説明

メゾネット住戸を設けた階段状の集合住宅

【課題】集合住宅に適用される規制の範囲内において、屋上の階段状の部分に必要な大きさの住戸を設置できるようにする。
【解決手段】住戸A1、A2、…、B1、B2、…E6が階段状に配置してあり、階段状の屋上部分に上下に重ならない下階31と上階32とからなるメゾネット住戸3が配置されている。段差部2に跨って設けた階段4で上下階を連絡することによって必要な面積を確保できるようにした。メゾネット住戸3の下階31と上階32は、その前端を規制のかかる側から奥へ下げて住戸の間口を小さくしてあるので下階31と上階32の前面には比較的大きなルーフバルコニー61、62が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築に関する規制に対応して土地の有効利用のために屋上を階段状とした集合住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
都市計画法における都市計画区域に建設される集合住宅は、道路斜線制限、隣地斜線制限、日影規制等の法的制限を受けるので、高さ等が制限される。そのため、屋上を階段状として土地を有効利用した集合住宅がある。特許文献1(実開平4−16249号公報)には、屋上部分を階段状とすると共に上下階を連絡して一戸とするメゾネット住戸を屋上に設け、住戸の日照を良好なものとすると共に階段状の屋上をバルコニーとして使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−16249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
法的規制により屋上を階段状にした集合住宅においては、屋上部には、他の住戸より小さな面積の住戸しか配置できない場合があり、屋上部の同一階の住戸単独では十分な住戸面積が確保できない。また、面積の小さな住戸を平面的に隣り合う住戸と結合したり、また、上下階の住戸を結合してメゾネット住戸とすると面積が過大な住戸となってしまう。
本発明は、屋上を階段状とした集合住宅において、適度な大きさのメゾネット住戸を提供できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
階段状の集合住宅であって、階段状の屋上部分に上下に重ならない上階と下階からなるメゾネット住戸が設けてあり、上階と下階を連絡する階段を屋上の段差部に設けることによって適度な住戸面積を確保したものである。
更に、下階と上階を結ぶ階段を上階と下階の段差部に跨って設けると共に、階段部分の下階の梁を逆梁とすることによって階段の上部空間を確保できるようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
上階と下階を連絡する階段を屋上の段差部に設けることによって適度な住戸面積を確保できるようにすると共に、屋上部分に設けたメゾネット住戸の上階と下階の間口を階段状集合住宅の他の住戸の間口より小さくしてあるので下階と上階の前面に広いルーフバルコニーを確保でき、快適な住環境を提供することができる。
更に、屋上部分のメゾネット住戸の上階と下階を結ぶ階段を、階段状の屋上の段差部に設けることによって住居スペースの減少を小さくできるようにしたのである。
また、階段を段差部に跨って設けると共に階段部分の下階の梁を逆梁とすることによって、頭上の空間を確保し、階段利用時の圧迫感を解消した。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の階段状集合住宅の概念断面図。
【図2】本発明のメゾネット住戸の実施例の上階と下階の平面図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】図2のB−B断面図。
【図5】階段を段差部に沿って設けた本発明の実施例。
【図6】階段を螺旋階段とした本発明の実施例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
本発明の階段状の集合住宅1は、図1に示すように、標準住戸A1、A2、…、B1、B2、…E6が階段状に配置してあり、3階と4階、5階と6階の屋上部分に跨る下階31と上階32とからなるメゾネット住戸3が配置されている。メゾネット住戸3は、上下の2層構造で1戸の住戸とするものである。標準住戸に比較してメゾネット住戸3の前端を規制のかかる側から奥へ下げて住戸の間口を小さくし、下階31と上階32が上下方向に重なる部分がないようにしたメゾネット住戸としてある。間口を小さくしてあるので、下階31と上階32の前面にはルーフバルコニー61、62が形成される。メゾネット住戸3の上下階31、32の個々の住戸面積を加算すると十分大きな住戸面積となる。
【0010】
図2は、実施例1のメゾネット住戸3の平面図であり、下階31と上階32とで構成され、上下階は階段状屋上の段差部2に跨って設けた階段4で連絡してあり、階段4の設置によるデッドスペースをできるだけ小さくして居住用の空間を減少させないようにしたものである。
図3は階段部分の断面図(図2、A−A線断面)であり、図4は、階段以外の部分の断面図(図2、B−B線断面)である。
【0011】
階段4が段差部2に跨って設けてあり、下階31の上階32側の梁が、階段4の上方において下方に突出して階段4の上方空間を小さくするので、階段4の両脇に柱52、52を設けると共に柱の間の階段部分は、図3に示すように、逆梁51として階段4の上部の空間が十分取れるようにして居住者に圧迫感を与えないようにしてある。
【0012】
図3に示すように、メゾネット住戸3の下側の住戸R1には、メゾネット住戸3の階段4を段差部2に設けたことによって階段4が住戸R1に斜めに食い込む部分が生じるが、階段4の下側スペース41を収納空間や居住空間として使用することができる。
【0013】
メゾネット住戸3の上階32の前面は階段4の両側及び前方をルーフバルコニー62としてあり、通常の集合住宅のバルコニーと比較すると奥行きが大きく、広い空間を提供することができる。
【0014】
メゾネット住戸3の下階31の前面のルーフをルーフバルコニー61としてあり、下階31のルーフバルコニー61は階段4によって分断されていないので幅方向一杯に広い空間として利用することができる。
本実施例においては階段4をメゾネット住戸3の中央部に設けているが、階段4を適宜の位置、例えば側壁側に設けてもよい。
【実施例2】
【0015】
図5に示すように、基本的な構造は実施例1と同じであり、上階31と下階32からなるメゾネット住戸3であり、上下階を連絡する階段4を段差部2に沿って設けたものである。
【実施例3】
【0016】
図6に示すように、実施例1において段差部2に跨る通常の直線的な階段に代えて螺旋階段4を採用したものである。
【符号の説明】
【0017】
1 階段状の集合住宅
2 段差部
3 メゾネット住戸
31 下階
32 上階
4 階段
41 階段下スペース
5 下階梁
51 逆梁
52 階段部の柱
61、62 ルーフバルコニー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段状の集合住宅であって、階段状の屋上部分に上下に重ならない上階と下階からなるメゾネット住戸が設けてあり、下階と上階を結ぶ階段を上階と下階の段差部に設けた屋上にメゾネット住戸を設けた階段状集合住宅。
【請求項2】
請求項1において、階段が段差部にまたがって設けてある屋上にメゾネット住戸を設けた階段状集合住宅。
【請求項3】
請求項2において、下階の階段部分の梁を逆梁とした屋上にメゾネット住戸を設けた階段状集合住宅。
【請求項4】
請求項1において、階段がラセン階段である屋上にメゾネット住戸を設けた階段状集合住宅。
【請求項5】
請求項1において、階段が段差に沿って設けてある屋上にメゾネット住戸を設けた階段状集合住宅。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−112147(P2012−112147A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260851(P2010−260851)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)