説明

モップ収納容器

【目的】平坦でない設置面に設置され、モップ収納を行っても簡単に転倒しない、床面設置上の安定性に優れたモップ収納容器を提供することである。
【構成】本発明に係るモップ収納容器は、許容傾斜角度θないし最大許容傾斜角度θに対して、ハンドル付きモップを容器本体1に収納したとき、モップ収納容器とハンドル付きモップの合成重心Gと、台座部2が揺動する支点Sとを結ぶ直線GSと、支点Sを通る鉛直線Pとのなす角度θが、θ>θ又はθ≧θを満足するように安全設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の床面に設置され、ハンドル付きモップのハンドルを外方に突出させた状態でモップを収納するモップ収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
床面等の清掃には、モップ清掃具や箒によりごみや塵を一箇所に寄せ集め、塵取りを用いてごみ箱に捨てる方法あるいは電気掃除機を用いる方法がある。電気掃除機を使えば、塵集めの手間を省くことができるが、吸引ホースやノズルを掃除機本体と一緒に移動させる必要があり、簡易に清掃作業を済ませたいときには、モップ清掃具や箒が広く使用されている。殊に、箒は使い込むと擦り減ってしまうが、モップ清掃具は汚れても洗浄して再利用可能であり、レンタルモップ製品としても普及している。
【0003】
従来、モップ掃除具を使用した場合、掃除具を収納庫に仕舞い込んだり、壁にもたれかけたりしている。このとき、モップを剥き出しにしておくと室内等の美観が損なわれるので、特開平7−79900号公報(特許文献1)に示されるように、モップ専用収納ケースが提案されている。斯かる収納ケースはモップを包み込む箱体からなり、側面にモップ挿入口が開口されている。このような側面が開口した収納ケースでは、汚れたモップを収納すると、モップが吸収していた汚水や微細塵埃が前記開口部から滲みだしたりして、床面を汚損するおそれがあった。
【特許文献1】特開平7−79900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
汚水や付着塵埃が直接、床面に漏れたり、滲み出させないためには、モップ収納容器としては、モップを包容するバケツタイプが好ましい。しかしながら、場所を取らないためには、コンパクトな形状にする必要もあり、バケツタイプの収納容器にハンドル付きモップを収納した場合、ハンドル部分が外方に突き出るため、重量バランスが崩れて容器ごと倒れやすくなる問題があった。特に、モップ収納容器が設置される床面が必ずしも平坦であるとは限らないため、例えば、フロアカーペットに皺がいっていたりして、傾斜や凹凸が生じた床面に設置したとき、容器に収納したモップのハンドルに力が加わることで転倒しやすくなるといった不具合を生じた。
【0005】
従って、本発明の目的は、平坦でない設置面に設置され、モップ収納を行っても簡単に転倒しない、床面設置上の安定性に優れたモップ収納容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述のように、上面開口部を備えた容器本体にモップを下向きにし、ハンドルを外方に突き出させて収納する場合、建物等の床面自体が平坦であってもカーペットの盛り上がりや床上物等が容器底部と設置面の間に介在すると、モップ収納容器が傾き、容器ごと転倒するおそれが生ずる。斯かる転倒状況において、本発明は、ハンドルが張り出す側における、容器底部の周縁の一部を支点として揺動する転倒運動に着目して、ハンドル付きモップとモップ収納容器の重量バランスに力学的考察を加えてなされたものである。
【0007】
本発明の第1の形態は、所定の床面に設置され、ハンドル付きモップのハンドルを外方に突出させた状態でモップを収納するモップ収納容器において、前記モップ収納容器は、上面開口部から前記ハンドル付きモップを、モップが下向きになるように収納する容器本体と、前記容器本体の底部に設けられた前記底部より広い台座部と、前記上面開口部の縁部に設けられて、前記ハンドルの中間部を保持するハンドル保持部とから構成され、前記ハンドル付きモップを前記容器本体に収納したとき、前記モップ収納容器と前記ハンドル付きモップの合成重心Gと、前記台座部が揺動する支点Sとを結ぶ直線GSと、前記支点Sを通る鉛直線Pとのなす角度θが、水平面に対して許容される前記床面の許容傾斜角度θとするとき、θ>θを満足するように安全設計されているモップ収納容器である。
【0008】
本発明の第2の形態は、前記第1の形態において、前記許容傾斜角度θに安全角度θを加えた角度を最大許容傾斜角度θとしたとき、前記角度θは最大許容傾斜角度θに対して、θ≧θを満足するように安全設計されているモップ収納容器である。
【0009】
本発明の第3の形態は、前記第1又は2の形態において、前記台座部を水平面に設置したときに、前記台座部方向をX軸、前記支点Sの鉛直方向をY軸、前記支点Sを原点座標(0,0)として、質量Mvの前記モップ収納容器の重心Gv(X,Y)、質量Mmの前記ハンドル付きモップの重心Gm(X,Y)及び合成重心G(X,Y)とした場合、前記θは、
θ=tan−1(X/Y)=tan−1((M+M)/(M+M))で与えられるモップ収納容器である。
【0010】
本発明の第4の形態は、前記第2又は3の形態において、前記安全角度θは、15°≧θ≧5°の範囲のいずれかであるモップ収納容器である。
【0011】
本発明の第5の形態は、前記第1〜4のいずれかの形態において、前記容器本体は、逆錐台形又は略逆錐台形容器からなるモップ収納容器である。
【0012】
本発明の第6の形態は、前記第1〜5のいずれかの形態において、前記ハンドル保持部は、前記ハンドルの中間部が前記縁部より延出する延出方向に沿って保持する断面コ字状保持部材からなるモップ収納容器である。
【0013】
本発明の第7の形態は、前記第1〜6の形態のいずれかにおいて、複数個の床面滑り止め部材を前記台座部の裏面に配設したモップ収納容器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の形態によれば、前記モップ収納容器は、上面開口部から前記ハンドル付きモップを、モップが下向きになるように収納する容器本体と、前記容器本体の底部に設けられた前記底部より広い台座部と、前記上面開口部の縁部に設けられて、前記ハンドルの中間部を保持するハンドル保持部とから構成され、前記ハンドル付きモップを前記容器本体に収納したとき、前記モップ収納容器と前記ハンドル付きモップの合成重心Gと、前記台座部が揺動する支点Sとを結ぶ直線GSと、前記支点Sを通る鉛直線Pとのなす角度θが、水平面に対して許容される前記床面の許容傾斜角度θとするとき、θ>θを満足するように安全設計されているので、前記ハンドル付きモップと前記モップ収納容器の重量バランスが保持されて転倒を防止することができ、容器設置面の傾斜が前記許容傾斜角度θまで許容可能となる、モップ収納時の設置安定性に優れたモップ収納容器を実現することができる。特に、本発明における容器の安全設計は、前記重量バランスだけで転倒防止構造とするので、前記ハンドルや前記容器本体の形状等の形態因子が異なるものであっても、転倒防止構造とすることができ、製品設計上の自由度を高められる適応性を具備する。
【0015】
前記許容傾斜角度θの具体値については、現在の日本で許される許容角度の最大値を導入することが安全性の面で必要である。平成12年4月1日に施行された住宅品質確保促進法によれば、1000mmの床面上2点間で3mmの落差が通常生活では限界とされている。この観点からは、θ=tan−1(3/1000)=0.17°となる。また、地盤沈下により床面が剛体傾斜する場合には、1000mmの床面上2点間で6mmの沈下量が限界とされている。この観点からは、θ=tan−1(6/1000)=0.34°となる。更に、ダストコントロール分野では、室内の床面に敷かれているパイルカーペット上に本発明のモップ収納容器を載置する場合があり、前記台座部の直径が150mm〜250mmの範囲で設計されると、前記パイルの厚みが5mm〜8mmの場合、最大傾斜角として150mm区間で前記台座部が最大で8mmの落差で傾斜すると考えられる。この観点からは、θ=tan−1(8/150)=3.05°となる。従って、建築学的観点よりも日常生活的観点の方が大きな許容傾斜角度θを必要とする。上記の考察から、許容傾斜角度θの一例として、θ=3°が妥当であり、この場合には、前記θは、θ>3°を満足するように設定される。
【0016】
本発明の第2の形態によれば、前記許容傾斜角度θに安全角度θを加えた角度を最大許容傾斜角度θとしたとき、前記角度θは最大許容傾斜角度θに対して、θ≧θを満足するように安全設計されたモップ収納容器が提供される。一般家屋等における床面や敷物面の傾斜自体は、極端な地盤低下の影響等を除き、例えば3°の様に小さいものといえるが、床面上に何らかの要因で凹凸等を生じているときには、前記許容傾斜角度θは水平面に対して5°程度と云える。ところが、日常生活では床面に何か予想に反した物が存在したり、子供が手を掛ける等、或いは床上物等による突発的な転倒因子を想定する必要がある。そのため、前記許容傾斜角度θに、更に、所定の安全角度θを加えた角度として最大許容傾斜角度θ(=θ+θ)を考慮するのが好ましい。そこで、本発明の第2の形態によれば、前記許容傾斜角度θに安全角度θを加えた角度を最大許容傾斜角度θとしたとき、前記角度θは最大許容傾斜角度θに対して、θ≧θを満足するように安全設計されているので、通常のモップ収納状態では、より簡単には転倒しないモップ収納容器を実現することができる。
【0017】
具体的には、例えば玩具安全規格(ST規格)には、玩具を傾斜角10°の平面上に載置しても、玩具は転倒しないような構造を有することが要請される。この10°が本発明の最大許容傾斜角度θに包含されれば良いことになる。従って、許容傾斜角度θに前記安全角度θを加えた最大許容傾斜角度θに対して、θ≧θを満足するように前記角度θを設定する必要がある。
【0018】
前記モップ収納容器が前記ハンドルの突出側に傾き、転倒するとき、前記台座部の周縁が床面に接しながら、その接点を揺動の支点Sとして揺動する。そこで、本発明の第3の形態によれば、前記台座部を水平面に設置したときに、前記支点Sを原点座標(0,0)として、前記台座部方向をX軸、前記支点Sの鉛直方向をY軸、質量Mvの前記モップ収納容器の重心Gv(X,Y)、質量Mmの前記ハンドル付きモップの重心Gm(X,Y)及び合成重心G(X,Y)とした場合、前記θは、
θ=tan−1(X/Y)=tan−1((M+M)/(M+M))で与えられるので、前記許容傾斜角度θ好ましくは、前記最大許容傾斜角度θ以下の傾斜を有する設置面に設置してモップ収納を行っても転倒しないモップ収納容器を実現することができる。
【0019】
本発明の第4の形態によれば、前記安全角度θは、15°≧θ≧5°の範囲のいずれかであるので、一般家屋の床面自体の傾斜を考慮すると、前記許容傾斜角度θは、約2〜3°であり、前記最大許容傾斜角度θを日常生活において不都合なく使用可能な実用範囲(18°≧θ≧7°)が得られ、普通にモップ収納を行う限り、簡単には転倒しないモップ収納容器を実現することができる。
【0020】
本発明に係る前記容器本体の形状は筒形状等の竪型を含むが、本発明の第5の形態によれば、前記容器本体に、逆錐台形又は略逆錐台形容器を使用することにより、広口容器本体の傾斜内面にモップを添わせてワンタッチで収納でき、取出しも簡便に行うことができる。
【0021】
本発明の第6の形態によれば、前記ハンドル保持部は、前記ハンドルの中間部が前記縁部より延出する延出方向に沿って保持する断面コ字状保持部材からなるので、前記容器本体より外方に突き出たハンドル部分が横揺れしないように前記断面コ字状保持部材により把持して、前記ハンドルの揺れによる転倒運動の発生を防止することができる。
【0022】
本発明の第7の形態によれば、複数個の床面滑り止め部材を前記台座部の裏面に配設したので、例えば、滑りやすいフロア等に前記モップ収納容器を載置したとき、前記容器本体や前記モップに外力が加わって滑動したり、傾いたりするのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態に係るモップ収納容器を図面を参照して以下に説明する。
【0024】
図1は本実施形態のモップ収納容器の正面図、図2はその側面図である。本実施形態のモップ収納容器は、上面開口部1aよりハンドル付きモップを、下向きにして収納する、逆円錐台形状の容器本体1からなる。容器本体1の底部5にはその底面より大きい台座部2が底裏より嵌着されている。モップ収納容器の各部材はポリプロピレン等により樹脂成形加工されている。容器本体1及び台座部2は一体成形されてもよい。上面開口部1aは容器本体1の中心軸Cに対して斜めに傾斜開口しており、モップの出し入れがしやすい広口形状となっている。上面開口部1aの上縁部4側にハンドル保持部3が係着されている。
【0025】
上記モップ収納容器のX水平面6からの上方高さh1は506mm、上面開口部1aまでの下方高さh2は323mmである。上面開口部1aの水平横断面の上部直径Daは157mm、台座部2の半径Rbは94mmである。また、容器全体の総重量は300gである。
【0026】
図3は本実施形態に係るモップ収納容器に収納されるモップ掃除具を示す。同図の(3A)は、A基部33に植設したAモップ32を片持ち支持した、Aハンドル30付きモップ掃除具である。A基部33に連結した支持部34はAハンドル30の下端根元にて、A軸支部31により略80°回動自在に軸支されている。このモップ掃除具は、A軸支部31でAモップ32を折り畳んで容器本体1に収容し、Aハンドル30を上方より突き出させて収納される。Aハンドル30はA全長L1(=1290mm)の長柄軸材からなり、ハンドル単体としての重心Gmは軸材先端からのA距離L2(=890mm)の位置にある。このモップ掃除具の総重量は約448gである。
【0027】
図3の(3B)は、別のBハンドル40付きモップ掃除具を示す。この掃除具において、Bモップ42を植設したB基部43は、表面中央にてBハンドル40の下端根元のB軸支部41により略180°回動自在に軸支されている。この掃除具も、B軸支部41でBモップ42を折り畳んで容器本体1に収容し、Bハンドル40を上方より突き出させて収納される。Bハンドル40はB全長L3(=1220mm)の長柄軸材からなり、ハンドル単体としての重心Gmは軸材先端からのB距離L4(=845mm)の位置にある。このモップ掃除具の総重量は約460gである。
【0028】
上記2種類のモップ掃除具におけるAモップ32、Bモップ42はパイル材からなる。これらの掃除具はいずれも本実施形態に係るモップ収納容器に収納可能な掃除具の一例であるが、本発明における収納対象はこれに限らず、ハンドルが容器本体1より外方に突出して収納される形態のモップ掃除具に適用することができる。
【0029】
図4は、上面開口部1aの上縁部4にハンドル保持部3が係着された係着構造を示す。上縁部4は、ハンドル保持部3の舌片状下部9が差し込まれる挿入溝14を有する。ハンドル保持部3は、下部9の上部に連設された断面コ字状部材からなる、ハンドル長手方向に沿った保持部8を有する。保持部8は上面開口部1a側に向けて配置され、容器本体1に収納したモップのハンドルの一部が揺動しないように把持して、モップの立てかけ状態を安定に保持する。下部9の中間位置には、係合突起10が2個、並設して凸設されている。
【0030】
挿入溝14は外側部11と内側部12により挟まれた縦溝からなり、外側部11の中間位置に係合孔15が一対、並設して穿設されている。挿入溝14の開口部13より下部9を溝底まで挿入して押し入れると、係合突起10がちょうど、係合孔15に嵌まり込んで、ハンドル保持部3は上縁部4に強固に係着されて組み付けられる。
【0031】
上記モップ収納容器は家屋床面等の水平面に載置した設置状態において、その重心Gは中心線Cに対してハンドル保持部3に少し近づいた位置にある。
【0032】
本実施形態においては、モップを容器本体1に収納し、ハンドルの中間部をハンドル保持部3に保持させた状態で、傾倒ないし転倒するのを防止するために、容器設置面の許容傾斜角度θに対する安全設計が施されている。
【0033】
図5は傾倒防止の安全設計に必要な許容傾斜角度θを説明するための図である。例えば、上部が開口された円筒有底形状のモップ収納容器60を使用し、ハンドル付きモップ62をハンドル根元のヒンジ部63で折り畳んで収納する場合、図5の(5A)に示す水平面64に静置する限り、普通の使い方をしておけば転倒のおそれはほとんど生じない。しかし、同図の(5B)に示すように、水平面64に対して、所定角度傾いた傾斜面65に、モップ収納したモップ収納容器60を載置すると、傾斜面65の傾斜角度によっては、自然にあるいは少しの外力が加わるだけで即座に転倒もしくは転倒しやすくなる。即ち、モップ収納容器60とその外方にハンドル61を傾斜下方側に突出させたハンドル61付きモップ62との重量平衡バランスが崩れて、容器ごと、図中の矢印方向に、つまり傾斜下方側に転倒するおそれを生ずる。斯かる転倒不安定現象が起こりうる傾斜角度のうち、日常生活上想定される設置状況から許容傾斜角度θが設定される必要がある。
【0034】
一般家屋の床面自体の傾斜を考慮すると、許容傾斜角度θは、約2〜3°である。モップ収納容器を日常生活において不都合なく使用するには、安全角度θを考慮する必要もある。経験則等から考察したところ、安全角度θは、15°≧θ≧5°の範囲が好ましい。即ち、許容傾斜角度θに安全角度θを加えた最大許容傾斜角度θを使用することにより、日常生活において不都合なく使用可能な実用範囲(18°≧θ≧7°)が得られ、普通にモップ収納を行う限り、簡単には転倒しないモップ収納容器を実現することができる。
【0035】
本実施形態に係るモップ収納容器において、上記許容傾斜角度θないし最大許容傾斜角度θに対して、ハンドル付きモップを容器本体1に収納したとき、モップ収納容器とハンドル付きモップの合成重心Gと、台座部2が揺動する支点Sとを結ぶ直線GSと、支点Sを通る鉛直線P(後述のY軸)とのなす角度θが、θ>θ又はθ≧θを満足するように安全設計されている。
【0036】
図3の(3A)に示したモップ掃除具の収納例により、上記安全設計を詳述する。図6は上記モップ収納容器に(3A)のモップ掃除具を収納した状態を示す。図5の(5B)により説明したように、傾斜設置面上の容器載置により、転倒現象が起きる場合には、ハンドル保持部3側の台座部2の周縁を支点Sとして揺動する。これに着目して、本発明に係る安全設計は、モップ収納容器を水平面に設置したときに、支点Sを原点座標(0,0)とし、台座部2方向をX軸、支点Sの鉛直方向をY軸とすると、質量Mvのモップ収納容器の重心Gv(X,Y)、質量Mmの前記ハンドル付きモップの重心Gm(X,Y)及び合成重心G(X,Y)としたとき、転倒しない重量バランスの関係から、前記θは、
θ=tan−1(X/Y)=tan−1((M+M)/(M+M))で与えられる。この例では、合成重心Gの位置は、支点SからX軸方向に62.5mm、Y軸方向に290mmの位置にある。従って、本実施形態におけるモップ収納容器の構成によれば、前記θは約10°となり、最大許容傾斜角度θ以下の傾斜を有する設置面に設置してモップ収納を行っても簡単には転倒しない。なお、台座部2の裏面側にパッド7を設けているが、底面が浮き上がらないように、その裏面が面一になるように配設するのが好ましい。但し、台座部2の周縁を支点Sとすることに変わりはない。
【0037】
図7は台座部2の裏面を示す。台座部2の裏面には、合成ゴム又はウレタン樹脂等の弾性樹脂からなる床面滑り止め部材の扁平丸形パッド7を装填するためのパッド装填用凹部7aが同心円状に4個、形成されている。パッド7は、モップ収納容器が滑りやすい床面等に設置されたときに、床表面に吸着して容器の移動を抑制し、モップ収納を行っても、あるいは外力が加えられても簡単に位置ずれしたり、傾いたりするのを防止する。容器の滑り止めには、パッド7の装着の他に、台座部2の裏面全体又は一部の表面に微細凹凸や梨地加工して床面との摩擦抵抗を大きくしても実施できる。
【0038】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、ハンドルやモップの形状に依存することなく、モップ収納時の転倒防止に対する安全設計が施されたモップ収納容器を提供することができる。殊に、予め重量規格を把握できるハンドル付モップと、それに応じた安全設計を施したモップ収納容器とを1セットにしたモップ清掃用具を、例えば、セット販売品やレンタル用品としてユーザに提供する場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態のモップ収納容器の正面図である。
【図2】前記モップ収納容器の側面図である。
【図3】前記モップ収納容器に収納されるモップ掃除具の外観図である。
【図4】前記モップ収納容器における容器本体1の上縁部4の断面図である。
【図5】前記実施形態における許容傾斜角度θの説明図である。
【図6】前記モップ収納容器に図3(3A)のモップ掃除具を収納した状態を示す図である。
【図7】前記モップ収納容器の台座部2の裏面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 容器本体
1a 上面開口部
2 台座部
3 ハンドル保持部
4 上縁部
5 底部
6 X水平面
7 パッド
7a 凹部
8 保持部
9 下部
10 係合突起
11 外側部
12 内側部
13 開口部
14 挿入溝
15 係合孔
30 Aハンドル
31 A軸支部
32 Aモップ
33 A基部
34 支持部
40 Bハンドル
41 B軸支部
42 Bモップ
43 B基部
60 モップ収納容器
61 ハンドル
62 ハンドル付きモップ
63 ヒンジ部
64 水平面
65 傾斜面
C 中心軸
Da 上部直径
Db 下部直径
Rb 半径
上方高さ
下方高さ
X 台座部方向軸
Y 鉛直方向軸
ハンドル付きモップの重心
モップ収納容器の重心
G 合成重心
A全長
A距離
B全長
B距離
θ 許容傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の床面に設置され、ハンドル付きモップのハンドルを外方に突出させた状態でモップを収納するモップ収納容器において、前記モップ収納容器は、上面開口部から前記ハンドル付きモップを、モップが下向きになるように収納する容器本体と、前記容器本体の底部に設けられた前記底部より広い台座部と、前記上面開口部の縁部に設けられて、前記ハンドルの中間部を保持するハンドル保持部とから構成され、前記ハンドル付きモップを前記容器本体に収納したとき、前記モップ収納容器と前記ハンドル付きモップの合成重心Gと、前記台座部が揺動する支点Sとを結ぶ直線GSと、前記支点Sを通る鉛直線Pとのなす角度θが、水平面に対して許容される前記床面の許容傾斜角度θとするとき、θ>θを満足するように安全設計されていることを特徴とするモップ収納容器。
【請求項2】
前記許容傾斜角度θに安全角度θを加えた角度を最大許容傾斜角度θとしたとき、前記角度θは最大許容傾斜角度θに対して、θ≧θを満足するように安全設計されている請求項1に記載のモップ収納容器。
【請求項3】
前記台座部を水平面に設置したときに、前記台座部方向をX軸、前記支点Sの鉛直方向をY軸、前記支点Sを原点座標(0,0)として、質量Mvの前記モップ収納容器の重心Gv(X,Y)、質量Mmの前記ハンドル付きモップの重心Gm(X,Y)及び合成重心G(X,Y)とした場合、前記θは、
θ=tan−1(X/Y)=tan−1((M+M)/(M+M))で与えられる請求項1又は2に記載のモップ収納容器。
【請求項4】
前記安全角度θは、15°≧θ≧5°の範囲のいずれかである請求項2又は3に記載のモップ収納容器。
【請求項5】
前記容器本体は、逆錐台形又は略逆錐台形容器からなる請求項1〜4のいずれかに記載のモップ収納容器。
【請求項6】
前記ハンドル保持部は、前記ハンドルの中間部が前記縁部より延出する延出方向に沿って保持する断面コ字状保持部材からなる請求項1〜5のいずれかに記載のモップ収納容器。
【請求項7】
複数個の床面滑り止め部材を前記台座部の裏面に配設した請求項1〜6のいずれかに記載のモップ収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−240504(P2009−240504A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90097(P2008−90097)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000133445)株式会社ダスキン (119)
【Fターム(参考)】