説明

ユーザの2次元画像を含む個人識別カード

本発明は、保持者がデジタル署名サービス、バンキング・サービス、移動電話サービス、建物、公共輸送機関、商店などへのアクセスを得るために、あるいは将来のスペイン電子IDカードにおいて、保持者を識別するために使用されるタイプの個人識別カードに関する。より具体的には、本発明は、個人識別カード、好ましくはスマートカードまたは単に磁気ストリップまたは内蔵チップを含むカードに関し、それは、そのカードに関連付けられた人の少なくとも2つの異なる可視画像を含み、その画像は本質的にカードの面のうちの少なくとも一方の面の同じ領域に配置される。本発明は、そのカードが保持者に属するか否かを確認するために目視検査され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデジタル署名、バンキングおよび移動電話サービスなどにおいて、建物、公共輸送機関、商店へのアクセスのために、あるいは将来のスペイン電子IDカード(DNI Electronico) において、保持者を識別するために使用されるタイプの個人識別カードに関する。本発明は、個人識別カード、好ましくはスマートカードまたは単に磁気カード、または内蔵チップを有するカードに関する。
【0002】
本発明の目的は、そのカードが保持者に属するか否かを目視検査によって確かめることを容易にする手段を備えた個人識別カードである。
【背景技術】
【0003】
スマートカードの使用は現在大幅に拡大し、それらの用途は多数ある。その最も頻繁な使用法は、移動電話、バンキング、個人識別、公共輸送機関、デジタル署名、商店、アクセス管理などを含む。
【0004】
外部とのリンクのタイプにより、スマートカードは接触カード、非接触カードまたは2重目的カードに分類され得る。
【0005】
接触カードは、読み取り機との物理的接続の結果として外部装置と通信する。この目的のために、カードの外側部分に配置された伝導性コネクタを使用する。
【0006】
一方、非接触カードは、そのスマートカードのボディに配置されたアンテナを有し、これを通して、外部の読み取り機と通信する。
【0007】
二重目的カードは両方のカードの特徴を有し、物理的接触があっても無くても通信が可能である。
【0008】
スマートカードは、セキュリティの分野でますます重要である。このタイプの認証カードは通常、PKI(公開鍵インフラストラクチャ)であって、カードの偽造を事実上不可能にする。これらのカードは普通個人を識別するので、カードとその保持者との間の明快なリンクは非常に関連し、このタイプのリンクは、カードのボディに印刷された写真による受動的リンク、あるいは暗証番号の導入または指紋等の生物測定パラメータの読み取りなどの能動的リンクなど、いろいろな仕方で実行される。
【0009】
能動的リンクでは、マイクロプロセッサは、その人が本当にカードの所有者であるのかを確認する。あるいは、少なくとも、その人が暗証番号を知っていることまたはカードに存在する生物測定パラメータを持っていることを保証する。対照的に、受動的リンクでは、人とカードとのリンクは、前述した確認を実行することを望んでいるエージェントによる検査によって行われる。
【0010】
受動的リンクは偽造されやすいので、このタイプのリンクは、その偽造を困難にするいろいろなセキュリティ要素で保護される。これらの要素は、例えば、すかし、OVI(光学可変インク(Optical Variable Ink))、UVI(紫外線インク(Ultraviolet Ink))、IR(赤外線)インク、虹色インク、ホログラムおよびその他の、手記および認証文書に一般的に使用される要素であり得る。これらの要素のセキュリティは、使用される技術および機械が偽物を作るために容易に入手し得るものではないという事実に基づく。
【0011】
しかし、例えば前述した写真などの受動的システムは、完全に安全ではなく、またそれを確認する人にとって充分に直感的ではない。なぜならば、たびたび、人の視覚の鮮明度、集中力の程度あるいは触覚に依存するからである。
【0012】
一方、観察角度に応じて別々の画像を完全にかつ独立に見ることができる2次元画像を形成することを可能にするいくつかの技術が現状の技術において広く知られている。CLI(可変レーザ画像(Changeable Laser Image))およびMLI(多層レーザ画像(Multilayer Laser Image))と称される、これら既知の技術のうちのいくつかは、レーザ感応表面における画像のレーザ彫刻に基づく。この技術に普通使用される材料は、図3に示されているように4つの異なる層、すなわちレンズ(9)を形成する上側透明層(6)、レーザ感応層(7)、普通は印刷されて下側透明層(10)で覆われる白色不透明層(8)により形成される。
【0013】
上側透明層(6)は、異なる角度からのレーザビーム(L)、(L’)をレーザ感応層(7)の特定の領域に向けるレンズとして作用し、上側透明層(6)は、レーザエネルギーに対して感応性でなくても良くて、彫刻プロセス時にはきれいなままでなければならない。上側透明層(6)の厚さは式g=[n/(n−1)]×rにより決定され、ここでnは材料の屈折率であり、rはレンズの半径である。
【0014】
レーザ感応層(7)はポリカーボネートから作られ、これはレーザエネルギーに対して敏感であって、レーザ光線によってその中に画像を彫刻することができる。この層の厚さは約50ミクロンである。
【0015】
別々の彫刻角度を用いることによりレーザ感応層(7)において数個の画像が得られ、それらの画像を、それらを観察する角度に応じて、完全にかつ独立に見ることを可能にする。
【発明の開示】
【0016】
本発明は、前述した欠点を充分に解決して、正面および裏面(カードの正面および背面)を有する個人識別カードを提供し、それは、そのカードと関連付けられた人の少なくとも2つの異なる可視画像を含み、その画像が本質的にカードの面のうちの少なくとも一方の面の同じ領域に配置されることを特徴とする。それらの画像は2次元画像から成り、各画像は別々の観察角度から見える(普通は、個人の正面画像および横顔画像)。
【0017】
従って、本発明は受動的リンクに付加的程度のセキュリティを提供する。なぜならば、カードの保持者の2つの写真を挿入し、より良好な識別を可能にすることに基づいているからである。2つの画像がカードのボディにおいてスペースを占めるという欠点を防止するために、本発明は、これら2つの写真が、単一の写真のサイズを占める個人の単一の2次元画像を形成すると規定し、カードを確認するエージェントが個人の顔の正面画像と側面画像とを持つことを可能にする。この2次元画像を実行するためにいろいろな技術を用いることができ、本発明では好ましくはCLI(可変レーザ画像)レーザ技術またはMLI(多層レーザ画像)レーザ技術が使用される。
【0018】
CLIおよびMLI技術は、同じ表面に2つ以上の画像を彫刻し、いわゆる2次元画像を形成することを可能にする。この表面はレンズ状の特徴を有し、その結果として、この表面の前で利用可能な視角により別々の画像を得ることができ、作られた画像はOVD(光学的に可変の意匠(Optically Variable Device))とも称される。
【0019】
2次元画像の挿入は、カードの保持者であると主張する個人のより良好な識別を可能にすると共に偽造実行の複雑さを高め、スマートカードの受動的セキュリティを顕著に高めることを可能にする。従って、人の横顔画像と正面画像とを彫刻することが可能であり、これら2つの画像は、それを確認する人がカードの前で持つことのできる視角を単に変化させることによって、観察され得る。
【0020】
なされる説明を補足し、また本発明の特徴をその好ましい実用的な実施形態に従ってより良く理解することを促進する目的で、実例としての非限定的な人物で以下のものが示されている図面が前の説明の不可欠な一部分として添付されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、正面から小さな角度で観察された個人識別スマートカード(1)を示し、このカードは、集積回路(5)と、この実施形態のカードの保持者の顔の正面向きの写真に対応する第1の画像(3)とを有する。第1の画像(3)は、任意の適切な技術により、カードの1つの面の領域(2)の中に印刷される。
【0022】
カード(1)は第2の画像(4)を有し、これは、それを正面から反対方向に小角度回転させたときに観察されるものであり、保持者の顔の横顔写真に対応し、この画像は本質的に、第1の画像(3)により占められる同じ領域(2)の中に配置されている。
【0023】
このようにして、カード(1)が正面からの眺めに関して小さな角度から観察されたとき、カード(1)の観察者にとって第1の画像(3)が見え、第2の画像(4)はこの観察角度からは隠されたままである。カードのこの面の正面からの眺めに関して前の角度とは反対側の小角度からカード(1)のこの同じ面を観察することにより、図2に示されているように、第2の画像(4)が見え、第1の画像(3)はこの傾いた観察角度からは隠れたままである。
【0024】
この技術で、カード(1)は、単一の写真と同じ表面を占めるカード保持者の顔の2つの写真を有するので、その人の身体の特徴に関するより多くの視覚的情報を提供し、カードの保持者がその所有者であるかどうかの確認はより容易でかつ効果的である。
【0025】
本発明の他の実用的な実施形態では、画像または写真をカードの1つの面の他の領域に配置することができ、あるいはその両面に配置することもできる。
【0026】
人の正面向きの写真および横顔写真の代わりに、写真は、例えば2つの横顔、あるいは適切と考えられる他の角度からの写真から成っても良い。
【0027】
本発明の実用的な実施形態のいくつかの可能性が、添付されている従属請求項に記載されている。
【0028】
この説明と図面とに鑑み、説明された発明の実施形態を本発明の目的の範囲内で様々に組み合わせ得ることが当業者には理解できよう。本発明はそのいくつかの好ましい実施形態に従って説明されたけれども、特許請求の範囲に記載された発明の目的を超えずに前述した好ましい実施形態に多くの変化を持ち込むことができることは当業者にとっては明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】人の顔が形象的に表されている個人識別カードの1つの面の斜視図を示し、複数の画像のうちの1つが見える傾いた観察角度が破線で示されている。
【図2】図1のカードの同じ面の、他の斜め観察角度または観点からの眺めを示す。
【図3】2次元画像を再生するための現状の技術で知られているCLIおよびMLI技術の使用の概略的な表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面および裏面を有する個人識別カードであって、前記カード(1)と関連付けられたパーソナルアイデンティティの少なくとも2つの異なる可視画像(3,4)を含み、前記画像(3,4)は実質的に前記カード(1)の前記面のうちの少なくとも一方の面の同じ領域(2)に配置されるカード。
【請求項2】
請求項1記載のカードにおいて、
前記画像は2次元画像から成り、各画像は別の観察角度から見えるカード。
【請求項3】
請求項1または2記載のカードにおいて、
複数のレンズ(9)を形成する上側透明層(6)と、白色不透明層(8)と、前記上側層(6)および前記不透明層(8)の間に配置されたレーザ感応層(7)とを含むカード。
【請求項4】
前述した請求項記載のカードにおいて、
前記画像(3,4)は、前記レンズ(9)の下の前記レーザ感応層(7)に配置されるカード。
【請求項5】
前述した請求項のいずれか記載のカードにおいて、
前記パーソナルアイデンティティは前記カードの保持者から成り、前記画像は前記保持者の顔のいろいろな角度からの写真から成るカード。
【請求項6】
請求項5記載のカードにおいて、
第1の画像は人の顔の正面向きの写真から成り、第2の画像は人の横顔写真から成るカード。
【請求項7】
前述した請求項のいずれか記載のカードにおいて、
データを記憶することのできる集積回路または磁気ストリップを有するカード。
【請求項8】
請求項7記載のカードにおいて、
前記集積回路に電磁的に結合されるアンテナを組み入れるカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−537244(P2008−537244A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507097(P2008−507097)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/ES2005/000286
【国際公開番号】WO2006/114454
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(507349709)
【Fターム(参考)】