説明

モーターサイクル用スキッドプレート

方法は、タイヤグリップ測定を実施するための二輪車に関する。本発明によれば、二輪車は、二輪車の一方の側に取り付けられた3つの静止接触部(2,3,4)を備え、接触部の端部は、二輪車の後輪の周方向平面にほぼ平行な平面を形成し、この平面と二輪車の後輪の周方向平面との間の距離は、350mmを超える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤグリップ測定を実施するための二輪車に関する。この種の用途には限定されないが、本発明を特に、履いたタイヤの横方向グリップを評価するために用いられるモーターサイクルに関して説明する。本発明は、電動機付きであれそうでないにせよ、いずれにせよ全形式の二輪車、例えば自転車、スクータ等に利用できると共に長手方向グリップ又は他の多くの特性を試験するために用いられる二輪車に利用できる。
【背景技術】
【0002】
タイヤの周方向又は長手方向は、タイヤの周囲に対応していて、タイヤの転動方向により定められる方向である。
タイヤの横方向、又は軸方向は、タイヤの回転軸線に平行である。
【0003】
半径方向は、タイヤの回転軸線を切断すると共にこの軸線に垂直な方向である。
タイヤの回転軸線は、タイヤが通常の使用中に回転する中心となる軸線である。
半径方向平面又は子午線平面は、タイヤの回転軸線を含む平面である。
【0004】
周方向中間平面又は赤道面は、タイヤの回転軸線に垂直であって、タイヤを2つの半部に分割する平面である。
【0005】
タイヤの設計及び改良に当たっては、タイヤの有効性及び特にタイヤの転動挙動をできるだけ客観的に判断できることが必要である。モーターサイクル用タイヤは、他形式のタイヤと比較して、モーターサイクル用タイヤがコーナリングを可能にするようキャンバ角を比較的大きくした状態で用いられるという特有の一特徴を備えている。
【0006】
コーナリングの際、タイヤの横方向グリップは、タイヤ設計者がそのタイヤを改良するために評価することができることを望む重要なパラメータである。
【0007】
幾分主観的であるが、タイヤの横方向グリップを評価する現行の方法は、二輪車の乗員(ライダ)による評価である。このような方法により、タイヤを相互分類することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これら方法の目的は、タイヤの性能を試験することにあるので、ライダは、グリップ限度を超える恐れ、従って二輪車のコントロールを失う恐れがゼロではない状態で、場合によっては、二輪車から落下する可能性がある状態で、モーターサイクルをグリップ限度で乗らざるを得ない。
【0009】
本発明者は、タイヤの横方向グリップを評価するための測定を実施する一方で、転倒又は落下の場合を含むライダの保護の促進を保証する試験用車両を設計するという仕事に携わった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、タイヤグリップ測定を実施するための二輪車において、二輪車は、二輪車の一方の側部に装着された3つの支柱(すなわちplotまたはspar)を備え、支柱の端部は、二輪車の後輪の周方向平面にほぼ平行な平面を形成し、平面と二輪車の後輪の周方向平面との間の距離は、350mmを超えることを特徴とする二輪車によって達成された。
【0011】
このようにして装備が行われた二輪車は、落下又は転倒の場合であってもライダが二輪車の下敷きになるのを阻止すると共に場合によっては低速時における落下又は転倒の場合に押し潰されるのを阻止し、或いは高速時での落下又は転倒に続いて二輪車と路面との間に挟まれて滑り状態で引きずられるのを阻止する。
【0012】
本発明によれば、二輪車は、その側部の各々に装着された少なくとも3つの支柱を備えるのが有利である。ライダは、二輪車が転倒の場合に下に位置する側部がどちらの側部であれ、保護される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、転倒の場合に路面に接触するようになった支柱の少なくとも端部は、滑り摩擦係数が0.2未満の材料で作られる。
【0014】
滑り摩擦係数は、潤滑剤なしで鋼製筒体上で1.75N/mm2の圧力で且つ6m/分の滑り速度で圧縮状態で測定される。筒体の粗さは、2μmである。
【0015】
本発明者は、ライダを二輪車の重量に起因して潰されないよう保護することとは別に、ライダが路面と二輪車との間の自分の位置からできるだけ迅速に二輪車に当たらないで投げ出されることが重要であることを立証した。滑り摩擦係数が0.2未満の支柱を製作するための材料を選択することにより、二輪車は、転倒の際にライダよりも迅速に滑ることが可能であり、従って、ライダは、できるだけ迅速に二輪車に当たらないで投げ出されることが可能である。
【0016】
ライダは、通常皮革で作られた保護スーツを着用している場合により迅速に二輪車に当たらないで投げ出され、皮革は、ライダが路面上で滑る速度を減速させる非常に高い滑り摩擦係数を有している。
【0017】
本発明の有利な一実施形態によれば、支柱の構成材料は、ナイロン‐6,6ポリアミドである。
【0018】
この材料は、その滑り摩擦係数という特性とは別に、本発明の支柱に適した高温寸法安定性及び耐熱老化性という特性を有し、これら特性は、転倒の際、摩擦に起因するこれらの温度上昇を見越している。さらに、この材料は、成形及び機械加工が容易であり、支柱の製作が容易になる。
【0019】
好ましくは、本発明によれば、支柱は、後輪の軸方向に180mmを超える長さを有する。このような長さにより、一方において、転倒又は落下の際にライダを保護することができ、他方において、長い距離にわたる滑りの場合に支柱の部分摩耗の場合を含む二輪車の保護が行われる。
【0020】
本発明の有利な実施形態によれば、二輪車が全部で3つの支柱上に載っているとき、第1の支柱は、二輪車の全重量の70%を超える荷重を支え、第2の支柱は、二輪車の全重量の16%を超える荷重を支え、第3の支柱は、二輪車の全重量の8%を超える荷重を支える。好ましくは、第1の支柱は、75%未満の荷重を支える。より好ましくは、第2の支柱は、20%未満の荷重を支える。また、好ましくは、第3の支柱は、11%未満の荷重を支える。
【0021】
この荷重分布は、有利には、三角形を構成し、その頂点は、支柱であり、この三角形及び重心が二輪車の後輪の周方向平面に平行な平面上に投影されたとき、二輪車の重心が三角形の内部に位置する。有利には、この結果、転倒の場合、二輪車がこれら3つの支柱上に支持される可能性があり、支柱は、ライダの下肢を保護するだけでなく、ハンドルバー及び車輪をフリーのままにし、従って、二輪車は、容易に滑ることができるようになる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、二輪車は、モーターサイクルである。
【0023】
この実施形態によれば、第1の支柱は、フロントフェアリングに装着されるのが有利である。エンジンブロックに取り付けられたこの支柱は、二輪車の重量の70%〜75%の荷重を支えるであろう。
【0024】
再び、この実施形態によれば、第2の支柱は、後輪の車軸に装着される。後輪に取り付けられたこの支柱は、二輪車の重量の16%〜20%の荷重を支える。
【0025】
再び、この実施形態によれば、第3の支柱は、パッセンジャーサドルの下に設けられる。例えば、乗員が自分の足を載せるために設けられた場所に取り付けられたこの支柱は、二輪車の重量の8%〜11%の荷重を支える。
【0026】
本発明の他の有利な細部及び特徴は、図面を参照して行われる本発明の例示の実施形態についての以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のモーターサイクルの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図は、理解しやすくするために縮尺通りには描かれていない。
【0029】
図1は、タイヤグリップ測定を実施するために用いられるよう設計されたモーターサイクル1を概略的に示している。グリップ測定試験を実施するためのモーターサイクル1は、前輪に120/70ZR17タイヤを装着すると共に後輪に180/55ZR17タイヤを装着した“Honda”(登録商標)600“CBR”(登録商標)型オートバイである。
【0030】
本発明によれば、モーターサイクルは、その側部の各々にナイロン‐6,6ポリアミドで作られた3つの支柱(spar)2,3,4を備えている。
【0031】
支柱2は、当初リヤパッセンジャーフットレストを取り付けるために設けられたアタッチメントに装着されている。モーターサイクルが3つ全ての支柱で支持された場合、支柱2によって支えられる荷重は、モーターサイクルの全重量の9.5%に等しい。
【0032】
支柱3は、後輪の車軸に装着されている。モーターサイクルが3つ全ての支柱で支持された場合、支柱3によって支えられる荷重は、モーターサイクルの全重量の18.5%に等しい。
【0033】
支柱4は、エンジンブロックのフロントフェアリングに装着されている。モーターサイクルが3つ全ての支柱で支持された場合、支柱4によって支えられる荷重は、モーターサイクルの全重量の72%に等しい。
【0034】
支柱2,3,4は、それぞれ長さが160mm、50mm、50mmであるように作られており、従って、モーターサイクルがこれら3つの支柱上に載っているとき、支柱は、路面と接触状態にある唯一の要素であり、路面によって、従って支柱の端部によって形成される平面と二輪車の後輪の周方向平面との間の距離は、392.5mmに等しく、従って350mmを超える。
【0035】
タイヤグリップ測定が実施される試験条件をシミュレートするためにこのモーターサイクルに対して試験を行った。これら試験では、タイヤグリップ限度を超えて車両及びライダがこれら試験中に起こる場合のある仕方で転倒又は落下するようにした。試験ライダ(試験のために乗っている人)は、怪我の恐れをなくすスーツを着用したスタントマンであった。
【0036】
これら試験結果の示すところによれば、一方において、ライダは、自分の下肢で支えることができないモーターサイクルの重量から保護され、他方において、支柱を構成するための材料の選択により、モーターサイクルがライダよりも容易に滑るようになり、従って、ライダは、モーターサイクルに当たらないで極めて迅速に投げ出されることは明らかである。
【0037】
この種の試験は、最初に乾いた路面に対して実施され、次に、濡れた路面に対して実施された。両方の場合において、支柱は、特に滑りの観点から見て、まさに効果的であるということが判明した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤグリップ測定を実施するための二輪車において、
前記二輪車は、前記二輪車の一方の側部に装着された3つの支柱を備え、前記支柱の端部は、前記二輪車の後輪の周方向平面にほぼ平行な平面を形成し、前記平面と前記二輪車の前記後輪の前記周方向平面との間の距離は、350mmを超える、
ことを特徴とする二輪車。
【請求項2】
前記二輪車は、その側部の各々に装着された少なくとも3つの支柱を備えている、
請求項1記載の二輪車。
【請求項3】
転倒の場合に路面に接触するようになった前記支柱の少なくとも端部は、滑り摩擦係数が0.2未満の材料で作られている、
請求項1又は2記載の二輪車。
【請求項4】
前記材料は、ナイロン‐6,6ポリアミドである、
請求項3記載の二輪車。
【請求項5】
前記支柱は、前記後輪の軸方向に180mmを超える長さを有する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の二輪車。
【請求項6】
前記二輪車が全部で3つの支柱上に載っているとき、第1の支柱は、前記二輪車の全重量の70%を超える荷重を支え、第2の支柱は、前記二輪車の全重量の16%を超える荷重を支え、第3の支柱は、前記二輪車の全重量の8%を超える荷重を支える、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の二輪車。
【請求項7】
前記二輪車は、モーターサイクルである、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の二輪車。
【請求項8】
第1の支柱は、フロントフェアリングに装着される、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の二輪車。
【請求項9】
第2の支柱は、前記後輪の車軸に装着される、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の二輪車。
【請求項10】
第3の支柱は、パッセンジャーサドルの下に設けられる、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の二輪車。

【公表番号】特表2012−526696(P2012−526696A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510297(P2012−510297)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056570
【国際公開番号】WO2010/130795
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)