説明

モノクロロアルカンの安定化方法

【課題】モノクロロアルカンを効果的に安定化して、その着色を効果的に防止する。
【解決手段】安定化剤として酸化プロピレンを用い、これをモノクロロアルカンに添加する。酸化プロピレンの添加量は、モノクロロアルカンに対し通常0.0001〜1重量%であり、好ましくは0.001〜0.1重量%である。この方法は、クロロ基が結合した炭素原子が2つの炭素原子と結合した構造を有するモノクロロアルカンに対して、特に効果的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノクロロアルカンを安定化する方法に関する。モノクロロアルカンは、溶剤や医農薬の原料等として有用である。
【背景技術】
【0002】
塩素化炭化水素は、一般に使用中や貯蔵中における安定性が低く、特に金属や金属塩の存在下では、その分解や金属の腐食が進行し易く、着色し易いという問題がある。塩素化炭化水素を安定化する方法としては、例えば、特公昭50−28928号公報(特許文献1)や特公昭61−26889号公報(特許文献2)に、エポキシエステル化合物やジエポキシエーテル化合物を添加する方法が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特公昭50−28928号公報
【特許文献2】特公昭61−26889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や2の方法は、パークロロエタン、メチレンクロリド、四塩化炭素、ペンタクロロエタン、トリクロロエタンなどのポリクロロアルカンや、塩化ビニル、塩化ビニリデン、トリクロロエチレンなどのモノ又はポリクロロアルケンの安定化には、高い効果を発揮するが、モノクロロアルカンの安定化においては、効果が十分とはいえなかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、モノクロロアルカンを効果的に安定化しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意研究を行った結果、モノクロロアルカンの安定剤として、酸化プロピレンを採用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、モノクロロアルカンに酸化プロピレンを添加することを特徴とするモノクロロアルカンの安定化方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、モノクロロアルカンを効果的に安定化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明が安定化の対象とするモノクロロアルカンは、アルカンの水素原子の1つがクロロ基(塩素原子)で置換されたものであり、通常、その取扱い温度で液体のものである。その例としては、クロロエタン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロペンタン、2−クロロペンタン、3−クロロペンタン、1−クロロヘキサン、2−クロロヘキサン、3−クロロヘキサン、1−クロロヘプタン、2−クロロヘプタン、1−クロロオクタン、2−クロロオクタン、1−クロロデカン、2−クロロデカン、1−クロロドデカン、2−クロロドデカン、1−クロロテトラデカン、2−クロロテトラデカン、1−クロロヘキサデカン、2−クロロヘキサデカン、1−クロロオクタデカン、2−クロロオクタデカンなどが挙げられ、その炭素数は通常2〜20程度である。中でも、クロロ基が結合した炭素原子が2つの炭素原子と結合した構造を有するモノクロロアルカンに対し、本発明は特に効果的である。
【0010】
本発明では、上記のモノクロロアルカンの安定剤として、酸化プロピレンを使用する。これにより、モノクロロアルカンの安定性を効果的に高めることができ、使用中や貯蔵中のモノクロロアルカンの分解などによる着色を効果的に防止することができる。
【0011】
酸化プロピレンの使用量は、モノクロロアルカンに対し、通常0.0001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.1重量%である。
【0012】
本発明は、常圧、減圧又は加圧条件下で行うことができる。また、実施する温度は、通常−80〜80℃、好ましくは−30〜50℃である。
【0013】
また、本発明を実施する際、モノクロロアルカンの製造過程や保存過程で生成しうる酸や金属、金属塩を除去しておくと、本発明の効果はいっそう大きくなる。
【0014】
なお、本発明を実施する際、必要に応じて、アミン類やアルコール類、ケトン類など、他の安定化剤を共存させることも可能である。
【0015】
本発明により安定化したモノクロロアルカンは、そのまま又は蒸留などにより精製した後、各種用途に使用することができる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0017】
実施例1
耐圧ガラス容器に、比色法による色相がAPHA値で10未満である2−クロロプロパン53g、炭素鋼3g、酸化鉄0.2g、及び酸化プロピレン5mgを入れて封管し、40℃で保持した。9日が経過しても、APHA値は10未満であった。
【0018】
比較例1
酸化プロピレンに代えて、エポキシ化大豆油〔東京ファインケミカル(株)のエンビライザーNF−3200〕を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。4日が経過した時点で、APHA値は20であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクロロアルカンに酸化プロピレンを添加することを特徴とするモノクロロアルカンの安定化方法。
【請求項2】
モノクロロアルカンが、クロロ基が結合した炭素原子が2つの炭素原子と結合した構造を有するものである請求項1に記載の安定化方法。
【請求項3】
酸化プロピレンの添加量が、モノクロロアルカンに対し0.0001〜1重量%である請求項1又は2に記載の安定化方法。