説明

ムーンプール付船舶

【課題】推進抵抗を低減することができるムーンプール付船舶を提供する。
【解決手段】ムーンプール30が設けられた船体と、船底カバー60と、ムーンプール30が船底21に開口する船底開口31を開閉するように設けた船底カバー60を動かすクレーン40とを具備する。船底カバー60が船底開口31を閉じているとき、船底カバー60の下面61b、62bは船底21の表面と面一になり、船底21に沿って船首から船尾に向かう水流がムーンプール30内に入り込むことによる推進抵抗の増加を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はムーンプール付き船舶に関し、特にムーンプール付き船舶の推進抵抗低減に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器類を海中に送り出すために、船底から上甲板まで貫通する海面の開放区画としてのムーンプールを備えた特殊船舶が知られている。例えば、石油や鉱石を掘削するための掘削船では、上甲板の上に構築された掘削やぐらからムーンプールを介して海底まで掘削装置が吊り降ろされるようになっている。
【0003】
図1は、掘削船100の航行時の様子を示している。掘削船100は、船底121から上甲板122まで貫通するムーンプール130を備えている。船底121に沿って船首から船尾に向かう水流201がムーンプール130内に入り込むため、掘削船100の推進抵抗が増加するという問題が知られている。
【0004】
特許文献1は、ムーンプールの開口部を閉鎖して推進時の抵抗を減少するためのムーンプール開閉装置を開示している。ムーンプール開閉装置は、円形塞板と、4つのスプロケットと、エンドレスチェーンと、駆動装置とを備える。円形塞板は、ムーンプールの開口部が設けられた船底部に設けられ、開口部を通る水平方向にスライド可能である。エンドレスチェーンは、4つのスプロケットの各々と、円形塞板の外周部とに巻きまわされている。駆動装置は、4つのスプロケットの1又は2以上と連結してこれらを回転させる。
【0005】
特許文献2は、ムーンプール付き船舶の推進抵抗低減装置を開示している。推進抵抗低減装置は、その先行部分が少なくともムーンプールの船底開口部よりも船首側に位置し、航行時の船底に沿う水流を左右に振り分けてムーンプール船底開口部への水流の入り込みを阻止するように船首側から船尾側に向かって後退し、かつ船底に対して内方に傾斜して取り付けられた左右一対の整流板を備える。
【0006】
特許文献3は、ムーンプールの内部で発生する海水の流動エネルギーを分散及び吸収することにより、ムーンプール内のスロッシング及びムーンプールから船上へのオーバーフローを抑え、ムーンプールの内部で発生する渦流を最小限に抑えて船舶の速度を向上させることが可能なムーンプール流動抑制装置を開示している。ムーンプール流動抑制装置は、ムーンプールの内壁面である船首部側面、船尾部側面、及び両側面に垂直に設けられる複数のムーンプールプレートと、船首部側面の下縁からムーンプールの中心に向かって突き出し、船底面と等しいレベルを保つように設けられたムーンプールブロックとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭62−000090号公報
【特許文献2】特開2001−158394号公報
【特許文献3】特表2009−506930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ムーンプール付船舶の推進抵抗を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0010】
本発明によるムーンプール付船舶(10)は、ムーンプール(30)が設けられた船体(20)と、船底カバー(60、70、80)と、前記ムーンプールが船底(21)に開口する船底開口(31)を前記船底カバーが開閉するように前記船底カバーを動かすクレーン(40)又はウインチ(41〜44)とを具備する。
【0011】
上記ムーンプール付船舶は、前記クレーンを具備する。前記船底カバーは、前記クレーンによって吊り上げられるための吊り金具(65)を備える。
【0012】
前記船体は、前記船底カバーを回転可能に支持するヒンジ部(25、26)を備える。前記クレーン又は前記ウインチは、前記船底カバーを回転させて前記船底開口を開閉する。
【0013】
前記船底カバーは、折りたたみ及び展開が可能に連結された複数の板状体(81〜86)を備える。前記クレーン又は前記ウインチは、前記船底カバーを折りたたみ及び展開させて前記船底開口を開閉する。
【0014】
前記船底カバーが前記船底開口を閉じているとき、前記船底カバーの下面(61b、62b、71b、72b)は前記船底の表面と面一になる。
【0015】
前記船底カバーが展開して前記船底開口を閉じているとき、前記複数の板状体がそれぞれ備える複数の下面(81a〜86a)は前記船底の表面と面一になる。
【0016】
前記ムーンプールの壁(32〜36)に前記船底カバーが収容される凹部(37〜39)が形成される。
【0017】
本発明によるムーンプール付船舶の抵抗低減方法は、船舶(10)に搭載されたクレーン(40)又はウインチ(41〜44)を用いて船底カバー(60、70、80)を動かして、前記船舶のムーンプール(30)が船底(21)に開口する船底開口(31)を閉じるステップと、前記クレーン又は前記ウインチを用いて前記船底カバーを動かして、前記船底開口を開くステップとを具備する。
【0018】
本発明によるムーンプールの船底カバーは、ムーンプール(30)が船底(21)に開口する船底開口(31)を開閉するための船底カバー(60)である。前記船底カバーは、前記船底開口を閉じる蓋体(61、62)と、前記蓋体に設けられた吊り金具(65)とを備える。
【0019】
本発明によるムーンプールの船底カバーは、ムーンプール(30)が船底(21)に開口する船底開口(31)を開閉するための船底カバー(70)である。前記船底カバーは、船体(20)が備えるヒンジ部(25、26)に支持される蓋体(71、72)を具備する。
【0020】
本発明によるムーンプールの船底カバーは、ムーンプール(30)が船底(21)に開口する船底開口(31)を開閉するための船底カバー(80)である。前記船底カバーは、折りたたみ及び展開が可能に連結された複数の板状体(81〜86)を具備する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ムーンプール付船舶の推進抵抗が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、従来のムーンプール付船舶(掘削船)の側面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係るムーンプール付船舶の側面図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係るムーンプール近傍部分の側面図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係るムーンプール近傍部分の平面図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施形態に係るムーンプール近傍部分の側面図である。
【図6】図6は、第2の実施形態に係るムーンプール近傍部分の平面図である。
【図7】図7は、本発明の第3の実施形態に係るムーンプール近傍部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面を参照して、本発明によるムーンプール付船舶、その抵抗低減方法、及びムーンプールの船底カバーを実施するための形態を以下に説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る船舶10は、ムーンプール30が設けられた船体20を備える。ムーンプール30は、船底21から上甲板22まで船体10を貫通している。船舶10は、ムーンプール30が船底21に開口する船底開口31を開閉する船底カバー60を備える。
【0025】
船舶10の航行時においては、船底カバー60で船底開口31を閉じる。船底カバー60は、船底21に沿って船首から船尾に向かう水流202がムーンプール30内に入り込むことを防止する。したがって、船舶10の推進抵抗が低減され、航行時の燃費が削減される。尚、船底カバー60は、船底開口31を水密に閉じる構造を有していてもよく、水密に閉じる構造を有していなくてもよい。
【0026】
停船した船舶10からムーンプール30を通して機器装置を海中に下ろすとき、船底開口31から船底カバー60を移動して船底開口31を開く。
【0027】
図3を参照して、船舶10はクレーン40を備える。クレーン40は、上甲板22のような喫水線より高い位置に設けられることが好ましい。クレーン40は、船底カバー60を動かして船底開口31を開閉する。したがって、ムーンプルール付船舶に一般的に搭載されるクレーンを用いて船底開口31を開閉する駆動系を容易に構築することができる。船体20は、船底開口31の周囲に配置された船底カバー支持部23を備える。船底カバー60は、蓋体61及び62を備える。蓋体61及び62にはそれぞれ吊り金具65が設けられている。蓋体61は、被支持面61aと、下面61bとを有する。被支持面61aと下面61bは段違いに配置されている。蓋体62は、被支持面62aと、下面62bとを有する。被支持面62aと下面62bは段違いに配置されている。船底カバー60が船底開口31を閉じているとき、蓋体61は被支持面61a及び下面61bが下を向いた状態で船底カバー支持部23に載せられて船底開口31の船尾側部分を閉じ、蓋体62は被支持面62a及び下面62bが下を向いた状態で船底カバー支持部23に載せられて船底開口31の船首側部分を閉じる。このとき、被支持面61a及び62aが船底カバー支持部23に接触した状態で蓋体61及び62が支持される。
【0028】
尚、船底カバー60が船底開口31を閉じているとき、下面61b及び62bが船底21の表面と面一となること(下面61b及び62bと船底21の表面との間に段差がないこと)が好ましい。下面61b及び62bが船底21の表面と面一であると、船底21に沿って船首から船尾に向かう水流202が乱されないため、船舶10の推進抵抗が更に低減される。
【0029】
蓋体61及び62を十分重くすることで航行時に蓋体61及び62が船底カバー支持部23から持ち上がらないようにすることが可能であるが、図示されないロック器具を用いて蓋体61及び62を船底カバー支持部23から持ち上がらないように固定することが好ましい。尚、蓋体61及び62は、大きさ又は重さが同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
図4は、上から見たときの蓋体61及び62と船底カバー支持部23との位置関係を示している。
【0031】
クレーン40が船底カバー60を動かして船底開口31を開くとき、クレーン40は、吊り金具65を用いて蓋体61を吊り上げて船底カバー支持部23から上甲板22に移動し、吊り金具65を用いて蓋体62を吊り上げて船底カバー支持部23から上甲板22に移動する。クレーン40が船底カバー60を動かして船底開口31を閉じるとき、クレーン40は、吊り金具65を用いて蓋体61を吊り上げて上甲板22から船底カバー支持部23に移動し、吊り金具65を用いて蓋体62を吊り上げて上甲板22から船底カバー支持部23に移動する。蓋体61及び62が吊り金具65を備えるため、クレーン40で蓋体61及び62を移動することが容易である。
【0032】
本実施形態においては、船底カバー60が蓋体61及び62に分割されているため、船底開口31の開閉が容易である。ただし、船底カバー60は分割されない一体構造を有していてもよい。尚、船底カバー60は上述したように前後に分割されていてもよく、左右に分割されていてもよい。また、クレーン40の能力によっては船底カバー60が三つ以上に分割されていてもよい。
【0033】
(第2の実施形態)
図5を参照して、本発明の第2の実施形態に係る船舶10を説明する。以下、本実施形態に係る船舶10と第1の実施形態に係る船舶10との相違点を説明する。船舶10は、船底カバー60のかわりに船底カバー70を備える。航行時に船底カバー70で船底開口31を閉じることで、船底21に沿って船首から船尾に向かう水流202がムーンプール30内に入り込むことを防止する。したがって、船舶10の推進抵抗が低減され、航行時の燃費が削減される。船底カバー70は、蓋体71及び72を備える。蓋体71は、被支持面71aと、下面71bとを有する。被支持面71aと下面71bは段違いに配置されている。蓋体72は、被支持面72aと、下面72bとを有する。被支持面72aと下面72bは段違いに配置されている。本実施形態において、船体20は、蓋体71を回転可能に支持するヒンジ部25と、蓋体72を回転可能に支持するヒンジ部26とを備える。船舶10は、クレーン40のかわりに、又は、クレーン40に加えて、ウインチ41及び42を備える。ウインチ41及び42は、上甲板22のような喫水線より高い位置に設けられることが好ましい。ウインチ41は、プーリー45に掛けられたワイヤ51を介して蓋体71に接続されている。ウインチ42は、プーリー46に掛けられたワイヤ52を介して蓋体72に接続されている。ウインチ41及び42は、船底カバー70を動かして船底開口31を開閉する。したがって、ダイバー作業を行わなくても船底開口31を開閉することができる。また、ムーンプール付船舶に一般的に搭載されるウインチを用いて船底開口31を開閉するための駆動系を容易に構築することができる。
【0034】
図6は、船底カバー70が船底開口31を閉じている状態を上から見たときの蓋体71及び72と船底カバー支持部23との位置関係を示している。また、ムーンプール30の壁32〜35がムーンプール30を囲むように設けられている。壁32は船尾側に位置し、壁33は船首側に位置し、壁34は左舷側に位置し、壁35は右舷側に位置する。
【0035】
船底カバー70が船底開口31を閉じているとき、蓋体71は被支持面71a及び下面71bが下を向いた状態で船底カバー支持部23に載せられて船底開口31の船尾側部分を閉じ、蓋体72は被支持面72a及び下面72bが下を向いた状態で船底カバー支持部23に載せられて船底開口31の船首側部分を閉じる。このとき、被支持面71a及び72aが船底カバー支持部23に接触した状態で蓋体71及び72が支持される。
【0036】
尚、船底カバー70が船底開口31を閉じているとき、下面71b及び72bが船底21の表面と面一となることが好ましい。下面71b及び72bが船底21の表面と面一であると、船底21に沿って船首から船尾に向かう水流202が乱されないため、船舶10の推進抵抗が更に低減される。
【0037】
蓋体71及び72を十分重くすることで航行時に蓋体71及び72が船底カバー支持部23から持ち上がらないようにすることが可能であるが、図示されないロック器具を用いて蓋体71及び72を船底カバー支持部23から持ち上がらないように固定することが好ましい。尚、蓋体71及び72は、大きさ又は重さが同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0038】
船底カバー70が船底開口31を開いているとき、蓋体71が壁32に形成された凹部37に収容され、蓋体72が壁33に形成された凹部38に収容されることが好ましい。蓋体71及び72を凹部37及び38に収容することで、ムーンプール30を通して機器装置を海中に下ろすとき、蓋体71及び72が作業の邪魔になることが防がれる。
【0039】
ウインチ41及び42が船底カバー70を動かして船底開口31を開くとき、ウインチ41は蓋体71を回転させて船底カバー支持部23から壁32に沿う位置(例えば、凹部37)に移動し、ウインチ42は蓋体72を回転させて船底カバー支持部23から壁33に沿う位置(例えば、凹部38)に移動する。ウインチ41及び42が船底カバー70を動かして船底開口31を閉じるとき、ウインチ41は蓋体71を回転させて壁32に沿う位置(例えば、凹部37)から船底カバー支持部23に移動し、ウインチ42は蓋体72を回転させて壁33に沿う位置(例えば、凹部38)から船底カバー支持部23に移動する。
【0040】
本実施形態においては、船底カバー70が蓋体71及び72に分割されているため、船底開口31の開閉が容易である。ただし、ムーンプール30の高さと幅との関係にもよるが、船底カバー70は分割されない一体構造を有していてもよい。すなわち、蓋体71及び72の一方が船底開口31全体を閉じるように形成され、他方が設けられなくてもよい。尚、蓋体71及び72は上述したように前後に跳ね上げられてもよく、左右に跳ね上げられてもよい。左右に跳ね上げられる場合、壁34及び35にそれぞれ蓋体71及び72を収容するための凹部が形成されることが好ましい。蓋体71及び72を前後に跳ね上げる構成にした方が蓋体71及び72を収容するための凹部を確保することが容易である。
【0041】
尚、船底カバー70は船底開口31を水密に閉じる構造を有していてもよく、水密に閉じる構造を有していなくてもよい。また、ウインチ41及びウインチ42のかわりに2台のクレーンを用いて蓋体71及び72を動かしてもよい。
【0042】
(第3の実施形態)
図7を参照して、本発明の第3の実施形態に係る船舶10を説明する。以下、本実施形態に係る船舶10と第1の実施形態に係る船舶10との相違点を説明する。船舶10は、船底カバー60のかわりに船底カバー80を備える。航行時に船底カバー80で船底開口31を閉じることで、船底21に沿って船首から船尾に向かう水流202がムーンプール30内に入り込むことを防止する。したがって、船舶10の推進抵抗が低減され、航行時の燃費が削減される。船底カバー80は、板状体81〜86と、ヒンジ部87と、ヒンジ部88とを備える。板状体81〜86は、ヒンジ部87及び88によって折りたたみ及び展開が可能なように連結されている。板状体81と板状体82はヒンジ部87を介して連結され、板状体82と板状体83はヒンジ部88を介して連結され、板状体83と板状体84はヒンジ部87を介して連結され、板状体84と板状体85はヒンジ部88を介して連結され、板状体85と板状体86はヒンジ部87を介して連結されている。板状体81〜86はそれぞれ下面81a〜86aを有する。本実施形態において、船体20は、板状体81を回転可能に支持するヒンジ部27を備える。船舶10は、クレーン40のかわりに、又は、クレーン40に加えて、ウインチ43及び44を備える。ウインチ43及び44は、上甲板22のような喫水線より高い位置に設けられることが好ましい。ウインチ43及び44は、プーリー47及び48に掛けられたワイヤ53の両端にそれぞれ接続されている。ワイヤ53は、プーリー47及び48の間で板状体86に取り付けられている。ウインチ47及び48は、ワイヤ53を介して船底カバー80を動かして船底開口31を開閉する。したがって、ダイバー作業を行わなくても船底開口31を開閉することができる。また、ムーンプール付船舶に一般的に搭載されるウインチ43を用いて船底開口31を開閉するための駆動系を容易に構築することができる。
【0043】
船底カバー80が船底開口31を閉じているとき、下面81a〜86aが下を向くように船底カバー80が展開された状態で船底カバー支持部23に載せられて船底開口31を閉じる。
【0044】
尚、船底カバー80が船底開口31を閉じているとき、下面81a〜86aが船底21の表面と面一となることが好ましい。下面81a〜86aが船底21の表面と面一であると、船底21に沿って船首から船尾に向かう水流202が乱されないため、船舶10の推進抵抗が更に低減される。
【0045】
船底カバー80を十分重くすることで航行時に展開された船底カバー80が船底カバー支持部23から持ち上がらないようにすることが可能であるが、図示されないロック器具を用いて船底カバー80を船底カバー支持部23から持ち上がらないように固定することが好ましい。
【0046】
船底カバー80が船底開口31を開いているとき、ヒンジ部87が山となりヒンジ部88が谷となるように船底カバー80が折りたたまれる。このとき、下面81a〜86aは略水平方向を向く。船底カバー80が折りたたまれたとき、ムーンプール30の壁36に形成された凹部39に船底カバー80が収容されることが好ましい。船底カバー80を凹部39に収容することで、ムーンプール30を通して機器装置を海中に下ろすとき、船底カバー80が作業の邪魔になることが防がれる。
【0047】
ウインチ43及び44が船底カバー80を折りたたんで船底開口31を開くとき、ウインチ43及び44は板状体86がヒンジ部27に近づくように船底カバー80を動かす。ウインチ43及び44が船底カバー80を展開して船底開口31を閉じるとき、ウインチ43及び44は板状体86がヒンジ部27から遠ざかるように船底カバー80を動かす。
【0048】
本実施形態においては、船体カバー80の展開及び折りたたみの際に板状体86が船幅方向に移動してもよいが、船長方向に移動することが好ましい。板状体86が船幅方向に移動する場合、凹部39が形成される壁36は左舷側又は右舷側に位置する。板状体86が船長方向に移動する場合、凹部39が形成される壁36は船首側又は船尾側に位置する。壁36が船首側又は船尾側に位置する場合、凹部39を確保することが容易である。
【0049】
尚、船底カバー80は船底開口31を水密に閉じる構造を有していてもよく、水密に閉じる構造を有していなくてもよい。また、ウインチ43及びウインチ44のかわりに2台のクレーンを用いて船底カバー80を動かしてもよい。
【0050】
上述の例では一つの船底カバー80を用いて船底開口31を開閉しているが、折りたたみ及び展開が可能な複数の船底カバーを用いて船底開口31を開閉してもよい。
【0051】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に様々な変更を行うことが可能であり、上記実施の形態どうしを組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10…船舶
20…船体
21…船底
22…上甲板
23…船底カバー支持部
25〜27…ヒンジ部
30…ムーンプール
31…船底開口
32〜36…壁
37〜39…凹部
40…クレーン
41〜44…ウインチ
45〜48…プーリー
51〜53…ワイヤ
60、70、80…船底カバー
61、62、71、72…蓋体
61a、62a、71a、72a…被支持面
61b、62b、71b、72b…下面
65…吊り金具
81〜86…板状体
81a〜86a…下面
87、88…ヒンジ部
100…掘削船
121…船底
122…上甲板
130…ムーンプール
201、202…水流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムーンプールが設けられた船体と、
船底カバーと、
前記ムーンプールが船底に開口する船底開口を前記船底カバーが開閉するように前記船底カバーを動かすクレーン又はウインチと
を具備する
ムーンプール付船舶。
【請求項2】
前記クレーンを具備し、
前記船底カバーは、前記クレーンによって吊り上げられるための吊り金具を備える
請求項1のムーンプール付船舶。
【請求項3】
前記船体は、前記船底カバーを回転可能に支持するヒンジ部を備え、
前記クレーン又は前記ウインチは、前記船底カバーを回転させて前記船底開口を開閉する
請求項1のムーンプール付船舶。
【請求項4】
前記船底カバーは、折りたたみ及び展開が可能に連結された複数の板状体を備え、
前記クレーン又は前記ウインチは、前記船底カバーを折りたたみ及び展開させて前記船底開口を開閉する
請求項1のムーンプール付船舶。
【請求項5】
前記船底カバーが前記船底開口を閉じているとき、前記船底カバーの下面は前記船底の表面と面一になる
請求項1乃至3のいずれかに記載のムーンプール付船舶。
【請求項6】
前記船底カバーが展開して前記船底開口を閉じているとき、前記複数の板状体がそれぞれ備える複数の下面は前記船底の表面と面一になる
請求項4のムーンプール付船舶。
【請求項7】
前記ムーンプールの壁に前記船底カバーが収容される凹部が形成された
請求項3、4及び6のいずれかに記載のムーンプール付船舶。
【請求項8】
船舶に搭載されたクレーン又はウインチを用いて船底カバーを動かして、前記船舶のムーンプールが船底に開口する船底開口を閉じるステップと、
前記クレーン又は前記ウインチを用いて前記船底カバーを動かして、前記船底開口を開くステップと
を具備する
ムーンプール付船舶の抵抗低減方法。
【請求項9】
ムーンプールが船底に開口する船底開口を開閉するための船底カバーであって、
前記船底カバーは、
前記船底開口を閉じる蓋体と、
前記蓋体に設けられた吊り金具と
を備える
ムーンプールの船底カバー。
【請求項10】
ムーンプールが船底に開口する船底開口を開閉するための船底カバーであって、
前記船底カバーは、船体が備えるヒンジ部に支持される蓋体を具備する
ムーンプールの船底カバー。
【請求項11】
ムーンプールが船底に開口する船底開口を開閉するための船底カバーであって、
前記船底カバーは、折りたたみ及び展開が可能に連結された複数の板状体を具備する
ムーンプールの船底カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−91630(P2012−91630A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239572(P2010−239572)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)