説明

メタルハライドランプ

本発明は、高い光源効率と、高い赤色演色性とを兼ね備えるメタルハライドランプに関する。これは、セラミック壁部を持つ放電容器を有するランプであり、前記放電容器が、2つの電極と、イオン化可能な充填物とを収容する放電空間を囲み、前記充填物が、少なくとも20mol%のCaのハロゲン化物と、Tl及び希土類元素のグループから選択される1つ以上のハロゲン化物とを含むランプであって、前記イオン化可能な充填物が、ハロゲン化物の総量の少なくとも5mol%、好ましくは10mol%と15mol%との間のモル量の、Mgのハロゲン化物、Mnのハロゲン化物、又はそれらの混合物を含むランプによって実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック壁部を持つ放電容器を有するメタルハライドランプであって、前記放電容器が、2つの電極と、ハロゲン化物を含むイオン化可能な充填物とを収容する放電空間を囲み、前記充填物が、少なくとも約20mol%のCaのハロゲン化物と、Tl及び希土類元素のグループから選択される1つ以上のハロゲン化物とを含むメタルハライドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内照明及び外部照明において、ますます、白熱灯に取って代わってアーク放電ランプが用いられるようになっている。しかしながら、アーク放電ランプは、白熱光源ほど満足には赤色を表現(render)しない。赤色放射線を増やすためには、多くの場合、充填物にCaのハロゲン化物が付加される。光源効率(luminous efficacy)を更に向上させ、白色光源を得るためには、Tl及び希土類元素のグループから選択される1つ以上のハロゲン化物が、緑色放射体として付加される。本願明細書では、希土類金属は、元素Sc、Y及びランタン系列元素を意味すると理解されたい。約3000Kの色温度における非常に効率のよい発光のために、Naが更に含まれ得る。
【0003】
CIE(the Commission Internationale de l'Eclairage)によってCIE公開番号第13.2号において規定されているように、R演色評価数は、2つの光源、テスト光源と基準光源とを用いて別々に見られる場合の標準化されている赤色テストサンプルの反射強度間の比較を表わす。5000K未満の相関色温度(CCT)のテスト光源に対しては、基準光源は、同等のCCT及び輝度の黒体放射線である。赤色テストサンプルの2つの反射強度が等しければ、等しいほど、Rの値は高い。100という最大値は、基準光源と全く同じに、規定されている赤色テストサンプルを表現する光源を表わす。
【0004】
本願明細書においては、「セラミック」という用語は、単結晶金属酸化物(例えばサファイア)、多結晶金属酸化物(例えば、多結晶高密度焼結アルミニウム酸化物及びイットリウム酸化物)、及び多結晶非酸化物材料(例えば、窒化アルミニウム)などの耐火性材料を意味すると理解されたい。このような材料は、1500乃至1700Kの壁部温度を許容し、ハロゲン化物及びNaに対して耐腐食性がある。本発明において、多結晶アルミニウム酸化物(PCA)が、最も適していることが分かった。
【0005】
冒頭の段落において規定されているタイプのランプは、米国特許出願公開番号第2003/0141818 A1号公報から既知である。米国特許出願公開番号第2003/0141818 A1号公報のランプのアーク管の充填物には、赤色発光が増やされたランプを製造するために、10mol%と75mol%との間の量のCaI2が付加される。青色放射線の相対的寄与率(relative contribution)を制限し、優先的に赤色カルシウム放射線を増すために、充填物にはTlIが含まれる。気相中のカルシウムの量を増大させ、それよって、赤色放射線の量も増大させるために、AlI3又はGaI3が付加される。しかしながら、この既知のランプは、用いられる特定のタイプの塩混合物のために光源効率が相対的に低く(60乃至70lm/W)、電極のタングステン金属に対してAlの反応性が高く、これが、既知のランプの耐用年数に悪影響を及ぼすという不利な点を持つ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い光源効率及び高い赤色演色性(high red rendering)を持つ、冒頭の段落に記載されているタイプのランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、イオン化可能な充填物が、ハロゲン化物の総量の少なくとも約5mol%、好ましくは約10mol%と約15mol%との間のモル量の、Mgのハロゲン化物、Mnのハロゲン化物、又はそれらの混合物を更に含むことで達成される。本発明のランプにおいては、マグネシウム及びマンガンは、略々520nmを放射することによって、前記ランプの光源効率と、赤色放射線の量との両方を増大させるという認識が利用されている。約5mol%未満では、Mgのハロゲン化物、Mnのハロゲン化物、又はそれらの混合物の効果が小さすぎて、色特性の向上に著しくは寄与しない。これらのハロゲン化物が約15mol%を越えると、前記光源効率は低下し、前記ランプの色は、黒体線から離れる。
【0008】
本発明のランプの中には、少なくとも約20mol%という量のカルシウムのハロゲン化物が存在する。少なくとも約50mol%という量のカルシウムが存在する場合、更に優れた赤色演色性が得られる。
【0009】
Tl及び希土類元素のグループから選択される1つ以上のハロゲン化物は、緑色放射体として前記充填物に付加される。特に好ましい緑色放射体は、セリウム及びプラセオジムのハロゲン化物である。Tl及び希土類元素のグループからのハロゲン化物の量は、好ましくは、約0.5mol%と約15mol%との間である。約0.5mol%未満では、前記光源効率に対するそれらの寄与率は微々たるものである一方で、約15mol%より多い量は、アークの許容できない短縮(contraction)をもたらす。
【0010】
ランプ電圧を高め、斯くして、その光出力を高めるために、前記充填物は、電極間の適切な電圧降下又は電力投入(power loading)を供給するためにHgを更に含み得る。Hgの使用は、適切な電圧降下を得るための高圧のAr(又は他の希ガス)の充填が避けられ得るという利点を持つ。或るランプ電圧のために必要とされるHgの量は、第1に、前記ランプ放電空間の体積及び前記電極間の距離に依存し、第2に、用いられる塩充填物のタイプに依存する。
【0011】
本発明のランプは、4000Kより高い相関色点(correlated color point)であって、その色が、黒体線の近くに位置する相関色点を持ち、優れた色及び赤色の演色を示し、その寿命全体を通じて改善されたメンテナンス動作(maintenance behavior)を持つ。
【0012】
下記の実施例を参照して本発明のこれら及び他の特徴を説明し、明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、放電空間11を囲むセラミック壁部を持つ、図2に縮尺通りに描かれてはいない断面図で示されている放電容器10を有するメタルハライドランプ1を示しており、放電空間11は、Hgに加えて、NaI、CaI2、CeI3及びMgI2を含むイオン化可能な充填物を収容する。
【0014】
放電容器は、図2に詳細に示されている。放電容器は、セラミック壁部20を持ち、セラミック壁部20は、各々電極40a及び40bに対する貫通導線(electric lead-throughs)を収容するための突出セラミックプラグ30a、30bをどちらの端部にも具備する。各貫通導線は、例えばMo製のハロゲン化物に対し耐性がある部分(halide-resistant portion)51a、51bと、例えばセラミック釉薬接続部32a、32bによってガス密なように各々のプラグに30a、30bに接続される部分52a、52bとを有する。本願明細書においては、ハロゲン化物に対し耐性があるということは、ランプ動作中に放電空間において優勢である状況のもとで、ハロゲン化物及び遊離ハロゲンによる腐食攻撃が全く又は実質的に生じないことを意味すると理解されたい。
【0015】
部分52a、52bは、突出プラグのそれに対応し、対応膨張係数を持つ金属で作成される。例えば、Nbは、非常に適した材料である。部分52a、52bは、図1に示されているように、各々、電流導体8、9に接続される。
【0016】
各電極40a、40bは、電極棒41a、41bを有し、一方の端部に巻き線42a、42bを具備する。
【0017】
放電容器20は放電空間11を囲み、放電空間11内には充填材料が存在する。
【0018】
本発明によるランプの或る実施例においては、放電容器は、突出プラグと同様に、多結晶高密度焼結アルミニウム酸化物で作成される。電極は、タングステンで作成される。本実施例において用いられるランプの定格電力は82.5Wである。充填物の構成要素の量は、表1に示されている。更に、ランプは、始動ガス(starter gas)として400mbarのAr/Kr85を有する。外側バルブは、硬質ガラスで作成される。
【表1】

放電容器は、5.6mmの内径と、8mmの内側長さとを持つ。電極間の距離は6mmである。
【0019】
表2は、上記の実験実施例の性能データを示している。
【表2】

【0020】
比較の目的のために、表3には、本発明によるタイプのランプと同じであるが、充填物中にMgを含まない最新技術によるランプの性能が示されている。両ランプは、230Vの系統電圧で動作させられた。
【表3】

【0021】
本発明によるランプが、多くて91Lm/Wの光源効率を持つ米国特許出願公開番号第2003/0141818 A1号公報から既知のランプより良好な光源効率(Lm/W)を持つことは明らかである。表2と表3との比較は、MgI2を付加することによって、光源効率に著しく影響を及ぼすことなしに、平均演色評価数Rと、赤色の演色評価数(red rendering index) Rとが改善されることを示している。CIE系のx-y色度図におけるx座標及びy座標は、本発明によるランプの色が、より黒体線に近いことを示している。
4×19mm(容器の内径×長さ)の放電容器を持つ別の実施例は、6.2mgのヨウ化物を、62.2mol%のNaIと、2.1mol%のTlIと、20.6mol%のCaI2と、2.3mol%のCeI3と、12.8mol%のMnI2という割合で充填された。放電容器は、Hgを収容しなかったが、30kPaの圧力までXeを充填され、真空バルブ12内に取り付けられた。90ワットの電力設定においては、31.6という演色評価数R及び100Lm/Wという光源効率が測定された。
【0022】
本発明によるランプの別の特徴は、寿命全体を通じてのそれらの改善されたメンテナンス動作である。
【0023】
本発明の保護範囲は、上に一例として記載されている実施例に限定されない。本発明は、新しい特有の特徴の1つ1つ、及び特有の特徴の組み合わせの1つ1つによって規定される。特許請求の範囲における参照符号は、本発明の保護範囲を限定するものではない。「有する」という動詞及びその語形変化の使用は、特許請求の範囲において言及されている要素以外の要素の存在を除外するものではない。要素の単数形表記は、このような要素の複数の存在を除外するものではない。
【0024】
特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるランプを示す。
【図2】図1に示されているランプの放電容器の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック壁部を持つ放電容器を有するメタルハライドランプであり、前記放電容器が、2つの電極と、ハロゲン化物を含むイオン化可能な充填物とを収容する放電空間を囲み、前記充填物が、少なくとも約20mol%のCaのハロゲン化物と、Tl及び希土類元素のグループから選択される1つ以上のハロゲン化物とを含むメタルハライドランプであって、前記イオン化可能な充填物が、ハロゲン化物の総量の少なくとも約5mol%のモル量の、Mgのハロゲン化物、Mnのハロゲン化物、又はそれらの混合物を含むことを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
ハロゲン化物の総量の約10mol%と約15mol%との間のモル量の、前記Mgのハロゲン化物、Mnのハロゲン化物、又はそれらの混合物が存在する請求項1に記載のランプ。
【請求項3】
前記充填物がHgを更に含む請求項1に記載のランプ。
【請求項4】
前記充填物がNaのハロゲン化物を更に含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載のランプ。
【請求項5】
前記希土類元素がセリウム及びプラセオジムである請求項1乃至4のいずれか一項に記載のランプ。
【請求項6】
前記充填物が少なくとも約50mol%のCaのハロゲン化物を含む請求項1乃至5のいずれか一項に記載のランプ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−539543(P2008−539543A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508377(P2008−508377)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051264
【国際公開番号】WO2006/117713
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】