説明

メディア処理装置及びその電源制御方法

【課題】メディア処理装置内に情報資産が書き込まれた作成済みメディアを残存させた状態でセキュリティシステムが解除されることを防止し、情報資産を保護する。
【解決手段】メディアに対して少なくともデータの書き込み処理を行うメディア処理装置1において、メディアの搬送処理を制御するための基板であって、メディア処理装置1の電源55のオン/オフを切り替えるための電源スイッチ56が接続されたオートローダ基板52と、作成済メディアMの保管状態を管理するための基板であって、電源55が接続されたジョブ管理基板50と、を備え、オートローダ基板52は、電源スイッチ56をオフする信号が入力されるとジョブ管理基板50へオフ通知を送信し、ジョブ管理基板50は、オフ通知に応じて作成済みメディアMが保管されていないと判定した場合に、電源55をオフする処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メディアに対して少なくともデータの書き込み処理を行うメディア処理装置及びその電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データが記録されていないコンパクトディスクなどのメディアにデータを記録するメディア処理装置が知られている。メディア処理装置は、メディアにデータを記録する少なくとも1つのドライブ、メディアに適正に記録が行なわれたかどうかを検査する検査装置、メディアの記録面の裏側に貼着されているレーベル面に印刷処理を行なうプリンタ、メディアを保管する各種スタッカ、及びメディアを上記の各装置間で搬送する搬送装置等を具備した構成となっている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、企業などの組織では一般にLANなどのネットワークが構築され、ネットワークには管理サーバおよび多数台のクライアントPC、プリンタなどの出力端末が接続されている。かかるネットワークのユーザは、クライアントPCを用いて各種の文書、図形などの作成、編集を行うことができる。また、作成データを当該クライアントPCの内蔵メモリに保管して管理し、あるいは、CD、DVDなどの可搬型の外部記録媒体に書き込むこともできる。
【0004】
特許文献1に記載したメディア処理装置をネットワークに接続すれば作成データをメディアに記録することもできる。記録されたメディアは、ユーザがメディア処理装置の前面の扉を開けばスタッカから容易に取り出すことができる。このため、作成データが機密度の高い情報資産であっても、容易にメディアに記録された情報資産を取得することができる。通常、機密度の高い情報資産が記録されたディスクは厳重な管理が必要であり、容易に取り出すことができないよう管理する必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開2000−260172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メディアの管理方法としては、例えば前面の扉に鍵を設け、外部排出の際にID・パスワード等で識別認証を行い、認証に成功した場合だけ開錠できるようなセキュリティシステムが考えられる。通常、ID・パスワード等で識別認証するセキュリティシステムは電源が供給されている間は作動しているが、電源がオフされるとセキュリティシステムは解除されてしまう。例えば、物理的な電源スイッチでハード的に電源のオン/オフを行う場合には、スイッチがオフされると無条件にセキュリティシステムが解除されてしまう。したがって、機密度の高い作成メディアをスタッカに残したまま電源スイッチがオフされる可能性がある。この場合、識別認証を行わずとも作成メディアを取り出すことができてしまう。また、複数の人が使用している場合、他の人の使用中にも拘らず電源をオフしてしまうことがある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、メディア処理装置内に情報資産が書き込まれた作成済みメディアを残存させた状態でセキュリティシステムが解除されることを防止し、処理中(書き込み中、搬送中)のものを含む情報資産を保護することができるメディア処理装置及びメディア処理装置の電源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明は、メディアに対してデータの書き込み処理を行う書き込み部と前記メディアの搬送を行う搬送部と電源と、
前記書き込み部と前記搬送部を制御するための基板であって、前記電源のオン/オフを切り替えるための電源スイッチが接続された搬送制御基板と、
前記メディアの状態を管理するための基板であって、前記電源をオフすることが可能な管理基板と、を備え、
前記搬送制御基板は、前記電源スイッチがオフされると前記管理基板へオフ通知を送信し、前記管理基板は、前記オフ通知に応じて、少なくとも前記メディアの処理中(書き込み中または搬送中)ではないと判定した場合または書き込み済みメディアが保管されていないと判定した場合に、前記電源をオフする処理を実行することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、電源スイッチは搬送制御基板に接続され、電源は管理基板にオフ可能に接続されている。つまり、電源スイッチと電源をオフするものとは別基板に接続されているので、電源スイッチをオフしても、直ちに電源がオフされることはない。また、電源が接続された管理基板は、少なくともメディアの処理中ではないと判定した場合または書き込み済みのメディアが保管されていないと判定した場合に電源をオフする。すなわち、メディア処理装置内に処理中または書き込み済みメディアが保管された状態では電源がオフされることがない。このため、ID・パスワード等で識別認証を行ってから開錠する等のセキュリティシステムが維持されるので正当なメディア作成者以外の者に書き込み済みメディアを入手されることを防止することができる。すなわち、処理中または書き込み済みメディアを第3者が取り出すことはできない。
【0010】
また、上記メディア処理装置において、前記書き込み済みメディアが排出される排出部を備え、
前記管理基板は、前記搬送部による前記書き込み済みメディアの搬送処理の実行中に、前記オフ通知を受信した場合は、排出対象となっている前記書き込み済みメディアを前記排出部まで搬送する処理が終了した後に前記電源をオフする処理を実行することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、排出対象となっている書き込み済みメディアを排出する処理が終了するまで電源がオフされることがない。例えば、書き込み済みメディアが複数枚積層されたスタッカから、特定のメディアだけを排出したい場合は、特定のメディアの上に重なっている他のメディアを搬送制御基板が1枚ずつ取り出して他のスタッカへ移動させ、特定のメディアだけを排出部へ排出する。そして、先に移動させておいた他のメディアを元のスタッカへ戻す、という一連の搬送処理を実行する必要がある。本発明によれば、このような場合は一連の搬送処理が終了するまで、電源がオフされないため、書き込み済みメディアの積層順が入れ替わってしまうことを防止することができ、書き込み済みメディアが正常に排出されることを保証することができる。
【0012】
また、上記メディア処理装置において、前記メディア処理装置は、コンピュータと通信可能に接続されており、
前記管理基板は、前記コンピュータからのデータ受信中に、前記オフ通知を受信した場合は、前記データ受信が終了した後に前記電源をオフする処理を実行することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、データ受信中にオフ通知を受信した場合も、データ受信が終了するまで電源がオフされることがないので、受信中のデータが途切れることを防止することができる。
また、上記メディア処理装置において、前記管理基板は、前記メディアの処理中または前記書き込み済みメディアが保管されているときに、前記オフ通知を受信した場合は、前記メディアの処理が終了した後または前記書き込み済みメディアが無くなった後に、前記電源をオフする処理を実行することを特徴とする。
上記構成によれば、メディアの処理中または前記書き込み済みメディアが保管されているときにオフ通知を受信した場合も、メディアの処理が終了するまで、または書き込み済みメディアが取り出されて無くなるまで、電源がオフされることがないので、メディアの処理が途切れることを防止することができ、書き込み済みメディアが確実に取り出されるまでセキュリティを確保することができる。
また、上記メディア処理装置において、前記メディアを出し入れするためのカバーと、
前記カバーを施錠または解錠するための電子錠を有し、
前記管理基板は、前記電子錠を制御して、前記カバーに対し施錠または解錠することを特徴とする。
例えば、メディア処理装置本体側とカバー側に取り付けたフックが係合することにより施錠できる鍵を構成し、一方のフックをプランジャーなどで電磁的に移動することで、施錠、解錠できる電子錠を構成できる。
メディア処理装置内に、処理中のメディアまたは書き込み済みメディアが保管されているときなど、必要なときに施錠しておくことができる。また、電源がオフしたときに解錠することで、次のメディアを補充するなどができる。このため、第3者に処理中または書き込み済みメディアを取り出されることを防止できる。
また、電源がオフになっているときに、施錠することも可能である。この場合、メディア処理装置内に、処理中のメディアまたは書き込み済みメディアが残っていても、第3者に取り出されることを防止できる。
【0014】
また、上記課題を解決することのできる本発明は、メディアに対してデータの書き込み処理を行う書き込み部と前記メディアの搬送を行う搬送部と電源と、前記書き込み部と前記搬送部を制御するための基板であって、前記電源のオン/オフを切り替えるための電源スイッチが接続された搬送制御基板と、前記メディアの状態を管理するための基板であって、前記電源をオフすることが可能な管理基板と、を備えたメディア処理装置の電源制御方法であって、
前記搬送制御基板が前記電源スイッチがオフされたか否かを判定するステップと、前記電源スイッチがオフされたと判定した場合に、前記管理基板へオフ通知を送信するステップと、前記管理基板が前記オフ通知に応じて、少なくとも前記メディアの処理中ではないと判定するステップ、または書き込み済みメディアが保管されているか否かを判定するステップと、前記書き込み済みメディアが保管されていないと判定した場合に、前記電源をオフする処理を実行するステップと、を有することを特徴とする。
また、前記メディア処理装置は、前記書き込み済みメディアが排出される排出部を備え、
前記管理基板が、前記オフ通知を受信したとき、前記搬送部による前記書き込み済みメディアの搬送処理の実行中であるかを判定するステップと、
前記搬送処理の実行中であると判定した場合には、排出対象となっている前記書き込み済みメディアを前記排出部まで搬送する処理が終了した後に、前記電源をオフする処理を実行するステップと、を有することを特徴とする。
また、前記メディア処理装置は、コンピュータと通信可能に接続されており、
前記管理基板は、前記オフ通知を受信したとき、前記コンピュータからのデータ受信中または前記メディアの処理中であるかを判定するステップと、
前記コンピュータからのデータ受信中または前記メディアの処理中であると判定した場合には、前記データ受信が終了した後または前記メディアの処理が終了した後に、前記電源をオフする処理を実行するステップと、を有することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るメディア処理装置及びその電源制御方法の実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、メディア処理装置の一例として、CDやDVD等の円板状のメディアへのデータの書き込みやメディアのレーベル面への印刷(いずれもデータの書き込み処理)を行うディスクパブリッシャ(以下、「パブリッシャ」という。)を例示して説明する。
【0016】
(パブリッシャの構成について)
図1は本実施形態のパブリッシャの開閉扉を開状態としたときの外観斜視図、図2はパブリッシャのケースを外した状態の前方上側から見た斜視図である。
パブリッシャ1は、例えばCDやDVD等の円板状のメディアへのデータの書き込みやメディアのレーベル面への印刷を行う装置であり、ほぼ直方体形状のケース2を備えている。このケース2の前面には、左右に開閉可能な開閉扉3,4(カバー)が取り付けられている。ケース2の上側左端部には、表示ランプ、操作ボタン等が配列された操作面5が設けられており、また、ケース2の下端には、下方に突出するように載置用の脚部6が左右両側に設けられている。左右の脚部6の間位置には引出機構7が設けられている。
【0017】
正面視右側の開閉扉3は、図1に示すように、パブリッシャ1の前面側の開口部8を開閉するもので、例えば未使用(ブランク)のメディアMを開口部8を介してセットする時、あるいは作成済みのメディアMを、開口部8を介して取り出すときに、開閉する扉である。
また、正面視左側の開閉扉4は、図2に示すプリンタ11のインクカートリッジ12の入れ換え時に開閉するためのものであり、この開閉扉4を開けると、鉛直方向に配列された複数のカートリッジホルダ13を有するカートリッジ装着部14が露出するようになっている。
開閉扉3の端部には扉側フック9が形成され、ケース2には、開閉扉3が閉じたとき、フック9に対応する位置にケース側フック10が形成されており、互いに係合可能となっている。ケース2の内部にはケース側フック10と接続されている不図示のプランジャーが搭載されており、通電することによりケース側フック10を移動でき、扉側フック9に対し係合したり係合を解除したりでき電子錠を構成する。電源オン、オフを含む動作と連動して、この電子錠を施錠、解錠することができる。
【0018】
図2に示すように、パブリッシャ1のケース2の内部には、データ書き込み処理が行われていない複数枚(例えば50枚)の未使用のメディアMをスタック可能なメディア保管部としてのメディアスタッカ21と、複数枚(例えば50枚)の未使用のメディアMあるいは作成済みメディアMが保管されるメディア保管部としてのメディアスタッカ22とが保管されるメディアMの中心軸線が同一となるように上下に配置されている。メディアスタッカ21及びメディアスタッカ22は、それぞれ所定位置に対して着脱自在である。
【0019】
上側のメディアスタッカ21は、左右一対の円弧状の枠板24,25を備えており、これにより、メディアMを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収容可能な構成をなしている。メディアスタッカ21にメディアMを収容あるいは補充する作業は、開閉扉3を開けてメディアスタッカ21を取り出すことにより、簡単に行うことが可能となっている。
【0020】
下側のメディアスタッカ22も同一構造となっており、左右一対の円弧状の枠板27,28を備え、これによって、メディアMを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収容可能なスタッカが構成されている。
【0021】
メディアスタッカ21及びメディアスタッカ22の後側には、メディア搬送機構31が配置されている。メディア搬送機構31(以下では、「オートローダ31」と呼ぶ。)、本体フレーム30とシャーシ32の天板33との間に垂直に架け渡されている垂直ガイド軸35を有している。この垂直ガイド軸35に搬送アーム36が昇降及び旋回可能な状態で支持されている。搬送アーム36は、駆動モータ37によって垂直ガイド軸35に沿って昇降可能であるとともに、垂直ガイド軸35を中心に左右に旋回可能である。
【0022】
上下のスタッカ21,22及びオートローダ31の側方の後方の部位には、上下に積層された2つのメディアドライブ41,41が配置され、これらメディアドライブ41,41の下側にプリンタ11のキャリッジが移動可能に配置されている。
メディアドライブ41は、メディアMへのデータ書き込み位置とメディアMの受け取り受け渡しを行うメディア受け渡し位置との間を移動可能なメディアトレイ41aをそれぞれ有している。
【0023】
また、プリンタ11は、メディアMのレーベル面へ印刷可能な印刷位置とメディアMの受け取り受け渡しを行うメディア受け渡し位置との間を移動可能なメディアトレイ45を有している。
【0024】
図2では、上下のメディアドライブ41のメディアトレイ41aが手前に引き出されてメディア受け渡し位置にある状態及び下側のプリンタ11のメディアトレイ45が手前側のメディア受け渡し位置にある状態が示されている。また、11はインクジェットプリンタであり、インク供給機構60として各色(本実施形態ではブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタの6色)のインクカートリッジ12が用いられ、これらのインクカートリッジ12がカートリッジ装着部14の各カートリッジホルダ13に前方から装着されている。
【0025】
ここで、メディアスタッカ21の左右一対の枠板24,25の間及びメディアスタッカ22の左右一対の枠板27,28の間には、オートローダ31の搬送アーム36が昇降可能な隙間が形成されている。また、これら上下のメディアスタッカ21とメディアスタッカ22との間には、オートローダ31の搬送アーム36が水平に旋回して、メディアスタッカ22の真上に位置できるように隙間が開いている。さらに、両メディアトレイ41aをメディアドライブ41に押し込むと、オートローダ31の搬送アーム36を下降させて、メディア受け渡し位置にあるメディアトレイ45にアクセス可能となっている。
【0026】
オートローダ31の搬送アーム36は、両メディアトレイ41aをデータ書き込み位置に位置させ、メディアトレイ45を奥側の印刷位置に位置させた状態で、メディアトレイ45の高さ位置よりもさらに下側まで下降可能となっている。そして、メディアトレイ45のメディア受け渡し位置の下方には、搬送アーム36がこの位置まで下降してリリースしたメディアMが通過するガイド穴であって、メディアスタッカ(別体スタッカ)が装着されるガイド穴65が形成されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、引出機構7は、本体フレーム30の下側に、本体フレーム30から引き出して開いたり、収納して閉じたりすることが可能な引出トレイ70を有している。引出トレイ70には、スタッカ部71(排出部)が下方に凹んで設けられている。引出トレイ70が収納位置(閉位置)にあるとき、スタッカ部71は、ガイド穴65の下方に位置し、スタッカ部71の中心部は、受け渡し位置にある両メディアトレイ41aとメディアトレイ45の中心軸線が同一となるように位置されている。このスタッカ部71は、ガイド穴65を介して投入されるメディアMを受け入れ、このメディアMを比較的少量(例えば5枚〜10枚程度)だけ収容する。スタッカ部71は、メディアMを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収容可能となっている。
【0028】
収納状態にある引出トレイ70のスタッカ部71及びガイド穴65には、スタッカ部71よりもメディアMの収容量が多いメディアスタッカ(別体スタッカ)72が着脱可能となっている(図2参照)。このメディアスタッカ72も、一対の円弧状の枠板73,74を備えており、これによって、メディアMを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で複数枚(例えば50枚)収容可能となっている。一対の円弧状の枠板73,74の間には、オートローダ31の搬送アーム36が昇降可能な隙間が形成されている。また、一方の枠板74の上部には着脱時にユーザによって把持される取っ手75が設けられている。
【0029】
そして、メディアスタッカ72を取り付けた状態とすれば、下側のメディアスタッカ22から未使用のメディアMを取り出し、メディアドライブ41およびプリンタ11でデータ記録および印刷を行った後に、メディアスタッカ72に収容することができる。
また、例えば、上側のメディアスタッカ21および下側のメディアスタッカ22にそれぞれの最大収容枚数(50枚+50枚)の未使用のメディアMを装填し、下側のメディアスタッカ22の全枚数(50枚)のメディアMを順次処理してメディアスタッカ72に収容し、次に、上側のメディアスタッカ21の全枚数(50枚)のメディアMを順次処理して、空となった下側のメディアスタッカ22に収容する。このようにして、上側のメディアスタッカ21および下側のメディアスタッカ22の最大収容枚数(50枚+50枚)のメディアMを一度に処理する(バッチ処理モード)。
【0030】
また、メディアスタッカ72を取り外した状態とすれば、上側のメディアスタッカ21あるいは下側のメディアスタッカ22から未使用のメディアMを取り出し、メディアドライブ41及びプリンタ11でデータ記録及び印刷を行った後に、収納状態にある引出トレイ70のスタッカ部71に収容することができる。
【0031】
これにより、その後、引出トレイ70を引き出すことでスタッカ部71から処理が完了したメディアMを取り出すことができる。つまり、メディアMへの処理中であっても、開閉扉3を閉じたまま、処理が完了したメディアMから順に1枚ずつあるいは複数枚ずつ取り出すことができる(外部排出モード)。
【0032】
さらに、メディアスタッカ21あるいはメディアスタッカ22の一方に未使用のメディアMを収容しておき、他方に作成済みのメディアMを収容することもできる。すなわち、メディアスタッカ21(あるいはメディアスタッカ22)から未使用のメディアMを取り出し、メディアドライブ41及びプリンタ11でデータ記録及び印刷を行った後に、メディアスタッカ22(あるいはメディアスタッカ21)へ作成済みのメディアMを収容する。
この場合、作成済みメディアMを取り出したい場合は、取り出し対象となっている作成済みメディアMの上に積層されている他のメディアMを別のスタッカへ搬送し、作成済みメディアMのみをスタッカ部71に搬送する。その後、別のスタッカへ搬送された他のメディアMを元のスタッカへ戻す(セキュリティモード)。
【0033】
(メディア処理装置の内部構成について)
次に、メディア処理装置の内部処理について説明する。図3は、メディア処理装置の内部処理を説明するブロック図である。
本実施形態のメディア処理装置1は、複数のクライアントコンピュータ61,62,63とLANなどのネットワークを介して通信可能に接続されており、クライアントコンピュータ61,62,63から送信されるメディア発行ジョブに基づきメディア作成処理を実行する。メディア処理装置1は複数のクライアントコンピュータ61,62,63によって共有されており、複数のユーザが作成したメディア発行ジョブを処理することができるようになっている。
【0034】
図1に示すように、メディア処理装置1は主として、ジョブ管理基板50(管理基板)、ハードディスク51、オートローダ基板52、プリンタ基盤53、ドライブ基板54、電源55、電源スイッチ56及び液晶ディスプレイ(LCD57)を備えている。
ジョブ管理基板50は、クライアントコンピュータ61,62,63から送信されたメディア作成ジョブの管理を行う。複数のメディア作成ジョブの実行や終了を管理したり、メディア作成ジョブの実行・終了状態を各クライアントコンピュータへ報告したりする。例えば、クライアントコンピュータ61のメディア作成ジョブが正常終了したら、クライアントコンピュータ62のメディア作成ジョブを起動するといったジョブ管理を行う。
【0035】
また、ジョブ管理基板50は、作成済みメディアMの各スタッカへの収容位置をハードディスク51内のジョブ管理テーブルによって管理する。例えば、上述したセキュリティモードにおいて、メディアスタッカ22のメディア収容状態を図4に示すようなジョブ管理テーブルによって管理する。
例えば、クライアントコンピュータ61のユーザ(ユーザID:user01,パスワード:0123)が作成したメディア作成ジョブAを受け付けると、ジョブ管理基板50はジョブAの実行を各基板へ指示する。ジョブAが終了するとメディアMのジョブ管理テーブルを更新する。つまり、メディアスタッカ22の第1層目(メディアスタッカ22−1)にジョブAの作成済みメディアMが収容されたことを書き込む。このように、メディア作成ジョブを終了すると、メディア収容位置とユーザ識別情報とを対応付けて保存する。図4では、メディアスタッカ22の第1層目から第5層目まで作成済みメディアMが収容された状態を示している。
【0036】
一方、メディアスタッカ22に収容された作成済みメディアMを取り出す際には、ユーザ識別情報の入力に応じて、識別情報と一致する作成済みメディアMを排出するためのメディア排出ジョブを生成し実行する。例えば、識別情報としてユーザID:user03,パスワード:8901が入力されると、メディアスタッカ22の第3層目と第4層目に収容されている作成済みメディアMをスタッカ部71へ排出するための排出ジョブを生成し実行する。
【0037】
すなわち、排出対象となっているジョブC及びジョブDの作成済みメディアMの上に積層されているジョブEの作成済みメディアMをメディアスタッカ21へ搬送して一時的に待避させ、ジョブC及びジョブDの作成済みメディアMのみをスタッカ部71へ搬送する。そして、メディアスタッカ21へ一時的に待避したジョブEの作成済みメディアMを元のメディアスタッカ22へ戻す。この一連の搬送処理を排出ジョブとして生成し実行する。
排出ジョブが終了すると、図5に示すようにメディア収容位置のうちメディアスタッカ22−3,22−4,22−5を更新する。これにより、メディアスタッカ22−3にはジョブEの作成済みメディアが収容され、メディアスタッカ22−4及びメディアスタッカ22−5が空き状態になる。
【0038】
ジョブ管理基板50には、メディア処理装置1の電源55が接続されており、電源55のオン/オフ制御も行う。例えば、オートローダ基板52から電源オフ通知を受信すると、作成済みメディアMがメディア処理装置内に収容されているか否かを判定する。この判定は、上述したジョブ管理テーブルを参照することによって行う。作成済みメディアMが収容されていないと判定した場合に電源55をオフする処理を実行するよう制御する。
【0039】
また、ジョブ管理基板50は、作成済みメディアMの搬送処理の実行中に、オートローダ基板52から上述したオフ通知を受信した場合は、排出指示の対象となっている作成済みメディアMを、スタッカ部71まで搬送する一連の搬送処理が終了するまで待機し、終了した後に電源55をオフする処理を実行するよう制御する。
さらに、クライアントコンピュータ61,62,63からのデータ受信中に、オートローダ基板52から電源オフ通知を受信した場合は、データ受信が終了するまで待機し、終了した後に電源をオフする処理を実行するよう制御する。
また、ジョブ管理基板50は、プリンタ基板53によるプリンタ11の印刷処理中の場合や、ドライブ基板54によるメディアドライブ41のデータ書き込み処理中に、オートローダ基板52から電源オフ通知を受信した場合は、印刷処理信やデータ書き込み処理が終了するまで待機し、それぞれがあるいは全てが終了した後に電源をオフする処理を実行するよう制御する。なお、これらの処理に、搬送処理も含まれていてもよい。
【0040】
オートローダ基板52は、各ジョブに応じたオートローダ31の搬送処理を制御する。また、オートローダ基板52にはメディア処理装置1の電源55のオン/オフを切り替えるための電源スイッチ56が接続されている。電源スイッチ56をオフする信号が入力されると、ジョブ管理基板50へオフ通知を送信する。
【0041】
プリンタ基板53は、各メディア作成ジョブに基づきプリンタ11の印刷処理を制御する。CD/DVDなどのメディアMのレーベル面にレーベル印刷を行う。
また、ドライブ基板54は、各メディア作成ジョブに基づきメディアドライブ41のデータ書き込み処理を制御する。メディアMのデータ書き込み面にデータを書き込む。
【0042】
LCD57は、メディア処理装置1の各種状態を表示する。本実施形態では、電源スイッチ56によってオフ信号が入力されたが、実際に電源オフ処理が実行できなかった場合に、その旨を表示しユーザに通知する。
【0043】
(メディア処理装置の電源制御方法について)
次に、上述したメディア処理装置の電源制御方法について説明する。図6は、電源制御方法を説明するためのフローチャートである。
本実施形態の電源制御方法は、メディア処理装置1内に作成済みメディアMを残存させた状態で、電源スイッチ56のオフ信号が入力されでも、直ちに電源オフ処理を実行しないよう設定されている。すなわち、情報資産が書き込まれた作成済みメディアMが残存している虞がある間は、電源55をオン状態にしておきセキュリティシステムを維持することによって、正当なメディア作成者以外の者に作成済みメディアを入手されることを防止する。
以下では、セキュリティシステムを維持するために、どのように電源55のオン/オフ処理を制御しているかについて説明する。
【0044】
まず、オートローダ基板52が、電源スイッチ56によって電源55をオフするためのオフ信号の入力を検出すると(ステップS11:Yes)、ジョブ管理基板50に電源スイッチ56が押下された旨のオフ通知を送信する(ステップS12)。
【0045】
ジョブ管理基板50はオフ通知を受信すると、作成済みメディアMがメディアスタッカ21,22、スタッカ部71及び別体スタッカ72に作成済みメディアが収容されているか否かを判定する。上述したように、各スタッカのジョブ管理テーブルを参照することによって、作成済みメディアMが収容されているか否かを判定することができる。収容されていると判定した場合は(ステップS21:Yes)、電源をオフできない旨の通知をオートローダ基板52に返す(ステップS25)。オートローダ基板52は、その通知に応じてLCD57に作成済みメディアMを残したまま電源をオフできない旨の表示を行う。
【0046】
一方、ジョブ管理基板50は各スタッカのジョブ管理テーブルを参照し、作成済みメディアMが収容されていないと判定した場合は(ステップS21:No)、一連の搬送処理を実行中か否かを判定する。すなわち、上述した排出ジョブの実行中であれば(ステップS22:Yes)、電源55をオフできない旨の通知をオートローダ基板52に返し(ステップS25)、排出ジョブが終了するまで待機してから電源オフを実行する。
【0047】
一方、排出ジョブを実行中でなければ(ステップS22:No)、クライアントコンピュータ61,62,63からデータ受信中であるか否かを判定する。データ受信中であれば、電源をオフできない旨の通知をオートローダ基板52に返し(ステップS25)、データ受信が完了するまで待機してから電源オフを実行する。
データ受信中でない場合は(ステップS23:No)、ジョブ管理基板50は電源55のオフ処理を実行する(ステップS24)。
【0048】
なお、ステップS11で電源スイッチ56の押下時間を検出して、オフ通知とともに押下時間を通知してもよい。電源スイッチ56の押下時間に応じて、電源55のオフ処理が実行されるよう設定することができる。例えば、3秒以上押下された旨がジョブ管理基板50に通知された場合は、どのような動作の実行中であっても電源55をオフし強制終了するよう設定することもできる。
このような設定を行った場合でも、電源スイッチ56はオートローダ基板52に接続されているので、押下時間や検出方法の設定変更を容易に行うことができる。
【0049】
上述したように、本実施形態によれば、電源スイッチ56はオートローダ基板52に接続され、電源55はジョブ管理基板50に接続されている。つまり、電源スイッチ56と電源55とは別基板に接続されているので、電源スイッチ56をオン/オフする信号が入力されても直ちに電源がオフされることがない。また、電源が接続された管理基板50は、作成済みのメディアMが保管されていないと判定した場合に電源55をオフする。すなわち、メディア処理装置1内に作成済みメディアMが保管された状態では電源55がオフされることがない。このため、ID・パスワード等で識別認証を行ってから開錠する等のセキュリティシステムが維持されるので正当なメディア作成者以外の者に作成済みメディアを入手されることを防止することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、排出対象となっている作成済みメディアMを排出する一連の搬送処理が終了するまで電源55がオフされることがない。図4に示したように作成済みメディアMが5枚積層されたメディアスタッカ22から、ジョブC及びジョブDの作成メディアMだけを排出したい場合は、その作成済みメディアMの上に重なっているジョブEの作成済みメディアMをオートローダ31が1枚ずつ取り出してメディアスタッカ21へ移動させ、ジョブC及びジョブDの作成済みメディアMだけをスタッカ部71へ排出する。そして、先に移動させておいたジョブEの作成済みメディアMを元のメディアスタッカ22へ戻す、という一連の搬送処理を実行する必要がある。本実施形態によれば、何れかの作成済みメディアMの搬送中に電源55がオフされることがないため、作成済みメディアMの積層順が入れ替わってしまうことを防止することができ、作成済みメディアMが正当なユーザに対して排出されることを保証することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、クライアントコンピュータ61,62,63からのデータ受信中にオートローダ基板52からオフ通知を受信した場合も、データ受信が終了するまで電源55がオフされることがないので、受信中のデータが途切れることを防止し、情報資産を保護することができる。
【0052】
また、本実施形態におけるジョブ管理基板50は、メディア処理装置1用の専用基板である必要はなく、いわゆる一般的なPC基板を採用することができる。したがって、基板作成のコストを削減することができる。また、本実施形態では、ジョブ管理基板50がジョブ管理を行っているため、作成済みメディアMが収容されているか否かの判定をジョブ管理テーブルを参照するだけで行うことができる。したがって、作成済みメディアMの有無を検出するための検出機構を別途設ける必要がなく、また検出処理を行う必要もない。
また、ジョブ管理基板50とオートローダ基板52が共通の基板から成るように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態のパブリッシャの開閉扉を開状態としたときの外観斜視図である。
【図2】パブリッシャのケースを外した状態の前方上側から見た斜視図である。
【図3】本実施形態のメディア処理装置の内部処理を説明するブロック図である。
【図4】本実施形態のメディア処理装置のジョブ管理テーブルの一例である。
【図5】本実施形態のメディア処理装置の更新後のジョブ管理テーブルである。
【図6】本実施形態のメディア処理装置の電源制御方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1:パブリッシャ、50:ジョブ管理基板、51:ハードディスク、52:オートローダ基板、53:プリンタ基板、54:ドライブ基板、55:電源、56:電源スイッチ、57:LCD、61,62,63:クライアントコンピュータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアに対してデータの書き込み処理を行う書き込み部と前記メディアの搬送を行う搬送部と電源と、
前記書き込み部と前記搬送部を制御するための基板であって、前記電源のオン/オフを切り替えるための電源スイッチが接続された搬送制御基板と、
前記メディアの状態を管理するための基板であって、前記電源をオフすることが可能な管理基板と、を備え、
前記搬送制御基板は、前記電源スイッチがオフされると前記管理基板へオフ通知を送信し、
前記管理基板は、前記オフ通知に応じて、少なくとも前記メディアの処理中ではないと判定した場合または書き込み済みメディアが保管されていないと判定した場合に、前記電源をオフする処理を実行することを特徴とするメディア処理装置。
【請求項2】
前記書き込み済みメディアが排出される排出部を備え、
前記管理基板は、前記搬送部による前記書き込み済みメディアの搬送処理の実行中に、前記オフ通知を受信した場合は、排出対象となっている前記書き込み済みメディアを前記排出部まで搬送する処理が終了した後に前記電源をオフする処理を実行することを特徴とする請求項1に記載のメディア処理装置。
【請求項3】
前記メディア処理装置は、コンピュータと通信可能に接続されており、
前記管理基板は、前記コンピュータからのデータ受信中に、前記オフ通知を受信した場合は、前記データ受信が終了した後に前記電源をオフする処理を実行することを特徴とする請求項1または2に記載のメディア処理装置。
【請求項4】
前記管理基板は、前記メディアの処理中または前記書き込み済みメディアが保管されているときに、前記オフ通知を受信した場合は、前記メディアの処理が終了した後または前記書き込み済みメディアが無くなった後に、前記電源をオフする処理を実行することを特徴とする請求項1または2に記載のメディア処理装置。
【請求項5】
前記メディアを出し入れするためのカバーと、
前記カバーを施錠または解錠するための電子錠を有し、
前記管理基板は、前記電子錠を制御して、前記カバーに対し施錠または解錠することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のメディア処理装置。
【請求項6】
メディアに対してデータの書き込み処理を行う書き込み部と前記メディアの搬送を行う搬送部と電源と、
前記書き込み部と前記搬送部を制御するための基板であって、前記電源のオン/オフを切り替えるための電源スイッチが接続された搬送制御基板と、
前記メディアの状態を管理するための基板であって、前記電源をオフすることが可能な管理基板と、を備えたメディア処理装置の電源制御方法であって、
前記搬送制御基板が前記電源スイッチがオフされたか否かを判定するステップと、
前記電源スイッチがオフされたと判定した場合に、前記管理基板へオフ通知を送信するステップと、
前記管理基板が前記オフ通知に応じて、少なくとも前記メディアの処理中ではないと判定するステップ、または書き込み済みメディアが保管されているか否かを判定するステップと、
前記メディアが処理中ではないと判定した場合または前記書き込み済みメディアが保管されていないと判定した場合に、前記電源をオフする処理を実行するステップと、を有することを特徴とするメディア処理装置の電源制御方法。
【請求項7】
前記メディア処理装置は、前記書き込み済みメディアが排出される排出部を備え、
前記管理基板が、前記オフ通知を受信したとき、前記搬送部による前記書き込み済みメディアの搬送処理の実行中であるかを判定するステップと、
前記搬送処理の実行中であると判定した場合には、排出対象となっている前記書き込み済みメディアを前記排出部まで搬送する処理が終了した後に、前記電源をオフする処理を実行するステップと、を有することを特徴とする請求項6に記載のメディア処理装置の電源制御方法。
【請求項8】
前記メディア処理装置は、コンピュータと通信可能に接続されており、
前記管理基板は、前記オフ通知を受信したとき、前記コンピュータからのデータ受信中または前記メディアの処理中であるかを判定するステップと、
前記コンピュータからのデータ受信中または前記メディアの処理中であると判定した場合には、前記データ受信が終了した後または前記メディアの処理が終了した後に、前記電源をオフする処理を実行するステップと、を有することを特徴とする請求項6または7に記載のメディア処理装置の電源制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−86613(P2010−86613A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255521(P2008−255521)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)