説明

モロコシ属およびサトウキビ属の属間雑種植物およびその生産方法

属間雑種植物の生産方法およびそれにより生産された植物。ある特定の態様において、属間雑種植物は、変異ソルガムiap対立遺伝子を含むソルガム親植物を第2の単子葉植物と交雑させることによって生産される。かかる植物の使用方法およびそれから得られる生産物もまた、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本願は、米国仮出願第61/103,085号(2008年10月6日出願)、および第61/083,436号(2008年7月24日出願)に対する優先権を主張する。上記出願は、出典明示により、全体として本願明細書の一部とされる。
本発明は、合衆国農務省(USDA)によって授与されたCSREES National Research Initiative登録番号第2004−35300−14686号の下で政府の支援で完成した。合衆国政府は、本願においてある特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
1.発明の分野
本発明は、概して、植物遺伝学の分野に関する。より詳細には、属間雑種植物ならびにその生産および使用方法に関する。
【0003】
2.関連分野の記載
2025年までに、世界のエネルギー消費は、2002年のレベルから57%増加すると予測される。該要求に応えるために多くの異なる代替エネルギー源が用いられるが、2022年までに年間少なくとも360億ガロンの代替燃料の使用を燃料生産者に要求する2007年のEnergy Independence and Security Actにおいて記載された目標を満たすためには、バイオマス由来のエネルギー生産が必要とされることは明らかである。デンプン由来の代替燃料の生産のみでは、これらの目標を達成できないであろう。これらの生産目標を達成するためには、研究におけるかなりの投資および工業的責任を必要とするであろう。この新規なバイオ燃料産業の開発は、一貫した安定なバイオマス供給を保証し、それにより、バイオマス変換プラントを建築するのに必要な莫大な投資を正当付ける専用のバイオエネルギー供給原料の生産を基礎としなければならない。現在栽培される飼料用および食料用作物由来の作物残渣を用いることができるが、それらは、おそらく、必要に応じて専用のエネルギー作物からバイオマス生産を補うために役立つだけである。
【0004】
これまでに、バイオ燃料生産専用の作物の開発および改良について、比較的ほとんど重要視されていなかった。専用のバイオ燃料供給原料として最も一般的に提案された種のいくつかは、スイッチグラス[パニカム・ヴァーガタム(Panicum virgatum)]、ポプラ(Populus sp.)、サトウキビ/エネルギーケイン(Saccharum sp.)、ミスカンサス(Miscanthus sp.)およびソルガム[ソルガム・ビカラー(Sorghum bicolor)]を包含する。現在、これらの植物種のセルロース性バイオエネルギーの可能性の強化に焦点を当てた農業経済学、育種およびゲノム的計画がある。しかしながら、目下、専用のバイオ燃料供給原料の望ましい特徴を全て具体化する所定の作物種はない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
第一の態様において、本発明は、ソルガム親植物を異なる属由来の単子葉植物と交雑させて子孫を得ることによって生産された属間植物を提供する。ソルガム親植物は、ソルガムの劣性iap対立遺伝子についてホモ接合性であってもよい。ある特定の態様において、例えば、単子葉親植物は、イネ科(Poaceae)植物などの草である。例えば、第2の単子葉親植物は、サトウキビ属(Saccharum)、ススキ属(Miscanthus)、サトウキビ属とススキ属の交雑種、エリアンサス属(Erianthus)、ソルガネトラム属(Sorghastrum)、キビ属(Panicum)、チカラシバ属(Pennisetum)またはトウモロコシ属(Zea)植物であることができる。ある特定の具体例において、第2の単子葉植物は、ペニセタム・パーパレウム(Pennisetum purpureum)、パニカム・ヴァーガタム(Panicum virgatum)、ペニセタム・シリアレ(Pennisetum ciliare)、ペニセタム・グラウカム(Pennisetum glaucum)、アンドロポゴン・ゲラルディイ(Andropogon gerardii)、アンドロポゴン・ハリイ(Andropogon hallii)、シザキリウム・スコパリウム(Schizachyrium scoparium)、ソルガストラム・ヌタンス(Sorghastrum nutans)、アルンド・ドナックス(Arundo donax)、トリプシカム・ダクチロイデス(Tripsicum dactyloides)、スポロボルス・エイリオデス(Sporobolus airiodes)、ミスカンサス・フロリデュルス(Miscanthus floridulus)、ミスカンサス・シネンシス(Miscanthus sinensis)、ゼア・メイス(Zea mays)、ゼア・ニカラグエンシス(Zea nicaraguensis)、ゼア・ペレニス(Zea perennis)、またはゼア・ジプロペレニス(Zea diploperennis)植物である。特定の態様において、ソルガム植物および/または第2の親植物は、1以上のトランス遺伝子を含む。
【0006】
かくして、一の具体例において、本発明は、ソルガム親植物から生産した属間雑種植物を提供する。ある特定の態様において、ソルガム親植物は、ソルガム・ビカラー(Sorghum bicolor)植物またはソルガム・ビカラーと野生のソルガム品種との雑種であり、ここに該植物物は、ソルガムの劣性iap対立遺伝子についてホモ接合性である。さらなる具体例において、ソルガム親植物は、雄性不稔形質、例えば、細胞質または遺伝子性雄性不稔性対立遺伝子(例えば、ソルガムのms3)を含む。ある特定の具体例において、ソルガム親植物は、農学的にえり抜きのソルガム植物として定義されうる。当業者は、「農学的にえり抜きの」なる語が、生産者が商業的に意味のある産物を収穫することが可能になる有益な表現型に寄与する区別可能な形質の頂点を示すことを理解する。かかる形質は、収穫量、活力、病害耐性、環境ストレス耐性、および害虫耐性を含みうる。さらに特定の具体例において、ソルガム植物は、バイオ燃料生産に適応した農学的にえり抜きのソルガム植物であってもよい。またさらなる具体例において、ソルガム親植物は、ソルガム系統Tx3361の植物であってもよい。
【0007】
別の態様において、本発明は、本明細書中に開示される属間雑種植物の部位を提供する。属間雑種植物の部位は、限定するものではないが、プロトプラスト、細胞、配偶子、分裂組織、根、雌しべ、葯、花、種子、胚、茎、または葉柄を包含する。ある特定の態様において、属間植物種子が提供される。いくつかの場合、属間植物種子は、機能的内胚乳を含むものとして定義されうる。さらなる態様において、植物種子は、殺害虫剤、殺真菌剤(例えば、U.S.特許第3,849,934号参照)、養分または水もしくは温度感受性ポリマーを含む人工種子コートを含んでいてもよい。ある特定の態様において、種子コーティングは、種子の機械的取扱性、種子発芽、幼植物確立または生育を改善するための剤を含む。種子のコーティングに使用されうるプロセスは、例えば、U.S.特許第2,799,241号、第3,089,824号、第3,177,027号、第3,196,827号、第3,207,824号、第3,241,520号、および第3,253,994号(出典明示により、本明細書の一部とされる)に開示される。当業者は、種子コートが、例えば、生存能力(例えば、発芽する種子のパーセント)または植物種子の貯蔵能力を増加させるために用いてもよいことを認識するであろう。またさらなる態様において、属間植物部位は、ソルガム染色体の倍加数を含む植物、例えば、2nソルガム染色体を含む植物配偶子の部位が提供される。当業者は、かかる配偶子が、ある特定の態様において、属間植物を微小管阻害剤または染色体倍加剤、例えば、化学的染色体倍加剤(例えば、コロチシン(colchicine))で処理することによって生産されうることを理解するであろう。
【0008】
また別の態様において、本明細書中に提供される属間植物は、1以上のトランス遺伝子を含むものとして定義されうる。例えば、属間植物は、病害耐性、昆虫耐性、除草剤耐性、乾燥耐性、耐塩性、雄性不稔性、バイオマス増加または糖含量増加を与えるトランス遺伝子を含むことができる。特定の具体例において、トランス遺伝子は、属間雑種植物中に直接導入することができる。またさらなる態様において、トランス遺伝子は、親植物から受け継いでいてもよい。該親植物は、直接形質転換されていてもよく、またはその祖先由来のトランス遺伝子を受け継いでいてもよい。いくつかの態様において、本発明は、ソルガム親植物を第2の植物と交雑させ、ここに、該ソルガム親植物および/または第2の植物がトランス遺伝子を含み、次いで、該トランス遺伝子を含む子孫植物を選択することを含む方法を提供する。ある特定の態様において、本発明のトランスジェニック植物を交配させることを含む方法は、マーカーによって補助された選択によって(例えば、トランス遺伝子またはその産物の検出によって)、子孫植物を選択することを含んでいてもよい。
【0009】
さらなる具体例において、本明細書中に記載の属間雑種植物の子孫植物が提供される。特定の具体例において、該子孫植物は、栄養繁殖または接ぎ木によって生産される。いくつかのさらなる態様において、子孫植物は、種子から生長しうる。
【0010】
またさらなる具体例において、本明細書中に記載される属間植物の再生可能な細胞の組織培養が提供される。再生可能な細胞は、ある特定の態様において、属間植物の胚、分裂組織細胞、花粉、葉、根、根端、葯、雌しべ、花、種子、ボールまたは茎由来であることができる。かくして、いくつかの態様において、組織培養再生可能細胞から再生された属間植物が提供される。
【0011】
また別の具体例において、属間雑種植物またはその部位を得、そこから商業的製品を製造することを含む商業的製品の製造方法が提供される。ある特定の態様において、商業的製品は、発酵性(例えば、バイオ燃料)原料、シュークロース汁、バガス、エタノール、バイオジーゼル、糖類、サイレージ、穀物粉または動物飼料として定義される。いくつかの態様において、属間雑種植物はソルケイン(Sorcane)植物であり、商業的製品は発酵性(例えば、バイオ燃料)原料、ソルケイン汁、糖蜜、バガス、エタノール、バイオジーゼル、バイオプラスチックまたは糖類である。例えば、発酵性原料は、エタノール(例えば、出典明示により本明細書の一部とされる米国特許第5,053,231号および第6,927,048号参照)、バイオジーゼル、化学物質(例えば、酢酸およびアンモニア)などのバイオ燃料を生産するために使用してもよく、またはガス化のために使用してもよい。ある特定の態様において、属間雑種植物またはその部位は、セルロース性供給原料として使用されうる。例えば、属間雑種由来のセルロース性原料は、酵素的に、および/または化学的に、エタノール発酵のための遊離炭水化物に消化されてもよい(例えば、出典明示により本明細書の一部とされる米国特許第4,355,108号参照)。したがって、いずれかのかかる商業的製品は、本願発明の一部を構成する。
【0012】
ある特定の態様において、本発明は、部分的または実質的に精製したソルケイン汁、ソルケイン植物由来の糖液を提供する。ある特定の態様において、ソルケイン汁は、ソルガムポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を含むものとして定義されうる。例えば、ソルケイン汁は、ソルガムの劣性iap対立遺伝子をコードしているソルガムのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を含むものとして定義されうる。さらなる態様において、該汁は、ソルガムおよびサトウキビDNAを含むものとして定義されうる。
【0013】
さらなる具体例において、「ソルケイン(Sorcane)」属間雑種植物は、ソルガム親植物をサトウキビ属(Saccharum)(またはサトウキビ属雑種、例えば、サトウキビ属とススキ属(miscanthus)の雑種植物)と交雑することによって生産され、ここに、ソルガム親植物は、ソルガムの劣性iap対立遺伝子についてホモ接合性である。例えば、ソルガム親植物は、ソルガム・ビカラー(Sorghum bicolor)植物であってもよく、またはソルガム・ビカラーと野生ソルガム種との雑種であってもよい。サトウキビ属親植物のいくつかの例には、限定するものではないが、サッカラム・スポンタネウム(Saccharum spontaneum)、サッカラム・オフィシナラム(S. officinarum)、またはサッカラム・オフィシナラム(Saccharum officinarum)とサッカラム・スポンタネウム(Saccharum spontaneum)との雑種植物がある。ある特定の態様において、ソルケイン植物は、ソルガム親植物とサトウキビ属植物のL06−024、HoCP05−904またはHo06−562品種との間の交雑として生産されうる。
【0014】
またさらなる態様において、本発明は、雄性不稔性形質を含むソルガム植物であって、ソルガムの劣性iap対立遺伝子についてホモ接合性の植物またはその部位を提供する。例えば、ソルガム植物は、細胞質性または遺伝的雄性不稔性であってもよい。いくつかの態様において、ソルガム植物は、ソルガムのms3遺伝的不稔性性質を含んでいる。ある特定の態様において、該植物は、Tx3361系統の植物であってもよい。
【0015】
またさらなる態様において、本発明は、(a)ソルガム植物と、ソルガムとは異なる種の第2の単子葉植物とを交雑させ、ここに、該第1のソルガム植物はソルガムのiap対立遺伝子についてホモ接合性であり、雌性親植物として使用され、次いで(b)該交雑から得られる属間雑種胚を得る工程を含む、属間胚の生産方法を提供する。ある特定の場合、該方法は、さらに、(c)該雑種胚を生育させて属間雑種植物を生産する工程を含みうる。ある特定の態様において、本明細書に提供される方法は、属間雑種植物を生産するための方法として定義されうる。さらなる態様において、本明細書に記載の方法において使用するためのソルガム親植物は、雄性不稔性であり、例えば、遺伝的雄性不稔性であるか、または細胞質性雄性不稔性である。
【0016】
またさらなる態様において、本発明の方法は、複数の属間雑種植物を生産し、いずれかの親と異なる特徴を有する属間雑種を選択することを含みうる。ある具体例において、該方法は、さらに、(d)属間雑種植物を戻し交配して単子葉植物を得る工程を含む。さらなる具体例において、該方法は、さらに、該植物を戻し交配して、遺伝子移入による少なくとも1つの形質または遺伝子についてホモ接合性の遺伝子移入子孫植物を生産することを含む。
【0017】
ある特定の態様において、本発明にしたがってソルガム植物に交雑される第2の親植物は、イネ科(Poaceae)の植物である。例えば、第2の親植物は、サトウキビ属(Saccharum)、ススキ属(Miscanthus)、サトウキビ属とススキ属の雑種、エリアンサス属(Erianthus)、ソルガネトラム属(Sorghastrum)、キビ属(Panicum)、チカラシバ属(Pennisetum)またはトウモロコシ属(Zea)植物であってもよい。ある特定の具体例において、第2の単子葉植物は、ペニセタム・パーパレウム(Pennisetum purpureum)、パニカム・ヴァーガタム(Panicum virgatum)、ペニセタム・シリアレ(Pennisetum ciliare)、ペニセタム・グラウカム(Pennisetum glaucum)、アンドロポゴン・ゲラルディイ(Andropogon gerardii)、アンドロポゴン・ハリイ(Andropogon hallii)、シザキリウム・スコパリウム(Schizachyrium scoparium)、ソルガストラム・ヌタンス(Sorghastrum nutans)、アルンド・ドナックス(Arundo donax)、トリプシカム・ダクチロイデス(Tripsicum dactyloides)、スポロボルス・エイリオデス(Sporobolus airiodes)、ミスカンサス・フロリデュルス(Miscanthus floridulus)、ミスカンサス・シネンシス(Miscanthus sinensis)、ゼア・メイス(Zea mays)、ゼア・ニカラグエンシス(Zea nicaraguensis)、ゼア・ペレニス(Zea perennis)、またはゼア・ジプロペレニス(Zea diploperennis)植物である。ある特定の態様において、第2の単子葉植物は、サトウキビ属、例えば、サッカラム・オフィシナラム(Saccharum officinarum)、サッカラム・スポンタネウム(Saccharum spontaneum)、またはサッカラム・オフィシナラムとサッカラム・スポンタネウムとの雑種であってもよい。いくつかの他の態様において、第2の単子葉植物は、ススキ属植物、例えば、ミスカンサス・シネンシス(Miscanthus sinensis)であってもよい。
【0018】
いくつかの態様において、戻し交配は、属間雑種またはその子孫と、非ソルガム親植物[例えば、アンドロポゴン類(Andropogoneae)親植物]、そのクローンまたは同じ種からのバイオエネルギー収率に関して少なくとも90%同一の植物との間で実施されうる。ある特定の他の態様において、戻し交配は、属間雑種またはその子孫と、ソルガム親植物との間で実施されうる。戻し交配は、例えば少なくとも2〜10回戻し交配するような、連続的な戻し交配であることができる。
【0019】
ある特定の具体例において、該方法は、(i)第2の単子葉植物から花粉を収集し、次いで、(ii)ソルガム親植物の花に該花粉を受粉することを含みうる。
【0020】
ある特定の態様において、本明細書に記載の属間胚を生産する方法は、さらに、胚および機能的内胚乳を含む雑種種子を生産するものとして定義されうる。ある特定の他の具体例において、雑種種子は、胚および非機能的内胚乳を含みうる。本発明の一の態様において、胚(例えば、非機能的内胚乳に関連した胚)は、属間雑種植物を生産するための組織培養方法を用いてレスキューされうる。例えば、ある態様において、工程(b)はさらに、交雑から得られた胚を胚レスキューによって単離することを含んでいてもよい。
【0021】
またさらなる態様において、属間雑種植物における発現に関する特徴は、バイオマス収率、改善された生長形質またはある種の望ましい形質を包含しうる。かかる特徴は、ハイブリダイゼーションのために選択された特定の親系統の結果として、雑種強勢から得られうる。該特徴には、例えば、バイオマス含量、稔性、栄養繁殖、光周期無感覚、背丈、茎直径、乾燥耐性、種子サイズ、発芽、保存後の種子生存率、またはいずれか他の目的の特徴を包含しうる。例えば、バイオマス含量は、シュークロース含量またはセルロース含量を改変することによって改善されうる。バイオマス収量を比較または定量するために、当業者によく知られた標準的なバイオマス分析手法を用いてもよい。また、標準的なバイオマス分析手法の詳細なプロトコールは、合衆国ナショナル・リニューアル・エネルギー・ラボラトリー(U.S. National Renewable Energy Laboratory)から自由に入手可能である。例えば、シュークロースまたはセルロース含量は、HPLCまたは近赤外線反射スペクトロスコープによって測定されうる。
【0022】
ある特定の態様において、属間雑種植物または種子またはF1子孫は、稔性を増加するための染色体倍加剤、例えば、化学染色体倍加剤(例えば、コルチシンまたは機能的等価物)で処理してもよい。属間雑種植物の染色体倍加剤での処理は、自殖可能な稔性または部分的稔性異質倍数性植物を生成するために使用されうる。処理後、属間雑種植物または種子またはF1子孫は、雄性および/または雌性親植物としての稔性について評価および選択されうる。
【0023】
さらなる態様において、上記方法から生産された属間雑種は、種子または植物の形態であってもよい。
【0024】
ある特定の具体例において、上記方法によって生産された属間雑種種子、植物またはその部位も提供される。他の態様において、上記方法によって属間雑種植物または種子からクローン的に繁殖した子孫属間雑種植物またはその部位も提供される。さらなる態様において、上記方法によって調製された遺伝子移入による形質または遺伝子を有する単子葉子孫も提供される。
【0025】
本発明の方法および/または組成物との関連で考察される具体例は、本明細書に記載されるいずれか他の方法または組成物に関して用いられうる。かくして、一の方法または組成物に関連する具体例は、本発明の他の方法および組成物にも同様に応用してもよい。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「ソルケイン(Sorcane)」なる語は、モロコシ属(Sorghum)植物とサトウキビ属(Saccharum)植物(またはその雑種)との間の属間雑種をいう。ある特定の態様において、ソルケイン植物またはその植物部位は、モロコシ属由来の少なくとも1つの染色体または染色体セグメントおよびサトウキビ属由来の少なくとも1つの染色体または染色体セグメントを含むものとして定義されうる。
【0027】
本明細書中で使用される場合、核酸に関して「コードする」または「コードしている」なる語は、当業者により本願発明が容易に理解出来るようにするために使用されるが、これらの語は、各々、「含む」または「含んでいる」と交換可能に使用されうる。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「a」または「an」は1以上を意味しうる。特許請求の範囲で使用される場合、「含む」なる語と共に使用されるとき、「a」または「an」なる語は、1または1よりも大きい数を意味しうる。
【0029】
特許請求の範囲で使用される「または」なる語は、選択肢のみを示すことまたは選択肢が互いに排除することを明示的に示されないかぎり、「および/または」を意味するが、該開示は選択肢のみおよび「および/または」を示す定義を支持する。
【0030】
本願を通して、「約」なる語は、ある値は、該値を決定するために使用されている装置、方法の誤差の先天的な変動、または研究対象に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0031】
本発明の他の目的、特徴および利点は、下記の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の精神および範囲内の種々の変化および修飾は、詳細な説明から当業者に明らかなので、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい具体例を示しているが、説明目的でのみ与えられていることを理解すべきである。
【0032】
図面の簡単な説明
下記の図面は、本明細書の一部を校正紙、本発明のある特定の態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、1以上の図面と本明細書に提供される特定の具体例についての詳細な説明とを組み合わせて参照にして、よりよく理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1A−B: ソルガム雌しべ上/中における花粉生長におけるiap遺伝子の影響。図1A: トウモロコシ花粉管生長を示しているTx3361(iap iap)雌しべ。矢印は、花柱の基部から子房へと生長しているトウモロコシ花粉管を示す。図1B: トウモロコシ花粉管生長を示さないBTx623モロコシ属雌しべ。矢印は、柱頭軸に侵入しないトウモロコシ花粉管を示す。
【図2】植えられた種子から発芽したモロコシ属とサトウキビ属との雑種植物。
【図3】属間雑種の直接的使用を示す概略図。AAなる名称はソルガムを示し、MMはポリネーター属、例えば、ススキ属、サトウキビを示す。
【図4】属間雑種の間接的(遺伝子移入)使用を示す概略図。AAなる名称はソルガムを示し、MMはポリネーター属、例えば、ススキ属、サトウキビを示す。
【図5】図5A−C: テキサス州のカレッジ・ステーション(College Station)で育てられたソルガムとサトウキビとの属間雑種の写真。図5A: 2つの7月齢ソルガムxサトウキビ雑種。図5B: ソルガムxサトウキビ雑種の花部。図5C: ソルガムxサトウキビ雑種から広がった有糸分裂染色体。
【図6】植物上の節間の位置に基づいたBrix測定(屈折計によって測定された場合、汁柱の全可溶物質)。節間1は、植物の基部に位置し、最大数は植物の頂上にある。これらの植物における糖類プロフィールは、植物がほぼ8月齢で、まだ生殖生長に入らない8月に測定した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
説明的具体例の記載
栽培したソルガム[ソルガム・ビカラー(S. bicolor)]は、伝統的な植物育種に不応性であり、野生のEuソルガム(Eu−Sorghum)品種とさえも交雑することができなかった。本発明は、ソルガムと他の単子葉植物との属間雑種を生産するのに有効な方法を提供することによって、初めて当該分野の欠如を克服する。本明細書に提供される属間雑種植物は、種々の農学的応用に有用な独特の形質を含み、バイオ燃料の生産に有益な特定の形質を有する。ある特定の態様において、本明細書に記載の方法により、ソルガムおよび豊富な他の単子葉植物属由来の農業経済学的に重要な形質を属間雑種植物中に組み込むことが可能である。本明細書に記載の方法を用いて、各親由来の農業経済学的に有益な形質を雑種植物に発現することができ、それにより、生産性、耐寒性、乾燥耐性、病害耐性などの実質的に改善された形質を生じることができる。
【0035】
本明細書に提供される研究は、劣性iap対立遺伝子についてホモ接合性のソルガム植物がサトウキビ種(Saccharum sp.)およびミスカンサス(miscanthus)を包含する単子葉植物と首尾良くハイブリダイズできることを明らかにする。生産された雑種植物は、親植物品種と別個の形質を含む。例えば、モロコシ属とサトウキビ属との雑種「ソルケイン」は、茎柱の糖含量増加を包含する新規な表現型特徴を含むことが明らかにされた。
【0036】
ある特定の態様において、本明細書中で提供される属間植物および方法は、バイオ燃料生産のための進化した供給原料を操作するために使用されうる。例えば、サトウキビは、その高い糖含量および太陽エネルギーのバイオマスへの変換における比類無き効率のおかげで、非常に好ましいバイオ燃料供給原料である。しかしながら、サトウキビ生産は、地理学的に、高い降雨量を有する赤道付近の地域に限られている。ソルガムは、温帯乾燥気候において生育し、バイオ燃料としての使用が意図されるが、ソルガムは、サトウキビよりも遙かに低い糖含量しか示さない。本明細書に提供される方法は、初めて、雑種植物において、ソルガム由来の乾燥耐性およびサトウキビ属由来の糖産生を包含する複数の属由来の所望の形質を組み合わせてえり抜きのバイオ燃料植物を生産することのできる育種計画を可能にする。
【0037】
I.属間雑種を生産するための親植物
本発明のある特定の具体例は、第1の単子葉植物および第1の単子葉植物とは異なる種の第2の単子葉植物の交雑から、例えばサトウキビ植物とソルガム植物との交雑から、由来する属間雑種を生産する方法を提供する。かかる雑種交雑において、親として花粉レシピエント雌性植物、ならびに別の親として花粉ドナー雄性植物が存在するが、各親は雄性および雌性の花を有しうることが認識される。
【0038】
ある特定の態様において、親植物は単子葉植物である。単子葉植物は、伝統的に認識される顕花植物(被子植物)の2つの主要な群のうちの1つであり、他方は双子葉植物である。さらなる態様において、親植物は、アンドロポゴン類(Andropogoneae)の植物であってもよい。アンドロポゴン類は、熱帯および温帯地域に広がった草の連[イネ科(Poaceae)]である。それらはC4炭素固定機能を使用する。該連は、一般に、ソルガム連と呼ばれる。該連に属する属には、アンドロポゴン(Andropogon)、ボスリオクロア(Bothriochloa)、クリソポゴン(Chrysopogon)、コイックス(Coix)、ジカンチウム(Dicanthium)およびセメダ(Themeda)がある。該草の出現は、インド、オーストラリア、アフリカおよび南アフリカの熱帯サバンナにおいて豊富である。
【0039】
専用のバイオ燃料供給原料としてのソルガム、サトウキビおよびミスカンサスは関連しており、アンドロポゴン類の代表例である。これらの種の各々は、バイオマス供給原料としての相対的長所および潜在的弱点を有し、これらの作物間で形質を移動させる能力は、作物改良計画にとって非常に価値を有するであろう。これらの2または3種由来の好ましい形質を組み合わせることは、2、3またはそれ以上の種由来の栄養的雑種強勢雑種の合成および/またはドナー種から別の種への遺伝子および形質のハイブリダイゼーションに基づく有性移動によって達成されうる。遺伝的形質転換はまた、1個または非常に少数の遺伝子を属を横切って移動させるために使用されうる方法でもあるが、現行の方法は、バイオ燃料供給原料においておそらく価値がある多重遺伝子的農学的および組成的形質の移動の役に立たない。また、トランスジェニック作物の規制認可のコストが高いので、伝統的な(有性)移動方法が奨励される。
遺伝的形質転換ではなく有性移動方法による該目標の達成には、これらの草種における種間および/または属間繁殖障壁を克服する必要がある。本発明のある特定の態様において、このような繁殖障壁は、ソルガムの変異iap遺伝子の利用により回避することができ、それにより、ソルガム、サトウキビおよび/またはススキ属由来の最も望ましい形質を新規な専用のバイオエネルギー供給原料中に組み込む可能性を提供して、2007年の「Energy Independence and Security Act」に概説された目標を満たすのを助ける。
【0040】
A.モロコシ属(ソルガム)
ソルガムは、幅広く適用され、乾燥耐性であり、かつ、種子を解して容易に繁殖する。歴史的に、飼料穀物、食物用穀物、および飼草として世界中で栽培されているが、穀物生産に使用されるものとは明確に異なるエネルギーソルガムの品種および雑種が開発中である。全ての草の中でもソルガムは、高収量のデンプン(穀物雑種)、糖(スイートソルガム栽培種および雑種)、および/またはセルロース性バイオマス(飼草およびエネルギーソルガム雑種)を提供するその雑種が入手可能であるか、または開発可能であるので、バイオエネルギー穀物として独特である(Rooneyら、2007)。それは、すでに種子から作物として生育されているので、米国の多くの地域の生産者は、その栽培を熟知しており、該作物を栽培および収穫するのに必要な農業インフラを有する。それは、典型的に一年生作物として栽培されるが、多重収穫のために刈り株から新芽を出させることができ、最も乾燥耐性でかつ水利用効率のよい栽培作物の1つである(Rooneyら、2007)。
【0041】
ソルガム穀物は、合衆国外の地域では人の食物として等しく重要である。これらの地域において、該穀物は、パン、ポリッジ、菓子の形態で、およびアルコール飲料として消費される。ソルガム穀物は、粉に製粉してもよく、直接または小麦粉やトウモロコシ粉と混合して、食品の調製に使用してもよい。ソルガムは、該穀物の直接消費の他に、世界の多くの地域において、長い間、ビールの製造に使用されてきた。ソルガムの使用は、ヒトによる穀粒の消費の他に、乾式製粉および湿式製粉産業の生産物を包含する。ソルガムの乾式製粉の主生産物は、グリット(grit)、ミール(meal)およびフラワー(flour)である。食物使用のためのデンプンおよび他の抽出物は、湿式製粉工程によって提供される。
【0042】
ソルガムは、工業的原料の供給源を提供する。工業的使用は、主に、湿式製粉工業由来のソルガムデンプンから、および乾式製粉工業由来のソルガム粉である。ソルガムデンプンおよび粉は、紙およびテキスタイル工業に適用する。他の工業的使用は、接着剤、建設材料における適用および石油泥としての適用を包含する。相当量のソルガム(穀粒および植物材料の両方)が工業的アルコール生産に使用されてきた。
【0043】
本発明において意図されるモロコシ属の種は、限定するものではないが、ソルガム・アルマム(Sorghum almum)、ソルガム・アムプラム(Sorghum amplum)、ソルガム・アングスタム(Sorghum angustum)、ソルガム・アルンディナセウム(Sorghum arundinaceum)、ソルガム・ビカラー(Sorghum bicolor)(主要な栽培種)、アオルガム・ブラキポドゥム(Sorghum brachypodum)、ソルガム・バルボサム(Sorghum bulbosum)、ソルガム・バルヒカム(Sorghum burmahicum)、ソルガム・コントロヴェルム(Sorghum controversum)、ソルガム・ドルモンディイ(Sorghum drummondii)、ソルガム・エカリナタム(Sorghum ecarinatum)、ソルガム・エクスタンス(Sorghum exstans)、ソルガム・グランデ(Sorghum grande)、ソルガム・ハレペンセ(Sorghum halepense)、ソルガム・インテルジェクタム(Sorghum interjectum)、ソルガム・イントランス(Sorghum intrans)、ソルガム・ラキシフロラム(Sorghum laxiflorum)、ソルガム・レイオクラデュム(Sorghum leiocladum)、ソルガム・マクロスペルマム(Sorghum macrospermum)、ソルガム・マタランケンス(Sorghum matarankense)、ソルガム・ミリアセウム(Sorghum miliaceum)、ソルガム・ニグラム(Sorghum nigrum)、ソルガム・ニチデュム(Sorghum nitidum)、ソルガム・プラモサム(Sorghum plumosum)、ソルガム・プロピンキウム(Sorghum propinquum)、ソルガム・パープレオセリセウム(Sorghum purpureosericeum)、ソルガム・スチポイデウム(Sorghum stipoideum)、ソルガム・チモレンセ(Sorghum timorense)、ソルガム・トリコクラデュム(Sorghum trichocladum)、ソルガム・ヴェルシカラー(Sorghum versicolor)、ソルガム・ヴァーガタム(Sorghum virgatum)、およびソルガム・ヴルガレ(Sorghum vulgare)を包含する。
【0044】
本発明で使用されるソルガムの一例は、ソルガム・ビカラー(Sorghum bicolor)である。特定の具体例において、例えば下記のようなiap/iap変異ソルガムを用いてもよい。実施例1に記載されるTx3361系統を包含する雄性不稔性iap/iap変異体もまた、使用されうる。
【0045】
ある特定の態様において、本明細書中に記載されるソルガム植物は、1以上の農業経済学的に有益な形質を含みうる。これらの形質は、親ソルガム系統中に導入され、次いで、属間雑種植物に伝達されるか、または属間雑種植物中に直接導入されてもよい。ある特定の態様において、農業経済的に有益な形質は、1以上のトランス遺伝子をソルガム植物または属間雑種植物中に導入することにより、導入されうる。一の態様において、トランス遺伝子は、Tx3361系統のようなiap/iapソルガム系統中に、かかるソルガム植物由来の細胞を直接形質転換することによって導入されてもよい。別の態様において、トランス遺伝子は、トランス遺伝子を含むソルガム植物をTx3361のようなiap/iapソルガム系統と交雑することによって、iap/iapソルガム植物中に導入してもよい。次いで、かかる交雑由来のF子孫は、iap/iapソルガムに戻し交配するか、または(他のF子孫に)自家交配してもよく、該第2交配の生産物を、該トランス遺伝子の存在およびホモ接合性iap対立遺伝子の継承についてスクリーンする。かくして、劣性iap対立遺伝子についてホモ接合性のトランスジェニックソルガム植物は、本発明の一部として包含され、本明細書に記載の属間雑種植物を生産する方法において使用されうる。
【0046】
ある特定の態様において、本明細書に記載のソルガム植物および属間雑種植物は、限定するものではないが、穀物収率増加、糖含量増加、倒伏減少、背丈減少、乾燥耐性、耐塩性、サビ病耐性、昆虫耐性、炭疽病耐性、黒穂病耐性、べと病耐性、灰斑病耐性、条斑病(zonate)耐性、葉枯れ耐性、ウイルス耐性(例えば、トウモロコシ矮性モザイクウイルス耐性)、小昆虫耐性、ナンキンムシ(chinch bug)耐性、またはアブラムシ(green bug)耐性を包含する1以上の農業経済学的に有益な形質を含む。例えば、本明細書に記載の植物は、生物型CおよびEのアブラムシ(Schizaphis graminum)に対する耐性または改善された耐性、炭疽病(Colletotricum graminicola)耐性、病原型1および3のべと病(Sclerospora sorghi)および/またはレース1、2、3および4の黒穂病(Spaoelotheca reiliana)に対する耐性の形質を含んでいてもよい。
【0047】
B.サトウキビ
サトウキビ[サトウキビ属(Saccharum)]は、分類学的解釈に依存するが、6〜37種からなる、旧世界の暖温帯地域〜熱帯地域に自生する背丈の高い多年生草(イネ科、Andropogoneae類)の属である。それらは、頑丈な節のある繊維質の、糖類が豊富で、一般に2〜6メートルの高さになる茎を有する。サトウキビ種の全ては同系交配し、主な商業的栽培種は、複雑な雑種である。
【0048】
サトウキビは、氷砂糖の生産に用いられる熱帯地域の主要作物である。それはまた、世界の熱帯地域における糖由来エタノールの生産に幅広く用いられ、砂糖生産に好ましいものとしてではなく、さらに高いバイオマイス収率をもたらす多くの他のサトウキビが承認されている。高バイオマスサトウキビは、エネルギーケイン(energycane)と呼ばれ、セルロース性エタノール生産のためのバイオマス供給源として応用される。サトウキビは、潜在的なバイオマス収率が卓越しているが、熱帯種であり、米国内での適応は、その低温感受性によって制限される。さらに、サトウキビは、相当量の水を必要とし、ソルガムより乾燥の影響を受け易い。これらの因子は、さらに、その生産範囲を制限する。最終的に、該多年生作物の確立は、栄養繁殖に依存し、典型的に該作物の生産周期を通して最も費用のかかる唯一の作物である。
【0049】
本発明で意図されるサトウキビ属(サトウキビ)の種は、限定するものではないが、サッカラム・アルンジナセウム(Saccharum arundinaceum)、サッカラム・ベンガレンス(Saccharum bengalense)、サッカラム・ブレヴィバルベ(Saccharum brevibarbe)、サッカラム・エデュレ(Saccharum edule)、サッカラム・オフィシナラム(Saccharum officinarum)、サッカラム・プロセルム(Saccharum procerum)、サッカラム・ラヴェナエ(Saccharum ravennae)、サッカラム・ロブスタム(Saccharum robustum)、サッカラム・シネンセ(Saccharum sinense)およびサッカラム・スポンタネウム(Saccharum spontaneum)を包含する。本明細書の開示にしたがって使用するために意図されるいくつかのサトウキビ属の品種は、限定するものではないが、サトウキビ品種Ho05−961、HB03−403、Ho01−564、Ho05−961、Ho06−525、Ho06−530、Ho06−543、Ho06−552、Ho06−562、Ho06−563、Ho06−565、Ho07−613、Ho95−988、HoCP01−517、HoCP04−803、HoCP04−810、HoCP04−838、HoCP05−903、HoCP05−904、HoCP05−923、HoCP06−502、HoCP96−540、HoL05−953、L01−283、L06−001、L06−024、L06−38、LCP85−384、US02−840、TCP00−4521、TCP01−4535、TCP02−4622、TCP03−4636、TCP03−4645、MPTH97−209、US07−9014、US079026、US079025、L97−128(米国植物特許第PP17,636号)、L99−226(米国植物特許第PP18,807号)およびL99−233(米国植物特許第PP18,826号)を包含する。ある特定の態様において、親サトウキビ属植物は、1以上のトランス遺伝子を含んでいてもよい。例えば、親サトウキビ属植物は、先祖植物由来のトランス遺伝子を承継していてもよく、またはトランス遺伝子をコードするDNAで直接形質転換されていてもよい。
【0050】
ある特定の態様において、本明細書に記載のサトウキビ属植物は、1以上の農業経済学的に有益な形質を含んでいてもよい。例えば、本明細書で使用するためのサトウキビ属植物は、除草剤耐性(例えば、グリホサート耐性)または昆虫耐性(例えば、サトウキビ穿孔虫(Diatreae saccharalis)に対する耐性)を付与するトランス遺伝子を含むトランスジェニックサトウキビ属植物であってもよい。
【0051】
C.ススキ属(ミスカンサス)
ススキ属(Miscanthus)は、栽培されるバイオエネルギー供給原料として可能性のあるいくつかの種を有する。ミスカンサスは、アフリカおよび南アジアの亜熱帯および熱帯地域に自生する約15種の多年生草からなる属であり、1種(M.sinensis)は、北へ延びて温帯東アジアにまで及ぶ。種の例には、必ずしも限定するものではないが、ミスカンサス・フロリデュラス(Miscanthus floridulus)、ミスカンサス・ギガンテウス(Miscanthus giganteus)、ミスカンサス・サッカリフロラス[(Miscanthus sacchariflorus)(オギ(Amur silver-grass))]、ミスカンサス・シネンシス(Miscanthus sinensis)、ミスカンサス・チンクトリウス(Miscanthus tinctorius)およびミスカンサス・トランスモリソネンシス(Miscanthus transmorrisonensis)が包含される。
【0052】
ミスカンサスの迅速な生長、低ミネラル含量および高バイオマス収率は、バイオ燃料として好ましい。収穫後、燃焼させて、出力タービンのための熱および蒸気を生産することができる。その結果得られるCO放出は、植物が生長期の間に空気から収集したCOの量と等しく、かくして、該プロセスは、投入量(例えば、肥料)または使用場所へのバイオ燃料の輸送を考慮しなければ、グリーンハウスガス中性である。石炭との50/50混合物中に混合した場合、それは、現行の石炭を燃料とする発電所において改修することなしに使用することができる。
【0053】
これらの型の最も多作なものは、ミスカンサス・シネンシス(M.sinesis)(二倍体)とミスカンサス・サッカリフロラス(M.sacchariflorus)(4倍体)との天然種間3倍体不稔性雑種である「ジャイアント・ミスカンサス(Giant Miscanthus)」であり、これは、例えば、根茎切断またはイン・ビトロ培養で、栄養繁殖しなければならない。特定の型のミスカンサス(例えば、ジャイアント・ミスカンサス)は、高収量のバイオマスを生産し、多年生であり、温帯気候に適応する(Clifton−Brownら、2001)。大規模な商業化の可能性は、未だ証明されていないか、または少なくとも発表されていない。
【0054】
本明細書の開示にしたがって使用するためのさらなる植物種および品種は、中国、日本および韓国のほとんどを通じて東アジアに自生する草であるミスカンサス・シネンシス(Miscanthus sinensis)[チャイニーズ・シルバー・グラス、ユーラリ・アグラス(Eulalia grass)、メイデン・グラス(Maiden grass)、ゼブラ・グラス、ポルクピン・グラス(Porcupine Grass);類義語:Eulalia japonica Trin.、Miscanthus sinensis f. glaber Honda、Miscanthus sinensis var. gracillimus Hitchc., Miscanthus sinensis var. variegatus Beal、Miscanthus sinensis var. zebrinus Beal、Saccharum japonicum Thunb.]を包含する。それは、一般に0.8〜2m(稀に4m)の高さに生長する多年生草木植物であり、地下茎から密集した茂みを形成する。葉は、長さ18〜75cm、幅0.3〜2cmである。花は、紫がかっており、葉の上に維持される。
【0055】
D.さらなる単子葉植物
さらなる単子葉植物を用いて、本明細書に記載の属間交雑を生じることができる。例えば、ある特定の態様において、属間交雑は、ソルガムとイネ科(草)の第2の単子葉植物との間である。例えば、交雑は、ソルガム植物と、植物のAnomochlooideae、Pharoideae(例えば、PharusおよびLeptaspis)、Puelioideae、Pooideae(例えば、コムギ、オオムギ、オートムギ、スズメノチャヒキ、アシ)、Bambusoideae(例えば、竹)、Ehrhartoideae(例えば、コメ)、Arundinoideae、Centothecoideae、Chloridoideae、Panicoideae(例えば、トウモロコシ)、MicrairoideaeまたはDanthonioideae亜科のメンバーとの間で生じる。ある特定の態様において、属間植物は、優勢なソルガムの遺伝的背景中に所望の形質を遺伝子移入させるために使用されうる。逆に言えば、ある特定の場合において、本明細書に記載される属間交雑は、ソルガムに望ましい形質を他の遠い関係の植物品種中に遺伝子移入するために使用することができる。いくつかの特定の属間交雑および属間植物は、限定するものではないが、ソルガムと、エリアンタス(Erianthus)種、ソルガストラム(Sorghastrum)種、パニカム(Panicum)種、ペニセタム(Pennisetum)種、およびゼア・メイズ(Zea mays)の遺伝子型との交雑を包含する。
【0056】
ある特定の態様において、本明細書に記載の交雑に使用される単子葉植物は、それ自体、属間雑種植物であってもよい。例えば、ソルガムは、ソルケイン(Sorcane)植物またはミスケイン(miscane)植物(ススキ属とサトウキビ属の雑種)と交雑されてもよい。
【0057】
II.花粉不和合性系の使用
効率が良く、生産性の高いバイオ燃料供給原料を開発するという目標を達成するために、本発明のある特定の態様は、関連する種、例えば、ソルガム、サトウキビおよびミスカンサスに存在する所望の形質の多くを組み合わせる方法を提供する。ある特定の態様において、種間および属間不和合性においてiapの役割を利用して、繁殖障壁を迂回するための雑種を作成する。
【0058】
A.自家不和合性
ある特定の態様において、自家不和合性を用いて、自家受精または同じ種由来の花粉との受粉を最小限にすることができる。受精は、雄性核および雌性核の融合の成功に終わる花粉と雌しべとの間の複雑な相互作用である(de Nettancourt, 1997; Swansonら、2004; Wheelerら、2001)。雌しべ組織は、いくつかの細胞環境を通じて花粉管生長を支持する明確な指示および必須の栄養を提供する(Swansonら、2004)。同時に、雌しべは、種間または同一種内受粉を包含する不適当な花粉への接触から胚珠を保護する精巧な障壁を提供する。
【0059】
顕花植物における自家不合和性(SI)の研究は、S−遺伝子配列、遺伝子産物および遺伝子産物相互作用の詳細な理解まで進んでいる(de Nettancourt, 1997; Fengら、2006; McClureおよびFranklin−Tong, 2006; Rahmanら、2007; Tabahら、2004)。SIは、通常、単一の複対立遺伝子座Sによって調節されており、それは、自己認識の花粉および雌しべ決定因子をコードしている少なくとも2つの密接に関連した遺伝子からなる。近年、SIの雌性決定因子の同定において大きな進歩があった。ほとんどの配偶体SI系は、雌しべS成分として、S−RNaseを有するが、独特の配偶体系は、雌しべ成分として小型分泌ペプチドを有する(Fengら、2006; McClureおよびFranklin−Tong, 2006)。SIの胞子体形成において、雌しべ決定因子は、S−受容体キナーゼであり、保存的キナーゼドメイン、膜貫通型ドメインおよび可変細胞外受容体からなる(Naithaniら、2007; NasrallahおよびNasrallah, 1993; Nasrallah, 2002)。繁殖組織におけるこれらの遺伝子の時空間的な発現は、自家不合和性花粉の認識および拒絶に導く細胞的および分子的プロセスの詳細な説明を可能とする。
【0060】
B.交雑不和合性
属間交雑のために、異なる種間の交雑不和合性の問題を解決しなければならない。種間交雑不和合性を理解するために、2つの主要なパラダイム、すなわち、不和合性および不調和(incongruity)が存在する。不和合性は、不和合遺伝子の阻害作用により、生殖関係が機能しないメカニズムである。不和合性は、「外来」と同定された花粉の活発な拒絶に依存し、上記のSI系に類似する。あるいは、不調和は、花粉の活発な拒絶に依存しないが、本質的には、パートナーの1つについての遺伝的情報の欠落のために不機能が生じる受動的プロセスである。雄性パートナーが雌に存在するある特定の障壁を克服するための浸透メカニズムを欠く場合、調和しない関係が存在する。互いからの単離において進化する種は、進化的相違のため、調和しないパートナーである可能性が高い(Hogenboom, 1973)。関与メカニズムにもかかわらず、種間ハイブリダイゼーションに対する障壁は、作物種において共通し、それらを克服することは、生殖質改良計画において種間または属間交雑を利用するために必須である。
【0061】
C.ソルガムにおけるIap遺伝子座
ハイブリダイゼーション障壁は、モロコシ属、およびソルガム・ビカラーと野生型ソルガム種ならびにより遠縁の植物との間の雑種を得るための多くの不成功に終わった試みにおいて存在する。雌性ソルガム植物において花粉管生長を調節する対立遺伝子が同定され、Iapと称される。該遺伝子(iap対立遺伝子)の劣性変異体もまた、同定された。
【0062】
iapの遺伝子座は、ソルガム連鎖群02(SBI−02)の短腕に位置決定され、該遺伝子座には、いくつかのAFLPおよびマイクロサテライトマーカーが側面に位置する。iap遺伝子座の側面に位置する2つの近接のマイクロサテライトマーカー(Xtxp50およびXtxp63)は、配列に基づいた高密度ソルガムゲノム地図に対して相互参照された(例えば、Texas A&M Universityのウェブサイト上のsorgblast3.tamu.edu、Menzら、2002公表を参照のこと)。該局所的組み換え頻度(cMあたりのkbp、cMあたりの遺伝子)は、ゲノムにわたって概算された。該iap遺伝子座をまたがる領域は、〜165kb/cMの局所的組み換え頻度を有すると予測される。かくして、該Iap形質遺伝子座は、比較的小さいセグメント、〜800kbp−1Mbpに範囲が定められると推測される。
【0063】
III.ソルガムを含む属間雑種および遺伝子移入
本発明は、所望の形質を雑種または植物種に導入することを含む、属間ハイブリダイゼーションおよびバイオ燃料の生産の方法を提供する。
【0064】
A.属間雑種の生産
種間の複雑な形質の移入は、種間または属間雑種の生産の成功を必要とする。ソルガムとサトウキビ属との間およびサトウキビ属とススキ属との間の稀なハイブリダイゼーションについて、文献において多くの報告があるが、ススキ属とソルガムとの間のハイブリダイゼーションについての報告は今まで知られていない。これらの種が稀にしかハイブリダイズしないという能力は、おそらく、その遺伝的類似性(例えば、ソルガムおよびサトウキビはほんの5百万年前に分岐した)に関連する(Patersonら、2004)。ソルガム、サトウキビ属およびススキ属のDNA配列は、今日にいたっても非常に類似している(Matthewsら、2002のFIG.1)。しかしながら、生存能力のある雑種は、滅多に観察されず(1,000回の試みのうち<1未満)、それらの分類学的および遺伝学的特徴を反映する。かかる極度の困難性が、これらの努力の実際的な有用性を排除している。
【0065】
対照的に、本発明は、属間雑種の効率の良い生産を可能とする方法を提供する。一の態様において、かかる方法は、(a)劣性iapについてホモ接合性(外来花粉遺伝子の阻害)であるソルガム植物を得、(b)該ソルガム植物を、ソルガム以外のアンドロポゴン類(Andropogoneae)植物と交雑し、F1子孫を得、ここに、該ソルガム植物を雌性親として用い、該非ソルガムアンドロポゴン類植物を雄性親として用い、(c)F1子孫から属間雑種を選択し、ここに、該属間雑種はどちらの親よりも高いバイオ燃料収率を有する工程を含む。
【0066】
本発明にしたがって行われる交雑において、ある特定の場合、該属間雑種交雑から得られる成熟種子は、いくつかの場合において、低い生存能力を有することが発明者により見出されたので、上記したように、生存能力のある属間雑種植物を得るために、受粉後に胚レスキューを用いることが望ましい。また、各親植物における生存能力のある花粉および花粉を受容する花の同時性を保証するために、親植物の光周期および/または他の生長条件を操作することも望ましい。有利には、該段階の間、植物を肥料および/または適当と考えられる他の農薬で処理してもよい。
【0067】
いったん属間交雑が起これば、雑種として得られる子孫であって、単に自家受精または同じ種の別の植物由来の花粉での受粉の結果ではないことを同定することが重要である。一の同定方法は、本願発明の場合のように、属間雑種が十分に識別可能な特徴を有するならば、形態学的評価である。特に、本明細書に記載の特徴は、各親植物由来の植物の物理的特徴に基づいて、当業者が植物を属間雑種として同定することを可能とする。
【0068】
しかしながら、他の技術も本発明に利用できることが分かっており、環境的変動によって引き起こされる誤差の可能性を回避しうる。全ての可能なF1子孫植物のために、植物の倍数性、染色体構成およびバリエーションを決定してもよく、また、多様なゲノム位置由来の親の多形分子マーカーのセットのために、親の遺伝子型構成および一致またはバリエーションを決定してもよい。例えば、ある特定の態様において、属間子孫をスクリーンして、高い割合の機能的2n配偶体を生じる子孫を同定してもよい。これらの子孫は、特に、特異的形質の遺伝子移入のための交配および戻し交配に有用でありうる。
【0069】
例えば、親がゲノムサイズで異なる場合、フローサイトメトリックまたは他のDNA含量測定法が初期発育段階で雑種を検出しうる。しかしながら、DNA含量の相違は、雑種状態以外の理由に起因しうるため、付加的な分析方法も望まれうる。親の相補体がサイズ、数および/または多形において異なる場合、根端が発達するとすぐに、核型分析の実施が可能である。別法には、ゲノム・イン・サイトゥ・ハイブリダイゼーション(GISH)(Schwarzacherら、1989)または遺伝子マーカー分析の使用がある。
【0070】
遺伝子マーカーは、種間雑種植物、特に、異なる単子葉親植物由来の遺伝的相補体の組み合わせの分析および同定のための効率の良い方法を代表する。本明細書中で使用される場合、「遺伝的相補体」なる語は、植物または植物由来の細胞の同一性を明らかにするヌクレオチド配列の集合物を意味する。例えば、本明細書中で提供される属間雑種は、例示的なソルガムおよびサトウキビ/ススキ属親植物に対して、継承されたマーカーの代表的なサンプルを決定するために、遺伝子型分類されることができる。
【0071】
遺伝子マーカーは、単一遺伝子座にて対立遺伝子である。それらは、好ましくは、二倍体遺伝子座の両方の対立遺伝子の存在が容易に検出可能なように共優性な様式で継承されており、環境変動がなく、すなわち、それらの遺伝率は1である。単一遺伝子座遺伝子型のアレイは、各遺伝子座にて2つのマーカー対立遺伝子のプロファイルとして発現される。各遺伝子座のマーカー対立遺伝子組成は、ホモ接合性またはヘテロ接合性である。ホモ接合性は、ある遺伝子座の両方の対立遺伝子が同じヌクレオチド配列または繰り返し配列のサイズによって特徴付けられる状態である。ヘテロ接合性は、ある遺伝子座の遺伝子の異なる状態をいう。
【0072】
有用な型の遺伝子マーカーは、単純配列リピート(SSRs)であり、それらは、一般に、高度多形であり、入手に費用がかからない。しかしながら、潜在的に、例えば、制限フラグメント長多形(RFLPs)、増幅フラグメント長多形(AFLPs)、単一ヌクレオチド多形(SNPs)、およびアイソザイムなどの他の型の遺伝子マーカーも、本発明の植物を同定するために使用可能である。
【0073】
ある特定の態様において、稔性、栄養繁殖およびバイオ燃料特性を包含する子孫の形質をF1子孫のいくつかまたは全てについて決定することが望ましく、該決定の結果にもよるが、全てのF1植物が類似するようである場合、F1植物の代表的セットを分析し、F1植物が変化している場合、多くのF1植物をクローンとして個別に分析する。さらなる態様において、かかる子孫またはクローンは、所望の形質、例えば、いずれの親と比較しても改善したバイオ燃料収率について選択されうる。
【0074】
B.遺伝子移入
遺伝子移入は、戻し勾配による、1の種由来の遺伝子の別の種の遺伝子プール中への移動(遺伝子の流れ)を含む。本発明の一の具体例において、種間雑種は、その親の1つと戻し交配してもよい。これは、1以上の形質を親に遺伝子移入することを可能とし、特に、新規な形質を該種に導入することができる。遺伝子移入は、長期のプロセスであり、戻し交配が起こる前に、多くの雑種生成を行ってもよい。遺伝子移入株(ILと略する)は、類似の種、例えば、「野生型」種由来の遺伝的材料を含有する作物種の系統をいう。遺伝子移入系統は、定量的形質遺伝子座の研究を可能とするが、外来形質を導入することによる新規な品種の作成も可能とする。
【0075】
本発明のある特定の具体例において、非ソルガムアンドロポゴン類植物のバイオ燃料収率を改善する方法であって、(a)劣性iapについてホモ接合性のソルガム植物を得、(b)該ソルガム植物をソルガム以外のアンドロポゴン類植物と交雑し、F1子孫を得、ここに、該ソルガム植物を雌性親として用い、該非ソルガムアンドロポゴン類植物を雄性親として用い、(c)該F1子孫から属間雑種を選択し、ここに、該属間雑種は、非ソルガムアンドロポゴン類植物と比べて高いバイオ燃料収率を有し、(d)該属間雑種を非ソルガムアンドロポゴン類植物と戻し交配して、アンドロポゴン類子孫を得、ここに、該アンドロポゴン類子孫がより高いバイオ燃料収率を有する工程を含む方法も提供されうる。ある特定の具体例において、該方法は、さらに、(e)該アンドロポゴン類子孫を同系交配させて、より高いバイオ燃料収率についてホモ接合性の第2の子孫を生産する工程を含んでいてもよい。
【0076】
C.改善されたバイオ燃料収率の選択
いくつかの態様において、属間ハイブリダイゼーションまたは遺伝子移入を本発明において用いて、ある特定の植物のバイオ燃料収率を改善してもよい。より高いバイオ燃料収率の選択は、標準的なバイオマス分析手法、例えば、合衆国ナショナル・リニューアル・エネルギー・ラボラトリーによって提供される方法またはAmerican Society for Testing and Materials and the Technical Association of the Pulp and Paper Industryによって採用された類似の手法を用いて行うことができる。
【0077】
ある特定の態様において、バイオマス収率は、また、バイオマス含量、稔性、栄養繁殖、光周期不感受性、背丈、茎径、乾燥耐性、種子サイズ、発芽、貯蔵後の種子生存能力、または当該分野で一般に知られているいずれかの特徴を包含していてもよい。例えば、バイオマス含量は、シュークロース含量またはセルロース含量であってもよい。特に、シュークロース含量またはセルロース含量は、HPLCまたは近赤外線反射スペクトロスコープによって測定さうる。
【0078】
D.除草剤耐性
多くの除草剤耐性遺伝子が知られており、本願発明で利用されうる。例えば、生長点または分裂組織を阻害する除草剤、例えば、イミダゾリノンまたはスルホニル尿素に対する耐性を付与する遺伝子がある。該カテゴリーにおける例示的遺伝子は、例えば、Leeら(1988)によって記載されるような変異体ALSおよびAHAS酵素をコードする。
【0079】
グリホサート(各々、変異型5−エノールピルビル−3ホスフィキメートシンターセ(EPSP)(5-enolpyruvl-3 phosphikimate synthase)およびaroA遺伝子によって付与される耐性)および他のホスホノ化合物、例えば、グルホシネート(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)およびストレプトマイセスヒグロスコピカスホスフィノトリシン−アセチルトランスフェラーゼ(bar)遺伝子)耐性遺伝子もまた、使用してもよい。例えば、グリホサート耐性を付与することのできるEPSPSの形態のヌクレオチド配列を開示するShahらの米国特許第4,940,835号参照のこと。変異型aroA遺伝子をコードしているDNA分子は、ATCC受託番号第39256号の下で得ることができ、該変異型遺伝子のヌクレオチド配列は、Comaiの米国特許第4,769,061号に開示されている。Kumadaらの欧州特許出願第0 333 033号およびGoodmanらの米国特許第4,975,374号は、L−ホスフィノトリシンなどの除草剤に対する耐性を付与するグルタミンシンターゼ遺伝子のヌクレオチド配列を開示する。ホスフィノトリシン−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は、Leemansらの欧州特許出願第0 242 246号に提供され、DeGreefら(1989)は、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼをコードするキメラbar遺伝子を発現するトランスジェニック植物の生産を記載する。フェノキシプロピオン酸およびシクロヘキソン類(cycloshexones)、例えば、セトキシジム(sethoxydim)およびハロキシフォップ(haloxyfop)に対する耐性を付与する遺伝子の例は、Marshallら(1992)によって記載されるAcct−S1、Accl−S2およびAcct−S3遺伝子である。
【0080】
また、光合成を阻害する除草剤、例えば、トリアジン(psbAおよびgs+遺伝子)およびベンゾニトリル(ニトリラーゼ遺伝子)に対する耐性を付与する遺伝子も知られている。Przibillaら(1991)は、変異型psbA遺伝子をコードするプラスミドでのクラミドモナスの形質転換を記載する。ニトリラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は、Stalkerの米国特許第4,810,648号に開示され、これらの遺伝子を含有するDNA分子は、ATCC受託番号第53435号、第67441号および第67442号の下で入手可能である。グルタチオンS−トランスフェラーゼをコードするDNAのクローニングおよび発現は、Hayesら(1992)によって記載されている。
【0081】
E.病害耐性
植物防御は、しばしば、植物中の病害耐性遺伝子(R)と病原体中の対応する非病原性(Avr)遺伝子の生産物との間の特異的相互作用によって活性化される。植物系統は、クローン化された耐性遺伝子で形質転換して、特異的病原体株に対して耐性の植物を作成することができる。例えば、Jonesら(1994)(Cladosporium fulvumに対する耐性のためのトマトCf−9遺伝子のクローニング)、Martinら(1993)(Pseudomonas syringae pv. tomatoに対する耐性のためのトマトPto遺伝子)、およびMindrinosら(1994)(Pseudomonas syringaeに対する耐性のためのArabidopsis RPS2遺伝子)を参照のこと。
【0082】
ウイルス侵襲性タンパク質またはそれに由来する複合毒素もまた、ウイルス病耐性に用いてもよい。例えば、形質転換植物細胞中のウイルス外被タンパク質の蓄積は、該外被タンパク質遺伝子が由来するウイルスならびに関連するウイルスによってもたらされるウイルス感染および/または病害発症に対する耐性を付与する。Beachyら(1990)参照のこと。外被タンパク質媒介性耐性は、アルファルファモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、タバコ条斑ウイルス、ジャガイモウイルスX、ジャガイモウイルスY、タバコエッチウイルス、タバコ茎えそウイルス、およびタバコモザイクウイルスに対する形質転換植物に付与されている。Id.
【0083】
また、ウイルス特異的抗体を用いてもよい。例えば、組み換え抗体遺伝子を発現しているトランスジェニック植物がウイルス攻撃から保護されることを示すTavladorakiら(1993)参照のこと。
【0084】
例えば、Logemannら(1992)は、真菌病害に対する耐性が増加したオオムギリボソーム不活化遺伝子を発現しているトランスジェニック植物を開示する。
【0085】
F.昆虫耐性
昆虫耐性遺伝子の一例は、バシラス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)タンパク質、その誘導体またはそれをモデル化した合成ポリペプチドを包含する。例えば、Bt δ−エンドトキシン遺伝子のクローニングおよびヌクレオチド配列を開示するGeiserら(1986)を参照のこと。さらに、δ−エンドトキシン遺伝子をコードしているDNA分子は、例えば、ヴァージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から、受託番号第40098号、第67136号、第31995号および第31998号の下で入手可能である。別の例にはレクチンがある。例えば、いくつかのクリヴィア・ミニアータ(Clivia miniata)のマンノース結合性レクチン遺伝子のヌクレオチド配列を開示するVan Dammeら(1994)を参照のこと。ビタミン結合性タンパク質もまた使用してもよく、アビジンなどがある。PCT出願第US93/06487号(出典明示により、本明細書の一部とされる)を参照のこと。該出願は、昆虫害虫に対する殺幼虫剤としてのアビジンおよびアビジン相同物の使用を教示する。
【0086】
また別の昆虫耐性遺伝子は、酵素阻害剤、例えば、プロテアーゼまたはプロテイナーゼ阻害剤あるいはアミラーゼ阻害剤である。例えば、Abeら(1987)(米システインプロテイナーゼ阻害剤のヌクレオチド配列)、Huubら(1993)(タバコプロテイナーゼ阻害剤IをコードするcDNAのヌクレオチド配列)、およびSumitaniら(1993)[ストレプトマイセス・ニトロスポレウス(Streptomyces nitrosporeus)α−アミラーゼ阻害剤のヌクレオチド配列]を参照のこと。昆虫特異的ホルモンまたはフェロモンもまた使用してもよい。例えば、Hammockら(1990)による、クローン化された幼若ホルモンエステラーゼ、幼若ホルモンの不活性化剤のバキュロウイルス発現の開示を参照のこと。
【0087】
また別の例は、昆虫特異的抗体、そこから誘導される抗毒素、発育遅滞(developmental-arrestive)タンパク質または酵素を包含する。単鎖抗体フラグメントの産生を介するトランスジェニックタバコにおける酵素的不活性化を記載するTaylorら(1994)を参照のこと。さらなる例において、米キチナーゼ(chi II)などのキチナーゼは、植物に発現されうる(例えば、CaMV 35Sプロモーターの調節下におけるソルガム中のchi IIの発現を開示するZhuら、1998およびKrishnaveniら、2001を参照のこと)。
【0088】
G.修飾された脂肪酸、フィターゼおよびカルボヒドラーゼ代謝
修飾された脂肪酸代謝を付与する遺伝子を用いてもよい。例えば、ステリル−ACPデサチュラーゼ遺伝子を用いてもよい。Knutzonら(1992)を参照のこと。また、Δ9脂肪酸デサチュラーゼ、パルミトイル(16:0)またはステロイル(18:0)CoA由来のモノ不飽和パルミトレイン(16:1)およびオレイン(18:1)脂肪酸を形成する酵素をコードしているSaccharomyces cerevisiae OLE1遺伝子(McDonoughら、1992);ヒマ(castor)由来のステロイル−アシルキャリヤータンパク質デルタ−9デサチュラーゼ(Foxら、1993);リノール酸(18:2)からガンマリノレン酸(18:3ガンマ)への変換に関与するシアノバクテリアSynechocystis由来のΔ6−およびΔ12−デサチュラーゼ(Reddyら、1993);オメガ−3デサチュラーゼをコードするArabidopsis thaliana由来の遺伝子(Arondelら、1992);植物Δ9−デサチュラーゼ(PCT出願公開第WO91/13972号)ならびにダイズおよびアブラナ属Δ15デサチュラーゼ(欧州特許出願第EP 0616644号)などの種々の脂肪酸デサチュラーゼが記載されている。
【0089】
フィチン酸塩代謝は、また、フィターゼコード化遺伝子の導入によって、フィチン酸塩の分解を増強し、より多くの遊離リン酸塩を形質転換植物に加えるように修飾してもよい。例えば、Aspergillus nigerフィターゼ遺伝子のヌクレオチド配列を開示するVan Hartingsveldtら(1993)を参照のこと。例えば、これは、低レベルのフィチン酸によって特徴付けられる植物変異体の原因となる単一対立遺伝子に関連するDNAをクローニング、次いで再導入することによって達成することができた。Raboyら(1990)参照のこと。
【0090】
カルボヒドラーゼ代謝を改変するために使用されうる多くの遺伝子が知られている。例えば、植物は、デンプンの分枝パターンを改変する酵素をコードする遺伝子で形質転換してもよい。Shirozaら(1988)(ストレプトコッカス変異体フルクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、Steinmetzら(1985)[バシラス・ズブチリス(Bacillus subtilis)レバンスクラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列]、Penら(1992)[バシラス・リェニフォルミス(Bacillus licheniformis)α−アミラーゼを発現するトランスジェニック植物の生産]、Elliotら(1993)(トマトインベルターゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、Sergaardら(1993)(オオムギα−アミラーゼ遺伝子の部位特異的突然変異誘発)、およびFisherら(1993)(トウモロコシ内胚乳デンプン分枝酵素II)を参照のこと。トウモロコシ由来の10kDゼイン貯蔵タンパク質をコードするZ10遺伝子もまた、他の成分と相対的に細胞中の10kDゼインの量を改変するために使用してもよい(Kiriharaら、1988)。
【0091】
H.さらなる農業経済学的形質
例えば、乾燥耐性または耐寒性を増加するために、さらなるトランス遺伝子を導入してもよい。例えば、雑種植物の表面ワックス含量および乾燥耐性を増加させるために、ワックス合成酵素を発現させてもよい。耐寒性を付与するのに有用なトランス遺伝子は、例えば、米国特許公報第20080092255号(出典明示により本明細書の一部とされる)に開示される。非生物的ストレス耐性を改善するためにトランスジェニック植物中で発現または過剰発現されうるさらなる遺伝子は、マンニトール−1−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(例えば、mtlD)、ピロリン−5−カルボキシレートシンターゼ(例えば、p5CSf129A)、および/またはコリンオキシダーゼ(例えば、codA)を包含する。
【0092】
例えば、エタノール生産のためのデンプンを増加するか、またはタンパク質発現を提供することができる商業的形質もまた、遺伝子上にコード化することができる。形質転換植物の別の重要な商業的使用は、米国特許第5,602,321号(出典明示により本明細書の一部とされる)に記載されるようなポリマーおよびバイオプラスチックの生産である。B−ケトチオラーゼ、PHBアーゼ(ポリヒドロキシブチレートシンターゼ)およびアセトアセチル−CoA還元酵素などの遺伝子は、ポリヒドキシアルカノエート(PHAs)の発現を容易にする。
【0093】
IV.雄性不稔性
ある特定の態様において、異なるが、密接に関連する種間のハイブリダイゼーションは、雌性親としてのソルガムのiap/iap変異体の使用を含む。ソルガムは天然では低頻度で異系交配するので、所望の親間での交配を調節するには、一般に特別の操作が所望される(Rooney、2004)。本発明のある特定の具体例は、雄性不稔性ソルガム変異体、例えば、Tx 3361を用いて、手で除雄する必要性を回避する。雄性不稔性の例を下記する。
【0094】
A.手での除雄
主として調節された受粉および交配目的での植物の雄(花粉)部の除去または破壊は、除雄と呼ばれる。自家受粉の調節のための手での除雄および他の方法はよく知られている。
【0095】
花は、開花前日に除雄されうる。かかる小花は、ソルガム円錐花序において開いた小花の約3cm以内に生じる。全て開いた小穂ははさみで除去する。特に、除雄を戸外で行う場合、円錐花序および器具を洗浄して、除雄前にいかなる花粉も除去すべきである。温室内でのかかる花粉移動の可能性はほとんどないが、円錐花序および器具のかかるリンスは、所望されない異系交配を回避するために実施すべきである。
【0096】
除雄されるべき小花を除き、全ての小花を除去して、次の日に開花すると予想される小花のみを残す。シャープペンシルまたは同様の尖った器具を挿入することによって、3つの葯を囲んでいる外花穎および内花穎の外で操作する。葯を破壊しないように注意を払わなければならず、もし葯が破れたら、その花を除去して、器具をリンスして次の小花の汚染を回避すべきである。小花のセットが「完全に除雄される」前に、いずれの葯も除去しなければならない。1つの葯の存在は、ブリーダーによる花粉の移動前に、1以上の子房の受粉を引き起こすであろう。小花を除雄した後、小花を1−2日後に受粉させるまで、紙袋を除雄した円錐花序の上に被せる。屋外での除雄は、通常、他の植物から迷い出た生存能力のある花粉を避ける目的で、午後に行われる。
【0097】
B.遺伝的雄性不稔性
ms1〜ms7と呼ばれる一連の核劣性雄性不稔性遺伝子がソルガムで特徴付けられている。劣性条件において、これらの変異は、ハイブリダイゼーションに用いることができる雄性不稔性植物をもたらす(Rooney、2001)。これらの植物は完全に雄性不稔性なので、除雄する必要はなく、非常の多数の種子をより容易に作成することができる。しかしながら、何世代にもわたって受け継がれる均一の遺伝的不稔性をもたらす能力がないことが、雑種種子生産のための遺伝的雄性不稔性の使用を面倒にする。結果的に、遺伝的雄性不稔性は、属間雑種植物およびその親の開発を容易にするための、本発明にしたがうソルガム育種計画に用いられうる。
【0098】
遺伝的雄性不稔性の使用は、ハイブリダイゼーションを容易にするが、それはまた、開花中に該集団の綿密な管理を必要とする。いったん改良が完成したら、系統を誘導しなければならず、該劣性ms対立遺伝子は除去されるか、またはそれらは将来の世代に不稔性子孫を生じるであろう。遺伝的雄性不稔性のための系統分離は、無作為な円錐花序の自家受粉または不稔性円錐花序と同じ列にあるヘテロ接合性の雄性不稔性植物由来の花粉との大量受粉によって維持されることができる。該系を用いるために、雄性不稔性植物は、先端開花にて同定されなければならない。雄性不稔性植物の葯は、小さく、細く、生存能力のある花粉を落とさない。同定において、雄性不稔性円錐花序の先端を除去し、該円錐花序を袋に入れて解放受粉を回避すべきである。次いで、円錐花序を3−5日後に、所望の雄性親から収集した花粉で受粉することができる。これらの交雑由来の雑種は、個体数改善のために使用することができるか、または改善された純粋な系統を生産するための系統選択などの別の植物育種スキームを開始するために使用することができる。ブリーダーは、多くのえり抜きのソルガム生殖質および親系統において、遺伝的雄性不稔性ストックを開発している(PedersenおよびToy 1997)。
【0099】
C.殺配偶子剤
ある特定の具体例において、除雄は、所望により、花粉を不稔にするための殺配偶子剤を用いて達成することができる。かかる殺配偶子剤で処理した植物は、雄性不稔性になるが、典型的に、雌性稔性のままである。化学的殺配偶子剤の使用は、例えば、米国特許第4,936,904号(その開示は、特に、出典明示により全体として本明細書の一部とされる)に記載されている。
【0100】
V.植物形質転換構築物
本発明にしたがって、遺伝的形質転換によって生産された1以上のトランス遺伝子を含む植物が提供される。植物形質転換に使用されるベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、YACs(酵母人工染色体)、BACs(細菌人工染色体)または別の他の適当なクローニング系、ならびにそれら由来のDNAフラグメントを包含しうる。かくして、「ベクター」または「発現ベクター」なる語が用いられる場合、上記型のベクターの全て、ならびにそれらから単離された核酸配列が包含される。大きな挿入能力を有するクローニング系の利用は、1以上の選択遺伝子を含む大型のDNA配列の導入を可能にすると考えられる。本発明によると、これは、全生合成経路に相当する遺伝子を植物中に導入するために使用することができた。かかる配列の導入は、細菌または酵母人工染色体(各々、BACsまたはYACs)の使用によって、または植物人工染色体の使用によってさえも、容易にされうる。例えば、アグロバクテリウム媒介性形質転換のためのBACsの使用は、Hamiltonら(1996)によって開示された。
【0101】
かかるベクターから単離された発現カセットは、形質転換に特に有用である。植物細胞を形質転換するために使用されるDNAセグメントは、もちろん、一般に、宿主細胞中に導入し、発現させたいcDNAまたは遺伝子を含む。これらのDNAセグメントは、さらに、プロモーター、エンハンサー、ポリリンカー、または所望により、調節遺伝子などの構造を含むことができる。細胞性導入のために選択されたDNAセグメントまたは遺伝子は、しばしば、スクリーニング可能なまたは選択可能な形質をもたらす得られる組み換え細胞中で発現されるタンパク質、および/または得られるトランスジェニック植物に改善された表現型を付与するタンパク質をコードする。しかしながら、いつもこうであるとは限らず、本発明は、発現されないトランス遺伝子を組み込んだトランスジェニック植物も包含する。本発明において使用されるベクターと共に包含されうる成分の例は、下記の通りである。
【0102】
A.調節エレメント
核酸配列の発現のための例示的プロモーターは、CaMV 35Sプロモーター(Odellら、1985)などの植物プロモーター、またはCaMV 19S(Lawtonら、1987)、nos(Ebertら、1987)、Adh(Walkerら、1987)、シュークロースシンターゼ(YangおよびRussell、1990)、チューブリン、アクチン(Wangら、1992)、cab(Sullivanら、1989)、PEPCアーゼ(HudspethおよびGrula、1989)またはR遺伝子複合体に関連するもの(Chandlerら、1989)等の他のプロモーターを包含する。根組織プロモーター(Conklingら、1990)などの組織特異的プロモーター、および組織特異的エンハンサー(Frommら、1986)もまた、有用であると考えられ、ABA−およびトルゴール−誘導可能プロモーターなどの誘導可能プロモーターである。PAL2プロモーターもまた、本発明で有用でありうる(米国特許出願公開第2004/0049802号(特に、出典明示により、全体として本明細書の一部とされる)。
【0103】
転写開始部位とコーディング配列の開始との間のDNA配列、すなわち、非翻訳リーダー配列もまた、遺伝子発現に影響を及ぼすことができる。かくして、本発明の形質転換構築物と共に、特定のリーダー配列を用いてみてもよい。リーダー配列は、付加配列の最適な発現を指示する、すなわち、mRNA安定性を増加または維持し、翻訳の不適当な開始を防ぎうる好ましいコンセンサスリーダー配列を含むと予測される配列を含むものを包含すると考えられる。かかる配列の選択は、本明細書の開示に照らして、当業者に既知であろう。植物において高度に発現する遺伝子由来の配列が典型的に好ましい。
【0104】
本発明にしたがって使用するためのベクターは、ocsエンハンサーエレメントを含むと考えられる。該エレメントは、最初、アグロバクテリウムのオクトピンシンターゼ(ocs)遺伝子由来の16bpパリンドロームエンハンサーとして同定され(Ellisら、1987)、少なくとも10個の他のプロモーターに存在する(Bouchezら、1989)。ocsエレメントおよび該エレメントの特に多数のコピーなどのエンハンサーエレメントの使用は、植物形質転換との関連で適用した場合、隣接するプロモーターからの転写レベルを増加するように作用しうる。
【0105】
トランスジェニック植物における遺伝子の組織特異的標的化において使用するためのベクターは、典型的に、組織特異的プロモーターを含み、また、他の組織特異的調節エレメント、例えば、エンハンサー配列を含んでいてもよい。ある特定の植物組織における特異的または強化した発現を支持するプロモーターは、本明細書に照らして、当業者に既知であろう。これらは、例えば、緑色組織に特異的なrbcSプロモーター;根または損傷した葉組織において高い活性を有するocs、nosおよびmasプロモーターを包含する。
【0106】
B.ターミネーター
本発明にしたがって調製される形質転換構築物は、典型的に、転写を停止させ、プロモーターに作動可能に連結したコーディング配列によって産生されるmRNAのポリアデニル化を可能にするシグナルとして作用する3’末端DNA配列を包含するであろう。該文脈において有用であると考えられるターミネーターの例は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(nos 3’末端)のノパリンシンターゼ遺伝子由来のもの(Bevanら、1983)、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのオクトピンシンターゼ遺伝子由来のT7転写産物のターミネーター、およびジャガイモまたはトマト由来のプロテアーゼ阻害剤IまたはII遺伝子の3’末端を包含する。Adhイントロン(Callisら、1987)、シュークロースシンターゼイントロン(Vasilら、1989)またはTMVオメガエレメント(Gallieら、1989)等の調節エレメントは、所望により、さらに包含されうる。
【0107】
C.輸送またはシグナルペプチド
最初の翻訳産物から翻訳後に除去され、細胞内膜または細胞外膜中への、あるいは細胞内膜または細胞外膜を介するタンパク質輸送を容易にする、発現された遺伝子のコーディング配列に結合する配列は、輸送(通常、小腔、小胞、プラスチドおよび他の細胞内器官中への)およびシグナル配列(通常、小胞体、ゴルジ体および細胞膜の外側への)と呼ばれる。該タンパク質の細胞内外のコンパートメントへの輸送を容易にすることによって、これらの配列は、それらをタンパク質分解から保護する遺伝子産物の蓄積を増加しうる。これらの配列は、また、高度に発現した遺伝子由来の付加的なmRNA配列が該遺伝子のコーディング配列に結合するのを可能にする。リボソームによって翻訳されているmRNAは裸の(naked)mRNAよりも安定なので、該遺伝子の前にある翻訳可能なmRNAの存在は、該遺伝子由来のmRNA転写産物の全安定性を増加し、それにより、遺伝子産物の合成を増加しうる。輸送およびシグナル配列は通常、最初の翻訳産物から翻訳後に除去されるので、これらの配列の使用は、最終ポリペプチド上に現れないかもしれない余分な翻訳配列の付加を可能にする。さらに、タンパク質の安定性を増加するために、ある特定のタンパク質の標的化が望ましいかもしれないと考えられる(米国特許第5,545,818号(出典明示により、全体として、本明細書の一部とされる))。
【0108】
さらに、ベクターは、トランスジェニック植物の細胞内での特異的遺伝子産物の細胞内標的化において、またはタンパク質を細胞外環境に指向するにおいて、構築および使用されうる。このことは、一般的に、輸送およびシグナルペプチド配列をコードしているDNA配列を特定の遺伝子のコーディング配列に結合することによって達成されるであろう。得られる輸送、またはシグナルペプチドは、該タンパク質を各々、特定の細胞内、または細胞外目的地に輸送し、次いで、翻訳後に除去されるであろう。
【0109】
D.マーカー遺伝子
選択可能またはスクリーニング可能なマーカータンパク質を用いることによって、形質転換体を同定する能力を提供または増強することができる。「マーカー遺伝子」は、該マーカータンパク質を発現している細胞に別個の表現型を付与し、かくして、かかる形質転換細胞を該マーカーを有しない細胞から識別可能にする遺伝子である。かかる遺伝子は、マーカーが化学的手段によって、すなわち、選択剤(例えば、除草剤、抗生物質など)の使用によって「選択」できる形質を付与するのか、または単純に観察または試験によって、すなわち、「スクリーニング」(例えば、緑色蛍光タンパク質)によって同定できる形質であるのかに依存するが、選択可能またはスクリーニング可能なマーカーのいずれをコードしていてもよい。もちろん、適当なマーカータンパク質の多くの例が当該分野で知られており、本発明の実施において使用可能である。
【0110】
「選択可能」または「スクリーニング可能」なマーカーなる語には、形質転換細胞について同定または選択する手段としてその分泌が検出可能である「分泌可能マーカー」をコードする遺伝子も包含される。例えば、抗体相互作用によって同定されることができる選択可能抗原であるマーカー、または触媒活性によって検出可能な分泌可能酵素が包含される。分泌可能なタンパク質は、多くのクラスに分類され、例えば、ELISAによって検出可能な小型拡散性タンパク質;細胞外溶液中で検出可能な小型活性酵素(例えば、α−アミラーゼ、β−ラクタマーゼ、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ);および細胞壁に挿入または閉じこめられるタンパク質(例えば、エクステンシンまたはタバコPR−Sの発現単位において見出されるようなリーダー配列を含むタンパク質)を包含する。
【0111】
多くの選択可能マーカーコーディング領域が知られており、本発明において使用可能であり、限定するものではないが、カナマイシン耐性を提供し、カナマイシン、G418、パロモマイシンなどの使用について選択できるneo(Potrykusら、1985);ビアラホスまたはホスフィノトリシン耐性を付与するbar;グリホサート耐性を付与する変異型EPSPシンターゼ5タンパク質(Hincheeら、1988);ブロモキシニルに対する耐性を付与するKlebsiella ozaenae由来のbxnなどのニトリラーゼ(Stalkerら、1988);イミダゾリノン、スルホニル尿素または他のALS阻害性化学物質に対する耐性を付与する変異型アセトラクテートシンターゼ(ALS)(欧州特許出願第154,204号、1985);メトトレキサート耐性DHFR(Thilletら、1988)、除草剤ダラポンに対する耐性を付与するダラポンデハロゲナーゼ;または5−メチルトリプトファンに対する耐性を付与する変異アントラニレートシンターゼを包含する。
【0112】
形質転換体を選択するための系において使用されることのできる選択可能マーカーの例示的具体例は、酵素ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子、例えば、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)由来のbar遺伝子またはストレプトマイセス・ヴィリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)由来のpat遺伝子である。酵素ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)は、除草剤ビアラホスにおける活性成分、ホスフィノトリシン(PPT)を不活性化する。PPTは、グルタミンシンセターゼを阻害し(Murakamiら、1986;Twellら、1989)、アンモニアの迅速な蓄積および細胞死を引き起こす。
【0113】
使用してもよいスクリーニング可能なマーカーは、β−グルクロニダーゼ(GUS)またはその種々の色素生産性基質が知られている酵素をコードするuidA遺伝子;植物組織におけるアントシアニン色素(赤色)の生産を調節する生産物をコードするR−座遺伝子(Dellaportaら、1988);その種々の色素生産性基質(例えば、PADAC、色素生産性セファロスポリン)が知られている酵素をコードするβ−ラクタマーゼ遺伝子(Sutcliffe、1978);色素生産性カテコール類を変換することができるカテコールジオキシゲナーゼをコードするxylE遺伝子(Zukowskyら、1983);α−アミラーゼ遺伝子(Ikutaら、1990);チロシンのDOPAおよびドーパキノンへの酸化を可能にする酵素をコードするチロシナーゼ遺伝子(Katzら、1983)(次いで、縮合して容易に検出可能な化合物メラニンを形成する);その色素生産性基質が存在する酵素をコードするβ−ガラクトシダーゼ遺伝子;バイオルミネセンス検出が可能なルシフェラーゼ(lux)遺伝子(Owら、1986);カルシウム感受性バイオルミネセンス検出において使用されうるエクオリン遺伝子(Prasherら、1985);または緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子(Sheenら、1995;Haseloffら、1997;Reichelら、1996;Tianら、1997;WO97/41228)を包含する。緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子は、また、特に有用なレポーター遺伝子と考えられる(Sheenら、1995;Haseloffら、1997;Reichelら、1996;Tianら、1997;WO 97/41228)。緑色蛍光タンパク質の発現は、特定の波長の光による照明後に蛍光として細胞または植物中で可視化されうる。
【0114】
V.寄託情報
本明細書中に開示されるソルガム系統Tx3361の寄託は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、10801 University Blvd.、Manassas、VA 20110−2209になされた。寄託日は、2009年6月25日であり、ソルガム品種Tx3361の寄託された種子の受託番号は、ATCC受託番号第PTA−10149号である。寄託における全ての制限は除かれ、該寄託は、37 C.F.R. §1.801−1.809を満たすものである。該寄託は30年間、または最後の請求後の5年間、または特許有効期間(いずれか長い方)、寄託所において維持され、必要ならば、該期間の間、取り替えられるであろう。出願人は、寄託物に対するいずれの特許権も放棄しない。
【実施例】
【0115】
VI.実施例
下記の実施例は、本発明の好ましい具体例を説明するために包含される。実施例に開示される技術が本発明の実施においてよく機能するように発明者によって見出された技術を示すものであり、かくして、その実施の好ましい形態を構成すると考えられることは、当業者に明らかであろう。しかしながら、当業者は、本願明細書の開示に照らして、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、開示される特定の具体例において多くの変更を行って、いまだ同様の結果を得ることができることを認めるはずである。
【0116】
実施例1
iap iap遺伝子型を有する改善されたソルガム系統の開発
繁殖障壁は、栽培されるソルガム種および他の野生型ソルガム種との間の雑種の生産に対して存在する(Hodnettら、2005)。該障壁は、野生型ソルガム種の花粉管が卵に到達し、受粉する前にソルガムの雌しべの生長を止めるので、接合前である(Priceら、2006)。
【0117】
IAp[nhibition of lien ollen(外来花粉の阻害)]と称される単一遺伝子座は、栽培ソルガム種(Sorghum bicolor L. Moench)とEu−ソルガムセクション外の野生型ソルガム種との間の生殖的隔離の一原因である。ホモ接合性劣性条件において、iap iap遺伝子型は、該生殖的隔離を排除し、ソルガム・ビカラーおよび野生型ソルガム種間での雑種回収を可能にする(Hodnettら、2005;Priceら、2006)。遺伝子型は、最初、ソルガム・ビカラーにおいてアクセッション「NR481」として同定されたが(LaurieおよびBennett、1989)、該アクセッションは、背丈高、色素性種皮、および倒伏に対する極度の感受性などの農業経済学的に望ましくない特徴を有する。遺伝子移入子孫において回収されたいずれの野生種遺伝子変種も、遺伝的背景が乏しいので、遺伝子移入計画における使用の可能性は、制限される。
【0118】
iap iap遺伝子型を有する改善されたソルガム・ビカラー生殖質は、有意に改善した農業経済学的性能ならびにms3遺伝学的雄性不稔性系の分離と共に開発された。該系統は、遺伝的雄性不稔性BTx623(遺伝的雄性不稔性についてのms3対立遺伝子を含有するBTx623の誘導体)とNR481(iap対立遺伝子についてホモ接合性の系統)との間の交雑から開発された。該雑種をBTx623ms3親に対して一度戻し交配した。TX2005のカレッジ・ステーションにおいて、不稔性BC1F1子孫を自家受粉し、3−矮性背丈、白色果皮、無芒、色素性種皮の不在、および倒伏減少について選択した。BC1F2子孫を温室中で生育させ、手で除雄し、トウモロコシ花粉管生長について試験した(LaurieおよびBennett、1989)。Iap遺伝子座における遺伝子型は、受粉後24時間のソルガム雌しべの花柱の基部に対するトウモロコシ花粉管生長を質的に測定することに基づいた。花柱の基部に対するトウモロコシ花粉管生長を示す個体は、iap iapと見なされる(図1)。選択されたiap iap個体を自家受粉させ、子孫列を次シーズンにテキサス州カレッジ・ステーションで生育させた。倒伏、背丈、芒およびms3対立遺伝子の分離について、系統を評価した。ms3分離列内の選択された雄性稔性および不稔性植物(BC1F3)を同種交配した。同種交配個体をテキサス州ウェスラコで生育させ、ms3の安定した戻し交配分離、倒伏、背丈、成熟について評価し、トウモロコシ花粉管生長を用いて、Iap遺伝子座遺伝子型を確認した(表1および2)。選択された系統は、雄性不稔性および稔性植物間で大量に同種交配して、提案される遺伝的ストックのブリーダー用の種子を生産した。選択された系統は、A1細胞質雄性不稔性系における不稔性の維持系統である。
【0119】
iap iap遺伝子型の観察された発現、花柱の基部に対するトウモロコシ花粉管生長は、以前に報告されたよりも低頻度であり(LaurieおよびBennett、1989)、恐らく環境的に影響を受けている。Tx3361は、全ての試験した環境において、NR481と類似の発現を有した。該遺伝的ストックは、雌性親として使用して、外来ソルガム種およびおそらく属を超える種との種間交配を得ることができる。いずれの回収された遺伝子移入も、さらなる評価および交配についてより好ましい遺伝的背景にあるであろう。
【0120】
【表1】


Dwarf遺伝子座:各矮性遺伝子座におけるホモ接合性対立遺伝子を示す。
NR481は、ホモ接合性劣性である2つの遺伝子座を有するが、Dw2の遺伝子型のみが知られている。
果皮の色:R=赤、W=白、
芒、色素性種皮、およびms3戻し交配分離:Y=有り、N=無し
花柱基底に対するトウモロコシ花粉管生長を有するソルガム雌しべの頻度。値は平均であり、列内の異なる文字は、有意に異なる平均α=.05
倒伏:0−9のスケール。0=0−10%、9=90−100%倒伏
【0121】
テキサス州カレッジ・ステーションのテキサスAGRILIFETM(登録商標)リサーチソルガム交配計画において、Tx3361系統が選択され、評価され、増幅された。AGRILIFETMソルガム開発プログラムのナンバリングシステムを用いて、該遺伝的ストックをTx3361と名付けた。Tx3361系統は、表現型評価の対象であり、その結果を下記の表2に示す。
【0122】
【表2−1】

【表2−2】

*これらは、典型的な値である。値は、環境によって変化しうる。
【0123】
実施例2
モロコシ属親系統Tx3361ms3との属間雑種生産
2007年の秋に、Tx3361ms3植物をサッカラム・スポンタネウム(Saccharum spontaneum)、市販のサトウキビ[サッカラム・オフィシナラム(S. officinarum)xサッカラム・スポンタネウム(S. spontaneum)]、およびミスケイン(miscane)(ススキ属 x サトウキビ属)由来の花粉で受粉した。
【0124】
Tx3361ms3とサトウキビとの交配が成功し、1500を超える推定F1種子が収穫された(受粉した全17植物体において生産された)。26個の推定F1雑種幼植物(75個の種子から生産された)を植え、例示的植物を図2に示す。
【0125】
Tx3361ms3 x サッカラム・スポンタネウムおよびTx3361ms3 x ミスカンサス・シネンシス(M. sinesis)の受粉は、受精が起こり、胚が形成したので、成功したが、発達は典型的に、内胚乳崩壊によって妨害された。Tx3361ms3とミスケインとの雑種において、胚レスキューが成功し、16個の推定雑種が回収された。したがって、内胚乳崩壊が起こる場合、胚のイン・ビトロ培養がF1雑種を回収するのに有効であることが見出された。
【0126】
正常(ホモ接合性Iap)Tx623ms3との受粉は、決して、受精、胚または内胚乳発達の証拠を示さなかったので、これらの雑種の全てにおいて、Tx3361ms3における変異体iapの利用は、非常に重要であった。
【0127】
2008年に、ソルガム x サトウキビおよびソルガム x ミスケインの多くの雑種が生産され、温室で栽培された。また、多くのソルガム x ミスカンサス・シネンシス胚が生産された。これらの植物は、その種子親であるTx3361に似た表現型を示さなかった。該属間雑種は、種子またはクローン的に繁殖させたバイオ燃料作物として、または1の種から別の種へ遺伝子および形質を移入する手段として、直接使用される可能性がある。移入のための例示的プロトコールを図3および4に示す。
【0128】
実施例3
ソルガムとサトウキビとの雑種の生産および分析
開花時期がサトウキビの開花時期と一致するように、7月中旬から9月中旬まで、系統Tx3361の種子を温室内のポットに植えた。開花開始時、葯の表現型に基づいて、Tx3361の雄性不稔性植物を同定し、袋を被せた。ルイジアナ州ホーマにあるUSDA−ARSシュガーケイン・リサーチ・ユニットで、2007年および2008年の9月下旬〜11月上旬に、ソルガムとサトウキビとの受粉を行った。1月および2月にカレッジ・ステーションで、さらなる受粉を行った。全部で67個の基本的な商業的サトウキビ育種系統を雄性親として用いた。
【0129】
ホーマで行った受粉は、ソルガムの円錐花序にサトウキビ花粉を振り掛け、ソルガムの円錐花序をサトウキビの穂でこすることによって完了した。次の年、1〜3個のソルガム円錐花序を単一のサトウキビ親と共に置き、サトウキビの穂を軽くたたき、次いで、ソルガムの円錐花序をサトウキビの穂の中に擦りつけることによって交雑を行った。該工程は、連続して3または4日繰り返した。これらの交雑完了後、受粉したソルガム植物を種子発生および成熟のために、カレッジ・ステーションに戻した。カレッジ・ステーションで行われるソルガムxサトウキビ交雑の場合、各ソルガム円錐花序を一回受粉し、前年にホーマで実施された同じ方法を用いて受粉を行った。
【0130】
種子の準備
種子は、3年にわたって受粉後各々、平均46、41および27日で母性親から取り出した。1年目に得られた種子は、発芽の30〜90日前に貯蔵されたが、次の年の種子は、収穫直後に発芽した。種子における高頻度の胎生のため、収穫および発芽のタイムラインが減少した。収穫後かつ発芽前に、まず、キャプタン(Captan)およびアプロン(Apron)の液体懸濁液で少なくとも1時間半、種子をコーティングし、次いで、30%漂白溶液中で20分間浸漬することによって、種子を表面滅菌した。表面滅菌後、種子を滅菌水でリンスし、10mg L−1グリシン、10mg L−1 L−アルギニン−HCl、10mg L−1 L−チロシン、100mg L−1イノシトール、および30g L−1シュークロースを補足し、0.7%寒天(植物組織培養グレード、Phytotechnology Laboratories, Shawnee Mission, KS)で固化させたムラシゲ−スクーグ(MurashigeおよびSkoog、1962)基礎塩およびビタミン培養培地を含有するペトリ皿中に胚を上にして置いた(Sharma,1999)。全てのペトリ皿をパラフィルムで密閉し、1日14時間に設定した育成用照明下、27〜30℃の一定温度に置いた。根およびシュートの両方において良好な発達を示した全ての種子を4’’ポットに植えた。いったん確立すると、それらを温室に移した。
【0131】
属間雑種植物の確認
属間雑種は、最初、形態学によって分類された。それらが発達するにつれて、全ての雑種は、父性親によって譲られない形質を有するほか、母性親が有しなかったサトウキビの多くの特徴(背丈、腋芽、成熟)を示した。これらの植物は、体細胞染色体数によって、属間雑種として確認された。染色体スプレッドは、JewellおよびIslam−Faridi(1994)によって記載された方法に下記の変更を加えた方法を用いて、根端から調製された。若い活発に生長している根端を室温にて2.75時間、α−ブロモナフタレンの飽和水溶液で前処理し、3:1 95%エタノール/氷酢酸(3:1 v/v)中で一晩固定した。次いで、根端を蒸留水で数回リンスし、0.2M HCl中で10分間加水分解し、蒸留水中で10分リンスした。細胞壁を5%セルロース(Onozuka R−10, Yakult Honsha Co. Ltd., Tokyo)および1.0%ペクトラーゼY−23(Seishin Corporation, Tokyo)の水溶液で、pH4.5にて37℃で35〜60分間消化し、蒸留水で3回リンスした。分裂組織をエタノール/氷酢酸(3:1)溶液中、透明ガラススライド上に置き、漬け込み、先の細い鉗子で広げ、室温で2日間風乾し、アズール・ブルー(Azure Blue)で染色した。根端スプレッドをツァイス・ユニバーサルII顕微鏡(Carl Zeiss Inc., Gottingen, Germany)を用いて、63Xおよび100Xアポクロマート対物レンズで調べた。オプトニクスVI−470システム(Optronics Inc., Goleta, CA)で画像を獲得し、デジタル保存し、オプティマス(v.6.1)画像分析ソフトウェア(Optimas Corp., Bothell, WA)で加工した。
【0132】
雑種種子セットに対するサトウキビポリネーター(pollinator)の影響
2年目にホーマで行われた各交雑について、サトウキビ親植物、受粉日、受粉場所、花粉量、小花/円錐花序および生じた幼植物を記録した。サトウキビ花粉量は、解剖顕微鏡下で乾燥した柱頭を評価し、それらを軽い、中程度または重い(「軽い」は観察可能な花粉がほとんど無いか、または無いことを意味し、「中程度」ランクは、花粉がいくつかの柱頭で観察された場合に割り当て、「重い」ランクは、完全な被覆が観察された場合に割り当てられた)と格付けすることによって、雑種種子が収穫されたときに測定された主観的測定値であった。3年目にカレッジ・ステーションで行われた各交雑について、サトウキビ親植物、受粉日、種子/円錐花序および生じた幼植物を記録した。
【0133】
場所、受粉日およびサトウキビポリネーターの種子セットおよび花粉量に対する相対的影響を決定するために、SAS v9.1のPROC GLMを用いた。少なくとも3回の受粉に用いられたサトウキビ雄だけが該分析に含まれた。全ての影響を一定とみなし、ポリネーターを含む相互作用だけを分散分析に含めた。
【0134】
2007年の雑種種子生産、確認および生長
2007年(1年目)の秋に、17種類の異なるポリネーターを用いて、全部で24回の受粉を行った(表3)。柱頭反応に基づいて、受粉後に受精が起こったことは明らかであった。種子が発生し始めたが、サイズおよび生長速度は、正常なソルガムの自家受粉または他家受粉と比べて減少した。種子を発芽(収穫および貯蔵後)のために準備したとき、種子発生および発生後の胎生の間の胚喪失が一般的であることは明らかであり、さらなる分析は、32%が胎生であり、39%に胚がないことを示した。かなりの割合の残りの種子が発芽し、植物を生産した。これらの植物の全てが属間雑種であり、それらは、非常に生長が乏しいものから非常に生長力のあるものまで幅広い表現型を反映した。
【0135】
これらの受粉から、最も良好な雑種のうち23個を温室内のポットに移植した。これらの植物の全てがサトウキビに類似した形態学的特徴を有していた(図5)。これらの雑種についての体細胞染色体数は、56〜64の範囲であり、10個の染色体がソルガム由来であり、残りの染色体がサトウキビ属由来であった。該雑種は、短くて幅の広い少数の葉を有するTx3361と比べて、長くて幅の狭い多数の葉を有する。発達において、23個の雑種が幅広い範囲の生長力および生長性質を示し、これらの雑種のうち2つが優れた生長および発達を示した。これらの雑種は、生長力があり、サトウキビのようによく分けつしたが、各々、ソルガムに特有の形態学的形質、例えば、節のある支柱根および/または葉鞘における過剰なワックス粉を有した。7ヶ月で、雑種L07−11Sの茎は3.1mであったが、雑種L07−9Sの茎は2.7mであった(図5A)。これらの雑種のいずれも、サトウキビのように光周期感受性であり、カレッジ・ステーションにおいて12月中旬から1月に開花したが、一方、Tx3361は、播種日にかかわらず、約65日で開花する。これらの雑種の円錐花序は、サトウキビのものよりわずかに小型であり、検定交雑の試みにより、これら2つの特定の雑種の雄性および雌性不稔性の両方を確認した。8月に、両雑種の数本の茎を切断して、栄養繁殖および糖分布について試験した。栄養繁殖は成功し、これらの雑種中の糖濃度は、サトウキビにおいて見出されるパターンと類似し、より成熟した節間において糖濃度は増加した(図6)(Whittaker and Botha, 1997)。
【0136】
さらなる雑種種子生産およびプロセスの増強(2008/2009)
2008年に、全部で155個のソルガム円錐花序(全部で74,300個の小花)を受粉した。これらの受粉から、10,347個の種子を回収し、その結果、平均14%の種子セットをもたらした。種子セットの割合は、2009年の受粉において測定されなかったが、2008年に観察されたのと同様なようであった。しかしながら、種子がより早期に収穫され、胎生による喪失が回避されたので、発芽は、2008年と2009年の受粉の間で実質的に改善された。2009年に、種子がより早期に収穫されて(受粉後28日 対 受粉後40日)胎生による喪失を回避したので、発芽は2008年から2009年に増加した。さらに、2008年の発芽は、胚が種子外被を通って生長できないことにより、さらに減少し、それゆえ、2009年の種子の全てにおいて、培地に植える前に果皮が除去された。技術が改善されるにつれて、発芽率は、2007年の2.5%から2008年の5.7%に、2009年では33%に改善した。
【0137】
表3:ソルガムxサトウキビ交雑において用いられたサトウキビ親
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【0138】
合わせた2008/2009受粉由来の全部で1348本の幼植物をポットに植え、温室に移動させた。これらの雑種に存在する表現型バリエーションは広範囲であったが、全て、形態学的に、ソルガムよりもサトウキビに似ていた。2009年の春に、485個の雑種を選択し(生長力に基づいて)、カレッジ・ステーションの近くのスペース・プラントナーサリーに移植した(表3)。これらの雑種は、2007年の交雑から評価された雑種の限定されたセットにおいて観察された生長および発達パターンに従うと予想される。
【0139】
種子セットおよび発芽に対するポリネーター親の影響
分散分析は、ポリネーター親に起因して種子セットに対する有意な影響を示した(表4)。ポリネーターに起因するバリエーションの範囲は、明らかに、ある特定のサトウキビ品種がTx3361における属間雑種の生産のためのより良好なポリネーターであることを示す。L06−024、HoCP05−904およびHo06−562などのサトウキビポリネーターは、最も有効な雑種種子生産を実証する(表5)。
【0140】
【表4】

【0141】
【表5】

* 少なくとも3回の受粉で使用されたポリネーターのみを該分析に含めた。
** 花粉量評価は、1(軽い)、2(中程度)および3(重い)であった。
【0142】
サトウキビにおける花粉散布が遺伝子型および環境によって影響されることは知られており(MooreおよびNuss,1987)、分散分析は、花粉量がポリネーター親および受粉日によって影響されたことを確認した(表4)。低花粉量を有する系統は、一貫して、低い割合の種子セットを有する交雑をもたらしたが、必ずしも高花粉量が高い割合の種子セットを示したわけではない。上位7つのサトウキビポリネーターのうち6個(種子セットパーセンテージによって定義される)は、平均以上の花粉量を有したが、平均より低い割合の種子セットを有する雄花は、花粉量において変動した(表5)。これらの結果は、雄花が良好な花粉を生産するだけではなく、Tx3361との好ましい遺伝的および/またはゲノム的和合性を有さなければならないことを意味する。
【0143】
2009年の分散分析データは、受粉環境およびサトウキビポリネーターのどちらも発芽割合に影響しないことを示した。種子生産および発芽を管理するための現在の技術に基づいて、使用されるポリネーターおよび受粉場所に拘わらず、該種子の25−40%が発芽し、植物を生産すると予想するのが妥当である。
【0144】
実施例4
ソルガムの広い雑種における花粉管生長
本明細書中で明らかにされた成功した雑種形成を考慮して、Tx3361ソルガム植物をさらに、付加的な属の植物由来の花粉を用いて受粉させた。受粉後、花粉管生長を観察し、記録した(表6)。花柱と表示したカラムの値は、花粉管生長量を示し、より高い値が大きな生長を示す。
【0145】
【表6−1】

【表6−2】

【表6−3】

【0146】
本明細書中に開示および主張される方法の全ては、本願の開示を踏まえて、過度の実験を行うことなく実施することができる。本発明の組成物および方法は、好ましい具体例に関して記載されているが、発明の概念、精神および範囲を逸脱することなく、本明細書に記載の方法および方法の工程または工程の順序に変更を加えてもよいことは、当業者に明らかであろう。より詳細には、化学的かつ生理学的に関連するある特定の剤を本明細書に記載の剤と置き換えてもよく、同一または類似の結果が達成されることが明らかであろう。当業者に明らかな全てのかかる類似置換物および修飾は、添付の特許請求の範囲によって規定される発明の精神、範囲および概念内にあると考えられる。
【0147】
参考文献
下記の参考文献は、それらが典型的な手順または本明細書に示されるものを補足する他の詳細を提供する程度まで、特に出典明示により本明細書の一部とされる。
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【図1A−B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルガム親植物をサトウキビ属親植物と交雑することによって生産される属間雑種植物であって、該ソルガム親植物が劣性iap対立遺伝子に関してホモ接合性である、植物。
【請求項2】
ソルガム親植物がソルガム・ビカラー植物である、請求項1記載の植物。
【請求項3】
ソルガム親植物が雄性不稔性である、請求項1記載の植物。
【請求項4】
ソルガム親植物がソルガム系統Tx3361である、請求項3記載の植物。
【請求項5】
サトウキビ属親植物がサッカラム・スポンタネウム、サッカラム・オフィシナラム、またはサッカラム・オフィシナラムとサッカラム・スポンタネウムとの雑種植物である、請求項1記載の植物。
【請求項6】
サトウキビ属親植物がサトウキビ品種L06−024、HoCP05−904、またはHo06−562である、請求項5記載の植物。
【請求項7】
トランス遺伝子をさらに含む、請求項1記載の植物。
【請求項8】
トランス遺伝子が病害耐性、昆虫耐性、除草剤耐性、乾燥耐性、耐塩性、雄性不稔性、または糖含量増加を付与する、請求項7記載の植物。
【請求項9】
請求項1記載の植物の植物部位。
【請求項10】
プロトプラスト、細胞、配偶子、分裂組織、根、雌しべ、葯、花、種子、胚、茎、または葉柄としてさらに定義される、請求項9記載の植物部位。
【請求項11】
2n植物配偶子としてさらに定義される、請求項10記載の植物部位。
【請求項12】
請求項1記載の植物を生産する種子。
【請求項13】
殺害虫剤、殺真菌剤、養分または水もしくは温度感受性ポリマー、あるいは種子の機械的取扱性、種子発芽、幼植物確立または生長を改善するための剤を含む剤でさらに被覆される、請求項12記載の種子。
【請求項14】
請求項1記載の植物から得られた商業的製品。
【請求項15】
商業的製品が発酵性バイオ燃料供給原料、サトウキビ汁、糖蜜、バガス、エタノール、バイオジーゼルまたは糖類である、請求項14記載の商業的製品。
【請求項16】
ソルガム親植物由来の少なくとも1つの第1の染色体またはそのセグメントおよびサトウキビ属親植物由来の少なくとも1つの第1の染色体またはそのセグメントを含む、請求項1記載の植物の子孫植物。
【請求項17】
請求項1記載の植物の再生可能な細胞の組織培養物。
【請求項18】
再生可能な細胞が胚、分裂組織細胞、花粉、葉、根、根端、葯、雌しべ、花、種子、ボール、または茎から由来する、請求項17記載の組織培養物。
【請求項19】
請求項17記載の組織培養物から再生した植物。
【請求項20】
請求項1記載の植物またはその部位を得、そこから商業的製品を製造することを含む、商業的製品の製造方法。
【請求項21】
商業的製品が発酵性バイオ燃料供給原料、サトウキビ汁、糖蜜、バガス、エタノール、バイオジーゼルまたは糖類である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
雄性不稔性を付与する対立遺伝子を含むソルガム植物であって、劣性iap対立遺伝子についてホモ接合性である植物。
【請求項23】
対立遺伝子がms3である、請求項22記載のソルガム植物。
【請求項24】
請求項22記載のソルガム植物を生産する種子。
【請求項25】
ソルガム親植物とサトウキビ属親植物を交雑させることを含み、ここに、該ソルガム親植物がソルガムの劣性iap対立遺伝子についてホモ接合性であり、雌性親として用いられる、属間雑種胚または種子の生産方法。
【請求項26】
交雑から生じた胚をレスキューすることを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
交雑から生じた胚を生育させて属間雑種植物を生産することを含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
胚が機能的内胚乳を有する種子に含まれる、請求項25記載の方法。
【請求項29】
ソルガム親植物と異なる属由来の第2の単子葉植物を交雑させることによって生産される属間雑種植物であって、ここに、該ソルガム親植物が劣性iap対立遺伝子についてホモ接合性である、植物。
【請求項30】
ソルガム親植物がソルガム・ビカラー植物である、請求項29記載の植物。
【請求項31】
ソルガム親植物が雄性不稔性を含む、請求項29記載の植物。
【請求項32】
ソルガム親植物がソルガム系統Tx3361の植物である、請求項31記載の植物。
【請求項33】
第2の単子葉植物がイネ科の植物である、請求項29記載の植物。
【請求項34】
第2の単子葉植物がサトウキビ属植物、ススキ属植物、トウキビ属とススキ属との雑種植物、エリアンサス属植物、ソルガストラム属植物、キビ属植物、チカラシバ属植物、またはトウモロコシ属植物である、請求項29記載の植物。
【請求項35】
第2の単子葉植物がパニカム・ヴァーガタム、ペニセタム・パーパレウム、ペニセタム・シリアレ、ペニセタム・グラウカム、アンドロポゴン・ゲラルディイ、アンドロポゴン・ハリイ、シザキリウム・スコパリウム、ソルガストラム・ヌタンス、アルンド・ドナックス、トリプシカム・ダクチロイデス、スポロボルス・エイリオデス、ミスカンサス・フロリデュルス、ミスカンサス・シネンシス、ゼア・メイス、ゼア・ニカラグエンシス、ゼア・ペレニス、またはゼア・ジプロペレニス植物である、請求項29記載の植物。
【請求項36】
トランス遺伝子をさらに含む、請求項29記載の植物。
【請求項37】
トランス遺伝子が病害耐性、昆虫耐性、除草剤耐性、乾燥耐性、耐塩性、雄性不稔性、または糖含量増加を付与する、請求項36記載の植物。
【請求項38】
請求項29記載の植物の植物部位。
【請求項39】
プロトプラスト、細胞、配偶子、分裂組織、根、雌しべ、葯、花、種子、胚、茎、または葉柄としてさらに定義される、請求項38記載の植物部位。
【請求項40】
2n植物配偶子としてさらに定義される、請求項39記載の植物部位。
【請求項41】
請求項29記載の植物を生産する種子。
【請求項42】
殺害虫剤、殺真菌剤、養分もしくは水または温度感受性ポリマー、あるいは種子の機械的取扱性、種子発芽、幼植物確立または生長を改善するための剤を含む剤でさらに被覆される、請求項41記載の種子。
【請求項43】
請求項29記載の植物から得られた商業的製品。
【請求項44】
商業的製品が発酵性バイオ燃料供給原料、サトウキビ汁、糖蜜、バガス、エタノール、バイオジーゼルまたは糖類である、請求項43記載の商業的製品。
【請求項45】
ソルガム親植物由来の少なくとも1つの第1の染色体またはそのセグメントおよび第2の単子葉植物由来の少なくとも1つの第1の染色体またはそのセグメントを含む、請求項29載の植物の子孫植物。
【請求項46】
請求項29記載の植物の再生可能な細胞の組織培養物。
【請求項47】
再生可能な細胞が胚、分裂組織細胞、花粉、葉、根、根端、葯、雌しべ、花、種子、ボール、または茎から由来する、請求項46記載の組織培養物。
【請求項48】
請求項46記載の組織培養物から再生した植物。
【請求項49】
請求項29記載の植物またはその部位を得、それから商業的製品を製造することを含む、商業的製品の製造方法。
【請求項50】
商業的製品が発酵性バイオ燃料供給原料、サトウキビ汁、糖蜜、バガス、エタノール、バイオジーゼルまたは糖類である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
ソルガム親植物と第2の単子葉親植物を交雑させることを含み、ここに、該ソルガム植物がソルガムの劣性iap対立遺伝子についてホモ接合性であり、雌性親として用いられる、属間雑種胚または種子の生産方法。
【請求項52】
交雑から生じた胚をレスキューすることを含む、請求項51記載の方法。
【請求項53】
交雑から生じた胚を生育させて属間雑種植物を生産することを含む、請求項51記載の方法。
【請求項54】
胚が機能的内胚乳を有する種子に含まれる、請求項51記載の方法。
【請求項55】
属間雑種植物を戻し交配させて第3の単子葉植物を得ることをさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項56】
第3の単子葉植物を同系交配させて、少なくとも1つの遺伝子移入された形質または遺伝子についてホモ接合性である遺伝子移入された子孫を生産することをさらに含む、請求項55記載の方法。
【請求項57】
ソルガム植物が遺伝子的または細胞質性雄性不稔性を付与する遺伝子を含む、請求項51記載の方法。
【請求項58】
ソルガム親植物がソルガム系統Tx3361の植物である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
単子葉植物がイネ科植物から選択される、請求項51記載の方法。
【請求項60】
単子葉植物がサトウキビ属、ススキ属、エリアンサス属、トウモロコシ属、ソルガストラム属、キビ属およびチカラシバ属からなる群から選択される、請求項51記載の方法。
【請求項61】
単子葉植物がサッカラム・オフィシナラム、サッカラム・スポンタネウム、またはサッカラム・オフィシナラムとサッカラム・スポンタネウムとの雑種植物である、請求項51記載の方法。
【請求項62】
単子葉植物がパニカム・ヴァーガタム、ペニセタム・パーパレウム、ペニセタム・シリアレ、ペニセタム・グラウカム、アンドロポゴン・ゲラルディイ、アンドロポゴン・ハリイ、シザキリウム・スコパリウム、ソルガストラム・ヌタンス、アルンド・ドナックス、トリプシカム・ダクチロイデス、スポロボルス・エイリオデス、ミスカンサス・フロリデュルス、ミスカンサス・シネンシス、ゼア・メイス、ゼア・ニカラグエンシス、ゼア・ペレニス、またはゼア・ジプロペレニス植物である、請求項51記載の方法。
【請求項63】
ソルガム親植物と第2の単子葉植物との交雑が、
(i)単子葉親植物から花粉を収集し、
(ii)該花粉でソルガム親植物の花を受粉させる
ことを含む、請求項51記載の方法。
【請求項64】
属間雑種植物または種子を染色体倍加剤で処理する、請求項51記載の方法。
【請求項65】
染色体倍加剤が化学的染色体倍加剤である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
請求項51記載の方法によって生産された属間雑種種子、植物またはその部位。
【請求項67】
ソルガム親植物由来の少なくとも1つの第1の染色体またはそのセグメントおよび第2の単子葉親植物由来の少なくとも1つの第1の染色体またはそのセグメントを含む、請求項53載の植物の子孫属間雑種植物。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A−C】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−528911(P2011−528911A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520228(P2011−520228)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/051706
【国際公開番号】WO2010/011935
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(501490438)ザ・テキサス・エイ・アンド・エム・ユニバーシティ・システム (1)
【氏名又は名称原語表記】The Texas A & M University System
【Fターム(参考)】