説明

ミルタザピンの製造方法

【課題】2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノールを濃硫酸により閉環した反応液から、高い純度で、医薬品として安全に使用できるミルタザピンを簡便な方法により単離する方法を提供する。
【解決手段】2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノールを濃硫酸で閉環して得られた反応液を水で希釈した後、プロパノール存在下、アルカリ性にし、プロパノールでミルタザピンを抽出し、次いで当該抽出液からミルタザピンを結晶化させることを特徴とする、ミルタザピンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗鬱剤として有用なミルタザピンの製造方法に関する。より詳しくは、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノールを濃硫酸により閉環してミルタザピンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミルタザピンは、抗鬱剤として有用な化合物であり、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノールを濃硫酸により閉環することにより製造できる。ミルタザピンを単離する方法として、閉環した反応液を水で希釈後アルカリ性にし、生じた沈殿物を分離後、これを塩化メチレンで抽出し、濃縮して粗製のミルタザピンを得る方法(特許文献1);閉環した反応液を水で希釈後、トルエン存在下でアルカリ性で抽出し、濃縮し、トルエン−ヘプタン系で晶析する方法(特許文献2);閉環した反応液を水で希釈後、アルカリ性にし、生じた沈殿物を分離し、母液を濃縮して得た残留物を合わせ、イソプロパノールに懸濁させて抽出し、濃縮して粗製のミルタザピンを得る方法が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特公表2004−500324号公報
【特許文献2】国際公開01/038330号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、アルカリ性にして沈殿物を生じさせる方法では、一旦分離する必要がある。この沈殿物を塩化メチレンで抽出、或いはトルエン存在下でアルカリ性で抽出し、濃縮しても、得られるミルタザピンの純度が満足できるものではなく、再結晶する必要があった。
【0004】
ところで、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)における医薬品の残留溶媒ガイドライン(以下、ICHガイドラインともいう)によれば、塩化メチレンやトルエンは医薬品中の残留量が規制されるクラス2の溶媒であるので、医薬品製造の最終段階に使用する溶媒として、そのような溶媒の使用は避けるべきである。
【0005】
本発明は、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノールを濃硫酸により閉環した反応液から、高い純度で、医薬品として安全に使用できるミルタザピンを簡便な方法により単離する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題に対して種々検討した結果、ICHガイドラインによる低毒性のクラス3の溶媒のうち、予想外にも水と混和するプロパノールが、水で希釈後の反応液からアルカリ条件下でミルタザピンを抽出できることを見出し、発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は下記のとおりである。
[1]2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノールを濃硫酸で閉環して得られた反応液を水で希釈した後、プロパノール存在下、アルカリ性にし、プロパノールでミルタザピンを抽出し、次いで当該抽出液からミルタザピンを結晶化させることを特徴とする、ミルタザピンの製造方法。
[2]プロパノールの使用量が、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、130〜500重量部である、上記[1]記載の製造方法。
[3]アルカリ性にした後、ヘプタンを加える、上記[1]記載の製造方法。
[4]ヘプタンの使用量が、プロパノールとヘプタン合計量に対して10〜70重量%である、上記[3]記載の製造方法。
[5]2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、濃硫酸を300〜400重量部使用して閉環し、得られた反応液100重量部に対して100〜400重量部の水で反応液を希釈する、上記[1]記載の製造方法。
[6]アルカリ金属水酸化物を用いてアルカリ性にする、上記[1]記載の製造方法。
[7]水で希釈した反応液をpH3以下で脱色する、上記[1]記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水で希釈後の反応液からの抽出が、ICHガイドラインによる低毒性のクラス3の溶媒であるプロパノールにより行われるので、得られるミルタザピンが医薬品として安全に使用できるものとなる。
【0009】
また、プロパノールによる抽出は、塩化メチレンやトルエンによる抽出よりも純度がよい結晶が得られるため、再結晶の必要がなくなる。
【0010】
さらに、水で希釈後の反応液をアルカリ性条件下、プロパノールを用いて直接抽出するため、生じたミルタザピンの沈殿物を単離した後抽出するという工程を行う必要がなく、従って、非常に簡便な製法となる。
【0011】
さらに、水で希釈後の反応液をアルカリ性にするのは、プロパノールを加えた後に行われるので、ミルタザピンの沈殿を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明における出発原料である2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノールは、例えば、WO01/23345、WO01/042240等の方法で製造することができる。
【0013】
ミルタザピンは、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノールを濃硫酸で閉環することにより製造される。
濃硫酸としては、濃度が97〜99%の濃硫酸が好適に用いられる。
濃硫酸の使用量は、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、通常300〜400重量部、好ましくは340〜380重量部である。
【0014】
反応は、濃硫酸に2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノールを添加することにより行われる。その際の濃硫酸の温度は、発熱の抑制およびタール状不純物の生成抑制の観点から、通常0〜50℃、好ましくは5〜40℃である。
2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノールの添加は、反応を効率よく進行させる観点から、分割(例えば、10〜30分割)して行われることが好ましい。
2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノールの添加後、反応を促進させるために、通常20〜50℃程度、好ましくは30〜40℃程度で3〜10時間程度攪拌する。
閉環反応の終了は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により確認することができる。
【0015】
反応終了後、通常、水中に滴下する等の方法により、反応液の硫酸の濃度を低下させる。水の使用量は、操作性の観点から、反応液100重量部に対して、100〜400重量部であることが好ましい。また、添加する際の反応液の液温は、発熱を抑制する観点および不純物(タール)の生成を抑制する観点から、0〜30℃程度であることが好ましい。
【0016】
次いで、色相改善、純度向上の観点から、脱色を行うことが好ましい。脱色剤としては、脱色炭等が挙げられ、5〜35℃で10〜60分間行われる。その後、脱色剤をろ過し、脱色剤100重量部に対して、通常500〜600重量部の水で脱色剤を洗浄する。
安全上の観点から、上記の脱色は、上記の希釈液をpH調整した後に行うのが好ましい。ここでのpHは、通常3以下、好ましくは1〜2である。本発明者らは、上記の脱色は、予想外にも、pH3以下で行うことが純度向上に重要であるという知見も得た。
【0017】
pH調整はアルカリにより行われる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられ、中でも、水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリは水溶液として滴下することが好ましく、その濃度は、操作性の観点から、20〜50重量%、好ましくは20〜30重量%である。温度は、通常5〜50℃、好ましくは10〜35℃である。
【0018】
次いで、上記の濾液にプロパノールを加え、アルカリ性でミルタザピンを抽出する。
本発明の特徴は、ICHガイドラインによる低毒性のクラス3の溶媒であって、通常は水と任意の割合で混和するプロパノールにより、水溶液からミルタザピンを抽出することであり、これにより、塩化メチレンやトルエンよりも純度が高く、医薬品として安全に使用できるミルタザピンを得ることができる。
また、本発明のもう1つの特徴は、アルカリ性でミルタザピンを抽出する際に、予めプロパノールを加えることにより、水溶液からミルタザピンを直接かつ容易に抽出することであり、ミルタザピンの沈殿を少なくすることができ、また、生じたミルタザピンの沈殿物を単離した後抽出するという工程を行う必要がない。
なお、上記の水溶液には、濃硫酸とアルカリによる無機塩が大量に含有されているので、プロパノールによる抽出が可能となる。
【0019】
プロパノールとして、1−プロパノール、2−プロパノールのいずれも使用可能である。
プロパノールの使用量としては、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、好ましくは130〜500重量部、より好ましくは130〜300重量部、特に好ましくは130〜200重量部である。プロパノールの使用量が130重量部未満であると、ミルタザピンが溶解しないために分液ができない、逆に500重量部を超えると不純物(濃硫酸とアルカリによる無機塩等)を含むおそれがある。
【0020】
プロパノールを加えた後、アルカリ性にする。pHは、通常8以上、好ましくは10〜12である。ここで使用されるアルカリとしては、前記のpH調整に使用されたアルカリと同様のものが挙げられ、水溶液の形態で滴下することが好ましく、その濃度は、操作性の観点から、20〜50重量%、好ましくは20〜30重量%である。温度は、通常20〜50℃である。
【0021】
本発明においては、アルカリ性にした後、ヘプタンを加え、プロパノール−ヘプタン混合溶媒にて抽出を行うことが好ましい。これにより、有機層への水分の持ち込み量を少なくでき、よって無水ミルタザピンを得る場合には有利であり、また、水層へのプロパノール持ち込み量を少なくでき、よってミルタザピンの収率向上につながる。
ヘプタンの使用量は、プロパノールとヘプタン合計量に対して、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは50〜70重量%である。
【0022】
抽出は、上記溶液を70〜80℃に加熱して行われ、その後、分液して水層を除去する。
【0023】
次いで、有機層に、プロパノール、またはプロパノールとヘプタンの混合溶媒を加える。
プロパノールを加える場合、その使用量は、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、通常350〜1000重量部、好ましくは、600〜950重量部である。
プロパノールとヘプタンの混合溶媒を加える場合には、ヘプタンの量がプロパノールとヘプタン合計量に対して10〜60重量%、混合溶媒の量は2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、通常350〜1000重量部、好ましくは350〜700重量部である。
【0024】
この溶液は、脱水処理してもよく、例えば、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブス等の脱水剤が使用できる。
脱水剤の使用量は、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、通常10〜20重量部である。
【0025】
次いで、色相改善、純度向上の観点から、必要により、再度脱色を行ってもよい。
脱色剤としては、活性アルミナ、脱色炭等が挙げられる。活性アルミナとしては、アルミナA−11(住友化学製)等が挙げられる。活性アルミナの使用量としては、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、通常5〜30重量部、好ましくは10〜20重量部である。
脱色炭としては、白鷺A(武田薬品製)等が挙げられる。脱色炭の使用量としては、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、通常2〜10重量部、好ましくは4〜6重量部である。
アルミナ、脱色炭は単独で使用しても併用してもよい。
脱色を行なう際の温度は、通常室温〜40℃、好ましくは20〜35℃である。脱色に要する時間は、通常15〜30分間程度でよい。
脱色剤はろ過し、プロパノールで洗浄する。洗浄に使用するプロパノールの使用量は、脱色剤の総量100重量部に対して、通常200〜250重量部である。
【0026】
次に、プロパノール、またはプロパノールとヘプタンの混合溶媒を留去する。溶媒の留去は常圧でもよいが、減圧によっても行なうことができる。その際の減圧度は、留去速度を向上させる観点から、0.6〜40kPa、好ましくは4〜30kPaである。
【0027】
溶媒の留去は、晶析に必要な量になるまで行われる。2−プロパノールを使用した場合は、濃縮液に残る2−プロパノールが、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、40〜100重量部、好ましくは40〜80重量部となるまで溶媒を留去する。1−プロパノールを使用した場合は、濃縮液に残る1−プロパノールが、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、40〜100重量部、好ましくは40〜60重量部となるまで溶媒を留去する。
【0028】
得られた濃縮液からそのまま結晶化してもよいが、ICHガイドラインクラス3の溶媒、水およびこれらの混合溶媒からミルタザピンを晶析させてもよい。攪拌性および収率を向上させる観点からヘプタンを添加して晶析させるのが好ましい。ヘプタンの量は、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、10〜100重量部、好ましくは40〜80重量部である。ヘプタンを添加する際の温度は、安定した品質の確保の観点から、結晶が析出しない55〜70℃であることが好ましい。なお、ヘプタンは滴下することが好ましい。
【0029】
得られた溶液は、結晶径を揃えるために、種結晶を添加する。添加は、通常48〜55℃で行われる。種結晶の使用量は、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、通常0.005〜0.1重量部である。
その後、48〜55℃で1〜2時間程度熟成した後、冷却する。冷却は徐冷却が好ましく、例えば、1〜10時間、好ましくは5〜8時間かけて0〜10℃に冷却する。
【0030】
ミルタザピンの結晶は、ろ過により単離され、ヘプタン等で洗浄する。ヘプタンの使用量は、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して30〜100重量部程度であればよい。
単離された結晶は、必要により、45〜65℃の温度で減圧乾燥させてもよい。
【0031】
このようにして、純度が高く、医薬品として安全に使用できるミルタザピンを簡便な方法により、単離することができる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例1
【0035】
【化1】

【0036】
窒素雰囲気下、30〜40℃で、98%硫酸530g(5.4mol)に2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール147.4g(0.52mol)を約3時間で分割して添加した。30〜40℃で約6時間攪拌した。HPLCで原料の消失を確認し、反応液677gを得た。この反応液260gを水408g中に5〜26℃で滴下し、水解した。硫酸25.5gで反応液が入っていた容器を洗浄し、水解液に加えた。水解液に13〜30℃で25%水酸化ナトリウム水溶液635.8gを滴下し、pHを1.5に調整した。脱色炭21gを加え30〜33℃で45分間攪拌し、ろ過して、水108gで洗浄し、濾液を2分割した。
分割した濾液699gに2−プロパノール51gを加え、30〜33℃で25%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpH11.2とした(53.4g使用)。約76℃の温度で分液した。有機層に2−プロパノール255gを加えた後、アルミナA−11(住友化学製)4.8gを加え、約28℃で15分攪拌し、さらに脱色炭1.4gを加えて15分攪拌した。脱色剤をろ過し、2−プロパノール14.2gで洗浄した。ろ過液を減圧下濃縮し、濃縮残渣が38.5gまで2−プロパノールを留去した。2−プロパノール7.5gを加えて66℃まで加熱して、ヘプタン15gを流入した。約53℃でミルタザピンの種結晶を少量加え、50℃で1時間熟成し、1℃まで6時間かけて冷却した。結晶を濾過し、ヘプタン14gで結晶を洗浄した。約60℃で減圧乾燥して、白色結晶のミルタザピン21.2gを得た。収率は80%、HPLC純度は99.98%であった。
【0037】
実施例2
実施例1で2分割した残りの濾液699gに1−プロパノール51gを加え、22〜30℃で25%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpH11.8とした(54.1g使用)。約76℃の温度で分液した。有機層に1−プロパノール170gを加えて約27℃に冷却し、アルミナA−11(住友化学製)4.8gを加え、23℃で15分間攪拌し、さらに脱色炭1.4gを加えて15分間攪拌した。ろ過し、脱色剤を1−プロパノール14.2gで洗浄した。ろ過液を約70℃で減圧下濃縮し、濃縮残渣が37.1gまで1−プロパノールを留去した。1−プロパノール1.9gを加えて加熱し、ヘプタン16gを流入した。約48℃でミルタザピンの種結晶を少量加え、約50℃で1時間熟成し、1℃まで6時間かけて冷却した。結晶を濾過し、ヘプタン14gで結晶を洗浄した。約60℃で1時間減圧乾燥して、白色結晶のミルタザピン19.6gを得た。収率は73.9%、HPLC純度は99.97%であった。
【0038】
実施例3
窒素雰囲気下、約40℃で、98%硫酸102g(1.04mol)に2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール28.3g(0.1mol)を約4時間で分割して添加した。約40℃で5時間攪拌した。HPLCで原料の消失を確認した。この反応液を水204g中に滴下し、水解した。硫酸13gで反応液が入っていた容器を洗浄し、水解液に加えた。水解液に13〜30℃で25%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pHを1〜2に調整した。脱色炭10gを加え、30〜31℃で、40分間攪拌し、ろ過して、水54gで洗浄した。
濾液に2−プロパノール37gを加え、25〜35℃で25%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpH11とした(62g使用)。ヘプタン57gを加え、約70℃の温度で分液した。有機層に2−プロパノール99g、ヘプタン15gを加えた後、アルミナA−11(住友化学製)5gを加え、さらに脱色炭1.4gを加えて約30℃で15分攪拌した。脱色剤をろ過し、2−プロパノール14gで洗浄した。ろ過液を常圧下で、濃縮残渣が38.2gまで濃縮した。約53℃でミルタザピンの種結晶を少量加え、2時間熟成し、約1℃まで冷却した。結晶を濾過し、ヘプタン14gで結晶を洗浄した。約60℃で減圧乾燥して、白色結晶のミルタザピン21.2gを得た。収率は80%、HPLC純度は99.98%であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノールを濃硫酸により閉環した反応液から、高い純度で、医薬品として安全に使用できるミルタザピンを簡便な方法により単離することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノールを濃硫酸で閉環して得られた反応液を水で希釈した後、プロパノール存在下、アルカリ性にし、プロパノールでミルタザピンを抽出し、次いで当該抽出液からミルタザピンを結晶化させることを特徴とする、ミルタザピンの製造方法。
【請求項2】
プロパノールの使用量が、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、130〜500重量部である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
アルカリ性にした後、ヘプタンを加える、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
ヘプタンの使用量が、プロパノールとヘプタン合計量に対して10〜70重量%である、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−メタノール100重量部に対して、濃硫酸を300〜400重量部使用して閉環し、得られた反応液100重量部に対して100〜400重量部の水で反応液を希釈する、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
アルカリ金属水酸化物を用いてアルカリ性にする、請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
水で希釈した反応液をpH3以下で脱色する、請求項1記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−231062(P2008−231062A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75573(P2007−75573)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】