説明

モータを備えた車両の制御方法

【課題】レゾルバのオフセットを走行中の運転性に影響を与えずにモニタリングリングし、これを補正するか否かを判断するモータを備えた車両の制御方法を提供する。
【解決手段】本発明は、車両が走行中、モータ速度が0でなく、その出力トルクが0であることを確認する段階、前記モータの電圧が一定数値に収斂することを確認する段階、および前記モータを制御するためのデータを収集し、これを処理してレゾルバのオフセット値を演算するためのオフセットモードに進入する段階、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを備えた車両の制御方法に係り、より詳しくは、レゾルバの誤差を自動的に測定し、そのオフセット値を自動的に補正することで、モータのトルク制御および速度制御を正確に行うモータを備えた車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電気自動車やハイブリッド自動車で使用する同期電動機や誘導電動機の制御のために、MCU(motor control unit)が用いられる。このために、磁束(flux)の位置によって座標系を設定しなければならない。したがって、モータ回転子の絶対位置を読み取るレゾルバが用いられる。
このレゾルバは一種の変圧機であって、1次側巻線(入力)に励磁電圧を印加し、軸を回転させれば磁気的結合係数が変化し、2次側巻線(出力)にキャリアの振幅が変化する電圧が発生する。
この電圧は、軸の回転角度に対してサインおよびコサイン状態で変化するように巻線が配列される。したがって、サイン出力とコサイン出力のキャリア振幅比を読み取ることにより、レゾルバの回転角度が分かる。
【0003】
このような原理によって作動するレゾルバは、モータの速度情報と位相をセンシングして回転子の位置情報を前記MCU側に提供し、トルク指令および速度指令生成のための情報として用いられる。
しかし、レゾルバの装着中に誤差が発生することがあり、この誤差によってモータの回転子の正確な位置を感知することができず、これはモータが正常に作動しない要因となる。
したがって、このようなセンシング誤差を補正するための方法として、モータの線間逆起電力とレゾルバの波形をオシロスコープのような計測装備を利用して分析した後、センシング誤差に対するオフセット値を補正していた。
一方、このような方法は、作業者の手動操作によって実行されるため所要時間が長く、作業量が多いだけでなく、すべての差に補正を実施しなければならないという煩わしさがある。さらに、作業者の熟練度に応じて補正値が相違して発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−158389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、レゾルバのオフセットを走行中の運転性に影響を与えずにモニタリングリングし、これを補正するか否かを判断するモータを備えた車両の制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の制御方法は、車両が走行中、モータ速度が0でなく、その出力トルクが0であることを確認する段階、前記モータの電圧が一定数値に収斂することを確認する段階、および前記モータを制御するためのデータを収集し、これを処理してレゾルバのオフセット値を演算するためのオフセットモードに進入する段階、を含むことを特徴とする。
【0007】
車両の速度が0でない状態で、前記オフセットモードに進入することを特徴とする。
【0008】
前記モータの出力トルクが0である地点を、車両の設定速度範囲に延長することを特徴とする。
【0009】
前記モータの電流が一定数値に収斂する段階において、前記モータのD軸電圧が設定区間に収斂されることを特徴とする。
【0010】
前記モータの電流が一定数値に収斂する段階において、前記モータのD軸またはQ軸電圧が設定区間に収斂されることを特徴とする。
【0011】
前記モータのトルクが0であることを確認する段階において、前記モータは0電流制御されることを特徴とする。
【0012】
前記モータのトルクが0であることを確認する段階において、前記モータのD軸またはQ軸電流を0で制御をすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運転性に影響を与えずに走行中にレゾルバのオフセット値を補正するかを容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るモータを備えた車両の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るモータを制御するMCU制御部の回路図である。
【図3】本発明の実施形態に係るレゾルバオフセット判断部の構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係るハイブリッド自動車に備えられるモータの車速によるトルクプロファイルを示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係るハイブリッド自動車に備えられるモータの車速によるトルクプロファイルの変形した様子を示すグラフである。
【図6】本発明の実施形態に係るハイブリッド自動車に備えられるレゾルバのオフセット判断モード進入条件を示す表である。
【図7】本発明の実4施形態に係るハイブリッド車両に備えられるレゾルバのオフセット判断モード進入条件と走行モードを示す表である。
【図8】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両において、レゾルバのオフセット誤差が存在する状態でVd値を示すグラフである。
【図9】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両において、レゾルバのオフセットを判断するためのモードに進入する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について、詳しく説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るモータを備えた車両の概略的な構成図である。
図1に示す通り、モータを備えた車両は、モータ110、レゾルバ120、モータコントロールユニット130、高電圧バッテリ140、メインリレー150、キャパシタ160、およびBMS(battery management system)を含む。このようなシステムは、ハイブリッド自動車、電気自動車、および燃料電池自動車に適用される。モータ110は、駆動と充電を同時に実行してもよい。
【0016】
モータ110はモータコントロールユニット130によって駆動され、モータコントロールユニット130は、直流電流を可変周波数および可変電圧の交流電流に変換するインバータと電流と、電圧を制御する制御部とで構成される。
レゾルバ120はモータ位置センサであって、モータ110の回転位置情報をモータコントロールユニット130に送信し、モータコントロールユニット130はこれに基づいてモータ110に供給される電流と電圧を制御する。
【0017】
図2は、モータを制御するMCU制御部の回路図である。
図2に示す通り、MCU(モータコントロールユニット)130の制御部は、電流指令生成器210、電流制御器220、軸変換器230、PWM生成器240、PWMインバータ250、およびレゾルバオフセット判断部260を含む。
上位制御部(図示せず)からトルク指令と速度指令を受ければ、モータコントロールユニット130は電流指令生成器210でD軸Q軸電流指令を生成し、電流制御器220はインバータ電流が電流指令に従うように電流制御を実施する。
【0018】
軸変換器230は電流をD軸Q軸<−>3相変換を実行し、PWM生成器240は電流指令に基づいてPWMスイッチング信号をインバータに送り、これに基づいてPWMインバータ250は、スイッチングによってモータを制御する。
レゾルバオフセット判断部260は、上位制御部から伝達されたトルク指令および電流指令、モータからフィードバックされた電流、モニタリングされているDQ軸電圧などを利用してレゾルバ120のオフセットを判断する。
本発明は、走行中の0電流制御が可能な0トルク区間でレゾルバフセット判断モードに進入し、運転性に影響を与えない状態で0電流制御を実行し、レゾルバのオフセットを判断する。
【0019】
図3は、レゾルバオフセット判断部の構成図である。
図3に示す通り、レゾルバオフセット判断部260は、速度/トルク判断部310、0電流コントロールパネル端部320、電圧センシングおよびレゾルバオフセット演算部330を含む。
速度/トルク判断部310は現在のモータの速度およびトルク指令をモニタリングリングし、0電流コントロールパネル端部320は現在のモータに要求されるトルクをモニタリングする。
【0020】
さらに、電圧センシングおよびレゾルバオフセット演算部330は、モータの速度と0電流状態によって電圧をセンシングし、数1によってレゾルバのオフセットを判断する。
【数1】

数式1において、R,L,L,Ψ,α,α は順にモータ110にかかる抵抗、d軸インダクタンス定数、q軸インダクタンス定数、磁束の大きさ、最終オフセット値、およびオフセット候補値を示す。
さらに、数式1において、i,i,v,v,ω は順にd軸電流、q軸電流、d軸電圧、q軸電圧、および回転子角速度を示す。
【0021】
数式1において、ゼロ電流制御(zero current control)により、d軸電流(i)とq軸電流(i)が0に収斂すれば、数1は下記数2のように変形してもよい。
【数2】

【0022】
図4は、ハイブリッド自動車に備えられるモータの車速に応じたトルクプロファイルを示すグラフである。
図4に示す通り、横軸は車速を示し、縦軸はモータの出力トルクを示す。
これは、車両の速度が一定速度以下ではモータ110は駆動モードであり、一定速度以上ではモータ110が充電(回生モード)を実行することを意味する。
図5は、ハイブリッド自動車に備えられるモータの車速によるトルクプロファイルの変形した様子を示すグラフである。
図5に示す通り、横軸は車速を示し、縦軸はモータの出力トルクを示す。
図4と比較し、トルクプロファイルが変形して車速が一定区間の状態において、モータ110の0トルク区間が増えるようにすれば、より容易なオフセット判断モードの進入が可能となる。
【0023】
図6は、ハイブリッド自動車に備えられるレゾルバのオフセット判断モード進入条件を示す表である。
図6に示す通り、モータ速度が0でなく、出力トルクが0であり、D軸およびQ軸電流が0である場合に、レゾルバオフセット判断モードに進入する。
図7は、ハイブリッド車両に備えられるレゾルバのオフセット判断モード進入条件と走行モードを示す表である。
図7に示す通り、モータ速度が0でなく、出力トルクが0であり、D軸およびQ軸電流が0である場合に、レゾルバオフセット判断モードに進入する。
【0024】
図8は、ハイブリッド車両において、レゾルバのオフセット誤差が存在する状態でVd値を示すグラフである。
図8に示す通り、レゾルバオフセット判断モードに進入すれば、ゼロ電流制御によってモータ110の電流は0に収斂し、モータ110の速度は一定区間で変わり、D軸電圧(Vd)は徐々に一定値に収斂する。
図に示すように、モータ110のレゾルバオフセットを判断するためには、一定の収斂時間が必要となる。したがって、走行中にレゾルバオフセット判断モードに進入したとしても、一定時間が経過した後にデータを収集、フィルタリング、および複数のデータを平均化する演算を実行する。
【0025】
図9は、ハイブリッド車両において、レゾルバのオフセットを判断するためのモードに進入する方法を示すフローチャートである。
図9に示す通り、S900で走行中のモータ110の要求トルクが0であるかを判断し、S910で0電流制御が可能であるかを判断する。
S920でモータ110の速度が0でないかを判断し、S930で制御のためのデータが収斂するかを判断する。S940で一定区間でデータを収集し、これを演算してレゾルバのオフセットを補正しなければならないかを判断し、S950で制御を終了する。
前記データは、モータ110を制御するためのすべての数値を含み、モータ110にかかる抵抗、d軸インダクタンス定数、q軸インダクタンス定数、磁束の大きさ、最終オフセット値、オフセット候補値、d軸電流、q軸電流、d軸電圧、q軸電圧、および回転子角速度などを含む。
【0026】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0027】
110:モータ
120:レゾルバ
130:モータコントロールユニット
140:高電圧バッテリ
150:メインリレー
160:キャパシタ
210:電流指令生成器
220:電流制御器
230:軸変換器
240:PWM生成器
250:PWMインバータ
260:レゾルバオフセット判断部
310:速度/トルク判断部
320:0電流コントロールパネル端部
330:電圧センシングおよびレゾルバオフセット演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行中、モータ速度が0でなく、その出力トルクが0であることを確認する段階、
前記モータの電圧が一定数値に収斂することを確認する段階、および
前記モータを制御するためのデータを収集し、これを処理してレゾルバのオフセット値を演算するためのオフセットモードに進入する段階、
を含むことを特徴とするモータを備えた車両の制御方法。
【請求項2】
車両の速度が0でない状態で、前記オフセットモードに進入することを特徴とする請求項1に記載のモータを備えた車両の制御方法。
【請求項3】
前記モータの出力トルクが0である地点を、車両の設定速度範囲に延長することを特徴とする請求項1に記載のモータを備えた車両の制御方法。
【請求項4】
前記モータの電流が一定数値に収斂する段階において、
前記モータのD軸電圧が設定区間に収斂されることを特徴とする請求項1に記載のモータを備えた車両の制御方法。
【請求項5】
前記モータの電流が一定数値に収斂する段階において、
前記モータのD軸またはQ軸電圧が設定区間に収斂されることを特徴とする請求項1に記載のモータを備えた車両の制御方法
【請求項6】
前記モータのトルクが0であることを確認する段階において、
前記モータは0電流制御されることを特徴とする請求項1に記載のモータを備えた車両の制御方法。
【請求項7】
前記モータのトルクが0であることを確認する段階において、
前記モータのD軸またはQ軸電流を0で制御をすることを特徴とする請求項1に記載のモータを備えた車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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