説明

ユニバーサル圧延機

【課題】簡単な構成で、被圧延材に疵を付けることなく、左右方向の曲がりを矯正することができるユニバーサル圧延機を提供する。
【解決手段】一対の竪ロール4、5よりも被圧延材6の圧延方向前方に、竪ロール4、5の回転方向と同方向に回転可能に支持され、外周面が被圧延材6のフランジ6fの外側面に接して被圧延材6の左右方向の曲がりを矯正する矯正ロール9、10を備える。一対の竪ロール4、5および矯正ロール9、10は、鉛直方向の軸15a、16aを中心として回転可能に左右一対の竪ロールチョック7、8にそれぞれ支持された回転テーブル15、16に、軸支されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H型鋼やI形鋼等のフランジを有する形鋼を圧延するユニバーサル圧延機において、圧延時に、被圧延材の圧延方向における左右方向の曲がりを矯正する手段を備えたユニバーサル圧延機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
H形鋼やI形鋼などのフランジを有する形鋼は、図1に示すように、上下の水平ロール2、3および左右の竪ロール4、5の軸心が同一鉛直面上にあるユニバーサル圧延機1を用いて圧延成形される。
【0003】
このような形鋼は、高温下で長尺にわたって圧延され、長手方向の上下方向および左右方向の反りや曲がりを生じることが多い。殊に、形鋼の剛性上、上下方向の反りに比べて、左右方向の曲がりを矯正するには大きな荷重が必要となるため、成形後に修正することが困難であり、圧延時に左右方向の曲がりを矯正することが必要である。
【0004】
例えば特許文献1、2においては、ユニバーサル圧延機における被圧延材の入側および出側に、左右一対の拘束ローラをそれぞれ設け、入側および出側において被圧延材の左右を拘束しながら圧延することにより、被圧延材の左右方向の曲がりを防ぐ圧延方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、ユニバーサル圧延機の竪ロールのチョックにおける竪ロールの出側近傍に、左右一対の板状体の第1ガイドを配置するとともに、圧延機の出側に、圧延機から出てきた被圧延材の左右を拘束する複数の拘束ローラを備えた左右一対の第2ガイドを設けたものが開示されている。
【0006】
さらに、本出願人による特許文献4には、竪ロールよりも出側の位置に、竪ロールと同じ方向に回転自在に軸支された矯正ロールを設けた圧延機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−140925号公報
【特許文献2】特開2000−176502号公報
【特許文献3】特開2007−196278号公報
【特許文献4】特開2010−12497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1、2は、拘束ローラを、竪ロールが配置されている左右一対のチョックの外に設けた構成であり、竪ロールと拘束ローラとが離れた位置に配置されている。そのため、竪ロールを通過してから拘束ローラに到達するまでの被圧延材の先端部については、曲がりを矯正することができない。しかも、先端が曲がった被圧延材が拘束ローラに接触すると、被圧延材が左右に振られるため、圧延時の左右対称性に影響を与え、さらに左右方向の曲がりが増大するという問題がある。
【0009】
また、前記特許文献3では、第1ガイドは竪ロールに近接していることから、被圧延材の曲がりを抑えるためには、第1ガイドの表面と被圧延材の表面が可能な限り接近あるいは接触するように第1ガイドの位置を設定する必要があり、その結果、板状の第1ガイドに被圧延材が接触し、表面に疵が発生する可能性がある。一方で、被圧延材表面の疵の発生を抑制するために、第1ガイドの表面と被圧延材の表面との間に一定の隙間を設けると、第1ガイドによる曲がりの矯正が不十分となり、第2ガイドによる曲がり矯正が必須となる。その場合、特許文献3に記載の第2ガイドは構造が複雑であるうえ、曲がり抑制のためには、確実な位置決めと、被圧延材の接触により撓みが発生しないための高い剛性が必要であることから、高コストを要するという問題がある。
【0010】
前記特許文献4は、簡単な構成で被圧延材の左右の曲がりを矯正するものであるが、矯正ロールの位置が固定されているため、被圧延材の状況に応じて随時左右方向の位置を調整することが困難である。
【0011】
本発明の目的は、簡単な構成で、被圧延材に疵を付けることなく、左右方向の曲がりを圧延時の状況に応じて矯正することができるユニバーサル圧延機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するため、本発明は、上下一対の水平ロールおよび左右一対の竪ロールを有し、被圧延材を圧延してフランジを有する形鋼を成形するユニバーサル圧延機であって、前記一対の竪ロールよりも前記被圧延材の搬送方向前方に、前記竪ロールの回転方向と同方向に回転可能に支持され、外周面が前記被圧延材のフランジの外側面に接して前記被圧延材の左右方向の曲がりを矯正する矯正ロールを備え、前記一対の竪ロールおよび前記矯正ロールは、鉛直方向の軸を中心として回転可能に左右一対の竪ロールチョックにそれぞれ支持された回転テーブルに、軸支されていることを特徴とするユニバーサル圧延機を提供する。回転テーブルを回転させることにより、被圧延材の圧延状態に応じて矯正ロールの位置を調整できるので、左右方向の曲がりを確実に抑制できる。
【0013】
外周面が前記矯正ロールの外周面と接する状態で回転自在に支持され、前記矯正ロールに作用する負荷を受けるバックアップロールが、前記回転テーブルに支持されていてもよい。
【0014】
前記竪ロールの回転軸と、前記回転テーブルの回転軸とが一致していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構造で、圧延時の状況に応じて、被圧延材の左右方向の曲がりを確実に抑制できる。また、竪ロールと同じ方向に回転する矯正ロールをフランジに接触させて曲がりを矯正するので、被圧延材に疵を発生させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかるユニバーサル圧延機の圧延部分の概略を示す斜視図である。
【図2】図1のユニバーサル圧延機の平面図である。
【図3】図2のA−A線で切断した縦断面図である。
【図4】図2の回転テーブル15を回転させたときの平面図である。
【図5】本発明のユニバーサル圧延機の異なる実施形態を示す平面図である。
【図6】図5の回転テーブル15、16を回転させたときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明のユニバーサル圧延機の概要を示し、圧延機1は、上下一対の水平ロール2、3と、左右一対の竪ロール4、5により、例えば図示のようなH形鋼またはI形鋼など、フランジを有する被圧延材6を長手方向に搬送しながら圧延成形する。
【0019】
上下一対の水平ロール2、3は、それぞれ被圧延材6の上面および下面を挟んで圧延し、H形鋼のウェブ6wを成形する。水平ロール2、3は、それぞれ被圧延材6の圧延方向と直交し、水平方向に延びる駆動軸2a、3aを中心として回転する。駆動軸2a、3aは、図示しない水平ロールチョックに支持されている。
【0020】
左右一対の竪ロール4、5は、被圧延材6の左右両側を挟んで圧延し、水平ロール2、3の側面とともに、H形鋼のフランジ6fを成形する。竪ロール4、5は、それぞれ鉛直方向の回転軸4a、5aを中心として回転する。水平ロール2、3および竪ロール4、5は、いずれも、被圧延材6を入側から出側へ送り出す方向に回転する。
【0021】
左右一対の竪ロール4、5に対して被圧延材6の圧延方向前方に、竪ロール4、5と同じ方向に回転する矯正ロール9、10がそれぞれ設けられている。矯正ロール9、10は、なるべく竪ロール4、5に近い位置に、且つ、竪ロール4、5には接触しないように設けられる。矯正ロール9、10の回転軸9a、10aは鉛直方向に延びている。矯正ロール9、10の外周面は、圧延されて送り出されてきた被圧延材6のフランジ6fの外側となる側面に接する。すなわち、通常状態では、図2に示すように、左右一対の竪ロール4、5の外周面同士の最も近い位置の間隔と、左右一対の矯正ロール9、10の外周面同士の最も近い位置の間隔とは等しく、これが圧延成形される形鋼の幅となる。この左右一対の矯正ロール9、10が被圧延材6の側面に接しながら圧延方向に回転することにより、被圧延材6が左右方向に曲がることなく送り出される。
【0022】
さらに、図2に示す実施形態では、それぞれの竪ロール4、5と外周面同士が接するバックアップロール11、12、13、14が設けられている。バックアップロール11、12、13、14は、竪ロール4、5に対して、被圧延材6とは反対側に設けられる。バックアップロール11、12、13、14は、竪ロール4、5が被圧延材6から受ける圧力負荷を負担することにより、竪ロール4、5やその回転軸4a、5aの撓み等を防止する。したがって、バックアップロール11、12、13、14は、竪ロール4、5よりも大型で剛性の高いものが好ましく、隣り合う2つのバックアップロール11と12、13と14は、接触せずに互いの回転を阻害しないように設けられる。図2の例では、被圧延材6の圧延方向前方側のバックアップロール12、14は、それぞれ矯正ロール9、10の外周面にも接し、矯正ロール9、10に作用する負荷を受ける。なお、図2では、バックアップロール11〜14は全て同径のものを用いているが、バックアップロールの大きさや数などは図2の例に限らない。例えば、竪ロール4、5の負荷を受けるバックアップロールと、矯正ロール9、10の負荷を受けるバックアップロールとを別に設けても構わない。
【0023】
図3に示すように、上記の竪ロール4、矯正ロール9、バックアップロール11、12のそれぞれの回転軸は、回転テーブル15に軸支されている。さらに、回転テーブル15は竪ロールチョック7に軸支され、回転テーブル15を回転させる回転機構、例えばウォームギア17を有することにより、回転テーブル15は、鉛直方向の軸15aを中心として回転可能に設けられている。竪ロール5、矯正ロール10、バックアップロール13、14のそれぞれの回転軸も同様に、竪ロールチョック8に軸支された回転テーブル16に軸支されている。
【0024】
以上の構成を有するユニバーサル圧延機1を用いて被圧延材6を圧延する際には、被圧延材6を圧延機1の入側へ搬入し、上下一対の水平ロール2、3、左右一対の竪ロール4、5により圧延して所定の形鋼を成形する。そして、圧延後の被圧延材6を、矯正ロール9、10により直進方向へ誘導し、左右方向の曲がりを矯正して、圧延機1の出側から送り出す。
【0025】
このとき、矯正ロール9、10は、竪ロール4、5よりも被圧延材6の圧延方向前方に配置され、竪ロール4、5と同じ回転方向に回転しているので、圧延後の被圧延材6に疵を発生させることなく、左右方向の曲がりを抑えて直進方向に導くことができる。
【0026】
さらに、本発明においては、竪ロール4、5および矯正ロール9、10が回転テーブル15、16上に設けられているために、矯正ロール9、10の位置を左右方向に調整することができる。回転テーブル15、16のウォームギア17等の回転機構は、図示しない操作機構に連結され、例えば左右方向に一定値以上ずれたときに制御装置により自動的に、あるいは手動操作により、回転テーブル15、16を回転させる。回転テーブル15、16を回転させることにより、矯正ロール9、10の被圧延材6に対する位置が変化する。例えば図4に示すように、被圧延材6の圧延方向右側の回転テーブル15を左回りに少し回転させると、矯正ロール9が竪ロール4よりも圧延方向左寄りに移動する。したがって、圧延に伴って被圧延材6が右側に曲がる傾向が大きい場合には、この方向に回転テーブル15を操作することにより、被圧延材6を左方向へ押して、曲がりを矯正する。回転テーブル15、16の操作は、被圧延材6の状況に応じて、左右一方だけ、または両方を回転させることにより、曲がりの矯正を行うことができる。
【0027】
なお、上記の図2の例は、回転テーブル15、16の軸15a、16aの位置と、竪ロール4、5の回転軸4a、5aの位置とが異なるため、回転テーブル15、16を回転することにより、竪ロール4、5の位置も移動する。これに対し、図5は、回転テーブル15の軸15aと竪ロール4の回転軸4a、回転テーブル16の軸16aと竪ロール5の回転軸5aを、それぞれ同じ位置とした例である。この場合には、例えば図6に示すように回転テーブル15、16を回転したときに、竪ロール4、5の位置が固定されたままで、矯正ロール9、10の位置のみが変化する。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。例えば、バックアップロールは、本発明の構成において必須ではなく、全く設けない、あるいは、矯正ロールの負荷を負担するバックアップロールのみを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、鋼材やその他の被圧延材を圧延する圧延機に適用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 ユニバーサル圧延機
2、3 水平ロール
2a、3a 駆動軸
4、5 竪ロール
4a、5a 回転軸
6 被圧延材
7、8 竪ロールチョック
9、10 矯正ロール
9a、10a 回転軸
11、12、13、14 バックアップロール
15、16 回転テーブル
15a、16a 軸
17 ウォームギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下一対の水平ロールおよび左右一対の竪ロールを有し、被圧延材を圧延してフランジを有する形鋼を成形するユニバーサル圧延機であって、
前記一対の竪ロールよりも前記被圧延材の圧延方向前方に、前記竪ロールの回転方向と同方向に回転可能に支持され、外周面が前記被圧延材のフランジの外側面に接して前記被圧延材の左右方向の曲がりを矯正する矯正ロールを備え、
前記一対の竪ロールおよび前記矯正ロールは、鉛直方向の軸を中心として回転可能に左右一対の竪ロールチョックにそれぞれ支持された回転テーブルに、軸支されていることを特徴とする、ユニバーサル圧延機。
【請求項2】
外周面が前記矯正ロールの外周面と接する状態で回転自在に支持され、前記矯正ロールに作用する負荷を受けるバックアップロールが、前記回転テーブルに支持されていることを特徴とする、請求項1に記載のユニバーサル圧延機。
【請求項3】
前記竪ロールの回転軸と、前記回転テーブルの回転軸とが一致していることを特徴とする、請求項1または2に記載のユニバーサル圧延機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−245498(P2011−245498A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119181(P2010−119181)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)