説明

ミラー付サンバイザ

【課題】ミラー付サンバイザの製造段階、具体的にはサンバイザ本体の凹部にミラーユニットを振動溶着で取り付ける段階において発生するミラーの汚れを防止し、ミラーの汚れによる不良品の発生を効果的に低減するのに好適なミラー付サンバイザを提供する。
【解決手段】ミラーユニット5は、ミラーベース枠6とミラー7を備え、振動溶着によりサンバイザ本体3の凹部4に取り付けられる。ミラーベース枠6は、その枠内側に向けて突出したミラーベース枠6正面の鍔部61とこれに対向する係止爪62とを備え、その鍔部61と係止爪62とで前記ミラー7の外縁部を挟み込むことにより、ミラー7を保持する構造になっている。前記鍔部61の端部とミラー7の外縁部との間には振動逃げ隙間Gが形成されることにより、前記振動溶着時の振動で鍔部61の端部とミラー7の外縁部とが擦れ合ってミラー7の外縁部周辺が汚れることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のミラー付きサンバイザに関し、特に、その製造段階、具体的にはサンバイザ本体の凹部にミラーユニットを振動溶着で取り付ける段階において発生するミラーの汚れを防止し、ミラーの汚れによる不良品の発生を効果的に低減できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、日除けとして自動車に搭載されている公知のサンバイザには、化粧用のミラーを付設したものがある。この種のミラー付サンバイザについては、例えば、特許文献1〜3に開示されている。
【0003】
図2はミラー付きサンバイザの外観平面図、図3(a)は図2のミラー付サンバイザの構成部品であるミラーユニットの平面図、同図(b)はそのミラーユニットの裏面図、同図(c)はそのミラーユニットの側面図である。また、図4(a)は図2に示すA−A線において従来のミラー付サンバイザを切断したときの断面図、同図(b)はその一部の拡大断面図である。
【0004】
図4(a)のミラー付サンバイザSVは、芯材Cの両面にパッド材1A、1B、表皮材2A、2Bを積層し、その外周を接合することにより形成されるサンバイザ本体3と、サンバイザ本体3の片面のパッド材1A、表皮材2Aを開口して設けた凹部4に振動溶着で取り付けたミラーユニット5と、を備えている。
【0005】
ミラーユニット5は、図3(a)(b)に示したようにミラーベース枠6とミラー7とミラーリッド8で構成されており、ミラーベース枠6は、その枠内側に向けて突出したミラーベース枠6正面の鍔部61(図4(b)参照)と、これに対向する複数の係止爪62(図3(b)参照)とを備え、鍔部61と係止爪62とでミラー7の外縁部を挟み込むことにより、当該ミラー7を位置決め保持する構造になっている。ミラーリッド8は開閉可能なミラー7の蓋であり、閉時には当該ミラー7の鏡面を覆って保護している。
【0006】
また、前記凹部4への振動溶着によるミラーユニット5の取り付けは、ミラーベース枠6裏面に突出した複数のリブ9(図3(b)参照)を凹部4底面に食い込ませ(図4(b)参照)、この状態でそのリブ9の食い込み方向と交差する方向(図4(b)参照)にミラーユニット5全体を振動させたときの摩擦熱で、当該リブ9を溶かして凹部4底面に溶着固定するようにしている。
【0007】
しかしながら、図4に示す従来のミラー付サンバイザSVを構成するミラーユニット5は、そのミラーベース枠6全体(ミラーベース枠6正面の鍔部61とこれに対向する複数の係止爪62とを含む)が樹脂で形成されており、かつ、樹脂製の鍔部61と複数の係止爪62とでミラー7の外縁部を挟み込んで保持している。このため、図4に示す従来のミラー付サンバイザSVによると、その製造段階、具体的にはサンバイザ本体3の凹部4へミラーユニット5を取り付ける際の振動溶着時の振動により、ミラーベース枠6正面の鍔部61とミラー7の外縁部とが擦れ合い、ミラー7の外縁部周辺に鍔部61の樹脂成分が付着する等、ミラー7の外縁部周辺が樹脂成分で汚れてしまい(図4(b)参照)、ミラーの汚れによる不良品が発生しやすいという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−225418号公報
【0009】
【特許文献2】実開昭62−156520号公報
【0010】
【特許文献3】実開昭64−55118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、ミラー付サンバイザの製造段階、具体的にはサンバイザ本体の凹部にミラーユニットを振動溶着で取り付ける段階において発生するミラーの汚れを防止し、ミラーの汚れによる不良品の発生を効果的に低減するのに好適なミラー付サンバイザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、芯材の両面にパッド材、表皮材を積層し、その外周を接合することによって形成されるサンバイザ本体と、前記サンバイザ本体の片面のパッド材、表皮材を開口して設けた凹部に振動溶着で取り付けたミラーユニットと、を備えたミラー付サンバイザであって、前記ミラーユニットは、ミラーベース枠とミラーを備え、前記ミラーベース枠は、その枠内側に向けて突出したミラーベース枠正面の鍔部とこれに対向する係止爪とを備え、その鍔部と係止爪とで前記ミラーの外縁部を挟み込むことにより、前記ミラーを保持する構造になっており、前記振動溶着時の振動により前記鍔部の端部と前記ミラーの外縁部とが擦れ合って前記ミラーの外縁部周辺が汚れることを防止する手段として、前記鍔部の端部と前記ミラーの外縁部との間には、振動逃げ隙間が形成されていることを特徴とする。
【0013】
前記凹部への振動溶着による前記ミラーユニットの取り付けは、前記ミラーベース枠裏面に突出した複数のリブを前記凹部底面に食い込ませ、この状態で前記リブの食い込み方向と交差する方向に前記ミラーユニット全体を振動させたときの摩擦熱で、当該リブを溶かして前記凹部底面に溶着固定するものであってよく、この場合において、前記振動逃げ隙間の深さは、前記振動溶着時の振動の振幅と同一の寸法か又はそれより大きい寸法に設定されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、ミラー付サンバイザの具体的な構成として、前記の通り、サンバイザ本体の凹部にミラーユニットを振動溶着で取り付ける際の振動(振動溶着時の振動)によりミラーベース枠正面の鍔部の端部とミラーの外縁部とが擦れ合ってミラーの外縁部周辺が汚れることを防止する手段として、そのような鍔部の端部とミラーの外縁部との間に振動逃げ隙間が形成される構成を採用した。このため、振動溶着によるミラーユニットの取り付け段階においてミラーユニット全体を振動させても、ミラーベース枠正面の鍔部の端部とミラーの外縁部とが擦れ合うこと、及び、その擦れ合いによってミラーの外縁部周辺が汚れることはなく、ミラーの汚れによる不良品の発生を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明に係るミラー付サンバイザの説明図であって、同図(a)は図2に示すA−A線において本発明に係るミラー付サンバイザを切断したときの断面図、同図(b)はその一部の拡大断面図。
【図2】ミラー付きサンバイザの外観平面図
【図3】(a)は、図2のミラー付サンバイザの構成部品であるミラーユニットの平面図、(b)はそのミラーユニットの裏面図、(c)はそのミラーユニットの側面図。
【図4】図4は従来のミラー付サンバイザの説明図であって、同図(a)は図2に示すA−A線において従来のミラー付サンバイザを切断したときの断面図、同図(b)はその一部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明に係るミラー付サンバイザの説明図であって、同図(a)は図2に示すA−A線において本発明に係るミラー付サンバイザを切断したときの断面図、同図(b)はその一部の拡大断面図である。
【0018】
図1(a)のミラー付サンバイザSVは、芯材Cの両面にパッド材1A、1B、表皮材2A、2Bを積層し、その外周を接合することによって形成されるサンバイザ本体3と、サンバイザ本体3の片面のパッド材1A、表皮材2Aを開口して設けた凹部4に振動溶着で取り付けたミラーユニット5と、を備えている。
【0019】
前記芯材Cは、ループ状に曲成されたワイヤーフレームからなり、ミラー付サンバイザSVの製品形状を形作っている。また、前記パッド材1A、1Bは、PPビーズ等で形成し、前記表皮材2A、2Bは、PVCシート等で形成してある。
【0020】
前記ミラーユニット5は、ミラーベース枠6とミラー7とミラーリッド8からなり、ミラーベース枠6は、その枠内側に向けて突出したミラーベース枠正面の鍔部61とこれに対向する複数の係止爪62(図3(b)参照)とを備え、その鍔部61と複数の係止爪62とでミラー7の外縁部を挟み込むことにより、当該ミラー7を位置決め保持する構造になっている。なお、ミラーリッド8は開閉可能なミラー7の蓋であり、閉時にはミラー7の鏡面を覆って保護しているが、その保護の必要性がないなら、ミラーリッド8は省略してもよい。
【0021】
前記鍔部61と係止爪62を含むミラーベース枠6全体、及び、前記ミラーリッド8は樹脂で形成してある。ミラーベース枠6に設けてある後述のリブ9も同様に樹脂で形成してある。
【0022】
図1(a)のミラー付サンバイザSVにおいては、ミラーユニット5をサンバイザ本体3の凹部4に振動溶着で取り付けるための手段として、ミラーベース枠6裏面に尖ったリブ9(図3(b)参照)を複数形成してある。そして、凹部4への振動溶着によるミラーユニット5の取り付けは、複数のリブ9を凹部4底面に食い込ませ(図1(b)参照)、この状態で該リブ9の食い込み方向と交差する方向(図1(b)参照)にミラーユニット5全体を振動させたときの摩擦熱で、当該リブ9を溶かして凹部4底面に溶着固定するようにしている。
【0023】
また、図1(a)のミラー付サンバイザSVにおいては、前記振動溶着時の振動により鍔部61の端部とミラー7の外縁部とが擦れ合って該ミラー7の外縁部周辺が汚れることを防止する手段として、同図(b)のように鍔部61の端部とミラー7の外縁部との間に隙間(以下「振動逃げ隙間G」という)を形成してある。図1(b)の例では、ミラー7の外縁部から鍔部61の端部が浮き上がるように形成することで、前記のような振動逃げ隙間Gが形成される構成を採用したが、この種の振動逃げ隙間Gは、例えばミラー7の外縁部に段差を付けることによって形成することも可能である。
【0024】
前記振動逃げ隙間Gの深さL1は、振動溶着時の振動の振幅と同一の寸法か又はそれより大きい寸法に設定することが望ましい。振動の振幅が2mmであるなら、振動逃げ隙間Gの深さL1は2mmに設定することができる。また、振動逃げ隙間Gの幅L2は0.3mm程度とするのが好ましい。
【0025】
振動逃げ隙間Gの幅L2は必要に応じて適宜変更してもよいが、その幅L2が0.05mm等のように極端に狭すぎると、振動逃げ隙間G周辺の寸法誤差等により、振動溶着時に鍔部61の端部とミラー7の外縁部とが接触しやすくなり、その接触によってミラー7の外縁部周辺が汚れるおそれがある。この一方、振動逃げ隙間Gの幅L2が1.0mm等のように極端に広すぎると、ミラー付サンバイザSVの正面からミラー7を見た時に、振動逃げ隙間Gが目立って見え、外観上好ましくないほか、振動逃げ隙間Gに塵が溜まり易くなる等の問題がある。
【0026】
なお、係止爪62の端部とミラー7の外縁部との間には、前記のような振動逃げ隙間Gは設けていない。係止爪62の端部が接触するミラー7の外縁部は、ミラー7の裏面になるので、汚れても差し支えないからである。
【0027】
以上説明した本実施形態のミラー付サンバイザSVにあっては、その具体的な構成として、前記の通り、サンバイザ本体3の凹部4にミラーユニット5を振動溶着で取り付ける際の振動(振動溶着時の振動)によりミラーベース枠6正面の鍔部61の端部とミラー7の外縁部とが擦れ合ってミラー7の外縁部周辺が汚れることを防止する手段として、そのような鍔部61の端部とミラー7の外縁部との間に振動逃げ隙間Gが形成される構成を採用した。このため、振動溶着によるミラーユニット5の取り付け段階においてミラーユニット5全体を振動させても、ミラーベース枠6正面の鍔部61の端部とミラー7の外縁部とが擦れ合うこと、及び、その擦れ合いによってミラー7の外縁部周辺が汚れることはなく、ミラー7の汚れによる不良品の発生を効果的に低減することができる。
【0028】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0029】
SV ミラー付サンバイザ
C 芯材
1A、1B パッド材
2A、2B 表皮材
3 サンバイザ本体
4 サンバイザ本体の凹部
5 ミラーユニット
6 ミラーベース枠
61 鍔部
62 係止爪
7 ミラー
8 ミラーリッド
9 リブ
G 振動逃げ隙間
L1 振動逃げ隙間の深さ
L2 振動逃げ隙間の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材の両面にパッド材(1A、1B)、表皮材(2A、2B)を積層し、その外周を接合することによって形成されるサンバイザ本体(3)と、前記サンバイザ本体(3)の片面のパッド材(1A)、表皮材(2A)を開口して設けた凹部(4)に振動溶着で取り付けたミラーユニット(5)と、を備えたミラー付サンバイザ(SV)であって、
前記ミラーユニット(5)は、ミラーベース枠(6)とミラー(7)を備え、
前記ミラーベース枠(6)は、その枠内側に向けて突出したミラーベース枠(6)正面の鍔部(61)とこれに対向する係止爪(62)とを備え、その鍔部(61)と係止爪(62)とで前記ミラー(7)の外縁部を挟み込むことにより、前記ミラー(7)を保持する構造になっており、
前記振動溶着時の振動により前記鍔部(61)の端部と前記ミラー(7)の外縁部とが擦れ合って前記ミラー(7)の外縁部周辺が汚れることを防止する手段として、前記鍔部(61)の端部と前記ミラー(7)の外縁部との間には、振動逃げ隙間(G)が形成されていること
を特徴とするミラー付サンバイザ。
【請求項2】
前記凹部(4)への振動溶着による前記ミラーユニット(5)の取り付けは、前記ミラーベース枠(6)裏面に突出した複数のリブ(9)を前記凹部(4)底面に食い込ませ、この状態で前記リブ(9)の食い込み方向と交差する方向に前記ミラーユニット(5)全体を振動させたときの摩擦熱で、当該リブ(9)を溶かして前記凹部(4)底面に溶着固定するものであり、
前記振動逃げ隙間(G)の深さは、前記振動溶着時の振動の振幅と同一の寸法か又はそれより大きい寸法に設定されていること
を特徴とする請求項1に記載のミラー付サンバイザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−52699(P2013−52699A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190283(P2011−190283)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)