説明

ミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材

【課題】 生産性に優れるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材、および該樹脂基材から形成されるミラブルウレタンゴムからなる、成形性、止水性に優れる水膨張性シール材を提供する。
【解決手段】 60〜110℃の融点および1〜30g/10分のメルトフローインデックスを有する熱可塑性樹脂の袋(B)と、該(B)中で、分子側鎖に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するポリオール(a1)を含有し、さらに(a1)および/または(a1)以外の構成ポリオール中にオキシエチレン基を有してなるポリオール成分(a)とイソシアネート成分(b)を反応させてなるポリウレタン樹脂(A)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材に関する。さらに詳しくは、加硫剤を加えて架橋、硬化させたミラブルウレタンゴムからなる水膨張性シール材を製造することができるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分子中にオキシエチレン基とエチレン性不飽和結合を持つポリウレタン樹脂をゴムに添加して加硫成形を行いミラブルウレタンゴムとして、水膨張性シール材に利用することが知られている(例えば、特許文献1参照)。該ポリウレタン樹脂は、分子中にオキシエチレン基とエチレン性不飽和結合を持つポリアルキレンポリオールを含有するポリオール成分とポリイソシアネートからなるイソシアネート成分とを反応させて得られる。該ポリウレタン樹脂は、無溶媒下で行われる塊状重合法で製造することができ、該塊状重合法としては、ポリオール成分とイソシアネート成分の混合液を容器中で重合させるバッチ法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−119972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリウレタン樹脂を塊状重合法を用いて製造した場合、バッチ法では重合させる容器への離型剤塗布作業および得られるポリウレタン樹脂の容器からの取り出し作業に少なからず時間を要するという問題があった。
本発明の目的は、生産性に優れるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材、および該樹脂基材から形成されるミラブルウレタンゴムからなる、成形性、止水性に優れる水膨張性シール材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、60〜110℃の融点および1〜30g/10分のメルトフローインデックスを有する熱可塑性樹脂の袋(B)と、該(B)中で、分子側鎖に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するポリオール(a1)を含有し、さらに(a1)および/または(a1)以外の構成ポリオール中にオキシエチレン基を有してなるポリオール成分(a)とイソシアネート成分(b)を反応させてなるポリウレタン樹脂(A)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材は、下記の効果を奏する。
(1)該樹脂基材は生産性に優れる。
(2)該樹脂基材から形成されるミラブルウレタンゴムからなる水膨張性シール材は成形性に優れ、かつ良好な止水性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明におけるポリオール成分(a)には、分子側鎖に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するポリオール(a1)が含まれる。該(a1)の官能基数(OH基の数)は、2〜3またはそれ以上、好ましくは2〜3である。
(a1)における分子側鎖のエチレン性不飽和基の数は、少なくとも1個、後述する水膨張性シール材の機械強度および飽和体積水膨張倍率の観点から好ましくは1〜10個である。該エチレン性不飽和基としては、アリル基および/または(メタ)アクリロイル基
が挙げられ、耐水性の観点から好ましいのはアリル基である。
【0008】
(a1)としては、(a11)エチレン性不飽和基含有低分子ポリオール[炭素数(以下Cと略記)6〜20]、(a12)該(a11)のアルキレンオキシド(以下AOと略記)[またはAOとアリルグリシジルエーテル(以下AGEと略記)]付加物、(a13)2個以上の活性水素原子を含有する化合物のAGE(またはAGEとAO)付加物、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a1)のうち、後述するポリウレタン樹脂(A)の加硫剤との反応性の観点から好ましいのは(a11)および/または(a13)である。
【0009】
上記エチレン性不飽和基含有低分子ポリオール(a11)としては、C6〜20の、(ポリ)アリルエーテル[グリセリン(以下GRと略記)モノアリルエーテル、トリメチロールプロパン(以下TMPと略記)モノアリルエーテル、ペンタエリスリトール(以下PEと略記)モノアリルエーテル、PEジアリルエーテル等]、(ポリ)(メタ)アクリレート[GRモノ(メタ)アクリレート、TMPモノ(メタ)アクリレート、PEジ(メタ)アクリレート等]が挙げられる。これらのうち耐水性の観点から好ましいのはGR−およびTMPモノアリルエーテルである。
【0010】
上記(a12)を構成するAOとしては、C2〜12、例えばエチレンオキシド(以下EOと略記)、1,2−プロピレンオキシド(以下POと略記)、1,2−、1,3−および2,3−ブチレンオキシド(以下BOと略記)、テトラヒドロフラン(THF)、置換AO[C5〜12のα−オレフィンのエポキシ化物、スチレンオキシドおよびエピハロヒドリン(エピクロルヒドリンおよびエピブロモヒドリン等]等が挙げられる。
【0011】
上記(a13)を構成する2個以上の活性水素原子を含有する化合物としては、C2以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]400以下の、下記(i)低分子ポリオール、(ii)多価フェノール、(iii)低分子アミン、並びにそれらのAO(上記のもの)付加物等が挙げられる。
【0012】
(i)低分子ポリオール
C2〜20またはそれ以上の2価アルコール、例えばC2〜12の脂肪族2価アルコール[(ジ)アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−、2,3−、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよび3−メチルペンタンジオール(以下それぞれEG、DEG、PG、DPG、BD、HD、NPGおよびMPDと略記)、ドデカンジオール等]、C6〜10の脂環含有2価アルコール[1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等]、C8〜20の芳香脂肪族2価アルコール[キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等];3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール、例えば(シクロ)アルカンポリオールおよびそれらの分子内もしくは分子間脱水物[GR、TMP、PE、ソルビトール(以下SOと略記)およびジペンタエリスリトール(以下DPEと略記)、1,2,6−ヘキサントリオール、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ジGRその他のポリGR等]、糖類およびその誘導体[例えばショ糖、グルコース、フラクトース、マンノース、ラクトース、およびグリコシド(メチルグルコシド等)]等。
【0013】
(ii)多価フェノール
C6〜18の2価フェノール、例えば単環2価フェノール(ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ウルシオール等)、ビスフェノール(ビスフェノールA、−F、−
C、−B、−ADおよび−S、ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン等)、および縮合多環2価フェノール[ジヒドロキシナフタレン(1,5−ジヒドロキシナフタレン等)、ビナフトール等];並びに3価〜8価またはそれ以上の多価フェノール、例えば単環多価フェノール(ピロガロール、フロログルシノール、および1価もしくは2価フェノール(フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール等)のアルデヒドもしくはケトン(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、グリオキザール、アセトン)低縮合物(フェノールもしくはクレゾールノボラック樹脂、レゾールの中間体、フェノールとグリオキザールもしくはグルタールアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノール、およびレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノール)等。
【0014】
(iii)低分子アミン
アンモニア;C2〜20の脂肪族モノ−およびポリアミン[C2〜20のアルカノールアミン(モノ−、ジ−およびトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン等)、C1〜20のアルキルアミン(n−ブチルアミン、オクチルアミン等)、C2〜6のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)、C4〜20のポリアルキレンポリアミン(アルキレン基のCが2〜6のジアルキレントリアミン〜ヘキサアルキレンヘプタミン、例えば、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミン)];C6〜20の芳香族モノ−およびポリアミン(アニリン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、メチレンジアニリン、ジフェニルエーテルジアミン等)、C4〜20の脂環含有モノ−およびポリアミン(シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン等)、C4〜20の複素環含有アミン(ピペラジン、アミノエチルピペラジン等)等。
【0015】
(a12)および(a13)の分子量は、ポリウレタン樹脂(A)の耐水性およびイソシアネート成分(b)との反応性の観点から好ましくはMn300〜6,000、さらに好ましくはMn500〜5,000である。
【0016】
分子側鎖に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するポリオール(a1)の不飽和基濃度は、後述する水膨張性シール材の機械強度の観点から好ましくは1×10-4〜8×10-3当量/g、さらに好ましくは2×10-4〜6×10-3当量/gである。
【0017】
本発明におけるポリオール成分(a)には、さらに上記(a1)以外の高分子ポリオールおよび低分子ポリオールを含有させることができる。
高分子ポリオールとしては、Mn1,000〜8,000、例えば前記(i)低分子ポリオール、(ii)多価フェノールおよび(iii)低分子アミンの、各AO(前記のもの)付加物等のポリオールが挙げられる。これらの高分子ポリオールは、単独で、または併用して使用することができる。
【0018】
低分子ポリオールとしては、前記(i)および、前記(i)、(ii)および(iii)の各AO(前記のもの)の低付加物等のポリオール(Mn1,000未満)が挙げられる。これらの低分子ポリオールは、単独で、または併用して使用することができる。
【0019】
ポリオール成分(a)の重量に基づく(a1)の割合は、後述する水膨張性シール材の機械強度および水膨張性シール材の飽和体積水膨張倍率の観点から好ましくは5〜95%、さらに好ましくは10〜90%である。
【0020】
ポリオール成分(a)は、さらに(a1)および/または(a1)以外の構成ポリオール中にオキシエチレン基(以下OE基と略記)を有してなる。該OE基は、(a1)および/または(a1)以外の構成ポリオール(高分子ポリオールおよび/または低分子ポリオール)のいずれに由来してもよいが、後述する水膨張性シール材製造時の押出成形性の観点から、(a12)、(a13)および/または(a1)以外の高分子ポリオールに由来するのが好ましい。
(a)を構成するポリオール分子中における該OE基の含有形態は、ブロック状および/またはランダム状のいずれでもよいが、後述する水膨張性シール材の飽和体積水膨張倍率の観点から好ましいのはブロック状である。
【0021】
(a)の重量に基づく上記OE基の含有量は、後述する水膨張性シール材の飽和体積水膨張倍率および水膨張性シール材の機械強度の観点から好ましくは10〜90%、さらに好ましくは20〜80%である。
【0022】
イソシアネート成分(b)には、以下のポリ(n=2〜3、好ましくは2)イソシアネートが含まれる。
(b1)芳香族ポリイソシアネート
C(NCO基中の炭素を除く、以下同様。)6〜20、例えばトリレンジイソシアネート(ジイソシアネートは以下においてDIと略記)(TDI)、4,4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンDI(MDI)、ナフチレンDI(NDI);
(b2)芳香脂肪族ポリイソシアネート
C8〜15、例えばジエチルベンゼンDI、m−および/またはp−キシリレンDI(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI);
(b3)脂肪族ポリイソシアネート
C2〜18、例えばエチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ドデカメチレンDI、2,2,4−トリメチルヘキサンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート;
(b4)脂環式ポリイソシアネート
C4〜15、例えばイソホロンDI(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−DI(水添MDI)、シクロヘキサンDI、メチルシクロヘキサンDI(水添TDI)、ビス(2−イソシアネートエチル)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート;
(b5)上記(b1)〜(b4)のポリイソシアネートの変性(カーボジイミド変性、ウレトジオン変性、ウレトイミン変性、ウレア変性、ビューレット変性、イソシアヌレート変性等)物。
これらのうち耐水性の観点から好ましいのは、(b4)、さらに好ましいのは脂環式DI、とくに好ましいのはIPDIおよび水添MDIである。
【0023】
ポリウレタン樹脂(A)の製造に際して、イソシアネート成分(b)とポリオール成分(a)との反応割合[NCO/OH当量比]は、後述する水膨張性シール材の機械強度および水膨張性シール材製造時の押出成形性の観点から好ましくは0.8/1〜1.0/1、さらに好ましくは0.9/1〜0.98/1である。該反応割合は、最終的にポリウレタン樹脂(A)を得るための(a)、(b)各成分のトータルの反応割合であり、後述する製造方法(ワンショット法またはプレポリマー法)の違いで通常変わることはない。
【0024】
本発明におけるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材は、60〜110(好ましくは65〜105)℃の融点および1〜30(好ましくは1.5〜20)g/10分のメルトフローインデックス(以下MFIと略記)を有する熱可塑性樹脂の袋(B)と、該(B)中で、上記ポリオール成分(a)とイソシアネート成分(b)を反応させて得られるポリウレタン樹脂(A)からなる。ここにおいてMFIは、JIS K7210に準じて、試験温度150℃、試験荷重2160Nの条件で測定して得られる値である。
(B)の熱可塑性樹脂の融点が60℃未満では、ウレタン化反応熱で(B)が融けてし
まい、110℃を超えると水膨張性シール材の製造時に(B)が融け残り、水膨張性シール材の成形性および機械物性が悪化する。
また、(B)の熱可塑性樹脂のMFIが1未満では、水膨張性シール材の製造時に(B)が融け残り水膨張性シール材の成形性および機械物性が悪化し、30を超えるとポリウレタン樹脂(A)の製造時に(B)がウレタン化反応熱で融けて破れてしまう。
【0025】
該(A)の製造方法としては、ポリウレタン樹脂を製造するのに通常用いられる方法(ワンショット法、プレポリマー法等)が挙げられ、これらのうち、(A)の品質のばらつきが少ない観点から好ましいのはプレポリマー法である。次にプレポリマー法による(A)、並びに(A)と(B)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材の製造方法を例示する。
【0026】
まず、ポリオール成分(a)の一部とイソシアネート成分(b)を、好ましくは1.2/1〜10/1のNCO/OH当量比にて、70〜150℃で常法によりウレタン化反応させてNCO基末端プレポリマーを得る。該プレポリマー中のNCO基含有量(重量%)は、ポリウレタン樹脂の分子量分布のシャープ化および高分子量化の観点から、好ましくは2〜15%、さらに好ましくは3〜10%である。
次に、連続して送液できるポンプ付きの2つの耐圧反応槽(I)、2つの反応槽(I)から送液されてきた各成分を連続的に混合するミキサー部(II)、および(II)で混合した液を吐出する吐出部(III)を備えた連続混合装置を用いて、(I)の耐圧反応槽の一方には、上記プレポリマーを仕込み、もう一方の反応槽には上記ポリオール成分(a)の残部を仕込み、減圧後、さらに窒素置換した後、所望の温度に調整する。
【0027】
調整した2液はミキサー部(II)に連続的に供給し混合する。該プレポリマーとポリオール成分(a)の残部との送液比[NCO/OH当量比]は、上述のとおり最終的にポリウレタン樹脂(A)を得るための(a)、(b)各成分のトータルの反応割合が好ましくは0.8/1〜1.0/1、さらに好ましくは0.9/1〜0.98/1となるような比率とし、送液速度はウレタン化の反応速度およびミキサー部での混合性の観点から好ましくは1〜50kg/分、さらに好ましくは5〜20kg/分で行う。
ミキサー部(II)で混合された液は連続的に吐出部(III)に供給されるため、予め吐出口に、前記熱可塑性樹脂の袋(B)を取り付け、供給されてきた混合液を(B)の袋中で受ける。受けた混合液は、密閉後、硬化炉にて、好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは60〜90℃で、0.5〜10時間硬化させることによりミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材が得られる。
【0028】
ポリウレタン樹脂(A)の重量に基づく上記オキシエチレン基の含有量は、後述する水膨張性シール材の飽和体積水膨張倍率および水膨張後の機械強度の観点から好ましくは15〜70%、さらに好ましくは20〜65%、とくに好ましくは25〜60%である。
【0029】
ポリウレタン樹脂(A)のムーニー粘度[単位:ML(1+4)100℃]は、後述の水膨張性シール材の水膨張後の機械強度および製造時の押出成形性の観点から好ましくは30〜70、さらに好ましくは35〜65である。ここにおいてムーニー粘度は、後述する試験法に準じて測定して得られる値であり、通常、(A)の硬化温度が高いほど大となる。
【0030】
(B)の熱可塑性樹脂としては、不飽和結合を有する熱可塑性樹脂(B1)と不飽和結合を有しない熱可塑性樹脂(B2)が挙げられる。
(B1)としては、ポリブタジエン樹脂(以下PBDと略記)[1,4−および/または1,2−ポリブタジエン樹脂]、(B2)としては、ポリオレフィン樹脂〔ポリエチレン[高密度ポリエチレン(以下HDPEと略記)、低密度ポリエチレン(以下LDPEと
略記)、直鎖状低密度ポリエチレン(以下LLDPEと略記)等]、ポリプロピレン等〕、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート等)、およびエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下EVAと略記)が挙げられる。
これらのうち、後述の水膨張性シール材製造時に加硫剤と反応して水膨張性シール材のマトリックスに取り込まれ、機械強度に寄与するとの観点から好ましいのは不飽和結合を有する(B1)、さらに好ましいのはPBD、特に好ましいのは1,2−PBDである。
【0031】
ポリウレタン樹脂(A)の重量に基づく(B)の割合は、使用前の袋強度および後述する水膨張性シール材の機械強度の観点から好ましくは0.01〜10%、さらに好ましくは0.1〜5%である。
【0032】
(B)の熱可塑性樹脂には袋の粘着性抑制および袋の強度向上の観点から、必要により滑剤および/または充填剤を含有させることができる。
滑剤としては、脂肪酸アミド[飽和脂肪酸アミド(C4〜30、例えばステアリン酸アミド、ラウリル酸アミド)、不飽和脂肪酸アミド(C4〜30、例えばオレイン酸アミド、リノール酸アミド)等]、脂肪酸アルカリ金属塩[飽和脂肪酸(C4〜30、例えばステアリン酸、ラウリル酸)および不飽和脂肪酸(C4〜30、例えばオレイン酸、リノール酸)のアルカリ金属(例えば、カルシウム、マグネシウム、亜鉛)塩等]等が挙げられる。
充填剤としては、カーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、無水ケイ酸マグネシウム、含水ケイ酸マグネシウムおよびクレー等が挙げられる。
(B)の重量に基づくこれらの含有量は、滑剤は通常10%以下、好ましくは0.1〜5%、充填剤は通常10%以下、好ましくは0.1〜5%である。
【0033】
ポリウレタン樹脂(A)の製造に際しては、必要により種々のウレタン化反応触媒を使用することができる。
該触媒としては、3級アミン[C6〜20、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリン、ジメチルアミノメチルフェノール、N−メチル−N−ジメチルアミノエチルピペラジン、ピリジン等]およびこれらの酸ブロック化合物、カルボン酸(C2〜20)の金属塩(酢酸ナトリウム、オクチル酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート等)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコキシドまたはフェノキシド(C1〜12、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムフェノキシド)、4級アンモニウム塩(C4〜12、例えばテトラエチルヒドロキシルアンモニウム)、イミダゾール化合物(C3〜12、例えばイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール)、キレート金属塩(C5〜20、例えばアセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトン鉄)、およびスズ、アンチモン等の金属を含有する有機金属化合物(C3〜30、例えばテトラフェニルスズ、トリブチルアンチモンオキサイド)等が挙げられる。これらの触媒は、単独で、または併用して使用することができる。
ウレタン化反応触媒の使用量は、(A)の重量に基づいて通常5%以下、好ましくは0.001〜3%である。
【0034】
本発明の水膨張性シール材は、ミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材と加硫剤、または該ミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材、加硫剤にさらに必要により高分子弾性体を加え混練して硬化させて得られるミラブルウレタンゴムからなる。
加硫剤としては、通常ゴムの加硫に用いられるものでよく、イオウ、塩化イオウ、有機過酸化物(C4〜24、例えばベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、ラウリルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルベンゼンパーオ
キシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオクトエート)、オキシム(C6〜20、例えばp−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム)、金属酸化物(マグネシア、リサージ等)、アルキルフェノール樹脂〔商品名「タッキロール201」[田岡化学工業(株)製]等〕、ポリチオール化合物[TMPトリチオグリコレート、TMPトリ(3−メルカプトプロピオネート)、グリコールジメルカプトプロピオネート、グリコールジメルカプトアセテート、PEテトラチオグリコレート、ジPEヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)等]、ポリアミン化合物(アルデヒド−アミン縮合物、グアニジン化合物等)、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メチルペンタン、4−t−ブチルアゾ−4−シアノ−吉草酸等)等が挙げられる。 これらの加硫剤は1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらの加硫剤のうち、取り扱いの容易さ等工業上の観点から好ましいのは硫黄、硫黄と他の加硫剤との併用および過酸化物、さらに好ましいのは硫黄である。
加硫剤の使用量は、ミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材の重量に基づいて通常0.1〜10%、好ましくは0.5〜8%である。
【0035】
高分子弾性体としては、天然ゴム、合成ゴム[スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ブチルゴム等]およびそれらの再生ゴム等が挙げられる。
【0036】
上記高分子弾性体のうち、ポリウレタン樹脂(A)との相溶性の観点から好ましいのは、溶解度パラメーター(Fedors法による溶解度パラメーター。以下SP値と略記。)が8.4以上の合成ゴムであり、さらに好ましいのは、SBR、CRおよびNBRである。
ここにおいて、SP値とは、下記のとおり凝集エネルギー密度と分子容の比の平方根で表されるものである。

[SP]=(△E/V)1/2

式中、△Eは凝集エネルギー密度、Vは分子容を表す。Robert F.Fedorsらにより計算されたSP値は、例えば、Polymer engineering
and science 第14巻、147〜154頁に記載されている。
高分子弾性体の使用量は、ミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材の重量に基づいて通常80%以下、水膨張性シール材製造時の押出成形性および水膨張性シール材の飽和体積水膨張倍率の観点から好ましくは1〜70%である。
【0037】
本発明の水膨張性シール材には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、充填剤、顔料、軟化剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、ファクチス、老化防止剤および脱水剤からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤を含有させることができる。
【0038】
充填剤としては、前記のもの;
顔料としては、無機顔料(酸化チタン、ベンガラ、黄鉛、硫化カドミウム、群青等)、および有機顔料(アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系等)等;
軟化剤としては、潤滑油、脂肪酸油、鉱物油(パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル、石油アスファルト等)、タール系軟化剤(タール、クマロン−インデン樹脂等)、エステル系軟化剤(フタル酸誘導体オイル、アジピン酸誘導体オイル、安息香酸誘導体オイル、セバシン酸誘導体オイル、マレイン酸誘導体オイル、フマル酸誘導体オイル、トリメリット酸誘導体オイル、クエン酸誘導体オイル、オレイン酸誘導体オイル、リシノール酸誘導体オイル、ステアリン酸誘導体オイル、リン酸誘導体オイル、グリコール酸誘導体オイル等)、合成樹脂系軟化剤(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、キシレ
ン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等)等;
【0039】
加硫促進剤としては、グアニジン化合物(ジフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン等)、チアゾール化合物(2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等)、チウラム化合物(テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等)、スルフェンアミド化合物(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等)、金属化合物(ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、ジベンゾチアジルジスルフィド塩化亜鉛錯体等)等;
加硫促進助剤としては、C8〜24の脂肪酸およびその誘導体(ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、ステアリン酸亜鉛等)、金属酸化物(酸化亜鉛等)、金属塩(炭酸亜鉛等)等;
【0040】
ファクチスとしては、黒サブ、白サブ、あめサブおよび無硫黄ファクチス等;
老化防止剤としては、アミン(N−フェニル−α−ナフチルアミン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン等)、アミンケトン(ジフェニルアミンとアセトンの反応物等)、前記ヒンダードフェノール化合物、ジチオカルバミン酸塩(ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等)等;
脱水剤としては、酸化カルシウム、硫酸カルシウム(半水石膏)、塩化カルシウム、モレキュラーシーブ等、が挙げられる。
【0041】
水膨張性シール材の全重量に基づく上記添加剤全体の使用量は、通常100%以下、好ましくは0.01〜60%である。
各添加剤の使用量は、充填剤は、通常60%以下、好ましくは5〜50%;顔料は、通常5%以下、好ましくは0.1〜2%;軟化剤は、通常20%以下、好ましくは3〜10%;加硫促進剤、加硫促進助剤、ファクチス、老化防止剤および脱水剤は、それぞれ通常5%以下、好ましくは0.1〜3%である。
【0042】
本発明の水膨張性シール材は、例えばバンバリーミキサーまたはニーダーを用いて、ミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材、および必要により高分子弾性体、上記添加剤の一部(軟化剤、加硫促進助剤、老化防止剤等)等を、混練後の温度が80〜120℃になるように混練した後、加硫剤および必要により加硫促進剤、残りの添加剤、およびその他の添加剤(脱水剤等)をロール上で外観が均一になるまで混練し、押出成形またはプレス成形することにより得られる。
成形温度は加硫剤の種類により任意に設定することができるが、加硫時間の短縮および水膨張性シール材の機械強度(引張強さ等)の観点から好ましくは140〜200℃である。
【0043】
23℃の精製水(蒸留水または脱イオン水、以下同じ。)中における、本発明の水膨張性シール材の飽和体積水膨張倍率は、水膨張後の止水効果および水膨張後の引張強度の観点から好ましくは1.2〜5倍、さらに好ましくは1.4〜4倍、とくに好ましくは1.5〜3倍である。
ここにおいて、飽和体積水膨張倍率とは下記の方法で求められる値である。
【0044】
<飽和体積水膨張倍率の求め方>
水膨張性シール材の帯状体から20×20×2mmの試験片を採取し、この試験片を23℃の精製水中に浸漬した際の体積を一定期間(日単位)毎に測定し(液浸法)、次式にて体積水膨張倍率を算出する。

体積水膨張倍率(倍)=水浸漬後の体積/水浸漬前の体積

1日当たりの体積水膨張倍率の増加率が0.01%以下となった時点での倍率(前日の倍率の1.0001倍以下となった時点の倍率)を、試験片の飽和体積水膨張倍率とする。
【0045】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下において部は重量部、%は重量%を表す。
【0046】
以下の実施例および比較例で使用した原料の組成、記号は次のとおりである。
ポリエーテルポリオール(1):ビスフェノールAのEO/PO(重量比80/20)ラ
ンダム付加物(Mn4,000)
ポリエーテルポリオール(2):ビスフェノールAのEO/PO(重量比30/70)ラ
ンダム付加物(Mn4,000)
ポリエーテルポリオール(3):ビスフェノールAのPO付加物(Mn2,000)
触媒 (1):オクチル酸鉛
高分子弾性体(1):SBR[商品名「JSR SL552」、JSR(株)製]
充填剤 (1):カーボンブラック[商品名「旭#50」、旭カーボン(株)製]
(2):炭酸カルシウム[商品名「ソフトン1500」、備北粉化工業
(株)製]
加硫促進助剤(1):ステアリン酸
(2):酸化亜鉛
軟化剤 (1):ジプロピレングリコールジベンゾエート[商品名「アデカサイザー
PN6120」、旭電化工業(株)製]
加硫剤 (1):硫黄
加硫促進剤 (1):ジベンゾチアジルジスルフィド
(2):2−メルカプトベンゾチアゾール
脱水剤 (1):酸化カルシウム
PBD袋(B−1):厚さ0.04mm、幅500mm、長さ800mmの1,2−PB
Dフィルム製袋(融点90℃、MFI3g/10min)[商品名
「MELBAG−M」、JSRトレーディング(株)製]
PBD袋(B−2):厚さ0.04mm、幅500mm、長さ800mmの1,2−PB
Dフィルム製袋(融点68℃、MFI3g/10min)[商品名
「MELBAG−SS」、JSRトレーディング(株)製]
EVA袋(B−3):EVAペレット(融点102℃、MFI20g/10min)[商
品名「エバテートD4040」、住友化学(株)製]を0.04m
mのフィルムにし、幅500mm、長さ800mmの袋状にした成
形品
EVA袋(B−4):EVAペレット(融点95℃、MFI0.6g/10min)[商
品名「エバテートH1011」、住友化学(株)製]を0.04m
mのフィルムにし、幅500mm、長さ800mmの袋状にした成
形品
EVA袋(B−5):EVAペレット(融点63℃、MFI60g/10min)[商品
名「エバテートM5011」、住友化学(株)製]を0.04mm
のフィルムにし、幅500mm、長さ800mmの袋状にした成形

EVA袋(B−6):EVAペレット(融点104℃、MFI2g/10min)[商品
名「エバテートD2045」、住友化学(株)製]を0.04mm
のフィルムにし、幅500mm、長さ800mmの袋状にした成形

EVA袋(B−7):EVAペレット(融点93℃、MFI1.5g/10min)[商
品名「エバテートH2020」、住友化学(株)製]を0.04m
mのフィルムにし、幅500mm、長さ800mmの袋状にした成
形品
LLDPE袋(B−8):LLDPEペレット(融点122℃、MFI1g/10min
)[商品名「スミカセン−L FS240」、住友化学(株)製
]を0.04mmのフィルムにし、幅500mm、長さ800m
mの袋状にした成形品
PBD袋(B−9):PBDペレット(融点52℃、MFI3g/10min)[商品
名「JSR RB820」、JSR(株)製]を0.04mmのフ ィルムにし、幅500mm、長さ800mmの袋状にした成形品
【0047】
製造例1
十分に乾燥した耐圧反応容器にDEG53部、水酸化カリウム2部を仕込み、密閉した後、120℃で減圧脱水を行い、水分0.05%以下であることを確認した。減圧下、容
器内温度を95℃まで冷却してから、EO500部を90〜100℃の範囲で容器底部から導入し、2時間、90〜100℃で反応させた。容器内を減圧にした後、AGE114部を90〜100℃の範囲で容器底部から導入して2時間、90〜100℃で反応させた。容器内を減圧にした後、さらにPO333部を90〜100℃の範囲で容器底部から導入して2時間90〜100℃で反応させた(ブロック付加)。70℃まで冷却した後、反応容器上部から窒素を吹き込み、気相酸素濃度0%の雰囲気下、反応生成物の1%の水を加えて撹拌、混合した。次いでキョーワード600[商品名、協和化学工業(株)製。以下同じ。]5部を加えて70〜80℃で撹拌混合して水酸化カリウム触媒を吸着処理し、窒素加圧下(気相酸素濃度0%)でろ過、除去した。ろ液に2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(酸化防止剤)0.5部を添加し、気相酸素濃度0%で加熱して95〜105℃とし、その後減圧脱水した。水分が0.05%になった時点で直ちに冷却し、分子側鎖に2個のエチレン性不飽和基を有するポリオール(a1−1)を得た。(a1−1)の水酸基価は56.1mgKOH/g(以下、数値のみを示す。)であった。
【0048】
製造例2
十分に乾燥した耐圧反応容器にDEG53部、水酸化カリウム2部を仕込み、密閉した後、120℃で減圧脱水を行い、水分0.05%以下であることを確認した。減圧下、容器内温度を95℃まで冷却してから、予め混合したEO750部、PO83部、AGE114部の混合物を、90〜100℃の範囲で容器底部から導入し、2時間、90〜100℃で反応させた(ランダム付加)。70℃まで冷却した後は、製造例1と同様に行い、分子側鎖に2個のエチレン性不飽和基を有するポリオール(a1−2)を得た。(a1−2)の水酸基価は56.1であった。
【0049】
製造例3
ポリエーテルポリオール(1)822部とIPDI 178部を120℃で3時間反応させてNCO含量が5.0%のNCO基両末端プレポリマー(1)を得た。
【0050】
製造例4
ポリエーテポリオール(2)807部と水添MDI 193部を120℃で3時間反応させてNCO含量が4.5%のNCO基両末端プレポリマー(2)を得た。
【0051】
実施例1
連続して送液できるポンプ付きの2つの耐圧反応槽のうち反応槽(I−1)には、表1の組成に従って、配合成分のうちのプレポリマー(1)を仕込み、減圧、窒素置換した後、60℃に温度調整した。耐圧反応槽の他方の反応槽(I−2)には、表1の組成に従って、その他の配合成分のポリオール(a1−1)、ポリエーテルポリオール(3)および触媒(1)を仕込み、減圧、窒素置換した後、均一混合しながら60℃に温度調整した。該調整した2液はミキサー部(II)に、1分間当たりの各反応槽からの送液量[反応槽(I−1)/反応槽(I−2)]を1,000g/1,216g(NCO/OH当量比=0.98/1)となるように連続的に行い、混合した。ミキサー部(II)の吐出口には、PBD袋(B−1)を取り付け、混合液2,000部を(B−1)中に注入した。注入した混合液を入れた(B−1)は、口を閉じ、80℃の硬化炉で10時間硬化させることにより、(B−1)とポリウレタン樹脂(A−1)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材(X−1)を得た。ポリウレタン樹脂(A−1)の重量に基づく(B−1)の割合は1.3%であった。
【0052】
実施例2
実施例1において、PBD袋(B−1)に代えて、PBD袋(B−2)を用い、硬化炉の温度を60℃に変えたこと以外は実施例1と同様に行い(B−2)とポリウレタン樹脂(A−1)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材(X−2)を得た。ポリウレタ
ン樹脂(A−1)の重量に基づく(B−2)の割合は1.3%であった。
【0053】
実施例3
実施例1において、PBD袋(B−1)に代えて、EVA袋(B−3)を用いたこと以外は実施例1と同様に行い(B−3)とポリウレタン樹脂(A−1)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材(X−3)を得た。ポリウレタン樹脂(A−1)の重量に基づく(B−3)の割合は1.3%であった。
【0054】
実施例4
表1の組成に従って、反応槽(I−1)には、プレポリマー(1)、反応槽(I−2)には、その他の成分を実施例1と同様に仕込み、PBD袋(B−1)への注入量を2,000部から260部に変えたこと以外は実施例1と同様に行い、(B−1)とポリウレタン樹脂(A−2)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材(X−4)を得た。ポリウレタン樹脂(A−2)の重量に基づく(B−1)の割合は10%であった。
【0055】
実施例5
表1の組成に従って、反応槽(I−1)には、プレポリマー(2)、反応槽(I−2)には、その他の成分を実施例1と同様に仕込み、1分間当たりの各反応槽からの送液量[反応槽(I−1)/反応槽(I−2)]を1,000g/1,096g(NCO/OH当量比=0.98/1)に変えたこと以外は実施例1と同様に行い、(B−1)とポリウレタン樹脂(A−3)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材(X−5)を得た。ポリウレタン樹脂(A−3)の重量に基づく(B−1)の割合は1.3%であった。
【0056】
実施例6
表1の組成に従って、反応槽(I−1)には、プレポリマー(1)、反応槽(I−2)には、その他の成分を実施例1と同様に仕込み、1分間当たりの各反応槽からの送液量[反応槽(I−1)/反応槽(I−2)]を2,000g/617g(NCO/OH当量比=0.98/1)に変えたこと以外は実施例1と同様に行い、(B−1)とポリウレタン樹脂(A−4)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材(X−6)を得た。ポリウレタン樹脂(A−4)の重量に基づく(B−1)の割合は1.3%であった。
【0057】
実施例7
表1の組成に従って、反応槽(I−1)には、プレポリマー(2)、反応槽(I−2)には、その他の成分を実施例1と同様に仕込み、1分間当たりの各反応槽からの送液量[反応槽(I−1)/反応槽(I−2)]を2,000g/584g(NCO/OH当量比=0.98/1)に変えたこと以外は実施例1と同様に行い、(B−1)とポリウレタン樹脂(A−5)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材(X−7)を得た。ポリウレタン樹脂(A−5)の重量に基づく(B−1)の割合は1.3%であった。
【0058】
実施例8
実施例1において、PBD袋(B−1)に代えて、EVA袋(B−6)を用いたこと以外は実施例1と同様に行い(B−6)とポリウレタン樹脂(A−1)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材(X−8)を得た。ポリウレタン樹脂(A−1)の重量に基づく(B−6)の割合は1.3%であった。
【0059】
実施例9
実施例1において、PBD袋(B−1)に代えて、EVA袋(B−7)を用いたこと以外は実施例1と同様に行い(B−7)とポリウレタン樹脂(A−1)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材(X−9)を得た。ポリウレタン樹脂(A−1)の重量に基づく(B−7)の割合は1.3%であった。
【0060】
比較例1
実施例1において、PBD袋(B−1)に代えて、EVA袋(B−4)を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、(B−4)とポリウレタン樹脂(A−1)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材(比X−1)を得た。ポリウレタン樹脂(A−1)の重量に基づく(B−4)の割合は1.3%であった。
【0061】
比較例2
実施例1において、PBD袋(B−1)に代えて、EVA袋(B−5)を用い、硬化炉の温度を60℃に変えたこと以外は実施例1と同様に行い、(B−5)とポリウレタン樹脂(A−1)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材を得ようとしたが、60℃の硬化炉内で袋が融けて破れたため得られなかった。
【0062】
比較例3
実施例1において、PBD袋(B−1)に代えて、EVA袋(B−5)を用い、硬化炉の温度を50℃に変えたこと以外は実施例1と同様に行い、(B−5)とポリウレタン樹脂(A−1)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材(比X−2)を得た。ポリウレタン樹脂(A−1)の重量に基づく(B−5)の割合は1.3%であった。
【0063】
比較例4
実施例1において、PBD袋(B−1)に代えて、LLDPE袋(B−8)を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、(B−8)とポリウレタン樹脂(A−1)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材(比X−3)を得た。ポリウレタン樹脂(A−1)の重量に基づく(B−8)の割合は1.3%であった。
【0064】
比較例5
実施例1において、PBD袋(B−1)に代えて、PBD袋(B−9)を用い、硬化炉の温度を50℃に変えたこと以外は実施例1と同様に行い、(B−9)とポリウレタン樹脂(A−1)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材(比X−4)を得た。ポリウレタン樹脂(A−1)の重量に基づく(B−9)の割合は1.3%であった。
【0065】
実施例1〜9および比較例1〜5の各ミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材中のポリウレタン樹脂について、ムーニー粘度を測定した。結果を表1に示す。試験法は以下のとおりである。
【0066】
<ムーニー粘度>[単位はML(1+4)100℃]
JIS K6300−1に記載の「未加硫ゴム―物理特性―第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に従い、ミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材のうち、ポリウレタン樹脂部分から円形(直径約50mm、厚さ約6mm)の試験片を2枚採取し、測定した。
【0067】
実施例10〜19
表2の組成に従って、<混練成分1>をバンバリーミキサーで10分間混練した。次に、<混練成分2>を加え、2本混練ロールで10分間混練した。混練物は、押出成形機を用いて断面がタテ20mm×ヨコ20mmの棒状に押出した後、160℃で10分間加熱して水膨張性シール材を得た。
【0068】
比較例6〜9
表2の組成に従って、実施例10〜19と同様にして、水膨張性シール材を得た。
【0069】
実施例10〜19および比較例6〜9の各成形品について、押出成形性、断面状態を測定した。結果を表2に示す。試験法は以下のとおりである。
【0070】
<試験法>
(1)押出成形性
ASTM D2230−96(2002)e1(B評価)に準じ、ガーベダイ(該ASTMで用いられる評価用口金。該口金から押し出される押出成形品について押出成形性が評価される。)押出成形品について、押出成形性を下記の基準で評価した。
<評価基準>
次の[1]、[2]の項目について上記ASTMに記載された評価基準に従った。すなわち、[1]の評価結果と[2]の評価結果を順番に記載し、例えば、[1]と[2]のいずれも優秀であれば評価は「10A」、[1]と[2]のいずれも劣悪であれば評価は「1E」と記載する。
[1]30°エッジ部分の鋭さ並びに連続性
1(悪)〜10(良)の10段階で評価。
[2]表面の平滑性
A(良)〜E(悪)の5段階評価。
(2)断面状態
水膨張性シール材押出成形品を長さ方向に切断し、水膨張性シール材中に袋の融け残りがあるか目視で確認した。断面状態を下記の基準で評価した。
<評価基準>
○:袋の融け残りなし
×:袋の融け残りあり
(3)引張強さ、伸び
JIS K6251:2004記載の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、実施例8〜15および比較例4〜5で作成した混練物を使い、プレス成形(160℃で10分間加熱)により2mm厚のシートを作成し、そこから3号ダンベル試験片を打ち抜き、測定した。水膨張後の測定は、上記の試験片を23℃の精製水中に1ヶ月間浸漬してから行った。
(4)飽和体積水膨張倍率
成形品から20×20×2mmの試験片を採取し、この試験片を23℃の精製水中に浸漬した際の体積を一定期間毎に測定し(液浸法)、次式にて体積水膨張倍率を算出し、1日当たりの体積膨張倍率の増加量が0.01%以下となった時点での体積水膨張倍率を試験片の飽和体積水膨張倍率とした。

体積水膨張倍率(倍)=水浸漬後の体積/水浸漬前の体積
【0071】
【表1】

*1 60℃の硬化炉内で袋が融けて破れ測定不可。
【0072】
【表2】

*2 膨張により形状が維持できず測定不可。
【0073】
実施例の結果から、本発明のミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材は、混練時の袋の融け残りがなく良好な成形性を示し生産性に優れること、および本発明の水膨張性シール材は成形性に優れ、かつ良好な止水性を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材は、良好な成形性を示し生産性に優れること、および該樹脂基材から形成されるミラブルウレタンゴムからなる水膨張性シール材は成形性に優れ、かつ良好な止水性を有することから、水膨張性シール材用として、(1)押出成形、あるいは非膨張性ゴムと共押出成形してなる各種断面形状のセグメント用シール材、(2)中空状や板状に成形してなる建築用ガスケット、(3)断面が円形のリング状に成形してなるグラウトホール等の水膨張性パッキン、等の幅広い用途に好適に使用でき、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
60〜110℃の融点および1〜30g/10分のメルトフローインデックスを有する熱可塑性樹脂の袋(B)と、該(B)中で、分子側鎖に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するポリオール(a1)を含有し、さらに(a1)および/または(a1)以外の構成ポリオール中にオキシエチレン基を有してなるポリオール成分(a)とイソシアネート成分(b)を反応させてなるポリウレタン樹脂(A)からなるミラブルウレタンゴム形成性樹脂基材。
【請求項2】
(A)の重量に基づく(B)の割合が、0.01〜10%である請求項1記載の樹脂基材。
【請求項3】
(A)の重量に基づくオキシエチレン基の含有量が、15〜70%である請求項1または2記載の樹脂基材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の樹脂基材に加硫剤を加え、混練して硬化させたミラブルウレタンゴムからなる水膨張性シール材。
【請求項5】
さらに、高分子弾性体を加え、混練して硬化させてなる請求項4記載の水膨張性シール材。
【請求項6】
請求項4または5記載の水膨張性シール材からなる、セグメント用シール材、建築用ガスケットまたは水膨張性パッキン。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか記載の樹脂基材に加硫剤を加え、混練して硬化させることを特徴とする、ミラブルウレタンゴムからなる水膨張性シール材の製造方法。

【公開番号】特開2010−7058(P2010−7058A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126363(P2009−126363)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】