向には、遠心力C(C=mrω2,r:偏心距離,ω:角速度)が作用するが、これは分力Cn,Ctに分解することができる。微小要素ΔWが軸状部21の外周面から吹き飛ばされないためには、次の式(1)の釣り合い関係があればよい。
F=Cn+mgn 式(1)
ここで、微小要素ΔWの質量mは、m≒0であるために、mgnは小さく、また遠心力Cおよびその分力Cn、についても小さくし、前記の式(1)を満足させることが可能である。
また、微小要素ΔWが上昇するためには、次の式(2)の関係があればよい。
t>mgt 式(2)
ここで、mgnは小さい一方、Ctについては、たとえばロータ2の回転速度を高めて、角速度ωを大きくすることによりその値を増大させることができる。したがって、前記の式(2)についても満足させることができる。
このように、前記した式(1),(2)を満足させるようにロータ2を高速回転させれば、貯液部14の水を軸状部21の外周面に沿って上昇させるポンピング作用を得ることができる。
【0031】
一方、排水用の孔部16の内周面と軸状部21の外周面との間、およびその近傍に位置する微小要素ΔW’についても、前記したのと同様な力が作用している。このため、前記した分力Ctと同様な分力Ct’が微小要素ΔW’を上昇させる力として働く。この作用により、ロータ2の回転時には、貯液部14の水が孔部16の隙間からその下方に漏出しないようにすることができる。もちろん、ロータ2の回転を停止させると、貯液部14の水は孔部16から下方に漏出する。
【0032】
図2および図6に示すように、ケース1には、このケース1内にその下方から外部空気を流入させるための複数の空気流入口15も設けられている。ロータ2が高速回転する際には、その周囲の空気が乱流となり、この乱流がミストの発生動作を乱し、ミストの粒径にばらつきを生じさせる要因となる。これに対し、複数の空気流入口15からケース1内に外部空気を供給すれば、前記した乱流を抑制することが可能である。ケース1の底部またはその近傍には、上向きに起立した筒状部15aが設けられており、この内部が空気流入口15である。このような構成によれば、空気流入口15の上部を貯液部14の水面レベルよりも高くし、貯液部14の水が空気流入口15からケース1の下方に流れ落ちないようにすることができる。
【0033】
モータMは、パネル41上に取り付けられている。好ましくは、このモータMの取り付け箇所には、外部空気をケース1内にその上方側から流入させることが可能な空気流通路33が設けられている。この空気流通部33は、たとえばモータMを支持する板部31とパネル41との間にスペーサ32を介在させて形成された隙間33aと、パネル41に形成され、かつ隙間33aを通過してきた外部空気をケース1内に流入させる開口部33bとを含んで構成されている。この空気流通部33を介してロータ2の上方領域にも外部空気が供給されるために、ロータ2の周囲に乱流が生じることは、より抑制される。
【0034】
図1に示すように、ミスト発生装置MGは、操作用リモコン6、および制御部7も備えている。ただし、本実施形態においては、これら操作リモコン6および制御部7は、浴室空調装置A用のものと兼用されている。操作リモコン6は、たとえば浴室空調装置Aの赤外線受光部(図示略)に対して赤外線送信を行なうことにより制御部7へのデータ送信が可能であり、ミスト発生装置MGの運転のオン・オフや、発生するミストの粗さの指定などの指令操作が可能である。制御部7は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されており、ミスト発生装置MGや浴室空調装置Aの各部の動作制御を実行する。
【0035】
次に、浴室空調装置Aの構成を説明する。
【0036】
図1に示すように、この浴室空調装置Aは、ケース4、ファン50、および空気調整手段としてのエア加熱用の熱交換器51を備えている。ケース4は、ファン50および熱交換器51を内部に収容し、かつ浴室の天井板80の上面側に設置される下部開口状のケース本体部40と、これとは別体のパネル41とを有している。パネル41は、天井板80に形成された開口部80aおよびケース本体部40の下部開口部を塞ぐように、天井板80に取り付けられている。このパネル41には、給気口41aと、送風口41bを有するルーバ42とが設けられている。
【0037】
この浴室空調装置Aは、ファン50が駆動すると、給気口41aからケース4内に空気が吸入され、この空気が熱交換器51により加熱されるようにされている。熱交換器51は、たとえば内部に加熱湯水が流通可能とされたフィン付の複数のチューブを用いて構成されており、ファン50による吸入空気はこれら複数のチューブ間を通過する際に加熱される。この加熱された空気は、ルーバ42までガイドされてその送風口41bから吹き出される。ミスト発生装置MGのケース1は、ルーバ42の側方に位置している。
【0038】
次に、ミスト発生装置MGを備えた浴室空調装置Aの作用について説明する。
【0039】
ミスト発生装置MGにおいては、既述したとおり、回転板20A〜20Cのそれぞれから飛散して発生するミストの粗さは、互いに相違しており、3段階の粗さのミストを発生させることが可能である。その一方、開閉バルブVa〜Vcを動作させることにより、回転板20A〜20Cのそれぞれに対する給水を個別に制御可能である。このため、開閉バルブVa〜Vcのいずれを開状態とするかによって、3段階の粗さのミストのうち、ユーザが要望するミストを的確に選択することができる。もちろん、開閉バルブVa〜Vcのうちの2つ、あるいは全部を開状態とすることによって、粗さが相違する複数種類のミストが混合した状態のミストを発生させることもできる。この場合には、ミストの発生量も多くすることができる。操作リモコン6は、前記したようなミストの粗さの選択操作をユーザが行なうことが可能な構成とされており、この操作リモコン6の操作に対応して、制御部7は開閉バルブVa〜Vcの動作制御を行なうようになっている。
【0040】
ミストの粗さの相違は、既述したように、回転板20A〜20Cの直径の相違、回転板20A〜20Cのそれぞれから飛散した水が衝突壁部12に衝突する場合の衝突面積の相違、および回転板20A〜20Cのそれぞれから衝突壁部12の3つの領域12a〜12cまでの距離Sa〜Scの相違に起因している。このため、回転板20A〜20Cの回転速度を変化させるだけの場合よりもミストの粗さに大きな差を生じさせることが可能となる。たとえば、回転板20Aを利用して発生されるミストについては、粒子径が非常に小さいミストにすることができる一方、回転板20Cを利用して発生されるミストについては、いわゆるスプラッシュミスト(水しぶき状のミストであり、このような水しぶき状のものも本発明でいうミストに含まれる)とすることも可能である。回転板20Bを利用して発生されるミストは、それらの中間粗さのミストとすることができる。もちろん、回転板20A〜20Cの回転速度を変更する制御を併用することもできる。
【0041】
ロータ2から衝突壁部12に向けて飛散した水のなかには、ケース1の外部に噴霧されないものもある。このような水は、ケース1の内壁面を伝って貯液部14に戻される。すると、この水はロータ2の軸状部21によって回転板20Aの下面に汲み上げられてから、ミスト発生に再利用されることとなる。したがって、開閉バルブVaが閉じられて貯液部14への給水が停止されている場合であっても、たとえば開閉バルブVb,Vcが開いて回転板20B,20Cを利用したミスト発生が行なわれて、その一部の水が貯液部14に回収されれば、回転板20Aを利用したミスト発生が同時に行なわれることとなる。このように水の回収および再利用を図ると、ケース1の外部に噴出されなかった水の処理に苦慮するといった不具合が適切に回避される。また、水の利用率を高くし、その消費量を少なくする効果も得られる。
【0042】
ミストの噴出時において、たとえば図1に示すように、浴室空調装置Aの送風口41bからケース1の下方または下方近傍に向けて加熱空気を吹き出させると、ケース1の周囲に噴出したミストがこの加熱空気によって加熱されるとともに、この加熱空気の流れに乗って浴室内の一定領域に送られる。したがって、ユーザは、暖かいミストを集中して浴びることができる。熱交換器51の加熱動作を停止させておけば、非加熱の冷たいミストを浴びることもでき、夏季などにおいて清涼感を得るのに好ましいものとなる。また、これらとは異なり、浴室空調装置Aの運転を停止させて、送風口41bからの送風が停止された状態でミスト発生装置MGを単独で使用することも可能である。この場合には、ケース1の周囲に噴出されたミストが自然落下するだけであるが、このような態様でのミスト供給も趣向に富んだものとなる。
【0043】
ケース1の周囲に噴出されたミストの一部がケース1の周壁部外面に接触するなどして、この部分に水滴が発生する場合がある。このような現象を生じると、この水の多くは、ケース1の外面を伝って貯液部14の底部下面まで流れ、排水用の孔部16の形成箇所に到達する。すると、この水は、ロータ2の軸状部21の回転により生じているポンピング作用によって孔部16に吸い込まれ、貯液部14に流入する。したがって、ケース1の外面から多くの水滴が下方に滴下しないようにすることも可能である。
【0044】
ミスト発生装置MGの運転を停止させる場合、ロータ2の回転を直ちに停止させることによって、貯液部14の水を孔部16から下方に排出させることが可能である。ただし、これでは、入浴者の身体に前記の水が掛かる虞がある。これを回避する手段として、操作リモコン6によって運転オフの操作がなされたときには、開閉バルブVa〜Vcの全てを閉状態してケース1内への給水を停止させるものの、モータMについてはその後も暫くの間は継続して駆動させればよい。このことにより、貯液部14の水がミスト化して消費される動作が継続されることとなり、貯液部14の水の略全量をケース1の外部にミスト化して排出することができる。また、貯液部14への給水を停止させた際には、浴室空調装置Aの送風口41bからケース1に対して温風を送風させると、このケース1を短時間で適切に乾燥させることができる。ミスト発生装置MGは、浴室の上部に配置されているために、その運転停止時において、たとえばシャワー水が掛けられ、この水がケース1内に進入する場合がある。これに対し、このケース1の底部には、孔部16が設けられ、その内周面とロータ2の軸状部21との間には水が容易に通過可能な隙間が形成されている。したがって、この部分から前記の水を適切に排出することができる。その結果、運転停止時に、ケース1内に水が溜まったままになることが好適に抑制され、ケース1内を衛生に優れたものとすることもできる。
【0045】
図8〜図10は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0046】
図8に示す実施形態においては、ロータ2Aに、直径が相違する2つの回転板20A,20Dが具備されている。これに対応し、給水管としては、開閉バルブVa,Vdを備えた2つの給水管5a,5dのみが設けられている。
【0047】
本実施形態によれば、回転板20Aを利用して発生されるミストと、回転板20Dを利用して発生されるミストとは、粗さが相違する。このため、本実施形態においても、粗さが相違するミストを選択的に発生させることができ、本発明の意図する効果が得られる。なお、図8においては、衝突壁部12のうち、2つの回転板20A,20Dのそれぞれから飛散してくる水が衝突する部分が同一の幅Ldに揃えられているが、これらの幅を互いに相違させた構成とすることもできる。本実施形態に示すように、本発明においては、ロータの回転板は、少なくとも2つあればよい。
【0048】
図9に示す実施形態においては、ロータ2Bが2つの回転板20A,20Eを有しており、回転板20Aの周囲には、この回転板20Aから飛散してくる水を衝突させるための複数の衝突壁部12が設けられている。この衝突壁部12は、たとえば図3に示したものと同様である。これに対し、回転板20Eの周囲には、複数の壁部17が設けられている。これら複数の壁部17は、ケース1の上部に対し、下部や中間部を連結支持させるための連結部としての役割を果たす部分である。図9(b)に示すように、壁部17の数は少なく、かつその幅も小さくされており、回転板20Eの周囲は大きく開口している。
【0049】
本実施形態によれば、回転板20Eからその周囲に飛散した水の大部分は、壁部17に衝突することなく、ケース1の外周囲に噴出する。このような動作で水を噴出させる場合には、回転板20Aから複数の衝突壁部12に向けて水を衝突させる場合とは異なり、回転板20Eの回転速度をかなりの高速にしない限りきめ細かいミストを発生させることは難しいものの、回転板20Eの表面上に膜状に進行した水をその外周から高速で水を飛散させることによって、そのミスト化を適切に図ることが可能である。本実施形態から理解されるように、本発明においては、衝突壁部に水を衝突させる場合とは異なる粗さのミストを発生させるための手段として、衝突壁部を用いない構成、あるいは衝突壁部の数を少なくする構成を採用することもできる。
【0050】
図10に示す実施形態においては、ロータ2Cの軸状部21が孔部210を有するパイプ状である。本実施形態においては、ロータ2Cが回転すると、軸状部21の孔部210内に位置する水が遠心力の作用によって孔部210の内周面に沿った膜状となって上昇し、回転板20Aの上面に到達する。次いで、この水は、回転板20Aの上面において遠心力により加速されて水膜状となり、回転板20Aの周囲に向けて飛散して衝突壁部12に衝突する。したがって、このような構成によっても、貯液部14の水を汲み上げて回転板20Aに供給することができる。
【0051】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。本発明に係るミスト発生装置、およびこれを備えた浴室空調装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0052】
上述した実施形態においては、ミストの粗さを相違させるための手段として、回転板の直径の相違、衝突壁部の水が衝突する部分の面積の相違、回転板の外周から衝突壁部までの距離の相違、衝突壁部の有無またはその数の相違が挙げられており、このような手段を単独で、または組み合わせて採用すれば、ミストの粗さを大きく相違させることが簡易な手段によって実現される。ただし、本発明においては、前記以外の項目を相違させてミストの粗さを相違させることも可能である。たとえば、2つの回転板の上面に液体を供給し、遠心力によって回転板の周囲に飛散させる構成において、一方の回転板に対してはその中心寄りに液体を供給し、かつ他方の回転板に対しては前記一方の回転板よりも外周寄りに液体を供給するといった手段を採用し、液体が回転板から飛散する速度を相違させることもできる。また、本発明においては、既に述べたとおり、複数の回転板により発生されるミストの全てが、粗さの相違するものでなくてもよい。たとえば、3つの回転板が設けられている場合、2つの回転板によって発生されるミストの粗さが互いに同一とされ、これらが他の1つの回転板によって発生されるミストの粗さと相違した構成とすることもできる。
【0053】
本発明でいう液体供給手段のバルブとしては、複数の給水管のそれぞれに設けられる複数の開閉バルブに代えて、たとえば方向切り換えバルブを使用し、このバルブに複数の給水管の各一端を纏めて接続した構成とすることもできる。このような構成によれば、バルブの使用個数を最小数にすることができる。
【0054】
本発明に係るミスト発生装置は、図1に示したような天井取り付けタイプの浴室空調装置に代えて、たとえば浴室の側壁に取り付けられるいわゆる壁掛けタイプの浴室空調装置に取り付けて使用することも可能である。また、これとは異なり、ミスト発生装置を浴室の天井部などに直接取り付けて、浴室空調装置の有無には関係なく、それ単独で使用することもできる。本発明に係るミスト発生装置は、浴室(シャワールームを含む)でのミスト発生に好適であるが、これ以外の箇所に設置して使用することも可能である。ミストの使用目的も問わない。ミスト化される液体としても、水以外の液体を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るミスト発生装置を備えた浴室空調装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1に示されたミスト発生装置の要部断面図である。
【図3】図2のIII−III要部平面断面図である。
【図4】図2のIV−IV要部平面断面図である。
【図5】図3のV-V断面図である。
【図6】図2に示されたミスト発生装置で用いられているケースの平面図である。
【図7】図2に示されたミスト発生装置において水が軸状部によって汲み上げられる作用の原理説明図である。
【図8】本発明に係るミスト発生装置の他の例を示す要部断面図である。
【図9】(a)は、本発明に係るミスト発生装置の他の例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)のIX−IX平面断面図である。
【図10】本発明に係るミスト発生装置の他の例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0056】
A 浴室空調装置
MG ミスト発生装置
Va〜Ve 開閉バルブ
1 ケース(ミスト発生装置の)
2 ロータ
4 ケース(浴室空調装置の)
5a〜5e 給水管(液体供給手段)
12 衝突壁部
13 ミスト噴出口
14 貯液部
20A〜20E 回転板
21 軸状部
50 ファン
51 熱交換器(空気調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転板と、これら複数の回転板にミスト発生用の液体を供給するための液体供給手段と、を備えており、
前記複数の回転板が回転し、かつそれらに液体が供給されたときには、この液体が前記複数の回転板の周囲に飛散してミスト化されるように構成されている、ミスト発生装置であって、
前記複数の回転板のそれぞれから液体が飛散して発生するミストの粗さは相違するように構成されているとともに、
前記液体供給手段は、前記複数の回転板のそれぞれに対する液体供給を個別に選択して行なうことを可能とするバルブを備えていることを特徴とする、ミスト発生装置。
【請求項2】
前記複数の回転板として、直径が互いに相違する少なくとも2つの回転板を備えている、請求項1に記載のミスト発生装置。
【請求項3】
前記複数の回転板の周囲には、これら複数の回転板から飛散してきた液体を衝突させてミスト化を図るための複数の衝突壁部が設けられており、
前記複数の回転板のそれぞれから前記複数の衝突壁部までの距離が相違する構成、前記複数の衝突壁部のそれぞれの液体衝突面積が相違する構成、または前記距離および前記液体衝突面積がともに相違する構成とされている、請求項1または2に記載のミスト発生装置。
【請求項4】
前記複数の回転板として、液体を衝突させてミスト化を図るための衝突壁部が周囲に設けられている第1の回転板と、そのような衝突壁部が周囲に設けられておらず、または衝突壁部の数が前記第1の回転板よりも少なくされた第2の回転板とを備えている、請求項1ないし3のいずれかに記載のミスト発生装置。
【請求項5】
前記複数の回転板を内部に収容するケースを備えており、かつこのケースの周壁部にはミスト噴出口が設けられているとともに、このケースの底部は貯液部とされており、
前記複数の回転板のうち、少なくとも1つの回転板は、前記貯液部に一部分が位置する軸状部を有し、かつ回転時には前記貯液部に存在する液体が前記軸状部を介してこの回転板まで汲み上げられることによってこの回転板の周囲に飛散するように構成されており、
前記複数の回転板の周囲に飛散した液体のうち、前記ケースの外部に噴出されなかった液体は、前記貯液部に回収されてから前記軸状部を備えた回転板によって再度のミスト化が図られるように構成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載のミスト発生装置。
【請求項6】
浴室の上部に設置されて、前記浴室の空調を行なうのに用いられる浴室空調装置であって、
請求項1ないし5のいずれかに記載のミスト発生装置を備えていることを特徴とする、ミスト発生装置を備えた浴室空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−97736(P2009−97736A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267266(P2007−267266)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】