モリブデン合金フィードスルーを有するセラミック放電容器
【課題】本発明の課題は先行技術の欠点を回避することである。
【解決手段】セラミック体と該セラミック体に封止されたフィードスルーとを有するセラミック放電容器において、前記フィードスルーを、少なくとも75重量パーセントのモリブデンと5重量パーセントを超すニッケルと銅および鉄から選択された少なくとももう1つの金属とを含むモリブデン合金から形成し、前記合金中の鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比を1:1から9:1の範囲内とする。
【解決手段】セラミック体と該セラミック体に封止されたフィードスルーとを有するセラミック放電容器において、前記フィードスルーを、少なくとも75重量パーセントのモリブデンと5重量パーセントを超すニッケルと銅および鉄から選択された少なくとももう1つの金属とを含むモリブデン合金から形成し、前記合金中の鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比を1:1から9:1の範囲内とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、セラミック放電容器は高圧ナトリウムタイプ、高圧水銀タイプおよびメタルハライドタイプを含む高輝度放電(HID)ランプに使用される。セラミック容器は透明で、HIDランプの動作中に生じる高温高圧の条件に耐えうるものでなければならない。HIDランプ用途の放電容器を形成するのに好ましいセラミックスは多結晶アルミナ(PCA)である。もっとも、サファイア、イットリウム・アルミニウム・ガーネット、窒化アルミニウムおよび酸窒化アルミニウムのような他のセラミックスを使用してもよい。
【背景技術】
【0002】
従来のセラミック放電容器では、導電性の金属フィードスルーを用いて電気エネルギーが放電空間に運ばれる。しかし、セラミック容器と金属フィードスルーの間にハーメチックシールを形成するのは、材料の性質が異なるために、特に熱膨張係数が異なるために困難である。多結晶アルミナの場合には、一般にPCAセラミックスとニオブフィードスルーとの間にシールが形成される。それはこれらの材料の熱膨張が非常に似通っているからである。タングステンはニオブに比べてはるかに融点が高いので、ニオブフィードスルーはアーク接点を形成するために使用される少なくとも1つのタングステン電極に接合される。
【0003】
しかし、フィードスルー材料としてのニオブは2つの重大な欠点を有している。第1の欠点はランプ動作中にニオブを空気に曝すことができないことである。これはニオブが酸化し、ランプの不具合を生じさせてしまうからである。このため、放電容器は真空または不活性ガス環境で動作しなければならず、ランプのコストと全体的サイズが増大してしまう。第2の欠点は、ニオブがメタルハライドランプで使用されるほとんどの化学充填物と反応してしまうことである。この反応性の結果は様々であるが、これらの反応は不可避的にランプの性能または寿命の低下をもたらす。
【0004】
この懸念から、メタルハライド用途向けに、より複雑な電極アセンブリが開発された。例えば、ある先行技術によるセラミックメタルハライドランプの電極アセンブリは、セラミックアーク管に封止されたニオブフィードスルーと、モリブデンロッドと、Moアルミナサーメットと、タングステン電極との4つのセクションを溶接して形成されている。特許文献1に記載された別の電極アセンブリは、外部長さに沿って複数の溝を持ち、これらの溝にワイヤが挿入されたセラミックコアを有するマルチワイヤフィードスルーを使用している。タングステンまたはモリブデンのワイヤはフィードスルーの少なくとも一方の端部で撚り合わされている。この撚り線をランプ内の電極として使用してもよいし、別個の電極チップを撚り線束に取り付けてもよい。
【0005】
特許文献2には、ニオブの代わりにMo-TiおよびMo-V合金から製造された閉成部材が記載されている。Mo-TiおよびMo-V合金はPCAに合う熱膨張係数を有するように配合することができる。さらに、特許文献3には、5重量パーセントまでの焼結助剤(Ni,CoまたはCu)をMo-Ti合金に加え、焼結による閉成部材の製造を容易にすることが示されている。あいにく、これらのモリブデン合金の両方とも欠点を有している。特に、Mo-Ti合金はハロゲン化金属化学充填物と不利に反応し、Mo-V合金は非常に脆く、製造が難しい。
【特許文献1】アメリカ合衆国特許第6,774,547号
【特許文献2】アメリカ合衆国特許第4,366,410号
【特許文献3】アメリカ合衆国特許第4,334,628号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は先行技術の欠点を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、セラミック体と該セラミック体に封止されたフィードスルーとを有するセラミック放電容器において、前記フィードスルーを、少なくとも75重量パーセントのモリブデンと5重量パーセントを超すニッケルと銅および鉄から選択された少なくとももう1つの金属とを含むモリブデン合金から形成し、前記合金中の鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比を1:1から9:1の範囲内とすることにより解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
モリブデン重合金(MoHA)は多結晶アルミナの熱膨張特性と十分にマッチする熱膨張特性を有しており、セラミック放電容器の製造においてフィードスルー材料として有用であることが判明している。さらに、MoHAは純粋なMoの相とMoおよびその他の合金元素の固溶体の相(マトリクス相と呼ばれる)の2つの相を有しているため、ハロゲン化金属化学充填物に対するMoHAの反応性は純粋なMoに類似する。通常、純粋Mo相は微細構造の体積の少なくとも80%を構成している。このことはランプ化学物質に曝される原子の一部しか合金元素からのものでないということを意味する。モリブデンの濃度が高くなれば、フィードスルーに対する化学抵抗も大きくなる。MoHAフィードスルーで使用される合金元素は鉄と銅の少なくとも一方と組み合わせたニッケルである。例えばNi:FeやNi:Cuなどの合金元素の比が固定されていれば、固溶体のマトリクス相は一定の組成、すなわち、Moと合金元素との飽和溶液である。例えば、MiとFeを含むMoHAの場合、Ni:Feの比が大きいほど、マトリクス内のMoの溶解度は高くなる。
【0009】
それゆえ、本発明の一側面によれば、少なくとも75重量パーセントのモリブデンと5重量パーセントを超すニッケルと銅または鉄から選んだ少なくとももう1つの合金金属を含んだモリブデン合金から成るフィードスルーが設けられる。さらに、合金中の鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比Ni:(Fe,Cu)は1:1から9:1の範囲内である。好ましい実施形態では、モリブデン合金は85〜93重量パーセントのモリブデンを含み、7:3から9:1の範囲のNi:(Fe,Cu)重量比を有する。さらに好ましくは、モリブデン合金は88〜92重量パーセントのモリブデンを含み、8:2から9:1の範囲のNi:(Fe,Cu)重量比を有する。
【実施例】
【0010】
本明細書で用いられているように、すべての合金組成は別に指示がない限り重量パーセント(wt.%)で与えられる。
【0011】
図1を参照すると、メタルハライドランプのセラミック放電容器1の断面図が示されている。ここで、放電容器1は好ましくは多結晶アルミナから成る透明セラミック体3を有している。セラミック体3は両端から外側へと延びる向かい合った毛管5を有している。毛管5は電極アセンブリ20を入れるための中心孔9を有している。この実施形態では、電極アセンブリ20はタングステン電極26と本発明によるモリブデン合金から成るフィードスルー22とから構成されている。タングステンコイルまたはその他の類似の構造をタングステン電極26の端部に付加して、アーク放電の接点を提供するようにしてもよい。
【0012】
放電室12内にはハロゲン化金属充填物が含まれている。ハロゲン化金属充填物は一般に水銀とハロゲン化金属塩、例えばNaI、CaI2、DyI3、HoI3、TmI3およびTlIの混合物とから構成されている。放電室12内には、例えばXeやArなどのバッファガスも含まれている。フリット材17は毛管5と電極アセンブリ20のフィードスルー22との間にハーメチックシールを形成する。好ましいフリット材は耐ハロゲン性のDy2O3-Al2O3-SiO2ガラスセラミックス系である。メタルハライドランプでは、腐食性のハロゲン化金属充填物との不利な反応を防ぐために、フリット材17の毛管5への浸入を最小にすることが通常望ましい。例えば、ハロゲン化金属塩の凝縮液がランプ動作中にフリット材17に接触するのを防ぐために、モリブデンコイル24をタングステン電極26の胴に巻き付けてもよい。
【0013】
本発明のモリブデン合金フィードスルーは他のフィードスルー構成においても使用することができる。例えば、アメリカ合衆国特許第6,774,547号の場合のようにマルチワイヤ構成において使用してもよいし、従来の高圧ナトリウムランプのニオブ管の代わりとして使用してもよい。また、フリットを使用しないシールにおいても使用することができる。この場合、フィードスルーは中間フリット材を用いずに直接セラミックに封止される。
【0014】
フィードスルーを形成するモリブデン合金は、NiとCuまたはFeの少なくとも一方とで合金化されたMoを含んでいる。合金中のMoの量は少なくとも75wt.%であり、他の合金元素Ni、CuおよびFeの合計重量は5wt.%よりも大きく、より好ましくは少なくとも7wt.%、さらに好ましくは少なくとも8wt.%である。Cuおよび/またはFeの総量に対するNiの量の重量比は1:1から9:1、より好ましくは7:3から9:1、さらに好ましくは8:2から9:1の範囲内とすべきである。合金は例えば熱膨張や化学抵抗などの合金の所望の特性に重大な影響を及ぼさない他の元素を少量含んでいてもよいが、合金はMo、Ni、Cuおよび/またはFeと極低いレベルの金属汚染物質、好ましくは総量で5000ppm未満の金属汚染物質とから構成されていることが好ましい。
【0015】
フィードスルーは従来の粉末冶金技術によって形成してよい。適切な割合の金属粉末をよく混合し、成形体にプレスし、固体焼結し、完全な密度まで液相焼結する。次に、面積または断面を少し小さくするために、圧延、絞りまたはその他の従来からの金属成形法によってワイヤ、ロッドまたはその他の所望のフィードスルー形状を形成するようにしてよい。これらのタイプの合金はひび割れせずに約30%の面積低減が可能である。変形をより大きくするには、加工される材料を焼きなますか、再び液相焼結しなければならない。
【0016】
実施例
純粋なMo、Ni、FeおよびCuの粉末の混合物を作り、30ksi以上の圧力でプレスすることにより理論的密度のおよそ65%まで密度を高めた。次に、プレスされた成形体をMo:Ni:Fe合金の場合には1440°Cで、Mo:Ni:Cu合金の場合には1125°Cで固体焼結した。固体焼結の後、成形体をアルミナ砂に埋め、Mo:Ni:Fe合金の場合には1500°Cで、Mo:Ni:Cu合金の場合には1440°Cで液相焼結した。両方の焼結処理は酸化を防ぐために還元ガスまたは不活性ガス環境で行われた。液相焼結した合金の密度は理論的密度の100%となった。合金の塑性は表1に示されている。
【0017】
【表1】
【0018】
次に、サンプルを円筒形に加工し、膨張計で熱膨張特性を測定した。図2および3は、モリブデン合金の熱膨張をPCAおよびニオブの熱膨張特性と比較したものである。2つのグラフから、ある所与の温度範囲では、複数の異なる合金がPCAの熱膨張係数とほぼ完全に一致することが明らかである。すべての温度範囲でPCAとの一致が乏しい唯一の合金は90%Mo-8%Ni-2%Cuである(参考までに、図4には、合金化されていないモリブデンとタングステンの熱膨張がPCAと比較して示されている)。
【0019】
90%Mo-8%Ni-2%Fe合金に関して模擬的なメタルハライド環境で化学抵抗を試験したが、有意な反応は見られなかった。Cu含有合金は両方とも同じ融点を有し、Fe含有合金も両方とも同じ融点を有することが判明した。液相焼結温度によって示されているように、Fe含有合金はCu含有合金よりも著しく高い融点を有している。
【0020】
以上に、現時点で本発明の好適な実施形態と見なされるものを図示し説明したが、当業者であれば、添付された請求項により規定される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更および改良を為しうることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるモリブデン合金フィードスルーを含んだセラミック放電容器の断面図である。
【図2】本発明によるモリブデン合金の熱膨張をPCAと比較したグラフである。
【図3】本発明によるモリブデン合金の熱膨張をPCAおよびニオブと比較したグラフである。
【図4】合金化されていないモリブデンとタングステンの熱膨張をPCAと比較したグラフである。
【技術分野】
【0001】
一般に、セラミック放電容器は高圧ナトリウムタイプ、高圧水銀タイプおよびメタルハライドタイプを含む高輝度放電(HID)ランプに使用される。セラミック容器は透明で、HIDランプの動作中に生じる高温高圧の条件に耐えうるものでなければならない。HIDランプ用途の放電容器を形成するのに好ましいセラミックスは多結晶アルミナ(PCA)である。もっとも、サファイア、イットリウム・アルミニウム・ガーネット、窒化アルミニウムおよび酸窒化アルミニウムのような他のセラミックスを使用してもよい。
【背景技術】
【0002】
従来のセラミック放電容器では、導電性の金属フィードスルーを用いて電気エネルギーが放電空間に運ばれる。しかし、セラミック容器と金属フィードスルーの間にハーメチックシールを形成するのは、材料の性質が異なるために、特に熱膨張係数が異なるために困難である。多結晶アルミナの場合には、一般にPCAセラミックスとニオブフィードスルーとの間にシールが形成される。それはこれらの材料の熱膨張が非常に似通っているからである。タングステンはニオブに比べてはるかに融点が高いので、ニオブフィードスルーはアーク接点を形成するために使用される少なくとも1つのタングステン電極に接合される。
【0003】
しかし、フィードスルー材料としてのニオブは2つの重大な欠点を有している。第1の欠点はランプ動作中にニオブを空気に曝すことができないことである。これはニオブが酸化し、ランプの不具合を生じさせてしまうからである。このため、放電容器は真空または不活性ガス環境で動作しなければならず、ランプのコストと全体的サイズが増大してしまう。第2の欠点は、ニオブがメタルハライドランプで使用されるほとんどの化学充填物と反応してしまうことである。この反応性の結果は様々であるが、これらの反応は不可避的にランプの性能または寿命の低下をもたらす。
【0004】
この懸念から、メタルハライド用途向けに、より複雑な電極アセンブリが開発された。例えば、ある先行技術によるセラミックメタルハライドランプの電極アセンブリは、セラミックアーク管に封止されたニオブフィードスルーと、モリブデンロッドと、Moアルミナサーメットと、タングステン電極との4つのセクションを溶接して形成されている。特許文献1に記載された別の電極アセンブリは、外部長さに沿って複数の溝を持ち、これらの溝にワイヤが挿入されたセラミックコアを有するマルチワイヤフィードスルーを使用している。タングステンまたはモリブデンのワイヤはフィードスルーの少なくとも一方の端部で撚り合わされている。この撚り線をランプ内の電極として使用してもよいし、別個の電極チップを撚り線束に取り付けてもよい。
【0005】
特許文献2には、ニオブの代わりにMo-TiおよびMo-V合金から製造された閉成部材が記載されている。Mo-TiおよびMo-V合金はPCAに合う熱膨張係数を有するように配合することができる。さらに、特許文献3には、5重量パーセントまでの焼結助剤(Ni,CoまたはCu)をMo-Ti合金に加え、焼結による閉成部材の製造を容易にすることが示されている。あいにく、これらのモリブデン合金の両方とも欠点を有している。特に、Mo-Ti合金はハロゲン化金属化学充填物と不利に反応し、Mo-V合金は非常に脆く、製造が難しい。
【特許文献1】アメリカ合衆国特許第6,774,547号
【特許文献2】アメリカ合衆国特許第4,366,410号
【特許文献3】アメリカ合衆国特許第4,334,628号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は先行技術の欠点を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、セラミック体と該セラミック体に封止されたフィードスルーとを有するセラミック放電容器において、前記フィードスルーを、少なくとも75重量パーセントのモリブデンと5重量パーセントを超すニッケルと銅および鉄から選択された少なくとももう1つの金属とを含むモリブデン合金から形成し、前記合金中の鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比を1:1から9:1の範囲内とすることにより解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
モリブデン重合金(MoHA)は多結晶アルミナの熱膨張特性と十分にマッチする熱膨張特性を有しており、セラミック放電容器の製造においてフィードスルー材料として有用であることが判明している。さらに、MoHAは純粋なMoの相とMoおよびその他の合金元素の固溶体の相(マトリクス相と呼ばれる)の2つの相を有しているため、ハロゲン化金属化学充填物に対するMoHAの反応性は純粋なMoに類似する。通常、純粋Mo相は微細構造の体積の少なくとも80%を構成している。このことはランプ化学物質に曝される原子の一部しか合金元素からのものでないということを意味する。モリブデンの濃度が高くなれば、フィードスルーに対する化学抵抗も大きくなる。MoHAフィードスルーで使用される合金元素は鉄と銅の少なくとも一方と組み合わせたニッケルである。例えばNi:FeやNi:Cuなどの合金元素の比が固定されていれば、固溶体のマトリクス相は一定の組成、すなわち、Moと合金元素との飽和溶液である。例えば、MiとFeを含むMoHAの場合、Ni:Feの比が大きいほど、マトリクス内のMoの溶解度は高くなる。
【0009】
それゆえ、本発明の一側面によれば、少なくとも75重量パーセントのモリブデンと5重量パーセントを超すニッケルと銅または鉄から選んだ少なくとももう1つの合金金属を含んだモリブデン合金から成るフィードスルーが設けられる。さらに、合金中の鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比Ni:(Fe,Cu)は1:1から9:1の範囲内である。好ましい実施形態では、モリブデン合金は85〜93重量パーセントのモリブデンを含み、7:3から9:1の範囲のNi:(Fe,Cu)重量比を有する。さらに好ましくは、モリブデン合金は88〜92重量パーセントのモリブデンを含み、8:2から9:1の範囲のNi:(Fe,Cu)重量比を有する。
【実施例】
【0010】
本明細書で用いられているように、すべての合金組成は別に指示がない限り重量パーセント(wt.%)で与えられる。
【0011】
図1を参照すると、メタルハライドランプのセラミック放電容器1の断面図が示されている。ここで、放電容器1は好ましくは多結晶アルミナから成る透明セラミック体3を有している。セラミック体3は両端から外側へと延びる向かい合った毛管5を有している。毛管5は電極アセンブリ20を入れるための中心孔9を有している。この実施形態では、電極アセンブリ20はタングステン電極26と本発明によるモリブデン合金から成るフィードスルー22とから構成されている。タングステンコイルまたはその他の類似の構造をタングステン電極26の端部に付加して、アーク放電の接点を提供するようにしてもよい。
【0012】
放電室12内にはハロゲン化金属充填物が含まれている。ハロゲン化金属充填物は一般に水銀とハロゲン化金属塩、例えばNaI、CaI2、DyI3、HoI3、TmI3およびTlIの混合物とから構成されている。放電室12内には、例えばXeやArなどのバッファガスも含まれている。フリット材17は毛管5と電極アセンブリ20のフィードスルー22との間にハーメチックシールを形成する。好ましいフリット材は耐ハロゲン性のDy2O3-Al2O3-SiO2ガラスセラミックス系である。メタルハライドランプでは、腐食性のハロゲン化金属充填物との不利な反応を防ぐために、フリット材17の毛管5への浸入を最小にすることが通常望ましい。例えば、ハロゲン化金属塩の凝縮液がランプ動作中にフリット材17に接触するのを防ぐために、モリブデンコイル24をタングステン電極26の胴に巻き付けてもよい。
【0013】
本発明のモリブデン合金フィードスルーは他のフィードスルー構成においても使用することができる。例えば、アメリカ合衆国特許第6,774,547号の場合のようにマルチワイヤ構成において使用してもよいし、従来の高圧ナトリウムランプのニオブ管の代わりとして使用してもよい。また、フリットを使用しないシールにおいても使用することができる。この場合、フィードスルーは中間フリット材を用いずに直接セラミックに封止される。
【0014】
フィードスルーを形成するモリブデン合金は、NiとCuまたはFeの少なくとも一方とで合金化されたMoを含んでいる。合金中のMoの量は少なくとも75wt.%であり、他の合金元素Ni、CuおよびFeの合計重量は5wt.%よりも大きく、より好ましくは少なくとも7wt.%、さらに好ましくは少なくとも8wt.%である。Cuおよび/またはFeの総量に対するNiの量の重量比は1:1から9:1、より好ましくは7:3から9:1、さらに好ましくは8:2から9:1の範囲内とすべきである。合金は例えば熱膨張や化学抵抗などの合金の所望の特性に重大な影響を及ぼさない他の元素を少量含んでいてもよいが、合金はMo、Ni、Cuおよび/またはFeと極低いレベルの金属汚染物質、好ましくは総量で5000ppm未満の金属汚染物質とから構成されていることが好ましい。
【0015】
フィードスルーは従来の粉末冶金技術によって形成してよい。適切な割合の金属粉末をよく混合し、成形体にプレスし、固体焼結し、完全な密度まで液相焼結する。次に、面積または断面を少し小さくするために、圧延、絞りまたはその他の従来からの金属成形法によってワイヤ、ロッドまたはその他の所望のフィードスルー形状を形成するようにしてよい。これらのタイプの合金はひび割れせずに約30%の面積低減が可能である。変形をより大きくするには、加工される材料を焼きなますか、再び液相焼結しなければならない。
【0016】
実施例
純粋なMo、Ni、FeおよびCuの粉末の混合物を作り、30ksi以上の圧力でプレスすることにより理論的密度のおよそ65%まで密度を高めた。次に、プレスされた成形体をMo:Ni:Fe合金の場合には1440°Cで、Mo:Ni:Cu合金の場合には1125°Cで固体焼結した。固体焼結の後、成形体をアルミナ砂に埋め、Mo:Ni:Fe合金の場合には1500°Cで、Mo:Ni:Cu合金の場合には1440°Cで液相焼結した。両方の焼結処理は酸化を防ぐために還元ガスまたは不活性ガス環境で行われた。液相焼結した合金の密度は理論的密度の100%となった。合金の塑性は表1に示されている。
【0017】
【表1】
【0018】
次に、サンプルを円筒形に加工し、膨張計で熱膨張特性を測定した。図2および3は、モリブデン合金の熱膨張をPCAおよびニオブの熱膨張特性と比較したものである。2つのグラフから、ある所与の温度範囲では、複数の異なる合金がPCAの熱膨張係数とほぼ完全に一致することが明らかである。すべての温度範囲でPCAとの一致が乏しい唯一の合金は90%Mo-8%Ni-2%Cuである(参考までに、図4には、合金化されていないモリブデンとタングステンの熱膨張がPCAと比較して示されている)。
【0019】
90%Mo-8%Ni-2%Fe合金に関して模擬的なメタルハライド環境で化学抵抗を試験したが、有意な反応は見られなかった。Cu含有合金は両方とも同じ融点を有し、Fe含有合金も両方とも同じ融点を有することが判明した。液相焼結温度によって示されているように、Fe含有合金はCu含有合金よりも著しく高い融点を有している。
【0020】
以上に、現時点で本発明の好適な実施形態と見なされるものを図示し説明したが、当業者であれば、添付された請求項により規定される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更および改良を為しうることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるモリブデン合金フィードスルーを含んだセラミック放電容器の断面図である。
【図2】本発明によるモリブデン合金の熱膨張をPCAと比較したグラフである。
【図3】本発明によるモリブデン合金の熱膨張をPCAおよびニオブと比較したグラフである。
【図4】合金化されていないモリブデンとタングステンの熱膨張をPCAと比較したグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック体と該セラミック体に封止されたフィードスルーとを有するセラミック放電容器において、前記フィードスルーは少なくとも75重量パーセントのモリブデンと5重量パーセントを超すニッケルと銅および鉄から選択された少なくとももう1つの金属とを含むモリブデン合金から形成されており、前記合金中の鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が1:1から9:1の範囲内であることを特徴とするセラミック放電容器。
【請求項2】
前記モリブデン合金は85〜93重量パーセントのモリブデンを含み、鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が7:3から9:1までである、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項3】
前記モリブデン合金は88〜92重量パーセントのモリブデンを含み、鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が8:2から9:1までである、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項4】
前記合金中のニッケル、鉄および銅の合計量が少なくとも7重量パーセントである、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項5】
前記合金中のニッケル、鉄および銅の合計量が少なくとも8重量パーセントである、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項6】
前記セラミック体が多結晶アルミナから成る、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項7】
前記フィードスルーがフリットを用いずに直接前記セラミック体に封止されている、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項8】
セラミック体と該セラミック体に封止されたフィードスルーとを有するセラミック放電容器において、前記セラミック体は多結晶アルミナから形成されており、前記フィードスルーは少なくとも75重量パーセントのモリブデンと5重量パーセントを超すニッケルと銅および鉄から選択された少なくとももう1つの金属とを含むモリブデン合金から形成されており、前記合金中の鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が1:1から9:1の範囲内であることを特徴とするセラミック放電容器。
【請求項9】
前記モリブデン合金は85〜93重量パーセントのモリブデンを含み、鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が7:3から9:1までである、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項10】
前記モリブデン合金は88〜92重量パーセントのモリブデンを含み、鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が8:2から9:1までである、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項11】
前記合金中のニッケル、鉄および銅の合計量が少なくとも7重量パーセントである、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項12】
前記合金中のニッケル、鉄および銅の合計量が少なくとも8重量パーセントである、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項13】
前記合金がMo、NiおよびFeから成る、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項14】
前記モリブデン合金は85〜93重量パーセントのモリブデンを含み、鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が7:3から9:1までである、請求項13記載のセラミック放電容器。
【請求項15】
前記モリブデン合金は88〜92重量パーセントのモリブデンを含み、鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が8:2から9:1までである、請求項13記載のセラミック放電容器。
【請求項16】
前記合金が90重量パーセントのMo、8重量パーセントのNiおよび2重量パーセントのFeから成る、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項17】
前記合金が90重量パーセントのMo、16重量パーセントのNiおよび4重量パーセントのFeから成る、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項18】
前記合金が90重量パーセントのMo、16重量パーセントのNiおよび4重量パーセントのCuから成る、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項19】
前記フィードスルーがフリットを用いずに直接前記セラミック体に封止されている、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項1】
セラミック体と該セラミック体に封止されたフィードスルーとを有するセラミック放電容器において、前記フィードスルーは少なくとも75重量パーセントのモリブデンと5重量パーセントを超すニッケルと銅および鉄から選択された少なくとももう1つの金属とを含むモリブデン合金から形成されており、前記合金中の鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が1:1から9:1の範囲内であることを特徴とするセラミック放電容器。
【請求項2】
前記モリブデン合金は85〜93重量パーセントのモリブデンを含み、鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が7:3から9:1までである、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項3】
前記モリブデン合金は88〜92重量パーセントのモリブデンを含み、鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が8:2から9:1までである、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項4】
前記合金中のニッケル、鉄および銅の合計量が少なくとも7重量パーセントである、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項5】
前記合金中のニッケル、鉄および銅の合計量が少なくとも8重量パーセントである、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項6】
前記セラミック体が多結晶アルミナから成る、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項7】
前記フィードスルーがフリットを用いずに直接前記セラミック体に封止されている、請求項1記載のセラミック放電容器。
【請求項8】
セラミック体と該セラミック体に封止されたフィードスルーとを有するセラミック放電容器において、前記セラミック体は多結晶アルミナから形成されており、前記フィードスルーは少なくとも75重量パーセントのモリブデンと5重量パーセントを超すニッケルと銅および鉄から選択された少なくとももう1つの金属とを含むモリブデン合金から形成されており、前記合金中の鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が1:1から9:1の範囲内であることを特徴とするセラミック放電容器。
【請求項9】
前記モリブデン合金は85〜93重量パーセントのモリブデンを含み、鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が7:3から9:1までである、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項10】
前記モリブデン合金は88〜92重量パーセントのモリブデンを含み、鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が8:2から9:1までである、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項11】
前記合金中のニッケル、鉄および銅の合計量が少なくとも7重量パーセントである、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項12】
前記合金中のニッケル、鉄および銅の合計量が少なくとも8重量パーセントである、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項13】
前記合金がMo、NiおよびFeから成る、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項14】
前記モリブデン合金は85〜93重量パーセントのモリブデンを含み、鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が7:3から9:1までである、請求項13記載のセラミック放電容器。
【請求項15】
前記モリブデン合金は88〜92重量パーセントのモリブデンを含み、鉄と銅の合計量に対するニッケルの量の重量比が8:2から9:1までである、請求項13記載のセラミック放電容器。
【請求項16】
前記合金が90重量パーセントのMo、8重量パーセントのNiおよび2重量パーセントのFeから成る、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項17】
前記合金が90重量パーセントのMo、16重量パーセントのNiおよび4重量パーセントのFeから成る、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項18】
前記合金が90重量パーセントのMo、16重量パーセントのNiおよび4重量パーセントのCuから成る、請求項8記載のセラミック放電容器。
【請求項19】
前記フィードスルーがフリットを用いずに直接前記セラミック体に封止されている、請求項8記載のセラミック放電容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2009−152206(P2009−152206A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326295(P2008−326295)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(596104131)オスラム シルヴェニア インコーポレイテッド (72)
【氏名又は名称原語表記】OSRAM SYLVANIA Inc.
【住所又は居所原語表記】100 Endicott Street, Danvers, Massachusetts 01923, USA
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(596104131)オスラム シルヴェニア インコーポレイテッド (72)
【氏名又は名称原語表記】OSRAM SYLVANIA Inc.
【住所又は居所原語表記】100 Endicott Street, Danvers, Massachusetts 01923, USA
【Fターム(参考)】
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