説明

メッシュデータ検索システム

【課題】本願発明の課題は、対象地形を細密に表現するためにメッシュサイズを小さくしてメッシュ量を多くした場合であっても、検索時間を短縮することのできるメッシュデータ検索システムを提供することにある。
【解決手段】本願発明のメッシュデータ検索システムは、タイルデータと位置入力手段と指定位置に対応するメッシュデータを検索する検索手段を備え、検索手段は、指定位置の平面位置情報とタイルデータの範囲条件に基づいて対象タイルデータを検出し、さらに対象タイルデータ内のメッシュデータの中からメッシュデータの平面位置情報と指定位置の平面位置情報に基づいて対象メッシュデータを検索するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、比較的広い範囲の中から任意地点の情報を取得する技術に関するものであり、より具体的には、メッシュデータの集合から目的のメッシュデータを速やかに検索するメッシュデータ検索システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地方によって風土が異なり、地域ごとに人口が異なるように、場所に関連する(紐づく)情報は多い。また、風土や人口のように比較的広い区域に紐づく情報に限らず、市町村や学校区、あるいは地価や降雨量など、中〜小区域に紐づく情報も多々ある。特に地盤高(標高)は、点単位でその値が異なることから、極めて小さい区域に紐づく情報であるといえる。
【0003】
これら場所(位置)に紐づく情報を、広い範囲にわたって整備する場合、大量の情報を整備しなければならない。例えば、日本全国を対象に「小学校区」という情報を整備する場合、10万件を超える情報(小学校区)を整備する必要がある。したがって、整備された情報の中から目的の情報を探す際には、10万件の情報から検索することとなる。そこで通常は、位置情報とともにこれに紐づく情報(例えば小学校区)を整備し、位置を指定することで目的の情報を取得できるようにするのが一般的である。
【0004】
位置情報とともにこれに紐づくデータを整備する手法については、国土地理院を筆頭とする地理情報に関する研究の進歩が大きく貢献しており、さらに、位置情報を手掛かりとして大量のデータから目的の情報を検索する技術については、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)などソフトウェアの進化が大きく貢献している。そのため、位置情報とともにこれに紐づくデータを大量に整備し、GISなどのソフトウェアを利用してデータ検索を行うという技術は、急速に広まり現在では一般的な技術として広く普及している。
【0005】
一方、航空レーザー計測の出現など地形を計測する手法が著しく高度化したことから、容易に大量の標高データを取得できるようになった。この航空レーザー計測は、計測したい地形の上空を航空機で飛行し、飛行中に地形に対して照射したレーザーの反射を受けて計測するものであり、地形を表す情報として無数の点群データを密に取得することができるわけである。標高データは、土木や建築における建設工事計画をはじめ、昨今では、内水・外水氾濫や津波による浸水シミュレーションで用いられ、あるいは自動車の自動走行に利用されるなど、多種多様に利用できる極めて有益なデータである。
【0006】
前述したように、標高データも位置情報に紐づく情報であり、位置情報とともに整備すると便宜である。しかしながら、航空レーザー計測で取得した無数の点群データをそのまま利用することは現実的ではない。なぜなら、無数のデータを格納するため、あるいは無数のデータから検索するため、これを実行するコンピュータが特殊かつ高価なものとなるからである。
【0007】
そこで、無数の点群データを用いる場合、対象地形をモデル化するのが一般的である。なお、このモデル化の代表的なものとしてはDEM(Digital Elevation Model)やDSM(Digital Surface Model)が挙げられる。モデル化にあたっては、図1に示すように、対象範囲を格子状に分割し、分割単位(メッシュ)ごとに代表的な平面座標(X,Y)と標高値(Z)を持たせるのが一般的である。
【0008】
対象地形をモデル化する際、当然ながら、メッシュの大きさ(メッシュサイズ)を小さくするほど、対象地形を細密に表現することができる。その反面、メッシュサイズを小さくするほど情報量が多くなり、すなわち大量の情報から検索するために、検索時間が極めて長くなる。例えば、図1のようなメッシュを構成した場合、図9に示すようにすべてのメッシュについてメッシュIDと所定の情報(図では座標や属性)が付与されてレコード(図では1行に相当する情報の集まり)が形成され、さらに全レコード(図では0001〜N)を集めた1つのデータ集合(ファイルやデータベース)が構築される。そして、位置を指定して検索する際には図9のデータ集合が読み込まれ、図10に示す検索イメージのように、指定した位置情報と各メッシュとを一つ一つ照合していき、最後に最適のメッシュが検索結果として抽出される。このように、メッシュサイズが小さいほど、つまりメッシュの数が多いほど、検索時間は長くなるのである。
【0009】
そこで特許文献1では、地図(図形)表示の例ではあるが、検索効率を良くし、検索時間を短縮する手法について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−77328
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1は、従来ではすべてのレイヤが同じメッシュサイズ(分割数)であったところ、レイヤごとにそのレイヤの性格に応じて分割数(メッシュサイズ)を変えたことが特徴である。これにより、従来に比べると、検索効率は向上し、すなわち検索時間は短縮される。
【0012】
しかしながら特許文献1は、レイヤ間の相対的な関係に着目して改善されたものであって、根本的に検索時間の改善を図ったものではないといえる。つまり、特許文献1で例示されている道路レイヤが大量なメッシュで構成されている場合、特許文献1の手法では検索時間を短縮させることはできない。
【0013】
本願発明の課題は、特許文献1をはじめ従来技術が抱えていた問題、つまり、大量のメッシュで構成された場合に検索時間が長くなるという問題を解決することであり、すなわち、対象地形を細密に表現するためにメッシュサイズを小さくしてメッシュ量を多くした場合であっても、検索時間を短縮することのできるメッシュデータ検索システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明のメッシュデータ検索システムは、所定領域を分割した複数のメッシュデータの中から、目的のメッシュデータを検索するシステムにおいて、タイルデータと、指定位置を入力する位置入力手段と、目的のメッシュデータを検索する検索手段と、を備え、前記タイルデータは、前記所定領域を複数に分割した分割範囲を表すものであって、2以上の前記メッシュデータで構成されるとともに、該分割範囲はその範囲を特定する範囲条件が設定され、前記メッシュデータは、該メッシュを特定する平面位置情報を具備するものであり、前記検索手段は、前記位置入力手段によって入力された前記指定位置の平面位置情報と、前記タイルデータが具備する前記範囲条件と、に基づいて、複数の前記タイルデータの中から前記指定位置を含む対象タイルデータを検出し、さらに前記検索手段は、メッシュデータを特定する平面位置情報と、前記指定位置の平面位置情報と、に基づいて、前記対象タイルデータを構成する前記メッシュデータの中から、前記指定位置に対応する対象メッシュデータを検索するものである。
【0015】
本願発明のメッシュデータ検索システムは、前記タイルデータの分割範囲を特定する範囲条件が経度又はX座標の最大値と最小値で構成される第1条件と緯度又はY座標の最大値と最小値で構成される第2条件からなり、前記検索手段が前記指定位置の平面位置情報と前記第1条件とに基づいて、複数の前記タイルデータの中から候補タイルデータを検出し、さらに前記検索手段は、前記指定位置の平面位置情報と前記第2条件とに基づいて、前記候補タイルデータの中から対象タイルデータを検出するものとすることもできる。
【0016】
本願発明のメッシュデータ検索システムは、前記タイルデータの分割範囲を特定する範囲条件が経度又はX座標の最大値と最小値で構成される第1条件と緯度又はY座標の最大値と最小値で構成される第2条件からなり、前記検索手段が前記指定位置の平面位置情報と前記第2条件とに基づいて、複数の前記タイルデータの中から候補タイルデータを検出し、さらに前記検索手段は、前記指定位置の平面位置情報と前記第1条件とに基づいて、前記候補タイルデータの中から対象タイルデータを検出するものとすることもできる。
【0017】
本願発明のメッシュデータ検索システムは、属性情報抽出機能を備えるとともに、前記メッシュデータが該メッシュに関連する属性情報を具備し、前記属性情報抽出機能が前記検索手段で検索された前記対象メッシュデータの属性情報を抽出するものとすることもできる。
【0018】
本願発明のメッシュデータ検索システムは、前記属性情報が標高値、又は/及び前記所定領域内で試算された浸水深であるものとすることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明のメッシュデータ検索システムには、次のような効果がある。
(1)位置を指定するだけで、その位置に関連する情報が取得されるので、検索操作が分かりやすくかつ容易である。
(2)所定領域を大きく分割したタイルデータの中から該当する対象タイルデータを検出し、この対象タイルデータ内のメッシュデータに対してのみ検索すればよいので、所定領域が大量のメッシュでカバーされる場合であっても、所定領域内すべてのメッシュデータを検索する必要がなく、その結果、検索時間を飛躍的に短縮することができる。
(3)従来のように大量のメッシュ情報を1つのファイル(あるいはデータベース)で管理せず、タイルデータ単位で複数のファイル(あるいはデータベース)を管理するので、ファイル等の異常時におけるリスクを分散することができる。(一部に異常が生じても、すべてのメッシュ情報が破壊されない)
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明のメッシュデータ検索システムで利用されるメッシュデータの概念を説明するモデル図。
【図2】メッシュデータに振られるメッシュIDを説明するためのモデル図。
【図3】メッシュデータの詳細を示す説明図。
【図4】タイルデータに振られるタイルIDを説明するためのモデル図。
【図5】それぞれの分割範囲の範囲条件を説明するモデル図。
【図6】属性情報として標高値と浸水深をモニタ表示した状態を示す説明図。
【図7】本願発明のメッシュデータ検索システムの流れの一例(前半部)を示すフロー図。
【図8】本願発明のメッシュデータ検索システムの流れの一例(後半部)を示すフロー図。
【図9】従来のメッシュデータの構造を示すモデル図。
【図10】従来のメッシュデータを検索するイメージを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明のメッシュデータ検索システムの実施形態の例を図に基づいて説明する。
【0022】
(全体概要)
図1は、本願発明のメッシュデータ検索システムで利用されるメッシュデータの概念を説明するモデル図である。メッシュデータは、メッシュデータ検索システムが対象とする所定領域2を、格子状に細分化して得られる1区画(以下、「メッシュ1」という。)を表すデータである。言い換えると、所定領域2の全体範囲をカバーするように、多数のメッシュデータが構築される。なお、所定領域3は、平面的な広がりを持つ範囲を意味するものであり、例えば、都道府県や市といった地域を所定領域3として挙げることができる。もちろんこれに限らず、街区や遊園地等の施設といった比較的狭い範囲や、関東地方や九州地方などのように広い範囲を所定領域3とすることもできる。
【0023】
メッシュデータは、所定領域2を細分化して得られたメッシュ1を代表するデータであって、後述するように代表座標や属性情報を有するものであり、必ずしもメッシュ1を特定する情報(その範囲や面積、図形など)を備える必要はない(もちろん備えてもよい)。さらに、図1では所定領域2が略正方格子状に区切られてメッシュ形状が略正方形となっているが、これに限らず、長方形やひし形、あるいは長円形など任意のメッシュ形状とすることが可能で、それぞれのメッシュ1の形状や大きさを変えることもできる。
【0024】
このように、所定領域2をカバーするためには極めて多数のメッシュデータが構築される。本願発明のメッシュデータ検索システムは、これら多数のメッシュデータ群の中から、容易かつ迅速に目的のメッシュデータを検索するものである。具体的には、位置入力手段で目的とする位置を指定すると、検索手段がその位置情報に基づいて該当するメッシュデータを検索し、ユーザに対してその結果を提供するのである。なお、結果を提供するための表示手段を設けることもできる。
【0025】
以下、要素ごとに詳述する。
【0026】
(メッシュデータ)
メッシュデータは、前述したとおり所定領域2を細分化して得られた「メッシュ1」を代表するデータである。所定領域2より小さいエリアであるこのメッシュ1が形成されれば、細分化する手法については様々な手法を採用することができる。ここでは、メッシュデータの作成手法として、DEMを利用した手法を例に挙げて説明する。
【0027】
まずはDEMについて説明する。DEMとは、地表面の形状である地形を数値モデル化したもので一般的には格子モデルである。DEMは、地表面の緯度経度又は平面座標(X,Y)と標高値(Z)を有する点の集合(いわゆる点群データ)として形成され、点群データが密であるほど正確に原地形を再現することができる。この点群データは、航空レーザー計測によって取得することができる。もちろん、航空レーザー計測によるほか、ステレオの航空写真や衛星写真を基に三次元の空間情報をもつ点群データを生成してもよいし、直接現地を測量して三次元の空間情報をもつ点群データを取得してもよい。
【0028】
航空レーザー計測によって取得される点群データは、ランダムに計測されたレーザー計測点の集合にすぎず、DEMは以下の手順で作成される。すなわち、レーザー計測点が配点された上に、所定間隔(例えば2mや5m)に配置された複数のグリッド(例えば正方格子)を被せる。この正方格子で区切られることにより格子点が生成され、多数の四角形(DEMメッシュ)が形成される。このDEMメッシュには一つの代表点が設けられるが、その代表点の位置はDEMメッシュの中心としたり、あるいはDEMメッシュのうち右上隅の格子点としたり、その他状況に応じて適宜設計することができる。
【0029】
レーザー計測点の三次元座標(X,Y,Z)を基に、DEMメッシュ代表点の平面座標(X,Y)と標高値(Z)を算出し、DEMを完成させる。この算出方法は、レーザー計測点から不整三角網より高さを求めるTIN(Triangulated Irregular Network)による補間法のほか、最も近いレーザー計測点を採用する最近隣法(Nearest Neibor)や、逆距離加重法(IWD)、Kriging法、平均法など種々の方法が採用される。
【0030】
次にメッシュデータの作成手法について説明する。上記のようにして作成されたDEMを構成するメッシュ1を表すデータとしてメッシュデータを作成する。図2は、メッシュデータに振られるメッシュIDを説明するためのモデル図である。この図の左側に示すように、所定領域2に対してDEMを作成すると、この所定領域2全体を覆うように多数のメッシュ1が配置される。図2左側に示す「a部」を拡大したものが図2の右側であり、この図に示すように、メッシュ1一つ一つに対して「メッシュID」が設けられる。メッシュIDは、所定領域2内のすべてのメッシュデータに対してユニークな(唯一の、固有の)、あるいは後述するタイルデータ内のすべてのメッシュデータに対してユニークな番号であれば、任意の採番方法を採ることができる。
【0031】
メッシュ1に対してメッシュIDが振られると、一つの平面位置情報が設けられる。なおここでいう「平面位置情報」とは、平面直角座標系における座標(X,Y)と緯度経度を含む概念であり、すなわち座標(X,Y)あるいは緯度経度によって平面上に特定される位置のことである。図3は、メッシュデータの詳細を示す説明図である。この図に示すように、一つのメッシュデータ(図では表中の1行)は、メッシュIDと平面位置情報(図ではX座標とY座標)によって構成される。また、これに加えて、標高やその他の主題情報を属性情報として備えることもできる。DEMを利用した場合、前記したDEMメッシュの代表点の平面座標(X,Y)を、メッシュデータの平面位置情報として採用することができる。同様に、メッシュデータとして標高を備える場合、DEMメッシュ代表点の標高値(Z)を採用することができる。
【0032】
このようにしてメッシュデータが作成され、これが所定領域2内にあるすべてのメッシュ1に対して行われる。
【0033】
(タイルデータ)
作成された多数のメッシュデータは、一つ一つ個別に利用されるのではなく、ある程度の数のメッシュデータをまとめたファイルあるいはデータベース(以下、ファイルやデータベース等を総称して「ファイル等」という。)として利用される。メッシュデータの束をまとめたファイル等が、すなわちタイルデータである。
【0034】
図4は、タイルデータに振られるタイルIDを説明するためのモデル図である。なお、図4左側の「b部」を拡大したものが図4の右側である。この図に示すように所定領域2内は、複数の範囲に分割(以下、この分割された範囲を「分割範囲3」という。)される。そして、この分割範囲3を表すものとしてタイルデータが作成される。分割範囲3はその範囲内に複数のメッシュ1を有し、また、所定領域2には複数の分割範囲3が作成される。言い換えれば、分割範囲3は複数のメッシュ1で構成され、複数の分割範囲3によって所定領域2全体がカバーされる。分割範囲3の形状及びサイズは、所定領域2内ですべて同じとしてもよいし、図4に示すようにそれぞれ異なるものとしてもよい。例えば、所定領域2が50km×50km程度の範囲とすれば、分割範囲3は3km×4km程度とすることができる。
【0035】
分割範囲3一つ一つに対して「タイルID」が設けられる(図4右側)。タイルIDは、所定領域2内のすべてのタイルデータに対してユニークな番号であれば、任意の採番方法を採ることができる。そして、分割範囲3内にあるすべてのメッシュデータをまとめて一つのファイル等としたものが、タイルデータである(図3)。なお、図3に示す「T001、T105、Tn」はそれぞれファイルIDである。
【0036】
図5は、それぞれの分割範囲3の範囲条件を説明するモデル図である。分割範囲3には、範囲条件が設定される。この範囲条件は、分割範囲3の範囲を特定するものであって、例えば、図4に示すタイルIDがT105の分割範囲3で説明すれば、左端のX座標と右端のX座標、及び上端のY座標と下端のY座標(あるいは経度)によって設定される。つまり、左端X座標を最小値とし右側X座標を最大値とし、同じく下端Y座標を最小値とし上側Y座標を最大値とすれば、それぞれの最小値と最大値の間にあることを条件に、この分割範囲3(T105)を特定することができる。もちろん、座標に代えて緯度経度を用いることができるのは言うまでもない。
【0037】
(位置入力手段)
メッシュデータ検索システムのユーザが、所定領域2内にある特定位置に関する情報を求める場合、その特定位置を指定することになる。この位置を指定する手段が、位置入力手段である。この位置の指定方法は、平面位置情報(座標や緯度経度)を直接入力することもできるが、所定領域2に相当する背景地図を用意し、その地図上で目的とする位置を指定(クリック操作)させると操作が容易で好適である。位置入力手段で目的とする位置(指定位置)が指定されると、その指定位置の平面位置情報が取得され、記憶される。
【0038】
(検索手段)
検索手段は、位置入力手段で入力された指定位置の平面位置情報に応じたメッシュデータを検索するものである。このとき、2段階の検索を経て、目的のメッシュデータを選出する。なお便宜上、メッシュデータ検索システムのユーザが目的としている、つまり指定位置に対応するメッシュデータを「対象メッシュデータ」という。以下、具体的に説明する。
【0039】
第1段階では、まず対象メッシュデータを含むタイルデータ(以下、「対象タイルデータ」という。)を検索する。そのため、指定位置の平面位置情報と分割範囲3の範囲条件とを照合する。すなわち、指定位置の平面位置情報が、分割範囲3の範囲条件に適合すればその指定位置はその分割範囲3内に存在するということであり、その分割範囲3に相当するタイルデータは対象メッシュデータを含む対象タイルデータということである。
【0040】
対象タイルデータの検出にあたっては、指定位置の平面位置情報が、図5に示すX座標最小値(Xmin)とX座標最大値(Xmax)の間であって、且つ、Y座標最小値(Ymin)とY座標最大値(Ymax)の間である、という判定を行って検出する。すなわち、指定位置の平面位置情報を(Xt,Yt)とすると、以下の条件式を示すことができる。
第1条件 Xmin ≦ Xt ≦ Xmax
第2条件 Ymin ≦ Xt ≦ Ymax
【0041】
指定位置の平面位置情報(Xt,Yt)を基準に、分割範囲3ごとに第1条件と第2条件で照合していき、両条件に適合した分割範囲3を見つけた時点で検出を終え、この分割範囲3に相当するタイルデータを対象タイルデータとして抽出する。
【0042】
あるいは、指定位置の平面位置情報のうちXtを基準に、まずは分割範囲3ごとに第1条件で照合していき、第1条件に適合した分割範囲3に相当するタイルデータを「候補タイルデータ」としてピックアップしていく。この時点では、通常、「候補タイルデータ」は複数ピックアップされる。次に、これら複数の「候補タイルデータ」に相当する分割範囲3に対して、指定位置の平面位置情報のうちYtを基準に、第2条件で照合していき、この条件に適合した分割範囲3を見つけた時点で照合を終え、この分割範囲3に相当するタイルデータを対象タイルデータとして抽出する。
【0043】
もちろん、上記とは逆で、第2条件で候補タイルデータをピックアップしていき、第1条件で対象タイルデータを抽出することもできる。
【0044】
検索手段による検索の第2段階では、検出された対象タイルデータに含まれるメッシュデータの中から対象メッシュデータを検索する。ここでは、所定領域2内すべてのメッシュデータに対して検索するのではなく、あくまで対象タイルデータに含まれるメッシュデータを候補として検索するので、検索に要する時間が極めて短縮されることになる。
【0045】
具体的には、指定位置の平面位置情報(Xt,Yt)を基準に、各メッシュデータに対して、メッシュデータが有する平面位置情報と照合していき、最も適合したと判断されたメッシュデータを対象メッシュデータとして抽出する。この場合、指定位置の平面位置情報に最も近接する平面位置情報を有するメッシュデータを対象メッシュデータとして抽出することができる。なお近接判断に当たっては、座標間の差分二乗和で判断するなど、従来から用いられている手法を採用することができる。
【0046】
そのほか、メッシュデータが有する平面位置情報が、規則的である場合(例えばX,Y両座標とも2m間隔である場合)、あらかじめ指定位置の平面位置情報をその規則に合った最も近傍点に転換したうえで、各メッシュデータの平面位置情報と照合することもできる。
【0047】
(表示手段)
表示手段は、指定位置を入力したユーザに対して、対象メッシュデータの属性情報を、モニタ等を通じて提示するものである。この属性情報としては、図3に示す標高値Zの情報のほか、住所や土地利用状況、地価、人口など種々の情報が例示できる。あるいは、その場所に関連する文書ファイルや、写真、地図を表示するための図形を、属性情報として提示することもできる。整備された属性情報は、すべて表示手段によって提示させることもできるが、属性情報抽出機能が示すべき属性情報を抽出したうえで提示させることもできる。
【0048】
図6では、属性情報として標高値Zと浸水深hをモニタ表示している。この浸水深hは、予め内水・外水氾濫や津波による浸水シミュレーションを行った結果を、各メッシュデータに割り当てたものである。このように、メッシュデータごとに属性情報を整備することで、様々な情報をユーザに提示することができる。
【0049】
(フロー)
本願発明のメッシュデータ検索システムで実行する、指定位置の入力〜属性情報の表示といった一連の流れの一例を図7と図8に基づいて説明する。
【0050】
ユーザが、位置入力手段によって、属性情報を所望する位置を入力する(S02)。このとき、モニタ上には所定領域2に相当する背景地図が表示されており、目的とする位置をマウスにてクリックする。指定位置が入力されると、指定位置の平面座標(Xt,Yt)が取得されて記憶される。
【0051】
次に、検索手段が、指定位置の平面座標(Xt,Yt)のうちXtを基準に、所定領域2内すべての分割範囲3に対して、第1条件(X座標条件)で繰り返し照合していく(S03〜S04)。第1条件に適合した分割範囲3に相当するタイルデータは、「候補タイルデータ」として次々に記憶されていく(S05)。すべての分割範囲3の照合判断が終了すると(S06)、次のステップに移る。
【0052】
検出された候補タイルデータに相当する分割範囲3に対して、指定位置の平面座標のうちYtを基準に、第2条件(Y座標条件)で照合していく(S07〜S08)。この第2条件に適合した分割範囲3を見つけた時点で照合を終え、この分割範囲3に相当するタイルデータを対象タイルデータとして抽出し、次のステップに移る(S09)。
【0053】
指定位置の平面座標(Xt,Yt)を基準に、対象タイルデータに含まれるメッシュデータに対して、メッシュデータが有する平面座標(Xn,Yn)と照合していく。具体的には、指定位置の平面座標(Xt,Yt)とメッシュデータの平面座標(Xn,Yn)との較差(座標差の2乗和)を算出し(S10)、これを対象タイルデータに含まれるすべてのメッシュデータに対して実行する(S11)。そして、座標の較差が最小となるものを対象メッシュデータとして抽出して(S12)決定する(S13)。
【0054】
最後に、属性情報抽出機能が示すべき対象メッシュデータの属性情報を抽出し(S14)、表示手段によってこの属性情報をモニタに表示する(S15)。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本願発明のメッシュデータ検索システムは、標高や浸水深を抽出する場合に限らず、位置情報に紐づくあらゆる情報を抽出する場合に利用することができる。なお、所定領域は必ずしも格子状などに分割する必要はなく、平面位置情報を具備するメッシュデータの集合であれば任意の構成とすることができる。また、本願発明のメッシュデータ検索システムは、必ずしも背景地図やGISを必要とするものではなく、独自のあるいは汎用のソフトウェアを使用することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 メッシュ
2 所定領域
3 分割範囲
h 浸水深
Z 標高値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域を分割した複数のメッシュデータの中から、目的のメッシュデータを検索するシステムにおいて、
タイルデータと、指定位置を入力する位置入力手段と、目的のメッシュデータを検索する検索手段と、を備え、
前記タイルデータは、前記所定領域を複数に分割した分割範囲を表すものであって、2以上の前記メッシュデータで構成されるとともに、該分割範囲はその範囲を特定する範囲条件が設定され、
前記メッシュデータは、該メッシュを特定する平面位置情報を具備するものであり、
前記検索手段は、前記位置入力手段によって入力された前記指定位置の平面位置情報と、前記タイルデータが具備する前記範囲条件と、に基づいて、複数の前記タイルデータの中から前記指定位置を含む対象タイルデータを検出し、
さらに前記検索手段は、メッシュデータを特定する平面位置情報と、前記指定位置の平面位置情報と、に基づいて、前記対象タイルデータを構成する前記メッシュデータの中から、前記指定位置に対応する対象メッシュデータを検索する、ことを特徴とするメッシュデータ検索システム。
【請求項2】
前記タイルデータの分割範囲を特定する範囲条件は、経度又はX座標の最大値と最小値で構成される第1条件と、緯度又はY座標の最大値と最小値で構成される第2条件と、からなり、
前記検索手段は、前記指定位置の平面位置情報と前記第1条件とに基づいて、複数の前記タイルデータの中から候補タイルデータを検出し、
さらに前記検索手段は、前記指定位置の平面位置情報と前記第2条件とに基づいて、前記候補タイルデータの中から対象タイルデータを検出する、ことを特徴とする請求項1記載のメッシュデータ検索システム。
【請求項3】
前記タイルデータの分割範囲を特定する範囲条件は、経度又はX座標の最大値と最小値で構成される第1条件と、緯度又はY座標の最大値と最小値で構成される第2条件と、からなり、
前記検索手段は、前記指定位置の平面位置情報と前記第2条件とに基づいて、複数の前記タイルデータの中から候補タイルデータを検出し、
さらに前記検索手段は、前記指定位置の平面位置情報と前記第1条件とに基づいて、前記候補タイルデータの中から対象タイルデータを検出する、ことを特徴とする請求項1記載のメッシュデータ検索システム。
【請求項4】
属性情報抽出機能を備えるとともに、前記メッシュデータは該メッシュに関連する属性情報を具備し、
前記属性情報抽出機能は、前記検索手段で検索された前記対象メッシュデータの属性情報を抽出する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のメッシュデータ検索システム。
【請求項5】
前記属性情報が、標高値、又は/及び前記所定領域内で試算された浸水深、であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のメッシュデータ検索システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−37416(P2013−37416A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170695(P2011−170695)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(390023249)国際航業株式会社 (55)