説明

メントール含有麺類の製造方法

【課題】麺類にメントールを添加する場合、添加量の少ないメントールを均一に配合する方法を提供することである。
【解決手段】メントール含有麺類の製造方法において、メントールを水和工程及び/又は混捏工程で添加することを特徴とするメントール含有麺類の製造方法である。メントールの添加はメントールをエタノール又は45℃以上の湯又は油で溶解し行う。メントールの添加量は穀粉100質量部に対して0.0001〜1質量部が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メントール含有麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の風味等の改良を図るため、メントールを添加することが知られている。
例えば、だったんそば粉とバインダーとを含み粒状に成形したそば粉食品において、清涼剤としてメントールを添加することが知られている(例えば特許文献1参照)。
また澱粉と着香料とを水等で練り合わせて糊化し、その糊化物を所定形状に成形した後、その成形物を乾燥することにより得られる澱粉食品において着香料として、メントールなどを主成分とするペパーミントを使用することが知られている(例えば特許文献2参照)。
さらに、ハーブ及び/又はその処理物を含有することを特徴とするヒト又は動物用の老化防止食品において、ハーブ成分としてメントール、老化防止食品として麺類が知られている(例えば特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−78692号公報
【特許文献2】特開2001−252030号公報
【特許文献3】特開2004−2237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
麺類にメントールを添加する場合、メントールの添加量は少量であり、均一に配合するのは困難であった。
したがって、本発明の目的は、麺類にメントールを添加する場合、添加量の少ないメントールを均一に配合する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、メントール含有麺類の製造方法において、メントールを水和工程及び/又は混捏工程で添加することにより麺類にメントールを均一に配合できることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明はメントール含有麺類の製造方法において、メントールを水和工程及び/又は混捏工程で添加することを特徴とするメントール含有麺類の製造方法である。
またメントールをエタノール又は45℃以上の湯又は油で溶解し添加することを特徴とする前記メントール含有麺類の製造方法である。
さらには、メントールの添加量が穀粉100質量部に対して0.0001〜1質量部であることを特徴とする前記メントール含有麺類の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
麺類にメントールを添加する場合、添加量の少ないメントールを均一に配合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用するメントールは、L−メントールであり食品の着香料として広く使用されており、ペパーミント様の清涼感ある香気が特徴である。
性質は、水に難溶で、アルコール、エーテル、クロロホルム、形質揮発性溶剤、氷酢酸、液状ワセリン、不揮発性油又は揮発性油等の有機溶媒に可溶、融点は43℃、沸点は216.5℃、常温で無色の結晶であり昇華性を有する。
本発明のメントールは、合成品又は天然品のいずれも使用することができ、結晶品の他
メントールを含有する薄荷脳、薄荷白油、ペパーミントオイル、スペアミントオイル等も使用することができる。
【0008】
本発明の製造方法により製造できるメントール含有麺類はその製造工程において水和工程、混捏工程を有していれば特に制限はない。
例えば、 押出し製麺法によるスパゲティ等の押出し麺、うどん、生パスタ等のロール式圧延製麺法による麺、手延製麺法による手延そうめん、手延うどん、手延そば、手延中華麺等の手延麺、そば等の小麦粉以外の穀粉、澱粉を含有する麺、ギョウサ等の皮物、中華麺等のアルカリ麺に用いることができる。また生麺、茹で麺、半生麺、乾麺、冷凍麺、即席麺に用いることができる。
【0009】
また本発明のメントール含有麺類には、必要に応じて小麦蛋白、大豆蛋白、全卵、卵黄、卵白、糖アルコール、かんすい、食塩、りん酸塩、香辛料、着色料、調味料、着香料(メントールを除く)、天然ガム類、油脂類、乳化剤、アルコール、デキストリン、酵素、酸性剤、保湿剤、脱脂粉乳等を使用することができる。
【0010】
本発明のメントール含有麺類の製造方法は、前記のとおりその製造工程において水和工程、混捏工程を有していれば特に限定されない。
例えば以下の製麺方法を挙げることができる。
【0011】
(1)押出し製麺法
水和工程で原料に加水し、混捏工程でミキサーにより生地の混捏を行う、その後、押出し工程で成形金型から前記混捏した生地を押し出し麺線とし、乾燥工程で前記麺線を乾燥して適当な長さに切断し製品とする。
ミキシングは減圧でおこなってもよいが、メントールの損失があるので常圧が好ましい。
【0012】
(2)ロール式圧延製麺法
水和工程で原料に加水し、混捏工程でミキサーにより生地の混捏を行う、その後、ロール式圧延機で麺帯を成形し、複合して圧延を数回行い、切刃により適当な太さに切断し麺線とし、前記麺線を適当な長さに裁断し製品とする。
得られた製品は、そのまま生麺として流通させることができる。
また、茹で工程を経て茹麺、さらに冷凍工程を経て冷凍麺として流通させることもできる。
【0013】
(3)手延製麺法
水和工程で原料に加水し、混捏工程でミキサーにより生地の混捏を行う。その後、足踏み工程、いたぎ工程、巻き込み工程、ほそめ工程、こなし工程、かけば工程、こびき工程、はたかけ工程、引延し工程により生地を伸張しながら細くしてゆき麺線とし、前記麺線を乾燥し適当な長さに裁断し製品とする。
【0014】
(4)手打ち製麺法
水和工程で原料に加水し、混捏工程では足踏み等手作業で生地の混捏を行い生地玉とする。しばらく熟成した後、麺棒等で生地玉を伸展し、適当な太さに線切りし製品とする。
得られた製品は、そのまま生麺として流通させることができる。
また、茹で工程を経て茹麺、さらに冷凍工程を経て冷凍麺として流通させることもできる。
【0015】
本発明のメントール含有麺類の製造工程は、前記のとおりその製造工程において水和工程、混捏工程を有していれば特に限定されない。
ロール式圧延製麺法における一例を挙げれば以下のとおりである。
【0016】
1.水和工程
粉体原料を製麺用ミキサーで粉体混合する。その他水溶性の副資材を練水に溶解し、ミキサーに投入し粉体原料と混合する。
練水をミキサーに投入した後、メントールを溶解させたエタノール溶液をミキサーに投入し、粉体原料と混合する。
45℃以上の湯または油を練水に使用する場合において、湯の場合はメントールは湯と混合し、ミキサーに投入し粉体原料と混合することもできる。
油の場合はエタノール溶液の場合と同様に練り水をミキサーに投入した後、溶解したメントールを含んだ油をミキサーに投入し、粉体原料と混合させることもできる。
またメントールの溶媒としてエタノール又は45℃以上の湯又は油からなる群より選ばれる1種又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0017】
2.混捏工程
前記水和工程後混捏を行う。
混捏時間は、原料や加水量により適宜調製するが、10〜20分間程度である。
前記水和工程でメントールを添加しなかった場合は、混捏工程でメントールの添加を行う。
また、水和工程でメントールを添加した場合であっても、さらにメントールを添加することができる。
添加の方法は、水和工程と同様である。
【0018】
3.ロール圧延工程
生地を整形ロールで圧延し粗麺帯を形成後、粗麺帯を2枚合わせにして複合圧延する。この後麺帯熟成をとっても良い。順次ロール間隙を狭めながら3ないし5回圧延し、任意の厚みとする。
【0019】
4.切り出し工程
切刃ロール、包丁式カッター等で任意の幅に麺線を切り出し、所定の長さにカットする。
なお、皮物は切刃ロールではなく、圧延した麺帯を型で抜く等の方法にて製造する。
【0020】
また、押出し製麺法による場合も従来公知の方法を使用することができるが、押出し製麺法における一例を挙げれば以下のとおりである。
【0021】
1.水和工程
粉体原料を製麺用ミキサーで粉体混合する。その他水溶性の副資材を練水に溶解し、ミキサーに投入し粉体原料と混合する。
練水をミキサーに投入した後、メントールを溶解させたエタノール溶液をミキサーに投入し、粉体原料と混合する。
45℃以上の湯または油を練水に使用する場合において、湯の場合はメントールは湯と混合し、ミキサーに投入し粉体原料と混合することもでき、油の場合はエタノール溶液の場合と同様に練り水をミキサーに投入した後、溶解したメントールを含んだ油をミキサーに投入し、粉体原料と混合させる。
またメントールの溶媒としてエタノール又は45℃以上の湯又は油からなる群より選ばれる1種又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0022】
2.混捏工程
前記水和工程後混捏を行う。
混捏時間は、原料や加水量により適宜調製するが、10〜20分間程度である。
前記水和工程でメントールを添加しなかった場合は、混捏工程でメントールの添加を行う。
また、水和工程でメントールを添加した場合であっても、さらにメントールを添加することができる。
添加の方法は、水和工程と同様である。
その後必要により脱気工程をとることができる。
【0023】
3.押出整形工程
生地をスクリューにより圧送してダイス孔より押出整形する。
その後必要により乾燥工程で乾燥する。
本発明のメントールの添加量は穀粉100質量部に対して0.0001〜1質量部であることをが好ましい。
0.0001未満ではメントールの添加効果が十分得ることができない。
また、1%を超えるとメントールの香りが強すぎ好ましくない。
【実施例】
【0024】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1]
中力小麦粉2000gに、食塩80g、水700gを加え、麺用横型ミキサーにて3分間ミキシングし水和を行った。この3分間の水和工程中に、メントール1gを溶解させたエタノール溶液20gを加えた後、さらに10分間ミキシングをし、そぼろ状の生地を得た。上記そぼろ状の生地を整形し複合ロールで1回複合後、圧延ロールで3回圧延し、厚み2.0mmの麺帯を得た。
上記麺帯を番手#10角刃ロールで切り出し麺線を得た。
【0025】
[比較例1]
中力小麦粉2000gに、食塩80g、メントール1g、水700gを加え、麺用横型ミキサーで3分間ミキシングし水和を行い、さらに10分間ミキシングし、そぼろ状の生地を得た。
上記そぼろ状の生地を整形し複合ロールで1回複合後、圧延ロールで3回圧延し、厚み2.0mmの麺帯を得た。
上記麺帯を番手#10角刃ロールで切り出し麺線を得た。
【0026】
[試験1]
実施例1及び比較例1で得られた麺線を11分間茹で茹麺としランダムに一食200g、計10食抽出し官能評価を行った。
実施例1で得られた茹麺はすべてにメントールの清涼感があり香りにムラがなかった。
比較例1で得られた茹麺は10食中4食にメントールの香りがなく、残りの6食はメントールの香りが強くムラが感じられた。
【0027】
[実施例2]
中力小麦粉2000gに、食塩80g、水700gを加え、麺用横型ミキサーにて3分間ミキシングし水和を行った。この3分間の水和工程中に、メントール10gを溶解させたエタノール溶液40gを加えた後、さらに10分間ミキシングをし、そぼろ状の生地を得た。上記そぼろ状の生地を整形し複合ロールで1回複合後、圧延ロールで3回圧延し、厚み2.0mmの麺帯を得た。
上記麺帯を番手#10角刃ロールで切り出し麺線を得た。
【0028】
[比較例2]
中力小麦粉2000gに、食塩80g、水700gを加え、麺用横型ミキサーにて3分間ミキシングし水和を行った。この3分間の水和工程中に、メントール20.1gを溶解させたエタノール溶液20gを加えた後、さらに10分間ミキシングをし、そぼろ状の生地を得た。上記そぼろ状の生地を整形し複合ロールで1回複合後、圧延ロールで3回圧延し、厚み2.0mmの麺帯を得た。
上記麺帯を番手#10角刃ロールで切り出し麺線を得た。
[比較例3]
中力小麦粉2000gに、食塩80g、水700gを加え、麺用横型ミキサーにて3分間ミキシングし水和を行った。この3分間の水和工程中に、メントール0.0019gを溶解させたエタノール溶液40gを加えた後、さらに10分間ミキシングをし、そぼろ状の生地を得た。上記そぼろ状の生地を整形し複合ロールで1回複合後、圧延ロールで3回圧延し、厚み2.0mmの麺帯を得た。
上記麺帯を番手#10角刃ロールで切り出し麺線を得た。
[試験2]
実施例2及び比較例2、3で得られた麺線を11分間茹で茹麺としランダムに一食200g、計10食抽出し官能評価を行った。
実施例2で得られた茹麺はメントールの清涼感があり香りが感じられ好ましかった。
比較例2で得られた茹麺はメントールの香りが強すぎ、喫食するのに好ましくない味であった。
比較例3で得られた茹麺はメントールの清涼感がほとんどなく、香りもほとんどかんじられなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メントール含有麺類の製造方法において、メントールを水和工程及び/又は混捏工程で添加することを特徴とするメントール含有麺類の製造方法。
【請求項2】
メントールをエタノール又は45℃以上の湯又は油からなる群より選ばれる1種又は2種以上の溶媒で溶解し添加することを特徴とする請求項1に記載のメントール含有麺類の製造方法。
【請求項3】
メントールの添加量が穀粉100質量部に対して0.0001〜1質量部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のメントール含有麺類の製造方法。


【公開番号】特開2007−135439(P2007−135439A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331370(P2005−331370)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】