説明

ライトシェルフ

【課題】必要に応じて最適な光環境を創出することができるライトシェルフを提供することを目的とする。
【解決手段】上窓部11と下窓部12との間から室外側または室内側に向けて庇状に張り出され、太陽光Lを反射させて室内の天井面14に反射光L´を照射させるライトシェルフ1,2において、奥行き方向に間隔をあけて配設された一対の回転体3,4と、一対の回転体3,4の間に架け渡されて一対の回転体3,4のうちの少なくとも一方の回転に伴い奥行き方向に沿って動作するスクリーン5と、を備えており、スクリーン5の表面に、太陽光Lを天井面14に向けて反射させる複数の反射突起6が奥行き方向に並設されており、複数の反射突起6には、反射突起6毎に角度が異なる反射面60を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を反射させて室内の天井面に反射光を照射させるライトシェルフに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば下記特許文献1に示されているような、上窓部と下窓部との間にライトシェルフを設置する採光システムが数多く提案されている。前記したライトシェルフは、上窓部と下窓部との間から室外側に向けて張り出された庇状の部材であり、ライトシェルフの上面には、太陽光を室内の天井面側に向けて反射する反射面が形成されている。このようなライトシェルフによれば、ライトシェルフの上面(反射面)に反射した反射光が室内の天井面に当たった上で室内を照らす間接光となるので、柔らかい光で室内を照らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−228107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のライトシェルフでは、ライトシェルフによる反射角度が一定であるため、太陽の高度が変動して太陽光の照射角度(水平面に対する角度)が変化するのに伴い、室内に入射する反射光の入射角度(水平面に対する角度)が変化し、天井面における反射光が当たる範囲が変位し、天井面に反射した間接光によって照られる範囲も変化する。つまり、ライトシェルフによって照らされる範囲が時間帯や季節によって変化することになり、必要に応じて所望の場所を明るくすることができないという問題がある。
【0005】
また、上記した従来のライトシェルフでは、ライトシェルフに当たる太陽光の強さ(照度)が変化するのに伴い、天井面に当たる反射光の照度が変化するため、室内を照らす明るさが変化する。したがって、室内の光環境を均質に維持することができず、太陽光の強さによって明る過ぎたり暗かったりするという問題がある。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、必要に応じて最適な光環境を創出することができるライトシェルフを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るライトシェルフは、上窓部と下窓部との間から室外側または室内側に向けて庇状に張り出され、太陽光を反射させて室内の天井面に反射光を照射させるライトシェルフにおいて、奥行き方向に間隔をあけて配設された一対の回転体と、該一対の回転体の間に架け渡されて該一対の回転体のうちの少なくとも一方の回転に伴い奥行き方向に沿って動作するスクリーンと、を備えており、前記スクリーンの表面に、太陽光を前記天井面に向けて反射させる複数の反射突起が奥行き方向に並設されており、該複数の反射突起には、反射突起毎に角度が異なる反射面を有していることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、太陽光がスクリーン上に並設された複数の反射突起の反射面に反射し、その反射光が室内の天井面に当たって反射して室内を照らす間接光となる。また、一対の回転体のうちの少なくとも一方を回転させることで、スクリーンが奥行き方向に沿って動作し、そのスクリーンに並設された複数の反射突起の位置が変化する。これら複数の反射突起の反射面の角度はそれぞれ異なっているので、上述したようにスクリーンを動作させることで、複数の反射突起による反射光の入射角度が変化する。これにより、天井面における反射光が当たる範囲を太陽光の照射角度や照度に応じて調整することが可能である。
なお、「奥行き方向」とは、庇状のライトシェルフの張り出し方向である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るライトシェルフによれば、天井面における反射光が当たる範囲を太陽光の照射角度や照度に応じて調整することが可能であるので、必要に応じて最適な光環境を創出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態を説明するためのライトシェルフが設置された建物の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するためのライトシェルフの側面図である。
【図3】反射突起の反射面の角度を説明するための図であり、(a)はライトシェルフの模式図であり、(b)はスクリーンの展開図であり、(c)は反射突起の位置と反射面の角度との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態を説明するためのライトシェルフが設置された建物の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するためのライトシェルフの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るライトシェルフの実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0012】
図1に示す建物10には、上下に配設された上窓部11及び下窓部12が設けられており、これら上窓部11と下窓部12との間のフレーム部13には、室外に配設された室外ライトシェルフ1と、室内に配設された室内ライトシェルフ2と、がそれぞれ取り付けられている。前記した室外ライトシェルフ1及び室内ライトシェルフ2は、太陽光Lを反射させて室内の天井面14に反射光L´を照射させる庇状のシェルフであり、室外ライトシェルフ1は、上窓部11と下窓部12との間(フレーム部13)から室外側に向けて張り出されており、室内ライトシェルフ2は、上窓部11と下窓部12との間(フレーム部13)から室内側に向けて張り出されている。これら室外ライトシェルフ1及び室内ライトシェルフ2は、フレーム部13を挟んで対称に配設されている。
【0013】
室外ライトシェルフ1及び室内ライトシェルフ2の構成について詳細に説明する。なお、室外ライトシェルフ1と室内ライトシェルフ2とは略同様の構成からなるため、室内ライトシェルフ2のうち、室外ライトシェルフ1と同一の構成要素については室外ライトシェルフ1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0014】
室外ライトシェルフ1は、図2に示すように、フレーム部13に突設されたブラケット15に支持された庇部であり、その概略構成としては、奥行き方向(図2に示すX方向)に間隔をあけて配設された一対の回転体3,4と、それら一対の回転体3,4の間に架け渡されたスクリーン5と、を備えている。
【0015】
回転体3,4は、室外ライトシェルフ1の幅方向(奥行き方向に直交する方向)に延在する回転可能なローラー部であり、回転体3,4の回転軸30,40には、図示せぬ駆動源の動力がギアやベルトなどの動力伝達機構を介して伝達される構成となっている。なお、基端側の回転体3と先端側の回転体4は、各々が別々に回転可能な構成となっている。
【0016】
スクリーン5は、輪状に形成された無端ベルト状の可撓性スクリーンであり、一対の回転体3,4に巻回されている。このスクリーン5の表面には、太陽光Lを天井面14に向けて反射させる複数の微細な反射突起6が奥行き方向(輪状のスクリーン5の周方向)に並設されている。反射突起6は、幅方向に延在する反射体であり、反射突起6の上面には太陽光Lを反射する反射面60が形成されている。この反射面60は、反射突起6毎に角度θが異なっている。つまり、スクリーン5には、断面視形状の異なる複数の反射突起6が奥行き方向に並設されている。
【0017】
ここで、上記した反射突起6の反射面60の角度θについて詳細に説明する。なお、上記した「反射面60の角度θ」は、反射突起6の下面(スクリーン5の上面)と反射面60とが成す角度であり、図3(b)に示す断面視において、反射突起6の下面から反時計回りの方向を正とし、時計回りの方向を負とする。
【0018】
図3(a)に示すライトシェルフ1、2の輪状のスクリーン5を展開させると、図3(b)に示すようになる。図3(b)に示す符号2Wは、スクリーン5の周の長さである。そして、反射面60の角度θは、図3(c)に示すように、展開されたスクリーン5の一端から他端に向かって漸次小さく(或いは大きく)なっている。より詳しく説明すると、反射面60の角度θは、スクリーン5の一端から他端側に向かって、最大角度θmaxから角度0(反射面60がスクリーン5の上面と平行する角度)まで漸次小さくなる。そして、さらにスクリーン5の他端に向かって、角度0から最小角度θminまで漸次小さくなる。つまり、最大角度θmaxは正であり、最小角度θminは負であり、輪状のスクリーン5において最大角度θmaxの反射面60を持つ反射突起6は最小角度θminの反射面60を持つ反射突起6の隣りに位置する。なお、図3(c)に示す最大角度θmaxと最小角度θminとの間を結ぶグラフ線の勾配は適宜変更可能であり、また、前記グラフ線は直線状に限らず、曲線状になってもよい。
【0019】
次に、上記した構成からなるライトシェルフ1,2の作用について説明する。
【0020】
上記した室外ライトシェルフ1及び室内ライトシェルフ2では、太陽光Lがスクリーン5上に並設された複数の反射突起6の反射面60に反射し、その反射光L´が室内の天井面14に当たって反射して室内を照らす間接光となる。
【0021】
また、一対の回転体3,4をそれぞれ回転させることで輪状のスクリーン5が回転して、一対の回転体3,4間においてスクリーン5が奥行き方向に沿って移動し、スクリーン5上に並設された複数の反射突起6の位置が変化する。これら複数の反射突起6の反射面60の角度はそれぞれ異なっているので、上述したようにスクリーン5を動作させることで、複数の反射突起6による反射光L´の入射角度が変化する。これにより、天井面14における反射光L´が当たる範囲A,A´を太陽光Lの照射角度や照度に応じて調整することが可能である。
【0022】
例えば、太陽光Lの照度が非常に高い場合には、図1、図2に示すように、反射光L´が拡散するように、一対の回転体3,4を回転させてスクリーン5を動作させて室外ライトシェルフ1及び室内ライトシェルフ2をそれぞれ調整する。これにより、天井面14における反射光L´が当たる範囲Aが広くなり、天井面14によって反射する間接光の明るさが抑えられる。
【0023】
また、太陽光Lの照度が非常に高い場合、又は照度がそこまで高くなく、図1、図2に示すような状態とするには照度が不足する場合には、図4、図5に示すように、反射光L´に指向性を持たせるように、一対の回転体3,4を回転させてスクリーン5を動作させて室外ライトシェルフ1及び室内ライトシェルフ2をそれぞれ調整する。これにより、天井面14における反射光L´が当たる範囲A´が狭くなり、天井面14によって反射する間接光の明るさが向上する。また、前述したように反射光L´に指向性を持たせる場合、在室者の位置が照らされるように、在室者の位置情報に基づいて室外ライトシェルフ1及び室内ライトシェルフ2をそれぞれ調整し、天井面14における反射光L´が当たる範囲A´を変位させてもよい。
【0024】
なお、上記した室外ライトシェルフ1及び室内ライトシェルフ2は、図示せぬ室内の照明と連動して調整されるものであり、室内の照明と組み合わされて、室内の光環境を調整する光システムを構成している。例えば、ライトシェルフ1,2による採光だけでは室内の明るさが足りない場合には、室内の照明を点灯させて明るさを補って室内の光環境を整える。反対に、ライトシェルフ1,2による採光だけで十分な明るさが得られる場合には、室内の照明を抑えたり消灯させたりする。これにより、消費電力が低減される。
【0025】
また、室外ライトシェルフ1及び室内ライトシェルフ2は、室内の明るさ感に配慮した制御と連動することも可能である。この明るさ感は、人が実際に感じる明るさの指標であり、太陽光Lの照度(lx;ルクス)に基づく制御に加えて(或いは代えて)所望の明るさ感が得られるように上記したライトシェルフ1,2を調整することが好ましい。
【0026】
上記した構成からなるライトシェルフ1,2によれば、反射突起6の反射面60に反射した反射光L´が室内の天井面14に当たって反射して室内を照らす間接光となるので、柔らかい光で室内を照らすことができる。
【0027】
また、天井面14における反射光L´が当たる範囲A,A´を太陽光Lの照射角度や照度に応じて調整することが可能であるので、必要に応じて最適な光環境を創出することができる。
【0028】
以上、本発明に係るライトシェルフの実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、室外ライトシェルフ1及び室内ライトシェルフ2がそれぞれ設けられているが、本発明は、室外ライトシェルフ1及び室内ライトシェルフ2のうちの何れか一方だけであってもよい。
【0029】
また、上記した実施の形態では、一対の回転体3,4に無端状(輪状)のスクリーン5が巻回された構成となっており、一対の回転体3,4が回転することでスクリーン5が回転動作する室外ライトシェルフ1(室内ライトシェルフ2)について説明しているが、本発明は、ロールスクリーン状のライトシェルフであってもよい。すなわち、帯状のスクリーンの両端部が回転体3,4にそれぞれ巻き付けられた構成からなり、一対の回転体3,4が回転することで一方の回転体3(4)からスクリーンが繰り出されると共に他方の回転体4(3)でスクリーンが巻き取られて一対の回転体の間でスクリーンが移動するライトシェルフであってもよい。
【0030】
また、上記した実施の形態では、一対の回転体3,4がそれぞれ駆動する構成となっているが、本発明は、一対の回転体3,4のうちの何れか一方だけが駆動して他方が従動して回転する構成であってもよい。
【0031】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 室外ライトシェルフ(ライトシェルフ)
2 室内ライトシェルフ(ライトシェルフ)
3 回転体
4 回転体
5 スクリーン
6 反射突起
11 上窓部
12 下窓部
14 天井面
60 反射面
L 太陽光
L´ 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上窓部と下窓部との間から室外側または室内側に向けて庇状に張り出され、太陽光を反射させて室内の天井面に反射光を照射させるライトシェルフにおいて、
奥行き方向に間隔をあけて配設された一対の回転体と、該一対の回転体の間に架け渡されて該一対の回転体のうちの少なくとも一方の回転に伴い奥行き方向に沿って動作するスクリーンと、を備えており、
前記スクリーンの表面に、太陽光を前記天井面に向けて反射させる複数の反射突起が奥行き方向に並設されており、
該複数の反射突起には、反射突起毎に角度が異なる反射面を有していることを特徴とするライトシェルフ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−37948(P2013−37948A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174195(P2011−174195)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】