説明

メタルハライドランプ

本発明は、充填物成分の濃度が、請求項1に記載の条件を満たすメタルハライドランプ1を提供する。このようなランプは、希土類の充填物又は他の金属ハロゲン化物の充填物をベースにした既存の高圧放電ランプ(セラミック放電メタルハライドランプ)の優れた代替物となることが分かった。更に、このようなランプは、色点の実質的なシフトなしに減光され得る。このようなランプは、前記ランプの配置及び/又は外部温度に実質的に左右されない測光特性も持ち得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック放電容器であって、放電ボリュームを囲み、2つの電極を有し、イオン化可能ガス充填物を収容しているセラミック放電容器を有するメタルハライドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
メタルハライドランプは、当業界では既知であり、例えば、欧州特許第EP0215524号及び国際特許出願公開第WO2006/046175号に記載されている。このようなランプは、高圧下で動作し、例えば、NaI(ヨウ化ナトリウム)、TlI(ヨウ化タリウム)、CaI2(ヨウ化カルシウム)及び/又はREIn)のイオン化可能ガス充填物を有する。REInは、希土類ヨウ化物を指す。メタルハライドランプのための特徴的な希土類ヨウ化物は、CeI3、PrI3、NdI3、DyI3及びLuI3である。
【0003】
メタルハライドランプのうちの重要な種類は、上述の文献に記載されているセラミック放電メタルハライドランプ(CDM―ランプ)である。このようなランプの放電容器中の(希土類塩を有する)イオン化充填物は、放電ランプが動作されるときに、飽和蒸気をもたらし、それによって、充填物の一部を凝縮相のままにする量において加えられる。ランプの使用中に飽和蒸気をもたらすであろう量の充填物を加える理由は、塩は、使用中に放電容器の壁部及び/又は放電容器内の他の素子と反応するかもしれず、このことは、充填物の量の減少をもたらすという事実である場合がある。したがって、一定出力を持つ放電ランプを目的とする場合、飽和ガス充填物を供給することは、必要条件であるように思われる。
【0004】
例えば欧州特許第EP0215524号に記載されているランプは、高い発光効率及び十分な演色を供給するといわれている。放電容器は、Sc、La及びランタニドといった元素のうちの少なくとも1つの少なくとも1つのハロゲン化物を有し、Dy、Tm、Ho、Er及びLaといった元素が好ましいことが記載されている。例は、約18.2乃至21.8mg/cm3の水銀と、約11.2乃至14.7mg/cm3のNaI、TlI及びDyI3とを備える放電容器を記載している。ハロゲン化物は過剰である。即ち、ランプの動作中、依然として、蒸発させられないハロゲン化ナトリウムが存在する。最冷点温度は、例えば、約900℃(1173K)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
好ましくは、最先端のメタルハライドランプに対して改善された(測光)特性を備える、他のメタルハライドランプを提供することは、望ましい。更に、メタルハライドランプであって、前記メタルハライドランプの測光特性が、放電容器内の広範囲の温度にわたって実質的に影響されないメタルハライドランプを提供することは、望ましい。減光可能であるランプを提供することも、望ましい。減光する際に、色点のシフトがない、又は実質的にないことは、更に望ましい。したがって、更に他の態様によれば、減光可能であるが、色点の実質的なシフトのないメタルハライドランプが提供される。更に、ランプであって、前記ランプの測光特性が、実質的に周囲温度の影響を受けないランプを得ることは、望ましい。ランプであって、前記ランプの測光特性が、実質的に照明器具の影響を受けないランプを得ることも、望ましい。更に、ランプであって、前記ランプの測光特性が、実質的に前記ランプの(水平又は垂直配置などの)空間的な向きの影響を受けないランプを得ることも、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、本発明は、セラミック放電容器と、(前記放電容器によって囲まれる)2つの電極とを有するメタルハライドランプ(セラミック放電メタルハライド(CDM)ランプ)であって、前記放電容器が、イオン化可能ガス充填物を含む放電ボリュームを囲み、前記イオン化可能ガス充填物が、LiI、NaI、KI、RbI、CsI、MgI2、CaI2、SrI2、BaI2、ScI3、YI3、LaI3、CeI3、PrI3、NdI3、SmI2、EuI2、GdI3、TbI3、DyI3、HoI3、ErI3、TmI3、YbI2、LuI3、InI、TlI、SnI2及びZnI2から成るグループから選択される1つ以上の成分を有し、前記放電容器中の各々の前記成分のμg/cm3単位の濃度hが、式log h = A/Tcs2 + B/Tcs + C + log zを満たし、ここで、Tcsは、前記ランプの公称動作中のケルビン単位の前記放電容器内の最低温度であり、A、B及びCは、表1において定められているメタルハライドランプを提供する。この記載における公称動作は、前記ランプが動作させられるよう設計されている条件下で、最大出力の動作を意味する。
【0007】
表1:式log h = A/Tcs2 + B/Tcs + C + log zのパラメータA、B、C
【表1】

ここで、Tcsは、少なくとも1200Kであり、zは、0.001と2との間である。
【0008】
本発明によるこのようなランプは、希土類充填物をベースにした既存の高圧放電ランプの優れた代替物となることが分かった。更に、このようなランプは、色点の実質的なシフトなしに減光可能である(即ち、最大出力未満の出力の減少は、好ましくは10SDCM(standard deviation of color matching)の範囲内にとどまる色点のシフトをもたらす)。更に、このようなランプは、実質的に前記ランプの空間的な向き及び/又は周囲温度の影響を受けない測光特性も持つ。
【0009】
特定の実施例においては、前記イオン化可能ガス充填物は、1つ以上の希土類ヨウ化物を有する。前記1つ以上の希土類ヨウ化物は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから成るグループから選択される希土類の1つ以上のヨウ化物を有する。本発明の別の特定の実施例によれば、前記希土類ヨウ化物は、ヨウ化ジスプロシウムを有する。このようなランプは、特に有利であるかもしれない。なぜなら、ジスプロシウムをベースにしたランプは、赤色スペクトル領域でさえ、優れた測光特性を持つことが分かったからである(下記参照)。更に別の特定の実施例においては、前記希土類ヨウ化物は、ヨウ化セリウムを有する。特に、Dy、Ceをベースにしたランプは、それらの優れた測光特性のために好ましく、Ho又はTmをベースにしたランプも、それらの優れた測光特性のために好ましい。更に別の実施例においては、前記イオン化可能ガス充填物は、ヨウ化インジウムを有する。ヨウ化インジウムを含むランプは、優れた測光特性を持ち、色点の実質的なシフトなしに減光可能であることも分かった。したがって、別の実施例においては、前記イオン化可能ガス充填物は、ヨウ化インジウムを有する。
【0010】
好ましい実施例においては、zは、1以下であり、例えば0.01と1との間である。その場合、前記充填物は、少なくとも公称動作条件においては飽和させられないであろう。zの値が小さければ小さいほど、前記充填物が飽和状態に入ることなしに、前記ランプの動作電力は、減らされ得る。これは、ランプ動作範囲にわたって安定した色特性のために有利である。
【0011】
実施例においては、本発明によるランプの前記放電容器は、例えば1つ以上の電流貫通導体を封じ込める1つ以上の封止部を有する。ここで、封じ込めるとは、当業界では知られているように、シーリングフリットをベースにした封止プロセスを指す。本発明の特定の実施例においては、前記イオン化可能ガス充填物は、1種類の希土類(即ち、希土類塩)を有し、前記1つ以上の封止部の封止材料は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素及び希土類酸化物の混合物をベースにしたセラミック封止材料を有し、前記封止材料の前記希土類酸化物は、前記イオン化可能ガス充填物に含まれているのと同じ種類の希土類の酸化物である。したがって、前記封止部の希土類と、前記イオン化可能ガス充填物の希土類との間のあらゆる有害な化学的相互作用が減らされ得る。特定の実施例においては、前記イオン化可能ガス充填物は、(前記1種類の希土類として)ヨウ化ジスプロシウムを有し、前記1つ以上の封止部は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素及び酸化ジスプロシウムの混合物に基づく。別の特定の実施例においては、前記イオン化可能ガス充填物は、(前記1種類の希土類として)ヨウ化セリウムを有し、前記1つ以上の封止部は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素及び酸化セリウムの混合物に基づく。
【0012】
下記の実施例を参照して、本発明のこれら及び他の態様を、説明し、明らかにする。
【0013】
ここで、ほんの一例として、添付の概略的な図面を参照して、本発明の実施例を説明する。前記図面において、対応する参照符号は、対応するパーツを示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるランプの実施例を側面図で図示する。
【図2】図1のランプの放電容器の実施例をより詳細に図示する。
【図3】他の形状をしている放電容器を持つ実施例を図示する。
【図4】放電容器の少なくとも一部にイオン化可能ガス充填物の塩が存在する構成を図示する。
【図5】放電容器の壁部にわたって温度がどのように変わり得るのかを図示する。
【図6】Dy、Tl及びNaのヨウ化物をベースにした高圧放電ランプであって、約3350Kの色温度を持つ高圧放電ランプのスペクトルを示す。
【図7】160乃至300Wの出力における図6のランプの減光能力を示しており、楕円は、5SDCM(5 standard deviation of color matching)の範囲を示す。
【図8】160乃至300Wの出力における図6のランプの発光効率及び平均演色評価数(Ra)を示す。
【図9】Inのヨウ化物をベースにした高圧放電ランプであって、約6800Kの色温度を持つ高圧放電ランプのスペクトルを示す。
【図10】70乃至100Wの出力における図9のランプの減光能力を示しており、楕円は、5SDCM(5 standard deviation of color matching)の範囲を示す。
【図11】70乃至100Wの出力における図9のランプの発光効率及び平均演色評価数(Ra)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記したように、本発明のランプは、セラミック放電容器を有する。これは、セラミック放電容器の壁部が、好ましくは、単結晶サファイア及び高密度に焼結された多結晶アルミナ(別名PCA)のような透光性の結晶性金属酸化物、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)及びYOX(イットリウム・アルミニウム酸化物)、又はAlNのような透光性の金属窒化物を有することを特に意味する。当業界では知られているように、容器の壁部は、1つ以上の(焼結)パーツから成ってもよい(下記参照)。
【0016】
以下では、本発明のランプの実施例が、図1乃至3に関して記載されている。しかしながら、本発明のランプは、以下に記載されている、且つ/又は図1乃至3に図示されている実施例に限定されない。
【0017】
ランプ1は、高輝度放電ランプであってもよい。放電容器3は、図1乃至3において図示されている。電流貫通導体20、21は、2つの各々の封止部10(当業界では知られているようなシーリングフリット)で封止される。しかしながら、本発明は、このような実施例に限定されない。例えば、電流貫通導体20、21の一方又は両方が放電容器3に直接焼結されるランプも、考えられ得る。
【0018】
ここで、両方の電流貫通導体20、21が、封止部10によって放電容器3に封止される特定の実施例を、より詳細に記載する(図1乃至3参照)。相互距離EAのところにチップ4b、5bを備える2つの電極4、5、例えばタングステン電極が、それらの間に放電路を規定するように放電空間11内に配設される。円筒状放電容器3は、少なくとも距離EAにわたって内径Dを持つ。各電極4、5は、容器の壁部31(即ち、各々、参照符号33a、33b)と、電極チップ4b、5bとの間のチップから底部までの距離を形成する長さにわたって、放電容器3内に延在する。放電容器3は、放電空間の端面33a、33bを形成する端壁部32a、32bによって両側を閉じられ得る。端壁部32a、32bは、各々、開口部を持っていてもよく、前記開口部においては、各々のセラミック突出プラグ34、35が、焼結接合部Sによってガス漏れしないようにして端壁部32a、32bにはめ込まれる。放電容器3は、これらのセラミック突出プラグプラグ34、35によって閉じられ、前記セラミック突出プラグ34、35の各々は、放電容器3内に配置される電極4、5への(一般に、以下でより詳細に説明する各々の構成要素40、41;50、51を含む)電流貫通導体20、21を狭い介在空間で囲み、放電空間11から遠く離れた端部において(更に封止部10と示される)溶融セラミック接合部10によってガス漏れしないようにしてこの導体に接続される。ここで、セラミック放電容器の壁部30は、容器の壁部31と、セラミック突出プラグ34、35と、端壁部32a、32bとを有する。
【0019】
放電容器3は、一方の端部にランプ口金2を具備する外側バルブ100によって囲まれる。ランプ1が動作しているとき、電極4及び5の間に放電が延在するであろう。電極4は、ランプ口金2の一部を形成する第1電気接点に電流導体8を介して接続される。電極5は、ランプ口金2の一部を形成する第2電気接点に電流導体9を介して接続される。
【0020】
セラミック突出プラグ34、35は、各々チップ4b、5bを具備する電極ロッド4a、5aを有する関連電極4、5の電流貫通導体20、21を各々狭く囲む。電流貫通導体20、21は放電容器3に入る。実施例においては、電流貫通導体20、21は、各々、例えばMo-A1203サーメットの形態のハロゲン化物耐性部分41、51と、封止部10によってガス漏れしないようにして各々の末端プラグ34、35に固定される部分40、50とを有してもよい。封止部10は、或る距離、例えば、ほぼ1乃至5mmにわたってMoサーメット41、51の上に延在する(セラミック封止材料は、封止中に、各々の末端プラグ34、35内の自由空間に入りこむ)。パーツ41、51を、Mo-A1203サーメットからではなく、他の方法で形成することは可能である。他のあり得る構成は、例えば、(参照により本願明細書に盛り込まれる、Moコイル−ロッド間構成が記載されている)欧州特許第EP0587238号から既知である。特に適切な構成は、ハロゲン化物耐性材料であることが分かった。パーツ40、50は、金属であって、前記金属の膨張係数が末端プラグ34、35の膨張係数と非常によく一致する金属から作成される。例えば、ニオブ(Nb)が選ばれる。なぜなら、この材料は、セラミック放電容器3の熱膨張係数と一致する熱膨張係数を持つからである。
【0021】
図3は、本発明によるランプの別の実施例を示している。図1及び2に示されているランプのパーツに対応するランプのパーツには、同じ参照番号が付与されている。放電容器3は、放電空間11を囲む成形壁部30を持つ。ここで示されている例においては、成形壁部30は楕円体を形成する。上記の実施例(図2参照)と比較して、壁部30は、事実上、(図2においては別々のパーツとして示されている)壁部31と、各々の末端プラグ34、35と、端壁部32a、32bとを有する単一エンティティである。このような放電容器3の特定の実施例は、国際特許出願公開第WO06/046175号においてより詳細に記載されている。他の例においては、例えば回転楕円体のような他の形状が同様に可能である。
【0022】
ここで、図2に図示されている実施例における、セラミック突出プラグ34、35と、端壁部32a、32bと、壁部31とを含み得る壁部30、又は図3に図示されているような壁部30は、セラミック壁である。セラミック壁は、透光性の結晶性金属酸化物又はAlNのような透光性の金属窒化物の壁部を意味すると理解されたい(上記参照)。最先端技術によれば、これらのセラミックは、容器3の透光性放電容器壁部を形成するのによく適している。このような透光性セラミック放電容器3は既知である(例えば、欧州特許第EP215524号、欧州特許第EP587238号、国際特許出願公開第WO05/088675号及び国際特許出願公開第WO06/046175号参照)。特定の実施例においては、放電容器3は、透光性の焼結A1203を有する、即ち、壁部30は、透光性の焼結A1203を有する。図に図示されている実施例においては、壁部30はまた、サファイアを有してもよい。
【0023】
本発明のランプ1のイオン化可能充填物は、その成分として、例えば、NaI、TlI、CaI2及びREIn(希土類ヨウ化物)の1つ以上を有してもよいが、LiIなどのような他のガス充填物成分も有してもよい。REInは、CeI3、PrI3、NdI3、SmI2、EuI2、GdI3、TbI3、DyI3、HoI3、ErI3、TmI3、YbI2及びLuI3の1つ以上のような希土類化合物を指すが、実施例においては、Y(イットリウム)のヨウ化物、Scのヨウ化物及びLaのヨウ化物の1つ以上も含む。当業界では知られているように、放電空間11は、更に、Hg(水銀)と、Ar(アルゴン)又はXe(キセノン)のような始動ガスとを含む。特性Hg量は、約1mg/cm3と約100mg/cm3との間のHgであり、特に約5乃至20mg/cm3の範囲内のHgであり、特性圧力は、約2乃至50barの範囲内である。好ましくは、放電容器3内の水銀の量は、公称使用法において水銀の凝縮なしに水銀ガスを供給するよう選ばれる、即ち、水銀蒸気も飽和させられない。水銀及び始動ガスは、当業者には既知であるような意味であり、これ以上は述べない。原則的に、本発明のランプは、水銀なしで動作させられてもよいが、好ましい実施例においては放電容器3内にHgが存在する。定常燃焼中、ロングアークランプは、一般に、数barの圧力を有するが、ショートアークランプは、放電容器内に約50barまでの圧力を有し得る。ランプの特性出力は、約10Wと約1000Wとの間であり、好ましくは約20乃至600Wの範囲内である。
【0024】
図4及び5においては、図2の放電容器3の一部がより詳細に示されている。水平な向きは、必ずしも、ランプ1がこの向きで動作させられることを意味しない。この図においては、(従来技術のランプの場合、このような従来技術のランプが動作させられるときであってもそうであるように)イオン化可能ガス充填物の凝縮材料が存在することが、参照符号60で示されている。図4は、ランプの動作中でさえ、電極4と、突出末端プラグ34との間の空隙に、(ヨウ化物塩などの)凝縮材料が入っている状況を図示している。これは、特に、既知のランプにおいて見出され得る状況である。なぜなら、このようなランプは、ほとんど過飽和状態の充填物を利用するからである。従来技術の高圧放電ランプの動作中、放電容器中には依然として凝縮材料が存在する。これは、動作中、放電ガスがヨウ化物で飽和させられ、最冷点においてハロゲン化金属塩の「プール」が形成される状況をもたらす。
【0025】
対照的に、本発明は、実施例において、ランプの動作中、少なくともランプの公称動作中、ハロゲン化物充填物の成分の凝縮が全く又は実質的に生じないであろうような少量のイオン化可能充填物成分が添加される放電ランプ1を供給する。公称動作は、条件であって、前記ランプが前記条件のために設計された条件下での、最大出力におけるランプの動作である。したがって、放電容器3中には、好ましくは、公称動作中、実質的に不飽和のガスが得られるような量のイオン化可能充填物成分が存在する。これは、ランプの公称動作中、放電容器3内で、REIn及び/又はInIのようなイオン化可能ガス充填物の凝縮成分が、好ましくは全く、又は実質的に、見出されないことを意味する。本願明細書において、「公称動作」という用語は、定格出力でのランプ1の動作を指す。例えば、50Wの(即ち、定格を50Wとされる)市販のランプは、名目上、50Wで用いられる。当業界で既知の「公称動作」の同義語は、「定格出力」、「最大出力」又は「公称出力」である。「動作中」という用語は、ランプ1が、特に、周囲温度、指示されている出力、電流及び周波数などの規定された条件下で動作している状況を指す。「動作中」という用語は、特に、ランプ1が、最初の始動後、例えば約1分後、ほぼ一定のレベルで動作している状況(定常状態)を指す。その場合、ランプは、安定したアークによる安定した動作で用いられる。「不飽和」という用語は、公称動作中の放電容器3内のガスが飽和していない状況を指す。これは、動作中、希土類のヨウ化物又は他のガス充填物成分が放電容器3内で実質的に凝縮しないことを意味する。したがって、ランプの公称動作中、放電容器3内のほぼ全ての成分が気相である。
【0026】
これらの好ましい条件は、特に、前記成分のために特定の濃度が選択され、公称動作を得るために放電容器3内の適切な最低温度が選択される実施例において達成される(下記の表2参照)。
【0027】
各々の成分の濃度は、上記の式から算出されることができる。ここで、セラミック放電容器3及びランプ1は、公称動作時に(少なくとも1200Kである)所定値の最冷点温度を有するように構成される。「各々の成分」という用語は、LiI、NaI、KI、RbI、CsI、MgI2、CaI2、SrI2、BaI2、ScI3、YI3、LaI3、CeI3、PrI3、NdI3、SmI2、EuI2、GdI3、TbI3、DyI3、HoI3、ErI3、TmI3、YbI2、LuI3、InI、TlI、SnI2及びZnI2から成るグループから選択される1つ以上の成分を含むガス充填物の個々の成分の濃度は、表1に示されているパラメータに従って上記の式から算出されなければならないことを指す。ガス充填物の各々の成分の濃度がこの式を満たす場合、従来技術のランプに優る本発明の利点が得られ得ると考えられる。標準的な充填物成分のHg及び始動ガスは、表には含まれず、これらの充填物成分は、動作中気相である(上記参照)。
【0028】
優れた測光特性は、zが2以下である濃度hで得られる。充填物成分は、特に、zが1以下である好ましい実施例においては、気相である。一般に、zが低ければ低いほど、ランプの特性は、その熱負荷に依存しない。充填物が、Mg、Sc、Er、In、Tl、Sn及びZnから成るグループから選択される1つ以上の成分を有する場合には、各々の成分の濃度hは、上記の式を満たし、ここで、zは2以下であり、より好ましくは、zは1.5以下であり、更により好ましくは、zは1以下であり、より一層好ましくは、zは0.5以下であり、更により一層好ましくは、zは0.001乃至0.1のような0.1以下である。充填物が、Y、Dy、Ho、Lu及びLiから成るグループから選択される1つ以上の成分を有する場合には、各々の成分の濃度hは、上記の式を満たし、ここで、zは2以下であり、より好ましくは、zは1.5以下であり、更により好ましくは、zは1以下であり、より一層好ましくは、zは0.001乃至0.5のような0.5以下であり、更により一層好ましくは、zは0.001乃至0.1のような0.1以下である。充填物が、Ce及びTmから成るグループから選択される1つ以上の成分を有する場合には、各々の成分の濃度hは、上記の式を満たし、ここで、zは2以下であり、より好ましくは、zは1.5以下であり、更により好ましくは、zは1以下であり、より一層好ましくは、zは0.001乃至0.5のような0.5以下であり、更により一層好ましくは、zは0.001乃至0.1のような0.1以下である。ガス充填物の成分のzが約1を上回る場合には、前記成分は、放電容器3内で、最冷点において、即ち、最冷点温度において、凝縮を形成し始めるであろう。例えば、InIを含む充填物を用いて、動作中の最冷点温度が1400Kである場合、約10,100μg/cm3より大きい濃度は、放電容器3におけるInIの凝縮をもたらし得る。このようにして、ほとんど過飽和状態のガス充填物成分の不利な点は回避され、本発明の優れた測光特性が達成される。
【0029】
本発明によるランプ1の動作中の放電容器3中のガスの特性平均温度及び圧力は、各々、約2500Kのような約2000乃至3000K、及び2乃至50barである。しかしながら、放電容器3内には温度差がある。温度は、電極チップ4b、5bの近くでは相対的に高いであろう。動作中、放電容器内の温度は、アークの中心の約6000Kという高い温度から、電極チップにおける約3000Kという特性温度、放電容器壁部30の最も熱い部分における約1600Kという特性温度、及び例えば放電容器3の端部の近くの特性温度、所謂最冷点温度まで異なり得る(上記参照)。一般に、突出プラグ34、35の(端部)における温度は、壁部30(図3)又は壁部31(図2)の内面における温度より低いであろう(図5参照)。放電容器3の、最も低い温度を持つ場所は、最冷点と呼ばれ、その温度は、時として、Tcs又はTkpと示される(欧州特許第EP0215524号参照)。「ランプの使用中の少なくとも1200Kの最低温度」という表現は、ランプの動作中、放電容器3の最冷点の温度は少なくとも1200Kであることを示す。それは、特に、最大出力でのランプの動作、即ち、公称動作を指す。公称動作時には、最冷点温度は、少なくとも約1200Kであり、好ましくは、より一層高い。しかしながら、始動中には、又は例えば、ランプが、減光された状態で動作させられる場合には、最冷点温度は、より低いかもしれない。最冷点は、放電容器3の壁部30の局所的な壁温度を測定することによって決定され得る。その場合、測定される最も低い温度が、最冷点温度とされる。この決定は、当業界では既知であり、以下に手短に記載する。
【0030】
この明細書及び請求項においては、放電容器の最冷点温度Tcsは、ランプが公称動作中であるときに上記の方法に従って測定される最も低い温度と定義される。
【0031】
図5は、放電容器3の、図4において図示されているのと同じ部分を、温度勾配の図示と共に、図示している。放電容器3は、ボリューム11、即ち、ガス充填物の成分が封じ込められ、これらの成分がランプ1の使用中にガスを形成するボリュームを囲む。図5の実施例においては、このボリュームは、壁部30、即ち、壁部31、(この概略図においては放電容器3の一方の側しか示されていない)端部32a、突出プラグ34及び封止部10によって囲まれるボリュームである(図2及び3参照)。壁部30に沿った温度は、セラミック材料の放射を測定することによって決定され得る。この温度は、位置xの関数として示される。概略図5においては、最冷点は、セラミック突出プラグ34の端部、即ち、放電ボリューム11が終わり、封止部10が始まる場所において見つけられる。この位置は、xで示されており、この位置の温度、放電容器3内の最低温度、又は最冷点温度は、Txで示されている。この温度Txは、動作中、少なくとも公称動作中、少なくとも1200Kである。最冷点の位置は、(水平又は垂直などの)ランプの向きに依存する。図4の概略的な図面は、大量の飽和を有する従来技術の状況に関するのに対して、図5の概略的な図面は、本発明によるランプ1の放電容器3に関する。
【0032】
一般に、従来技術のランプは、使用中、約900乃至1100Kの最冷点温度を有し得る。約1100Kより高い温度は、セラミック放電容器3でしか達成されることはできない。なぜなら、石英容器の石英は、約1100Kを上回る温度においては劣化するからである。しかしながら、本発明によるランプ1の放電容器3中の最冷点の温度は、好ましい一般条件において少なくとも約1200Kである。特定の実施例においては、最低温度(又は最冷点温度)は、約1200Kと約1600Kとの間である。放電容器3が、ランプの動作中に、少なくとも約1300K、好ましくは少なくとも約1350K、更により好ましくは少なくとも約1400Kの最低温度を有するよう構成される場合に、特に良好な結果は得られる、即ち、最低温度(又は最冷点温度)は、各々、少なくとも約1300K、1350K又は1400Kである。より特定の実施例においては、放電容器3は、ランプの公称動作中に1350乃至1500Kの範囲内の最低温度を有するよう構成される。一般に、最冷点温度が高ければ高いほど、ランプはより減光され得ることが分かった。更に、最冷点温度が高ければ高いほど、ランプ1はより外部温度又は放電容器3の向きに左右されなくなることが分かった。「放電容器3は、少なくとも1200Kの最低温度を有する構成される」という表現は、ランプ1が動作中に(特に公称使用時に)ここで言及されている最冷点の最低温度を達成することを可能にするランプ1及び放電容器3の設計に指す。ランプ1を公称動作時の出力より低い(定格出力より低い)出力まで減光する場合、最冷点の温度は低下するであろう。これは、濃度に依存して、充填物の1つ以上の成分が凝縮することを意味し得る。したがって、Tcsは、動作中、変化し得る。しかしながら、充填物の濃度は公称動作を目的として算出される。この公称動作時には、少なくとも1200K以上のTcs値が得られる。
【0033】
しかしながら、特定の実施例においては、ランプの、その最大出力(即ち、公称動作)における(zが約1である)飽和濃度の約10%、より好ましくは1%である、即ち、zが、各々、0.1又は0.01である塩濃度が選択される。このようにして、凝縮は、減光中でも、実質的に防止され得る。例えば、46.90μg/cm3 (z = 0.01)のDyI3の充填物、及び公称動作において1500Kの最冷点温度を仮定すると、減光が、最冷点温度の約1300Kまでの低下、又は1200Kまでの低下さえもたらすであろう場合であっても、DyI3の濃度は依然として飽和未満にあるであろう(下記の表2参照)。したがって、このようなランプは、一般に、色点の(実質的な)シフトなどの、測光特性の実質的な悪化なしにそれらの最大出力の少なくとも30%まで減光可能であろう。
【0034】
表2においては、ランプの放電容器の最冷点温度が示されている温度(1100K、1200K、1300K、1400 K、1500K及び1600K)を超える場合に(特定のヨウ化物に関して)不飽和ガスを供給するために(ランプの動作中に部分的に凝縮される物質をもたらさないように)放電容器に加えられ得る多数のヨウ化物の最大量が、μg/cm3 (μg/cc)単位で示されている。この表においては、z = 1が好ましい値である。1100Kに対する値は、比較のために含まれている。
【0035】
表2:REIn、InI、NaI及び他のヨウ化物の最高濃度(μg/cm3)の実施例
【表2】

【0036】
上記の表1に挙げられている値は、ランプ1の放電容器3中の各々の化合物の濃度の上限の好ましい値であり、ここで、放電容器3の最低温度(最冷点温度)は、少なくとも公称動作中は表に示されている通りである。例えば、放電容器3において1300Kの最低温度を持ち、即ち、放電容器3の最冷点温度が1300K以上であり、(水銀ガス及び希ガスに加えて)REガスとしてDyI3しか持たない好ましい実施例を仮定すると、好ましい最高濃度は約378μg/cm3 (z = 1)であろう。別の例において、DyとTlとの組み合わせを有する好ましい実施例を仮定すると、好ましくは、Dyは、放電容器3中に、DyI3の形で、≦378μg/cm3の濃度で存在し、Tlは、TlIの形で、≦9110μg/cm3の濃度で存在するであろう。ランプ1が1300Kより高い最冷点温度を持つよう構成される場合には、表2から導き出され得るように、これらの値はより高くてもよい。更に別の例においては、好ましい実施例は、Dy、Tl及びSnをベースにしたランプに関する。このような実施例においては、ランプは、放電容器3において少なくとも1300Kの最冷点温度を持つよう構成され、DyI3、TlI及びSnI2の好ましい濃度は、各々、≦378μg/cm3、9110μg/cm3及び2.17*104μg/cm3である。したがって、好ましい実施例においては、本発明によるメタルハライドランプのイオン化可能ガス充填物は、ヨウ化ジスプロシウム及びヨウ化ホルミウムから成るグループから選択される1つ以上の希土類ヨウ化物を有し、イオン化可能ガス充填物は、10乃至370μg/cm3、より好ましくは10乃至300μg/cm3、更により好ましくは10乃至250μg/cm3の各々の選択された1つ以上の希土類ヨウ化物を有する。イオン化可能ガス充填物が、ヨウ化セリウム及びヨウ化ツリウムから成るグループから選択される1つ以上の希土類ヨウ化物を有する実施例においては、イオン化可能ガス充填物は、好ましくは≦65μg/cm3、より好ましくは≦60μg/cm3、更により好ましくは≦50μg/cm3の1つ以上の希土類ヨウ化物を有する。イオン化可能ガス充填物のREではない成分のための値を含む好ましい最大値は、表2の頭が1300Kである列に挙げられている値である。
【0037】
更に、ガス充填物が実質的に飽和させられない条件を与えられれば、放電容器の幾何学的配置などのパラメータは、この場合、最先端のランプの場合より重要ではなくなると考えられる。更に、最冷点の温度が十分に高い場合には、向き、周囲温度、照明器具などのようなランプの条件の影響は、あまり重要ではない。それは、本願明細書において規定されている条件は、実施例における放電容器3の設計において、従来通りに動作させられるランプの放電容器の場合に可能であろう設計より、より多くの自由を当業者に提供し得ることを意味する。
【0038】
更に、温度が高ければ高いほど、飽和状態に関する塩濃度が低ければ低いほど、ランプ1は、より良好に減光可能であろうと考えられる。本発明の実施例によるランプ1は、一般に、公称動作におけるその強度の100%から、前記強度の約70%、より好ましくは50%まで減光され得る。実施例においては、本発明によるメタルハライドランプ1は、特に、公称動作におけるその強度の100乃至70%、より好ましくは100乃至50%の範囲にわたって、色点の実質的なシフトなしに減光可能である。「色点の実質的なシフトなしに」という表現は、10SDCMより大きくない、特に、5SDCMより大きくない色点のシフトを指す。好ましい公差は約2乃至5SDCM以下である。
【0039】
本発明の特定の実施例においては、希土類ヨウ化物は、ヨウ化ジスプロシウムを有する。このようなランプは、特に優れた特性を供給し得る。更に別の特定の実施例においては、希土類ヨウ化物は、ヨウ化セリウムを有する。ヨウ化セリウムを収容している放電容器3を有するランプ1は、更に、例えば、タリウム、リチウム、スズ、カルシウム、インジウム及びナトリウムのヨウ化物から成るグループから選択される1つ以上のヨウ化物を放電容器3中に収容していてもよい。好ましい充填物は、希土類成分としてDy、Ce、Ho又はTmを有する。更に好ましい充填物は、Dy-Tl、Ce-Na、Ho-Tl又はTm-Naをベースにしたものである。更に他の好ましい充填物は、Dy-Tl-Sn、Ce-Tl-Na、Ho-Tl-Na、Ho-Tl-Sn又はTm-Tl-Snをベースにしたものである。他の好ましい充填物は、Na-Tl-Ce-Ca、Na-Tl-Er又はNa-Tl-Prをベースにしたものである。希土類成分としてDyをベースにした充填物は、特に好ましい。別の好ましい実施例においては、充填物は、ヨウ化インジウムを有する。好ましい充填物は、Na-Tl-In又はIn-Snをベースにしたものである。
【0040】
上で言及されているように、本発明の実施例におけるランプ1の放電容器3は、例えば1つ以上の電流貫通導体20、21を各々の突出プラグ34、35に封止するために、1つ以上の封止部10を有してもよい。当業者には既知の封止部10は、通常、セラミック封止材料を有する(例えば米国特許第US4076991号及び欧州特許第EP0587238号参照)。このようなセラミック封止材料は、一般に、酸化物の混合物をベースにしたものであり、それらは、リングの形の製品にするようプレスされ、焼結される。封止部10は、突出末端プラグ34、35の外側端部に取り付けられ、電流貫通導体20、21の周りに配設されるフリットリングを、封止材料が溶け、セラミック封止部が形成される温度まで加熱することによって作成される。好ましい実施例においては、封止部10の封止材料は、例えば米国特許第US4076991号において記載されているような、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素及び希土類酸化物の混合物をベースにしたものである。
【0041】
好ましい実施例においては、イオン化可能ガス充填物は、1種類の希土類を含み、1つ以上の封止部10の封止材料は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素及び希土類酸化物の混合物をベースにしたセラミック封止材料を有し、封止材料の希土類酸化物は、イオン化可能ガス充填物に含まれているものと同じ希土類の酸化物である。更に別の特定の変形例においては、イオン化可能ガス充填物は、ヨウ化ジスプロシウムを有し、封止部は、希土類酸化物として酸化ジスプロシウムを有する。更に別の特定の変形例においては、イオン化可能ガス充填物は、ヨウ化セリウムを有し、封止部は、希土類酸化物として酸化セリウムを有する。したがって、実施例においては、特に、ランプ1が封止部10を有する実施例においては、イオン化可能ガス充填物は、1種類の希土類を有する。
【0042】
本発明によるランプ1は、店、屋内外のスポーツ施設、スタジオ、劇場及びディスコの照明におけるアクセント照明、自動車のヘッドライト、投影用途などの用途に用いられてもよく、街路照明及びエリア照明などの全般照明用途のために用いられてもよい。
【0043】

例1:本発明によるランプ/放電容器の例
1.8cm3のボリュームを持つ放電容器3を備えるランプが作成された。放電容器3は、以下の充填物、即ち、140μgのNaI、980μgのTlI、120μgのDyI3、30mgのHg及び300mbarのArを含む。したがって、DyI3の濃度 = 67μg/cm3 < 1560μg/cm3(1400K)、TlIの濃度 = 544μg/cm3 < 17,000μg/cm3(1400K)、且つNaIの濃度 = 78μg/cm3 < 148μg/cm3(1400K)である。ランプは、室温環境において、220V、50Hzで動作させられた。公称出力(300W)における最冷点温度は、1400K(±50K)であり、160Wにおける最冷点温度は約1150Kであった。出力の関数としての色点、平均演色評価数(Ra)及び発光効率が、図7乃至8に示されている。300Wでの動作中、壁負荷は、約75W/cm2であった。したがって、ガス充填物成分の濃度は、300Wでの公称動作中、上で表において1400Kの最冷点温度に対して示されているような基準を満たす。ガス充填物成分は、300乃至150Wの範囲の少なくとも一部にわたって不飽和状態のままである。しかしながら、約1150Kの最冷点においては、NaI及びDyI3の濃度は、式から導き出される、表2においてz = 1に対して示されている値をわずかに上回る。ここで示されている水銀量では、動作中、160Wでも、水銀も全て気相である。
【0044】
図6は、上記のランプの250Wで動作させられる場合のスペクトルを示している。その場合、測光特性は、以下の通りである。即ち、Ra = 96.4であり、9標準色の色指数R9は、67.5であり、発光効率は、83.2lm/Wであり、色温度Tc = 3336Kであり、CIE座標(x、y)は、0.4134、0.3917である。
【0045】
例2:例1のランプの減光動作
例2のランプについて、減光能力(ランプが公称動作における強度からより低い強度まで減光され得る範囲)が測定された。300乃至160Wの範囲内では、ランプは、(多くの用途にとって許容できる範囲である)5SDCMの範囲から逸脱することなく減光され得ると考えられる。これは、最大強度の少なくとも50%の減光が達成され得ることを意味する。
【0046】
更に、測光特性の、ランプの空間的な向き(水平又は垂直)への依存は、本発明によるランプの場合、同等の従来技術のランプの場合より実質的に小さいと考えられる。
【0047】
例3:本発明によるランプ/放電容器の例
0.32cm3のボリュームを持つ放電容器3を備えるランプが作成された。放電容器3は、以下の充填物、即ち、600μgのInI、4mgのHg及び300mbarのArを含む。したがって、InIの濃度は、1875μg/cm3であり、1300Kにおいて0.31のz及び1200Kにおいて0.56のzのための値に対応する。ランプは、室温において、220V、50Hzで動作させられた。公称出力(100W)における最冷点温度は、1300K(±50K)であり、70Wにおける最冷点温度は1200Kであった。出力の関数としての色点、平均演色評価数(Ra)及び発光効率が、図10乃至11に示されている。推定壁負荷は、約40W/cm2であった。したがって、このランプ中のInIの濃度は、InIが(1200K乃至1300Kの温度範囲をもたらす)70乃至100Wの全範囲にわたって気相であるように選ばれる。
【0048】
図9は、上記のランプの70Wで動作させられる場合のスペクトルを示している。その場合、測光特性は、以下の通りである。即ち、Ra = 90であり、R9は、55あり、発光効率は、62.3lm/Wであり、色温度Tc = 7040Kであり、CIE座標(x、y)は、0.3050、0.3201である。
【0049】
例4:例3のランプの減光動作
例3のランプについて、減光能力(ランプが最大強度(即ち、最大出力)からより低い強度まで減光され得る範囲)が測定された。ランプは、(多くの用途にとって許容できる範囲である)5SDCMの範囲から逸脱することなく100乃至70Wの範囲にわたって減光され得ると考えられる。これは、最大強度の少なくとも30%の減光が達成され得ることを意味する。
【0050】
更に、この場合にも、測光特性の、ランプの空間的な向き(水平又は垂直)への依存は、本発明によるランプの場合、同等の従来技術のランプの場合より実質的に少ないと考えられる。
【0051】
上述の実施例は、本発明を限定するものではなく例示するものであり、当業者は、添付の請求項の範囲から逸脱せずに多くの別の実施例を設計することが出来るであろうことに注意されたい。請求項においては、括弧内のいかなる参照符号も、請求項を限定するものとして解釈されるべきではない。「有する」という動詞及びその語形変化の使用は、請求項において示されている要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を除外しない。要素の単数形表記は、このような要素の複数の存在を除外しない。本発明は、幾つかの別個の素子を有するハードウェアによって実施されてもよく、適切にプログラムされたコンピュータによって実施されてもよい。幾つかの手段を挙げている装置の請求項においては、これらの手段の幾つかは、ハードウェアの同一のアイテムによって実施されてもよい。
【0052】
単に、或る特定の手段が、相互に異なる従属請求項において引用されているという事実は、これらの手段の組み合わせが有利になるようには用いられることが出来ないことを示すものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック放電容器を有するメタルハライドランプであり、前記放電容器が、放電ボリュームを囲み、2つの電極を有し、イオン化可能ガス充填物を含み、前記イオン化可能ガス充填物が、LiI、NaI、KI、RbI、CsI、MgI2、CaI2、SrI2、BaI2、ScI3、YI3、LaI3、CeI3、PrI3、NdI3、SmI2、EuI2、GdI3、TbI3、DyI3、HoI3、ErI3、TmI3、YbI2、LuI3、InI、TlI、SnI2及びZnI2から成るグループから選択される1つ以上の成分を有するメタルハライドランプであって、前記放電容器中の各々の成分のμg/cm3単位の濃度hが、式:log h = A/Tcs2 + B/Tcs + C + log zを満たし、ここで、Tcsは、前記ランプの公称動作中のケルビン単位の放電容器の最冷点温度であり、A、B及びCは、以下のように規定され、
【表3】

ここで、Tcsは、少なくとも1200Kであり、zは、0.001と2との間であるメタルハライドランプ。
【請求項2】
前記イオン化可能ガス充填物が、ヨウ化ジスプロシウムを有する請求項1に記載のメタルハライドランプ。
【請求項3】
前記イオン化可能ガス充填物が、ヨウ化セリウムを有する請求項1に記載のメタルハライドランプ。
【請求項4】
前記イオン化可能ガス充填物が、ヨウ化インジウムを有する請求項1に記載のメタルハライドランプ。
【請求項5】
前記充填物が、Mg、Sc、Er、In、Tl、Sn、Zn、Y、Dy、Ho、Lu、Li、Ce及びTmを有するグループから選択される1つ以上の元素を有し、各々の成分の濃度hが、請求項1の式を満たし、Mg、Sc、Er、In、Tl、Sn及びZnに対しては、zが0.5以下であり、Y、Dy、Ho、Lu及びLiに対しては、zが1.5以下であり、Ce及びTmに対しては、zが2以下である請求項1に記載のメタルハライドランプ。
【請求項6】
zが1以下である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のメタルハライドランプ。
【請求項7】
zが0.5以下である請求項1乃至6のいずれか一項に記載のメタルハライドランプ。
【請求項8】
前記ランプの公称動作中、Tcsが、少なくとも1300Kである請求項1乃至7のいずれか一項に記載のメタルハライドランプ。
【請求項9】
前記放電容器が、前記ランプの公称動作中、1350乃至1600Kの範囲内の最低温度Tcsを持つよう構成される請求項1乃至8のいずれか一項に記載のメタルハライドランプ。
【請求項10】
前記ランプの前記放電容器が、1つ以上の封止部を更に有する請求項1乃至9のいずれか一項に記載のメタルハライドランプ。
【請求項11】
前記イオン化可能ガス充填物が、1種類の希土類を含み、前記1つ以上の封止部の封止材料が、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素及び希土類酸化物の混合物をベースにしたセラミック封止材料を有し、前記封止材料の前記希土類酸化物が、前記イオン化可能ガス充填物にも含まれている同じ希土類元素の酸化物である請求項10に記載のメタルハライドランプ。
【請求項12】
1つの前記希土類元素が、Dyであり、前記1つ以上の封止部が、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素及び酸化ジスプロシウムの混合物をベースにしたものである請求項11に記載のメタルハライドランプ。
【請求項13】
1つの前記希土類元素が、Ceであり、前記1つ以上の封止部が、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素及び酸化セリウムの混合物をベースにしたものである請求項11に記載のメタルハライドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−521039(P2010−521039A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538828(P2009−538828)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【国際出願番号】PCT/IB2007/054806
【国際公開番号】WO2008/068666
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】