説明

メタマテリアルを含む構造を使用した光学的変調

【課題】光学的変調システムを提供すること。
【解決手段】光学的変調システムであって、メタマテリアル構造であって、メタマテリアル構造は、作動波長の入力光学的信号を受信し、処理するように構成されており、メタマテリアル構造は、メタマテリアル構造に適用された外部の刺激に反応して、作動波長の光学的信号に関して、透過状態と非透過状態を変化する、メタマテリアル構造と、外部の刺激源であって、外部の刺激源は、メタマテリアル構造に連結されており、外部の刺激源は、メタマテリアル構造に選択された刺激パルスを適用することにより、透過状態と非透過状態にメタマテリアル構造を変化させるように構成されている、外部の刺激源とを含み、光学的変調システムは、メタマテリアル構造に適用された選択されたパルスに対応して変調する変調された光学的信号を出力するために、入力光学的信号を処理する、光学的変調システム。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
光学的信号の変調は、1つの源またはロケーションから別の源またはロケーションへ光学的データの送信を促進する。このコミュニケーションの形態は、さまざまな異なる用途に対して有用であり得る。
【0002】
光学的信号を変調するための公知のシステムは、多重量子井戸(MQW)変調器、液晶(LC)変調器または1つ以上の鏡反射器が機械的に操作されるか、または信号の変調を達成するために入来信号に関して傾けられる他の技術を採用するシステムの使用を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記で説明された技術は、入来信号の変調に対して有用であり得る一方で、製造するのにコストがかかり得、ギガヘルツ範囲またはさらに大きな範囲の周波数では変調率を達成不可能であり得るといった点で限定される。
【0004】
製造が容易で、比較的安価であり、高比率(例えば、高バンド幅コミュニケーション用途に対して使用を促進する)での変調を提供する光学的変調デバイスを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要約)
本発明の実施形態に従って、光学的変調システムは、作動波長の入力光学的信号を受信し、処理するように構成されているメタマテリアル構造を含む。ここで、メタマテリアル構造は、メタマテリアル構造に適用された外部の刺激に反応して、作動波長の光学的信号に関して、透過状態と非透過状態とで変化する。外部の刺激源は、メタマテリアル構造に連結され、メタマテリアル構造に選択された刺激パルスを適用することで、メタマテリアル構造を透過状態と非透過状態に変化させるように構成されている。光学的変調システムは、メタマテリアル構造に適用された選択されたパルスに対応して、変調する変調された光学的信号を出力するために、入力光学的信号を処理する。
【0006】
メタマテリアル構造を形成する際の使用に対して適切なメタマテリアルの非限定的例は、バナジウムの酸化物(例えば、二酸化バナジウム)である。
【0007】
本発明の別の実施形態に従って、光学的コミュニケーションシステムは、作動波長の入力信号を第二ステーションから受信するように構成されている第一ステーションを含む。処理ステーションは、メタマテリアル構造および外部の刺激源を含む。メタマテリアル構造は、作動波長の入力光学的信号を受信し処理するように構成されており、ここで、メタマテリアル構造は、メタマテリアル構造に適用された外部の刺激に反応して、作動波長の光学的信号に関して、透過的状態と非透過的状態を変化する。外部の刺激源は、メタマテリアル構造に連結されており、メタマテリアル構造に選択された刺激パルスを適用することにより、メタマテリアル構造を透過的状態と非透過的状態とで変化させるように構成されている。光学的コミュニケーションシステムは、入力光学的信号を処理し、メタマテリアル構造に適用された選択されたパルスに対応して、変調する変調された光学的信号を出力する。
【0008】
本発明のさらなる実施形態に従って、光学的信号を変調する方法は、第一ステーションで作動波長の入力光学的信号を受信することと、受信された入力光学的信号をメタマテリアル構造に向けることと、メタマテリアル構造の光学的状態を、作動波長の光学的信号に関して透過状態と非透過状態で変化させるために、外部の刺激パルスをメタマテリアル構造に適用することと、メタマテリアル構造に向けられた入力光学的信号から変調された光学的信号を生成することと、変調された光学的信号を第二ステーションに送信することとを含む。変調された光学的信号は、メタマテリアル構造に適用された外部の刺激パルスに対応して変調される。
【0009】
本発明の光学的限定構造は、メタマテリアルの急速切り替えをすることにより光学的信号の対応する急速変調を促進するための急速切り替え、広い波長範囲にわたる光学的信号を処理し、メタマテリアル構造により処理される光学的信号に対して高い変調比率を提供する能力、同時に別個の波長領域を使用して異なる信号を処理する能力を制限なしに含む多くの利点を提供する。
【0010】
本発明の上記特徴および利点、およびさらなる特徴および利点は、特に添付の図面(さまざまな図の類似の参照数字は類似のコンポーネントを示すために使用されている)との関連でみたとき、以下の特定のその実施形態の詳細な説明を考慮すると、明らかとなる。
【0011】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1) 光学的変調システムであって、該光学的変調システムは、
メタマテリアル構造であって、該メタマテリアル構造は、作動波長の入力光学的信号を受信し、処理するように構成されており、該メタマテリアル構造は、該メタマテリアル構造に適用された外部の刺激に反応して、該作動波長の該光学的信号に関して、透過状態と非透過状態との間で変化する、メタマテリアル構造と、
外部の刺激源であって、該外部の刺激源は、該メタマテリアル構造に連結されており、該外部の刺激源は、該メタマテリアル構造に、選択された刺激パルスを適用することにより、該メタマテリアル構造の透過状態と非透過状態との間で、該メタマテリアル構造を変化させるように構成されている、外部の刺激源と
を含み、
該光学的変調システムは、該メタマテリアル構造に適用された該選択されたパルスに対応して変調する変調された光学的信号を出力するために、該入力光学的信号を処理する、光学的変調システム。
(項目2) 上記項目のいずれかのシステムであって、上記メタマテリアル構造は、VO、V、Ti、NiS2−ySe、LaCoO、PrNiO、CdOs、NdNiO、TlRu、NiS、BaCo1−yNi、Ca1−ySrVO、PrRu12、BaVS、EuB、Fe、La1−yCaMnO、La2−2ySr1+2yMn、TiおよびLaNiO(ここでy≦1)、アゾベンゼン含有ポリジアセチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアセテート、ポリビニルフェニレン、ポリスチレンサルフォネイト、オパールナノ構造にドープされたポリアニリンのうちの少なくとも1つを含む、システム。
(項目3) 上記項目のいずれかのシステムであって、上記メタマテリアル構造は、熱変色性素材を含む第一の層と、金、プラチナ、パラジウム、銀、銅およびアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む第二の粒子の層とを含む、システム。
(項目4) 上記項目のいずれかのシステムであって、該システムは、上記メタマテリアル構造が、透過状態と非透過状態とのうちの一方であるとき、得られる上記入力光学的信号の一部を使用して、上記変調された光学的信号を生成するように構成されており、該システムは、該変調された光学的信号の一部を形成しない該入力光学的信号の他の一部が該システムから伝達するのを妨害するように、さらに構成されている、システム。
(項目5) 上記項目のいずれかのシステムであって、上記メタマテリアル構造は、VOを含む、システム。
(項目6) 上記項目のいずれかのシステムであって、上記作動波長は、1.2マイクロメートルより大きい、システム。
(項目7) 上記項目のいずれかのシステムであって、該システムは、
少なくとも1つの反射面をさらに含み、上記メタマテリアル構造は、少なくとも1つの該反射面に対して提供される、システム。
(項目8) 上記項目のいずれかのシステムであって、該システムは、
少なくとも1つの上記反射面を含む少なくとも1つの再帰反射器をさらに含む、システム。
(項目9) 光学的コミュニケーションシステムであって、該システムは、作動波長の入力信号を第二ステーションから受信するように構成されている第一ステーションを含み、処理ステーションは、
メタマテリアル構造であって、該メタマテリアル構造は、作動波長の入力光学的信号を受信し、処理するように構成されており、該メタマテリアル構造は、該メタマテリアル構造に適用された外部の刺激に反応して、該作動波長の該光学的信号に関して、透過状態と非透過状態との間で変化する、メタマテリアル構造と、
外部の刺激源であって、該外部の刺激源は、該メタマテリアル構造に連結されており、該外部の刺激源は、該メタマテリアル構造に、選択された刺激パルスを適用することにより、透過状態と非透過状態との間で該メタマテリアル構造を変化させるように構成されている、外部の刺激源と
を含み、
該光学的コミュニケーションシステムは、該入力光学的信号を処理し、該メタマテリアル構造に適用された該選択されたパルスに対応して変調する変調された光学的信号を出力する、光学的変調システム。
(項目10) 上記項目のいずれかのシステムであって、該システムは、上記メタマテリアル構造が、透過状態と非透過状態とのうちの一方であるとき、得られる上記入力光学的信号の一部を使用して、上記変調された光学的信号を生成するように構成されており、該システムは、該変調された光学的信号の一部を形成しない該入力光学的信号の他の一部が上記第一ステーションから伝達するのを妨害するように、さらに構成されている、システム。
(項目11) 上記項目のいずれかのシステムであって、該システムは、上記メタマテリアル構造が、透過状態であるとき、得られる上記入力光学的信号の一部を使用して、上記変調された光学的信号を生成するように構成されている、システム。
(項目12) 上記項目のいずれかのシステムであって、該システムは、
少なくとも1つの反射面をさらに含み、上記メタマテリアル構造は、少なくとも1つの該反射面に対して提供される、システム。
(項目13) 上記項目のいずれかのシステムであって、該システムは、
上記第二ステーションの出力変調された信号を向けるように配列された複数の反射面を含む再帰反射器をさらに含む、システム。
(項目14) 上記項目のいずれかのシステムであって、上記メタマテリアル構造は、VO、V、Ti、NiS2−ySe、LaCoO、PrNiO、CdOs、NdNiO、TlRu、NiS、BaCo1−yNi、Ca1−ySrVO、PrRu12、BaVS、EuB、Fe、La1−yCaMnO、La2−2ySr1+2yMn、TiおよびLaNiO(ここでy≦1)、アゾベンゼン含有ポリジアセチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアセテート、ポリビニルフェニレン、ポリスチレンサルフォネイト、合成オパールナノ構造にドープされたポリアニリンのうちの少なくとも1つを含む、システム。
(項目15) 上記項目のいずれかのシステムであって、上記メタマテリアル構造は、熱変色性素材を含む第一の層と、金、プラチナ、パラジウム、銀、銅およびアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む第二の粒子の層とを含む、システム。
(項目16) 上記項目のいずれかのシステムであって、外部の刺激源は、上記メタマテリアル構造の温度を改変し、結果として該メタマテリアル構造の透過状態と非透過状態との変化を生じるように、熱を発生させる、システム。
(項目17) 上記項目のいずれかのシステムであって、上記メタマテリアル構造は、VOを含む、システム。
(項目18) 上記項目のいずれかのシステムであって、上記作動波長は、1.2マイクロメートルより大きい、システム。
(項目19) 上記項目のいずれかのシステムであって、該システムは、少なくとも約100MHzの周波数を有する出力変調された光学的信号を生成するように構成されている、システム。
(項目20) 光学的信号を変調する方法であって、該方法は、
第一ステーションの作動波長の入力光学的信号を受信することと、
該受信された入力光学的信号をメタマテリアル構造へ向けることと、
該作動波長の該光学的信号に関して、透過状態と非透過状態との該メタマテリアル構造の光学的状態を変化させるために、外部の刺激パルスを該メタマテリアル構造へ適用することと、
該メタマテリアル構造へ適用された該外部の刺激パルスに対応して変調される変調された光学的信号を、該メタマテリアル構造へ向けられた該入力光学的信号から、生成することと、
該変調された光学的信号を第二ステーションへ送信することと
を含む、方法。
(項目21) 上記項目のいずれかの方法であって、上記入力光学的信号は、上記第二ステーションから上記第一ステーションへ送信される、方法。
(項目22) 上記項目のいずれかの方法であって、上記メタマテリアル構造は、反射器の反射面の少なくとも一部に対して提供され、該反射器は、該メタマテリアルが透過状態のとき、光学的信号の一部を反射する、方法。
(項目23) 上記項目のいずれかの方法であって、上記メタマテリアル構造は、VO、V、Ti、NiS2−ySe、LaCoO、PrNiO、CdOs、NdNiO、TlRu、NiS、BaCo1−yNi、Ca1−ySrVO、PrRu12、BaVS、EuB、Fe、La1−yCaMnO、La2−2ySr1+2yMn、TiおよびLaNiO(ここでy≦1)、アゾベンゼン含有ポリジアセチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアセテート、ポリビニルフェニレン、ポリスチレンサルフォネイト、合成オパールナノ構造にドープされたポリアニリンのうちの少なくとも1つを含む、方法。
(項目24) 上記項目のいずれかの方法であって、上記メタマテリアル構造は、熱変色性素材を含む第一の層と、金、プラチナ、パラジウム、銀、銅およびアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む第二の粒子の層とを含む、方法。
(項目25) 上記項目のいずれかの方法であって、上記変調された光学的信号は、上記メタマテリアル構造が透過状態と非透過状態とのうちの一方であるとき、得られる上記入力光学的信号の一部を使用して生成され、該方法は、
該変調された光学的信号の一部を形成しない上記入力光学的信号の他の一部が、上記第一ステーションから伝達することを妨害することをさらに含む、方法。
(項目26) 上記項目のいずれかの方法であって、上記外部の刺激パルスは、上記メタマテリアル構造の温度を改変し、結果として該メタマテリアル構造の透過状態と非透過状態の変化を生じさせるための熱のパルスを含む、方法。
【0012】
摘要
光学的変調システムは、少なくとも1つの作動波長の入力光学的信号を受信し処理するように構成されているメタマテリアル構造を含み、ここで、メタマテリアル構造は、メタマテリアル構造に適用された外部の刺激に反応して作動波長(単数または複数)の光学的信号(単数または複数)に関して、透過状態と非透過状態を変化する。外部の刺激源は、メタマテリアル構造に連結され、メタマテリアル構造に選択された刺激パルスを適用することにより、メタマテリアル構造を透過状態と非透過状態で変化させるように構成されている。光学的変調システムは、入力光学的信号を処理し、メタマテリアル構造に適用された選択されたパルスに対応して変調する変調された光学的信号を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1Aおよび図1Bは、本発明に従った、メタマテリアル構造の概略の描写である。
【図1B】図1Aおよび図1Bは、本発明に従った、メタマテリアル構造の概略の描写である。
【図2A】図2A〜図2Dは、本発明に従って、光学的変調デバイスを組み込む非対称コミュニケーションシステムの概略の描写である。
【図2B】図2A〜図2Dは、本発明に従って、光学的変調デバイスを組み込む非対称コミュニケーションシステムの概略の描写である。
【図2C】図2A〜図2Dは、本発明に従って、光学的変調デバイスを組み込む非対称コミュニケーションシステムの概略の描写である。
【図2D】図2A〜図2Dは、本発明に従って、光学的変調デバイスを組み込む非対称コミュニケーションシステムの概略の描写である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に従って、光線または特定の波長における光学的信号に関して、透過状態と非透過状態を切り替え得るメタマテリアルまたは相変化素材構造を含む光学的変調デバイスを使用することで、光学信号の変調が達成される。メタマテリアルは、外部の刺激にさらされたときに、物理的状態において可逆的変化を被る。メタマテリアル構造の物理的状態の変化は、メタマテリアルの光学的プロパティを、1つ以上の特定の波長の光を透過または遮断する能力に関して改変する。メタマテリアル構造を使用した光学的信号の変調は、2つ以上のソースまたはロケーション間での光学的コミュニケーションに対し有用である。
【0015】
光学的変調構造を形成するために使用される適切なメタマテリアル(相変化素材とも呼ばれる)は、臨界温度以上で熱した際、可逆的相移行を被る熱変色性または光発色性素材を制限なしに含む。臨界温度を十分下回る温度まで冷却されると、それに応じて相移行は可逆的(つまり、素材は元の物理的状態に変化して戻る)である。あるメタマテリアルの物理的状態間における変化は、非常に高速(例えば、VOに対して75フェムト秒もの速さ)であり得、このことは、数百GHzまたはそれ以上(例えば、デバイスが素材の移行時間により主に限定されると仮定すると、VOに対して、変調率は6.7THzもの高さになり得る)もの光学的信号の非常に高い変調率を可能にする。メタマテリアル構造は、また、特定の用途に基づいた光学的信号に対して、少なくとも約100MHzの変調率またはそれよりさらに低い変調率を含むより低い変調率の提供を促進する。
【0016】
光学的変調構造を形成するために用いられ得る適切な熱変色性素材の例は、WO、VO、V、Ti、NiS2−ySe、LaCoO、PrNiO、CdOs、NdNiO、TlRu、NiS、BaCo1−yNi(ここでy≦1)、Ca1−ySrVO(ここでy≦1)、PrRu12、BaVS、EuB、Fe、La1−yCaMnO(ここでy≦1)、La2−2ySr1+2yMn(ここでy≦1)、TiおよびLaNiO、亜マンガン酸塩タイプREAE1−xMnOの混合酸化物(ここで、REはランタンまたはプラセオジムのような希土類金属であり、AEはカルシウムのようなアルカリ土類金属であり、x≦1である)、(NiAlのような)金属間化合物、およびこれら化合物の任意の組み合わせのような金属酸化素材を制限なしに含む。他の適切な熱変色性素材は、アゾベンゼン含有ポリジアセチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアセテート、ポリビニルフェニレン、ポリスチレンサルフォネイト、ポリアニリン(例えば、合成オパールナノ構造にドープされたポリアニリン)、ジブロック(例えば、ポリ[スチレン−b−イソプレン]またはPS−b−PI)およびトリブロック(例えば、ロッドコイルコポリマーポリ[ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)−b−ポリフルオレン−b−ポリ(N−イソプロポピルアクリルアミド)])コポリマーのようなナノ構造ポリマーのようなポリマーを含む。
【0017】
光学的変調構造における使用のための適切なメタマテリアルの例は、二酸化バナジウムのようなバナジウム酸化物である。酸化バナジウムは、VOおよびVを含むさまざまな異なる酸化物形態を有する。二酸化バナジウム、VOは半導体相(ここでVOは単斜晶構造を有する)から金属相(ここでVOは正方晶構造を有する)へ、約68℃の第1の臨界温度で、可逆性移行を被る。この臨界温度での移行相変化は、電気的および光学的プロパティの両方における急速な変化(75フェムト秒もの速さ)を示すVOという結果になる。半導体(冷)相と金属(温)相の間のこの温度により引き起こされる相移行で、VOは、1.2マイクロメートル(ミクロン)という赤外線に近い(近赤外)波長における光の透過を実質的に限定または遮断する光学的「遮断剤」の役割をする。VOの温度が68度より低い第2の臨界温度下まで落ちたとき、元の半導体状態に急速に移行して戻り、近赤外波長の光の透過を促進する。
【0018】
加えて、あるドーパントが、メタマテリアルに結合され得、1つ以上の選択された波長の光の透過を遮断または限定するためにメタマテリアルが移行する臨界温度においてシフトまたは変化を達成する。適切なドーパントの例は、タングステン、フッ素、チタン、クロムおよびその組み合せを制限なしに含み、ここでドーパントまたはドーパントの組み合わせは、約0.05原子%から約5原子%までの範囲の密度における熱変色性素材内で提供される。例えば、VO化合物が半導体相から金属相へ移行する臨界温度を約68℃から室温と同程度に低い温度(例えば、約27℃)またはそれより低い温度に下げるために、VOはタングステンのようなドーパントでドープされ得る。
【0019】
メタマテリアルが、約250nmから約15マイクロメートルまでの範囲のさまざまな異なる波長の光を実質的に限定または遮断し得るために、メタマテリアルの波長を調整するまたはシフトを達成することがさらに可能である。例えば、本明細書で、参照することで、全体的に組み込まれている同時係属中の米国特許出願第12/479,311号の開示で説明されるように、非透過状態へ切り替えられたとき、メタマテリアルが光の透過を典型的に遮断または実質的に限定する作動波長は、改変され得、特定の波長またはシフトが少なくとも約150nmにより調製され得る波長範囲に微調整され得ることが明らかとなった。メタマテリアルが光に対して非透過性となる作動波長のこのシフトおよび微調整は、ある素材とメタマテリアルの組み合わせを含む構造を形成し、構造をある幾何学的パターンまたはアレイに配列することにより達成され得る。
【0020】
特に、メタマテリアル構造は、メタマテリアルまたは位相変化素材の層が1つ以上のナノサイズの粒子を含んだ層に対して提供される層になった構造を含むことで形成され得る。メタマテリアル層は、金、プラチナ、パラジウム、銀、銅およびアルミニウムおよび任意の組み合わせ、合金(例えば、金/銀合金、金/銅合金など)、および/またはそれら金属の酸化物(例えば、酸化銀)のような1つ以上の金属を含むナノサイズの粒子のパターン化されたアレイを含む層に対して提供され得る。メタマテリアル構造は、ナノサイズの粒子層および/またはメタマテリアル層の任意に選択された組み合わせにより形成され得る。1つの例において、メタマテリアル構造は、ナノサイズの粒子(例えば、金属粒子および/または酸化金属粒子)のアレイを含む層に対して配置されたメタマテリアル層により形成され得る。別の例において、メタマテリアル構造は、メタマテリアル層に対して配置されたナノサイズの粒子層により形成され得る。さらなる例において、メタマテリアル構造は、配置されたナノサイズの粒子、または2つの薄膜またはメタマテリアルの層に「はさまれた」ナノサイズの粒子のアレイを含む層により形成され得、ここで、各メタマテリアル層は、同じメタマテリアルまたは異なるメタマテリアルまたはメタマテリアルの組み合わせを含み得る。さらに別の例において、メタマテリアルは、ナノサイズの粒子の表面部に対して形成され得、ここで、メタマテリアル層の連続が(各ナノサイズの粒子の部分に対する「帽子」または部分的な覆いを形成するために)個々の粒子に対してか、または覆いをつけられた粒子または覆いをつけられた粒子のセット間で維持される覆いをつけられていないスペースを有する粒子のセットに対して形成されるために、ナノサイズの粒子間のスペースは、メタマテリアルにより覆いがかぶされない状態を維持する。
【0021】
ナノサイズの粒子は、好ましくはわずか約1000ナノメートル(nm)の断面的な寸法(例えば、長さ、幅、厚さおよび/または直径の寸法)、より好ましくは約500nmに過ぎない、さらに好ましくは約300nmに過ぎない寸法を有する1つ以上の金属または酸化金属を含み得る。異なるメタマテリアルおよび異なる金属、異なる層の厚さ、異なるサイズ、形および/またはナノサイズ(例えば、金属または酸化金属)の粒子アレイの配列を含む多数の異なるパラメータの選択は、結果の構造が光学的遮断剤として機能し得るか、または所望の波長の光を実質的に遮断し得る波長の微調整となる。ここで、波長の微調整は約250nmから約15マイクロメートルの範囲に対して生じ得る。
【0022】
例として、VOは、1.2マイクロメートルの波長における光学的遮断剤として機能するために半導体層と金属層で切り替えられ得る。VOの層がつけられた構造は、1200nmのIRまたは近IRの範囲を超えて、1.2マイクロメートルより大きな作動波長(例えば、少なくとも約1.4マイクロメートル)までの波長の光の透過を遮断または実質的に限定するようにVOの光学的遮断性質はセットされる構造に形成され得る。酸化バナジウム構造は、また、可視範囲(約800nmから約400nm)、また紫外線範囲(400nmより短い)まで青方偏移された波長の光に関して、透過状態と非透過上体をVO構造が切り替える構造に形成され得る。他のメタマテリアル構造は、また、VOに対して述べたとの同じまたは類似の波長領域の光に関して、その非透過的な状態において、メタマテリアルが光学的遮断プロパティを示す波長をシフトするようにメタマテリアルが構成または微調整される構造に形成され得る。そのような構造を形成する方法は、米国特許出願第12/479,311に詳細に説明される。
【0023】
メタマテリアル構造の、光学的に透過状態と非透過状態間の急速切り替えは、メタマテリアルの異なる光学的状態間のメタマテリアルの急速切り替えを達成する任意の適切な外部の刺激を使用することで達成され得る。VOのような熱変色性素材に対して、素材の光学的透過状態と非透過状態の切り替えを生じる温度まで素材を急速に熱する適切な熱源が使用され得る。
【0024】
1つの例示的実施形態において、抵抗発熱源が、図1Aに示されるようにメタマテリアルの急速発熱を達成するためにメタマテリアル構造内に統合され得る。特に層となっている構造2は、回路基盤4を含み、その上に刺激素材が(例えば、構造5のアレイに)置かれ、メタマテリアル構造6は回路基盤4および刺激素材5に対して置かれる。回路基盤4および刺激素材5は、電流が回路基盤4に適用されたとき、メタマテリアル構造6を熱する抵抗発熱構造として機能するよう適切な素材を含む。図1Bに示される別の例示的実施形態において、光エネルギー源8(例えば、レーザー源)が、光エネルギー(光線10として示される)をメタマテリアル構造6の方へ向けるために使用され得、構造に光を当て、構造を急速に熱してその光学的透過状態を変化させる。メタマテリアル構造6は、メタマテリアル、またはナノサイズの金属粒子または酸化金属の粒子のアレイのような金属粒子または酸化金属粒子と組み合わせたメタマテリアルを含み得る。回路基板素材の選択は、透過状態および非透過状態の両方の性質に影響を与える。
【0025】
外部の刺激は、メタマテリアルの光学的透過状態と非透過状態間の、結果として生じる急速な切り替えを達成するため、急速なペースでパルスされ得る(例えば、図1Aの実施形態に対してパルスされた電流または図1Bの実施形態に対してパルスされた光線)。そのようなメタマテリアルの光学的透過/非透過状態の急速な切り替えは、メタマテリアルに対して透過された光学的信号の急速な変調を提供するために使用され得る。言い換えれば、光学的信号の変調は、メタマテリアルの透過性の変調を介して達成され得る。
【0026】
メタマテリアル構造は、メタマテリアルが光学的に透過状態であるとき、選択または作動波長の光に対して、構造が実質的に透明であるために、高い透過性を有するように好ましくは選択される。メタマテリアル構造は、また、好ましくは実質的に不透明および/または反射的であり、そのためにメタマテリアルが非透過状態であるとき、作動波長の光に対して低い透過性を有する。メタマテリアル構造は、メタマテリアルが外部の刺激源により刺激を与えられるのに先立ち透過状態であり、外部の刺激源より刺激を与えられると非透過状態になるように、さらにデザインされ得る。あるいは、メタマテリアル構造は、外部の刺激源により刺激を与えられるのに先立ち非透過状態であり、外部の刺激源より刺激を与えられると透過状態になるように、デザインされ得る。
【0027】
メタマテリアル構造を形成するためにVOを用いたとき、メタマテリアル構造は、VOが透過状態のとき、少なくとも約95%の透過性を有し、VOが非透過状態のとき、わずか約0.01%の透過性を有するようにデザインされ得る。透過および非透過状態のとき、同じまたは類似の透過性を有する他のメタマテリアルも選択され得る。本明細書で用いられるように、透過性は、特定または作動波長でメタマテリアル構造から生じた光の量を、同じ波長で同じ構造に向けられた光の強度に比較した比率として定義され、小数パーセンテージとして提供される。透過状態と非透過状態の透過性におけるそのような特徴的に大きな変化は、約250nmから約15マイクロメートルまでの範囲の作動波長の広い範囲に対して達成され得る。ここで、メタマテリアル構造層に対する作動波長は、米国特許出願第12/479,311号に説明されるような技術に従って、微調整される。
【0028】
光学的変調器の実行の1つの手段は、変調比率(MCR)である。これは、作動波長の光に関して透過状態にある素材の透過性を、作動波長の光に関して非透過状態にある素材の透過性に比較した比率として定義される。光学的変調デバイスは、本発明に従って、適切なメタマテリアル構造(例えば、VO構造)を使用することで形成され得る。ここで、メタマテリアル構造および光学的変調デバイスは、少なくとも1000のMCR値を有し、多くの実施形態においては有意に1000よりも大きい。例えば、光学的信号が、光学的信号の変調処理の間に2回以上メタマテリアル構造を通過する実施形態において、10の変調比率値またはより大きな比率値が達成され得る。
【0029】
メタマテリアル構造は、コミュニケーションシステムにおいて使用される光学的変調デバイスのような、任意の数の異なる光学的変調デバイスに組み込まれ得る。以下の例示的実施形態において、メタマテリアル構造を使用する光学的変調デバイスは、非対称性コミュニケーションにおける使用のために説明される。
【0030】
非対称性光学的コミュニケーションシステムは、図2Aに概略的に描写されており、作動波長の光の入力光線または光学的信号22をリモートステーションへ送信する送信器20(例えば、レーザー)(要素30、32、34、36および37を含む)、リモートステーションの光学的変調デバイスにより変調される光学的信号38を受信し、処理する受信器40を有するベースステーションを含む。光学的変調デバイスは、作動波長の光学的信号を実質的に反射するように構成されている2つの反射表面32、34により構成される再帰反射器を含む。本明細書で説明される再帰反射器の反射表面構造は、作動波長の光学的信号の反射を促進する、鏡、プラスチックシリコンおよびその組み合わせを制限なしに含む任意の適切な素材(単数または複数)により組み立てられ得る。図2Aにおいて、反射表面32、34は、光学的信号反射をベースステーションの受信器40の方へ戻す経路を提供するために、コーナーキューブの再帰反射器配置構成で配列される。メタマテリアル構造30は、入力光学的信号22を受信する再帰反射器の第一反射表面32上に提供される。メタマテリアル構造30は、上記で説明され、図1Aまたは図1Bで描写されるタイプのものであり得る。
【0031】
外部の刺激源36は、メタマテリアル構造30に連結され、パルスされた刺激37をメタマテリアル構造(例えば、図1Aの実施形態に対してパルスされた信号または図1Bの実施形態にたいしてパルスされたエネルギー光線)に提供する。これにより、透過状態と非透過状態でメタマテリアルを急速に切り替えられる(つまり、作動波長の光学的信号に関してメタマテリアルの急速な閉鎖)。言い換えると、メタマテリアルが透過状態に切り替えられたとき、光学的信号22は表面32による反射に対してメタマテリアルを透過する。メタマテリアルが非透過状態に切り替えられるとき、光学的信号22は、効果的に遮断またはメタマテリアル構造の通過が阻害される。これは、外部の刺激源36による透過状態と非透過状態間のメタマテリアル構造30の変調または切り替えに対応する変調された光学的信号38の発生となる。変調された光学的信号38は、反射表面32から反射表面34へ向けられ、次いでベースステーションの受信器40へ戻される。図2Aから見られるように、光学的信号は、第二反射表面34への伝送に先立ち、メタマテリアル構造30を2回通過しなければならない。
【0032】
光学的変調デバイスは、任意の数の異なる構成で改変され得、変調された光学的信号を生成するための1つ以上の再帰反射器の反射表面上にメタマテリアル構造を提供することを含む。いくつかの追加の例が図2B〜図2Dに示されるが、他の構成も可能であることが注記される。
【0033】
図2Bを参照すると、光学的変調デバイスは、図2Aに示されるものと類似したベースステーションの送信器および受信器に関してコーナー配置で配列された反射表面50、52のペアを含む再帰反射器を含む。メタマテリアル構造30は、再帰反射器50、52および入力光学的信号22間の光学的経路に提供され、処理される光学的信号が再帰反射器により反射されるのに先立ち1回目にメタマテリアル構造30を通過しなければならず、また、ベースステーションの受信器に(変調された信号54として)送信されるのに先立ち2回目に通過しなければならない。外部の刺激源36は、作動波長の光学的信号に関して透過状態と非透過状態となるメタマテリアルを変調するために、図2Aに対して説明したのと同じ様式でメタマテリアル構造30に連結される。
【0034】
図2Cの実施形態において、光学的変調デバイスは、反射器60およびその反射面(メタマテリアル構造30に連結された外部の刺激源36を含む)に適用されたメタマテリアル構造30を含む。第一反射器60は、ベースステーションの送信器から作動波長の入力光学的信号22を受信および反射するように配列されている。第二および第三反射表面62、64は、第一反射器60に関してコーナー配置の再帰反射器として配列されている。反射表面62、64を含むこの再帰反射器は、光学的信号を第一反射器60から受信し、次いで、その信号を送信し戻す。ここで、その信号は、次いで、反射器60により2回、ベースステーションの受信器へ反射される。処理された光学的信号(これは変調された出力信号66としてベースステーション受信器へ送信される)は、そのため、ベースステーションの受信器へ戻されるのに先立ち、メタマテリアル構造30を4回通過しなければならない。
【0035】
図2Dの変調デバイスは、「猫の目」再帰反射器構成を含み、ここでレンズ70は、凹面または半球の反射器72に結合される。メタマテリアル構造30(メタマテリアル構造に連結された外部の刺激源36を含む)は、レンズ70と反射器72の間の光学的経路内に位置される。レンズ70は、ベースステーション送信器から入力光学的信号22を反射器72に集中させ、次いで、反射器72は信号をレンズ70を通してベースステーション受信器へ反射して戻す。メタマテリアル構造30は、信号が変調された信号74としてベースステーション受信器へ戻されるように信号を処理する。図2Dの実施形態において処理された信号は、メタマテリアル構造30を2回通過する。
【0036】
図2A、図2Bおよび図2D(ここで、処理された光学的信号はメタマテリアル構造を2回通過しなければならない)の実施形態において説明された2通過構成の各々において、VOのようなメタマテリアルがメタマテリアル構造のために特に用いられた場合、変調された光学的信号に対してMCR値は、少なくとも約10の範囲内であり得る。図2C(ここで、処理された光学的信号はメタマテリアルを4回通過しなければならない)の4通か構成に対して、変調された光学的信号のMCR値は、少なくとも約1012の範囲内であり得る。
【0037】
加えて、上記で述べたように、メタマテリアル構造は、変調される光学的信号の作動波長が、1.2マイクロメートルより大きな範囲を含む、約250nmから約15マイクロメートルまでの広い範囲から選択され得るようにデザインされ得る。これは、特定の用途に基づいた作動のために特定の波長または波長範囲を選ぶことを可能にする。例えば、衛星コミュニケーションにおいて、地上に配置されたステーションと宇宙ステーションとの間の大気を通した光学的信号の送信を促進させる波長の適切な可視光の窓内で作動し得ることが重要である。人間の安全の関心事が問題(例えば、眼の安全)となる他の用途に対して、少なくとも約1.4マイクロメートルの作動波長の光学的信号を変調するメタマテリアル構造がデザインされ得る。1.2マイクロメートルより大きな作動波長の光をシャッターする、本発明のメタマテリアル構造の能力は、光学的コミュニケーション(例えば、1530nm〜1565nmのCバンド範囲)に対して用いられるさまざまなIRバンドにおける光学的信号の変調を促進させる。
【0038】
図2A〜図2Dにおいて上記で説明された実施形態の各々において、変調された光学的信号は、メタマテリアルが透過状態であるとき、メタマテリアルを通して送信された光により生成または定義される。加えて、図2A〜図2Dの実施形態に対するメタマテリアル構造は、非透過状態にあるとき、光学的信号に関してほとんど反射率を有さないか、または全く反射率を有さないように構成されている。しかし、本発明は、メタマテリアル構造を通して送信された光の光学的変調に限定されないことが注記される。
【0039】
代わりに、光学的信号変調は、メタマテリアル構造を通過せず、代わりにメタマテリアル構造により反射された光学的信号のパルスされた部分を使用して達成され得る。メタマテリアル構造は、メタマテリアル構造が非透過状態にあるとき、作動波長の光学的信号に関して、適切な反射率を有するように組み立てられ得る。このタイプの実施形態において、光学的変調デバイスは、メタマテリアル構造が非透過状態にあるとき、メタマテリアル構造により反射される光学的信号の部分の使用を介して、信号の光学的変調が達成されるように、組み立てられ得る。図2Aおよび図2Cの実施形態の各々に対して、非透過状態で適切な反射率を有するメタマテリアル構造は、変調された光学的信号が、メタマテリアル構造により反射された信号部分を用いて生成されるとき、結合されたメタマテリアル/再帰反射器(図2Aの結合された構造30/反射器32および図2Cの結合された構造30/反射器60を参照)を用いる代わりに、メタマテリアル構造単独で使用され得る。これは、デバイスに対して追加の再帰反射器コンポーネントの必要性を排除する。
【0040】
本発明の別の実施形態において、光学的変調器デバイスは、デバイスから直接光学的信号を生成し得る。これは、別の源から提供される光学的信号を受信および反射することの代わりに行われる。特に、光学的変調器デバイスは、メタマテリアル構造(例えば、上記で説明されたメタマテリアル構造)に、選択された作動波長の光学的信号を向ける送信器を含み得る。ここで、メタマテリアル構造の光学的プロパティは、別の源またはロケーションへの伝達のために光学的信号の変調を促進するように急速に切り替えられる。
【0041】
光学的変調器デバイスのさらなる特徴は、コミュニケーション処理において、受信源(つまり、光学的変調器デバイスから離れた源)へ送信されるために、変調された信号から取り除かれた信号の一部を捕捉し含む光学的トラップまたはフィルターの提供である。光学的変調器デバイスのロケーションの機密性が非常に重要である、ある光学的コミュニケーション用途(例えば、軍事的または他の作動)において、変調された光学的信号の一部を形成しない光学的信号の一部を他の個人または実在物に可視であることを妨害することが望ましい。任意の1つ以上のタイプの光学的光線ダンプ、吸収性フィルターおよび/または光学的信号の用いられなかった一部または放棄された一部を実質的に吸収および/または捕捉することが可能な他の適切なデバイスが、実質的に変調された光学的信号のみ送信され、用いられなかった光学的信号の一部がデバイスから離れて伝達されることを実質的に妨害することを確実にするための光学的変調器デバイスの一部として提供され得る。例えば、光学的光線ダンプの多くの異なるタイプおよび配置が市販で入手可能であり、本発明の光学的変調デバイスと共に使用に適する。ここで、光学的光線ダンプの特定のタイプおよび配置の選択は、光学的変調デバイス内の反射およびメタマテリアル構造コンポーネントの特定のデザイン、配置および配列に依存する。
【0042】
上記で述べたように、透過状態と非透過状態のピコ秒またはフェムト秒ですらある急速なメタマテリアルの切り替えを促進する適切なメタマテリアル構造が組み立てられ得る。これは、光学的信号の対応する急速な変調という結果になり、変調された光学的信号の周波数がメタマテリアルの限界に達し得る(VOのケースでは、約6.7THzの変調周波数に対応する、75フェムト秒素材切り替え)高いバンド幅コミュニケーションに対して特に有用である。
【0043】
光学的変調デバイスは、図2A〜図2Cの実施形態のように、リモートステーションの一部としてインプリメントされ得、ここで、作動波長の入来光学的信号または入力光学的信号が、ベースロケーションからリモートステーションへ送信され、光学的信号は、光学的変調デバイスにより処理され、変調された光学的信号は、出力されて、リモートステーションからベースステーションへ送信し戻される。そのような実施形態において、光学的変調デバイスは、軍事または他の地上に配置されたコミュニケーション用途のオペレーターにより容易に採用される、軽量のハンドヘルドのユニットとして構成され得る。
【0044】
あるいは、上記で述べたように、光学的変調デバイスは、作動波長の光学的信号を生成し、他のロケーションへ送信するための光学的信号を変調するデバイス自身の送信器を備え得る。この構成は、地上に配置および衛星に配置または他の宇宙ロケーション間のコミュニケーション用途を含む多くの用途に適する。
【0045】
別の実施形態において、光学的変調デバイスは、デバイスが、同じまたは異なる波長を有する2つ以上の入力光学的信号を変調可能な本発明に従って、組み立てられ得る。例えば、光学的変調デバイスは、異なる波長の光学的信号を処理および/または異なる刺激にさらされたことに反応して透過状態と非透過状態を切り替えるように調整された、2つ以上の異なるメタマテリアル構造または単一のメタマテリアル構造の2つ以上のセクションを含み得る。例えば、光学的変調デバイス内で、異なるメタマテリアルおよび/またはナノ構造(例えば、ナノサイズの金属または酸化金属粒子層)を有するメタマテリアルの異なる組み合わせを使用するといった多くの異なる方法でこれは達成し得る。同じ光学的変調デバイスから他のロケーションへコミュニケーション情報の別個のセットを提供するため、異なる比率で変調される2つ以上の出力光学的信号も生成され得る。
【0046】
本明細書の本開示から容易に認められ得るように、光学的変調デバイスが光学的信号を変調し得る作動波長、そのような変調の周波数、達成される変調比率のようなある特徴は、用いられるメタマテリアルのタイプ、メタマテリアルに結合されたナノ構造のタイプおよび構成ならびにメタマテリアルの光学的状態の切り替えを達成するために用いられる刺激素材の数、タイプおよび配置を制限なしに含む多くのファクターに依存する。本発明は、メタマテリアルの使用を採用する多くの異なるタイプの光学的変調デバイスを促進する。
【0047】
光学的変調デバイスにおいて光学的信号の変調を達成するために用いられるメタマテリアル構造は、比較的容易に製造され、他の公知の光学的変調デバイス(例えば、MQW構造、液晶構造などを採用するデバイス)と比較して、光学的変調デバイスのデザインおよび組み立てを単純化する。メタマテリアル構造は、高いMCR値をさらに達成し、IR(例えば、眼の安全な光の範囲を含む)および近IR領域、可視光領域ならびに紫外線領域を制限なしに含む広い波長範囲に対して光学的信号の変調を提供するようにデザインされ得る。
【0048】
光学的限定構造または光学的限定構造を形成するデバイスおよび方法の例示的実施形態を説明したため、バリエーションと変更が当業者に、本明細書に記載された教示の見地から提案される。そのため、そのようなバリエーション、改変および変更の全ては、添付の特許請求の範囲により定義されるように本発明の範囲内におさまるものと信ずることが理解される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的変調システムであって、該光学的変調システムは、
メタマテリアル構造であって、該メタマテリアル構造は、作動波長の入力光学的信号を受信し、処理するように構成されており、該メタマテリアル構造は、該メタマテリアル構造に適用された外部の刺激に反応して、該作動波長の該光学的信号に関して、透過状態と非透過状態との間で変化する、メタマテリアル構造と、
外部の刺激源であって、該外部の刺激源は、該メタマテリアル構造に連結されており、該外部の刺激源は、該メタマテリアル構造に、選択された刺激パルスを適用することにより、該メタマテリアル構造の透過状態と非透過状態との間で、該メタマテリアル構造を変化させるように構成されている、外部の刺激源と
を含み、
該光学的変調システムは、該メタマテリアル構造に適用された該選択されたパルスに対応して変調する変調された光学的信号を出力するために、該入力光学的信号を処理する、光学的変調システム。
【請求項2】
請求項1のシステムであって、前記メタマテリアル構造は、VO、V、Ti、NiS2−ySe、LaCoO、PrNiO、CdOs、NdNiO、TlRu、NiS、BaCo1−yNi、Ca1−ySrVO、PrRu12、BaVS、EuB、Fe、La1−yCaMnO、La2−2ySr1+2yMn、TiおよびLaNiO(ここでy≦1)、アゾベンゼン含有ポリジアセチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアセテート、ポリビニルフェニレン、ポリスチレンサルフォネイト、オパールナノ構造にドープされたポリアニリンのうちの少なくとも1つを含む、システム。
【請求項3】
請求項1のシステムであって、前記メタマテリアル構造は、熱変色性素材を含む第一の層と、金、プラチナ、パラジウム、銀、銅およびアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む第二の粒子の層とを含む、システム。
【請求項4】
請求項1のシステムであって、該システムは、前記メタマテリアル構造が、透過状態と非透過状態とのうちの一方であるとき、得られる前記入力光学的信号の一部を使用して、前記変調された光学的信号を生成するように構成されており、該システムは、該変調された光学的信号の一部を形成しない該入力光学的信号の他の一部が該システムから伝達するのを妨害するように、さらに構成されている、システム。
【請求項5】
請求項1のシステムであって、前記メタマテリアル構造は、VOを含む、システム。
【請求項6】
請求項1のシステムであって、前記作動波長は、1.2マイクロメートルより大きい、システム。
【請求項7】
請求項1のシステムであって、該システムは、
少なくとも1つの反射面をさらに含み、前記メタマテリアル構造は、少なくとも1つの該反射面に対して提供される、システム。
【請求項8】
請求項7のシステムであって、該システムは、
少なくとも1つの前記反射面を含む少なくとも1つの再帰反射器をさらに含む、システム。
【請求項9】
光学的コミュニケーションシステムであって、該システムは、作動波長の入力信号を第二ステーションから受信するように構成されている第一ステーションを含み、処理ステーションは、
メタマテリアル構造であって、該メタマテリアル構造は、作動波長の入力光学的信号を受信し、処理するように構成されており、該メタマテリアル構造は、該メタマテリアル構造に適用された外部の刺激に反応して、該作動波長の該光学的信号に関して、透過状態と非透過状態との間で変化する、メタマテリアル構造と、
外部の刺激源であって、該外部の刺激源は、該メタマテリアル構造に連結されており、該外部の刺激源は、該メタマテリアル構造に、選択された刺激パルスを適用することにより、透過状態と非透過状態との間で該メタマテリアル構造を変化させるように構成されている、外部の刺激源と
を含み、
該光学的コミュニケーションシステムは、該入力光学的信号を処理し、該メタマテリアル構造に適用された該選択されたパルスに対応して変調する変調された光学的信号を出力する、光学的変調システム。
【請求項10】
請求項9のシステムであって、該システムは、前記メタマテリアル構造が、透過状態と非透過状態とのうちの一方であるとき、得られる前記入力光学的信号の一部を使用して、前記変調された光学的信号を生成するように構成されており、該システムは、該変調された光学的信号の一部を形成しない該入力光学的信号の他の一部が前記第一ステーションから伝達するのを妨害するように、さらに構成されている、システム。
【請求項11】
請求項9のシステムであって、該システムは、前記メタマテリアル構造が、透過状態であるとき、得られる前記入力光学的信号の一部を使用して、前記変調された光学的信号を生成するように構成されている、システム。
【請求項12】
請求項9のシステムであって、該システムは、
少なくとも1つの反射面をさらに含み、前記メタマテリアル構造は、少なくとも1つの該反射面に対して提供される、システム。
【請求項13】
請求項9のシステムであって、該システムは、
前記第二ステーションの出力変調された信号を向けるように配列された複数の反射面を含む再帰反射器をさらに含む、システム。
【請求項14】
請求項10のシステムであって、前記メタマテリアル構造は、VO、V、Ti、NiS2−ySe、LaCoO、PrNiO、CdOs、NdNiO、TlRu、NiS、BaCo1−yNi、Ca1−ySrVO、PrRu12、BaVS、EuB、Fe、La1−yCaMnO、La2−2ySr1+2yMn、TiおよびLaNiO(ここでy≦1)、アゾベンゼン含有ポリジアセチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアセテート、ポリビニルフェニレン、ポリスチレンサルフォネイト、合成オパールナノ構造にドープされたポリアニリンのうちの少なくとも1つを含む、システム。
【請求項15】
請求項10のシステムであって、前記メタマテリアル構造は、熱変色性素材を含む第一の層と、金、プラチナ、パラジウム、銀、銅およびアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む第二の粒子の層とを含む、システム。
【請求項16】
請求項10のシステムであって、外部の刺激源は、前記メタマテリアル構造の温度を改変し、結果として該メタマテリアル構造の透過状態と非透過状態との変化を生じるように、熱を発生させる、システム。
【請求項17】
請求項10のシステムであって、前記メタマテリアル構造は、VOを含む、システム。
【請求項18】
請求項9のシステムであって、前記作動波長は、1.2マイクロメートルより大きい、システム。
【請求項19】
請求項9のシステムであって、該システムは、少なくとも約100MHzの周波数を有する出力変調された光学的信号を生成するように構成されている、システム。
【請求項20】
光学的信号を変調する方法であって、該方法は、
第一ステーションの作動波長の入力光学的信号を受信することと、
該受信された入力光学的信号をメタマテリアル構造へ向けることと、
該作動波長の該光学的信号に関して、透過状態と非透過状態との該メタマテリアル構造の光学的状態を変化させるために、外部の刺激パルスを該メタマテリアル構造へ適用することと、
該メタマテリアル構造へ適用された該外部の刺激パルスに対応して変調される変調された光学的信号を、該メタマテリアル構造へ向けられた該入力光学的信号から、生成することと、
該変調された光学的信号を第二ステーションへ送信することと
を含む、方法。
【請求項21】
請求項20の方法であって、前記入力光学的信号は、前記第二ステーションから前記第一ステーションへ送信される、方法。
【請求項22】
請求項20の方法であって、前記メタマテリアル構造は、反射器の反射面の少なくとも一部に対して提供され、該反射器は、該メタマテリアルが透過状態のとき、光学的信号の一部を反射する、方法。
【請求項23】
請求項22の方法であって、前記メタマテリアル構造は、VO、V、Ti、NiS2−ySe、LaCoO、PrNiO、CdOs、NdNiO、TlRu、NiS、BaCo1−yNi、Ca1−ySrVO、PrRu12、BaVS、EuB、Fe、La1−yCaMnO、La2−2ySr1+2yMn、TiおよびLaNiO(ここでy≦1)、アゾベンゼン含有ポリジアセチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアセテート、ポリビニルフェニレン、ポリスチレンサルフォネイト、合成オパールナノ構造にドープされたポリアニリンのうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項24】
請求項22の方法であって、前記メタマテリアル構造は、熱変色性素材を含む第一の層と、金、プラチナ、パラジウム、銀、銅およびアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む第二の粒子の層とを含む、方法。
【請求項25】
請求項20の方法であって、前記変調された光学的信号は、前記メタマテリアル構造が透過状態と非透過状態とのうちの一方であるとき、得られる前記入力光学的信号の一部を使用して生成され、該方法は、
該変調された光学的信号の一部を形成しない前記入力光学的信号の他の一部が、前記第一ステーションから伝達することを妨害することをさらに含む、方法。
【請求項26】
請求項20の方法であって、前記外部の刺激パルスは、前記メタマテリアル構造の温度を改変し、結果として該メタマテリアル構造の透過状態と非透過状態の変化を生じさせるための熱のパルスを含む、方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate