説明

メタルハライドランプ

【課題】 寿命中のナトリウム抜けを抑制することで、色度変化を抑制する。
【解決手段】
本発明のメタルハライドランプは、放電空間14を内部に形成する発光管部11、該発光管部11の両端に形成された封止部12a、12bとを有する気密容器1の放電空間14には、金属ハロゲン化物および希ガスが封入された本質的に水銀不含の放電媒体され、封止部12a、12bには、一対の電極2a2、2b2の基端側が封着され、その先端側は放電空間14内で対向配置されている。そして、気密容器1には囲繞するように外管3が取着され、外管3にはナトリウムが100ppm以上添加されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前照灯等に使用されるメタルハライドランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水銀を封入しないメタルハライドランプは、例えば、特開平11−238488号公報などにより、既に知られている。このような水銀を封入しないメタルハライドランプは、ナトリウム、スカンジウム、亜鉛、インジウム等のハロゲン化物とキセノンを組み合わせることにより、水銀を用いなくても従来と同等、又はそれ以上の特性を得ることができるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−238488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような水銀を封入しないメタルハライドランプは、水銀入りのメタルハライドランプと比較して、アークが細く浮いてしまうため、点灯中、発光管の頂上部分の温度が高くなりやすく、これにより寿命中に発光管からナトリウムがランプ外部に抜けやすい。ナトリウムが抜けると、スカンジウムとの比率が崩れ、色度変化が発生してしまう。
【0005】
この課題に対し、特開2003−109536号公報には、外管にナトリウムを10ppm以上添加する発明が記載されている。この構成を採用することで、放電容器からのナトリウムの拡散、すなわちナトリウム抜けの現象を抑制できるとある。
【0006】
そこで、発明者等が上記特許文献に基づき試験を行なった結果、外管に添加するナトリウムの量をさらに好適な量に規定することで、寿命中のナトリウム抜けによる色度変化を顕著に抑制することができることを見出したので、提案するに至った。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みたもので、その目的は寿命中のナトリウム抜けを抑制することで、色度変化を抑制することができるメタルハライドランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のメタルハライドランプは、放電空間を内部に形成する発光管部、該発光管部の両端に形成された封止部とを有する気密容器と、前記放電空間に金属ハロゲン化物および希ガスが封入された本質的に水銀不含の放電媒体と、基端側は前記封止部に封着され、先端側は前記放電空間内で対向配置された一対の電極と、前記気密容器を囲繞する外管とを具備し、前記外管にはナトリウムが100ppm以上添加されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、寿命中のナトリウム抜けを抑制することで、色度変化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
以下に、本発明の実施の形態のメタルハライドランプについて図面を参照して説明する。図1は、本発明のメタルハライドランプの第1の実施の形態について説明するための全体図である。
【0011】
気密容器1は、耐熱性と透光性を具備した石英ガラスからなる。気密容器1はランプ軸方向に細長い形状であって、その略中央部には略楕円形の発光管部11が形成されている。発光管部11の両端部には、板状の封止部12a、12b、筒状の非封止部13a、13bが連続形成されている。
【0012】
発光管部11の内部には、軸方向において、中央部が略円柱状、その両端部がテーパ状の放電空間14が形成されている。この放電空間14の容積は、ショートアーク型の放電ランプでは0.1cc以下、自動車前照灯用として用途を指定する場合には、放電空間の容積は0.01cc〜0.04ccであるのが望ましい。
【0013】
放電空間14には、放電媒体が封入されている。放電媒体には、金属ハロゲン化物および希ガスとが使用されている。
【0014】
金属ハロゲン化物としては、主に可視光を発生させる発光媒体として作用するナトリウム、スカンジウムのハロゲン化物、ランプ電圧形成媒体として作用する亜鉛のハロゲン化物および点灯中の発光色度の改善などを目的としてインジウムのハロゲン化物が封入されている。これらの金属に結合されるハロゲン化物には、ハロゲン化物の中で反応性が低いヨウ素と結合されるのが最も好適である。しかし、結合されるハロゲン化物はヨウ素に限らず、臭素や塩素などであってもよく、複数のハロゲン化物を組み合わせて使用したりしてもよい。
【0015】
希ガスとしては、始動直後の発光効率が高く、主に始動用ガスとして作用するキセノンが封入されている。なお、キセノンの他に、ネオン、アルゴン、クリプトンなどを使用したり、それらを組み合わせて使用したりしてもよい。その際、希ガスの封入圧は、9〜15atmであるのが望ましい。
【0016】
ここで、放電媒体は、本質的に水銀不含である。この「本質的に水銀不含」とは、1ccあたり2mg以下、好ましくは1mg以下、さらに好ましくは0mgの水銀量の範囲を含むものである。この水銀量は、従来のショートアーク形の水銀入りメタルハライドランプに封入されていた1ccあたり20〜40mg、場合によっては50mg以上であったことを考えれば、本質的に水銀が含まれない量であると言える。
【0017】
封止部12a、12bの内部には、マウント2a、2bが封止されている。
マウント2a、2bは、金属箔2a1、2b1、電極2a2、2b2、コイル2a3、2b3、外部リード線2a4、2b4からなる。
【0018】
金属箔2a1、2b1、例えば、モリブデンからなる薄い金属板である。
【0019】
電極2a2、2b2は、例えば、タングステンに酸化トリウムを混合した材料からなり、金属箔2a1、2b1の発光管部11側の端部に、溶接によって接続されている。その形状は、先端側が基端側よりも大径に形成された段付き形状となっており、大径の先端側は、放電空間14内で所定の電極間距離を保って、互いの先端同士が対向するように配置され、小径の基端側は封止部12a、12bの内部に封止される。ここで、上記「所定の電極間距離」は、ショートアーク形ランプでは5mm以下、自動車の前照灯に使用する場合はさらに4.2mm程度であるのが望ましい。
【0020】
コイル2a3、2b3は、例えば、ドープタングステンからなり、電極2a2、2b2の周面に螺旋状に巻かれている。コイル2a3、2b3が巻かれている領域は、金属箔2a1、2b1の端部から、発光管部11の方向におよそ3.0mmである。
【0021】
外部リード線2a4、2b4は、例えば、モリブデンからなり、発光管部11に対して反対側の金属箔2a1、2b1の端部に、溶接等により接続されている。そして、外部リード線2a4、2b4の他端側は、管軸に沿って封止部12a、12bの外部に延出している。
【0022】
上記で構成された気密容器1の外側には、石英ガラスにチタン、セリウム、アルミニウム等の酸化物を添加することにより、紫外線を遮断性する作用を有する筒状の外管3が、管軸に沿って気密容器1と同心状に設けられている。それらの接続は、気密容器1両端の筒状の非封止部13a、13bと外管3の両端部を溶融することにより行なわれている。また、外管3には、ナトリウムが100ppm以上添加されている。ここで、ナトリウムは、外管3に添加するのみならず、外管3の内面に水酸化ナトリウム等の形態で塗布してもよい。その際、ナトリウムは、元素の状態で添加された場合のみならず、酸化された状態で添加された場合なども含むものとする。なお、外管3に添加されたナトリウム等は、例えばプラズマ分光分析法を用いることで測定することが可能である。
【0023】
気密容器1と外管3とにより形成された空間は、完全に気密に保たれている。なお、その空間には、例えば、窒素を封入したり、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガスを一種または混合して封入したりすることができる。
【0024】
気密容器1を内部に覆った状態の外管3の封止部12a側には、ソケット4が接続される。この接続については、非封止部13a付近の外管3の外周面に装着された金属バンド51を、ソケット3の気密容器1保持側の開口端に形成された4本の金属製の舌片52(図1では、2本を図示)により挟持することによって行なわれている。そして、それらの接続をさらに強化するために、金属バンド51及び舌片52の接触点をレーザーによって溶接している。
【0025】
ソケット4の反発光管部11側の端部には、点灯回路からの電力を供給するための帯状端子41がその外周面に沿って形成されている。この帯状端子41は、外部リード線42とサポートワイヤ61を介して接続されている。なお、サポートワイヤ61の管軸とほぼ平行な部分には、セラミックからなる絶縁チューブ62が被覆されている。
【0026】
これらで構成されたメタルハライドランプは、管軸が略水平の状態で配置され、安定時は約35W、始動時は安定時電力に対して2倍以上である約75Wで点灯される。
【0027】
図2は、図1のメタルハライドランプの一仕様について説明するための拡大図である。以下の試験は特に言及しない限り寸法、材料等はこの仕様に基づいて行っている。
【0028】
放電容器1:石英ガラス製、放電空間14の容積=0.02cc、内径A=2.5mm、外径B=6.2mm、長手方向の球体長C=7.8mm、
発光管部11と外管3との距離D=0.4mm
金属ハロゲン化物=ScI3:NaI:ZnI2:InBr、総封入量=0.60mg
希ガス:キセノン=10atm、
水銀:0mg、
金属箔2a1、2b1:モリブデン製、
電極2a2、2b2:トリエーテッドタングステン製、先端径=0.40mm、基端径=0.30mm、電極間距離E=4.2mm、
外部リード線2a4、2b4:モリブデン製、直径=0.6mm、
外管3:酸化チタン=400ppm、酸化セリウム=4500ppm、ナトリウム
気密容器1と外管との間の空間:窒素、圧力=0.1atm
図3は、ナトリウムの添加量による色度xの変化を示す図である。なお、点灯条件は、自動車前照灯HID光源の規格であるJEL215に定められたEU120分モードの点滅サイクルである。
【0029】
結果より、外管3のナトリウム添加量を変化させることによって、寿命中の色度xの変化量に影響を与えることがわかる。すなわち、外管3のナトリウム添加量が多いほど、全体的に色度xの変化の傾向は少ない。なお、色度yについてもほぼ同様の傾向が得られる。
【0030】
ここで、特に注目すべきは、その最大色度変化量である。つまり、ナトリウムの外管3への添加量を変えた全てのランプにおいて、500時間〜1000時間までに最も色度xが変化している傾向があるが、このときの最大色度変化量について注目する。
【0031】
図4は、2000時間までの色度xの最大変化を示す図している。結果から、外管3のナトリウム添加量が増えるほど、最大色度変化が少なくなる。そして、100ppmを超えるとその傾向が顕著であるのを確認できる。
【0032】
このように、外管3にナトリウムを添加すると、点灯中にそのナトリウムが気密容器1と外管3との間の空間に配置され、その空間のナトリウム濃度が高まることによって発光管部11内のナトリウムの抜けが抑制されることは公知である。しかし、ナトリウムの濃度が100ppm以上になると、ナトリウム抜けを示す色度変化が大幅に改善されたのは、発光管部11内のナトリウムの拡散を抑制するどころか、気密容器1と外管3との間の空間のナトリウムが発光管部11内に侵入したためではないかと予想される。つまり、気密容器1と外管3との間の空間のナトリウム濃度がある程度高められた場合に、超過したナトリウムが発光管部11の壁を透過して内部に侵入するという現象が発生しても不思議ではないと考えられる。ただし、外管3に添加されたナトリウムが寿命中に発光管部11内に侵入したかどうかを確認することは、発光管部11には最初からナトリウムが封入されているために困難である。
【0033】
そのため、外管3へのナトリウムの添加量は、図3の結果などから、100ppm以上であるのが望ましい。なお、ナトリウムの添加量について上限は特にないが、添加量が多すぎると外管が白濁して発光効率が低下する可能性があるため、3000ppm以下であるのが良い。
【0034】
したがって、本実施の形態では、水銀を封入しないメタルハライドランプにおいて、外管3にナトリウムを100ppm以上添加することにより、寿命中の色度変化を顕著に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のメタルハライドランプの第1の実施の形態について説明するための全体図。
【図2】図1のメタルハライドランプの一仕様について説明するための拡大図。
【図3】ナトリウムの添加量による色度xの変化を示す図。
【図4】外管に添加されたナトリウムの量を変化させたときの2000時間までの色度xの最大変化を示す図。
【符号の説明】
【0036】
1 気密容器
11 発光管部
12a、12b 封止部
13a、13b 非封止部
14 放電空間
15 金属ハロゲン化物
2a、2b マウント
2a1、2b1 金属箔
2a2、2b2 電極
2a3、2b3 コイル
2a4、2b4 外部リード線
3 外管
4 ソケット
51 金属バンド
52 舌片
61 サポートワイヤ
62 絶縁チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を内部に形成する発光管部、該発光管部の両端に形成された封止部とを有する気密容器と、
前記放電空間に金属ハロゲン化物および希ガスが封入された本質的に水銀不含の放電媒体と、
基端側は前記封止部に封着され、先端側は前記放電空間内で対向配置された一対の電極と、
前記気密容器を囲繞する外管とを具備し、
前記外管にはナトリウムが100ppm以上添加されていることを特徴とするメタルハライドランプ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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