説明

ムーンプールにおける流動抵抗を軽減するための装置

ムーンプール内の流動抵抗を軽減するための装置が開示される。当該装置は、格子形状を有するガイド構造(16)を含んでいる。ガイド構造は、水平ガイドプレート(20)、ガイド傾斜部(22)、長手状補強梁部(24)及び回動軸(H)を含んでいる。水平ガイドプレートは、ハルの縦方向に沿って互いに離隔し、且つ、ハルの横方向に沿って列に配置されている。ガイド傾斜部は横方向に沿って列に配置され且つ各水平ガイドプレートに結合されている。ガイド傾斜部の前端はハルの船首側に向けて上方に傾斜しており且つ隣接する前方の水平ガイドプレートの後端から離隔している。長手状補強梁部は水平ガイドプレート及びガイド傾斜部を支持している。格子ガイド構造はヒンジ軸の周りを運航位置又は作業位置へと回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常、船又は海洋構造物に提供されるムーンプールに関する。さらに特には、ムーンプールの流動(フロー)抵抗を軽減するための装置に関するものであり、当該装置は、調査及び掘削作業が行われているときに作業を容易にするようにムーンプールの内側壁の方向に回動する方法で引っ込められ(収容され)、且つ、ムーンプールが設けられた船が運航しているときに分離流がムーンプールに進入することを阻止するように船の底面に対して延在(展開)されることで、流動抵抗を効果的に減少させるように構成されている。
【背景技術】
【0002】
この技術分野の当業者によく知られているが、工業化が特定分野において発展しているので、様々な資源の利用が急速に増大している。特に、石油のような資源の生産及び供給が非常に重要な問題として挙がっている。この理由により、掘削装置を装備した掘削船及び沿岸産業によって使用される浮遊船であるFPSOユニット(浮遊式生産貯蔵出荷設備)が近年発展しており、深海から様々な資源を生産するために調査及び掘削作業に使用されている。
【0003】
掘削船等のような船舶において、掘削パイプ又は採掘パイプがムーンプールを通って海底に移動されるように、比較的大きい開口であるムーンプールがハル(船殻)の中心部に亘って形成されている。ムーンプールは、例えば掘削のような機能に不可欠であるが、船の錨泊、航海安定性及び船の推進性能の点で弱点となる。
【0004】
特に、従来の掘削船では、ムーンプール内の海水と船外の海水との間の相対運動で誘発されるスロッシング現象によって、掘削船の運航時には(船の)速度を減少させるように船への抵抗が増加する。その上、電力消費が増加し、結果として燃料消費が増大する。さらに、船が流氷領域上を航海する場合、流氷がムーンプールを通ってハルに進入して、ハルに損傷を与えるという問題を引き起こす。
【0005】
ムーンプール内の海水の動きに起因する抵抗の増加のような、これらの問題を解決することを目的として、必要時にムーンプールを完全に閉鎖するのにドア構造又はフラップ構造を使用する技術が提案されている。しかしながら、ムーンプールを完全に閉鎖する構造により船の重量が過大に増加する。従って、重い船を牽引するためのタグ(牽引)ボートのような操業設備に多くの困難性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は先行技術に存在する上記問題に留意することでなされたものであり、本発明の目的は、ムーンプールの底部領域の一部を占めるとともに、運航時に分離流がムーンプールに進入することを阻止する砕波(wave breaking)機能を持つ格子構造を有する装置を提供することにあり、それによって、船のハルへの抵抗を軽減させる。また、ムーンプールを備える船又は海洋構造物の使用、あるいは、例えば様々な牽引設備を使用して船又は海洋構造物を取り扱うことを容易にするように、これは軽量である。また、ムーンプールを通して調査及び掘削作業が行われているときに、ムーンプールの内側壁に対して回動させるように格子構造は引っ込められ(収容され)、よって、作業を容易にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明は、ムーンプール内の流動抵抗を軽減するための装置を提供する。この装置は格子形状を有するガイド構造を含んでいる。このガイド構造は、ハルの長手(縦)方向に沿って互いに離隔し且つハルの横(幅)方向に沿って複数の列に配置されている複数の水平ガイドプレートと、ハルの横方向に沿って複数の列に配置され且つ各水平ガイドプレートの前端にその後端で結合されている複数のガイド傾斜部(ランプ)であって、当該ガイド傾斜部の前端はハルの船首側に向けて上方に傾斜しており且つ隣接する前方の水平ガイドプレートの後端から離隔している、ガイド傾斜部と、複数の列にハルの縦方向に沿って配置され且つ対応する水平ガイドプレート及び対応するガイド傾斜部に結合されている複数の長手状補強梁部と、ムーンプール内で運航位置又は作業位置に向けて格子ガイド構造が(その周りを)回動する回動軸とを含んでいる。
【0008】
装置は、回動軸の周りを回動可能になるようにムーンプールに提供されたフレームをさらに備えうる。格子構造を有するように水平ガイドプレート、ガイド傾斜部及び長手状補強梁部が互いに結合されるように、このフレームは水平ガイドプレート、ガイド傾斜部及び長手状補強梁部をそこに受領して支持する。
【0009】
回動軸はムーンプールのハルの横方向に配向しており、それによって、格子ガイド構造が運航位置に延在(展開)されるか又は作業位置に引っ込められる(収容される)ように、ガイド構造は船首側の内側壁又は船尾側の内側壁に対して回動軸の周りを回動する。この場合、回動軸は、ムーンプールの船首側の内側壁及び船尾側の内側壁に隣接してそれぞれ配置された2本の回動軸を備える。格子ガイド構造は、ハルの縦方向に対してムーンプールの中間部で2つの部分に分割されうる。
【0010】
あるいは、回動軸はムーンプールのハルの縦方向に配向しており、それによって、格子ガイド構造が運航位置に延在されるか又は作業位置に引っ込められるように、ガイド構造は船首側の内側壁又は船尾側の内側壁に対して回動軸の周りを回動する。この場合、回動軸は、ムーンプールの左舷側内側壁及び右舷内側壁に隣接してそれぞれ配置された2本の回動軸を備える。そして、格子ガイド構造は、ハルの横方向に対してムーンプールの中間部で2つの部分に分割されうる。
【0011】
装置は、ムーンプール内で回動軸の周りに格子ガイド構造を運航位置又は作業位置に回動させる作動ユニットと、ムーンプール内で作業位置に格子ガイド構造を保持する固定ユニットと、をさらに含みうる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による、ムーンプール内の流動抵抗を軽減させるための装置は、選択的且つ部分的にムーンプールの開口の底領域を閉鎖する軽量な格子構造を有する。即ち、該装置を備えた船が運航するとき、分離流がムーンプールに進入することを阻止する砕波機能を実行し、そして、船への流動抵抗を効果的に減少させる。さらに、装置が軽量であるので、ムーンプールが設けられた船又は海洋構造物の使用、あるいは、例えば様々な牽引設備を使用する船又は海洋構造物の取り扱いを容易にすることができる。特には、本発明の装置は、船が海の通常領域を航海するときにムーンプールに分離流が進入することを防止することができるだけでなく、船が極領域のような流氷領域上を航海するときに船の底面に沿って流れる流氷がムーンプールに進入することをも防止することができる。
【0013】
さらに、格子構造は、ムーンプールの内側壁に向かって回動する方法で収容可能である。つまり、調査及び掘削作業がムーンプールを通して実行されているときにムーンプールを開状態にすることが可能である。従って、パイプのような設備がムーンプールを通して海底に移動されるとき、船のハルへの設備の衝突をより確実に避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従う、ムーンプール内の流動抵抗を軽減するための装置の設置を示す側部断面図。
【図2】本発明に従う、格子ガイド構造の一実施形態を示す斜視図。
【図3】船の運航時に図2の格子ガイド構造の砕波機能を示す図。
【図4】図2の格子ガイド構造の細部を示す図。
【図5】図2の格子ガイド構造の細部を示す図。
【図6】船の運航時にハルの流動抵抗軽減効果の試験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
図に示すとおり、船又は海洋構造物のムーンプール12は、ハル10に亘って垂直に形成された中空形状を有する。ムーンプール12は海面位とデッキとを直接的に連絡する。詳細には、ムーンプール12は、互いに対面する複数の内側壁14をそこに含んでいる。ムーンプール12の水平断面は矩形状である。あるいは、ムーンプール12aの水平断面は、船首側と船尾側との間で異なる幅を有する四角形状であってもよい。この場合、ムーンプール12の船首側の幅は、典型的には、船尾側の幅よりも小さい。
【0017】
平面形状の格子ガイド構造(ムーンプールガイドアレイ(誘導配列))16は、ムーンプール12内に回動可能に設置されている。船又は海洋構造物が海上を運航するときに、海水がムーンプール12内に引き込まれることを防止するように、格子ガイド構造16はムーンプール12の底面18に対して水平方向に延在(展開)している状態に保持される。これによって、ハルに適用される流動抵抗を軽減する。調査及び掘削作業時には、格子ガイド構造16は、内側壁14に対して引っ込められて、様々な種類の装置が作業を実行するためにムーンプール12の開口を通過することを可能にするように引き込み(収容)状態に維持される。
【0018】
上記目的を達成するように、格子ガイド構造16は、複数の水平ガイドプレート20と、複数のガイド傾斜部(ランプ)22と、複数の長手状補強梁部24と、回動軸Hとを含んでいる。水平ガイドプレート20は、ハルの幅(横)方向に沿って複数の列でムーンプール12内に配置され、且つ、ハルの長手(縦)方向に沿って一定間隔で互いに離隔している。ガイド傾斜部22はハルの幅方向に沿って複数の列でムーンプール12内に配置されている。(複数の)ガイド傾斜部22の後端は各水平ガイドプレート20の前端に結合されている。また、ガイド傾斜部22の前端はハルの船首側に向かって上方に傾斜している。換言すると、ガイド傾斜部22の前端は、ムーンプール12の上端に対応する位置に配置されたデッキに向かって傾斜している。さらに、各ガイド傾斜部22の前端は、隣接する他の水平ガイドプレート20の後端から所定距離だけ離隔している。長手状補強梁部24は、複数の列でムーンプール12内にハルの長手方向に沿って配置され、且つ、対応する水平ガイドプレート20と対応するガイド傾斜部22とに結合されている。長手状補強梁部24は、水平ガイドプレート20とガイド傾斜部22の構造的強度を補強する。運航位置(底面18に対して延在しているときの格子ガイド構造16の位置)、又は、作業位置(内側壁に対して引っ込められているときの格子ガイド構造16の位置)に向けて、格子ガイド構造16はムーンプール12内で回動軸Hの周りを回動可能である。格子ガイド構造16の全体外観がムーンプール12の内側壁14によって定められた空間の水平断面に対応するように、水平ガイドプレート20、ガイド傾斜部22及び長手状補強梁部24を含む格子ガイド構造16は構成されている。
【0019】
図3に示すとおり、ガイド傾斜部22は、ハルが動いているときに船首側から船尾側に向かって流れる海水から分離した水流を阻止(ブロック)し、それによって、分離流がムーンプール12に進入することを防止し、分離流を元の流れ方向(海水がハルの底面18に沿って流れる方向)に誘導する。ここで、各ガイド傾斜部22の前端と隣接する前方の水平ガイドプレート20の後端との間の距離が比較的短いが、ガイド傾斜部22は、分離流の強度が再度増加する前に、元の流れ方向に分離流を滑らかに誘導することができる。従って、ガイド傾斜部22はその長さが比較的短いように設定されているにもかかわらず、分離流がムーンプール12に進入することを効果的に防止することが可能である。即ち、ムーンプール12における水平ガイドプレート20の領域全体を、ムーンプール12の水平領域全体の約30%よりも小さくすることができる。
【0020】
各水平ガイドプレート20は、対応するガイド傾斜部22の後端に結合されて、水流が元の流れ方向(海水がハルの底面18に沿って流れる方向)に流れるように、ガイド傾斜部22によって方向を変えられた水流を誘導するとともに水流を維持するように機能する。それによって、ガイド傾斜部22の後端で海水から分離された水流が再度ムーンプール12に進入することをより確実に防止することができる。特に、水平ガイドプレート20は、
当該水平ガイドプレート20の長さによって、各水平ガイドプレート20とガイド傾斜部22との間のジャンクション(分流点)であるガイド傾斜部22後端で誘発される水流の分離を遅延させる機能を有する。ここで、各水平ガイドプレート20の長さを大きく増加させることは不必要である。なぜなら、水流が水平ガイドプレート20の後端からムーンプール12に進入することを防止できるように、隣接する後ろのガイド傾斜部22が水平ガイドプレート20の後端から所定距離だけ離れた位置で配置されているからである。
【0021】
長手状補強梁部24は、ムーンプール12内に提供され、ハルの長手方向に配列している。さらに、水流によりそれに適用される抵抗に対して水平ガイドプレート20及びガイド傾斜部22の強度を強化するように、長手状補強梁部24は水平ガイドプレート20及びガイド傾斜部22に結合されている。従って、長手状補強梁部24によって、水流がムーンプール12に進入することを制限する水平ガイドプレート20及びガイド傾斜部22の機能をより確実にすることができる。
【0022】
格子ガイド構造16は、ムーンプール12の外周に近接して配置されているとともに回動軸Hの周りを回動可能であるフレーム26をさらに含む。水平ガイドプレート20、ガイド傾斜部22及び長手状補強梁部24が互いに結合されて格子構造を有するように、ムーンプール12内のフレーム26は水平ガイドプレート20、ガイド傾斜部22及び長手補強梁部24をそこに受領及び支持する。フレーム26は、ムーンプール12の内側壁14で定められる空間の水平断面に対応する形状を有する。つまり、格子ガイド構造16がムーンプール12内で(その周りを)回動可能である回動軸Hを、フレーム26の一端及び長手状補強梁部24の対応する端部が形成する。
【0023】
本発明では、運航位置又は作業位置へと格子ガイド構造16がその周りを回動する回動軸Hは、船首、船尾、左舷及び右舷内側壁14のいずれか1つに形成される。あるいは、回動軸Hは、ムーンプール12の内側壁14の少なくとも2つの位置に形成されてもよい。
【0024】
例えば、回動軸Hはムーンプール12のハルの幅方向に配向しうる。この場合、格子ガイド構造16が運航位置に延在されるか又は作業位置に引っ込められるように、格子ガイド構造16は船首側の内側壁14a又は船尾側の内側壁14bに対して回動軸Hの周りを回動する。図2に示すとおり、2本の回動軸Hがハルの幅方向に形成されうる。この場合、2本の回動軸Hは、ムーンプール12の船首側の内側壁14a及び船尾側の内装壁14bに隣接してそれぞれ配置される。格子ガイド構造16は、ハルの長手方向に関するムーンプール12の中間部に基づいて2つの部分に分割される。また、格子ガイド構造16の2つの部分は、それらが運航位置に延在されるか又は作業位置に引っ込められるように、船首側の内側壁14a及び船尾側の内側壁14bに対してそれぞれ回動する。
【0025】
別例のように、回動軸Hはムーンプール12のハルの長手方向に配向されうる。この場合、格子ガイド構造16が運航位置に延在されるか又は作業位置に引っ込められるように、格子ガイド構造16は左舷側壁14c又は右舷側壁14dに対して回動軸Hの周りを回動する。さらに、2本の回動軸Hがハルの長手方向に形成されうる。この場合、2本の回動軸Hは、ムーンプール12の左舷内側壁14c及び右舷内装壁14dに隣接してそれぞれ配置される。格子ガイド構造16は、ハルの幅方向に関するムーンプール12の中間部に基づいて2つの部分に分割される。また、格子ガイド構造16の2つの部分は、それらが運航位置に延在されるか又は作業位置に引っ込められるように、左舷内側壁14c及び右舷内側壁14dに対してそれぞれ回動する。
【0026】
本発明の装置は、作動ユニット及び固定ユニットをさらに含む。作動ユニットはムーンプール12内で回動軸Hの周りに格子ガイド構造16を運航位置又は作業位置へと回動させる。固定ユニットは、格子ガイド構造16が作動ユニットによって作業位置に移動した後に、格子ガイド構造16を対応する内側壁14に保持する。
【0027】
詳細には、例えば、クレーン又は油圧アクチュエータのような作動力を回動軸Hが形成された位置の反対側の格子ガイド構造16の自由端に適用するように、格子ガイド構造16を回動できる限り、作動ユニットは特定の装置に限定されない。
【0028】
さらに、格子ガイド構造16の自由端がムーンプール12の対応する内側壁14に移動する作業位置で格子ガイド構造16を保持可能である限り、固定ユニットは特定の構造にも限定されない。好ましくは、格子ガイド構造16を保持するための固定ユニットとして、ファスナー(締結具)がムーンプール12の対応する内側壁14に設置される。以下に、ムーンプール12の内側壁14で定められる空間の全体領域に関わる格子ガイド構造16の構成要素の細部の好適な実施形態を説明する。
【0029】
図1、4及び5に示すとおり、参照文字Lはムーンプール12の底部の長さを示し、参照文字Dはムーンプール12の深さを示す。各水平ガイドプレート20の長さL1gは、ムーンプール12の全長の2%から8%の範囲にある。長さL1gはムーンプール12の全長の約4%であることが好ましい。ガイド傾斜部22が垂直に突出した底面18から見える、ガイド傾斜部22の水平長さL2gは水平ガイドプレート20の長さL1gの100%から120%の範囲にある。好ましくは、長さL2gは長さL1gの約110%である。
【0030】
さらに、ガイド傾斜部22の前端と隣接する水平ガイドプレート20の後端との間の水平長さL3gは、水平ガイドプレート20の長さL1gの100%から200%の範囲にある。好ましくは、長さL3gは長さL1gの約100%である。例えば、極領域のような流氷領域を主に航海する船の場合、ガイド傾斜部22の前端と隣接する水平ガイドプレート20の後端との間の長さL3gは、500mmから2000mmの範囲にある。流氷領域を航海するときに流氷がムーンプール12に進入することをより効果的に防止するように、好ましくは、長さL3gは1000mmに設定される。
【0031】
ムーンプール12の水平ガイドプレート20の全領域は、ムーンプール12の全水平領域の約30%かそれ未満になるように設定される。さらに、底面18に対するガイド傾斜部22の内角Agは20°から45°の範囲にある。より好ましくは、内角Agは30°である。水平ガイドプレート20及びガイド傾斜部22の全幅は、ムーンプール12の幅の90%から100%の範囲にあり、より好ましくは、ムーンプール12の幅の約100%に設定される。さらに、ガイド傾斜部22が水平に突出した内側壁14から見ると、ガイド傾斜部22の高さDgは、ガイド傾斜部22の長さ及び底面18に対するガイド傾斜部22の角度に依存して決定される関数値として設定される。
【0032】
その一方で、ムーンプール12の船首側の内側壁と最前方のガイド傾斜部22の前端との間の距離X1gは、水平ガイドプレート20の長さの25%から200%の範囲にあり、好ましくは、水平ガイドプレート20の50%に設定される。底面18に基づいた水平ガイドプレート20の設置位置Z1gは、ガイド傾斜部22の高さDgの−50%から200%の範囲にあり、好ましくは、ガイド傾斜部22の高さDgの0%である。換言すると、水平ガイドプレート20は底面18と同じ高さにあるのが最も好ましい。この場合、格子ガイド構造16が運航位置に回動するときに水平ガイドプレート20が底面18の下の位置に移動することを防止するように、別々のストッパが回動軸Hに提供される。換言すると、格子ガイド構造16が底面18の下の位置に移動することを防止するように、ストッパは格子ガイド構造16を支持するように機能する。
【0033】
上述の細部を有する格子ガイド構造16がムーンプール12に設置されるとき、ハルへの抵抗を軽減する効果を提供可能である。これは、モデル試験の結果を示す図6のグラフから明確に理解することができる。図6に示すとおり、格子ガイド構造を持たないムーンプール12の場合(点線で示されている)と比較すると、格子ガイド構造16がムーンプール12に設置されて運航位置に延在されると(実線で示されている)、ハルの速度の関数としての電力消費は最大約15%減少される。さらに詳細には、本発明の装置は、ムーンプール12が設けられた船が運航するときにムーンプール12内の流体の動きを制限し、即ち、ムーンプール12の流体の動きに起因するハルへの抵抗を著しく減少させる。それによって、ムーンプールが開いている場合と比較して、本発明は、船の運航時の電力消費の増分の最大約80%を減少させることができる。
【0034】
本発明の好適な実施形態は説明した目的のために開示されているが、特許請求の範囲に開示されている発明の技術的範囲及び技術思想から外れることなく、様々な改変、付加及び置換が可能であることを本分野の当業者は理解するであろう。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によるムーンプールの流動抵抗を軽減するための装置は、ムーンプールの開口の底領域を選択的に且つ部分的に閉鎖する格子構造を有する。即ち、該装置を備えた船が運航するとき、該装値は、分離流がムーンプールに進入することを防止する機能を実行し、つまり、船への流動抵抗を効果的に軽減する。さらに、該装置は軽量であるので、ムーンプールを備えた船又は海洋構造の使用、あるいは、船又は海洋構造の取り扱いを容易にすることが可能である。特には、本発明の装置は、船が極領域のような流氷領域を航海するときに、船の底面に沿って流れる流氷がムーンプールに進入することを防止することができる。
【0036】
さらに、格子構造は、ムーンプールの内側壁に向かって回動するように、収容可能である。即ち、調査及び掘削作業がムーンプールを通して行われているとき、ムーンプールは開状態になりうる。従って、パイプのような設備がムーンプールを通して海底に移動されるとき、船のハルへの設備の衝突をより迅速に避けることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムーンプールにおける流動抵抗を軽減するための装置であって、格子形状を有するガイド構造を備えており、
前記ガイド構造は、
ハルの縦方向に沿って互いに離隔し、且つ、前記ハルの横方向に沿って複数の列に配置されている複数の水平ガイドプレートと、
前記ハルの横方向に沿って複数の列に配置され、且つ、前記各水平ガイドプレートの前端にその後端で結合されている複数のガイド傾斜部であって、当該ガイド傾斜部の前端は、前記ハルの船首側に向けて上方に傾斜しており、且つ、隣接する前方の前記水平ガイドプレートの後端から離隔している、ガイド傾斜部と、
複数の列に前記ハルの縦方向に沿って配置され、且つ、対応する前記水平ガイドプレート及び対応する前記ガイド傾斜部に結合されている複数の長手状補強梁部と、
前記ムーンプール内で、運航位置又は作業位置に向けて前記格子ガイド構造が回動する回動軸と、を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記回動軸の周りを回動可能になるように前記ムーンプールに提供されたフレームをさらに備えており、
前記水平ガイドプレート、前記ガイド傾斜部及び前記長手状補強梁部が格子構造を有するように互いに結合されるように、前記フレームが前記水平ガイドプレート、前記ガイド傾斜部及び前記長手状補強梁部をそこに受領して支持することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記回動軸は前記ムーンプール内の少なくとも1つの位置に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記回動軸は前記ムーンプールの前記ハルの横方向に配向しており、それによって、前記格子ガイド構造が前記運航位置に延在されるか又は前記作業位置に引っ込められるように、前記ガイド構造が船首側の内側壁又は船尾側の内側壁に対して前記回動軸の周りを回動することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記回動軸は、前記ムーンプールの前記船首側の内側壁及び前記船尾側の内側壁に隣接してそれぞれ配置される2つの回動軸を備えており、前記格子ガイド構造は前記ハルの縦方向に関する前記ムーンプールの中間部で2つの部分に分割されていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記回動軸は前記ムーンプールの前記ハルの縦方向に配向されており、それによって、前記格子ガイド構造が前記運航位置に延在されるか又は前記作業位置に引っ込められるように、前記ガイド構造が左舷内側壁又は右舷内側壁に対して前記回動軸の周りを回動することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記回動軸は、前記ムーンプールの前記左舷内側壁及び前記右舷内側壁に隣接してそれぞれ配置される2つの回動軸を備えており、前記格子ガイド構造は、前記ハルの横方向に関する前記ムーンプールの中間部で2つの部分に分割されていることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ムーンプールにおける前記水平ガイドプレートの全体領域は、前記ムーンプールの全水平領域の30%かそれ未満であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ハルの縦方向に関する前記各々の水平ガイドプレートの長さは前記ムーンプールの全長の2%から8%の範囲にあり、
前記ガイド傾斜部が垂直に突出する底面から見ると、前記各々のガイド傾斜部の水平長さは前記水平ガイドプレートの長さの100%から120%の範囲にあり、
前記ガイド傾斜部の前端と隣接する前方の前記水平ガイドプレートの後端との間の水平距離は前記水平ガイドプレートの長さの100%から200%の範囲にあり、
前記底面に対する前記ガイド傾斜部の内角は20°から45°の範囲にあり、前記水平ガイドプレート及び前記ガイド傾斜部の全幅は前記ムーンプールの幅の90%から100%の範囲にあり、
前記ムーンプールの前記船首側の内側壁と最前方のガイド傾斜部の前端との間の距離は前記水平ガイドプレートの長さの25%から200%の範囲にあり、
前記水平ガイドプレートは前記ハルの底面と同じ高さにあることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ムーンプール内で、前記格子ガイド構造を前記運航位置又は前記作業位置に前記回動軸を中心として回動させる作動ユニットと、
前記ムーンプール内で、前記格子ガイド構造を前記作業位置に保持する固定ユニットと、をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−519568(P2013−519568A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552785(P2012−552785)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005134
【国際公開番号】WO2011/099682
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(510046631)デウ シップビルディング アンド マリーン エンジニアリング カンパニー リミテッド (10)