説明

メチルリチウムの製造方法

メチルテトラヒドロフランを含有する芳香族有機溶媒中の分散リチウム金属と、クロロメタンとを反応させることによって、メチルリチウムを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)を含有する芳香族液中のリチウムの分散液から製造されるメチルリチウム溶液に関し、前記リチウムの分散液に液体又は気体状のクロロメタンを添加して前記リチウムと反応させることによってメチルリチウムを形成する。
【背景技術】
【0002】
有機リチウム化合物、例えば、ブチルリチウムは、不活性有機液体中のリチウム又はリチウム/ナトリウム金属分散液を作成し、次に、適当なハロゲン化アルキルを添加して前記リチウム金属と反応させ前記有機リチウム製品を形成することによって作られることが知られている。
【0003】
一般に、メチルリチウムは、クロロメタンを2当量のリチウム金属と反応させることによって、それと塩化リチウムを提供することによって製造されていた。
【0004】
CHCl+2Li → CHLi+LiCl
【0005】
古典的には、この反応は、前記溶媒としての純ジエチルエーテル(DEE)中で行われた。しかし、ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムやtert−ブチルリチウム等の他のアルキルリチウムと違って、メチルリチウムは、純粋な炭化水素溶媒には不溶である。しかし、ジエチルエーテルは、火災と爆発の重大な危険を有し、工業規模での反応用として望ましい溶媒ではない。テトラヒドロフラン(THF)は、その低い蒸気圧と、低い自発火温度とにより、より望ましいエーテルであるが、MeLiは、純THF中では不安定である。メチルリチウムは当量のTHFと反応し、続いて不可逆的なフラグメント化反応を受ける。
【0006】
【化1】

【0007】
米国特許4,976,886号及び5,141,667号は、有機ハロゲン化物と、一方はアルカリ金属で、他方は、マグネシウム、カルシウム、バリウム及び亜鉛から成るグループから選択されるものである二種類の金属の混合物とを、有機ハロゲン化物1モル当たり0.5〜2.0モルのルイス塩基を含有する炭化水素溶媒中で反応させることによって、有機金属組成物を製造する方法を開示している。メチルテトラヒドロフランがルイス塩基候補として開示されている。前記’667特許は、又、メチルハライドを、リチウム金属とテトラヒドロフラン(THF)を含有する芳香族炭化水素化合物との混合物に、メチルハライド1モル当たり2モル未満のTHFの量で添加し、前記混合物を50℃未満の温度に維持しながら不活性雰囲気中にてリチウム金属とメチルハライドとを反応させて、メチルリチウムと副産物としてのリチウムハライドとを作る、安定なメチルリチウム溶液の製造方法をクレームしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
今般、MeTHFを芳香族溶媒と使用することによって、ここに記載したようにして製造された対応するTHF調合物よりも安定的なメチルリチウム組成物を製造できることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
メチルリチウムを、リチウム金属を、MeLi当量当たり2〜4当量のMeTHFを含む芳香族有機溶媒中で分散させ、液体又は気体状のクロロメタンを、該クロロメタンが前記リチウム金属と反応してメチルリチウムを形成する条件下で添加することによって製造する。これによって得られたメチルリチウム溶液は、前記芳香族有機物、MeTHF、そしてMeLiを、有るとすれば副生成物ととともに含有している。好適実施例において、前記分散液に対して、金属ナトリウムが、金属の50重量%以下の量、好ましくは、金属総重量に対して1〜25%、より好ましくは、3〜5%添加される。特に好適な実施例において、有機溶媒中のリチウム分散液が予め準備され、リチウム源として使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の目的のために、それらが本発明の方法によって製造されるように、前記第1及び第2リチウム分散液を作成するのに使用される前記不活性有機液体は、リチウムに対しては非反応性であるが、ハロゲン化アルキルとの反応を行って所望のアルキルリチウム製品を作り出すのには適している、任意の適当なC5〜C10有機アルキル又はシクロアルキルである。ヘキサン、シクロヘキサン及びヘプタンが好適である。
【0011】
前記分散液は、リチウム金属を前記不活性有機液体中で、分散剤の存在下で、リチウム金属の融点以上、又はリチウムと別の金属、例えばナトリウム金属との両方の融点以上で、これら金属を溶解させる温度にまで加熱することによって作成することができる。前記分散剤は、好ましくは、前記金属の分散を促進する有機化合物、典型的には、脂肪酸又はそれらの組み合わせである。アマニ油が特に好適である。但し、その他の剤、例えは、オレイン酸、ステアリン酸、ピーナッツオイルも使用可能である。次に、攪拌又はせん断力を加えて小滴又はフレーク状に溶融金属を分散させてリチウム金属を分散し、リチウム分散液を形成する。好ましくは、前記分散剤は、前記不活性有機材、リチウム及びオプションとしてのナトリウム金属と、分散剤との合算重量の0.3〜0.65%含まれる。
【0012】
ナトリウム金属が含まれる場合、ナトリウムに対するリチウムの重量比は、20:1〜1:1、最も好ましくは、18:1〜1.2:1の範囲が好ましい。
【0013】
本発明のリチウム分散液は、それも又本発明の一部であるところの装置によって作成することができる。この装置は、供給パイプを介して互いに連通する分散器と交換タンクとを備える。或いは、2本以上の別々の供給パイプを前記分散器と交換タンクとに連通させることも可能である。
【0014】
前記分散器は、好ましくはインゴット形状である前記リチウムと、オプションとしてのナトリウム金属とを受け入れるのに適した入口を備える。勿論、前記金属の、粉砕物、細片、その他の原料形状も利用可能である。別実施例において、金属を溶融状態に維持するべく加熱された前記不活性有機液体に、溶融金属を添加する。前記不活性有機液体と分散剤とを、前記入口から分散器に投入することも可能であるが、通常は、別の液体入口が設けられ、これが、前記不活性有機剤および/又は分散剤を収納したタンクと連通される。通常、前記分散器と交換タンクとは、不活性ガス、例えば、アルゴンの圧力下での導入によって非反応性雰囲気を提供することができるように閉じられた容器である。
【0015】
前記分散器は、前記容器を所望の状態に加熱又は冷却する、例えば、前記容器を加熱してリチウム金属を溶融するための温度調節システムを備えている。重要なことは、前記分散器は、前記溶融リチウムとオプションとしてのナトリウム金属とを攪拌して前記分散液を形成する攪拌機を備えている。前記攪拌機は、得られるリチウムとオプションとしてのナトリウム金属との平均粒径が5〜60ミクロン、好ましくは、10〜55ミクロン、最も好ましくは30〜50ミクロンとなるように十分な力を付与するべきである。
【0016】
前記不活性有機液体を除去してこれを第2の不活性有機液体と置換・交換するために交換タンクが設けられる。前記第2不活性有機液体は、前記第1のものと同じ、又は異なったものとすることができるが、ここに記載の特性を有している。交換は、通常、濾過によって行われ、適当なフィルタ機構も設けられる。
【0017】
前記分散器から前記交換タンクへの分散液の移送は、分散器を不活性ガスによって加圧することによって達成される。
【0018】
前記リチウム分散液は、好ましくは、本発明によってメチルリチウムを作成するのに使用することができるが、但し、任意のリチウム又はリチウム/ナトリウム分散液を使用することできる。好適実施例において、適当な量のリチウム金属分散液(又はリチウムナトリウム金属分散液)が前記芳香族溶媒とMeTHF混合物とに添加される。次に、クロロメタンを、液体又は気体として、メチルリチウムを形成するべく前記リチウム金属との反応を許容する条件下で添加する。好適実施例において、前記芳香族有機化合物は、トルエン(メチルベンゼン、トルオール及びフェニルメタンとしても知られている)、エチルベンゼン(エチルベンゾール、フェニルエタン、及びEBとしても知られている)、又はクメン(イソプロピルベンゼン、1−メチルエチルベンゼン又は2−フェニルプロパン)としても知られている)である。
【0019】
メチルリチウム溶液を、メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)を含有する芳香族液中のリチウム分散液から作製され、前記リチウムの分散液に液体又は気体状のクロロメタンを添加してリチウムと反応させ、それによってメチルリチウムを形成する。前記MeTHFは、メチルリチウムに対して、2〜4当量、好ましくは、2当量以上4当量以下の割合で含まれる。
【0020】
驚くべきことに、MeTHF製剤は、対応するTHF製剤よりも安定的であることがわかった。
【0021】
前記最初のリチウム分散液は、好ましくは、リチウムとオプションとしての別の金属、例えば、ナトリウムを、不活性有機液体中に溶解させ、この混合物を攪拌し分散液を形成することによって作られる。前記不活性有機液体は、好ましくはC5〜C10、更に好ましくはC7〜C8のn−アルカンである。最も好ましくは、ヘプタン、ヘキサン及びシクロヘキサンである。
【0022】
図4を参照すると、前記装置の二つの主要容器は、分散液容器100と交換タンク200である。リチウム金属、そして、添加される場合にはリチウム金属とナトリウム金属との所望の混合物が、内部雰囲気を維持するべく閉じることが可能な固体入口供給部2を介して、分散器100に投入される。好ましくは、前記分散液容器100は、気体入口3を介して提供される不活性ガス、例えば、アルゴン雰囲気を維持するべく密封される。分散液容器に前記金属が投入された後、固体入口供給部2は閉じられ、前記交換タンク200から分散器100への溶媒濾過の完了時に、存在する蒸気を排出可能とするべくベントライン4を開放する。
【0023】
例えば、交換タンク200に対して不活性ガス圧を付与して、不活性有機液体1を交換タンク200の皿5から分散器100へと吹き戻すことによって前のバッチから再循環させ、適量の不活性有機液体1を分散器100に加える。交換タンク200の前のバッチ由来の不活性有機液体(図4中にAで示す)の全部が分散器100に濾過して戻されることを確認するべく、投入口2を通して分散器100をチェックする。もしも量が不十分である場合には、追加量の不活性有機液体7を加える。前記リチウムと他の金属の分散を補助するべく分散剤8を添加する。レイコールドケミカル(Reichold Chemical)から市販されている精製アマニ油(製品コード144491−00及びCAS番号8001−26−1)等のアマニ油が好適な分散剤である。このレイコールド(Reichold)製品の仕様品目と範囲は、0.0〜6.0のガードナー色度、0.0〜0.3の酸価−NV、25℃での比重0.926〜0.930である。好ましくは、前記金属を含む、前記分散液の総重量に対する分散剤の重量比は、0.25〜0.3%である。次に、分散容器100を閉じ、ベントライン4を閉じ、アルゴン又はその他の不活性ガスをガス入り口3を介して供給する。好ましくは、10〜20psigの不活性ガスが供給される。
【0024】
分散器100を、温度コントローラ18によって制御された加熱/冷却システム9、好ましくはオイルシステムを介して、約華氏390度若しくは前記1つ又は複数の金属の融点にまで加熱する。この点において、ヘプタンが使用される場合には、内部圧は約180psigである。所望の温度に到達すると、分散液攪拌機10を始動して、前記溶融されたリチウム及びオプション溶融金属を分散させる。好適な攪拌機(モータ、フレーム、軸、シール及びブレード)は、モアハウスカウルス(Morehouse Cowles Inc )10 D カウレスディソルバー(CowlessDissolver)である。前記ブレードのパーツ番号は、モアハウスカウルス図面4−55435−Bから判断してB07A00である。好適なブレードは下記の特徴を有する:歯の外側エッジから歯の外側エッジに亘って測定された最大径が7 1/4インチ、18歯、半分上向き、半分下向き。各歯は、1 1/4インチ長で、外側エッジの深さが3/8インチである。各歯は、ブレード円の接線から30度の角度を有する。ブレードは、分散器100の上方から見て、反時計方向に回転する。各歯の外側エッジは垂れ下がって(trails)いる。上述したものが好適ではあるが、望ましい平均径5〜60ミクロンを有するリチウム分散液を作り出すことが可能なすべての入手可能な攪拌機を使用することができる。
【0025】
投入された材料が金属の融点に達した後、前記攪拌機を低速、例えば、約1,425rpmで始動する。リチウムとオプションとしてのナトリウムとの全部が溶解されたことが確認されると、分散攪拌機10を比較的高速、例えば、3,450rpm以上、に切り換えて、強いせん断攪拌力を発生させ前記分散液を形成する。これは、概して、数分間、例えば、3分間〜5分間かかる。次に、加熱/冷却システム9を調節して、分散液を冷却し、攪拌を停止する。分散液は、好ましくは、約華氏140度にまで冷却され、これによって分散され溶融された粒子を固化させる。オプションとして、ここで、低速と高速との両方で攪拌を再度行い、交換タンク200に移送する前に分散液が確実に均一に混合されるようにしてもよい。次に、分散液を、分散器100の加圧によって、移送管11を介して移送する。移送後、移送が完了するまで、分散器100と移送管11とを介して溶媒濯ぎ7を行う(“tail”)。その後、分散攪拌機10を停止する。
【0026】
次に、ろ過又は選別17を開始し、今や球体又は回転楕円体(spheroid)となった前記金属を、前記不活性有機液体/分散剤から分離する。これは、例えば、不活性ガス、例えば、アルゴンで交換タンク200に圧力6を加えることによって行われる。ろ過が完了すると、交換タンク100にアルゴン圧6を加えることによって、前記分散液を形成する前記不活性有機液体と同じもの又は異なったものとすることが可能な所望量の第2不活性有機液体で、前記リチウムナトリウム混合物を濯ぐ。そして、前記混合物を交換タンク攪拌機13によって攪拌して、前記固形物を新たな有機液体中において再懸濁する。通常、前記第2有機液体はヘキサンである。攪拌13後、前記濯ぎ溶媒を溶媒回収処理へとろ過(「選別」)14する。次に、分散された金属混合物を、利用可能な溶媒ポンプを始動し、前記所望量の第2不活性有機液体12を交換タンク内に計量することによって交換タンク中にリパルピング(repulped)し、攪拌13する。今や前記第2有機液体によって濯がれた分散金属を、加圧された不活性ガスを入口6を介して交換タンクに加えて交換タンク200を加圧することによって、第2移送管15を介して反応器300へと移送する。前記移送ラインをきれいにして、完全な移送を確保するために、前記第2有機液体の溶媒フラッシュ12を行う。次に、次の量の第1リチウム分散液を分散器100から受け取る準備のために、交換タンク200をライン16を介して減圧する。
【0027】
反応器300において、前記クロロメタンがリチウム分散液に添加され、メチルリチウムが生じる。塩化メチルは24℃の温度以上では気体であるので、クロロメタンは、前記反応器に気体として投入して、前記リチウム分散液/芳香族/MeTHF混合物の表面に接触させることができ、或いは、クロロメタンを冷却して液体として前記混合物に添加することも可能である。
【0028】
クロロメタンは、作り出されるMeLi当量当たりMeTHFが2〜4当量となるような量で添加される。好ましくは2当量以上4当量以下、より好ましくは2.1〜3当量のMeLiが存在する。
【0029】
前記反応を補助するべく触媒を加えることができる。前記反応を促進するべく、適当な温度、圧力及びその他の操作パラメータが提供されるが、これらは、望まれる反応物質及び最終製品に応じて異なるものとなる。
【0030】
気体状のクロロメタンが使用される場合には、運転パラメータは、1〜10気体(atmosphere)、好ましくは1〜5気体(atmosphere)のクロロメタンが使用され、酸素又は大気中水分と生成物が反応を防止するために不活性ガスも導入される。
【0031】
液体状のクロロメタンが使用される場合には、気体状のクロロメタンを液化装置に導入し、クロロメタンが液化する温度にまで冷却する。例えば、約−40℃で十分である。次に、液体クロロメタンを前記リチウム金属/MeTHF/芳香溶媒混合物に添加し、反応させMeLiを形成させる。反応は発熱性であるので、反応容器を冷却することによって温度を制御することが好ましい。
【0032】
好適な芳香有機溶媒としては、トルエン、クメン、エチルベンゼンがあるが、クメンが特に好ましい。
【0033】
この結果得られる溶液は、MeLiと、2〜4当量のMeTHFと、芳香溶媒と、副産物又は使用される場合にはナトリウムとを含んだものとなる。好ましくは、2当量のMeTHFが前記製剤中に使用される。というのは、これらは概して3又は4当量の製剤よりも安定しているからである。
【0034】
得られる生成物は、好ましくは、H NMRによる測定で、40℃で30日間の保存後において、出発時のMeLiの約5〜6%以下を分解によって失うのに対して、前記MeTHFがTHFによって置換された場合に対応する組成物では14%である。
【0035】
1.好適なリチウム分散液
本発明の前記リチウム分散液は、リチウムと、オプションとしての別の金属、例えば、ナトリウムとを、不活性有機液体中に溶解させ、この混合物を攪拌して前記分散液を形成することによって作成される。前記不活性有機液体は、好ましくは、C5〜C10のn−アルカン、好ましくは、C7〜C8である。ヘプタン、ヘキサン及びシクロヘキサンが最も好ましい。
【0036】
図4を参照すると、前記装置の二つの主要容器は、分散液容器100と交換タンク200である。リチウム金属とナトリウム金属との所望の混合物が、内部雰囲気を維持するべく閉じることが可能な固体入口供給部2を介して分散器100に投入される。好ましくは、前記分散液容器100は、気体入口3を介して提供される不活性ガス、例えば、アルゴン雰囲気を維持するべく密封される。分散液容器に前記金属が投入された後、固体入口供給部2は閉じられ、前記交換タンク200から分散器100への溶媒フィルタリングの完了時に、存在する蒸気を排出可能とするべくベントライン4を開放する。
【0037】
例えば、交換タンク200に対して不活性ガス圧を付与して、不活性有機液体1を交換タンク200の皿5から分散器100へと吹き戻すことによって前のバッチから再循環させ、適量の不活性有機液体1を分散器100に加える。交換タンク200の前のバッチ由来の不活性有機液体(図4中にAで示す)の全部が分散器100に濾過して戻されることを確認するべく、投入口2を通して分散器100をチェックする。もしも量が不十分である場合には、追加量の不活性有機液体7を加える。前記リチウムと他の金属の分散を補助するべく分散剤8を添加する。レイコールドケミカル(Reichold Chemical)から市販されている精製アマニ油(製品コード144491−00及びCAS番号8001−26−1)等のアマニ油が好適な分散剤である。このレイコールド製品の仕様品目と範囲は、0.0〜6.0のガードナー色度、0.0〜0.3の酸価−NV、25℃での比重0.926〜0.930である。好ましくは、前記金属を含む、前記分散液の総重量に対する分散剤の重量比は、0.25〜0.3%である。次に、分散容器100を閉じ、ベントライン4を閉じ、アルゴン又はその他の不活性ガスをガス入り口3を介して供給する。好ましくは、10〜20psigの不活性ガスが供給される。
【0038】
分散器100を、温度コントローラ18によって制御された加熱/冷却システム9、好ましくはオイルシステムを介して、約華氏390度若しくは前記1つ又は複数の金属の融点にまで加熱する。この点において、ヘプタンが使用される場合には、内部圧は約180psigである。所望の温度に到達すると、分散液攪拌機10を始動して、前記溶融されたリチウム及びオプション溶融金属を分散させる。好適な攪拌機(モータ、フレーム、軸、シール及びブレード)は、モアハウスカウレス(Morehouse Cowles Inc) 10 D カウレスディソルバ(CowlessDissolver)ある。前記ブレードのパーツ番号は、モアハウスカウレス図面4−55435−Bから判断してB07A00である。好適なブレードは下記の特徴を有する:歯の外側エッジから歯の外側エッジに亘って測定された最大径が7 1/4インチ、18歯、半分上向き、半分下向き。各歯は、1 1/4インチ長で、外側エッジの深さが3/8インチである。各歯は、ブレード円の接線から30度の角度を有する。ブレードは、分散器100の上方から見て、反時計方向に回転する。各歯の外側エッジは垂れ下がって(trails)いる。上述したものが好適ではあるが、望ましい平均径5〜60ミクロンを有するリチウム分散液を作り出すことが可能なすべての入手可能な攪拌機を使用することができる。
【0039】
投入された材料が金属の融点に達した後、前記攪拌機を低速、例えば、約1,425rpmで始動する。リチウムとオプションとしてのナトリウムとの全部が溶解されたことが確認されると、分散攪拌機10を比較的高速、例えば、3,450rpm以上、に切り換えて、強いせん断攪拌力を発生させ前記分散液を形成する。これは、概して、数分間、例えば、3分間〜5分間かかる。次に、加熱/冷却システム9を調節して、分散液を冷却し、攪拌を停止する。分散液は、好ましくは、約華氏140度にまで冷却され、これによって分散され溶融された粒子を固化させる。オプションとして、ここで、低速と高速との両方で攪拌を再度行い、交換タンク200に移送する前に分散液が確実に均一に混合されるようにしてもよい。次に、分散液を、分散器100の加圧によって、移送管11を介して移送する。移送後、移送が完了するまで、分散器100と移送管11とを介して溶媒濯ぎ7を行う。その後、分散攪拌機10を停止する。
【0040】
次に、ろ過又は選別17を開始し、今や球体又は回転楕円体となった前記金属を、前記不活性有機液体/分散剤から分離する。これは、例えば、不活性ガス、例えば、アルゴンで交換タンク200に圧力6を加えることによって行われる。ろ過が完了すると、交換タンク100にアルゴン圧6を加えることによって、前記分散液を形成する前記不活性有機液体と同じもの又は異なったものとすることが可能な所望量の第2不活性有機液体で、前記リチウムナトリウム混合物を濯ぐ。そして、前記混合物を交換タンク攪拌機13によって攪拌して、前記固形物を新たな有機液体中において再懸濁する。通常、前記第2有機液体はヘキサンである。攪拌13後、前記濯ぎ溶媒を溶媒回収処理へとろ過14する。次に、分散された金属混合物を、利用可能な溶媒ポンプを始動し、前記所望量の第2不活性有機液体12を交換タンク内に計量することによって交換タンク中にリパルピング(repulped)し、攪拌13する。今や前記第2有機液体によって濯がれた分散金属を、加圧された不活性ガスを入口6を介して交換タンクに加えて交換タンク200を加圧することによって、第2移送管15を介して反応器300へと移送する。前記移送ラインをきれいにして、完全な移送を確保するために、前記第2有機液体の溶媒フラッシュ12を行う。次に、次の量の第1リチウム分散液を分散器100から受け取る準備のために、交換タンク200をライン16を介して減圧する。
【0041】
反応器300において、所望の有機反応物、通常は、ハロゲン化アルキルが前記リチウム分散液に添加されて、前記所望の有機リチウム最終製品が形成される。例えば、メチルリチウムが望まれる場合には、クロロメタンが添加される。前記反応を補助するべく触媒を加えることができる。前記反応を促進するべく、適当な温度、圧力及びその他の操作パラメータが提供されるが、これらは、望まれる反応物質及び最終製品に応じて異なるものとなる。例えば、ブチルリチウムを作成するには、50℃の反応温度、0〜20psigの圧力が好ましい。
【0042】
前記リチウムアルキル製品は、その後、反応容器の後にフィルタ容器を使用することによって回収することができる。残りの部分は、再処理のために、溶媒、残りのリチウム、ナトリウム及び塩素を回収して、リサイクルすることができる。
【0043】
尚、本発明の目的のためには、前記リチウム粒子は完全に球形である必要はなく、その形状において名目的に球状であればよいが、卵形の粒子も形成される。
【実施例1】
【0044】
リチウム分散液を、様々な比率のリチウムとナトリウムで作成する。
例1(a〜d)
前記リチウム又はリチウムナトリウム分散液を使用して、本発明のメチルリチウム分散液の好適実施例を作ることができる。それらは、又、他のアルキルリチウム製品を作るためにも使用することができ、例えば、ヘキサン中のn−ブチルリチウム(NBH)を生産するために使用される分散液は下記の通りである。
【0045】
次の量の原料を分散器に投入する。
リチウム 66 lbs
ナトリウム 55 lbs
分散器内で使用されるヘプタン 70ガロン又は385 lbs
アマニ油 1,500ml又は3.04 lbs
【0046】
分散器を、前記金属を溶融するのに十分な温度にまで加熱する。攪拌を約1425rpmの速度で開始し、3450rpmまで増速して、コールター(Coulter) LS230レーザ回折装置をケロシンと使用した測定で10〜60ミクロンの平均径のリチウム及びナトリウム小滴を有する分散液を作成する。アマニ油の量は、70ガロンのヘプタンの全部が未使用のヘプタンである場合に使用される量を表す。
【0047】
前記分散液を作成するために使用されるヘプタンの大半は、前の分散液バッチから供給される。通常、65ガロンのヘプタンが、選別されて戻され、約5ガロンが蒸発で失われ、その差を埋め合わせるために5ガロン(未使用ヘプタン)が追加される。ヘプタンがリサイクルされる場合、通常、僅か750mlのアマニ油が使用される。アマニ油の重量を計算するには、上述した数字を使用する。最適には、この例では、前記分散器内の全質量の0.61wt%がアマニ油である。
【0048】
上に示したアマニ油の量は、70ガロンのヘプタンの全部が未使用ヘプタンである場合に使用される量を表す。但し、分散液を作るのに使用される前記ヘプタンの大半が、交換タンクに向かって移送された前のバッチの分散液から選別され/濾過され戻されたたものである場合(通常、65ガロンのヘプタンが濾過されて戻され、約5ガロンが気化されて失われる)、前記所望量を提供するためには、通常、5ガロンの未使用ヘプタンを前記分散器に添加することが必要となる。通常の状態である、ヘプタンがリサイクルされる場合は、いくらかのアマニ油が濾過されたヘプタン中に既に含まれているので、僅かに750mlのアマニ油しか使用されない。即ち、分散液中のアマニ油の濃度は、分散器中の総質量の約0.60wt%であるべきであることが判った。但し、これは可変であり、好ましくは、0.5〜1.0wt%である。使用されるアマニ油の量は、ナトリウムに対するリチウムの比率、使用される溶媒、その他当業者に知られている要因を含む多くの要因に応じて異なるものとなる。
【0049】
次に、前記分散液を、交換タンクに移し、ここで、前記ヘプタン/アマニ油を金属球体及び回転楕円体から除去し、金属をヘキサンで洗浄し、次に、約50ガロンのヘキサン中で再懸濁する。次に、前記ヘキサン/リチウム分散液を使用してアルキルリチウム製品を作る。分散器1〜5は同じであるが、生産フローを改善するために追加提供される。
【実施例2】
【0050】
例2(a〜d)
シクロヘキサン中のn−ブチルリチウム(NBC)を製造するために使用される分散液は下記のように作成される。
【0051】
次の量の成分を分散器に投入する。
リチウム 72 lbs
ナトリウム 40 lbs
分散器中に使用されるヘプタン 70ガロン又は385 lbs
アマニ油 1,500ml又は3.04 lbs
【0052】
アマニ油の量、ヘプタンの選別/濾過及び再利用、並びに、分散器に使用される攪拌の温度及び速度は例1と同じである。
【0053】
次に、前記分散液を、交換タンクに移し、ここで、前記ヘプタン/アマニ油を金属球体及び回転楕円体から除去し、金属をシクロヘキサンで洗浄し、次に、約50ガロンのシクロヘキサン中で再懸濁する。次に、前記ヘキサン/リチウム分散液を使用してアルキルリチウム製品を作る。
【実施例3】
【0054】
例3(a〜d)
シクロヘキサン中のsec−ブチルリチウム(SEC)を製造するために使用される分散液は下記のように作成される。
【0055】
次の量の成分を分散器に投入する。
リチウム 36 lbs
ナトリウム 51 lbs
分散器中に使用されるヘプタン 70ガロン又は385 lbs
アマニ油 1,500ml又は3.04 lbs
【0056】
アマニ油の量、ヘプタンの選別/濾過及び再利用、分散器に使用される攪拌の温度及び速度は例1と同じである。
【0057】
次に、前記分散液を、交換タンクに移し、ここで、前記ヘプタン/アマニ油を金属球体及び回転楕円体から除去し、金属をシクロヘキサンで洗浄し、次に、約50ガロンのシクロヘキサン中で再懸濁する。次に、前記シクロヘキサン/リチウム分散液を使用してアルキルリチウム製品を作る。
【0058】
例1,2及び3において作成されたリチウム分散液は、前記第2有機液体として、シクロヘキサン又はヘキサンを使用して作成された。リチウム粒子の平均粒子径を、コールター(Coulter) LS230レーザ回折装置をケロシンと使用して測定した。
【0059】
サンプルを、下記の粒子径分析用に作成する。
a)機材
18Gのニードルを取り付け、アルゴンでフラッシュされた1−10mLの注射器
20Gのニードルを取り付け、2mLのケロシンを含有するアルゴンでフラッシュされた1−10mLの注射器
長いニードルを取り付け、5mLのヘキサンを含有するアルゴンでフラッシュされた1−10mLの注射器
テフロンO−リングとガスケットとを取り付け、乾燥された、1−ステンレス鋼のフィルタホルダ
乾燥された、1−0.4μmのナイロンフィルタ
蓋又は隔壁を備えた、乾燥された複数の3−9.5ドラムバイアル(ヘキサン、超音波処理、廃棄)
ゴム隔壁、移送ピペット
【0060】
b)実験
0.2mLのサンプルを、18Gニードルを取り付けた1−mLの注射器に引き込む。次に、約2.5 mLの乾燥ヘキサンを前記注射器に引き込む。前記サンプル/ヘキサン混合物を、ステンレス鋼フィルタホルダ内の0.4ミクロンナイロンフィルタを通して濾過する。半分を乾燥ヘキサン、半分を乾燥アルゴンで充填した10mLの注射器を使用してヘキサンとアルゴンとをサンプルに強制通過させる。2mLの乾燥ケロシンと8mLの乾燥アルゴンとを充填した10mLの注射器を使用してフィルタホルダ中のサンプルをケロシンとアルゴンとで洗浄する。約1mLのアルゴンが注射器中に残る。フィルタホルダを開放して、テフロンO−リングを取り除く。フィルタを取りはずし、約7〜10mLの乾燥ケロシンを有する9.5ドラムバイアルに投入する。3滴のAerosol-OTS表面活性剤を添加し、前記サンプルを10分間超音波処理する。前記フィルタをガラスビンからピンセットで取り出し、サンプルを更に10分間超音波処理する。サンプルの超音波処理が完了すると、サンプル全体を、約5秒間粒径分析計に入れ、次に、ポンプを止める。連続で3つのランを行うべきである。これらのランが完了した後、サンプルを粒径分析計から濯ぎだす。データをFraunhofferモデルで分析する。
12種類の分散液の粒子径分析の要約を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
図1a〜図3dは、前記12種類の分散液の粒子径グラフと顕微鏡写真図を含む。
【0063】
図5Aは、74.8lbのLiと33.0lbのNaとを使用した本発明によって作成されたリチウム/ナトリウムのSEMである。図5Bは、図5Aに図示された小滴のナトリウムドットマップである。
【0064】
図6Aは、74.2 lbのLiと33.4 lbのNaとを使用した本発明によって作成されたリチウム/ナトリウムのSEMである。図6Bは、図6Aに図示された小滴のナトリウムドットマップである。図5と図6のサンプルにおいて、顕微鏡写真図とドットマップとは、同じ各サンプルに対して同じサンプルチャンバ中において行われた。顕微鏡写真図は、ケンブリッジ(Cambridge) 240SEMによって記録され、ビットマップフォーマットで記憶された。分散液を乾燥ヘキサン中で希釈し、それを銀注射器を装備したフィルタを通して通過させ、残留溶媒を気化させるためにアルゴンで清浄することによって、SEM用の分散液を調製した。前記SEMチャンバを、アルゴンで戻し充填し、サンプルをサンプルチャンバの前部に取り付けたアルゴングローブバッグを通してチャンバに移した。
【0065】
本発明において、前記ナトリウム成分の全部又は一部に代えて、ここに記載の処理温度でリチウムと固体へテロ分散液を形成するカリウム等のその他の金属を使用することができる。
【0066】
2.好適メチルリチウム化合物と方法の例
表2は、作成され分析された一連のMeLi溶液を示す。
【0067】
【表2】

【0068】
表の1行目は、使用された三種類の芳香族溶媒、トルエン、エチルベンゼン、クメン、を純MeTHF中で行われた反応と共に示している。第1列は、二つのエーテル成分、Me−THFとTHFとを含んでいる。第1行目と列との間の交差部は作成されたMeLi製剤を表している。例えば、Me−THFとトルエンとを使用した溶液中において、MeLi当量当たり2, 3及び4当量のMe−THFで製剤が作成された。MeLi濃度を2.8〜3.9%に維持するように芳香族成分の量を調節した。各製剤は、15℃と40℃とで保持され、15日目と30日目とに評価された。
【0069】
対照を、THFとトルエン、そしてTHFとクメンで行ったが、MeLi当量当たり2当量のTHFを含む製剤のみを作成し評価した。これらの対照も、15℃と40℃とで保持され、15日目と30日目とに評価された。
【0070】
これらの溶液を作成するために使用された一般的実験法は、以下の通りである。各MeTHF/芳香族対に対する最初の工程は、600mlのストック溶液の作成であった。このストック溶液は、3.8%のMeLiの通常濃度を有し、1:16のMeLi対MeTHF比を有するものであった。
【0071】
すべてのガラス容器はオーブン乾燥され、高温で組み立てられ、冷却中、アルゴンでパージされた。
【0072】
磁気攪拌棒を備え正のアルゴン圧状態にある1リットル容の三つ首丸底フラスコに、温度計と、デュアー液化器を頂部に取り付けたジャケット付き125ml容の添加漏斗とを取り付けた。前記フラスコに、計算された量の芳香族溶媒(アルドリッチケミカル(Aldrich Chemical))と、リチウム分散液(5%ナトリウム)と、2−メチルテトラヒドロフラン(アルドリッチ(Aldrich))とを投入した。前記ジャケット付き漏斗と液化器を、ドライアイス−イソプロパノールスラーリで−40℃以下に維持した。クロロメタンを、鋼シリンダ(99.5+%,アルドリッチ(Aldrich))からブラス調整器を介して液化器に導入した。所定量のクロロメタンを、液化し前記添加漏斗中で収集した。前記フラスコの内容物を室温状態にして、攪拌と添加漏斗からのクロロメタンの滴下添加とによって反応を開始させた。反応は、溶液温度の上昇によって示されるようにほとんど即座に始まる。反応の温度を、イソプロパノール/ドライアイス浴を使用して、40〜45℃に制御した。H NMRを使用して反応をモニタした。添加時間は約1時間であった。反応が完了したと判断された後、混合物を圧力フィルタに移した。LiClをアルゴン圧を使用して生成物から濾過した。
【0073】
このストック溶液から、1:2,1:3及び1:4のMeLi対MeTHF比率の製剤を、H NMRによる測定で適量のMeTHFを添加することによって、作成した。各製剤について、2.8〜3.0%の範囲のMeLi溶液を提供するように芳香族担体溶媒を添加することによって最終濃度調節を行った。二つの対照、THF/トルエンとTHF/クメン、更に、純MeTHFを、同じ一般的手順を使用して作成した。但し、複数の製剤が必要とされないことから、最終濃度調節のみが必要であった。
【0074】
特定の製剤が完了すると、それを、TFEライニングされた蓋を備える、6つの、オーブン乾燥、アルゴン−清浄、1オンスQorpack Clear Boston Roundsに移した。三つのビンを、15±0.2℃の浴に入れ、三つを40±0.2℃の浴に入れた。
【0075】
例1において作成したサンプルを、15日目と30日目とにモニタした。各サンプルは、分析のために一回だけ使用された。通常、アルキルリチウム化合物の安定性の研究には、ギルマン(Gilman)複滴定法又は今日利用可能な多くの直接滴定法のいずれか、によって炭素結合リチウムの損失を測定する以上のことはほとんど必要ではない。分析法として滴定は、MeLi用として不適当であることが判った。というのは、芳香族化合物が、MeLiがエーテル成分と反応する経路に加えて、MeLi分解のための第2の経路を提供するからである。
【0076】
例えば、前記THF/トルエン製剤は、少なくとも次の二つの分解経路に沿うものと考えられる。
【0077】
【化2】

【0078】
滴定法では、MeLiとベンジルリチウムとを識別することができない。なぜなら、これらは共に、炭素結合リチウムを有するからである。しかし、H NMRは、前記二つのリチウム種間を容易に識別することができる。従って、滴定を全ての製剤に行ったが、安定性はH NMRデータに基づくべきである。
【0079】
特定の理論に限定されるものではないが、芳香物質のリチオ化は、主としてベンジル位で起こるので、下に示すようにこの位置での置換を増加することによって安定性を増加することが期待されると考えられる。
【0080】
【化3】

【0081】
従って、エーテル化合物としてMeTHFを使用した溶液は、芳香族担体溶媒が使用されることとは独立して、THFを含むものよりも安定的であるはずである。下記のデータはこのことを確認するものである。メチル基は、2位の水素を立体障害するだけでなく、それは、更に、5位のメタレーションに対して、2−リチオ−2−メチルテトラヒドロフランを不安定化する。従って、メタレーションは、主に5位で起こる。
【0082】
表3のデータは、15℃で保存されたサンプルのものである。NMRデータは、各サンプルの各項目の一行目にある。
【0083】
【表3】

【0084】
NMR測定における相対誤差は約5%である。最初よりも高い最終濃度を有するサンプルは、この範囲の誤差に含まれ、無視できる分解を受けたものと解釈することができる。一般に、表3から、15℃は、低すぎる温度であり、いくらの当量のMeTHFが使用されたかに拘わらず、クメン又はエチルベンゼンを使用した製剤間の区別が出来ないということが理解される。クメンと2当量のTHFとを使用した対照も、30日間に渡るテストで活性の損失を示さなかった。
【0085】
トルエンを使用した全ての製剤は分解を示した。しかしながら、トルエンと2当量のMeTHFと、トルエンと2当量のTHFの対照サンプルとの間でほとんど差は観察されなかった。それらの相対的安定性は、この低い保存温度と30日間のテスト期間において同じであった。
【0086】
最後に、前記純MeTHFサンプルは、トルエン製剤に類似の分解を示した。
【0087】
前記15℃のデータと対照的に、40℃では加速された分解速度となり、それによって、非常にクリアな系統だった結果が得られた。40℃のデータを、表4に示す。但し、その結果はグラフ形態のほうがより良く理解される。
【0088】
【表4】

【0089】
図7は、前記各芳香族溶媒中の2,3及び4当量のMeTHFの、MeLiの一日当たりの平均損失量を示すグラフである。トルエン中に所与量のMeTHFを含む溶液よりも安定性の高いエチルベンゼン中に所与量のMeTHFを含む溶液よりも、クメン中に所与量のMeTHFを含む溶液の方が、安定性が高いことが明白である。更に、4当量のMeTHFを含む所与の芳香族溶液よりも安定性の高い3当量のMeTHFを含む所与の芳香族溶液よりも、2当量のMeTHFを含む所与の芳香族溶液の方が安定性が高い。これらの結果を総合すると、2当量のMeTHFを含むクメンが最も安定性が高く、一方、4当量のMeTHFを含むトルエン溶液がこの特定のエーテルを使用した製剤中最も安定性が低い。
【0090】
図8は、MeTHFとTHFとの間の劇的な差を示すグラフである。このグラフは、40℃において、THFの製剤が、MeTHFを含有する製剤の二倍以上の一日当たりのMeLi損失量を有するものであることを明白に示している。単一金属製剤の場合、MeTHFは、THFよりも大幅な安定性の向上を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1a〜1dは、本発明による分散液のリチウムおよび/又はナトリウム金属粒子の粒子径トレースと走査型電子顕微鏡写真図(SEM)であって、対応例に関連している(例えば、図1aは例1aに対応、等)。
【図2】図2a〜2dは、本発明による分散液のリチウムおよび/又はナトリウム金属粒子の粒子径トレースと走査型電子顕微鏡写真図(SEM)であって、対応例に関連している。
【図3】図3a〜3dは、本発明による分散液のリチウムおよび/又はナトリウム金属粒子の粒子径トレースと走査型電子顕微鏡写真図(SEM)であって、対応例に関連している。
【図4】本発明の装置の詳細を示す処理流れ図である。
【図5】図5A(左)は、本発明によって作成された分散液からのナトリウム/リチウム小滴のSEMである。図5B(右)は、図5Aに図示されている大きな液滴のナトリウムドットマップである。
【図6】図6A(左)は、本発明によって作成された分散液からのナトリウム/リチウム小滴の別のサンプルのSEMである。図6B(右)は、図6Aに図示されているそれらの液滴のナトリウムドットマップである。
【図7】種々の芳香族有機溶媒中の種々のMeTHF当量での、MeLi/MeTHF損失/日を示すグラフである。
【図8】THF及びMeTHFの組み合わせにおける、MeLi損失/日を示すグラフである。
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】

【図2a】

【図2b】

【図2c】

【図2d】

【図3a】

【図3b】

【図3c】

【図3d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルリチウムと、芳香族溶媒と、メチルリチウム1モル当たり2〜4当量のMeTHFとを含むメチルリチウム溶液。
【請求項2】
2〜4当量のMeTHFを含む請求項1に記載のメチルリチウム溶液。
【請求項3】
40℃での30日間の保存後において、H NMRスペクトル観測の測定で、前記溶液中に、元の量のメチルリチウムに対して、94wt%以上のメチルリチウムが残存している請求項1に記載のメチルリチウム溶液。
【請求項4】
40℃での30日間の保存後において、H NMRスペクトル観測の測定で、前記溶液中に、元の量のメチルリチウムに対して、94wt%以上のメチルリチウムが残存している請求項2に記載のメチルリチウム溶液。
【請求項5】
2.1〜4当量のMeTHFを有する請求項1に記載のメチルリチウム溶液。
【請求項6】
リチウム金属とメチルテトラヒドロフランと芳香族溶媒とを含む混合物を作成する工程と、クロロメタンを添加して前記リチウムと反応させる工程とを有し、
ここにおいて、前記反応によって生成するMeLi 1当量につき、2〜4当量のメチルテトラヒドロフランが存在するメチルリチウムの製造方法。

【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−513080(P2007−513080A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539480(P2006−539480)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/031211
【国際公開番号】WO2005/047415
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506153837)ケメタル・フット・コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】