説明

モアレ拡大素子

【課題】セキュリティ素子として使用できるモアレ拡大素子を実現すること。
【解決手段】本発明によるモアレ拡大素子は透明な基材を有し、この透明な基材は、i)第1表面上の微細合焦要素の規則的な配列であって、これらの合焦要素は焦点面を規定している微細合焦要素の配列と、ii)合焦要素の焦点面と実質的に一致したプレーン内に配置された微細画像要素単位セルの対応する配列であって、それぞれの単位セルは少なくとも2つの微細画像コンポーネントを有する、微細画像要素単位セルの配列と、を担持している。モアレ効果に起因して微細画像コンポーネントの拡大されたバージョンが生成される。更なる有色層が、微細画像要素単位セルの配列上に、又はこの上部に延在するように、設けられ、少なくとも第2微細画像コンポーネントが、更なる有色層に少なくとも部分的に依存し、第1微細画像コンポーネントの色とは異なる色に見える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、銀行券、小切手、パスポート、身分証明書、正規品証明書(certificate of authenticity)、収入印紙、並びに、価値又は身元を保証するその他の文書などのセキュリティ文書及びその他の有価物品において使用されるセキュリティ素子などのモアレ拡大素子に関する。また、本発明は、包装又はこれに類似したものに使用される光学素子にも関する。
【背景技術】
【0002】
モアレ拡大は、多年にわたってセキュリティ素子の原理として使用されている。いくつかの例が国際特許出願公開第1994/27254号パンフレット及び欧州特許出願公開第1695121号明細書に記述されている。このような素子においては、焦点面を規定する微細合焦要素の規則的な配列が、合焦要素の焦点面と実質的にアライメントされたプレーン内に配置された画像要素の対応する配列の上方に設けられている。画像要素の配列のピッチ又は周期性は、合焦要素のピッチ又は周期性とわずかに異なるように選択されており、かつ、この不整合は、画像要素の拡大されたバージョンが生成されることを意味している。
【0003】
拡大倍率は、周期性又はピッチの間の差によって左右される。微細レンズ配列と微細画像配列との間のピッチ不整合は、微細レンズ配列及び微細画像配列が回転ミスアライメントを有するように、微細レンズ配列に対して微細画像配列を回転させることによって、又はこの逆を実行することによって、簡便に生成することもできる。回転ミスアライメント又はわずかなピッチ不整合は、結果的に、眼が画像の異なる部分をそれぞれの隣接するレンズ内において観察することをもたらし、この結果、拡大された画像が得られる。そして、眼がレンズ/画像配列に対して移動した場合には、画像の異なる部分が観察され、これによって、画像が異なる位置に存在しているという印象がもたらされる。眼が滑らかに移動した場合には、一連の画像が観察され、これによって、画像が表面に対して移動しているという印象がもたらされる。ピッチ不整合を回転ミスアライメントによって生成した場合には、拡大された画像の配列が微細画像配列に対して回転し、かつ、この結果、拡大された画像の見かけの動きを結果的にもたらすパララックス効果も回転することになる。これをスキューパララックスとして知られている。モアレ拡大素子内において観察される拡大された画像の拡大及び回転に対するピッチ不整合及び回転ミスアライメントの影響については、M. Hutley,R Hunt、R F Stevens及びP Savander,“The Moire Magnifier”,Pure Appl. Opt. 3(1994),133〜142,IOP Publishing Limited社、に記述されている。
【0004】
動き及び向きの変化の特性については、モアレの理論から説明することが可能であり、これについては、I. Amidror,“The theory of the Moire phenomemon”(ISBN 0−7923−5949−6),Kluiver Academic Publishers社,2000年、に詳細に記述されている。2つの周期的な構造体のモアレ効果は、2つの構造体の周波数ベクトルを検討することによって説明/予測することができる。周波数ベクトルの向きは、周期性の方向を表しており、かつ、長さは、周波数(すなわち、1/周期)を表している。このベクトルは、そのデカルト座標(u,v)によって表現され、ここで、u及びvは、周波数の水平及び垂直成分である。
【0005】
関係する原理については、国際特許出願公開第2005/106601号パンフレットに更に詳細に記述されている。
【0006】
通常、合焦要素は、微細レンズ又は微細ミラーを有し、かつ、画像要素は、単純なアイコン又はこれに類似したものによって規定されている。
【0007】
これまで、見当が相互に合った既定の状態において異なる色の複数の画像アイコンを示すモアレ拡大素子は、公に実証されてはいない。これは、既定の方式で組み合わせられた又は見当が合わせられた2つの別個の微細画像アレイを印刷することが技術的に非常に困難であることに起因している。
【0008】
本発明によれば、モアレ拡大素子は、透明な基材を有し、この透明な基材は、
i)第1表面上の微細合焦要素の規則的な配列であって、これらの合焦要素は、焦点面を規定している、微細合焦要素の配列と、
ii)合焦要素の焦点面と実質的に一致したプレーン内に配置された微細画像要素単位セルの対応する配列であって、それぞれの単位セルは、少なくとも2つの微細画像コンポーネントを有する、微細画像要素単位セルの配列と、
を担持しており、
微細合焦要素及び微細画像要素単位セルの配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、微細合焦要素の配列が微細画像要素単位セルの配列と協働し、モアレ効果に起因して微細画像コンポーネントの拡大されたバージョンを生成するようになっており、
単位セルの第1微細画像コンポーネントは、残りの第2微細画像コンポーネントの色濃度とは異なる色濃度を有し、かつ、
本素子が観察された際に、少なくとも第2微細画像コンポーネントが、更なる有色層に少なくとも部分的に依存した、かつ、第1微細画像コンポーネントの色とは異なる色に見えるように、微細画像要素単位セルの配列上に、又はこの上部に延在するように、更なる有色層が設けられている。
【0009】
本発明によれば、単一の印刷動作によって異なる色の単位セルの2つの微細画像コンポーネントを提供すること又はこれに類似したことを試みるのではなく、本発明者らは、結果的に得られる拡大された微細画像コンポーネントが、更なる有色層と、第2微細画像コンポーネントと、恐らくは第1画像コンポーネント(それが不透明であるかどうかに応じて)と、の色を組み合わせた結果として、見えるように、更なる有色層が微細画像コンポーネントを通じて観察されることを可能にする色濃度(この場合に、「色」とは、黒色を含む)を微細画像コンポーネントが有するような方式によって、少なくとも1つの、かつ、恐らくは、両方の微細画像コンポーネントを提供している。第1及び第2微細画像コンポーネントの色濃度の差を適切に選択することによって、結果的に得られる色が異なることになる。これによって、2つの微細画像コンポーネントが異なる色において当初提供されているという印象が得られる。
【0010】
第1及び第2微細画像コンポーネントは、別個の微細画像を規定することが可能であり、かつ、これらは、互いに離隔してもよく、隣接してもよく、又は、場合によっては、当接してもよい。又、これら2つの微細画像コンポーネントは、後述するように、更に大きなシンボル又はその他の英数字、グラヒックデザイン、又は、これらに類似したものの各部分を形成することもできる。
【0011】
微細画像コンポーネントの間における色濃度の変動を実現するための便利な方法は、ハーフトーンスクリーンなどのスクリーニングされたパターンの形態でいずれかを印刷するというものである。ただし、使用される印刷法に応じて、異なるインク厚みの適用などのように、色濃度の差を実現するためのその他の方法を使用することもできる。異なるインク厚みは、例えば、深度が変化する彫刻されたセルを有するシリンダを利用したグラビア印刷によって、又は、従来の凹版印刷を使用することより、実現することができる。
【0012】
一般に、第1微細画像コンポーネントは、不透明な色によって形成されるが、これは、必須ではない。
【0013】
更なる有色層は、通常は、均一な色を有しているが、素子に跨って横方向に変化する色で更なる有色層を設けることによって、効果の再生を更に困難にすることができる。この結果、微細画像コンポーネントの非常に複雑な拡大されたバージョンを得ることができる。
【0014】
以上においては、本発明者らは、拡大された合成微細画像コンポーネントが同一の深度に見える素子について説明している。
【0015】
ただし、いくつかのケースにおいては、第1微細画像コンポーネントは、第1ピッチを有する第1配列を規定しており、かつ、第2微細画像コンポーネントは、第2の異なるピッチを有する第2配列を規定しており、それぞれのピッチは、微細形成要素のピッチとは異なり、これによって、第1及び第2コンポーネントの拡大されたバージョンは、異なる深度に見える。
【0016】
この結果、更なるセキュリティと、真贋判定器(authenticator)用の容易に認識可能な特徴と、が得られる。ただし、いくつかのケースにおいては、2つの配列のピッチが異なり、かつ、したがって、1つの配列の微細画像コンポーネントが、もう1つの配列の儀細画像コンポーネントと重複するというリスクが存在しているため、問題が発生する可能性がある。この問題を回避するために、好ましくは、第1及び第2配列の横方向寸法は、第1配列の微細画像コンポーネントが第2配列の微細画像コンポーネントと重複しないようになっている。
【0017】
微細画像コンポーネントは、通常、シンボル、幾何学的図形、英数字、及びこれらに類似したものなどのアイコンを有してもよく、かつ、最も好ましくは、情報を提供する。
【0018】
好適な例においては、微細画像コンポーネントは、グラビア、湿式又は乾式リソグラフィ印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、及びフレキソ印刷などの任意の適切な印刷プロセスを使用し、基材上に印刷される。ただし、微細画像コンポーネントは、基材上の格子構造体、凹部、又はその他のレリーフパターンとして形成することもできる。国際特許出願公開第2005/106601号パンフレットに記述されているように、反射防止構造体を使用してもよい。
【0019】
微細レンズ及び凹面鏡などの微細合焦要素は、好ましくは、基材表面内へのエンボス加工、注型硬化(cast−curing)、又はこれらに類似したものによって、形成される。
【0020】
本発明によって生成されるモアレ拡大素子は、2次元(2D)又は1次元(1D)構造体であってよい。球面レンズを使用する2Dモアレ拡大構造体が欧州特許出願公開第1695121号明細書及び国際特許出願公開第1994/27254号パンフレットに更に詳細に記述されている。2Dモアレ拡大素子においては、微細画像は、すべての方向において拡大される。1Dモアレ拡大構造体においては、球面微細レンズ又は微細ミラーが、円筒形の微細レンズ又は微細ミラーの反復配列によって置換される。この結果は、1つの軸だけにおいて、微細画像要素にモアレ拡大が適用されるというものであり、この軸は、ミラーがその曲がり又はレリーフの周期的変動を示す軸である。この結果、微細画像は、拡大軸に沿って強力に圧縮又は拡大解除(de−magnify)されるが、拡大軸に垂直の軸に沿った微細画像要素のサイズ又は寸法は、観察者から見て、実質的に同一であり、すなわち、拡大又は引き伸ばしが発生しない。
【0021】
本発明によって生成されるモアレ拡大素子は、それ自体としてセキュリティ素子を形成することができるが、ホログラム、回折格子、及びその他の光学可変効果生成構造体などのその他のセキュリティ機能との関連において使用することもできる。
【0022】
本素子を使用し、基材の特性、具体的には、光学素子の対応する特性に影響を及ぼすその厚み及び柔軟性によって、様々な基材を真贋判定することができる。
【0023】
本発明は、紙、特に、銀行券などの曲がり易い基材の保護において特別な価値を有しており、この場合に、本素子は、パッチ、ストリップ、又はスレッドを規定することができる。本素子の厚みは、銀行券の印刷プロセスにおける紙の連形状(paper ream shape)の変形を回避するために本素子が銀行券内において用いられる方法と、更には、銀行券自体の形態及び柔軟性と、の影響を受けることになるが、本素子の厚みは、銀行券自体の厚み(通常は、85〜120μm)の半分を超過しないことが望ましく、したがって、任意の実施形態において、本光学素子は、固定接着剤を含んで50μm未満となるものと予想され、かつ、実質的にそのようになることが好ましい。
【0024】
例えば、銀行券に適用されるパッチとしては、望ましい厚みは、ラベルの場合には、数μm(ミクロン)(固定接着剤を除く)から最大で35〜40μm(この場合にも、接着剤を除く)の範囲となる。ストリップの場合には、厚みは、この場合にも、箔押し(hot−stamped)又は転写されるストリップの場合における数μmから最大では非転写型ストリップの場合の35〜40μmの範囲をとることになり(この場合にも、固定接着剤を除く)、この場合に、ストリップを銀行券の基材内の機械的アパーチャ上に貼付する場合には、必要に応じて、支持担持層が保持される。
【0025】
窓を有するスレッド(windowed thread)の場合には、好ましい最終厚みは、20〜50μmの範囲である。
【0026】
パスポートの紙のページ、プラスチックのパスポートカバー、査証、身分証明書、ブランド識別ラベル、改竄防止ラベル、任意の視覚的に真贋判定可能な物品を含む用途においては、セキュリティ素子の更に厚いバージョン(最大で300μm)を利用することもできる。
【0027】
更には、本素子をセキュリティ文書の透明な窓内に設けることによって、本素子を透過状態において観察できるようにすることもできる。
【0028】
以下、本発明によるセキュリティ素子のいくつかの例について添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】銀行券の概略平面図である。
【図2A】セキュリティ素子の第1の例の3つのバージョンの外観を示す平面図である。
【図2B】セキュリティ素子の第1の例の3つのバージョンの外観を示す平面図である。
【図2C】セキュリティ素子の第1の例の3つのバージョンの外観を示す平面図である。
【図3】図2に示されている拡大された画像の場所を概略的に示す図である。
【図4A】図2及び図3に示されている素子の背景を単位セル及び部分的な配列として示す図である。
【図4B】図2及び図3に示されている素子の背景を単位セル及び部分的な配列として示す図である。
【図4C】図2及び図3に示されている画像の前景画像を単位セル及び部分的な配列として示す図である。
【図4D】図2及び図3に示されている画像の前景画像を単位セル及び部分的な配列として示す図である。
【図5】図2の例に使用される透過に基づいたセキュリティ素子の断面を示す概略図である。
【図6】本発明による単位セルの第1の例を示す図である。
【図7】本発明による単位セルの第2の例を示す図である。
【図8】本発明による素子の概略断面図である。
【図9】観察された際の素子の外観を示す図である。
【図10A】単位セル及び結果的に得られる拡大された画像の別の例を示す図である。
【図10B】単位セル及び結果的に得られる拡大された画像の別の例を示す図である。
【図11】本発明による素子の更なる例を示す図である。
【図11A】図9の変更されたバージョンを示す図である。
【図11B】図11Aの異なる単位セルを示す図である。
【図12】微細画像コンポーネントを形成するための様々な方法を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態によるモアレ拡大素子と、いくつかのホログラム画像生成構造体と、が設けられたセキュリティラベルの平面図である。
【図14】モアレ拡大素子がホログラム画像生成構造体に内蔵されたラベルの別の例を示す図である。
【図15】金属被覆が剥離された画像と組み合わせられた本発明によるモアレ拡大素子の一実施形態を示す図である。
【図16A】図15の線A−Aにおける断面を示す図である。
【図16B】図15の線B−Bにおける断面を示す図である。
【図17】図8に類似した、ただし、ミラーに基づいた実施形態の、断面である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、窓において露出したセキュリティスレッド2と、更なる透明な窓3と、を有する銀行券1を概略的に示している。銀行券1は、紙又はポリマー(二軸配向されたポリプロピレンなど)から製造してもよく、かつ、セキュリティスレッド2及び窓3のいずれか又は両方は、本発明によるセキュリティ素子を内蔵する。
【0031】
本発明の例について説明する前に、本発明者らは、図2〜図5を参照して、背景について少し説明することとする。
【0032】
図2〜図5は、セキュリティ素子の比較例を示している。図2Aにおいて観察することができるように、通常通りに、即ち、垂直方向において、観察された際のセキュリティ素子の外観は、拡大された画像要素の第1配列10であり、これは、この場合には、大きな星と小さな星のペアとして青色の星の拡大された組によって形成された背景11を伴う数字5の形態の赤色のアイコン10Aである。アイコン10A及び背景11の相対的な深度は、図3において更に明瞭に観察することが可能であり、この場合には、“5”アイコン11は、基材7の上部表面の下方に見えており、背景プレーン11は、“5”アイコン10Aの下方に位置している。
【0033】
図4は、セキュリティ素子の構成要素を更に詳細に示している。この図は、背景11が、図4Bに示されているように、1つの配列内において隣り合った状態に配置された単位セル11A(図4A)の配列によって形成されていることを示している。“5”アイコン10Aは、図4C及び図4Dに示されているように、単位セルの1つの配列として形成されている。図4に示されているように、X及びY方向における背景配列11の単位セル11Aのピッチは、A2x、A2yである。“5”アイコン10Aのピッチは、A1x、A1yである。通常、A2xは、A2yに等しく、かつ、A1xは、A1yに等しい。ただし、一方における“5”アイコン10Aのピッチと、他方における背景10の単位セルのピッチとの間には、わずかな差が存在している。
【0034】
図5は、図2〜図4に示されている素子の全体的な構造を断面において示している。すなわち、本素子は、透明なPET又はその他のポリマー層20(基材7に対応している)を有し、その上部表面上には、球面微細レンズ22の二次元配列が形成されている。微細レンズ22の直径は、通常、1〜100μm(ミクロン)、好ましくは、1〜50μm(ミクロン)、かつ、場合によっては、更に好ましくは、10〜30μm(ミクロン)の範囲であり、これによって、類似した範囲のピッチを規定している。
【0035】
微細レンズ22の焦点距離(その平坦な背面から計測したもの)は、印刷受容層の表面と実質的に一致する焦点面24を規定するように、この例においては基材20の厚みに微細レンズ配列22とは反対側の基材20の表面上の印刷受容層21の厚みを加えたものを有する光学スペーサ層の厚みtに実質的に等しい。印刷受容層21上には、まず、赤色で“5”アイコン10Aの微細画像配列を印刷する。次いで、背景配列11を青色で印刷する。2つの配列は、それぞれ、焦点面24と一致する印刷受容層21上に印刷されているが、背景印刷11は、参照符号25によって示されているように、“5”アイコンの配列10と重複していることを図5において観察されたい。
【0036】
本発明は、任意の特定のタイプ又は形状の微細レンズに限定されるものではなく、唯一の要件は、微細レンズを使用して画像を形成することができるというものである。本発明に適した微細レンズは、平凸レンズレット、両凸レンズレット、及びフレネルレンズなどの均質な材料の適切に湾曲した表面において光を屈折させるものを含む。好ましくは、本発明は、球面微細レンズを有することになるが、円柱形レンズを含む任意の対称性を有するレンズを利用することもできる。球面及び非球面表面の両方を本発明に適用可能である。微細レンズが湾曲した表面を有することは不可欠ではない。傾斜屈折率(Gradient Refractive Index:GRIN)レンズは、屈折率の小さな変動の結果として材料の容積の全体を通じた漸進的な屈折によって光を結像する。フレネルゾーンプレートなどの回折に基づいた微細レンズを使用することもできる。GRINレンズ及び振幅又はマスクに基づいたフレネルゾーンプレートは、微細レンズ配列を含む表面が平坦になることを可能にし、かつ、印刷受容性及び耐久性における利点を提供する。
【0037】
複製プロセスによって生成されたレンズの周期的な配列を使用することが好ましい。光熱法、フォトレジストの溶解及びリフロー、及びフォトレジストの彫塑などのいくつかの技法によって、マスタ微細レンズ配列を製造することができる。このような技法については、当業者に知られており、かつ、1998年に再版されたTaylor and Francis社から刊行されているHans Peter Herzig編集による“Micro−Optics: Elements, Systems, and Applications”の第5章に詳述されている。次いで、ホットエンボス加工、成形、又は鋳造などの市場において入手可能な複製法によって、マスタ微細レンズ構造を物理的に複写することができる。微細レンズ構造をその内部に複製することができる材料は、限定を伴うことなしに、ホットエンボス加工及び成形プロセス用のポリカーボネート及びポリメチルメタクリレート(PMMA)などの熱可塑性ポリマー及び鋳造プロセス用の熱又は放射線によって硬化可能なアクリル化エポキシ材料を含む。好ましいプロセスにおいては、微細レンズ配列は、鋳造によって、PETなどの担持体ポリマー薄膜に適用されたUV硬化可能な被覆内に複製される。
【0038】
分かり易くするために、以下の例及び実施形態においては、球面微細レンズの使用について説明する。
【0039】
モアレ拡大の現象を生成し、かつ、移動する画像の生成を可能にするために、ピッチ不整合を微細画像配列と微細レンズ配列との間に導入する。1つの方法は、実質的に同一のピッチを有する微細レンズ及び微細画像配列を有するというものであり、この場合に、ピッチ不整合は、微細画像と微細レンズ配列との間に小さな回転ミスアライメントを導入することによって実現される。微細画像と微細レンズ配列との間の回転ミスアライメントの程度は、好ましくは、15°〜0.05°の範囲であり、これは、結果的に、微細画像配列の〜4×−1000×という拡大範囲をもたらす。更に好ましくは、回転ミスアライメントは、2°〜0.1°の範囲であり、これは、結果的に、微細画像配列の〜25×−500×という拡大範囲をもたらす。
【0040】
又は、この代わりに、微細画像配列及び微細レンズ配列は、実質的に完全な回転アライメント状態にあるが、わずかなピッチ不整合を有する。わずかなピッチ不整合は、25%〜0.1%の範囲の微細レンズ配列との関係における微細画像配列のピッチの比率増大/減少と等しく、これは、結果的に、微細画像配列の〜4×−1000×という拡大範囲をもたらす。更に好ましくは、微細レンズ配列に対する微細画像配列のピッチの比率増大/減少は、4%〜0.2%の範囲であり、これは、結果的に、微細画像配列の〜25×−500×という拡大範囲をもたらす。
【0041】
わずかなピッチ不整合とわずかな回転ミスアライメントとの組合せを使用することによって、モアレ拡大の現象を生成すると共に移動する画像の生成を可能にすることもできる。
【0042】
配列10、11と球面レンズ配列22との間のピッチ不整合の結果として、(図3に示されているように)異なる深度において微細画像のモアレ拡大が生成される。
【0043】
実現される拡大の程度は、M. Hutley、R Hunt、R Stevens、及びP Savanderによる“The Moire magnifier”(Pure Appl. Opt. 3(1994)、133〜142頁)において導出されている式によって規定される。
【0044】
この式の関係する部分を要約すれば、微細画像ピッチ=Aであり、かつ、微細レンズピッチ=Bであると仮定したときに、拡大Mは、次式によって得られる。
M=A/SQRT[(Bcos(θ)−A)2−(Bsin(θ))2
ここで、θは、2つの配列の間の回転角に等しい。
A≠Bであり、かつ、cos(θ)≒1及びsin(θ)≒0となるように、θが非常に小さい場合には、次式のとおりである。
M=A/(B−A)=S/(1−S)
ここで、S=B/Aである。
しかしながら、M>>10というようにMが大きい場合には、S≒1でなければならず、したがって、次式が得られる。
M≒1(1−S)
【0045】
表面プレーンに対する合成画像の深度は、焦点距離fのレンズのプレーンから距離vに位置する画像の拡大に関係するなじみ深いレンズ等式から導出される。これは、次式のとおりである。
M=v/f−1
又は、通常は、v/f>>1であるため、次式が得られる。
M≒v/f
したがって、合成的に拡大された画像の深度vは=M*fである。
【0046】
図2A〜図2Cは、第1配列10に対して異なる見当合わせ位置にある第2配列11を示している。重要な点は、第1及び第2配列要素又はアイコン10A、11Aの設計及び選択肢は、1つの配列の位置がもう1つの配列に対して変化した際に、情報、内容、象徴的関連性、又は審美的外観が大きく変化しないようなものになっている、すなわち、2つの配列は、見当合わせの影響を受けにくいか、又は非常に好ましい見当合わせ要件を有しているということである。第2配列11は、第1配列10によって見にくくなっているか又は遮られているため、例えば、額面金額の又は英数字のシンボルなどの特に情報を有するアイコンタイプは、第2配列11の前面に位置していことから可視状態になっている第1配列10内に配置されることが好ましいことに留意されたい。更には、図2に示されている例においては、第2配列11のそれぞれの単位セル11Aは、2つの同一のアイコン、すなわち、大きい星と小さい星から構成されており、この結果、情報の観点において、それぞれの単位セル内に情報の冗長性が存在している。この冗長性特性は、2つの配列の間のなんらかの相対的な見当合わせ状態において、第1配列のアイコンパターン(5)が大きな星の配列を実質的に見にくくした場合に、第1配列からの著しい妨害又は干渉を伴うことなしに、小さな星のアイコン配列を容易に可視状態にすることができるということを意味している。この結果、観察者は、偏移した表面プレーンの背後又は前面における所与の深度に位置した赤色の5の第1パターンと、異なる画像深度においてこのパターンの背後に位置した青色の(50%だけ大きく、かつ、50%だけ小さい)星の第2パターンと、を有する2つの合成的に拡大されたアイコン配列をはっきりと観察することになる。公的認知の観点において、視覚的効果又は外観は、第2パターンに対する第1パターンの位置に伴って大幅に異なることにはならない。
【0047】
図2に示されている画像設計を要約すれば、記述可能な光学可変効果は、第2配列11に対する第1アイコン配列10の見当合わせ状態の制御されていない製造変動の影響を受けにくい(すなわち、実質的に不変である)。これは、本発明の重要な側面である。
【0048】
第1及び第2画像配列10、11に対照的な色を使用することは、観察者が、特に個々の要素が重複している領域内において2つの配列を弁別するのに有用であり、かつ、したがって、このような素子の公的認知及び検証に有用である。色による弁別の利益の理解を促進するために、本発明者らは、図2Dに、従来と同一の2つの画像配列を示しており、この場合には、第1及び第2配列の両方が、単一の色によって提供/又は印刷されている(図2Aと同様に、配列の3つの異なる相対的な位置が示されている)。観察することができるように、第1及び第2パターンの画像要素が重複しているところにおいては、上部の第1配列要素のアウトラインと下部の第2配列要素を弁別することが困難であり、これは、観察者又は閲覧者を混乱させるように作用し、その結果、複数の画像プレーンを有することの有効性が低減される可能性がある。
【0049】
例:
図2及び図5の構造が、40μm又は0.04mmの焦点距離fを有する微細レンズ22から構成されていると仮定しよう。更には、微細レンズ及び支持基材20の両方が、いずれも、1.5の屈折率nを有する材料から構成されていると仮定しよう。この結果、レンズの基部直径Dは、式D≦f*2(n−1)によって制約されることになり、かつ、したがって、D≦0.04*2(1.5−1)であり、これによって、D≦0.04mmが得られる。
【0050】
この結果、本発明者らは、0.035mmのDの値と、(それぞれの軸に沿って)0.04mmのレンズピッチBと、を選択し、これによって、妥当な最密充てん(レンズ間ギャップ:5μm)を有する1に近いf/#値を有するレンズ配列が結果的に得られることになろう。
【0051】
第1の例において、本発明者らが、第1画像配列10が基材の表面プレーンの背後の2mmに位置することを、そして、第2画像配列11が表面プレーンの背後の6mmに位置することを必要としたと仮定しよう(表面プレーンの背後の画像は、定義によれば虚像であり、かつ、更に詳細な分析は、これらが、微細画像オブジェクト配列に対して非倒立型となることを示している)。
更に説明をわかりやすくするために、本発明者らは、A1y=A1xであり、かつ、A2y=A2xであると仮定する。
M=v/fとすると、f=0.04mmであり、かつ、v=2mmである場合には、M1=2/0.04=50となる。
したがって、M1=A/(B−A)=50であるため、50(B−A1)=A1であり、これによって、A1=B(50/51)が得られることになる。
B=0.04mmを代入することによって、本発明者らは、A1=0.0392mmを得る。
同様に、M2=6/0.04=150であり、かつ、したがって、150(B−A2)=A2であり、これによって、A2=B(150/151)=0.0397mmが得られる。
【0052】
第2の例において、本発明者らが、第2画像配列11が表面プレーンの背後の6mmに位置した状態に留まっている間に、第1画像配列11が表面プレーンの前面の2mmに位置することを必要としたと仮定しよう。
【0053】
以前の例とは対照的に、ここでは、第1画像配列10は、実像の倒立画像を形成することになり、かつ、したがって、拡大の符号が負となる(これは、以前の拡大の式の画像距離vに負の値を割り当てることの結果として生じる)。
したがって、M1=−2/0.04=−50であり、したがって、−50(B−A1)=A1であり、これによって、A1=50/49B=0.0408mmが得られる。
【0054】
したがって、第1画像配列が表面プレーンの前面に位置するためには(すなわち、浮かんでいるように見えるためには)、その微細画像配列がレンズピッチよりも大きなピッチを有する必要があることがわかる。逆に、画像ピッチがレンズピッチを下回っている場合には、画像配列は、表面プレーンの下方に位置しているように見えることになる。
【0055】
以上の説明においては、微細合焦要素は、レンズを有している。ただし、これらは、当技術分野において知られているように、凹面反射器によって置換することができる。
【0056】
本発明に適用可能である以上の背景に基づいて、以下、本発明者らは、本発明のいくつかの例について説明することとする。
【0057】
図6は、インクによってべた印刷された又は不透明なKと、これに後続するスクリーニングされた(かつ、したがって、準半透明である)5と、の例からなる微細画像単位セル100を示しており、このスクリーニングは、図6に示されているようなリニアスクリーンの、又は、図7の単位セル100’に示されているようなハーフトーンスクリーンの、又は、これらの中間の任意の変形の、形態をとってもよい。この素子の断面図が図8に示されており、微細レンズ配列252がその1つの表面上に設けられると共に印刷受容層251がもう1つの表面上に設けられた透明なプラスチック基材250を示しており、印刷受容層上には、微細画像配列(層1)254が設けられている。印刷受容層251は、焦点調節層として機能することもできる。
【0058】
第1印刷配列254の適用に続いて、本素子の同一の面は、第2色256によって上塗りされ、これは、5の拡大された合成画像が、第1及び第2色の重ね合せである色を有するという効果を有する。例えば、K5の単位セル100を印刷するのに使用される第1色が青色であり、かつ、均一な被覆256として適用される第2色が黄色であると仮定すれば、図9に示されているように、合成的に拡大された画像配列内において、Kは、青色で見えることになり(Kは、実質的に不透明な色によって印刷されているため)、かつ、5は、緑色のシェードで見えることになり、その色相は、5に存在している青色及び黄色の相対的な重みによって左右されることになる。
【0059】
可視化されたアイコンと背景の間の良好なコントラストを保証するために、背景色256は、単位セル254の色との関係において色相及び輝度の両方において対照をなしていることが望ましい。印刷される微細画像のインク又は着色剤の厚みは、0.2〜3μmの、ただし、とりわけ、0.5〜1.0μmの範囲になるものと想定される。
【0060】
背景色のインク又は着色剤の厚みは、不透明性の要件に応じて変化することになるが、0.5〜5μm、とりわけ、1〜3μmの範囲になるものと想定される。
【0061】
本発明者らは、1つの設計例を提供しており、当然のことながら、2つの異なる色、色相、又は輝度で見えるが良好な相対的見当合わせ状態に留まる2つの画像アイコンを得るためのこの一般的な原理は、例えば、国の通貨のシンボル及び関係する額面金額(例えば、£又は$など、並びに、額面金額)などの様々なアイコンタイプ及び連想に対して適用することができる。
【0062】
この例においては、第2色は、均一な被覆256として適用されている。ただし、例えば、色が素子に跨って横方向に変化するなどのように、様々なその他のタイプの有色被覆を使用することもできる。
【0063】
以上において説明した例においては、単位セル100は、Kと5という2つの別個の微細画像コンポーネントを有している。互いに当接すると共に更に複雑な画像の各部分を形成する微細画像コンポーネントを利用することもできる。一例が、図10に示されており、この場合には、図10Aの単位セルは、2つの微細画像コンポーネントから構成されており、べた印刷された円300は、部分的な切欠きを有しており、その内部に、スクリーニングされた円302の一部が印刷されている。本素子が観察された際には(図10B)、数字8の色が垂直方向に変化する状態において、“8”の配列が観察されることになる。
【0064】
上述の図6〜図10に示されている例に示されているものに対する更なる変更例においては、K及び5(結合されたシンボル又はアイコン)は、可視状態にある場合に、異なる色であるのみならず、異なる深度のプレーン内に位置している。後者と関連する問題点は、この場合には、K及び5の微細画像配列又は格子が異なるピッチを有することを要し、かつ、この結果、2つの配列が、図11に概略的に示されているように、同期した状態から逸脱するという点にある。図11の画像の左手の配列を検討すれば、円によって示されている配列の中央においては、K及び5は、望ましい見当合わせ状態にあることがわかるが、5の配列は、Kの配列よりも小さなピッチを有していることから、これらは、見当が合った状態から徐々にはずれ、かつ、最終的に、配列の寸法が拡張された場合には、微細画像は、重複すると共に干渉することになり、これは、可視化された画像に対して有害な影響を及ぼすことになることがわかる。これを改善するためには、微細画像が重複することになる位置に2つの配列が絶対に到達しないように、2つの微細画像配列の位相がリセットされる画像中断部260を生成する必要がある。この中断部は、セキュリティスレッド又はこれに類似したものを形成する際に切断領域を規定するようにして、簡便に形成することができる。
【0065】
合成画像配列は、図9のとおりであるが、拡大されたK及び5の要素が異なる画像プレーンを有し、かつ、5の要素が、例えば、表面プレーンの背後6mmに位置し、かつ、Kが表面プレーンの背後4mmに位置する素子の生成を本発明者らが所望していると仮定しよう。
【0066】
この場合には、対応する微細画像配列は、図11Aに示されている概略図のような外観を有することになる。配列の中央においては、K及び5は、望ましい相互間の見当合わせ状態を有しているが、Kの配列は、その相対的に小さな深度と、したがって、拡大と、によって、両方の軸において相対的に小さなピッチを有することになり、これによって、コーナーの場所(左上に示されているもの)において2つのシンボルが仮想的に接触する時点まで、2つの配列は、見当が合った状態からわずかにはずれることになり、本発明者らは、このコーナーの場所を許容可能性の限度であると見なしている。
【0067】
図11Aは、中央の要素と、上部コーナーの要素と、を示しており、かつ、見当合わせ状態のシフトは、差ΔX−ΔX1及び差ΔY−ΔY1(図11B)によって特徴付けられる。本発明者らは、シフトが制限値に到達する配列のサイズを次のように算出してもよい。
中央視点からの最大許容シフト=ΔX−ΔX1
これは、次式によって得られる微細画像反復の回数nxにわたって発生する。
x=(ΔX−ΔX1)/(A1X−A2X)
したがって、第1及び第2配列の相互の位置が見当が合った状態にあるX方向に沿った配列のスパンWxは、次式によって得られる。
Wx=2nx*(A1X+A2X)/2=(ΔX1−ΔX)*(A1X+A2X)/(A1X−A2X)
同様に、第1及び第2配列の相互の位置が、見当が合った状態にあるY軸に沿った配列のスパンの高さHyは、次式によって得られる。
Ny=(ΔY−ΔY1)/(A1y−A2y)、及び、したがって、Hy=(ΔY1−ΔX)*(A1Y+A2Y)/(A1Y−A2Y)
【0068】
代替肢として、セキュリティ素子は、図14に示されているように、ミラーに基づいたモアレ素子として製造することもできる。この場合には、球面微細レンズ配列は、透明なポリマー基材310の1つの表面上に形成された球面又は非球面凹面鏡配列300によって置換される。もう1つの表面には、図8を参照して説明したものと同一の微細画像セルの配列が設けられる。この印刷された配列254の適用に続いて、本素子の同一の面は、第2色256によって上塗りされ、これは、5の拡大された合成画像が、第1及び第2色の重ね合わせである色を有するという効果を有する。
【0069】
この構造は、反射モードにおいてだけ観察することを意図しており、かつ、したがって、不透明な基材上への適用(ストリップ及びパッチ)又は不透明な基材への部分的な埋め込み(窓を有するスレッド)に最も適している。レンズシステムと同様に、印刷された微細画像は、ミラーシステムの焦点深度又は視野によって決定される精度においてミラーの焦点面と一致しなければならない。
【0070】
入射光は、ミラーの配列によってコリメート光として反射される前に、第2色の層と、第1色の微細画像セルと、を通過又は透過しなければならないため、少なくとも第2色層と、微細画像要素のコンポーネントの少なくとも1つ(この場合には、5)と、は、これらが意図された色で見えるように、少なくとも部分的に半透明でなければならないということになる。この例におけるように、微細画像コンポーネントの1つが不透明である場合には、このコンポーネントは、最終的な素子において、黒色で見えることになる。
【0071】
ミラー上の金属被覆は、背景色と、1つ又は複数の半透明な微細画像コンポーネントの色と、をも実現することになる。この金属被覆は、アルミニウムなどの「白色」反射器であってもよく、又は、銅やその合金などのその他の有色金属を使用してもよい。銀、金、プラチナ、クローム、ニッケル、ニッケル−クローム、パラジウム、すずなどのその他の金属を使用してもよい。
【0072】
凹面鏡の焦点距離は、その曲率半径Rの半分に等しく、かつ、したがって、ミラー基部の直径の4分の1に近接した制限最小値を有することができることに留意されたい。要すれば、所与の基部直径において、ミラーの焦点距離及びF値は、(1.5という一般的な屈折率を仮定した場合に)等価なレンズの値の4分の1となろう。ただし、F値の低減は、焦点深度の低減と等しいことから、実際には、多くの場合に、2Rを格段に下回るミラー基部直径を有することが望ましくなる。
【0073】
例えば、先程引用された好ましい素子厚みを検討することによって、本発明者らは、ミラーの焦点距離が40μmとなることを必要とすることになり、この場合に、これは、ミラーの半径Rが80μmという値を有することを必要とし、かつ、したがって、160μmに近接する最大理論直径と、したがって、F値f/#=0.25mmと、を必要とする。
【0074】
上述の例においては、微細画像要素は、基材上に印刷することによって設けられている。画像要素の一部又はすべてをレリーフ構造体として設けることも可能であり、かつ、これらのいくつかの例が図12のA〜Jに示されている。これらの図において、“IM”は、画像を生成するレリーフの部分を示しており、“NI”は、画像を生成しない部分を示している。
【0075】
図12のAは、エンボス加工された又は凹入した画像要素を示している。図12のBは、デボス加工された画像要素を示している。図12のCは、格子構造体の形態を有する画像要素を示しており、図12のDは、蛾の目(moth−eye)又はその他の微細ピッチ格子構造体を示している。
【0076】
これらの構造体は、組み合わせることができる。例えば、図12のEは、凹部エリア内において格子によって形成された画像要素を示しており、図12のFは、デボス加工されたエリア上における格子を示している。
【0077】
図12のGは、粗いエンボス加工の使用を示している。
【0078】
図12のHは、エンボス加工されたエリア上における印刷の提供を示しており、図12のIは、“Aztec”形状の構造体を示している。
【0079】
図12のJは、インクが充填された凹部を示している。
【0080】
上述の素子構造の様々な実施形態は、既知の方法によって、プラスチック又は紙の基材に内蔵するために、パッチ、フォイル、ストライプ、ストリップ、又はスレッドに切り裂くか又は切断することができる。
【0081】
一実施形態においては、本発明は、窓を有するスレッドとして証券用紙に内蔵することができる。
【0082】
更なる例においては、セキュリティ素子は、1つ又は複数のその他の光学セキュリティ機能をも含む。この例が図13に示されている。この例においては、モアレ拡大器素子400は、図6〜図10を参照して説明したように形成されている。また、このセキュリティ素子は、いくつかのホログラム画像生成構造体411〜416をも含む。これらのホログラム画像構造体は、微細レンズと同一の樹脂内に鋳造又はエンボス加工することができるが、同様に、微細レンズを鋳造するのに適したものとホログラム構造体をエンボス加工するのに適したものという2つの異なる樹脂を見当の合った状態において適用することもできる。又は、この代わりに、ホログラム構造体は、微細レンズとは反対のポリマー層の面に位置したポリマーラッカー内にエンボス加工することもできる。
【0083】
ホログラム生成構造体は、ホログラム又はDOVID画像要素の形態を有することができる。図13に示されているラベル構造においては、微細レンズと、2つの拡大された画像配列の可視化されたものと、は、中央の水平な帯又はラベルの領域内に配置されており、ホログラム生成構造体は、両側部に配置されている。ただし、この例は、純粋に例示を目的としたものであり、かつ、例えば、モアレ拡大素子30が両側部上の1つ又は複数の領域内に設けられた状態において、ホログラム生成構造体100を中央の帯又はストリップ内に配置することもできることを理解されたい。又は、この代わりに、モアレ拡大された画像と、ホログラム生成構造体によって提供される画像と、を、単一画像のそれぞれの提供コンポーネントによって、単一画像に統合することもできる。
【0084】
図14はこのような統合された設計の一例を示している。この場合には、ホログラム生成構造体420は、巻物(scroll)を形成しており、かつ、この巻物の中間部分において、ホログラム構造体は、この場合には移動する“5”及び星であるモアレ拡大された画像を生成するために、モアレ拡大素子422によって置換されている。
【0085】
ホログラム構造体100、101の場合には、これらは、任意の従来の形態を有することが可能であり、かつ、完全に又は部分的に金属被覆することができる。又は、この代わりに、反射改善金属被覆層をZnSなどの実質的に透明な無機高屈折率層によって置換することもできる。
【0086】
どのような構成が規定されるのかとは無関係に、図13及び図14において2つの異なる光学効果に対して割り当てられている個々の領域は、それらの効果の明瞭な可視化を促進するために十分に大きいことが有利である。
【0087】
以上の図面に示されているセキュリティ素子は、保護対象文書に接触する素子の外側表面に対する感熱又は感圧接着剤の適用を通常必要とする文書を保護するためのラベルとして適用されるのに適している。更には、任意選択の保護被覆/ワニスを素子の露出した外側表面に適用することもできる。保護被覆/ワニスの機能は、セキュリティ基材上への転写の際及び流通の際の、素子の耐久性を増大させることである。
【0088】
ラベルではなく転写要素の場合には、セキュリティ素子は、好ましくは、担持体基材上に予め製造され、かつ、後続の作業ステップにおいて基材に転写される。セキュリティ素子は、接着剤層を使用して文書に貼付することができる。接着剤層は、セキュリティ素子に、又はその素子が貼付される保護対象文書の表面に、適用される。露出した層、又はこの代わりに担持体層が、外側保護層として機能する構造の一部として留まることができるため、転写の後に、担持体ストリップを除去し、これによって、セキュリティ素子を残すことができる。微細光学構造体を有する注型硬化素子に基づいてセキュリティ素子を転写するための適切な方法が欧州特許第1897700号明細書に記述されている。
【0089】
また、本発明のセキュリティ素子は、セキュリティストリップ又はスレッドとして内蔵することもできる。いまや、セキュリティスレッドは、世界の多くの通貨だけでなく、証票、パスポート、トラベラーズチェック、及びその他の文書にも、存在している。多くの場合に、スレッドは、部分的に埋め込まれた方式又は窓を有する方式によって設けられており、この場合に、スレッドは、紙の内外に編み込まれているように見える。所謂窓を有するスレッドを有する紙を製造する1つの方法は、欧州特許第0059056号明細書において見出すことができる。欧州特許第0860298号明細書及び国際特許出願公開第2003/095188号パンフレットは、幅の広い部分的に露出したスレッドを紙の基材に埋め込むための様々な方法について記述している。更なる露出エリアが本発明などの光学的に変化可能な素子の良好な使用法を許容するため、通常は2〜6mmの幅を有する幅広のスレッドが特に有用である。
【0090】
本発明のセキュリティ素子は、いずれかの層に検出可能な材料を導入することによって、又は、別個の機械可読層を導入することによって、機械によって判読可能なものにすることができる。外部刺激に対して反応する検出可能な材料は、限定を伴うことなしに、蛍光性材料、燐光性材料、赤外線吸収材料、サーモクロミック材料、フォトクロミック材料、磁性材料、エレクトロクロミック材料、導電性材料、及びピエゾクロミック材料を含む。
【0091】
薄膜干渉要素、液晶材料、及びフォトニック結晶材料などの更なる光学的に変化可能な材料をセキュリティ素子に含むことができる。このような材料は、フィルミック層の形態であってもよく、又は、印刷による適用に適した着色された材料であってもよい。
【0092】
本発明のセキュリティ素子は、不透明な層を有してもよい。
【0093】
図15及び図16は、本発明のセキュリティ素子に内蔵された金属被覆が剥離された(demetallised)画像500の形態を有する更なるセキュリティ機能を示している。素子の拡大された画像配列510が、この素子の中央の帯内において観察される。これは、強力なレンチキュラータイプのアニメーションに起因した第1セキュリティ効果を提供する。図16において観察することができるように、断面A−Aに沿った図15内に示されている機能の構造は、図8に示されているとおりである。モアレ拡大を示す中央の帯の外の領域においては(断面B−Bに沿って観察されるように)、印刷受容層は、金属被覆されている520。金属層の各部分の金属被覆を剥離させることによって、金属被覆が剥離された画像を規定しており、かつ、これによって、反射光において観察可能であるが更に好ましくは透過光においても観察可能である金属被覆が剥離された標識の生成を可能にしている。
【0094】
更なる例においては、かつ、図17に示されているミラーに基づいたモアレの例を参照すれば、微細ミラーを形成する金属被覆された層は、微細ミラーを超えて延在してもよく、かつ、次いで、この層の各部分の金属被覆を剥離させて金属被覆が剥離された画像を規定することができる。
【0095】
制御され且つ明確に規定されたエリア内に金属が存在していない部分的に金属被覆された/金属被覆が剥離された薄膜を製造するための1つ方法は、米国特許第4652015号明細書に記述されているものなどのレジスト及びエッチング法を使用して領域の金属被覆を選択的に剥離させるというものである。類似の効果を実現するためのその他の技法としては、例えば、アルミニウムをマスクを通じて真空蒸着させることが可能であり、又は、アルミニウムをプラスチック担持体の複合ストリップから選択的に除去することが可能であり、かつ、アルミニウムをエキシマレーザーを使用して選択的に除去することができる。又は、この代わりに、Eckart社が販売するMetalstar(登録商標)インクなどの金属質の外観を有する金属効果インクを印刷することによって、金属質の領域を設けてもよい。
【0096】
代替機械可読実施形態においては、透明な磁性層を素子構造内の任意の位置に内蔵することができる。所定のサイズを有すると共に磁気層が透明な状態に留まる濃度において分布した磁性材料の粒子の分布を含む適切な透明磁性層が国際特許出願公開第2003/091953号パンフレット及び国際特許出願公開第2003/091952号パンフレットに記述されている。
【0097】
更なる例においては、本発明のセキュリティ素子は、その素子が文書の透明領域に内蔵されるように、セキュリティ文書に内蔵してもよい。セキュリティ文書は、紙及びポリマーを含む任意の従来の材料から形成された基材を有してもよい。当技術分野においては、これらのタイプの基材のうちのそれぞれの基材内に透明な領域を形成するための技法が知られている。例えば、国際特許出願公開第1983/00659号パンフレットは、基材の両面上に不透明被覆を有する透明基材から形成されたポリマー銀行券について記述している。基材の両面上の局所領域内において不透明被覆を省略し、透明領域を形成している。
【0098】
欧州特許第1141480号明細書は、紙の基材内に透明領域を製造する方法について記述している。紙の基材内に透明領域を形成するためのその他の方法は、欧州特許第0723501号明細書、欧州特許第0724519号明細書、欧州特許第1398174号明細書、及び国際特許出願公開第2003/054297号パンフレットに記述されている。
【0099】
本発明の微細画像配列のうちの1つ又は複数の配列は、非可視放射に対して可視的に応答する材料を有するインクによって印刷してもよい。当業者には、蛍光又は燐光特性を有する材料を含むものとして、ルミネセント材料が知られている。また、フォトクロミック材料及びサーモクロミック材料などの非可視放射に対して可視的に応答するその他の材料の使用も周知である。例えば、拡大された配列のうちの1つだけが通常の昼光条件において可視となり、第2の拡大された画像がUV照明下においてだけ可視になってもよいであろう。又は、この代わりに、2つの拡大された配列が、通常の昼光条件においては、同一色に見え、かつ、フィルタを使用して観察された際には、又は、UV照明下において観察された際には、異なる色に見えることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基材を有するモアレ拡大素子であって、前記透明な基材は、
i)第1表面上の微細合焦要素の規則的な配列であって、前記合焦要素は、焦点面を規定している、微細合焦要素の配列と、
ii)前記合焦要素の前記焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された微細画像要素単位セルの対応する配列であって、それぞれの単位セルは、少なくとも2つの微細画像コンポーネントを有する、微細画像要素単位セルの配列と、
を担持しており、
前記微細合焦要素及び前記微細画像要素単位セルの配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、前記微細合焦要素の配列が前記微細画像要素単位セルの配列と協働し、モアレ効果に起因して前記微細画像コンポーネントの拡大されたバージョンを生成するようになっており、
前記単位セルの第1微細画像コンポーネントは、残りの第2微細画像コンポーネントの色濃度とは異なる色濃度を有し、かつ、
更なる有色層が、前記微細画像要素単位セルの配列上に、又はこの上部に延在するように、設けられ、前記有色層は、前記素子が観察された際に、少なくとも前記第2微細画像コンポーネントが、前記更なる有色層に少なくとも部分的に依存し、かつ、前記第1微細画像コンポーネントの色とは異なる色に見えるように、設けられる、素子。
【請求項2】
前記第1及び第2微細画像コンポーネントは、互いに隣接している請求項1に記載の素子。
【請求項3】
前記第1及び第2微細画像コンポーネントは、互いに当接している請求項2に記載の素子。
【請求項4】
前記第2微細画像コンポーネントは、スクリーニングされたパターンとして形成される請求項1〜3のいずれか一項に記載の素子。
【請求項5】
前記スクリーニングされたパターンは、ハーフトーンスクリーンの形態を有する請求項4に記載の素子。
【請求項6】
前記第1微細画像コンポーネントは、不透明な色によって形成される請求項1〜5のいずれか一項に記載の素子。
【請求項7】
前記更なる有色層は、均一な色を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の素子。
【請求項8】
前記更なる有色層の前記色は、横方向において変化する請求項1〜6のいずれか一項に記載の素子。
【請求項9】
前記第1微細画像コンポーネントは、第1ピッチを有する第1配列を規定しており、かつ、前記第2微細画像コンポーネントは、第2の異なるピッチを有する第2配列を規定しており、それぞれのピッチは、前記微細合焦要素の前記ピッチとは異なっており、これによって、前記第1及び第2コンポーネントの前記拡大されたバージョンは、異なる深度に見える請求項1〜8のいずれか一項に記載の素子。
【請求項10】
前記第1及び第2配列の横方向寸法は、前記第1配列の前記微細画像コンポーネントが前記第2配列の前記微細画像コンポーネントと重複しないようになっている請求項9に記載の素子。
【請求項11】
前記微細合焦要素は、球面レンズレット、円柱形レンズレット、平凸レンズレット、両凸レンズレット、フレネルレンズレット、及びフレネルゾーンプレートなどの微細レンズを有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の素子。
【請求項12】
それぞれの微細レンズは、1〜100μm(ミクロン)の、好ましくは1〜50μm(ミクロン)の、更に好ましくは10〜30μm(ミクロン)の範囲の直径を有する請求項11に記載の素子。
【請求項13】
前記微細合焦要素は、凹面鏡を有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の素子。
【請求項14】
前記微細画像コンポーネントは、シンボル、幾何学的図形、英数字、ロゴ、及び画像表現などのアイコンを有する請求項1〜13のいずれか一項に記載の素子。
【請求項15】
前記微細画像コンポーネントは、前記基材上に印刷される請求項1〜14のいずれか一項に記載の素子。
【請求項16】
前記微細画像コンポーネントは、前記基材上の格子構造体、凹部、又はその他のレリーフパターンとして形成される請求項1〜14のいずれか一項に記載の素子。
【請求項17】
前記基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリプロピレンのうちの1つなどのポリマーを有する請求項1〜16のいずれか一項に記載の素子。
【請求項18】
前記微細合焦要素の配列と前記微細画像要素単位セルの配列の間の距離は、1〜50μm(ミクロン)、好ましくは、10〜30μm(ミクロン)の範囲である請求項17に記載の素子。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載のセキュリティ素子。
【請求項20】
前記モアレ拡大素子に隣接して配置された又はこれと統合された1つ又は複数の光学的に変化可能な効果を生成する構造体を更に有する請求項19に記載のセキュリティ素子。
【請求項21】
セキュリティスレッド、ラベル、又はパッチとして形成される請求項19又は20に記載の素子。
【請求項22】
前記素子は、銀行券、身分証明書、又はこれらの類似物のようなセキュリティ文書の透明な窓内に設けられる、請求項19又は20に記載のセキュリティ素子。
【請求項23】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の光学素子が設けられた物品。
【請求項24】
銀行券、小切手、パスポート、身分証明書、正規品証明書、収入印紙、並びに、セキュリティ価値又は身元のその他の文書のうちの1つを有する請求項23に記載の物品。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−521159(P2013−521159A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555491(P2012−555491)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050407
【国際公開番号】WO2011/107791
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(598151304)ドゥ ラ リュ インターナショナル リミティド (20)
【Fターム(参考)】