説明

ユーザ生体反応応用型ネットワーク制御装置及び方法

【課題】 人の感覚(生体情報)に基づいてネットワーク機器を制御する。
【解決手段】 本発明は、ネットワーク機器から情報を受信しているユーザの生体計測値を、一つ以上の生体反応計測装置から収集し、有限状態機械などの分析手段を用いて、生体計測値と該生体計測値に対する所定の閾値とを比較し、比較結果に基づいてネットワーク機器制御手段に該ネットワーク機器の制御を指示し、ネットワーク機器制御手段において、ネットワーク機器に対する制御の指示に基づいて、前記ネットワーク機器を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ生体反応応用型ネットワーク制御装置及び方法に係り、特に、ユーザの身体的な反応に基づいてネットワークを制御するためのユーザ生体反応応用型ネットワーク制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のネットワーク制御は、パケット損失などのデータ処理における客観的測定値に基づいて制御されている。
【0003】
また、信頼度(事後確率)に基づく自動再送要求にサポートベクタマシン(SVM)を適用する方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「脳波判別の性能向上を目的とした信頼度に基づく自動再送要求へのSVMの適用」、高橋他、第25回ファジィシステムシンポジウム講演、1B1-05, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の方法は、客観的測定値に基づくものに限られていたため、受信者の感覚とは相違する制御がなされるケースがある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、人の感覚に基づいてネットワークを制御でき、さらに、ユーザから得られる身体的な変化に基づいて、適用領域を変化させることが可能なユーザ生体反応応用型ネットワーク制御装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明(請求項1)は、少なくとも1つの生体反応計測装置やネットワーク機器に接続されたネットワーク制御装置であって、
生体データ収集手段、データ処理手段、ネットワーク機器制御手段を有し、
前記生体データ収集手段は、
前記ネットワーク機器から情報を受信しているユーザの生体計測値を、一つ以上の生体反応計測装置から収集する手段を有し、
前記データ処理手段は、
前記生体計測値と該生体計測値に対する所定の閾値とを比較し、比較結果に基づいて前期ネットワーク機器制御手段に該ネットワーク機器の制御を指示する手段を有し、
前記ネットワーク機器制御手段は、
前記生体データ収集手段からの指示に基づいて、前記ネットワーク機器を制御する手段を有する。
【0008】
また、本発明(請求項2)は、前記データ処理手段において、
前記生体計測値と前記閾値の結果から前記ネットワーク機器を制御する状態遷移を決定する有限状態機械を有する。
【0009】
また、本発明(請求項3)は、前記データ処理手段において、
前記ネットワーク機器制御手段に、NGN(New Generation Network)を介して前記指示を通知する手段を含む。
【0010】
また、本発明(請求項4)は、前記生体計測値として、脳波、意識的身体反応、無意識的な身体反応の少なくとも1つ以上のデータを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、人の意識的身体反応、無意識的な身体反応、脳波等の生体反応に基づいて、ネットワーク機器を制御することが可能となり、受信者の感覚に合致したネットワーク制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態におけるシステム制御装置の構成図である。
【図2】本発明の一実施例の脳波計測値による実装例である。
【図3】本発明の一実施例の脳波の計測例である。
【図4】本発明の一実施例のデータ標準化部の処理を示す図である。
【図5】本発明の一実施例における有限状態機械の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
本発明は、ISO(国際標準化機構)のOSIの7層モデルを超えた位置に存在する、人の感覚に基づきネットワークを制御するものであり、ユーザ(人)主体のネットワーク制御を具現化するために必須な機能を実現する。さらに、ユーザから得られる身体的な変化(脳波、血流、体温、表情)を処理するデータ処理部を種々に交換可能で、多様なネットワーク機器における目的(アプリケーション)に合わせたデータ処理機能と置換を行うことで適用領域を変化させるネットワークを提供する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態における基本的なシステム構成を示す。
【0016】
同図に示すシステム制御装置は、データ標準化部101、複数のデータ処理部102,103,104、複数のインタフェース107,108,109,110から構成され、データ処理部102は、制御インタフェースをネットワークユーザに提供可能なNGN等NGNインタフェース105に接続され、当該NGNインタフェース105を介してネットワーク制御部106に制御を指示する。
【0017】
ネットワーク制御部106は、NGN(New Generation Network)の制御を行う。
【0018】
脳波計インタフェース107は、人の生体反応のうち、脳波を計測する脳波計と接続され、脳波データを取得してデータ標準化部101に出力する。
【0019】
血流計インタフェース108は、人の生体反応のうち、血流、血圧、血中酸素濃度を計測する血流計と接続され、それらの計測値をデータ標準化部101に出力する。
【0020】
体温計インタフェース109は、人の生体反応のうち、体温を計測する体温計測器と接続され、体温をデータ標準化部101に出力する。
【0021】
表情分析インタフェース110は、人の生体反応のうち、表情を計測する表情分析器と接続され、表情に関するデータをデータ標準化部101に出力する。
【0022】
なお、上記のインタフェース107,108,109,110に接続される機器は、既存の機器や既存技術を利用することにより装置の構成を簡略化できる。また、これらの機器は、ネットワークを介して接続されていてもよいし、直接接続されていてもよい。また、図1のインタフェースは一例であり、上記以外にも意識的身体反応、無意識的な身体反応を計測でできる機器がインタフェースに接続されていてもよい。
【0023】
上記のインタフェース107〜110の計測データは、各計測機器に割り当てた番号と識別子を基本として、データ形式を予め決定しておくものとする。例えば、インタフェース107で得られる脳波の場合は、計測位置と各計測位置での各脳波成分(α、β、θ、γ等)の1秒間のエネルギー積算値を計測値とする。また、インタフェース108で得られる血流計の値については、血流量、酸素濃度を計測値とする。インタフェース109で得られる体温計の値については、計測時刻の体温の計測値とする。インタフェース110で得られる表情分析値については、表情計測(例えば、1秒間の顔の皺の本数の最大値を映像から読み出した値)の結果を計測値とする。
【0024】
データ標準化部101は、各インタフェース107〜110より入力された各生体反応の計測データをデータ処理部102の入力とするために、時系列的な変換を意味する情報に標準化する。具体的には、データの平均をとる、1秒に同期して各データを一纏めにするなどしてデータ処理部102に渡す。
【0025】
3つのデータ処理部102,103,104は、それぞれ異なるデータ処理機能を有する。
【0026】
データ処理部102は、本システムの用途に合わせてデータ標準化部101からの入力、ネットワーク制御部106への出力を生成する機能を有し、処理機能の異なるデータ処理部と置換可能である。データ処理部102は、目的に応じてアルゴリズム、処理形態が異なる実装が可能であるが、データ標準化部101、ネットワーク制御部106とのインタフェースは必須要素である。
【実施例】
【0027】
次に、上記の実施の形態の構成を脳波に特化したシステムの実装例と動作について具体的に示す。
【0028】
図2は、本発明の一実施例の実装例であり、脳波に特化したシステム制御装置である。計測対象は映像ネットワークを介して映像を見ているか、音楽を視聴している人とする。同図において、図1と同一構成要素には同一符号を付す。
【0029】
脳波計インタフェース107は、脳波計測器から入力された計測対象のAの脳波データをデータ標準化部101に渡す。データ処理部102は、データ標準化部101から取得した脳波データに基づいて、分析を行い、NGNインタフェース105を介してネットワーク制御部106に指示を出す。
【0030】
図3に、脳波の計測結果を取得する脳波インタフェース107の機能を示す。脳波インタフェース107では、脳波を電気信号と捉えて、デジタル処理可能なデジタル信号に変換された信号を取得する。図3において、tは時間の経過を示し、y軸は脳波から得られる興奮状態を示す電圧を示す。処理の簡略化のために1.0に規格化したものである。aは対象とする脳波の波形である。ここでは、脳波の種類は特に限定しない。時間軸のt,t,tは平穏時の脳波であり、t,tは興奮した(刺激を受けた)状態の脳波である。
【0031】
図3に示した脳波は、データ標準化部101で図4に示すように処理される。図4に示す処理は、時間に応じた状態の変化を見つけ出すことであり、一定時間毎にサンプリングしたデータの平均値を求め、その平均値の変化の状態を図4のデータ処理部102の動作(有限状態機械)を介してネットワーク制御のためのパラメータに反映させる。
【0032】
図4において図3と同一符号の記載は、それぞれ図3の内容に対応する。図4のThは状態の変化を定めた閾値である。tからtは時間的な変化の部分であり、図3のtからt5に対応する。
【0033】
av1、av2は計測された値の平均値であり、av1はサンプリングした値の平均値が低い時刻の結果を示し、av2は平均値が高い時刻の結果を示している。どちらも一定時刻のサンプリング値の平均値であるが、サンプリングした値が変化すると一定時間(サンプリング値より長い、時間間隔より狭い)を伴って変化し、av1のような低い場所とav2のような高い場所とを検出することができる。それらは、図4の「状態A」、「状態B」を導出することと等価である。
【0034】
図4で検出された状態の変化は、NGN等のネットワークへの制御インタフェースでもある図5の有限状態機械(分析手段)で利用される。ここで、有限状態機械は、有限後の状態と遷移の動作の組合せからなる数学的に抽象化された振る舞いのモデルである。当該実施例では、脳波という生体反応について図5に示すようにモデル化した処理を行う。
【0035】
図5において、有限状態機械は起動後、状態Aに遷移する。サンプリング値(計測値)に変化がない場合は、「状態A」に遷移して、ネットワーク制御部106へNGNインタフェース105を介して帯域削減を指示する。「状態A」でサンプリング値(計測値)が上昇した場合は「状態B」に遷移する。この場合、何らかの刺激的な現象が発生したと判断して、NGNインタフェース105を介してネットワーク制御部106へ帯域増加を指示し、「状態B」に遷移する。「状態B」でそのまま変化がない場合は、更なる帯域の増加を指示する。「状態B」でサンプリング値(計測値)が下降した場合、ネットワーク制御部106へNGNインタフェース105を介して帯域の削減を指示し、「状態A」に遷移する。
【0036】
上記の動作を繰り返し行うことで映像の品質劣化等に応じたネットワーク品質の抑制を行うことができる。
【0037】
上記の実施例では、脳波計インタフェース107を介して取得した脳波データの例のみを示したが、この例に限定されることなく。血流計インタフェース108の場合は、血流量に応じてネットワーク制御部106によりネットワーク機器を制御することが可能である。また、体温計インタフェース109、表情分析インタフェース110で取得したデータについても同様に、取得したデータに応じてネットワーク機器を制御する。
【0038】
現在では、ネットワークの品質評価として、特定ネットワーク層内での評価が主流であるが、下層の評価では問題なしとされたデータであっても、ユーザレベルで実施した場合に思わぬ違いが感じられたりすることがある。本発明は、ユーザの生体反応からユーザの反応に応じてネットワーク機器を制御することが可能となる。
【0039】
なお、図1のシステム制御装置の構成要素の動作をプログラムとして構築し、システム制御装置として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0040】
本発明は、上記の実施の形態及び実施例に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0041】
101 データ標準化部
102,103,104 データ処理部
105 NGNインタフェース
106 ネットワーク制御部
107 脳波計インタフェース
108 血流計インタフェース
109 体温計インタフェース
110 表情分析インタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの生体反応計測装置やネットワーク機器に接続されたネットワーク制御装置であって、
生体データ収集手段、データ処理手段、ネットワーク機器制御手段を有し、
前記生体データ収集手段は、
前記ネットワーク機器から情報を受信しているユーザの生体計測値を、一つ以上の生体反応計測装置から収集する手段を有し、
前記データ処理手段は、
前記生体計測値と該生体計測値に対する所定の閾値とを比較し、比較結果に基づいて前期ネットワーク機器制御手段に該ネットワーク機器の制御を指示する手段を有し、
前記ネットワーク機器制御手段は、
前記生体データ収集手段からの指示に基づいて、前記ネットワーク機器を制御する手段を有することを特徴とするネットワーク制御装置。
【請求項2】
前記データ処理手段は、
前記生体計測値と前記閾値の結果から前記ネットワーク機器を制御する状態遷移を決定する有限状態機械を有する
請求項1記載のネットワーク制御装置。
【請求項3】
前記データ処理手段は、
前記ネットワーク機器制御手段に、NGN(New Generation Network)を介して前記指示を通知する手段を含む
請求項1記載のネットワーク制御装置。
【請求項4】
前記生体計測値として、
脳波、意識的身体反応、無意識的な身体反応の少なくとも1つ以上のデータを含む
請求項1記載のネットワーク制御装置。
【請求項5】
少なくとも1つの生体反応計測装置やネットワーク機器に接続されたネットワーク制御装置におけるネットワーク制御方法であって、
生体データ収集手段が、前記ネットワーク機器から情報を受信しているユーザの生体計測値を、一つ以上の生体反応計測装置から収集する生体データ収集ステップと、
データ処理手段が、前記生体計測値と該生体計測値に対する所定の閾値とを比較し、比較結果に基づいて前記ネットワーク機器制御手段に該ネットワーク機器の制御を指示するデータ処理ステップと、
前記ネットワーク機器制御手段が、前記ネットワーク機器に対する制御の指示に基づいて、前記ネットワーク機器を制御する制御ステップと、
を行うことを特徴とするネットワーク制御方法。
【請求項6】
前記データ処理ステップにおいて、
優艶状態機会を用いて、前記生体計測値と前記閾値の結果から前記ネットワーク機器を制御する
請求項5記載のネットワーク制御方法。
【請求項7】
前記データ処理ステップにおいて、
前記ネットワーク機器制御手段に、NGN(New Generation Network)を介して前記指示を通知する
請求項5記載のネットワーク制御方法。
【請求項8】
前記生体データ収集ステップにおいて、
前記生体計測値として、
脳波、意識的身体反応、無意識的な身体反応の少なくとも1つ以上のデータを収集する
請求項5記載のネットワーク制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−84095(P2013−84095A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223032(P2011−223032)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)