説明

ライナープレート用転落防止柵取付け具

【課題】 転落防止柵の取付け対象をライナープレートに特定し、このライナープレートの構造を利用し、簡単な手間で、しかも確実かつ強固に転落防止柵の単管支柱をライナープレートに取付けることができる転落防止柵取付け具の提供。
【解決手段】 開削穴G1の土留め用として設置されるライナープレート8に転落防止柵9の単管支柱90を取付けるための取付け具Aである。支柱保持管1と、上側支持板2と、下側受け板3と、ライナープレート8の波状胴壁81に形成された山状波部81aを上下から挟持させる挟持板片4a,4bとを備えている。支柱保持管には単管支柱の下端を支えるストッパ部材12が設けられると共に支柱用固定ボルト10が設けられ、上側支持板2にライナープレートの締結ボルト用通し穴82aに回転可能に挿し込む係止ピン5が下向きに突設されると共にフランジ用固定ボルト20が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面に形成した開削穴の内周面に土留め用として設置されたライナープレートに転落防止柵を取付けるためのライナープレート用転落防止柵取付け具(以下、「転落防止柵取付け具」という)に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道の地中埋設工事、電力管やガス管等の地中埋設工事に伴い地面に立坑を開削する場合、この開削穴(立坑)への転落を防止するため、開削穴の周囲に転落防止柵を設置することが要求されている。
【0003】
前記開削穴には、開削施工時に土留め用としてライナープレートが設置されるもので、このライナープレートを転落防止柵の取付けベースとして利用すれば、転落防止柵を強固かつ簡易に取付けることができという利点がある。
【0004】
このような観点から、従来からライナープレートに転落防止柵を取付けることが行われているが、その取付け具として、例えば、建築用仮設足場の組み立てに用いられるキャッチクランプ(特許文献1参照)が用いられている。
【0005】
この従来のキャッチクランプは、H形鋼の突条部を挟持する略コ字状のクランプ本体と、固定片と可動片とでパイプを把持するパイプ把持部とを備えている。
このキャッチクランプを転落防止柵の取付け具として使用する場合には、クランプ本体をライナープレートの上端フランジに固定させ、かつパイプ把持部で転落防止柵の単管支柱を固定させることになる。
【特許文献1】特開2006−207308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記キャッチクランプはあくまでも建築用仮設足場の組み立て具であって、これを転落防止柵用として転用した場合には以下のような不具合が生じる。
即ち、クランプ本体でライナープレートの上端フランジを挟持させた状態で固定ボルトにより固定することになるが、その固定個所が固定ボルトによる1ヶ所であるため、その取付け状態でズレ動き易く、取付け状態が不安定になる。
また、パイプ把持部を構成する固定片と可動片との間で単管支柱を挟んだ上で連結ボルトと締付ナットで締め付けるといった手間のかかる作業が必要になる。
特に、転落防止柵では単管支柱を立向きに(垂直に)固定させるため、従来のパイプ把持部では、単管支柱を固定片と可動片とで横方向から挟みながら連結ボルトと締付ナットの締め付けが完了するまでは単管支柱が抜け落ちないように手で支えておく必要が生じるし、また、連結ボルトと締付ナットの締め付けが弛むと単管支柱が抜け落ちてしまうといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、転落防止柵の取付け対象をライナープレートに特定したもので、このライナープレートの構造を利用することにより簡単な手間で、しかも確実かつ強固に転落防止柵の単管支柱をライナープレートに取付けることができる転落防止柵取付け具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明(請求項1)の転落防止柵取付け具は、
開削穴(G1)の内周面に土留め用として設置されるライナープレート(8)に転落防止柵(9)の単管支柱(90)を取付けるための取付け具であって、
前記単管支柱(90)の下端部を着脱可能に取付ける支柱保持管(1)と、前記ライナープレート(8)の上端フランジ(82)の上面に載置させる上側支持板(2)と、この上側支持板(2)との間に形成したフランジ挟持空間(30)に前記ライナープレート(8)の上端フランジ(82)を嵌め込んで挟持させる下側受け板(3)と、前記ライナープレート(8)の波状胴壁(81)に形成された山状波部(81a)を上下から挟持させる上下の挟持板片(4a),(4b)とを備え、
前記支柱保持管(1)は、その内部が前記単管支柱(90)の下端部を着脱可能に嵌合させる支柱嵌合穴(11)に形成され、この支柱嵌合穴(11)の下端部に単管支柱(90)の下端を支えるストッパ部材(12)が設けられ、かつ支柱保持管(1)の上端部外面に支柱用固定ボルト(10)が設けられ、
前記上側支持板(2)の下面に、前記ライナープレート(8)の上端フランジ(82)に形成した締結ボルト用通し穴(82a)に回転可能に挿し込む係止ピン(5)が下向きに突設され、かつ上側支持板(2)の上面に前記フランジ挟持空間(30)に臨むようにフランジ用固定ボルト(20)が設けられている構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の転落防止柵取付け具は、転落防止柵の単管支柱をライナープレートに取付けるためのものである。
使用に際しては、係止ピンをライナープレートの上端フランジに形成した締結ボルト用通し穴に挿し込んで、この上端フランジの上面に上側支持板を載置させる。
このように係止ピンを設けているため、取付け位置の位置決めが容易かつ正確にできるし、上側支持板を上端フランジの上面に容易に載せることができ、上側支持板が上端フランジの上面からズレ落ちるのを防止できる。
【0010】
次に、前記係止ピンを中心にして全体を回転させることでフランジ挟持空間内に上端フランジが挿入するようにセットさせ、その状態でフランジ用固定ボルトにより固定させる。
これによりフランジ挟持空間内に上端フランジを容易に挿入させることができるし、前記係止ピンとフランジ用固定ボルトとの2ヶ所で固定できるため、強固に取付けることができる。
更に、前記ライナープレートの波状胴壁に形成された山状波部を上下の挟持板片によって挟持させるため、ガタ付きや支柱保持管が傾くのを防止でき、より確実かつ強固に取付けることができる。
【0011】
次に、転落防止柵の単管支柱を支柱保持管の支柱嵌合穴に上から挿し込み、支柱用固定ボルトで単管支柱を固定させる。
この場合、単管支柱の下端がストッパ部材によって支えられるため、単管支柱から手を放しても単管支柱が抜け落ちるといったことはないし、支柱用固定ボルトが弛んだとしても単管支柱が抜け落ちることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の実施例に係る転落防止柵取付け具を用いてライナープレートに転落防止柵を取付けた状態の断面図、図2は転落防止柵取付け具を用いてライナープレートに転落防止柵を取付ける際の手順を示す工程図である。
【0013】
本実施例の転落防止柵取付け具Aは、ライナープレート8に転落防止柵9の単管支柱90を取付けるためのものである。
【0014】
前記ライナープレート8は、円環状に形成された波状胴壁81の上端に上端フランジ82が内向きに形成されると共に、波状胴壁81の下端に下端フランジ83が内向きに形成され、前記上端フランジ82及び下端フランジ83にそれぞれボルト用通し穴82a,83aが形成されている。
また、前記波状胴壁81には、複数個(実施例では3個)の山状波部81aと複数個(実施例では2個)の谷状波部81bが上下方向に交互に形成されている。
【0015】
このライナープレート8は、地面Gに形成した開削穴G1の内周面に土留め用として設置されるもので、その設置に際しては複数個のライナープレート8を上下方向に積み重ねて連結させる。
この場合、下段側のライナープレート8の上端フランジ82と、上段側のライナープレート8の下端フランジ83を重ね合わせると共に、ボルト用通し穴82a,83aを符合させ、そのボルト用通し穴82a,83aに締結ボルト84を挿通させてナット85により締結することでライナープレート8,8同士を上下に連結させるものである。
そして、上下方向に積み重ねたライナープレート8のうち最上段のライナープレート8に転落防止柵取付け具Aを取付けるものである。
【0016】
前記転落防止柵取付け具Aは、支柱保持管1と、上側支持板2と、下側受け板3と、上下の挟持板片4a,4bとを主な構成部材として備えている。
なお、前記支柱保持管1は鋼管により形成され、前記上側支持板2及び下側受け板3は鋼板により形成されている。
【0017】
前記支柱保持管1は前記単管支柱90の下端部を着脱可能に取付けるためのもので、軸方向を上下方向にして取付けられ、その上端部に支柱用固定ボルト10が設けられている。
【0018】
また、支柱保持管1の内部は前記単管支柱90の下端部を着脱可能に嵌合させる支柱嵌合穴11に形成され、この支柱嵌合穴11の下端部に単管支柱90の下端を支えるストッパ部材12が設けられている。
このストッパ部材12としては、単管支柱90の下端を支えることができれば、支柱嵌合穴11の底を塞ぐような板材を使用してもよいが、支柱嵌合穴11の底に土砂等が溜まるのを防止するため実施例では棒材を用いている。
【0019】
前記上側支持板2は、前記ライナープレート8の上端フランジ82の上面に載置させるためのもので、その板面が前記支柱保持管1の軸方向と直角になるように支柱保持管1の上端部分に固着されている。
この上側支持板2の一端部下面に係止ピン5が下向きに突設され、この係止ピン5は前記ライナープレート8の上端フランジ82に形成した締結ボルト用通し穴82aに回転可能に挿し込めるように形成されている。
【0020】
前記下側受け板3は、前記上側支持板2との間に形成したフランジ挟持空間30に前記ライナープレート8の上端フランジ82を嵌め込んで挟持させるためのもので、この下側受け板3の基端部は前記上側支持板2の他端部に一体に連結されている。
【0021】
また、上側支持板2の他端部上面に前記フランジ挟持空間30に臨むようにフランジ用固定ボルト20が設けられている。
このフランジ用固定ボルト20及び前記支柱用固定ボルト10には蝶頭ボルトが用いられ、スパナ等の工具を使用することなく手作業で締め付けできるようにしている。
【0022】
前記上下の挟持板片4a,4bは前記ライナープレート8の波状胴壁81に形成された最上位置の山状波部81aを上下から挟持させるもので、その板面が前記支柱保持管1の軸方向と平行になるように前記上側支持板2の下方において支柱保持管1に固着されている。
【0023】
本実施例の転落防止柵取付け具Aを用いてライナープレート8に転落防止柵9を取付ける際の手順を図2の工程図により説明する。
まず、図2(イ)で示すように、係止ピン5をライナープレート8の上端フランジ82に形成した締結ボルト用通し穴82aに挿し込み、図2(ロ)で示すように、上端フランジ82の上面に上側支持板2を載置させる。
この係止ピン5を用いたことによって取付け位置の位置決めが容易かつ正確にできるし、上側支持板2が上端フランジ82の上面からズレ落ちるのを防止できる。
【0024】
次に、図2(ロ)で示すように、前記係止ピン5を中心にして全体を矢印方向Rに回転させ、これにより図2(ハ)で示すように、フランジ挟持空間30内に上端フランジ82を挿入させる状態にセットさせ、そのセット状態でフランジ用固定ボルト20により固定させるものである。
このようにフランジ挟持空間30内に上端フランジ82を容易に挿入させることができるし、前記係止ピン5とフランジ用固定ボルト20との2ヶ所で固定できるため、強固に取付けることができる。
更に、前記ライナープレート8の波状胴壁81に形成された山状波部81aを上下の挟持板片4a,4bによって挟持させるため、ガタ付きや支柱保持管1が傾くのを防止でき、より確実かつ強固に取付けることができる。
【0025】
次に、転落防止柵9の単管支柱90を支柱保持管1の支柱嵌合穴11に上から挿し込み、支柱用固定ボルト10で単管支柱90を固定させる。
この場合、単管支柱90の下端がストッパ部材12によって支えられるため、単管支柱90から手を放しても単管支柱90が抜け落ちるといったことはないし、支柱用固定ボルト10が弛んだとしても単管支柱90が抜け落ちることはない。
【0026】
このように転落防止柵取付け具Aを利用して単管支柱90をライナープレートに固定していき、次に、適宜の締結手段91を用いて各単管支柱90に手摺管92を取付けていくことで、転落防止柵9を形成していくものである。
【0027】
なお、前記締結手段91として実施例では建築足場用のクランプを用いているが、これに限ることはない。なお、この締結手段91は本発明の要旨ではないので、その説明を省略する。
又、前記手摺管92は上下複数段(実施例では2段)に設けてもよいし1段でもよく、また、手摺管92の代わりにフェンスを取付けてもよい。
また、実施例では、支柱用固定ボルト10及びフランジ用固定ボルト20としてゼスナーボルトを用いており、このゼスナーボルトは泥や砂を噛んでもスムーズに回転できるし、ネジ部が大きく谷が円形なのでモルタルの付着がないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係る転落防止柵取付け具を用いてライナープレートに転落防止柵を取付けた状態の断面図
【図2】転落防止柵取付け具を用いてライナープレートに転落防止柵を取付ける際の手順を示す工程図
【符号の説明】
【0029】
1 支柱保持管
10 支柱用固定ボルト
11 支柱嵌合穴
12 ストッパ部材
2 上側支持板
20 フランジ用固定ボルト
3 下側受け板
30 フランジ挟持空間
4a 挟持板片
4b 挟持板片
5 係止ピン
8 ライナープレート
81 波状胴壁
81a 山状波部
81b 谷状波部
82 上端フランジ
82a 締結ボルト用通し穴
83 下端フランジ
83a 締結ボルト用通し穴
84 締結ボルト
85 ナット
9 転落防止柵
90 単管支柱
91 締結手段
92 手摺管
A ライナープレート用転落防止柵取付け具
G 地面
G1 開削穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開削穴(G1)の内周面に土留め用として設置されるライナープレート(8)に転落防止柵(9)の単管支柱(90)を取付けるための取付け具であって、
前記単管支柱(90)の下端部を着脱可能に取付ける支柱保持管(1)と、前記ライナープレート(8)の上端フランジ(82)の上面に載置させる上側支持板(2)と、この上側支持板(2)との間に形成したフランジ挟持空間(30)に前記ライナープレート(8)の上端フランジ(82)を嵌め込んで挟持させる下側受け板(3)と、前記ライナープレート(8)の波状胴壁(81)に形成された山状波部(81a)を上下から挟持させる上下の挟持板片(4a),(4b)とを備え、
前記支柱保持管(1)は、その内部が前記単管支柱(90)の下端部を着脱可能に嵌合させる支柱嵌合穴(11)に形成され、この支柱嵌合穴(11)の下端部に単管支柱(90)の下端を支えるストッパ部材(12)が設けられ、かつ支柱保持管(1)の上端部外面に支柱用固定ボルト(10)が設けられ、
前記上側支持板(2)の下面に、前記ライナープレート(8)の上端フランジ(82)に形成した締結ボルト用通し穴(82a)に回転可能に挿し込む係止ピン(5)が下向きに突設され、かつ上側支持板(2)の上面に前記フランジ挟持空間(30)に臨むようにフランジ用固定ボルト(20)が設けられていることを特徴とするライナープレート用転落防止柵取付け具。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−95972(P2010−95972A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269761(P2008−269761)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(505268677)株式会社九建 (11)