説明

ミネラル乳清製品を製造するための方法

以下の工程を含む、乳汁または乳清の供給流に由来する商業用ミネラル乳清製品の製造のためのプロセスが提供される:好ましくは膜分離またはイオン交換のいずれかにより実施されて高カリウム流および脱塩流を生成する、供給流の第一の脱塩;主にリン酸カルシウム複合体の沈殿およびその後の分離、またはイオン交換によるカルシウム除去のいずれかによる、高カリウム流の第二の脱塩;約20〜60重量%の総固形分を有する濃縮物を得るための高カリウム流の濃縮;ならびに保存と流通のための所望の形態への、上記濃縮高カリウム流のさらなるプロセッシング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、乳製品由来材料の商業用加工に関する。特に、市販の乳清由来の比較的カリウム含有量の高い製品の製造のための改良されたプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
先進国において、多くの市販の調理済み食品におけるナトリウムとカリウムのバランスは、栄養士が推奨するものよりも高い傾向にある。結果として、望ましいナトリウム対カリウムのプロフィールにより近づける食品を調製することが可能であることが望ましい。
【0003】
この問題に取り組むための一つのアプローチは、ミネラルに富む材料を乳製品から抽出することである。これはValio Ltdに対して発行された米国特許第6,399,140号(「Valio特許」)に記載される。Valio特許は、ナノ濾過および濃縮プロセスを介した、乳清のミネラルに富む抽出物の製造を記載する。
【0004】
しかしながら、Valio特許に記載されるプロセスは、許容できない程高いレベルの処理装置汚染を引き起こす傾向がある。特に、乾燥前に乳汁塩流(milk salt stream)を濃縮するのに用いる装置は、この先行技術の方法を実行する場合、許容できない程汚染される可能性がある。
【0005】
したがって、汚染を低減し、それによって商業的に実現可能なプロセスの効率および可能性を改善するために、本発明は、先行技術に関連した汚染問題を克服すると同時にそれによって製造される高カリウム製品の香味プロフィールまたは機能特性に悪影響を及ぼすことのない、乳製品を主材料とする供給原料由来の乳汁塩製品の製造のためのプロセスを提供することを目的とする。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明の一つの局面に従って、以下の工程を含む、乳汁または乳清の供給流(feed stream)に由来する商業用ミネラル乳清製品の製造のためのプロセスが提供される:
好ましくは膜分離またはイオン交換のいずれかにより実施されて高カリウム流および脱塩流を生成する、供給流の第一の脱塩;
主にリン酸カルシウム複合体の沈殿およびその後の分離、またはイオン交換によるカルシウム除去のいずれかによる、高カリウム流の第二の脱塩;
約20〜60重量%の総固形分を有する濃縮物を得るための高カリウム流の濃縮;ならびに
保存と流通のための所望の形態への、上記濃縮高カリウム流のさらなる加工。
【0007】
上記のさらなる加工は、好ましくは、濃縮物、ペースト、または粉末を生成するために水分の除去を含む。
【0008】
先行技術のプロセスに関連する汚染問題に上記のリン酸カルシウム複合体が主として関与することが、本発明者らによって突き止められた。したがって本発明の重要な利点は、第二の脱塩段階が、これらの汚染問題に寄与するミネラルを除去することである。さらに、このプロセスの工程が、それによって製造されるミネラル乳清製品の香味プロフィールまたは機能的性能に悪影響を及ぼさす、特に最終産物のカルシウム含有量が乾燥固体基準で0.5質量%未満である場合、実際に結果として得られるミネラル乳清製品の溶解性を有意に改善することが見出された。半透明性が食品の望ましい特性である食品中の成分として乳清製品が用いられる場合、これは特に有用である。
【0009】
好ましくは、50℃〜99℃の沈殿温度まで高カリウム流を加熱し、最小限の保持時間、この温度範囲内に高カリウム流を保持することによって、リン酸カルシウム複合体の沈殿を達成する。
【0010】
この沈殿プロセスは、許容可能な香味プロフィールを有し、かつミネラル乳清製品の機能的性能に悪影響を及ぼさないミネラル乳清製品の提供に関して、特に有利な結果を提供することが見出された。
【0011】
特に、沈殿温度は約80℃が好ましい。
【0012】
有利には、沈殿温度での高カリウム流の最小限の保持時間は、2〜60分であり、最も好ましくは約20分である。
【0013】
さらに、リン酸カルシウム複合体の沈殿は、高カリウム流のpHをpH 6.5〜9.0の範囲、およびより好ましくは7.0〜7.5の範囲内まで増加させることによってさらに亢進することができる。それによって乳製品ではない添加物(例えば水酸化カリウム)が含まれることから、結果として得られるミネラル乳清製品が純粋であることが重要ではない場合、このアプローチは適切である。
【0014】
本発明の別の局面において、上記のようなプロセスを介して製造されるミネラル乳清製品が提供される。
【0015】
ここで、特定の非制限的な一例として、本発明によるプロセスおよび本発明によるミネラル乳清製品を記載する。
【0016】
好ましい態様の詳細な説明
以下は、澄んだチーズ乳清を加工してミネラル乳清粉末を形成する本発明によるプロセスの例としての記載である。以下の記載において、部分およびパーセンテージは、別に指定しない限り質量によるものとする。
【0017】
0.82%タンパク質(TN×6.38に基づく)、0.08%脂質、および5.14%無脂固形分を含む73,446 kgの澄んだチーズ乳清の供給流をナノ濾過し(EPIL plant;DOW Filmtec NF45 membranes;MWCO 150-300 Daltons)、0.55%全固形分、0.10%タンパク質(TN×6.38)、および0.30%ミネラルを含む52,999 kgのミネラルに富む透過物(permeate)の流れを生成した。
【0018】
または、膜脱塩プロセスの代わりに、もしくはそれと組み合わせて、イオン交換プロセスを用いることができる。
【0019】
この透過物を、逆浸透プラント(EPIL plant;DOW Filmtec FT30 membranes)へ移し、そこで約2.8%の全固形分へ濃縮した。
【0020】
濃縮された透過物を次いで、間接加熱と直接水蒸気圧入の組み合わせにより80℃まで加熱し20分間保持した。これは透過物からリン酸カルシウム複合体の沈殿を生じさせた。次いでリン酸カルシウムを遠心分離機(Westfalia Separator、モデルMSD-60)によって除去し、2.7%全固形分、0.45%タンパク質(TN×6.38)、および1.45%ミネラルを含む9,810 kgの供給流が残った。
【0021】
または、膜濾過を用いてリン酸カルシウムを供給流から除去することも可能であった。
【0022】
次いで供給流を、三重効用流下膜式蒸発器(Tetra Pak EC 500)において、60%全固形分まで濃縮した。この透過物の濃縮後、蒸発器を開けると、清浄で汚染のないことが見出された。
【0023】
先行技術の方法が、結果として効率の低下と清浄のための休止時間を伴い、蒸発器の非常に重大な汚染をもたらすと予想されたことから、これは特に重大な結果である。
【0024】
または、さらに膜処理または膜処理と蒸発器の組み合わせを用いて、望ましい固形分を達成することも可能である。
【0025】
次いで濃縮物を噴霧乾燥して251 kgのミネラル乳清粉末を生成した。ミネラル乳清粉末は、4.6%水分、15.9%タンパク質(TN×6.38)、および0.3%のみがカルシウムである51.2%灰分を含んだ。粉末を冷却し、食品における成分としての使用のために包装した。
【0026】
様々な食品関連の適用における得られた産物の使用は、それが許容可能な香味プロフィールを有することを明らかにした。この乳清産物は特に、低塩食品における成分としての使用に適している。
【0027】
蒸発器前の(ex-evaporator)濃縮産物は、保存と輸送のために乾燥させて粉末にする必要がないことは、当業者に理解されるであろう。濃縮物をそのままで包装するか、または本発明から逸脱しないようそれをさらに濃縮してペーストにすることが等しく可能である。
【0028】
上記は、本発明の方法がどのように実施され得るかの一例にすぎないことが、同様に当業者に理解されるであろう。細部は上記から逸脱するが本発明の精神および範囲内にある方法を使用してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、乳汁または乳清の供給流(feed stream)に由来する商業用ミネラル乳清製品の製造のための方法:
好ましくは膜分離またはイオン交換のいずれかにより実施されて高カリウム流および脱塩流を生成する、供給流の第一の脱塩;
主にリン酸カルシウム複合体の沈殿およびその後の分離、またはイオン交換によるカルシウム除去のいずれかによる、高カリウム流の第二の脱塩;
約20〜60重量%の総固形分を有する濃縮物を得るための高カリウム流の濃縮;ならびに
保存と流通のための所望の形態への、該濃縮高カリウム流のさらなる加工。
【請求項2】
さらなる加工が、濃縮物、ペースト、または粉末を生成するために水分の除去を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
50℃〜99℃の沈殿温度まで高カリウム流を加熱し、最小限の保持時間、この温度範囲内に高カリウム流を維持することによって、リン酸カルシウム複合体の沈殿が達成される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
約80℃の沈殿温度まで高カリウム流を加熱し、最小限の保持時間、この温度に高カリウム流を維持することによって、リン酸カルシウム複合体の沈殿が達成される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
最小限の保持時間が2分〜30分である、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
最小限の保持時間が約20分である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
結果として得られるミネラル乳清製品が乳製品ではない添加物を含むことが許容可能である場合に、リン酸カルシウム複合体の沈殿を、高カリウム流のpHをpH 6.5〜9.0の範囲、およびより好ましくは7.0〜7.5の範囲内まで増加させることによって亢進することができる、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記請求項のいずれか一項記載の方法によって製造される、商業用ミネラル乳清製品。
【請求項9】
実施例を参照して実質的に本明細書に記載されるように、乳汁または乳清の供給流に由来する商業用ミネラル乳清製品を製造するための方法。

【公表番号】特表2008−543318(P2008−543318A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517281(P2008−517281)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000886
【国際公開番号】WO2006/135983
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507125398)マレー ゴールバーン コーオペラティブ コー リミテッド (6)
【Fターム(参考)】