説明

メタルハライドランプ

【課題】水銀灯の代替光源として満足し得る性能を有するメタルハライドランプを提供すること。
【解決手段】発光物質としてハロゲン化金属が封入されてなる発光管44と発光管44を気密封止する内管46とからなる二重管構造体42と、二重管構造体42を収納する外管16と、外管16の開口端部と接合され、外管16を支持する筒状をしたケース部12と、ケース部12に収納された、発光管44を点灯するための点灯回路ユニット18とを備え、ケース部12を構成する材料として、熱伝導率が1.0[W/(m・K)]以上のものを選択し、外管16を硬質ガラスで形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルハライドランプに関し、特に、水銀灯代替光源として好適なメタルハライドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
道路、広場、競技場などの屋外照明、体育館や工場などの高天井の屋内照明には、従来、主として水銀灯が用いられているが、水銀灯は比較的効率が低いため、近年の省エネルギーの要請を背景として、当該水銀灯を効率の高いメタルハライドランプへ置き換えることが推奨されている。
【0003】
しかし、水銀灯用の既存の照明施設には安定器が設けられているため、当該水銀灯用の照明器具にメタルハライドランプをそのまま装着して水銀灯と同等の明るさを得るためには、前記安定器をメタルハライドランプ用の安定器に取り替える必要があり、このことが、メタルハライドランプへの置き換えの阻害要因の一つとなっている。
【0004】
そこで、水銀灯用の安定器はそのまま残存させた状態で、当該水銀灯と同等の明るさが得られるメタルハライドランプとして、安定器を含む点灯回路をケース内部に収納した所謂回路内蔵型のメタルハライドランプへの要望が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−158361号公報
【特許文献2】特開2005−116218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、回路内蔵型のランプに関しては、電球型蛍光ランプや水槽用ランプのような低ワットタイプのランプについては検討されているが、水銀灯の代替品となる高ワットタイプのランプについては、これに用いられる点灯回路において発生する熱が無視できない。特に、ランプの有するケース内といった限られた空間に収納される関係上、当該空間内の雰囲気温度の上昇に伴って、回路を構成する素子が過熱され、その寿命が短くなってしまうことが懸念される。その結果、既存の水銀灯よりも寿命が短くなってしまったのでは、代替の利点が半減してしまう。
【0007】
この対策のため、点灯回路を収納するケースに金属等の熱伝導性の良い材料を用い、当該ケースにヒートシンクを兼用させることが考えられる。
ところが、そのような材料でケースを構成した場合、点灯回路で発生する熱がケースを伝導して、当該ケースに取り付けられ発光管を収納する外管を加熱してしまう。外管は、発光管の発生する熱によっても加熱されるため、点灯中、当該外管は相当な高温になる。このため、点灯、消灯の繰り返しに伴って受ける熱衝撃等に起因する外管の破損が懸念される。
【0008】
本発明は、上記した課題に鑑み、水銀灯の代替光源として満足し得る性能を有するメタルハライドランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係るメタルハライドランプは、発光物質としてハロゲン化金属が封入されてなる発光管および当該発光管を気密封止する内管からなる二重管構造体と、当該二重管構造体を収納する外管と、前記外管の開口端部と接合され、当該外管を支持するケースと、当該ケースに収納された、前記発光管を点灯するための複数の素子を含む点灯回路と、を有し、前記ケースが、熱伝導率が1.0[W/(m・K)]以上の材料で形成されており、前記外管が、硬質ガラスで形成されている、ことを特徴とする。
【0010】
また、前記点灯回路を構成する素子の内、スイッチング素子が前記ケースと熱的に結合されていることを特徴とする。ここで、スイッチング素子がケースと「熱的に結合」とは、スイッチング素子とケースとが接触している状態、または、スイッチング素子とケースとが両者の間に在って空気よりも熱伝導率の高い物質に接触しているため、両者の間に空気のみが存在する場合よりも、スイッチング素子からケース、またはケースからスイッチング素子に熱が伝わり易い状態にあることをいう。
【0011】
この場合に、前記スイッチング素子は、前記ケースの内壁面に接触状態で設けられることにより、当該ケースと熱的に結合させることとしても良い。あるいは、前記スイッチング素子は、熱伝導性ペーストを介して前記ケースと熱的に結合されていることとしても良い。
【0012】
また、前記ケースの、外管とは反対側端部に連設された口金部を有し、当該口金部が、照明器具に設けられたソケットに装着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るメタルハライドランプによれば、点灯回路を収納するケースが、熱伝達率が1.0[W/(m・K)]以上の材料で形成されているため、ケース内温度の過度の上昇を防止できる。その結果、後記する試験結果が示すように、水銀灯と同等以上の寿命を確保できる。また、ケースと接合される外管が硬質ガラスで形成されているため、後記する試験結果が示すように、熱衝撃等に起因する外管の破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係るメタルハライドランプの断面図である。
【図2】上記メタルハライドランプのケース部を示す半断面図である。
【図3】上記メタルハライドランプに内蔵されている点灯回路ユニットの回路図である。
【図4】定格ランプ電力200[W]の上記メタルハライドランプを用い、ケース部の材料選択のために実施した試験の結果を示す図である。
【図5】図4に示す試験の結果を表したグラフである。
【図6】定格ランプ電力30[W]のものについてした、上記の試験と同様の試験の結果を示す図である。
【図7】図6に示す試験の結果を表したグラフである。
【図8】定格ランプ電力100[W]のものについてした、上記の試験と同様の試験の結果を示す図である。
【図9】図8に示す試験の結果を表したグラフである。
【図10】(a)は、外管の材料として候補に挙がったものの種々の特性値をまとめた図であり、(b)は、外管の材料選択のために実施した試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<ランプ構造>
図1は、実施の形態に係るメタルハライドランプ10の概略構成を示す縦断面図である。なお、本図において、後述する発光管44と点灯回路ユニット18とは切断していない。また、各構成部材間の縮尺は統一していない。
【0016】
メタルハライドランプ10の定格ランプ電力は、200[W]である。ここで、定格ランプ電力とは、回路込みのランプにおいて光源で消費される電力をいう。メタルハライドランプ10は、水銀灯代替光源として、水銀灯用の既存の照明器具に装着して用いられる。メタルハライドランプは、水銀灯と比較して効率[lm/W]が良いため、本例の200[W]のメタルハライドランプは、400[W]の水銀灯に代替し、当該水銀灯とほぼ同等の明るさが得られる。
【0017】
図1に示すように、メタルハライドランプ10は、ケース部12と、ケース部12に一体的に連設された口金部14と、ケース部12に接合された外管16とを有する。
ケース部12は、中空の略円錐台形をした筒状をしている。図2に、ケース部12の半断面図を示す。図2を参照しながら、ケース部12の概略寸法を示す。ケース部12の長さL=100[mm]、大きい方の開口部外径φA=120[mm]、小さい方の開口部外径φB=53[mm]、平均の肉厚T=1.0[mm]である。ケース部12を構成す
る材料については後述する。
【0018】
図1に戻り、ケース部12内には、点灯回路ユニット18が収納されている。点灯回路ユニット18は、ケース部12の内壁面に固定されたプリント配線板20と複数個の電子部品22等からなる。
【0019】
点灯回路ユニット18における点灯回路24について、図3を参照しながら説明する。
図3に示すように、点灯回路24は、AC/DC変換部24A、DC調整部24B、およびDC/AC変換部24Cを有する。
【0020】
AC/DC変換部24Aは、商用交流電源からの交流電力を所定電圧の直流電力に変換する。AC/DC変換部24Aは、整流回路DBと、整流回路DBから出力される直流電圧を昇圧する昇圧回路とを備える。昇圧回路は、チョッパー方式の昇圧回路であり、インダクタンスL1、スイッチング素子であるトランジスタQ1、ダイオードD1、およびコンデンサC1を備える。本例において、インダクタンスL1にはチョークコイルが、コンデンサC1には電解コンデンサが、それぞれ使用される。
【0021】
DC調整部24Bは、AC/DC変換部24Aから出力される直流電圧を所定の電圧に調整する。DC調整部24Bは、チョッパー方式の降圧回路からなる。当該降圧回路は、トランジスタQ2、ダイオードD2、インダクタンスL2、およびコンデンサC2を備える。本例において、インダクタンスL2にはチョークコイルが、トランジスタQ2にはトランジスタが、コンデンサC2には電解コンデンサが、それぞれ使用される。
【0022】
DC/AC変換部24Cは、DC調整部24Bから出力される直流電力を交流電力に変換して、発光管44に給電する。DC/AC変換部24Cは、直流電力を交流電力に変換する変換回路と、発光管44に流れる電流を制御し放電を安定させる安定器L3とを備える。変換回路は、フルブリッジ回路であり、4つのトランジスタQ3,Q4,Q5,Q6を備える。また、安定器L3には例えばチョークコイルが使用される。
【0023】
メタルハライドランプ10は、上記した構成の点灯回路24を内蔵しているため、水銀灯用の安定器(銅鉄安定器)が残存している既設の照明施設にも使用することができる。この場合、既設の水銀灯よりも低W(ワット)のもので、当該水銀灯と同等の明るさが得られる。例えば、上記したように、既設の水銀灯が400[W]であれば、200[W]のメタルハライドランプ10に交換しても、交換前後で同等の明るさとなる。なお、言うまでも無く、水銀灯用の銅鉄安定器を除去した施設でも、あるいは、電力ラインにおいて当該銅鉄安定器を意図的に短絡させた施設においても、メタルハライドランプ10を使用することは可能である。
【0024】
図1に戻り、点灯回路ユニット18は、口金部14から第1リード線26および第2リード線28を介して供給される商用交流電力を、後述する発光管44を点灯させるための電力に変換して、発光管44に給電する。なお、第1リード線26,第2リード線28は、いずれも被覆線であり被覆が両端部部分において一部ストリップされ、導線が露出してなるものである。
【0025】
口金部14は、略円筒状をし、耐熱性の合成樹脂材料からなる第1絶縁体部30を有している。第1絶縁体部30は、ケース部12の一方の開口端部に接合されている。
口金部14は、また、筒状胴部とも称されるシェル32と円形皿状をしたアイレット34とを有する。シェル32とアイレット34とは、ガラス材料からなる第2絶縁体部36を介して一体となっている。この一体となったものが、第1絶縁体部30に嵌め込まれている。なお、第2絶縁体部を構成する材料は、ガラス材料に限らず、セラミック材料も好適に使用することができる。
【0026】
第1絶縁体部30には、貫通孔30Aが開設されており、貫通孔30Aを介して第1リード線26が第1絶縁体部30内から外部に導出されている。
第1リード線26の一端部の導線部分は、シェル32の内周面と第1絶縁体部30外周面との間に挟持されている。これにより、第1リード線26とシェル32とは電気的に接続されている。
【0027】
アイレット34は、中央部に開設された貫通孔34Aを有している。第2リード線28の導線部がこの貫通孔34Aから外部へ導出され、アイレット34の外面に半田付けにより接合されている。
【0028】
ケース部12の他方の開口端部には、後述する二重管構造体42を支持するホルダ40が接合されている。この場合における接合とは、外管とホルダとが直接密接する状態、ホルダが外管を直接押圧する状態で接触する場合、外管とホルダとが無機接着材を介して固着されている場合、および外管とホルダとが他部材を介して接触する場合を含む概念である。ここで、他部材を介して接触する場合とは、ホルダの熱が他部材を介して殆ど外管に伝わるような場合をいい、具体的には、ホルダにおける他部材との接触部と外管における他部材との接触部との温度差が5(℃)程度の場合をいう。
【0029】
ホルダ40は、アルミニウムからなる円板状をしており、その中央部には、二重管構造体42における後述するピンチシール部78の横断面形状に合わせた長孔40Aが開設されている。なお、ホルダを構成する材料としては、アルミニウムに限らず、例えば、SUS,Fe−Ni合金のような金属も好適に使用することができる。
【0030】
ホルダ40に支持されている二重管構造体42は、発光管44と内管46とを有する。
発光管44は、本管部48と本管部48の管軸方向両側に形成された細管部50,52とからなる放電容器54を有している。放電容器54は、透光性セラミックで形成されている。透光性セラミックには、例えば、アルミナセラミックを用いることができる。
【0031】
本管部48は、気密封止された放電室(図示せず)を有し、当該放電室には、一対の電極(図示せず)が対向して配置されている。また、放電室には、発光物質としてハロゲン化金属、希ガス、および水銀がそれぞれ所定量封入されている。ハロゲン化金属としては、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化ジスプロシウム等が用いられる。
【0032】
細管部52,54の各々には、先端部に前記各電極が接合された給電体56,58が挿入されている。給電体56,58は、それぞれの細管部50,52における、本管部48とは反対側の端部部分に流し込まれたフリットからなるシール材60,62によって封着されている。なお、図1に現れているシール材60,62部分は、細管部50,52端部からはみ出た部分である。
【0033】
給電体56の、電極とは反対側の端部は電力供給線64に電気的に接続されており、同じく、給電体58の、電極とは反対側の端部が電力供給線66に電気的に接続されている。
【0034】
電力供給線64,66はそれぞれ、金属箔68,70を介して、外部リード線72,74に電気的に接続されている。なお、一方の電力供給線64において、少なくとも他方の電力供給線66およびこれに接続された給電体58と対向する部分は、例えば石英ガラスからなるスリーブ76で被覆されている。
【0035】
外部リード線72,74は、プリント配線板20に接続されている。
上記した発光管12等は、筒状、例えば円筒状をした内管46内に収納されている。内管46は、例えば石英ガラスからなり、金属箔68,70の存する側の一端部部分は、いわゆるピンチシール法によって圧潰され金属箔68,70相当部分において気密封止されている。したがって、内管46は、片封止型の気密容器であるといえる。ここで、内管46において前記圧潰封止されてなる部分をピンチシール部78と称することとする。ピンチシール部78の横断面は、略長方形をしている。
【0036】
内管46の他端部部分の凸部80は、内管46内を真空引きする際に用いた排気管の残部であるチップオフ部80である。内管46内を真空にするのは、ランプ点灯時に高温にさらされる給電体56,58、電力供給線64,66等の金属部材の酸化を防止するためである。酸化防止の観点から、内管46の内部であって、発光管44の外部は、真空にするのではなく、不活性ガスを充満させることとしても構わない。
【0037】
上記構成からなる二重管構造体42は、ピンチシール部78がホルダ40の長孔40Aに挿入され、ピンチシール部78と長孔40の間隙に充填された無機接着剤82によってホルダ40に接合されている。無機接着剤82は、シリカおよびアルミナを主成分とするものであり、1000[℃]の耐熱温度を有する。
【0038】
ケース部12のホルダ40が接合されている端部部分には、ホルダ40の外周に沿って、円形の挿入溝84が開設されている。
外管16は、その開口端縁部16Aが挿入溝84に挿入され、開口端縁部16Aと挿入溝84の間隙に充填された無機接着剤(図示せず)によってケース部12に接合されている。当該無機接着剤は、無機接着剤82と同様のものを使用することができる。外管16を形成する材料については後述する。
<ケース部材料>
メタルハライドランプ10の点灯中、点灯回路24においても電力は消費され個々の電子部品が発熱する。中でも、図2中、スイッチング素子であるトランジスタQ1〜Q6の発熱量が最も多い。電子部品の発熱によりケース部12内の雰囲気温度が上昇し、個々の電子部品の寿命に影響を与える。とりわけ、電解コンデンサC1,C2が最も熱の影響を受けやすく、温度が高いほど寿命が短くなる。換言すると、温度を下げれば寿命を長くでき、使用環境温度が10[℃]低くなると寿命が2倍になる。例えば、105[℃]の環境で2000[h]保障する電解コンデンサC1,C2を85[℃]の環境で作動させると、寿命は8000[h]になる。
【0039】
メタルハライドランプ10は、水銀灯の代替光源としての位置づけから、当該水銀灯と同等かそれ以上の寿命を実現する必要がある。水銀灯の定格寿命は12000[h]であるため、その代替光源としては、少なくとも12000[h]、好ましくは15000[h]の寿命を確保したい。この場合、回路設計上は、電子部品における品質のバラツキおよびランプの使用環境を考慮して、2倍の寿命、すなわち30000[h]を設計寿命とすることが好ましい。
【0040】
30000[h]の寿命を確保する場合、電解コンデンサC1,C2の寿命を考慮すると、点灯中におけるケース部12内の温度は65[℃]以下に維持すればよい。なお、65[℃]の環境下で寿命は、32000[h]程度になる。
【0041】
そこで、ケース部12を熱伝導性の良い材料で形成し、ケース部12にヒートシンクの機能をもたせ、もって、点灯中のケース部12内の温度上昇を抑制することとした。
本願の発明者らは、ケース部を種々の材料で形成し、定格電力で点灯中のケース部内の温度を測定する試験をした。なお、測定温度は、点灯開始から3[h]時点での温度である。この場合、トランジスタQ1〜Q6の各々とケース部の内壁との間に熱容量の小さい絶縁シート(図示せず)を挟みこんで、トランジスタQ1〜Q6を当該ケース部と熱的に結合させることとした。ここで、前記絶縁シートはポリイミド(寺岡製作所製カプトンテープ)からなり、その厚みは0.05[mm]、幅が19[mm]であり、熱伝導率は80×10−7[W/(m・K)]である。
【0042】
試験結果を図4に示す。
図4中、最上欄は試験に供したケース材料であり、以下、その材料の熱伝導率[W/(m・K)]、熱膨張係数[/℃]、測定温度[℃]、および判定結果を示している。
【0043】
図4に示す試験結果から明らかなように、ステアタイトと同等かそれ以上の熱伝導率を有する材料を用いると、ケース部内の温度は65[℃]以下に維持できることが分かる(判定結果「○」)。一方、PPSと同等、もしくはそれ以下の熱伝導率を有する材料を用いると、ケース部内の温度は65[℃]を超えてしまう(判定結果「×」)。
【0044】
図4に示す熱伝導率とケース部内温度の関係のグラフを図5に示す。
図5から、熱伝導率が1.0[W/(m・K)]以上の材料でケース部を形成することにより、ケース部内の温度を65[℃]以下に維持できることが分かる。これにより、点灯回路24を構成する電子部品の内、寿命に関し最も熱の影響を受けやすい電解コンデンサC1,C2の寿命を確保し、もって水銀灯に代替したとしても、当該水銀灯と同等かそれ以上に寿命を確保できることとなる。
【0045】
以上、図4,図5の結果が得られた理由を考察すると、熱伝導性に優れる材料で作られたケースを使用した場合には、発熱体であるトランジスタQ1〜Q6の熱がケース表面を拡散しやすいため、放熱しやすくなる。その一方で、熱伝導性の劣る材料で作られたケースを使用した場合には、熱がケース表面を拡散しにくいため、ケース内部に熱がこもり、結果として、他の部品を加熱すると考えられる。
【0046】
定格ランプ電力が30[W]のものと100[W]のものについてした上記と同様の試験の結果について、図6、図8に、当該試験結果に基づくグラフを図7、図9にそれぞれ示す。
【0047】
なお、上記の例では、ケース部の内壁との間に設けた良熱伝導性絶縁シートを介して、トランジスタQ1〜Q6を、当該ケース部と熱的に結合させることとした。しかし、これに限らず、例えば、熱伝導性ペーストを介して、トランジスタQ1〜Q6をケース部と熱的に結合させても構わない。なお、好適に使用できる熱伝導性ペーストとしては、放熱用シリコン,ペースト状熱伝導ゲル,熱伝導性グリースなど、熱伝導性ペーストとして入手可能なものが挙げられる。
【0048】
また、熱伝導性シートや熱伝導性ペーストを介することなく、トランジスタQ1〜Q6を、ケース部の内壁に直に接触させて熱的に結合させることとしても構わない。この場合に、熱伝導性ペーストを併用しても構わない。トランジスタQ1〜Q6とケース部の内壁との間の接触面積が少ない場合は、導電性ペーストを併用することにより、併用しない場合と比較して、トランジスタQ1〜Q6からケース部への熱伝導性が改善されるからである。
<外管材料>
ところで、ケース部に上記したような熱伝導率の良い材料を使用した場合、点灯回路で発生した熱がケース部を伝達して外管に伝わりやすくなる。これに加えて、外管は発光管から発生する熱によっても加熱されるため、外管における熱衝撃等に起因する破損が懸念された。
【0049】
そこで、本願の発明者らは、外管を種々の材料で形成し、点灯、消灯を繰り返す熱衝撃試験を実施した。当該熱衝撃試験では、60[分]間点灯、30[分]間消灯を1サイクルとして、これを2000サイクル繰り返した。
【0050】
外管材料として候補に挙がったものを図10(a)に示す。外管材料としては、先ず、透光性が必要である。図10(a)に示す4つの材料はいずれも透光性を有する材料である。
【0051】
この4つの材料の内、石英ガラスは耐熱衝撃性、耐熱性に優れるのであるが、製造上の理由から除外した。すなわち、軟化点が高すぎて、一般的な水銀灯が有する外管の形状(いわゆる「ドロップ」形状)に加工するのが困難だからである。
【0052】
そこで、外管の材料として、軟質ガラス、硬質ガラス、ポリカーボネートの3種類を用いて試験を行った。外管の平均厚みは1.0[mm]、全長は140[mm]とした。
また、本試験においてケース部材料は、図4において熱伝導率が1.0[W/(m・K)]以上の材料の内、最も熱膨張係数の小さいステアタイトと最も熱膨張係数の大きい亜鉛合金を用いた。ステアタイトを用いた場合と亜鉛合金を用いた場合とで、外管の破損に関しては試験結果に差がなかった。
【0053】
よって、ケース部の材料としてステアタイトの場合と亜鉛合金の場合とをまとめて、図10(b)に示す。なお、図10(b)中、破損試験は、UL規格であるUL1572に規定する試験方法に則って実施したものである。破損試験は、上記熱衝撃試験とは別個に行った試験であり、その結果を参考までに記載した。また、本試験は、定格ランプ電力30,100,200[W]のいずれにおいても同じ結果となったため、図10(b)にまとめて示す。
【0054】
なお、熱衝撃試験において、試験初期、すなわち10サイクル前後までに破損した場合を熱膨張差に起因して破損したと認定し(図10(b)中、「×」印)、20サイクル以降に破損した場合を熱衝撃によって破損したと認定した(図10(b)中、「×」印)。
【0055】
また、評価基準として、5.5h点灯、0.5h消灯のサイクルを繰り返し、2730サイクル時においても破損が確認されなかった場合を「○」印(所望の寿命時間15000h以上)、同じく3640サイクル(同じく20000h以上)、破損が確認されなかった場合を「◎」印として示す。
【0056】
なお、上記のようにサイクル数の違いに応じて、破損を熱膨張差/熱衝撃に分けて認定した理由は下記の通りである。先ず、熱膨張差によって外管が破損する場合は、ケースおよび外管などを組み立てする際には常温であるため、応力が発生していないが、ランプ点灯中は高温となるために応力が発生するから破損に至る。ここで、応力は点灯サイクル数によらず初期から一定量、ケースなどのランプ構成部材に負荷されるため、ばらつきを含めて10サイクル前後で発生する破損は、熱膨張差によるものと考えることができる。
【0057】
一方、熱衝撃により外管が破損する場合は、一般的に、ガラスなどは、上記のような高温時の応力に耐える状態のときに、緩やかに応力を緩和させる性質がある(クリープ現象)。この場合、初期には高温時に負荷されていた圧縮応力のような応力が、徐々に緩和される一方、ランプ消灯後は、冷却により引張応力のような逆方向の応力が負荷されるようになる。このような応力が影響するためには、長期の点灯サイクルが必要となるため、20サイクル以降での破損が、熱衝撃によるものと考えられる。
【0058】
以上より、外管を形成する材料としては、硬質ガラスが最適であるといえる。なお、本実施の形態でも硬質ガラスを選択した。軟質ガラスは、それに準ずるものであり、実使用上、全く問題がない。硬質ガラスの熱膨張係数は、30×10−7[/℃]〜60×10−7[/℃]、熱伝導率は1.0[W/(m・K)]、軟質ガラスの熱膨張係数は、80×10−7[/℃]〜100×10−7[/℃]、熱伝導率は0.74[W/(m・K)]である。
【0059】
なお、上記、実施の形態に係るメタルハライドランプの定格ランプ電力は、200[W]であったが、これに限らず、例えば、100[W]、40[W]でも構わない。特に、本メタルハライドランプは、30[W]以上の高W(ワット)タイプに有用である。
【0060】
また、実施の形態に係る回路内蔵型ランプは、銅鉄式のような安定器を含む照明器具にも適用することができる。
このように回路内蔵型ランプの取替え対象となる既存の水銀灯用照明器具が安定器を含んでいる場合、実施の形態に係るメタルハライドランプおいて内蔵している点灯回路を保護するという観点からは、点灯回路の入力部にパルス保護回路を付設することが好ましい。なぜならば、例えば、点灯中のランプが立ち消えるなどして回路への入力電流が急激に遮断された場合には、インダクタンス成分を含む安定器から高電圧のパルスが発生することがあり、このパルス電圧により回路素子が破損するおそれがあるが、上記のようにパルス保護回路を付設すると、パルス電圧による回路素子の破損を抑えることができるためである。また、ランプが立消えたりなどした場合であっても、回路への入力電流が急激に遮断されることなく、緩やかに減少させるための保護回路を設けることによって、安定器からのパルス電圧を低下させることもできる。
【0061】
また、本実施の形態においては、回路の入力部にACフィルタおよび/またはアクティブフィルタ回路を付設させてもよい。一般的に、水銀灯用に使用される安定器はインダクタであるため、本実施の形態に係るメタルハライドランプの点灯回路への入力電流が高調波成分を多く含む場合、本来の入力電流波形を歪ませることがある。その点、これらの回路を付設することにより、回路への入力電流の高調波成分を低減することが出来るため、安定器によって電流波形を歪ませられることなく、ランプ(発光管)に対して適正な電流を安定して供給することができるので、ちらつきなどの問題が回避できる。
【0062】
ところで、本実施の形態に係るメタルハライドランプの取替え対象となる既存の水銀灯用照明器具は、既に数十年という長期にわたって使用されている場合が多く、コイル劣化などが懸念される。
【0063】
その点、本実施の形態に係るメタルハライドランプはセラミック発光管を使用しているため、水銀灯の2倍程度の効率を得ることが出来る。そのため、既存の水銀灯に対して同等の光束(光量)を得るのであれば、およそ半分の電力/電流にすることが出来る。このため、既存の安定器が長期間にわたって使用されていても、本実施の形態のメタルハライドランプに交換した後は、安定器の電流負荷を低減することができるため、コイル劣化を抑制させる効果や発煙などの不具合を抑制することが出来る。さらに、水銀灯を使用している際、コイル劣化により安定器が短絡状態になった場合は水銀灯の発光管が爆発することがあるが、本実施の形態に係るメタルハライドランプであれば内蔵された回路により電流が制限されているため、発光管が爆発するなどの危険性もない。そのため、本実施の形態の回路内蔵型ランプを既存の水銀灯用照明器具に適用する場合には、回路内蔵型ランプとして既存の水銀灯よりも低電力タイプのものを選択することが好ましい。このように低電力タイプを選択すると、取替え対象となる水銀灯よりも回路内蔵型ランプが低電流であるため、既存の安定器が長期間にわたって使用されていても、回路に対する電流負荷が低いので、コイル劣化等が生じている場合でも発煙などの不具合を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係るメタルハライドランプは、点灯回路を内蔵しているにも関わらず、高Wタイプとした場合であっても、外管破損に関する信頼性を確保することができるために、例えば、水銀灯代替光源として、既存の水銀灯用の照明器具にそのまま装着して用いる光源として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 メタルハライドランプ
12 ケース部
16 外管
18 点灯回路ユニット
42 二重管構造体
44 発光管
46 内管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光物質としてハロゲン化金属が封入されてなる発光管および当該発光管を気密封止する内管からなる二重管構造体と、
当該二重管構造体を収納する外管と、
前記外管の開口端部と接合され、当該外管を支持するケースと、
当該ケースに収納された、前記発光管を点灯するための複数の素子を含む点灯回路と、
を有し、
前記ケースが、熱伝導率が1.0[W/(m・K)]以上の材料で形成されており、
前記外管が、硬質ガラス、または軟質ガラスで形成されている、ことを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
前記点灯回路を構成する素子の内、スイッチング素子が、前記ケースと熱的に結合されていることを特徴とする請求項1に記載のメタルハライドランプ。
【請求項3】
前記スイッチング素子は、前記ケースの内壁面に接触状態で設けられることにより、当該ケースと熱的に結合していることを特徴とする請求項2に記載のメタルハライドランプ。
【請求項4】
前記スイッチング素子は、熱伝導性ペーストを介して前記ケースと熱的に結合されていることを特徴とする請求項2に記載のメタルハライドランプ。
【請求項5】
前記ケースの、外管とは反対側端部に連設された口金部を有し、当該口金部が、照明器具に設けられたソケットに装着されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のメタルハライドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−282952(P2010−282952A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96257(P2010−96257)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】