メタルハライドランプ
【課題】内管のピンチシール部に割れが生じないメタルハライドランプを提供する。
【解決手段】メタルハライドランプは、一端がピンチシールされた内管内に発光管を格納する二重管構造体42が外管とケースとからなる外囲器内でホルダ102により保持されている。発光管は内部に一対の電極を有し、二重管構造体42のピンチシール部78がホルダ102の保持孔で保持されている。ホルダ102の外周面が外管内周面に当接し、ホルダ102の外管内周面に当接する位置のうち、発光管の管軸Yから最も近い位置をA点とし、A点を通り且つ管軸Yと直交する管軸上の点を中心するA点を通る円の直径をDとしたときに、電極間の中心Oを通り且つ管軸Yと直交する基準面Xに対してA点の距離L(ホルダ102から離れる方向を正とする)は、L≦0.25×D+0.14×Wla−21(Wla:ランプ電力)を満たす。
【解決手段】メタルハライドランプは、一端がピンチシールされた内管内に発光管を格納する二重管構造体42が外管とケースとからなる外囲器内でホルダ102により保持されている。発光管は内部に一対の電極を有し、二重管構造体42のピンチシール部78がホルダ102の保持孔で保持されている。ホルダ102の外周面が外管内周面に当接し、ホルダ102の外管内周面に当接する位置のうち、発光管の管軸Yから最も近い位置をA点とし、A点を通り且つ管軸Yと直交する管軸上の点を中心するA点を通る円の直径をDとしたときに、電極間の中心Oを通り且つ管軸Yと直交する基準面Xに対してA点の距離L(ホルダ102から離れる方向を正とする)は、L≦0.25×D+0.14×Wla−21(Wla:ランプ電力)を満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルハライドランプに関し、特に、水銀灯代替光源として好適なメタルハライドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
道路、広場、競技場などの屋外照明、体育館や工場などの高天井の屋内照明には、従来、主として水銀灯が用いられている。この水銀灯はランプ効率が比較的低いため、近年の省エネルギーの要請を背景として、当該水銀灯をランプ効率の高いメタルハライドランプへ置き換えることが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、水銀灯が装着されていた既存の照明施設には水銀灯用の安定器が設けられているため、当該水銀灯用の照明器具にメタルハライドランプをそのまま装着して水銀灯と同等の明るさを得るためには、前記安定器をメタルハライドランプ用の安定器に取り替える必要があり、このことが、メタルハライドランプへの置き換えの阻害要因の一つとなっている。
【0004】
そこで、水銀灯用の安定器をそのまま残存させた状態で、ランプだけを交換できるようにしたものとして、安定器を含む点灯回路を内蔵したメタルハライドランプの要望が高まっている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0005】
回路内蔵型ランプは、従来から電球形蛍光灯や水槽用ランプ等では検討されていたが、水銀灯置き換えランプのような高Wタイプのメタルハライドランプは、耐熱性などの観点から課題が多く、あまり検討されていなかったが、上記要望に応えるべく発明者らにより検討されている。
【0006】
検討しているメタルハライドランプは、例えば、発光管が内管内に格納された状態で前記内管の一端がピンチシールされてなる二重管構造体が、ホルダにより保持された状態で、前記発光管を点灯させる点灯回路とともに、外管とケースとからなる外囲器内に収納され、二重管構造体は、内管のピンチシール部がホルダの保持孔に挿入された状態でセメントによりホルダに接合され、ホルダの外周面が外囲器の内周面に当接する構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4129279号公報
【特許文献2】特開2004−158361号公報
【特許文献3】特開2005−116218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者らの検討により以下の課題が発生することが分かった。
一般的にメタルハライドランプの定常点灯中、前記発光管で発生する熱により前記内管は400[℃]を超える高温状態になる。
【0009】
上記構成のメタルハライドランプでは、発光管の熱が内管を経由してホルダへと伝わり、さらに、発光管からの熱の一部がホルダに輻射される。そして、ホルダはこれらの熱により膨張しようとする。しかしながら、ホルダの外周面は外囲器と当接しているため、外周への膨張が規制され、ホルダ内に発生する力が二重管構造体側に、つまり、ホルダと接合されている二重構造体のピンチシール部側に集中して作用することとなる。
【0010】
このよう場合、ホルダの形状や発光管に対するホルダ位置によって、発光管からの輻射熱をホルダの主面でより多く受け、酷い場合にはピンチシール部に割れや破損が生じてしまうのである。
【0011】
本発明は、上記した課題に鑑み、内管のピンチシール部に割れが生じないメタルハライドランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るメタルハライドランプは、発光管が内管内に格納された状態で前記内管の一端がピンチシールされている二重管構造体がホルダにより保持された状態で、前記発光管を点灯させる点灯回路とともに、外管とケースとからなる外囲器内に収納されてなるメタルハライドランプであって、前記発光管は発光物質としてのハロゲン化金属と一対の電極とを放電空間内に有し、前記二重管構造体は、前記内管のピンチシール部が前記ホルダの保持孔に挿入されて、当該挿入部分と前記保持孔を形成する周面とが接合されることで前記ホルダにより保持され、前記ホルダは、熱膨張係数が150×10−7[/℃]以上の材料から構成され、その外周面が前記外囲器の内周面に当接し、前記ホルダにおける前記外囲器の内周面に当接する位置のうち、前記一対の電極の先端同士を結ぶ仮想直線から最も近い位置をA点とし、当該A点を通り且つ前記仮想直線と直交する点を中心とし且つ前記A点を通る円の直径をD[mm]としたときに、前記一対の電極間の中心を通り且つ前記仮想直線と直交する面を基準とし、当該面に対してホルダから離れる方向を正としたときのA点までの距離L[mm]は、 L≦0.25×D+0.14×Wla−21 (Wla:ランプ電力[W]) の関係を満たすことを特徴としている。
【0013】
ここでいう「接合」とは、挿入部分と保持孔を形成する周面とを、例えば、機械的に嵌合させて嵌着した場合、接着剤を用いた場合、両者にねじ加工を施し螺着した場合等を含む概念である。
【0014】
ここでいう「当接」とは、外管とホルダとが直接密接する状態や、ホルダが外管を直接押圧する状態で接触する場合、外管とホルダとが無機接着剤を介して接合されている場合、外管とホルダとが他部材を介して接触する場合を含む概念である。なお、他部材を介して接触する場合とは、ホルダの熱が他部材を介して殆ど外管に伝わるような場合をいい、具体的には、ホルダにおける他部材との接触部と外管における他部材との接触部との温度差が約5℃以下のような場合をいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るメタルハライドランプは、ホルダが、発光管から輻射される熱の影響が小さくなり、ホルダの熱膨張によるピンチシール部への圧力が軽減されたため、内管のピンチシール部に割れが発生するのを抑制・防止することができる。
【0016】
また、本発明に係るメタルハライドランプは、前記ホルダの前記発光管側の主面は、当該主面と前記仮想直線との交点をB点としたときに、前記A点とB点を結ぶ仮想線分を前記仮想直線に対して回転させて形成される仮想錐面よりも前記発光管から離れた側にあることを特徴とし、さらには、前記発光管の入力電力が30[W]以上であることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係るメタルハライドランプの概略構成を示す縦断面図である。
【図2】点灯回路ユニットにおける点灯回路の回路図である。
【図3】発光管の概略構成を示す縦断面図である。
【図4】ホルダの形状の違いによるピンチシール部の割れ発生を説明するための図である。
【図5】ピンチシール部の信頼性評価のためのライフ試験に供したメタルハライドランプの概要を説明する図である。
【図6】ピンチシール部の信頼性評価のためのライフ試験に供した各タイプにおけるホルダの外周径Dと、基準面との距離Lを示す図である。
【図7】ピンチシール部の信頼性評価のためのライフ試験結果を示す図である。
【図8】切片とランプ電力との関係を示す図である。
【図9】ホルダ形状が異なるメタルハライドランプの変形例を示す図である。
【図10】ホルダの変形例を示す概略図である。
【図11】外囲器についての変形例を示す図である。
【図12】縦軸(Y)を熱膨張係数[/℃]×107とし、横軸(X)を熱伝導率[W/(m・K)]とし、横軸を対数で表し、ホルダの種々の材料について、外管の当接部分の割れの評価をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明を実施するための最良の形態について、一例を示して説明する。なお、以下の説明で用いる形態は、本発明の構成及び作用・効果を分かりやすく説明するために用いる一例であって、本発明は以下に説明する形態に限定されるものではない。
<実施の形態>
本実施の形態に係るメタルハライドランプについて、図を用いて以下説明する。
1.ランプの構成
図1は、実施の形態に係るメタルハライドランプ10の概略構成を示す縦断面図である。なお、本図において、後述する発光管44と点灯回路ユニット18とは切断していない。また、各構成部材間の縮尺は統一していない。
【0019】
メタルハライドランプ10の定格ランプ電力は、200[W]である(このタイプのランプを、「200Wタイプ」ともいう)。本発明において、定格ランプ電力とは、回路込みのランプにおいて光源で消費される電力をいう。メタルハライドランプ10は、水銀灯代替光源として、水銀灯用の既存の照明器具にも装着して用いられる。
【0020】
メタルハライドランプは、水銀灯と比較してランプ効率[lm/W]が良いため、本例の200[W]のメタルハライドランプは、400[W]の水銀灯に代替し、当該水銀灯と略同等の明るさが得られる。なお、実施の形態に係るメタルハライドランプの定格ランプ電力は、200[W]に限らず、例えば、200[W]より大きくても良いし、200[W]より小さい100[W]、40[W]等でも構わない。発光管の温度、メタルハライドランプの大きさ等を考慮すると、特に、30[W]以上の高W(ワット)タイプに有用である。
【0021】
図1に示すように、メタルハライドランプ10は、ケース部12と、ケース部12に一体的に連設された口金部14と、ケース部12に接合された外管16とを有する。なお、ケース部12と口金部14とでケースとしても良く、このケースと外管16とで外囲器が構成される。
【0022】
ケース部12は、筒状をし、その軸心を一端から他端に移るに従って、直径が小さくなるコーン状(或いは、中空の円錐台形状)をしている。ケース部12を構成する材料として、例えば、アルミニウム、鉄などの金属、または、それ含む合金、アルミナなどのセラミック、及びPPS、PBTのような樹脂材料、硬質ガラスや軟質ガラスを使用することができる。硬質ガラスの熱膨張係数は、30×10−7[/℃]〜60×10−7[/℃]、熱伝導率は1.0[W/(m・K)]、軟質ガラスの熱膨張係数は、80×10−7[/℃]〜100×10−7[/℃]、熱伝導率は0.74[W/(m・K)]である。
【0023】
ケース部12内には、点灯回路ユニット18が収納されている。点灯回路ユニット18は、ケース部12の内壁面に固定されたプリント配線板20と複数個の電子部品(例えば、図1において符号「22」で示す。)等からなる。
【0024】
図2は、点灯回路ユニット18における点灯回路の回路図である。
点灯回路ユニット18における点灯回路24について、図2を参照しながら説明する。
図2に示すように、点灯回路24は、AC/DC変換部24A、DC調整部24B、及びDC/AC変換部24Cを有する。
【0025】
AC/DC変換部24Aは、商用交流電源からの交流電力を所定電圧の直流電力に変換する。AC/DC変換部24Aは、整流回路DBと、整流回路DBから出力される直流電圧を昇圧する昇圧回路とを備える。昇圧回路は、例えばチョッパー方式の昇圧回路であり、インダクタンスL1、スイッチング素子Q1、ダイオードD1及びコンデンサC1を備える。本例において、インダクタンスL1にはチョークコイルを、スイッチング素子Q1にはトランジスタを、コンデンサC1には電解コンデンサをそれぞれ使用することができる。
【0026】
DC調整部24Bは、AC/DC変換部24Aから出力される直流電圧を所定の電圧に調整する。DC調整部24Bは、例えばチョッパー方式の降圧回路であり、スイッチング素子Q2、ダイオードD2、インダクタンスL2及びコンデンサC2を備える。本例において、インダクタンスL2にはチョークコイルを、スイッチング素子Q2にはトランジスタを、コンデンサC2には電解コンデンサをそれぞれ使用することができる。
【0027】
DC/AC変換部24Cは、DC調整部24Bから出力される直流電力を交流電力に変換して、発光管44に給電する。DC/AC変換部24Cは、直流電力を交流電力に変換する変換回路と、発光管44に流れる電流を制御し放電を安定させる安定器L3とを備える。変換回路は、例えばフルブリッジインバータ回路であり、4つのスイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6を備える。また、安定器L3には、例えばチョークコイルを使用することができる。
【0028】
なお、各スイッチング素子Q1〜Q6は、図外の制御部(例えばICである)によりスイッチング動作が制御されている。
図1に戻り、点灯回路ユニット18は、口金部14から第1リード線26及び第2リード線28を介して供給される商用交流電力を、後述する発光管44を点灯させるための電力に変換して、発光管44に給電する。
【0029】
口金部14は、例えば略円筒状をし、例えば耐熱性の合成樹脂材料からなる第1絶縁体部30を有している。第1絶縁体部30は、ケース部12の一方の開口端部に接合されている。
【0030】
口金部14は、また、筒状胴部とも称されるシェル32と円形皿状をしたアイレット34とを有する。シェル32とアイレット34とは、ガラス材料からなる第2絶縁体部36を介して一体となっている。この一体となったものが、第1絶縁体部30に嵌め込まれている。
【0031】
第1絶縁体部30には、貫通孔30Aが開設されており、貫通孔30Aを介して第1リード線26が第1絶縁体部30内から外部に導出されている。
第1リード線26の一端部の導線部分は、シェル32の内周面と第1絶縁体部30外周面との間に挟持されている。これにより、第1リード線26とシェル32とは電気的に接続されている。
【0032】
アイレット34は、中央部に開設された貫通孔34Aを有している。第2リード線28の導線部がこの貫通孔34Aから外部へ導出され、アイレット34の外面(上面)に半田付けにより接合されている。
【0033】
ケース部12の他方(大径側の)の開口側の端部には、後述する二重管構造体42を支持するホルダ39が、例えば耐熱性の無機接着剤により接合されている。ホルダ39は、例えばアルミナ材料からなる、例えば、底部40と周部41とを有する有底筒状をしており、その底部40の中央部には、二重管構造体42における後述するピンチシール部78の横断面形状に合わせた長孔40A(本発明の「保持孔」に相当する)が開設されている。
【0034】
ホルダ39に支持されている二重管構造体42は、発光管44と内管46とを有する。
図3は、発光管44の概略構成を示す縦断面図である。なお、本図の縮尺は統一していない。
【0035】
発光管44は、本管部48と本管部48の管軸方向両側に形成された細管部50a,50bとからなる放電容器52を有している。放電容器52は、例えば透光性セラミックで形成されている。透光性セラミックには、例えば、アルミナセラミックを用いることができる。
【0036】
本管部48は、気密封止された放電空間52aを有し、当該放電空間52aには、一対の電極54a,54b(正確には電極棒60a,60bの軸心である)が略一直線上で対向して配置されている。
【0037】
ここでの「略一直線上」とは、電極の配置が設計において一直線上にあることをいい、発光管の製造時に電極の位置のズレを許容する意味で「略」とし、上記の一直線を発光管の管軸と一致する。
【0038】
放電空間52aには、ハロゲン化金属、希ガス、及び水銀がそれぞれ所定量封入されている。ハロゲン化金属は発光物質として封入されており、このハロゲン化金属としては、例えば、ヨウ化ナトリウムやヨウ化ジスプロシウム等が用いられる。
【0039】
細管部50a,50bの各々には、先端部に前記各電極54a,54bが接合された給電体56a,56bが挿入されている。給電体56a,56bは、それぞれの細管部50a,50bにおける、本管部48とは反対側の端部部分に流し込まれたフリットからなるシール材58a,58bによって封着されている。なお、図1に現れているシール材58a,58bの部分は、細管部50a,50bの端部からはみ出た部分である。
【0040】
電極54a,54bは、電極棒60a,60bと、電極棒60a,60bの先端(放電空間52a内に位置する端)に巻回されたコイル62a,62bとを有し、電極棒60a,60bの他端(前記先端と反対側の端)が給電体56a,56bに接続されている。
【0041】
なお、電極棒60a,60bと細管部50a,50bの内周面との隙間に発光物質が侵入するのを防ぐために、例えばモリブデンコイル64a,64bが電極棒60a,60bに巻装されている。
【0042】
図1に戻って、給電体56aにおける電極54aとは反対側の端部は電力供給線66aに電気的に接続されており、同じく、給電体56bにおける電極54bとは反対側の端部が電力供給線66bに電気的に接続されている。
【0043】
電力供給線66a,66bはそれぞれ、金属箔68,70を介して、外部リード線72,74に電気的に接続され、外部リード線72,74はプリント配線板20に接続されている。なお、一方の電力供給線66aにおいて、少なくとも他方の電力供給線66bやこれに接続された給電体56bと対向する部分は、例えば石英ガラスからなるスリーブ76で被覆されている。
【0044】
上記した発光管44等は、筒状、例えば円筒状をした内管46内に気密状に収納されている。内管46は、例えば石英ガラスからなり、金属箔68,70の存する側の一端部部分は、いわゆるピンチシール法によって圧潰されて、金属箔68,70の相当部分において気密封止されている。したがって、内管46は、片封止型の気密容器であるといえる。ここで、内管46において前記圧潰封止されてなる部分をピンチシール部78と称することとする。ピンチシール部78の横断面は、略長方形をしている。
【0045】
内管46の他端部部分の凸部80は、内管46の内部を真空引きする際に用いた排気管の残部であるチップオフ部80である。内管46内を真空にするのは、ランプ点灯時に高温にさらされる給電体56a,56b、電力供給線66a,66b等の金属部材の酸化を防止するためである。酸化防止の観点から、内管46の内部であって、発光管44の外部は、真空にするのではなく、不活性ガスを充満させることとしても構わない。
【0046】
上記構成からなる二重管構造体42は、ピンチシール部78がホルダ39の底部40の長孔40Aに挿入され、ピンチシール部78と長孔40Aの間隙に充填された例えば無機接着剤82によってホルダ39に接合されている。無機接着剤82は、シリカ及びアルミナを主成分とする、いわゆるセメントであり、1000[℃]の耐熱温度を有する。
【0047】
ケース部12に固着されているホルダ39の周部41は、その開口端部がケース部12から張り出しており、この張り出し部分41aに外管16の開口端部16aが外嵌し、外管16の開口端面がケース部12の開口端面と当接する状態で、例えば無機接着剤(図示省略)により接合されている。なお、外管16には、耐熱性や加工性を考慮して硬質ガラスが用いられるが、軟質ガラスを用いてもよい。
【0048】
ホルダ39は、上述したように、有底筒状であって、底部40から離れるに従って拡径するコーン状をし、また、底部40から離れるに従って厚みが薄くなっている。
2.ホルダについて
(1)材料
発明者らは、種々検討した結果、定常点灯時に、発光管からの輻射熱をホルダの主面で多く受けて、ピンチシール部に割れや破損が生じるのは、熱膨張係数が、150×10−7[/℃]以上の材料をホルダに用いた場合であることを見出した。
【0049】
従って、熱膨張係数が、150×10−7[/℃]以上の材料をホルダに用いた場合について説明する。
(2)発光中心に対するホルダ位置
発明者らは、ホルダの外周面と外管との接合位置が同じであっても、ホルダの形状によって二重管構造体のピンチシール部に割れが発生するのを観察した。
【0050】
図4は、ホルダの形状の違いによるピンチシール部の割れ発生を説明するための図である。
同図の(a)に示すように、ホルダ101が平坦な板状で、その外周面が図外の外管等により保持されているメタルハライドランプと、同図の(b)に示すように、ホルダ102がコーン状をする板状で、その外周面が図外の外管等により保持されているメタルハライドランプとでは、ホルダ101,102の外周面と外管等とが接合する位置が同じ(図4の「D」であり、ホルダの外周径という)である。
【0051】
しかしながら、このようにホルダ101,102の外周径Dと厚みtが同じであっても、(a)のホルダ101の場合はピンチシール部に割れが発生せず、(b)のホルダ102の場合はピンチシール部に割れが発生する。
【0052】
これは、ホルダ102がコーン状をすることで、発光管からの輻射熱を多く受けることとなり、ホルダ102自身の温度が上昇したためと考えられる。
そこで、発明者らは、ホルダの外周径Dと、発光中心からのホルダの発光管側の主面までの距離との関係が、ピンチシール部の割れに及ぼす影響を試験した。なお、上記主面は、例えば、図4の(a)及び(b)における「101a」及び「102a」である。
【0053】
なお、発光中心とは、図3に示すように、電極54a,54bの先端間の中心Oであり、この中心Oは、換言すると、電極54a,54bの先端同士を結ぶ仮想直線上であって電極54a,54b間の中心位置である。
また、発光管44の管軸とは、電極54a,54bの先端同士を結ぶ仮想直線と一致し、又は、一対の電極棒60a,60bの軸心と設計上は一致し、図3の「Y」に相当し、この「Y」を仮想直線、発光管の管軸とする。
【0054】
試験に用いたメタルハライドランプは、ランプ電力が40[W]の40Wタイプ、ランプ電力が100[W]の100Wタイプ、ランプ電力が200[W]の200Wタイプの3種類である。
【0055】
図5は、試験に供したメタルハライドランプの概要を説明する図である。
発明者らは、図5に示すような形状であって、外周径Dと高さHの異なるホルダ102を複数種類準備し、当該ホルダ102に二重管構造体42を実際に接合して点灯させ、二重管構造体42のピンチシール部に割れが発生するか否かを試験した。
【0056】
ここで、ホルダ102の外周径Dは、図5に示すように、A点と仮想直線(発光管の管軸)Yとの距離を半径とした円の直径であり、このA点は、ホルダ102における外管(外囲器)の内周面に当接する位置のうち、発光管の管軸を延長する仮想直線Yから最も近い位置である。なお、上記外周径Dは、本発明の「円に直径をDとした」の「直径」であり、A点と仮想直線(発光管の管軸)Yとの距離は、A点を通り仮想直線Yと直交する仮想直線上における仮想直線YとA点との距離である。
【0057】
したがって、ホルダ102の外周径Dを換言すると、前記A点を通り且つ仮想直線Yと直交する直線と、仮想直線Yとの交点を中心とし且つA点を通る円の直径である。
また、発光中心Oからのホルダ102の発光管側の主面との距離は、図5に示す基準面XからA点までの距離で規定している。
【0058】
ここで、基準面Xは、図3に示す、発光管44の管軸Yと直交する面(仮想直線)Xであり、図5に戻って、当該基準面Xに対してホルダ102から離れる方向(図5における上方向である。)を正とし、基準面XとA点との距離Lである。つまり、この距離Lは、A点を通り基準面Xと直交する直線上であって基準面XとA点との距離である。
【0059】
図6は、試験に供した各タイプにおけるホルダの外周径Dと、基準面Xとの距離Lを示す図である。
40Wタイプでは、同図の(a)に示すように、外周怪Dが、30、40、50、70[mm]の4つで、距離Lを、−20[mm]から0[mm]の間でそれぞれ適宜変更している。
【0060】
100Wタイプでは、同図の(b)に示すように、外周怪Dが、30、40、45、60、80、90[mm]の6つで、距離Lを、−30[mm]から0[mm]の間でそれぞれ適宜変更している。
【0061】
200Wタイプでは、同図の(c)に示すように、外周怪Dが、45、60、90、100、120[mm]の5つで、距離Lを、−40[mm]から−10[mm]の間でそれぞれ適宜変更している。
【0062】
ホルダの厚みtは、2.0[mm]であり、二重管構造体のピンチシール部とホルダとの接合部分の中心と、発光中心との距離は、40Wタイプでは40[mm]、100Wタイプでは45[mm]、200Wタイプでは55[mm]である。
【0063】
上記の図6の各表に示す各メタルハライドランプを点灯させて、二重管構造体のピンチシール部に割れが発生するか否かを試験した。
なお、点灯条件は、例えば、5.5時間点灯、0.5時間消灯を1サイクルとして3000サイクルを繰り返した。
【0064】
図7は、試験結果を示す図である。
図7の各図において、点灯後の検査で割れが発生していた場合が「×」であり、割れが発生していない場合が「○」である。
【0065】
各図において、ホルダの外周径Dが同じでも、Lが小さくなる(0[mm]に近づく)と、ピンチシール部に割れが発生しているのが観察できる。これは、ホルダが、発光管から輻射される熱の影響が小さくなり、ホルダの熱膨張によるピンチシール部への圧力が軽減されたためだと考えられる。
【0066】
そして、各外周径Dにおけるピンチシール部に割れが発生していないLを結ぶと、ホルダの外周径Dと距離Lとにより、ピンチシール部が割れる範囲と割れない範囲との境界を直線で近似できることが分かる。
【0067】
この直線の近似式は、40WタイプではL=0.25×D−27であり、100WタイプではL=0.25×D−40であり、200WタイプではL=0.25×D−50である。
【0068】
つまり、ピンチシール部に割れが発生しない領域は、40WタイプではL≦0.25×D−27、100WタイプではL≦0.25×D−40、200WタイプではL≦0.25×D−50となる。なお、以下の説明では上記各式を関係式(1)とする。
【0069】
ここで、各タイプの切片(40Wタイプでは「27」であり、100Wタイプでは「40」であり、200Wタイプでは「50」である)とランプ電力との関係を示すと、図8となる。
【0070】
図8に示すように、ランプ電力と切片との関係は、略直線で近似できる。切片をy、ランプ電力をxとした場合に、切片yは、
y=−0.14×x−21
となる。なお、以下の説明では、この式を関係式(2)とする。
【0071】
以上のことから、ピンチシール部に割れが生じていない領域は、ホルダの外周径Dと距離Lとランプ電力Wlaとにより、
L ≦ 0.25×D−0.14×Wla−21
と表すことができる。
【0072】
上記の関係式(1)から、ホルダの外周径Dが大きくなる程、距離Lをとりうる範囲が大きくなる、すなわち、設計自由度が増し、ホルダの外周径Dによっては、距離Lを0[mm]以上、すなわち、基準面Xよりも上側にすることもできる。これは、ホルダの外周径Dが大きいため、発光管から輻射される熱の影響が小さくなることを示す。なお、ここで、基準面Xよりも上側とは、二重管構造体のピンチシール部と反対側の先端側を意味する。
【0073】
逆に、ホルダの外周径を小さくするためには、距離Lを極端に小さくする必要があり、輻射の影響を受けない程に距離Lを負側に反らせる必要がある。
また、関係式(2)からランプ電力が大きいメタルハライドランプほど、関係式(1)の切片が小さくなる。これは、距離Lが小さくなることを意味する。つまり、輻射によるホルダの加熱が大きくなるため、距離Lが小さく、そして負側に反らせる必要がある。
(3)形状
上記試験により、二重管構造体のピンチシール部に割れが発生しない、ホルダの外周径Dと基準面からの距離Lと関係を見出した。
【0074】
したがって、ホルダにおける発光管に対向する主面は、ホルダの外周径Dと基準面Xからの距離Lとで規定される上記領域内に存在するA点と、当該ホルダに主面を構成している仮想主面と発光管の管軸の延長直線との交点であるB点とを直線で結んだ仮想線分よりも外側(発光管から遠い側である)に位置すれば良い。ここで、主面とは、ホルダが有する表裏2つの面のうち、より発光管側を向いている面であり、発光管からの輻射される熱の影響を受けやすい方の面をいう。また、ここでの「仮想主面」とは、ホルダの中央部には長孔が設けられているためホルダの主面の中心部分が存在しておらず、長孔がなく主面の中心部分が存在する仮想の状態の主面をいう。
【0075】
つまり、ホルダにおける外管の内周面に当接する位置のうち、発光管の管軸を延長した直線から最も近い位置をA点とし、ホルダの当該主面と管軸を延長した仮想直線との交点をB点としたときに、A点とB点を結ぶ仮想線分を前記仮想直線に対して回転させて形成される仮想錐面に対して発光管から離れた側にあれば良い。
【0076】
図9は、ホルダ形状が異なるメタルハライドランプの変形例を示す図である。
変形例に係るメタルハライドランプ202は、同図の(a)に示すように、コーン状のホルダ204を有している。このホルダ204は、縦断面形状が楕円状をし、その底部に二重管構造体42を保持するための長孔204Aが形成されている。
【0077】
この場合も、ホルダ204の発光管44側の主面204aは、発光管44の管軸を延長させた直線とホルダ204の主面204aの仮想主面との交点B1と、上記関係式を満たす点A1とを結ぶ仮想線分Z1よりも発光管44から遠い外側に存在している(存在する形状をしている)。
【0078】
変形例に係るメタルハライドランプ212は、同図の(b)に示すように、平板状のホルダ214を有している。このホルダ214は、縦断面形状が矩形状をし、その中央部に二重管構造体42を保持するための長孔214Aが形成されている。
【0079】
この場合も、ホルダ204の発光管44側の主面204aは、上記関係式を満たす基準面から距離Lよりも基準面から離れている。
また、上記実施の形態に係るホルダ39や変形例に係るホルダ204,214は、板部材をそのまま利用したり、湾曲加工したりして構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
図10は、ホルダの変形例を示す概略図である。
ホルダを板部材により構成する場合、以下のようなホルダを用いることができる。また、ここでは、平板状のホルダであるが、上述したようなコーン状のホルダについても本変形例を適用できるのはいうまでもない。なお、本発明においてコーン状とは、縦断面形状において内面が直線状及び楕円状をした形状を含む。
【0081】
同図の(a)に示すホルダ252は、円板状をし、その周方向に所定間隔をおいて複数の貫通孔252a,252b,252c,252dを有する。なお、ここでは貫通孔は4個であるが、当然1個でも良い。さらに、複数の貫通孔は、同一の円周上(中心位置及び半径が同じ)に不規則的に形成されていても良いし、複数の円周上に規則的に或いは不規則的に形成されていても良い。
【0082】
また、同図の(b)に示すホルダ254は、上記の貫通孔252a,252b,252c,252dに代わって、凹部254aを有している。この凹部254aは上記貫通孔252a,252b,252c,252dと同様に、ホルダ254の周方向に所定間隔をおいて複数あっても良いし、1個であっても良い。当然、複数形成する場合、各凹部は同一の円周上(中心位置及び半径が同じ)に不規則的に形成されていても良いし、複数の円周上に規則的に或いは不規則的に形成されていても良い。
【0083】
また、同図の(c)に示すホルダ256は、上記の凹部254aに代わって、膨出部256aを有している。この膨出部256aは上記凹部254aと同様に、ホルダ256の周方向に所定間隔をおいて複数あっても良いし、1個であっても良い。当然、複数形成する場合、各膨出部は、同一の円周上(中心位置及び半径が同じ)に不規則的に形成されていても良いし、複数の円周上に規則的に或いは不規則的に形成されていても良い。
【0084】
また、同図の(d)及び(e)に示すホルダ258,260は、段差部258a,260aを有している。段差部は、ホルダ258の中央部から周縁に向かう際に中央部を基準にして下がる段差であっても良いし、逆にホルダ260の中央部から周縁に向かう際に中央部を基準にして上がる段差であっても良い。当然、これらの段差部258a,260aの両方が組み合わされて形成されても良い。また、段差部の数や形成位置も、上述した貫通孔、凹部、膨出部等と同様に形成しても良い。
【0085】
さらに、同図の(f)に示すホルダ262は、凹凸部262aを有している。凹凸部262aは、円弧状(曲線状)をしているが、直線状(例えば三角波状或いは鋸波状である)であっても良い。凹凸部の数や形成位置も、上述した貫通孔、凹部、膨出部等と同様に形成しても良い。
【0086】
なお、図10で説明した変形例では、ランプ点灯時のホルダ膨張時のピンチシール部への熱応力は緩和される方向である。
(4)厚み
実施の形態では、ホルダの厚みは2.0[mm]であり、本発明ではこの厚みに限定するものではないが、0.5[mm]〜5.0[mm]の範囲内が好ましい。
【0087】
材料の厚みを上記範囲としている理由は、0.5[mm]よりも小さい厚みでは二重管構造体を保持するための強度が不足し、逆に5.0[mm]より大きい厚みではホルダ本体の形状加工及び、ホルダに形成する長孔、貫通孔、凹部などの形状加工が困難になるからである。
<変形例>
上記実施の形態や変形例では、ホルダの外周面と外管の開口端部部分の内周面とが、ホルダの外周面の全周に亘って無機接着剤で接合されていたが、本発明はこれに限定するものではない。
1.外囲器について
図11は、外囲器についての変形例を示す図である。
【0088】
メタルハライドランプ302は、同図の(a)に示すように、ホルダ304の外周面がケース部306の内周面に当接(接合の有無に関係なく)し、外管308がケース部306の端面306aに形成された挿入溝306Aに挿入されて、無機接着剤により接合されているような構成であっても良い。
【0089】
また、メタルハライドランプ312は、同図の(b)に示すように、ホルダ314の外周面がケース部316と外管318との内周面に当接(接合の有無に関係なく)し、外管318の端面とケース部316の端面とが突き合わす状態で両者が無機接着剤により接合するような構成であっても良い。
【0090】
また、ホルダの外周面の一部が外管の内周面に接合されておらず、ホルダの外周面の前記一部を除く残部が外管の内周面に接合する状態であっても良い。
2.ホルダについて
実施の形態におけるホルダは、アルミナ材料により構成されていたが、熱膨張係数が150×10−7[/℃]以上の材料であれば、他の材料を利用することもできる。他の材料としては、例えば、SUS304のようなステンレス鋼、PPS、PBI、PBT等の樹脂、アルミニウム、アルミDC、亜鉛等がある。これらの材料は、加工性、耐熱性、及び部材としたときの軽量化という点を考慮しながら、適宜選択すれば良い。
【0091】
また、外管に硬質ガラスや軟質ガラスを用い、ホルダの外周面が外管の内周面に当接するような構造を有する場合、点灯時の熱により、外管におけるホルダとの当接部分に割れが発生することがある。
【0092】
図12は、縦軸(Y)を熱膨張係数[/℃]×107とし、横軸(X)を熱伝導率[W/(m・K)]とし、横軸を対数で表し、ホルダの種々の材料について、外管の当接部分の割れの評価をプロットした図である。
【0093】
ここで、割れの評価は、各メタルハライドランプのタイプを示すランプ電力で定格点灯させた場合と、各メタルハライドランプのタイプを示すランプ電力に対して10[%]の過負荷で点灯させた場合との2種類で行った。なお、前者の条件下での試験を、「定常負荷試験」といい、後者の条件下での試験を、「過負荷試験」という。
【0094】
外管割れの評価は、各試験後の外管における割れの発生具合を目視により確認し、その割れの発生状況に応じて三段階で評価した。すなわち、過負荷試験でも外管に割れが発生しなかった場合、過負荷試験で外管に割れが発生したが、定常負荷試験では割れが発生しなかった場合、定常負荷試験で外管に割れが発生した場合である。
【0095】
図12を用いて外管の割れ発生を説明すると、定常負荷試験でも外管に割れが発生しなかった領域は、図中の破線以下であり、過負荷試験でも外管に割れが発生しなかった領域は、図中の実線以下である。
【0096】
つまり、定常負荷試験でも外管に割れが発生しなかった領域は、材料の熱伝導率[W/(m・K)]をX軸と、熱膨張係数[/℃]×107をY軸とそれぞれし、材料の熱伝導率[W/(m・K)]をxと、熱膨張係数[/℃]をyとそれぞれした場合に、
y×107 ≦ 250×e−0.007x
の関係を満たす領域であり、この領域内の材料であればホルダに使用しても、外管におけるホルダとの当接部分で割れをなくすることができる。
【0097】
なお、上記関係を換言して表すと、
y×107 = 250×e−0.007x で表された曲線と、x=0で表された直線と、y=0で表された直線とで囲まれた領域内に存在する、熱伝導率と熱膨張係数との値を有する材料であれば良い。
【0098】
また、過負荷試験でも外管に割れが発生しなかった好ましい領域は、
y×107 ≦ 250×e−0.04x
の関係を満たす領域であり、この領域内の材料であればホルダに使用しても、10[%]の過負荷の電力が供給された場合でも外管に割れが生じる可能性を低くすることができる。
【0099】
なお、上記関係を換言して表すと、
y×107 = 250×e−0.04x で表された曲線と、x=0で表された直線と、y=0で表された直線とで囲まれた領域内に存在する、熱伝導率と熱膨張係数との値を有する材料であれば良い。
3.その他
また、本発明のメタルハライドランプは、銅鉄式のような安定器を含む照明器具にも適用することができる。
【0100】
このようにランプの取替え対象となる既存の水銀灯用照明器具が安定器を含んでいる場合、本発明のメタルハライドランプに内蔵している点灯回路を保護するという観点からは、点灯回路の入力部にパルス保護回路を付設することが好ましい。
【0101】
なぜならば、例えば、点灯中のメタルハライドランプが立ち消えるなどして内蔵している点灯回路への入力電流が急激に遮断された場合には、インダクタンス成分を含む安定器から高電圧のパルスが発生することがあり、このパルス電圧により回路素子(電子部品)が破損するおそれがあるが、上記のようにパルス保護回路を付設すると、パルス電圧による回路素子の破損を抑えることができるためである。また、メタルハライドランプが立消えたりなどした場合であっても、点灯回路への入力電流が急激に遮断されることなく、緩やかに減少させるための保護回路を設けることによって、照明器具側の安定器からのパルス電圧を低下させることもできるからである。
【0102】
また、本発明においては、点灯回路の入力部にACフィルタ及び/またはアクティブフィルタ回路(以下、「フィルタ回路」という。)を付設させてもよい。一般的に、水銀灯用照明器具に使用される安定器はインダクタであることが多く、点灯回路への入力電流が高調波成分を多く含む場合、本来の入力電流波形を歪ませることがある。その点、これらのフィルタ回路を付設することにより、当該フィルタ回路の下流側の他の回路(例えば、実施の形態におけるAC/DC変換部である)への入力電流の高調波成分を低減することができる。
【0103】
そうすると、安定器によって電流波形を歪ませられることなく、ランプ発光管に対して適正な電流を安定して供給することができるので、結果としてランプのちらつきのような諸問題を回避することができる。
【0104】
ところで、既存の水銀灯用照明器具は、既に数十年という長期にわたって使用されている場合に銅鉄安定器を構成しているコイルの劣化などが懸念される。
その点、本発明のメタルハライドランプはセラミック発光管を使用しているため、水銀灯の2倍程度の効率を得ることができる。そのため、既存の水銀灯に対して同等の光束(光量)を得るのであれば、およそ半分の電力/電流にすることができる。このため、既存の安定器が長期間にわたって使用されていても、本発明のメタルハライドランプに交換した後は、安定器の電流負荷を低減することができるため、コイル劣化を抑制させる効果や発煙などの不具合を抑制することができる。
【0105】
さらに、水銀灯を使用している際、コイル劣化により安定器が短絡状態になった場合は水銀灯の発光管が爆発することがあるが、本発明のメタルハライドランプであれば、内蔵された点灯回路により電流が制限されているため、発光管が爆発するなどの危険性もない。そのため、本発明のメタルハライドランプを既存の水銀灯用照明器具に適用する場合には、メタルハライドランプとして既存の水銀灯よりも低電力タイプのものを選択することが好ましい。このように低電力タイプを選択すると、取替え対象となる水銀灯よりもメタルハライドランプが低電流であるため、既存の照明器具の安定器が長期間にわたって使用されていても、メタルハライドランプ内の点灯回路に対する電流負荷が低いので、照明器具側のコイルに劣化等が生じている場合でも発煙などの不具合を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、ホルダへの、発光管から輻射される熱の影響が小さくなる構造を採用することにより、ホルダの熱膨張によるピンチシール部への圧力が軽減することができるので、点灯時の発光管の熱などにより、内管のピンチシール部に割れが生じるのを効率よく防ぐことができる。そのため、本発明に係るメタルハライドランプは、例えば、水銀灯代替光源として、既存の水銀灯器具にそのまま装着して用いる光源として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0107】
10 メタルハライドランプ
12 ケース部
14 口金部
16 外管
24 点灯回路
40 ホルダ
42 二重管構造体
44 発光管
46 内管
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルハライドランプに関し、特に、水銀灯代替光源として好適なメタルハライドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
道路、広場、競技場などの屋外照明、体育館や工場などの高天井の屋内照明には、従来、主として水銀灯が用いられている。この水銀灯はランプ効率が比較的低いため、近年の省エネルギーの要請を背景として、当該水銀灯をランプ効率の高いメタルハライドランプへ置き換えることが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、水銀灯が装着されていた既存の照明施設には水銀灯用の安定器が設けられているため、当該水銀灯用の照明器具にメタルハライドランプをそのまま装着して水銀灯と同等の明るさを得るためには、前記安定器をメタルハライドランプ用の安定器に取り替える必要があり、このことが、メタルハライドランプへの置き換えの阻害要因の一つとなっている。
【0004】
そこで、水銀灯用の安定器をそのまま残存させた状態で、ランプだけを交換できるようにしたものとして、安定器を含む点灯回路を内蔵したメタルハライドランプの要望が高まっている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0005】
回路内蔵型ランプは、従来から電球形蛍光灯や水槽用ランプ等では検討されていたが、水銀灯置き換えランプのような高Wタイプのメタルハライドランプは、耐熱性などの観点から課題が多く、あまり検討されていなかったが、上記要望に応えるべく発明者らにより検討されている。
【0006】
検討しているメタルハライドランプは、例えば、発光管が内管内に格納された状態で前記内管の一端がピンチシールされてなる二重管構造体が、ホルダにより保持された状態で、前記発光管を点灯させる点灯回路とともに、外管とケースとからなる外囲器内に収納され、二重管構造体は、内管のピンチシール部がホルダの保持孔に挿入された状態でセメントによりホルダに接合され、ホルダの外周面が外囲器の内周面に当接する構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4129279号公報
【特許文献2】特開2004−158361号公報
【特許文献3】特開2005−116218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者らの検討により以下の課題が発生することが分かった。
一般的にメタルハライドランプの定常点灯中、前記発光管で発生する熱により前記内管は400[℃]を超える高温状態になる。
【0009】
上記構成のメタルハライドランプでは、発光管の熱が内管を経由してホルダへと伝わり、さらに、発光管からの熱の一部がホルダに輻射される。そして、ホルダはこれらの熱により膨張しようとする。しかしながら、ホルダの外周面は外囲器と当接しているため、外周への膨張が規制され、ホルダ内に発生する力が二重管構造体側に、つまり、ホルダと接合されている二重構造体のピンチシール部側に集中して作用することとなる。
【0010】
このよう場合、ホルダの形状や発光管に対するホルダ位置によって、発光管からの輻射熱をホルダの主面でより多く受け、酷い場合にはピンチシール部に割れや破損が生じてしまうのである。
【0011】
本発明は、上記した課題に鑑み、内管のピンチシール部に割れが生じないメタルハライドランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るメタルハライドランプは、発光管が内管内に格納された状態で前記内管の一端がピンチシールされている二重管構造体がホルダにより保持された状態で、前記発光管を点灯させる点灯回路とともに、外管とケースとからなる外囲器内に収納されてなるメタルハライドランプであって、前記発光管は発光物質としてのハロゲン化金属と一対の電極とを放電空間内に有し、前記二重管構造体は、前記内管のピンチシール部が前記ホルダの保持孔に挿入されて、当該挿入部分と前記保持孔を形成する周面とが接合されることで前記ホルダにより保持され、前記ホルダは、熱膨張係数が150×10−7[/℃]以上の材料から構成され、その外周面が前記外囲器の内周面に当接し、前記ホルダにおける前記外囲器の内周面に当接する位置のうち、前記一対の電極の先端同士を結ぶ仮想直線から最も近い位置をA点とし、当該A点を通り且つ前記仮想直線と直交する点を中心とし且つ前記A点を通る円の直径をD[mm]としたときに、前記一対の電極間の中心を通り且つ前記仮想直線と直交する面を基準とし、当該面に対してホルダから離れる方向を正としたときのA点までの距離L[mm]は、 L≦0.25×D+0.14×Wla−21 (Wla:ランプ電力[W]) の関係を満たすことを特徴としている。
【0013】
ここでいう「接合」とは、挿入部分と保持孔を形成する周面とを、例えば、機械的に嵌合させて嵌着した場合、接着剤を用いた場合、両者にねじ加工を施し螺着した場合等を含む概念である。
【0014】
ここでいう「当接」とは、外管とホルダとが直接密接する状態や、ホルダが外管を直接押圧する状態で接触する場合、外管とホルダとが無機接着剤を介して接合されている場合、外管とホルダとが他部材を介して接触する場合を含む概念である。なお、他部材を介して接触する場合とは、ホルダの熱が他部材を介して殆ど外管に伝わるような場合をいい、具体的には、ホルダにおける他部材との接触部と外管における他部材との接触部との温度差が約5℃以下のような場合をいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るメタルハライドランプは、ホルダが、発光管から輻射される熱の影響が小さくなり、ホルダの熱膨張によるピンチシール部への圧力が軽減されたため、内管のピンチシール部に割れが発生するのを抑制・防止することができる。
【0016】
また、本発明に係るメタルハライドランプは、前記ホルダの前記発光管側の主面は、当該主面と前記仮想直線との交点をB点としたときに、前記A点とB点を結ぶ仮想線分を前記仮想直線に対して回転させて形成される仮想錐面よりも前記発光管から離れた側にあることを特徴とし、さらには、前記発光管の入力電力が30[W]以上であることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係るメタルハライドランプの概略構成を示す縦断面図である。
【図2】点灯回路ユニットにおける点灯回路の回路図である。
【図3】発光管の概略構成を示す縦断面図である。
【図4】ホルダの形状の違いによるピンチシール部の割れ発生を説明するための図である。
【図5】ピンチシール部の信頼性評価のためのライフ試験に供したメタルハライドランプの概要を説明する図である。
【図6】ピンチシール部の信頼性評価のためのライフ試験に供した各タイプにおけるホルダの外周径Dと、基準面との距離Lを示す図である。
【図7】ピンチシール部の信頼性評価のためのライフ試験結果を示す図である。
【図8】切片とランプ電力との関係を示す図である。
【図9】ホルダ形状が異なるメタルハライドランプの変形例を示す図である。
【図10】ホルダの変形例を示す概略図である。
【図11】外囲器についての変形例を示す図である。
【図12】縦軸(Y)を熱膨張係数[/℃]×107とし、横軸(X)を熱伝導率[W/(m・K)]とし、横軸を対数で表し、ホルダの種々の材料について、外管の当接部分の割れの評価をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明を実施するための最良の形態について、一例を示して説明する。なお、以下の説明で用いる形態は、本発明の構成及び作用・効果を分かりやすく説明するために用いる一例であって、本発明は以下に説明する形態に限定されるものではない。
<実施の形態>
本実施の形態に係るメタルハライドランプについて、図を用いて以下説明する。
1.ランプの構成
図1は、実施の形態に係るメタルハライドランプ10の概略構成を示す縦断面図である。なお、本図において、後述する発光管44と点灯回路ユニット18とは切断していない。また、各構成部材間の縮尺は統一していない。
【0019】
メタルハライドランプ10の定格ランプ電力は、200[W]である(このタイプのランプを、「200Wタイプ」ともいう)。本発明において、定格ランプ電力とは、回路込みのランプにおいて光源で消費される電力をいう。メタルハライドランプ10は、水銀灯代替光源として、水銀灯用の既存の照明器具にも装着して用いられる。
【0020】
メタルハライドランプは、水銀灯と比較してランプ効率[lm/W]が良いため、本例の200[W]のメタルハライドランプは、400[W]の水銀灯に代替し、当該水銀灯と略同等の明るさが得られる。なお、実施の形態に係るメタルハライドランプの定格ランプ電力は、200[W]に限らず、例えば、200[W]より大きくても良いし、200[W]より小さい100[W]、40[W]等でも構わない。発光管の温度、メタルハライドランプの大きさ等を考慮すると、特に、30[W]以上の高W(ワット)タイプに有用である。
【0021】
図1に示すように、メタルハライドランプ10は、ケース部12と、ケース部12に一体的に連設された口金部14と、ケース部12に接合された外管16とを有する。なお、ケース部12と口金部14とでケースとしても良く、このケースと外管16とで外囲器が構成される。
【0022】
ケース部12は、筒状をし、その軸心を一端から他端に移るに従って、直径が小さくなるコーン状(或いは、中空の円錐台形状)をしている。ケース部12を構成する材料として、例えば、アルミニウム、鉄などの金属、または、それ含む合金、アルミナなどのセラミック、及びPPS、PBTのような樹脂材料、硬質ガラスや軟質ガラスを使用することができる。硬質ガラスの熱膨張係数は、30×10−7[/℃]〜60×10−7[/℃]、熱伝導率は1.0[W/(m・K)]、軟質ガラスの熱膨張係数は、80×10−7[/℃]〜100×10−7[/℃]、熱伝導率は0.74[W/(m・K)]である。
【0023】
ケース部12内には、点灯回路ユニット18が収納されている。点灯回路ユニット18は、ケース部12の内壁面に固定されたプリント配線板20と複数個の電子部品(例えば、図1において符号「22」で示す。)等からなる。
【0024】
図2は、点灯回路ユニット18における点灯回路の回路図である。
点灯回路ユニット18における点灯回路24について、図2を参照しながら説明する。
図2に示すように、点灯回路24は、AC/DC変換部24A、DC調整部24B、及びDC/AC変換部24Cを有する。
【0025】
AC/DC変換部24Aは、商用交流電源からの交流電力を所定電圧の直流電力に変換する。AC/DC変換部24Aは、整流回路DBと、整流回路DBから出力される直流電圧を昇圧する昇圧回路とを備える。昇圧回路は、例えばチョッパー方式の昇圧回路であり、インダクタンスL1、スイッチング素子Q1、ダイオードD1及びコンデンサC1を備える。本例において、インダクタンスL1にはチョークコイルを、スイッチング素子Q1にはトランジスタを、コンデンサC1には電解コンデンサをそれぞれ使用することができる。
【0026】
DC調整部24Bは、AC/DC変換部24Aから出力される直流電圧を所定の電圧に調整する。DC調整部24Bは、例えばチョッパー方式の降圧回路であり、スイッチング素子Q2、ダイオードD2、インダクタンスL2及びコンデンサC2を備える。本例において、インダクタンスL2にはチョークコイルを、スイッチング素子Q2にはトランジスタを、コンデンサC2には電解コンデンサをそれぞれ使用することができる。
【0027】
DC/AC変換部24Cは、DC調整部24Bから出力される直流電力を交流電力に変換して、発光管44に給電する。DC/AC変換部24Cは、直流電力を交流電力に変換する変換回路と、発光管44に流れる電流を制御し放電を安定させる安定器L3とを備える。変換回路は、例えばフルブリッジインバータ回路であり、4つのスイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6を備える。また、安定器L3には、例えばチョークコイルを使用することができる。
【0028】
なお、各スイッチング素子Q1〜Q6は、図外の制御部(例えばICである)によりスイッチング動作が制御されている。
図1に戻り、点灯回路ユニット18は、口金部14から第1リード線26及び第2リード線28を介して供給される商用交流電力を、後述する発光管44を点灯させるための電力に変換して、発光管44に給電する。
【0029】
口金部14は、例えば略円筒状をし、例えば耐熱性の合成樹脂材料からなる第1絶縁体部30を有している。第1絶縁体部30は、ケース部12の一方の開口端部に接合されている。
【0030】
口金部14は、また、筒状胴部とも称されるシェル32と円形皿状をしたアイレット34とを有する。シェル32とアイレット34とは、ガラス材料からなる第2絶縁体部36を介して一体となっている。この一体となったものが、第1絶縁体部30に嵌め込まれている。
【0031】
第1絶縁体部30には、貫通孔30Aが開設されており、貫通孔30Aを介して第1リード線26が第1絶縁体部30内から外部に導出されている。
第1リード線26の一端部の導線部分は、シェル32の内周面と第1絶縁体部30外周面との間に挟持されている。これにより、第1リード線26とシェル32とは電気的に接続されている。
【0032】
アイレット34は、中央部に開設された貫通孔34Aを有している。第2リード線28の導線部がこの貫通孔34Aから外部へ導出され、アイレット34の外面(上面)に半田付けにより接合されている。
【0033】
ケース部12の他方(大径側の)の開口側の端部には、後述する二重管構造体42を支持するホルダ39が、例えば耐熱性の無機接着剤により接合されている。ホルダ39は、例えばアルミナ材料からなる、例えば、底部40と周部41とを有する有底筒状をしており、その底部40の中央部には、二重管構造体42における後述するピンチシール部78の横断面形状に合わせた長孔40A(本発明の「保持孔」に相当する)が開設されている。
【0034】
ホルダ39に支持されている二重管構造体42は、発光管44と内管46とを有する。
図3は、発光管44の概略構成を示す縦断面図である。なお、本図の縮尺は統一していない。
【0035】
発光管44は、本管部48と本管部48の管軸方向両側に形成された細管部50a,50bとからなる放電容器52を有している。放電容器52は、例えば透光性セラミックで形成されている。透光性セラミックには、例えば、アルミナセラミックを用いることができる。
【0036】
本管部48は、気密封止された放電空間52aを有し、当該放電空間52aには、一対の電極54a,54b(正確には電極棒60a,60bの軸心である)が略一直線上で対向して配置されている。
【0037】
ここでの「略一直線上」とは、電極の配置が設計において一直線上にあることをいい、発光管の製造時に電極の位置のズレを許容する意味で「略」とし、上記の一直線を発光管の管軸と一致する。
【0038】
放電空間52aには、ハロゲン化金属、希ガス、及び水銀がそれぞれ所定量封入されている。ハロゲン化金属は発光物質として封入されており、このハロゲン化金属としては、例えば、ヨウ化ナトリウムやヨウ化ジスプロシウム等が用いられる。
【0039】
細管部50a,50bの各々には、先端部に前記各電極54a,54bが接合された給電体56a,56bが挿入されている。給電体56a,56bは、それぞれの細管部50a,50bにおける、本管部48とは反対側の端部部分に流し込まれたフリットからなるシール材58a,58bによって封着されている。なお、図1に現れているシール材58a,58bの部分は、細管部50a,50bの端部からはみ出た部分である。
【0040】
電極54a,54bは、電極棒60a,60bと、電極棒60a,60bの先端(放電空間52a内に位置する端)に巻回されたコイル62a,62bとを有し、電極棒60a,60bの他端(前記先端と反対側の端)が給電体56a,56bに接続されている。
【0041】
なお、電極棒60a,60bと細管部50a,50bの内周面との隙間に発光物質が侵入するのを防ぐために、例えばモリブデンコイル64a,64bが電極棒60a,60bに巻装されている。
【0042】
図1に戻って、給電体56aにおける電極54aとは反対側の端部は電力供給線66aに電気的に接続されており、同じく、給電体56bにおける電極54bとは反対側の端部が電力供給線66bに電気的に接続されている。
【0043】
電力供給線66a,66bはそれぞれ、金属箔68,70を介して、外部リード線72,74に電気的に接続され、外部リード線72,74はプリント配線板20に接続されている。なお、一方の電力供給線66aにおいて、少なくとも他方の電力供給線66bやこれに接続された給電体56bと対向する部分は、例えば石英ガラスからなるスリーブ76で被覆されている。
【0044】
上記した発光管44等は、筒状、例えば円筒状をした内管46内に気密状に収納されている。内管46は、例えば石英ガラスからなり、金属箔68,70の存する側の一端部部分は、いわゆるピンチシール法によって圧潰されて、金属箔68,70の相当部分において気密封止されている。したがって、内管46は、片封止型の気密容器であるといえる。ここで、内管46において前記圧潰封止されてなる部分をピンチシール部78と称することとする。ピンチシール部78の横断面は、略長方形をしている。
【0045】
内管46の他端部部分の凸部80は、内管46の内部を真空引きする際に用いた排気管の残部であるチップオフ部80である。内管46内を真空にするのは、ランプ点灯時に高温にさらされる給電体56a,56b、電力供給線66a,66b等の金属部材の酸化を防止するためである。酸化防止の観点から、内管46の内部であって、発光管44の外部は、真空にするのではなく、不活性ガスを充満させることとしても構わない。
【0046】
上記構成からなる二重管構造体42は、ピンチシール部78がホルダ39の底部40の長孔40Aに挿入され、ピンチシール部78と長孔40Aの間隙に充填された例えば無機接着剤82によってホルダ39に接合されている。無機接着剤82は、シリカ及びアルミナを主成分とする、いわゆるセメントであり、1000[℃]の耐熱温度を有する。
【0047】
ケース部12に固着されているホルダ39の周部41は、その開口端部がケース部12から張り出しており、この張り出し部分41aに外管16の開口端部16aが外嵌し、外管16の開口端面がケース部12の開口端面と当接する状態で、例えば無機接着剤(図示省略)により接合されている。なお、外管16には、耐熱性や加工性を考慮して硬質ガラスが用いられるが、軟質ガラスを用いてもよい。
【0048】
ホルダ39は、上述したように、有底筒状であって、底部40から離れるに従って拡径するコーン状をし、また、底部40から離れるに従って厚みが薄くなっている。
2.ホルダについて
(1)材料
発明者らは、種々検討した結果、定常点灯時に、発光管からの輻射熱をホルダの主面で多く受けて、ピンチシール部に割れや破損が生じるのは、熱膨張係数が、150×10−7[/℃]以上の材料をホルダに用いた場合であることを見出した。
【0049】
従って、熱膨張係数が、150×10−7[/℃]以上の材料をホルダに用いた場合について説明する。
(2)発光中心に対するホルダ位置
発明者らは、ホルダの外周面と外管との接合位置が同じであっても、ホルダの形状によって二重管構造体のピンチシール部に割れが発生するのを観察した。
【0050】
図4は、ホルダの形状の違いによるピンチシール部の割れ発生を説明するための図である。
同図の(a)に示すように、ホルダ101が平坦な板状で、その外周面が図外の外管等により保持されているメタルハライドランプと、同図の(b)に示すように、ホルダ102がコーン状をする板状で、その外周面が図外の外管等により保持されているメタルハライドランプとでは、ホルダ101,102の外周面と外管等とが接合する位置が同じ(図4の「D」であり、ホルダの外周径という)である。
【0051】
しかしながら、このようにホルダ101,102の外周径Dと厚みtが同じであっても、(a)のホルダ101の場合はピンチシール部に割れが発生せず、(b)のホルダ102の場合はピンチシール部に割れが発生する。
【0052】
これは、ホルダ102がコーン状をすることで、発光管からの輻射熱を多く受けることとなり、ホルダ102自身の温度が上昇したためと考えられる。
そこで、発明者らは、ホルダの外周径Dと、発光中心からのホルダの発光管側の主面までの距離との関係が、ピンチシール部の割れに及ぼす影響を試験した。なお、上記主面は、例えば、図4の(a)及び(b)における「101a」及び「102a」である。
【0053】
なお、発光中心とは、図3に示すように、電極54a,54bの先端間の中心Oであり、この中心Oは、換言すると、電極54a,54bの先端同士を結ぶ仮想直線上であって電極54a,54b間の中心位置である。
また、発光管44の管軸とは、電極54a,54bの先端同士を結ぶ仮想直線と一致し、又は、一対の電極棒60a,60bの軸心と設計上は一致し、図3の「Y」に相当し、この「Y」を仮想直線、発光管の管軸とする。
【0054】
試験に用いたメタルハライドランプは、ランプ電力が40[W]の40Wタイプ、ランプ電力が100[W]の100Wタイプ、ランプ電力が200[W]の200Wタイプの3種類である。
【0055】
図5は、試験に供したメタルハライドランプの概要を説明する図である。
発明者らは、図5に示すような形状であって、外周径Dと高さHの異なるホルダ102を複数種類準備し、当該ホルダ102に二重管構造体42を実際に接合して点灯させ、二重管構造体42のピンチシール部に割れが発生するか否かを試験した。
【0056】
ここで、ホルダ102の外周径Dは、図5に示すように、A点と仮想直線(発光管の管軸)Yとの距離を半径とした円の直径であり、このA点は、ホルダ102における外管(外囲器)の内周面に当接する位置のうち、発光管の管軸を延長する仮想直線Yから最も近い位置である。なお、上記外周径Dは、本発明の「円に直径をDとした」の「直径」であり、A点と仮想直線(発光管の管軸)Yとの距離は、A点を通り仮想直線Yと直交する仮想直線上における仮想直線YとA点との距離である。
【0057】
したがって、ホルダ102の外周径Dを換言すると、前記A点を通り且つ仮想直線Yと直交する直線と、仮想直線Yとの交点を中心とし且つA点を通る円の直径である。
また、発光中心Oからのホルダ102の発光管側の主面との距離は、図5に示す基準面XからA点までの距離で規定している。
【0058】
ここで、基準面Xは、図3に示す、発光管44の管軸Yと直交する面(仮想直線)Xであり、図5に戻って、当該基準面Xに対してホルダ102から離れる方向(図5における上方向である。)を正とし、基準面XとA点との距離Lである。つまり、この距離Lは、A点を通り基準面Xと直交する直線上であって基準面XとA点との距離である。
【0059】
図6は、試験に供した各タイプにおけるホルダの外周径Dと、基準面Xとの距離Lを示す図である。
40Wタイプでは、同図の(a)に示すように、外周怪Dが、30、40、50、70[mm]の4つで、距離Lを、−20[mm]から0[mm]の間でそれぞれ適宜変更している。
【0060】
100Wタイプでは、同図の(b)に示すように、外周怪Dが、30、40、45、60、80、90[mm]の6つで、距離Lを、−30[mm]から0[mm]の間でそれぞれ適宜変更している。
【0061】
200Wタイプでは、同図の(c)に示すように、外周怪Dが、45、60、90、100、120[mm]の5つで、距離Lを、−40[mm]から−10[mm]の間でそれぞれ適宜変更している。
【0062】
ホルダの厚みtは、2.0[mm]であり、二重管構造体のピンチシール部とホルダとの接合部分の中心と、発光中心との距離は、40Wタイプでは40[mm]、100Wタイプでは45[mm]、200Wタイプでは55[mm]である。
【0063】
上記の図6の各表に示す各メタルハライドランプを点灯させて、二重管構造体のピンチシール部に割れが発生するか否かを試験した。
なお、点灯条件は、例えば、5.5時間点灯、0.5時間消灯を1サイクルとして3000サイクルを繰り返した。
【0064】
図7は、試験結果を示す図である。
図7の各図において、点灯後の検査で割れが発生していた場合が「×」であり、割れが発生していない場合が「○」である。
【0065】
各図において、ホルダの外周径Dが同じでも、Lが小さくなる(0[mm]に近づく)と、ピンチシール部に割れが発生しているのが観察できる。これは、ホルダが、発光管から輻射される熱の影響が小さくなり、ホルダの熱膨張によるピンチシール部への圧力が軽減されたためだと考えられる。
【0066】
そして、各外周径Dにおけるピンチシール部に割れが発生していないLを結ぶと、ホルダの外周径Dと距離Lとにより、ピンチシール部が割れる範囲と割れない範囲との境界を直線で近似できることが分かる。
【0067】
この直線の近似式は、40WタイプではL=0.25×D−27であり、100WタイプではL=0.25×D−40であり、200WタイプではL=0.25×D−50である。
【0068】
つまり、ピンチシール部に割れが発生しない領域は、40WタイプではL≦0.25×D−27、100WタイプではL≦0.25×D−40、200WタイプではL≦0.25×D−50となる。なお、以下の説明では上記各式を関係式(1)とする。
【0069】
ここで、各タイプの切片(40Wタイプでは「27」であり、100Wタイプでは「40」であり、200Wタイプでは「50」である)とランプ電力との関係を示すと、図8となる。
【0070】
図8に示すように、ランプ電力と切片との関係は、略直線で近似できる。切片をy、ランプ電力をxとした場合に、切片yは、
y=−0.14×x−21
となる。なお、以下の説明では、この式を関係式(2)とする。
【0071】
以上のことから、ピンチシール部に割れが生じていない領域は、ホルダの外周径Dと距離Lとランプ電力Wlaとにより、
L ≦ 0.25×D−0.14×Wla−21
と表すことができる。
【0072】
上記の関係式(1)から、ホルダの外周径Dが大きくなる程、距離Lをとりうる範囲が大きくなる、すなわち、設計自由度が増し、ホルダの外周径Dによっては、距離Lを0[mm]以上、すなわち、基準面Xよりも上側にすることもできる。これは、ホルダの外周径Dが大きいため、発光管から輻射される熱の影響が小さくなることを示す。なお、ここで、基準面Xよりも上側とは、二重管構造体のピンチシール部と反対側の先端側を意味する。
【0073】
逆に、ホルダの外周径を小さくするためには、距離Lを極端に小さくする必要があり、輻射の影響を受けない程に距離Lを負側に反らせる必要がある。
また、関係式(2)からランプ電力が大きいメタルハライドランプほど、関係式(1)の切片が小さくなる。これは、距離Lが小さくなることを意味する。つまり、輻射によるホルダの加熱が大きくなるため、距離Lが小さく、そして負側に反らせる必要がある。
(3)形状
上記試験により、二重管構造体のピンチシール部に割れが発生しない、ホルダの外周径Dと基準面からの距離Lと関係を見出した。
【0074】
したがって、ホルダにおける発光管に対向する主面は、ホルダの外周径Dと基準面Xからの距離Lとで規定される上記領域内に存在するA点と、当該ホルダに主面を構成している仮想主面と発光管の管軸の延長直線との交点であるB点とを直線で結んだ仮想線分よりも外側(発光管から遠い側である)に位置すれば良い。ここで、主面とは、ホルダが有する表裏2つの面のうち、より発光管側を向いている面であり、発光管からの輻射される熱の影響を受けやすい方の面をいう。また、ここでの「仮想主面」とは、ホルダの中央部には長孔が設けられているためホルダの主面の中心部分が存在しておらず、長孔がなく主面の中心部分が存在する仮想の状態の主面をいう。
【0075】
つまり、ホルダにおける外管の内周面に当接する位置のうち、発光管の管軸を延長した直線から最も近い位置をA点とし、ホルダの当該主面と管軸を延長した仮想直線との交点をB点としたときに、A点とB点を結ぶ仮想線分を前記仮想直線に対して回転させて形成される仮想錐面に対して発光管から離れた側にあれば良い。
【0076】
図9は、ホルダ形状が異なるメタルハライドランプの変形例を示す図である。
変形例に係るメタルハライドランプ202は、同図の(a)に示すように、コーン状のホルダ204を有している。このホルダ204は、縦断面形状が楕円状をし、その底部に二重管構造体42を保持するための長孔204Aが形成されている。
【0077】
この場合も、ホルダ204の発光管44側の主面204aは、発光管44の管軸を延長させた直線とホルダ204の主面204aの仮想主面との交点B1と、上記関係式を満たす点A1とを結ぶ仮想線分Z1よりも発光管44から遠い外側に存在している(存在する形状をしている)。
【0078】
変形例に係るメタルハライドランプ212は、同図の(b)に示すように、平板状のホルダ214を有している。このホルダ214は、縦断面形状が矩形状をし、その中央部に二重管構造体42を保持するための長孔214Aが形成されている。
【0079】
この場合も、ホルダ204の発光管44側の主面204aは、上記関係式を満たす基準面から距離Lよりも基準面から離れている。
また、上記実施の形態に係るホルダ39や変形例に係るホルダ204,214は、板部材をそのまま利用したり、湾曲加工したりして構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
図10は、ホルダの変形例を示す概略図である。
ホルダを板部材により構成する場合、以下のようなホルダを用いることができる。また、ここでは、平板状のホルダであるが、上述したようなコーン状のホルダについても本変形例を適用できるのはいうまでもない。なお、本発明においてコーン状とは、縦断面形状において内面が直線状及び楕円状をした形状を含む。
【0081】
同図の(a)に示すホルダ252は、円板状をし、その周方向に所定間隔をおいて複数の貫通孔252a,252b,252c,252dを有する。なお、ここでは貫通孔は4個であるが、当然1個でも良い。さらに、複数の貫通孔は、同一の円周上(中心位置及び半径が同じ)に不規則的に形成されていても良いし、複数の円周上に規則的に或いは不規則的に形成されていても良い。
【0082】
また、同図の(b)に示すホルダ254は、上記の貫通孔252a,252b,252c,252dに代わって、凹部254aを有している。この凹部254aは上記貫通孔252a,252b,252c,252dと同様に、ホルダ254の周方向に所定間隔をおいて複数あっても良いし、1個であっても良い。当然、複数形成する場合、各凹部は同一の円周上(中心位置及び半径が同じ)に不規則的に形成されていても良いし、複数の円周上に規則的に或いは不規則的に形成されていても良い。
【0083】
また、同図の(c)に示すホルダ256は、上記の凹部254aに代わって、膨出部256aを有している。この膨出部256aは上記凹部254aと同様に、ホルダ256の周方向に所定間隔をおいて複数あっても良いし、1個であっても良い。当然、複数形成する場合、各膨出部は、同一の円周上(中心位置及び半径が同じ)に不規則的に形成されていても良いし、複数の円周上に規則的に或いは不規則的に形成されていても良い。
【0084】
また、同図の(d)及び(e)に示すホルダ258,260は、段差部258a,260aを有している。段差部は、ホルダ258の中央部から周縁に向かう際に中央部を基準にして下がる段差であっても良いし、逆にホルダ260の中央部から周縁に向かう際に中央部を基準にして上がる段差であっても良い。当然、これらの段差部258a,260aの両方が組み合わされて形成されても良い。また、段差部の数や形成位置も、上述した貫通孔、凹部、膨出部等と同様に形成しても良い。
【0085】
さらに、同図の(f)に示すホルダ262は、凹凸部262aを有している。凹凸部262aは、円弧状(曲線状)をしているが、直線状(例えば三角波状或いは鋸波状である)であっても良い。凹凸部の数や形成位置も、上述した貫通孔、凹部、膨出部等と同様に形成しても良い。
【0086】
なお、図10で説明した変形例では、ランプ点灯時のホルダ膨張時のピンチシール部への熱応力は緩和される方向である。
(4)厚み
実施の形態では、ホルダの厚みは2.0[mm]であり、本発明ではこの厚みに限定するものではないが、0.5[mm]〜5.0[mm]の範囲内が好ましい。
【0087】
材料の厚みを上記範囲としている理由は、0.5[mm]よりも小さい厚みでは二重管構造体を保持するための強度が不足し、逆に5.0[mm]より大きい厚みではホルダ本体の形状加工及び、ホルダに形成する長孔、貫通孔、凹部などの形状加工が困難になるからである。
<変形例>
上記実施の形態や変形例では、ホルダの外周面と外管の開口端部部分の内周面とが、ホルダの外周面の全周に亘って無機接着剤で接合されていたが、本発明はこれに限定するものではない。
1.外囲器について
図11は、外囲器についての変形例を示す図である。
【0088】
メタルハライドランプ302は、同図の(a)に示すように、ホルダ304の外周面がケース部306の内周面に当接(接合の有無に関係なく)し、外管308がケース部306の端面306aに形成された挿入溝306Aに挿入されて、無機接着剤により接合されているような構成であっても良い。
【0089】
また、メタルハライドランプ312は、同図の(b)に示すように、ホルダ314の外周面がケース部316と外管318との内周面に当接(接合の有無に関係なく)し、外管318の端面とケース部316の端面とが突き合わす状態で両者が無機接着剤により接合するような構成であっても良い。
【0090】
また、ホルダの外周面の一部が外管の内周面に接合されておらず、ホルダの外周面の前記一部を除く残部が外管の内周面に接合する状態であっても良い。
2.ホルダについて
実施の形態におけるホルダは、アルミナ材料により構成されていたが、熱膨張係数が150×10−7[/℃]以上の材料であれば、他の材料を利用することもできる。他の材料としては、例えば、SUS304のようなステンレス鋼、PPS、PBI、PBT等の樹脂、アルミニウム、アルミDC、亜鉛等がある。これらの材料は、加工性、耐熱性、及び部材としたときの軽量化という点を考慮しながら、適宜選択すれば良い。
【0091】
また、外管に硬質ガラスや軟質ガラスを用い、ホルダの外周面が外管の内周面に当接するような構造を有する場合、点灯時の熱により、外管におけるホルダとの当接部分に割れが発生することがある。
【0092】
図12は、縦軸(Y)を熱膨張係数[/℃]×107とし、横軸(X)を熱伝導率[W/(m・K)]とし、横軸を対数で表し、ホルダの種々の材料について、外管の当接部分の割れの評価をプロットした図である。
【0093】
ここで、割れの評価は、各メタルハライドランプのタイプを示すランプ電力で定格点灯させた場合と、各メタルハライドランプのタイプを示すランプ電力に対して10[%]の過負荷で点灯させた場合との2種類で行った。なお、前者の条件下での試験を、「定常負荷試験」といい、後者の条件下での試験を、「過負荷試験」という。
【0094】
外管割れの評価は、各試験後の外管における割れの発生具合を目視により確認し、その割れの発生状況に応じて三段階で評価した。すなわち、過負荷試験でも外管に割れが発生しなかった場合、過負荷試験で外管に割れが発生したが、定常負荷試験では割れが発生しなかった場合、定常負荷試験で外管に割れが発生した場合である。
【0095】
図12を用いて外管の割れ発生を説明すると、定常負荷試験でも外管に割れが発生しなかった領域は、図中の破線以下であり、過負荷試験でも外管に割れが発生しなかった領域は、図中の実線以下である。
【0096】
つまり、定常負荷試験でも外管に割れが発生しなかった領域は、材料の熱伝導率[W/(m・K)]をX軸と、熱膨張係数[/℃]×107をY軸とそれぞれし、材料の熱伝導率[W/(m・K)]をxと、熱膨張係数[/℃]をyとそれぞれした場合に、
y×107 ≦ 250×e−0.007x
の関係を満たす領域であり、この領域内の材料であればホルダに使用しても、外管におけるホルダとの当接部分で割れをなくすることができる。
【0097】
なお、上記関係を換言して表すと、
y×107 = 250×e−0.007x で表された曲線と、x=0で表された直線と、y=0で表された直線とで囲まれた領域内に存在する、熱伝導率と熱膨張係数との値を有する材料であれば良い。
【0098】
また、過負荷試験でも外管に割れが発生しなかった好ましい領域は、
y×107 ≦ 250×e−0.04x
の関係を満たす領域であり、この領域内の材料であればホルダに使用しても、10[%]の過負荷の電力が供給された場合でも外管に割れが生じる可能性を低くすることができる。
【0099】
なお、上記関係を換言して表すと、
y×107 = 250×e−0.04x で表された曲線と、x=0で表された直線と、y=0で表された直線とで囲まれた領域内に存在する、熱伝導率と熱膨張係数との値を有する材料であれば良い。
3.その他
また、本発明のメタルハライドランプは、銅鉄式のような安定器を含む照明器具にも適用することができる。
【0100】
このようにランプの取替え対象となる既存の水銀灯用照明器具が安定器を含んでいる場合、本発明のメタルハライドランプに内蔵している点灯回路を保護するという観点からは、点灯回路の入力部にパルス保護回路を付設することが好ましい。
【0101】
なぜならば、例えば、点灯中のメタルハライドランプが立ち消えるなどして内蔵している点灯回路への入力電流が急激に遮断された場合には、インダクタンス成分を含む安定器から高電圧のパルスが発生することがあり、このパルス電圧により回路素子(電子部品)が破損するおそれがあるが、上記のようにパルス保護回路を付設すると、パルス電圧による回路素子の破損を抑えることができるためである。また、メタルハライドランプが立消えたりなどした場合であっても、点灯回路への入力電流が急激に遮断されることなく、緩やかに減少させるための保護回路を設けることによって、照明器具側の安定器からのパルス電圧を低下させることもできるからである。
【0102】
また、本発明においては、点灯回路の入力部にACフィルタ及び/またはアクティブフィルタ回路(以下、「フィルタ回路」という。)を付設させてもよい。一般的に、水銀灯用照明器具に使用される安定器はインダクタであることが多く、点灯回路への入力電流が高調波成分を多く含む場合、本来の入力電流波形を歪ませることがある。その点、これらのフィルタ回路を付設することにより、当該フィルタ回路の下流側の他の回路(例えば、実施の形態におけるAC/DC変換部である)への入力電流の高調波成分を低減することができる。
【0103】
そうすると、安定器によって電流波形を歪ませられることなく、ランプ発光管に対して適正な電流を安定して供給することができるので、結果としてランプのちらつきのような諸問題を回避することができる。
【0104】
ところで、既存の水銀灯用照明器具は、既に数十年という長期にわたって使用されている場合に銅鉄安定器を構成しているコイルの劣化などが懸念される。
その点、本発明のメタルハライドランプはセラミック発光管を使用しているため、水銀灯の2倍程度の効率を得ることができる。そのため、既存の水銀灯に対して同等の光束(光量)を得るのであれば、およそ半分の電力/電流にすることができる。このため、既存の安定器が長期間にわたって使用されていても、本発明のメタルハライドランプに交換した後は、安定器の電流負荷を低減することができるため、コイル劣化を抑制させる効果や発煙などの不具合を抑制することができる。
【0105】
さらに、水銀灯を使用している際、コイル劣化により安定器が短絡状態になった場合は水銀灯の発光管が爆発することがあるが、本発明のメタルハライドランプであれば、内蔵された点灯回路により電流が制限されているため、発光管が爆発するなどの危険性もない。そのため、本発明のメタルハライドランプを既存の水銀灯用照明器具に適用する場合には、メタルハライドランプとして既存の水銀灯よりも低電力タイプのものを選択することが好ましい。このように低電力タイプを選択すると、取替え対象となる水銀灯よりもメタルハライドランプが低電流であるため、既存の照明器具の安定器が長期間にわたって使用されていても、メタルハライドランプ内の点灯回路に対する電流負荷が低いので、照明器具側のコイルに劣化等が生じている場合でも発煙などの不具合を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、ホルダへの、発光管から輻射される熱の影響が小さくなる構造を採用することにより、ホルダの熱膨張によるピンチシール部への圧力が軽減することができるので、点灯時の発光管の熱などにより、内管のピンチシール部に割れが生じるのを効率よく防ぐことができる。そのため、本発明に係るメタルハライドランプは、例えば、水銀灯代替光源として、既存の水銀灯器具にそのまま装着して用いる光源として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0107】
10 メタルハライドランプ
12 ケース部
14 口金部
16 外管
24 点灯回路
40 ホルダ
42 二重管構造体
44 発光管
46 内管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管が内管内に格納された状態で前記内管の一端がピンチシールされている二重管構造体がホルダにより保持された状態で、前記発光管を点灯させる点灯回路とともに、外管とケースとからなる外囲器内に収納されてなるメタルハライドランプであって、
前記発光管は発光物質としてのハロゲン化金属と一対の電極とを放電空間内に有し、
前記二重管構造体は、前記内管のピンチシール部が前記ホルダの保持孔に挿入されて、当該挿入部分と前記保持孔を形成する周面とが接合されることで前記ホルダにより保持され、
前記ホルダは、熱膨張係数が150×10−7[/℃]以上の材料から構成され、その外周面が前記外囲器の内周面に当接し、
前記ホルダにおける前記外囲器の内周面に当接する位置のうち、前記一対の電極の先端同士を結ぶ仮想直線から最も近い位置をA点とし、当該A点を通り且つ前記仮想直線と直交する点を中心とし且つ前記A点を通る円の直径をD[mm]としたときに、
前記一対の電極間の中心を通り且つ前記仮想直線と直交する面を基準とし、当該面に対してホルダから離れる方向を正としたときのA点までの距離L[mm]は、
L≦0.25×D+0.14×Wla−21 (Wla:ランプ電力[W])
の関係を満たす
ことを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
前記ホルダの前記発光管側の主面は、当該主面と前記仮想直線との交点をB点としたときに、前記A点とB点を結ぶ仮想線分を前記仮想直線に対して回転させて形成される仮想錐面よりも前記発光管から離れた側にある
ことを特徴とする請求項1に記載のメタルハライドランプ。
【請求項3】
前記発光管の入力電力が30[W]以上である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のメタルハライドランプ。
【請求項1】
発光管が内管内に格納された状態で前記内管の一端がピンチシールされている二重管構造体がホルダにより保持された状態で、前記発光管を点灯させる点灯回路とともに、外管とケースとからなる外囲器内に収納されてなるメタルハライドランプであって、
前記発光管は発光物質としてのハロゲン化金属と一対の電極とを放電空間内に有し、
前記二重管構造体は、前記内管のピンチシール部が前記ホルダの保持孔に挿入されて、当該挿入部分と前記保持孔を形成する周面とが接合されることで前記ホルダにより保持され、
前記ホルダは、熱膨張係数が150×10−7[/℃]以上の材料から構成され、その外周面が前記外囲器の内周面に当接し、
前記ホルダにおける前記外囲器の内周面に当接する位置のうち、前記一対の電極の先端同士を結ぶ仮想直線から最も近い位置をA点とし、当該A点を通り且つ前記仮想直線と直交する点を中心とし且つ前記A点を通る円の直径をD[mm]としたときに、
前記一対の電極間の中心を通り且つ前記仮想直線と直交する面を基準とし、当該面に対してホルダから離れる方向を正としたときのA点までの距離L[mm]は、
L≦0.25×D+0.14×Wla−21 (Wla:ランプ電力[W])
の関係を満たす
ことを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
前記ホルダの前記発光管側の主面は、当該主面と前記仮想直線との交点をB点としたときに、前記A点とB点を結ぶ仮想線分を前記仮想直線に対して回転させて形成される仮想錐面よりも前記発光管から離れた側にある
ことを特徴とする請求項1に記載のメタルハライドランプ。
【請求項3】
前記発光管の入力電力が30[W]以上である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のメタルハライドランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−282954(P2010−282954A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96259(P2010−96259)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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