説明

メタルハライドランプ

【課題】所定区間に吸収波長域をもつ光開始剤を、高い発光効率で作用させるために必要なメタルハライドランプを実現する。
【解決手段】紫外線透過性の材料からなる気密容器11内に封装される一対の耐火性金属からなる放電電極121,122と、気密容器11内に封入されたアーク放電を維持するのに十分な量の希ガス、水銀とともに、ビスマス、ハロゲンの封入物からハロゲンランプを構成する。このメタルハライドランプから280〜320nmの波長域に高い発光効率の紫外線を放射可能とした。このメタルハライドランプから発光される紫外線を、280〜320nmの間に吸収波長域をもつ光開始剤が含有された硬化剤に照射させた場合に、硬化速度の速めることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特定区間に吸収波長域をもつ光開始剤を高い発光効率で作用させるために用いるメタルハライドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線水銀ランプから照射される紫外線を用いて、特定区間に吸収波長域で硬化可能な樹脂組成物に光開始剤を含有させ、組成物の硬化を促進させることが知られている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−525540公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、280nm〜320nmの紫外線に吸収波長域をもつ光開始剤に照射させる光源として、鉄メタルハライドランプがある。同ランプは280〜320nmの間にブロードな波長領域を持つが、単波長の光量はさほど高くはなく、硬化に時間を要する、という問題があった。
【0005】
この発明の目的は、280nm〜320nmに吸収波長域をもつ光開始剤を含有した硬化材料を、被照射物として用いた場合に高い発光効率で照射させることが可能なメタルハライドランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、この発明は、一対の耐火性金属製の放電電極を紫外線透過性の材料で形成された気密容器内に封装するとともに、アーク放電を維持するのに十分な量の希ガス、水銀とともにハロゲンを封入したメタルハライドランプにおいて、前記気密容器にビスマスをさらに封入し、280〜320nmの波長域における紫外線強度の強い分布を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、280〜320nmの波長領域におけるビスマス金属の波長強度を利用すること発光効率の高い照射の実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明のメタルハライドランプに関する一実施形態について説明するための基本構造図である。
【図2】図1の一部を拡大して示した構成図である。
【図3】光開始剤に対するこの発明と従来の水銀ランプが発生する紫外線の吸収波長との分光分布について説明するための説明図である。
【図4】光開始剤4,4’-Dihydroxybenzophenone(4-クロロ-4’-ヒドロキシベンゾフェノン)の吸収率について説明するための説明図である。
【図5】光開始剤4-Hydroxybenzophenone(4-ヒドロキシベンゾフェノン)の吸収率について説明するための説明図である。
【図6】従来とこの発明のメタルハライドランプの光開始剤を、4-クロロ-4’-ヒドロキシベンゾフェノンとした場合における硬化比率について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1、図2は、この発明のメタルハライドランプに関する一実施形態について説明するための、図1は基本構造図、図2は図1の一部を拡大して示した構成図である。
【0011】
図1、図2において、11は紫外線透過性を有する石英ガラス製で放電空間10が形成された径がφ27.5mm、肉厚が1.5mm、発光長が300mm程度の発光管である。発光管11の長手方向両端の内部には、例えばタングステン材で形成された電極121,122が間隔をおいて配置される。電極121,122は、それぞれインナーリード131,132を介してモリブデン箔141,142の一端に溶接される。モリブデン箔141,142の他端には、図示しないアウターリードの一端を溶接する。モリブデン箔141,142の部分は、発光管11のインナーリード131,132からアウターリードの一端までの発光管11を加熱して封止する。
【0012】
なお、モリブデン箔141,142は、発光管11を形成する石英ガラスの熱膨張率に近い材料であれば何でもよいが、この条件に適したものとして一般的なモリブデンを使用する。
【0013】
モリブデン箔141,142に一端がそれぞれ接続されたアウターリードには、耐熱性で絶縁性を有する例えばセラミック製のソケット151,152の内部で電気的に接続された給電用のリード線161,162を絶縁封止するとともに、図示しない電源回路に接続される。
【0014】
発光管11内には、封入物としてアーク放電を維持させるための希ガスである十分な量のアルゴンガス(Ar)が1.3kPaで、それに紫外線を発光させるための水銀(Hg)、ヨウ化ビスマス(BiI)が封入されている。
【0015】
この紫外線は、紫外線硬化性樹脂組成物に照射させることで、この樹脂組成物の重合性樹脂の重合を開始させるための光開始剤を含有させている。
【0016】
ここで、図3を参照し、図1で構成されたビスマスが封入された水銀ランプと従来の鉄メタルハライドランプを、ランプ入力4800Wの定電力で点灯させて照射される紫外線の分光分布について説明する。
【0017】
図3からわかるように、280〜320nmの間の波長域における光量が、鉄メタルハライドランプに比して高い光量を有することができる。
【0018】
ここで、図4、図5を参照して、この発明の水銀ランプからの紫外線が照射される被照射物に含有される280〜320nmの間に、吸収波長を有する光開始剤の例について説明する。
【0019】
図4は、光開始剤4,4’-Dihydroxybenzophenone(4-クロロ−4’-ヒドロキシベンゾフェノン)の吸収率を、図5は、光開始剤4-Hydroxybenzophenone(4-ヒドロキシベンゾフェノン)の吸収率をそれぞれ示している。これらの開始剤は、いずれも280〜320nmの間に吸収波長域をもち、300nmのやや下の波長域において吸収率のピークを有する吸収波長を備えている。
【0020】
図1で構成されるビスマス封入水銀ランプから280〜320nmの波長域における紫外線が、280〜320nmの間に吸収波長域を有する図4、図5の光開始剤が含有された光硬化剤に照射させる。すると、光吸収率が高いほど光硬化剤が硬化しやすいことから、従来の水銀ランプに比して紫外線強度の高いこの実施形態の水銀ランプを用いた場合には、光硬化剤の硬化速度をより速めることが可能となる。
【0021】
次式は、発光スペクトル曲線をα(λ)、吸収スペクトル曲線をφ(λ)としたとき、使用の水銀ランプと光開始剤との反応とを数値化したものである。
【数1】

【0022】
ここで、上式のxを280、yを320とした場合、従来とこの発明の水銀ランプの光開始剤を4-クロロ−4’-ヒドロキシベンゾフェノンとした場合の硬化比率は、図6に示すとおりとなる。つまり、この発明は従来の水銀ランプに比べて高い発光効率の照射が可能となり、硬化剤の硬化速度を速めることが可能となる。なお、x,yは、それぞれ波長(nm)を示している。
【0023】
このように、280〜320nmに光量の高いビスマス封入水銀ランプを用い、280〜320nmの間に吸収波長域を有する光開始剤が含有された光硬化剤に、紫外線を照射させることで硬化速度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0024】
10 放電空間
11 気密容器
121,122 電極
131,132 インナーリード
141,142 モリブデン箔
151,152 ソケット
161,162 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の耐火性金属製の放電電極を紫外線透過性の材料で形成された気密容器内に封装するとともに、アーク放電を維持するのに十分な量の希ガス、水銀とともにハロゲンを封入したメタルハライドランプにおいて、
前記気密容器にビスマスをさらに封入し、280〜320nmの波長域における紫外線強度の強い分布を得ることを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
前記紫外線の被照射対象である紫外線硬化性樹脂組成物に含有させた光開始剤は、4-クロロ-4’-ヒドロキシベンゾフェノンまたは4-ヒドロキシベンゾフェノンであることを特徴とする請求項1記載のメタルハライドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−65760(P2011−65760A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212860(P2009−212860)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】